説明

防水シートの敷設構造

【課題】風圧による固定用ビスの繰り返し衝撃を緩和し長期にわたって防水施工面の損傷をきたす恐れがないと共に、固定ディスクと防水シートとの接着強度を損なうことがない防水シートの敷設構造を提供する。
【解決手段】上面が熱溶着層2で被覆された固定板1の上面に補強用のリブ5が凹設され且つ中心部には固定用ビスDを挿通させる取付け穴3とその周囲にビス頭固定用凹部4が形成されたシート固定ディスクAを、防水施工面C上に固定用ビスDで固定せしめ、該シート固定ディスクAに合成樹脂製防水シートBを熱溶着することにより当該防水シートを防水施工面上に固定するようにした防水シートの敷設構造であって、前記シート固定ディスクの補強用リブ5の一部51がビス頭固定用凹部4にかかるように形成され、該ビス頭固定用凹部4内にワッシャ6を設置して固定用ビスDの頭部D’裏面とビス頭固定用凹部4との間に上記ワッシャ6を介在させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の陸屋根や勾配屋根、或いは住宅のベランダやルーフバルコニーにおける床面または土木用の防水工事等において、防水シートを防水施工面上にシート固定ディスクを用いて機械的に固定するようにした防水シートの敷設構造に関し、更に詳しくは、上面が熱溶着層で被覆されたシート固定ディスクを防水施工面上に固定用ビスで固定しておき、防水施工面上に防水シートを敷設した後に上記シート固定ディスクと対応する位置の防水シートの上面に誘導加熱装置を置いて、誘導加熱により防水シートを前記熱溶着層に溶融一体化させることにより、防水シートを防水施工面上に固定させるようにした防水シートの敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防水シートの敷設構造では、外にさらされている防水シートが風圧を受けるとその力(衝撃)がシート固定ディスクを介して固定用ビスに掛かるため、防水シートが繰り返し風圧を受けると固定用ビスが捻じ込まれている部分の防水施工面(多くの場合、コンクリート製になっている。)が次第に損傷して経年と共に固定用ビスが緩み、シート固定ディスクがガタ付いてしまい、延いては防水シートの破断、剥離等が生じていた。
【0003】
一方、図5に示す如く、シート固定ディスクAの上面に熱溶着層2を介して防水シートCが一体化されると、補強用リブ5の内空間5aが密閉され、密閉された補強用リブ5の内空間5aに空気が閉じ込められた状態になる。すると、防水施工時においては補強用リブ内空間5a内の空気が急激に熱膨張して防水シートCに膨れや熱溶着層2との接着不良を生じせしめ、防水施工後においては外気の温度変化に伴って補強用リブ内空間5a内の空気が膨張と収縮を繰り返す結果、防水シートCとの接着部分に剥離現象を発生させる恐れがある。
【0004】
そこで、補強用リブの内空間内に閉じ込められた空気を積極的に外部に逃がすために、補強用リブに固定板の裏側に通じる貫通穴を開口形成したり、或いは熱溶着層の一部を固定板の外側まで欠如する方策などが考えられた(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−168226号公報
【特許文献2】特開2003−328506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補強用リブに固定板の裏側に通じる貫通穴を開口形成する場合、固定板に補強用リブを形成する工程と、その補強用リブに貫通穴を開口形成する工程とが別々になるので、製造工程数が増える分コスト高になる。
また、補強用リブに貫通穴を開口するときに固定板の上面に積層された熱溶着層が除去しきれずに残って貫通穴の一部又は全部が塞がれてしまったり、固定板の材質によっては施工の前後に貫通穴が錆びて塞がれてしまうこともあり、その結果上記したように補強用リブ内空間内の空気が補強用リブの内空間内部で膨張と収縮を繰り返して防水シートの剥離現象を発生させる恐れがある。
更に、熱溶着層の一部を固定板の外側まで欠如すると、その部分が繰り返し受ける風圧の影響(接合したシートを持ち上げる力)により、経年による接着強度の低下を引き起こし耐風圧性が低下して、台風等の強風により防水シートが剥離する等の問題も発生する。
【0007】
本発明はこの様な現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、防水シートが繰り返し受ける風圧によりシート固定ディスクを介して固定用ビスが繰り返し衝撃を受けてもその衝撃を緩和し得、もって長期にわたって防水施工面の損傷をきたす恐れがないと共に、補強用リブの内空間内に閉じ込められた空気を外部に効果的に逃がすことができ、しかも、経年により固定ディスクと防水シートとの接着強度を損なうことがない防水シートの敷設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の防水シートの敷設構造は、上面が熱溶着層で被覆された固定板の上面に補強用のリブが凹設され且つ中心部には固定用ビスを挿通させる取付け穴とその周囲にビス頭固定用凹部が形成されたシート固定ディスクを防水施工面上に固定用ビスで固定せしめ、該シート固定ディスクに合成樹脂製防水シートを熱溶着することにより当該防水シートを防水施工面上に固定するようにした防水シートの敷設構造であって、シート固定ディスクの補強用リブの一部がビス頭固定用凹部にかかるように形成され、該ビス頭固定用凹部内にワッシャを設置して固定用ビスの頭部裏面とビス頭固定用凹部との間に上記ワッシャを介在させるようにしたことを特徴としたものである(請求項1)。
この際、前記固定用ビスの頭部の一部に、当該頭部の上面からビス取付け穴に連通する切込み溝を形成することが好ましい(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る防水シートの敷設構造によれば、シート固定ディスクの補強用リブの一部がビス頭固定用凹部にかかるように形成され、該ビス頭固定用凹部内にワッシャを設置して固定用ビスの頭部裏面とビス頭固定用凹部との間に上記ワッシャを介在させるようにしたので、外にさらされた防水シートが風圧を受けることによりシート固定ディスクを介して固定用ビスが繰り返し衝撃を受けても、上記ワッシャの存在によりその衝撃が緩和され、もって固定用ビスが捻じ込まれた部分の防水施工面が長期にわたって損傷をきたす恐れがなくなる。
【0010】
また、固定用ビスの頭部裏面とビス頭固定用凹部との間にワッシャを介在させることにより、シート固定ディスクを防水施工面上に固定用ビスだけで固定する場合と比較して、シート固定ディスクを防水施工面上にガタ付くことなく且つ高強度で固定させることが出来る。
【0011】
しかも、シート固定ディスクの補強用リブの一部がビス頭固定用凹部にかかるように形成されているので、防水施工時も防水施工後においても、補強用リブの内空間内に閉じ込められた空気を外部に効果的に逃がすことができる。
すなわち、固定板の上面に凹設された補強用リブの内空間は、ビス頭固定用凹部内に設置したワッシャの存在により形成されるビス頭固定用凹部と固定用ビスの頭部裏面との隙間からビス取付け穴を通して外部(防水施工面側)と常時連通状態となり、補強用リブの内空間内部の空気はビス取付け穴を通して自由に出入りすることが可能となる。従って、防水施工時において補強用リブ内空間内の空気が急激に熱膨張しても防水シートに膨れや熱溶着層との接着不良を起こす恐れがなく、また防水施工後において外気の温度変化に伴って補強用リブ内空間内の空気が膨張と収縮を繰り返しても防水シートとの接着部分に剥離現象が発生する恐れがなくなる。
【0012】
また、補強用リブの内空間をビス取付け穴と常時連通状態とするのに、補強用リブの一部をビス頭固定用凹部にかかるように形成しただけなので、防水シートとの接着面積を十分に確保することができ、よって固定ディスクと防水シートとの接着強度を損なう恐れがない。
【0013】
更に、特に請求項2に係る防水シートの敷設構造のように、固定用ビスの頭部の一部に、当該頭部の上面からビス取付け穴に連通する切込み溝を形成することにより、補強用リブの内空間とビス取付け穴との連通状態が向上するだけでなく、シート固定ディスクを介して固定用ビス(の頭部)に衝撃を受けた場合に上記切込み溝が弾性変形し、その結果、固定用ビス(のネジ部)に伝達される衝撃が緩和軽減されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適実施例を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
また、全図面を通して、同様の構成部材には同じ符号を付してある。
【0015】
本発明に係るシート固定ディスクAは、防水施工面C上に固定される固定板1の上面に、防水シートB側に固定される熱溶着層2を積層一体化して構成される。
ちなみに、防水施工面Cとしては、建物の陸屋根や勾配屋根、或いは住宅のベランダやルーフバルコニーにおける床面、または土木用の防水工事等が挙げられる。
【0016】
防水施工面C上に固定されるシート固定ディスクAを構成する固定板1の素材としては特に限定はないが、ステンレス板や、亜鉛・アルミニウム・マグネシウムメッキまたは亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鋼板など、多湿状態においても錆びにくい鋼板が好適に使用される。
【0017】
また、固定板1は、従来のこの種シート固定ディスクに使用されていた鋼板と同様の厚みと形状大きさに形成される。例えば、厚みは0.6〜1mm程度に形成され、形状は正方形または長方形をした矩形状に形成されたプレート状や、円形または楕円形状に形成されたディスク状など任意であり、大きさは1辺または外径が50〜100mm程度に形成される。
【0018】
そして、固定板1の外周縁には全周にわたって立上げリブ1aが形成され、中心部分には当該固定板1(シート固定ディスクA)を防水施工面C上に固定する固定用ビスDを貫挿通させるためのビス取付け穴3と、その周囲に固定用ビスDの頭部D’を固定板1の上面から突出しないように納めるためのビス頭固定用凹部4が形成され、更に、ビス頭固定用凹部4を取り囲むようにしてその一部51がビス頭固定用凹部4にかかるように補強用のリブ5が凹設される。
【0019】
ビス頭固定用凹部4は、固定用ビスDのビス部分D”を貫通させる穴(ビス取付け穴3)とビスの頭部D’を支承する凹部を備えていればどのような形状でも良く、図示例のようにその底部にビスが貫通する穴(ビス取付け穴3)を備えた略すり鉢形状に形成しても良いし、円筒形状(断面略凹形状)に形成しても良い。
【0020】
補強用リブ5は固定板1の強度を高めるために形成するものであるが、補強用リブ5の上面には防水シートBが溶着されないので、当該補強用リブ5が固定板1上面に占める面積を防水シートBとの接着強度を保持し得る範囲にとどめる必要がある。
すなわち、防水シートBとの接着強度を保持し得る範囲内であれば、補強用リブ5はその平面から見た形状に格別な制限はなく、図1及び図2に示した実施例の如く不連続に形成された複数個の凹部で形成しても良いし、或いは図4に示した実施例の如く連続したリング状の凹部で形成しても良い。更に後者の場合、リング状の凹部は一重に限らず2重でも3重でも良い。
【0021】
いずれの場合も、補強用リブ5は、その一部51がビス頭固定用凹部4にかかるように形成される。すなわち、補強用リブ5の一部51は、当該補強用リブ5と同じか少し浅い深さに、ビス頭固定用凹部4にかかるように形成され、シート固定ディスクAの上面に防水シートCが一体化されて補強用リブ5の上面が塞がれた場合でも、補強用リブ5の一部51を介して補強用リブ5の内空間5aはビス頭固定用凹部4と連通される。
【0022】
また、固定板1(シート固定ディスクA)を防水施工面C上に固定用ビスDで固定する場合に、固定板1に形成するビス取付け穴3は1箇所とは限らず複数個を設け、それに見合った数の固定用ビスDで固定される。
その際、ビス頭固定用凹部4の内部にはワッシャ6が設置され、固定用ビスDでシート固定ディスクAを防水施工面C上に固定した時に、固定用ビスDの頭部D’裏面とビス頭固定用凹部4との間に上記ワッシャ6が介在されるようにする。
【0023】
ここで使用されるワッシャ6としては、その形状や性状等について格別な制約はなく、ネジやビス等とセットで使用される図3に例示したごとき通常のワッシャを使用することができるが、その中でも、シート固定ディスクAを介して固定用ビスD(の頭部D’)に伝達される衝撃をできるだけ吸収し得るように軸方向に弾性がはたらくように工夫されたものが好ましく、更には、補強用リブ5の内空間5aとビス取付け穴3との通気状態を積極的に良好なものとし得るように、ワッシャ6の一部に割れ目が形成されていたり固定用ビスDの頭部D’裏面とビス頭固定用凹部4との間に隙間が形成されやすい形状のものが好適に用いられる。
【0024】
更に、ここで使用されるワッシャ6の外径としては特に制限されるのものではないが、ビス頭部D’の外径より少し大きめなものを選択することにより、シート固定ディスクAのビス頭固定用凹部4に掛かるビスからの衝撃を分散し得るため、ビス頭固定用凹部4の保護にもなる。
【0025】
ちなみに、図3に本発明に使用されるワッシャ6の好適実施例(a)〜(c)を示す。(a)に示したワッシャ6は、その一部に割れ目6aを設け且つ上下に少し捻ることにより、軸方向に弾性がはたらくと同時に補強用リブ5の内空間5aとビス取付け穴3との連通状態を積極的に良好ならしめたものである。また(b)に示したワッシャ6は、環状に形成すると共にその周縁形状を略歯車形状6bに形成することにより、軸方向に弾性がはたらくと同時に補強用リブ5の内空間5aとビス取付け穴3との連通状態を積極的に良好ならしめたものである。そして(c)に示したワッシャ6は、環状に形成すると共に全周にわたって波形状6cに形成することにより軸方向に弾性がはたらくと同時に補強用リブ5の内空間5aとビス取付け穴3との連通状態を積極的に良好ならしめたものである。
【0026】
更に、シート固定ディスクAを介して固定用ビスD(の頭部D’からビス部分D”)に伝達される衝撃を吸収し同時にビス取付け穴3との連通状態を積極的に良好なものになし得るように、固定用ビスDの頭部D’の一部に、当該頭部D’の上面からビス取付け穴3に連通する切込み溝7を形成することが好ましい。
この切込み溝7は、固定用ビスDの頭部D’上面に形成された凹溝71から連続して当該凹溝71と同じ幅にビス部分D”方向へ向かって切り欠いて形成される。この際、固定用ビスDの頭部D’上面に形成される凹溝71としては、先端がマイナス型に形成されたドライバー(工具)を係合させるための係合溝を兼用させても良い。
また、前記したように補強用リブ5と固定板1の裏面とを連通させるために貫通孔を開けることはあまり好ましいことではないが、本発明においては、上記した貫通孔を開けることを排除するものではない。
【0027】
固定板1の上面に積層一体化される熱溶着層2は、加熱により防水シートBに熱溶着する熱可塑性樹脂、ホットメルト接着剤等で形成される。ここで使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、EEA(エチレンエチルアクリレート)等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、ホットメルト接着剤としては、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系のホットメルト接着剤等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂、ホットメルト接着剤等を、塗布コーティング法やシートラミネート法など公知の方法でもって固定板1の上面に0.01〜1.0mmの厚みに積層一体化することにより、熱溶着層2が形成される。
この際、固定板1の防錆処理として、裏面にも上記熱可塑性樹脂を積層一体化せしめると良い。
なお、固定板1の上に熱溶着層2を積層一体化する場合、固定板1を所定形状にプレス加工する前でも後でも良いが、生産性を考慮すると熱溶着層2を積層した後に打ち抜き形成する方が良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例に係るシート固定ディスクの斜視図。
【図2】図1の(X)-(X)線に沿う防水シートの敷設構造を説明する断面図。
【図3】本発明で使用されるワッシャ6の好適実施例(a)〜(c)を示し、夫々紙面上その左側は斜視図ないし平面図、右側はその側面ないし(Y)-(Y)線に沿う断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係るシート固定ディスクの斜視図。
【図5】従来例を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
A:シート固定ディスク
B:防水シート
C:防水施工面
D:固定用ビス
D’:ビスの頭部
D”:ビス部分
1:固定板
2:熱溶着層
3:ビス取付け穴
4:ビス頭固定用凹部
5:補強用リブ
51:補強用リブの一部
5a:補強用リブの内空間
6:ワッシャ
7:切込み溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が熱溶着層で被覆された固定板の上面に補強用のリブが凹設され且つ中心部には固定用ビスを挿通させる取付け穴とその周囲にビス頭固定用凹部が形成されたシート固定ディスクを防水施工面上に固定用ビスで固定せしめ、該シート固定ディスクに合成樹脂製防水シートを熱溶着することにより当該防水シートを防水施工面上に固定するようにした防水シートの敷設構造であって、
前記シート固定ディスクの補強用リブの一部が前記ビス頭固定用凹部にかかるように形成され、該ビス頭固定用凹部内にワッシャを設置して前記固定用ビスの頭部裏面とビス頭固定用凹部との間に上記ワッシャを介在させるようにしたことを特徴とした防水シートの敷設構造。
【請求項2】
前記固定用ビスの頭部の一部に、当該頭部の上面から前記ビス取付け穴に連通する切込み溝を形成してなる請求項1記載の防水シートの敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−32206(P2007−32206A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220689(P2005−220689)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)