説明

防振シート及びその製造方法

【目的】 簡単な構成で床面に加わる衝撃エネルギーを有効に吸収することができる。
【構成】 発泡体シート1と繊維シート9との積層体からなり、発泡体シート1と繊維シート9との間に空気層18が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防音床材用の防振シート及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】家屋の階上部分に使用して床面の衝撃による固体音の階下への伝搬を防止するために防音床材が用いられている。この防音床材としては、例えば、図4に示すように、床材基板30と、床材基板30の裏面に不織布41を介して接着され、その表裏両面にそれぞれ凸部31が複数形成されたシート状緩衝材32と、シート状緩衝材32の裏面に接着された制振シート33と、制振シート33の裏面に接着された弾性シート34とよりなる防音床材35が特開昭64−1856号公報に開示されている。なお44はコンクリートスラブ等の床下地である。
【0003】また図5に示すように、上記のシート状緩衝材が、その表裏両面にそれぞれ中空凸部36が連続して形成され、この中空凸部36内にそれぞれ独立した閉鎖空間の空気層37が形成されたシート状緩衝材40である防音床材38が特開昭64−1858号公報に開示されている。
【0004】ところでこの防音床材35,38は、いずれもそのシート状緩衝材32,40の表裏両面にそれぞれ複数の凸部31或いは中空凸部36を設け、空気層39或いは空気層39,37を形成して防音効果を高め、さらに制振シート33により振動エネルギーを吸収して防音効果を高めるとともに複合体としての床材全体の曲げに対して抵抗する引張強度を与え、発泡体からなる弾性シート34により第2の緩衝材として振動エネルギーを吸収するとともに適度な歩行感を与えるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記の防音床材35,38は、防音効果は優れているが、構成が複雑であり、簡単な構成で防音効果の高い防音床材が求められていた。
【0006】請求項1記載の防振シートは、上記の点に鑑み、簡単な構成で床面に加わる衝撃エネルギーを有効に吸収することができる防音床材用の防振シートを提供することを目的とする。
【0007】また請求項2記載の防振シートの製造方法は、防振シートを構成する発泡体シートと繊維シートとの間に空気層を容易に形成することができる防振シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の防振シートは、発泡体シートと繊維シートとの積層体からなり、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層が形成されたものであることを特徴とするものである。
【0009】請求項2記載の防振シートの製造方法は、凹凸面を有する発泡体シートの凹凸面と繊維シートとを、一対の積層ロールにより、押出金型より押出した合成樹脂を介して貼合わせることを特徴とするものである。
【0010】本発明において発泡体シートの材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、EVA樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等の合成樹脂及びゴムなどを用いることができる。発泡倍率、厚みは特に限定されないが、発泡倍率10〜40倍、厚み1〜5mmのものが好適に用いられる。
【0011】繊維シートとしては、材質は特に限定されず、織布でも不織布でもよく、厚みは2〜10mmのものが通常好適に用いられる。
【0012】なお請求項2記載の防振シートの製造方法において、凹凸を有する発泡体シートの凹凸面と繊維シートとの貼合わせを、本発明の方法以外の方法、例えば加熱積層法或いは接着剤積層法で行うと次のような問題点が生じる。加熱積層法の場合には、凹凸を有する発泡体シートの凹凸面を加熱する必要がるためこの加熱により凹凸部がなくなり、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層を形成することが不可能となる。接着剤積層法の場合には、接着剤に含まれる溶剤や水を除去するために加熱が必要であるが、凹凸を有する発泡体シートの凹凸を維持するために発泡体シートの軟化点以上に発泡体シートの温度をあげることができず、実用的な貼合せ速度が得られない。また繊維シート側に接着剤を塗布すると繊維層に接着剤が含浸するので、繊維シート本来の防振効果が減少する。
【0013】
【作用】請求項1記載の発明では、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層が形成されるので、1)発泡体シートの粘弾性、2)空気層の振動防止性、3)繊維シートの緩衝性とがあいまって床面に加わる衝撃エネルギーが有効に吸収される。
【0014】請求項2記載の発明では、凹凸を有する発泡体シートの凹凸面と繊維シートとを、一対の積層ロールにより、押出金型より押出した合成樹脂を介して貼合わせるので、凹凸面の凸部のみが繊維シートと合成樹脂を介して接着し、凹部が接着されないので、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層が形成される。
【0015】
【実施例】以下本発明の一例を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の防振シートの一例の部分断面図であり、施工態様を示した図である。防振シート1はポリエチレン樹脂からなる樹脂膜2を介して貼合された架橋ポリエチレンフオームからなる発泡体シート3とポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維トの不織布からなる繊維シート4とからなり、発泡体シート3と繊維シート4との間に空気層5が形成されている。6は発泡体シート3に形成された凹凸面の凸部であり、この凸部6のみが樹脂膜2を介して繊維シート4と貼合される。凹凸面の凹部7は貼合されないので、凹部7に空気層5が形成される。なお8は防振シート1が貼合された床材基板、9は床下地である。
【0016】図2は本発明の防振シートの製造装置の一例の正面図である。図3は凹凸を有する発泡体シートの製造装置の一例の正面図である。図2において、10は押出金型、11は押出金型10から押出されたポリエチレン樹脂、4はポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維との不織布からなる繊維シート、12は凹凸を有する発泡体シート3と繊維シート9とをポリエチレン樹脂11を介して貼合せる一対の積層ロールであり、この一対の積層ロール12は冷却ロールとされ、その間隙が調整可能とされている。3は凹凸を有する架橋ポリエチレンフオームからなる発泡体シート、1は製造された防振シートである。13,14は凹凸を有する発泡体シート3を案内する案内ロール、15は繊維シート4を案内する案内ロール、16,17,18は防振シート1を案内する案内ロールである。
【0017】図3において、19は架橋ポリエチレンフオームからなる発泡体シート、20はエンボスロール、21は押えロール、22は発泡体シート19を加熱するヒータ、3は製造された凹凸を有する発泡体シートである。23は発泡体シート19の捲重体である。
【0018】次に本発明の防振シートの製造方法を実施例を用いて説明する。発泡倍率30倍、厚み3.5mmの架橋ポリエチレンフォームからなる発泡体シート19を捲重体23から繰出してX矢印方向に移送し、ヒータ5で加熱し、エンボスロール20と押えロール21とにより、その表面に深さ2mmのピラミッド型模様の凹凸を形成し、ロールに巻取る。このロールに巻取った凹凸を有する発泡体シート3を凹凸面を上方にしてY矢印方向に移送し、押出金型10から押出したポリエチレン樹脂11を介して厚み3mm、重量100g/m2 のポリエチレン繊維とポリプロピレン繊維との不織布からなる繊維シート4とこの凹凸を有する発泡体シート3の凹凸面とを一対の積層ロール12により貼合せる。積層ロール12の間隙Tは4mmとされており、このため凹凸を有する発泡体シート3の凹部7と繊維シート9とが貼合されることがなく、発泡体シート3と繊維シート4との間に空気層5が形成された防振シート1が製造される。製造した防振シート1はE矢印の方向に送りロール状に巻取る。
【0019】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、発泡体シートと繊維シートとからなり、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層が形成されているので、1)発泡体シートの粘弾性、2)空気層の振動防止性、3)繊維シートの緩衝性とがあいまって簡単な構成で床面に加わる衝撃エネルギーを有効に吸収することができる防音床材用の防振シートを得ることができる。
【0020】請求項2記載の発明によれば、凹凸を有する発泡体シートの凹凸面と繊維シートとを、一対の積層ロールにより、押出金型より押出した合成樹脂を介して貼合わせるので、凹凸面の凸部のみが繊維シートと合成樹脂を介して接着することができ、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の防振シートの一例の部分断面図である。
【図2】本発明の防振シートの製造装置の一例の正面図である。
【図3】本発明の凹凸を有する発泡体シートの製造装置の一例の正面図である。
【図4】従来の防振シートの部分断面図である。
【図5】従来の防振シートの他の例の部分断面図である。
【符号の説明】
1 防振シート
2 樹脂膜
3,19 発泡体シート
4 繊維シート
5 空気層
6 凸部
7 凹部
10 押出金型
11 ポリエチレン樹脂
12 積層ロール
20 エンボスロール
21 押えロール
22 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 発泡体シートと繊維シートとの積層体からなり、発泡体シートと繊維シートとの間に空気層が形成されたものであることを特徴とする防振シート。
【請求項2】 凹凸面を有する発泡体シートの凹凸面と繊維シートとを、一対の積層ロールにより、押出金型より押出した合成樹脂を介して貼合わせることを特徴とする防振シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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