説明

防水処理用打ち込み型枠とそれを用いた防水層の端部処理構造

【課題】基本的には、複雑な型枠を必要とせず、熟練も要せず、従来どおり、工作物を得るための型枠を形成しコンクリートを流し込むだけで、防水層の端部処理部を形成でき、労務、時間、コスト共に格段に軽減できるようにする。
【解決手段】縦断面形状に於いて、水平上壁2と、その内奥部から垂直に垂下される垂下壁3と、この垂下壁3の下端から前方へ下端ほど低位となる傾斜壁4とを一体に備えた長尺物に形成され、又は、矩形状に形成された防水処理用打ち込み型枠を用いて、防水層の端部処理部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば屋上パラペットや外部腰壁、更には屋上スラブを貫通して設けられる配管を引き込むための設備配管引き込み用上屋、また避雷針やテレビアンテナを固定する基礎などの工作物、マンホールの開口部などの防水処理用打ち込み型枠とそれを用いた防水層の端部処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、これら工作物は、その側面に防水層を立ち上げて防水層の端部をシール処理するために、俗に顎や笠木、更には水切り突部などと呼ばれる突出部(以下本発明では単に突出部と称する)を形成するのが一般的で、工作物をコンクリートで構築する際、複雑な型枠を形成して、工作物と一体的にこの突出部を形成する手法が採られている。また、多くの場合、この突出部の下面には水きり溝が形成される。
【0003】
しかし、この突出部を形成する型枠は複雑な形状を呈し、形成は煩雑で、熟練と多くの手間を要するだけでなく、型枠脱型の際に水切り溝を形成する桟木を脱型し忘れる問題があった。しかも、これらは小規模な工作物なので、コンクリート型枠用パネル(コンパネ)を小さく裁断して形成するものなので、脱型された型枠は他に転用できず、廃材として廃棄せねばならず、改善が求められていた。
【0004】
しかるところ、これら従来の手法の問題点を解決する新規な手法が後述の特許文献2で提案された。この手法は、セメント系組成物によって、突出部形状のものを予め形成し、これをパラペットなどの工作物の側面にボルトナットで後付するものである。
【0005】
【特許文献1】特開平06―57934号公報
【特許文献2】特開平07−62819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献2で提案された手法は、従来のように突出部形成のための複雑な型枠が不要で、現場での型枠形成における労務と時間、更にはコストが軽減されたが、新たに突出部形成のためのセメント系組成物の取り付けという労務が発生する。しかも、工作物とセメント系組成物との接合面から雨水などが浸透する危惧があり、工作物とセメント系組成物との接合にシーリングが必要になるなど、新たな作業も発生し、全体としては必ずしも労務、時間、コストの軽減にはならないという問題がある。
【0007】
本発明は、これらの問題点を払拭するために鋭意研究した末に開発されたもので、従来からの型枠を採用する手法を改め、突出部を形成するための凹入形の型枠を予め生産し、これをパラペットなどの工作物を形成する際に一体に打ち込むと言う、所謂打ち込み型枠を採用して実施した。その結果は期待どおりの好ましい実績を上げたのでここに提案する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、基本的には、複雑な型枠を必要とせず、熟練も要せず、従来どおり、工作物を得るための型枠を形成しコンクリートを流し込むだけで、防水層の端部処理部を形成でき、労務、時間、コスト共に格段に軽減できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の技術的な課題を解決するために、本発明の請求項1に係る防水処理用打ち込み型枠は、縦断面形状に於いて、水平上壁と、その内奥部から垂直に垂下される垂下壁と、この垂下壁の下端から前方へ下端ほど低位となる傾斜壁とを一体に備えたものである。
【0010】
このような防水処理用打ち込み型枠は、防水層の端部処理部を形成するための型枠を工作物形成のための型枠の内面に着脱自在に取り付け、その後にこの工作物形成のための型枠を工作物構築箇所に建て込み、次いでこの工作物形成のための型枠にコンクリートを打設して前記型枠を埋設し、コンクリートが固化した後に、前記工作物形成のための型枠を取り外すことによって、防水層の端部処理部を備えた工作物、つまり突出部付きパラペットや外部腰壁、更には上屋、また、避雷針やテレビアンテナを固定する基礎などの工作物が形成される。
【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明の請求項1に係る防水処理用打ち込み型枠は、工作物を構築するための型枠を形成し、ここへコンクリートを流し込むだけで、防水層の端部処理部が得られ、しかも複雑な型枠を作る必要が無く、熟練を要しない。併せて工作物の構築後に、新たにセメント系組成物を取り付けるなどの作業も必要なく、労務の軽減は言うまでも無く、時間、コストの軽減も一挙に達成できるようになった。
【0012】
以上の構成において、型枠は、水平上壁の上面には、前後方向の中間に上方へ突出する凸部で形成される返し部が備わっていたり(請求項2)、水平上壁の上面の前方側は先端程下位となる傾斜面に形成されている(請求項3)のが望ましい。
いずれの場合も、コンクリート打ち継ぎ部からの雨水などの浸透を上手く防止でき、打ち継ぎ部のシーリング作業を不要にし、労務、時間、コストを更に軽減できるからである。
【0013】
また、請求項4に記載のように、少なくとも垂下壁はセパレータを取り付け可能に形成されるのが望ましい。
工作物構築のための型枠にこの防水層の端部処理部となる型枠を適正に取り付けることができたり、取り付け作業が効率的に行えたりするからである。
【0014】
更に、防水処理用打ち込み型枠は、請求項5に記載のように、長尺物に形成されたものであったり、請求項6に記載のように、矩形に形成され、その傾斜壁の四隅外面には面取りが施されてなるのが望ましい。
長尺物はパラペットや外部腰壁などに簡便に用い、また、矩形のものは上屋、また、避雷針やテレビアンテナを固定する基礎などに簡便に用いることができるからである。
【0015】
また、請求項7並びに請求項8に係る防水層の端部処理構造によれば、工作物を構築する型枠の内側にこの防水処理用打ち込み型枠を取り付け、この打ち込み型枠によって端部処理部を工作物と一体に構築するものであるから、防水層の端部処理部の構築が、ほとんど工作物の型枠を構築するだけの極めて単純な作業工程で得られるから、労務の大幅な軽減、更には工期の短縮を図ることできる。
【0016】
そして、請求項8に係る防水層の端部処理構造によれば、上記の効果以外にも、型枠形成の手間を軽減できる。
つまり、長尺物の防水処理用打ち込み型枠を矩形に合わせて斜めに切断して組み付けるには手間が掛かるが、予め工場生産などすることで、現場での作業の効率を大幅に高めることができる。しかも、この防水処理用打ち込み型枠はその各コーナー部において、水平上壁の下面を工作物を構築するための型枠に設けた面木の上端面上に載置できるので、この防水処理用打ち込み型枠を設置する高さに合わせて面木を設けておくだけで、この防水
処理用打ち込み型枠を、作業者一人でも容易に設置でき、後はセパレータとフォームタイで固定すれば良いので、防水処理用打ち込み型枠の所定位置への設置作業が大幅に改善される特有の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0018】
(実施例1)
この実施例1では、屋上に設けられる工作物の一例であるパラペットの側面に、ほぼ台形状に凹入させて防水層の端部処理部を形成するために本発明が適用される場合について説明する。
【0019】
図1は、この発明に係る防水処理用打ち込み型枠が長尺物として形成された場合を示した斜視図で、図中1は型枠である。
この型枠1は、縦断面形状に於いて、水平上壁2と、その内奥部から下方へ鉛直に垂下される垂下壁3と、この垂下壁3の下端から前方へ下端ほど低位となる傾斜壁4と、前記垂下壁3に所定間隔を置いて配されるセパレータ貫通孔5と、前記水平上壁2の前端部下面に凹入形成される水切り目地6と、更にこの水平上壁2の上面には、その前端から奥部全長の三分の一に当たる部位が前端ほど下位となる傾斜面2Aに形成され、また、この水平上壁2の上面で前記傾斜面2Aの後端縁から最奥部にわたる位置に上方に向かって一体に立ち上げられた不等辺台形状の凸部7とが一体に設けられている。
【0020】
この型枠1は、セメント系組成物、具体的には、例えばガラス繊維補強セメント(GRC)を素材にして一体成形されている。
【0021】
また、図2にも明らかな通り、水平上壁2の前端と傾斜壁4の下端(前端)とは同一鉛直線上に位置するように予め寸法設定されている。図3に示すように、共にパラペットPの内壁面P1と同じ鉛直仮想平面上にあるようにするためである。
【0022】
このような長尺物の型枠1は、必然的に水平上壁2の下に、不等辺台形状の凹入部8が形成されることになる。
【0023】
次に、このように形成された長尺物の型枠1を用いてパラペットPの内壁面P1に、所謂突出部と称される防水層の端部処理部を構築する方法を図2にしたがって詳述する。
【0024】
図2に示すように、先ず、型枠1のセパレータ貫通孔5に夫々セパレータ10を挿通しておく。
次いで、この型枠1をパラペットPを構築するための型枠9の内、内側の型枠9Aのコンクリート打設側の内面に当て付けるとともに、セパレータ10の他端を内側の型枠9A側に設けたセパレータ貫通孔11に挿通し、このセパレータ10をフォームタイ12によって締め付けておく(短寸のセパレータは軸足とも言われるが、本明細書では、短寸のセパレータも単にセパレータと言う)。
【0025】
このようにして得られた内側の型枠9Aと外側の型枠9Bとをセパレータ13とフォームタイ14によってパラペット構築空間Sを得る。次いで、得られたパラペット構築空間S内にコンクリートCを流し込み、固化を待って内外両側の型枠9A、9Bを取り除く。型枠9を取り除いた後には、図3に示すように、内面に不等辺の台形凹入部8の備わったパラペットPが得られる。また、前記型枠1をパラペット構築のための内側の型枠9Aに保持しているセパレータ10はこれを前記垂下壁3のセパレータ貫通孔5から取り除く。
【0026】
得られたパラペットPは、長尺物に形成された型枠1が、その凹入部8がパラペットPの外方へ開放され、水平上壁2並びに傾斜壁4の夫々の前端がパラペットPの外表面とほぼ同一の仮想鉛直面上にあるようにしてこのパラペットP内に一体に埋設される。
【0027】
引き続き表面処理F、例えばモルタルこて押さえなどして外表面を整える。また、パラペットPの内面P1の下部表面は、屋上面から防水シート15が立ち上げられる。この防水シート15は、防水層の端部処理部、つまりは型枠1の傾斜壁4の表面から更に垂下壁3の表面を覆うように設置され、端縁をこの垂下壁3の上端と水平上壁2の内奥部の下面との角隅でシール材16によって水密的に始末して、防水処理を施す。
【0028】
したがって、この発明に言う防水層の端部処理部とは、この打ち込み用の型枠1の水平上壁2、垂下壁3、そして傾斜壁4によって形成された前記凹入部8を含めた突出部P2(後述)を指す。
【0029】
尚、図2及び図3中、符号17で示される部材はパラペットPの内部に配置される鉄筋である。
【0030】
このように構成された長尺物として形成された型枠1は、パラペットPを構築するための型枠9に着脱自在に取り付けられて、打ち込み型枠として用いることができるようになったので、従来のものと全く違って、工作物を構築するための型枠にコンクリートを流し込むだけで、突出部P2が得られる。しかも複雑な型枠は一切不要であり、したがってまた熟練を要しない。併せてパラペットPの構築後に、新たにセメント系組成物を取り付けるなどの作業も必要なく、労務の軽減は言うまでも無く、時間、コストの軽減も一挙に達成できるようになった。
【0031】
また、この型枠1は、水平上壁2の上面に前後方向の中間に上方へ突出する凸部7で形成される返し部が備わり、しかも水平上壁2の上面の前方側は先端程下位となる傾斜面2Aに形成されているので、コンクリート打ち継ぎ部からの雨水などの浸透を上手く防止でき、打ち継ぎ部のシーリング作業を不要にし、労務、時間、コストを更に軽減できる。
【0032】
また、この型枠1を用いたパラペットPの突出部P2を構築する方法は、パラペットPを構築する型枠9の内側の型枠9Aにこの型枠1を取り付け、この型枠1を打ち込み型枠としてパラペットPと一体に構築できるから、突出部P2の構築が、ほとんどパラペットPを構築するだけの極めて単純な作業工程で得られ、労務の大幅な軽減、更には工期の大幅な短縮を図ることできる。
【0033】
(実施例2)
この実施例2では、屋上Rに設けられる工作物の一例である屋上スラブを貫通して設けられる配管を引き込むための設備用配管引き込み用上屋(以下単に上屋と言う)の側面に、ほぼ台形状に凹入させて防水層の端部処理部を形成するために本発明が適用される場合について、図4〜7の記載に基づいて、以下説明する。
【0034】
図4は、この発明に係る防水処理用打ち込み型枠が矩形(図例では正方形)に形成された場合を示した斜視図、また、図5は拡大端面図で、共に図中の符号101で示す部材は型枠である。
【0035】
この型枠101は、この上屋の平面視での外形形状に合うように、予め平面視で方形に形成される。
長尺の型枠101を現場において、上屋Pの外形形状に合わせて、端部を斜め切りにし
た短尺物を四本作り、その端部同士を直角にして互いに繋ぎ合わせる作業に多くの労務と時間を要するため、その無駄を解消するためである。
【0036】
この方形の型枠101の縦断面形状は前記実施例1の型枠1のそれと同じである。
すなわち、図5にも示すように、水平上壁20と、その内奥部から下方へ鉛直に垂下される垂下壁30と、この垂下壁30の下端から前方へ下端ほど低位となる傾斜壁40と、前記垂下壁30に所定間隔を置いて配されるセパレータ貫通孔50と、前記水平上壁20の前端部下面に凹入形成される水切り目地60と、更にこの水平上壁20の上面には、その前端から奥部全長の三分の一に当たる部位が前端ほど下位となる傾斜面20Aに形成され、また、この水平上壁20の上面で前記傾斜面20Aの後端縁から最奥部にわたる位置に上方に向かって一体に立ち上げられた不等辺台形状の凸部70とが一体に設けられている。
【0037】
ただ、前記実施例1と異なる形状は、図4に示すように、先ず方形であることと、前記傾斜壁40の四隅外面に面取り401が施されていることである。この面取りは、上屋Pの外表面P3の四つの角隅は、防水シートを施すに当たって、これを施し易くするために面取りが施されるものであるから、その形状に合わせたものである。
【0038】
この型枠101は、セメント系組成物、具体的には、例えばガラス繊維補強コンクリート(GRC)を素材にして一体成形されている。
【0039】
また、図4〜8にも明らかな通り、水平上壁20の前端と傾斜壁40の下端(前端)とは同一鉛直線上に位置するように予め寸法設定されている。図8に示すように、共に上屋Pの外壁面P3と同じ鉛直仮想平面上にあるようにするためである。
【0040】
このような矩形の型枠101は、必然的に水平上壁20の下に、不等辺台形状の凹入部80が形成されることになる。
【0041】
次に、このように形成された矩形の型枠101を用いて上屋Pの外壁面P3に、所謂突出部P2と称される防水層の端部処理部を構築する方法を図6〜8の記載に基づいて詳述する。
【0042】
先ず、図6、7に示すように、上屋Pを構築するための型枠90の建て込みを行う。
配管を引き込むための開口Oを形成するために、先ず内側の型枠90Aを矩形に組み立て屋上Rの挿通孔Tに建て込む。次いで、所定の間隔(壁厚)を開けてこの内側の型枠90Aの周囲に外側の型枠90Bを建て込む。外側の型枠90Bと内側の型枠90Aとをセパレータ130とフォームタイ140によって固定し、上屋Pの構築空間Sを得る。
【0043】
ここで重要な点は、この外側の型枠90Bを立て込む際に、図6に示すように、その内側の四つの角隅に面木102を設けることである。この面木102は、型枠101が取り付けられる高さ位置に合わせてその高さ寸法が設定される。
【0044】
次いで、型枠101を構築空間S内に組み込むのであるが、このとき、型枠101をこの構築空間S内に挿入し、前記面木102の上端に水平上壁20の四隅下面を載置して、一時的にその取り付け姿勢を確保する。
【0045】
引き続き、型枠101を前記外側の型枠90Bのコンクリート打設側の内面に当て付けるとともに、セパレータ100の他端を外側の型枠90B側に設けたセパレータ貫通孔110(図7参照)に挿通し、このセパレータ100をフォームタイ120によって締め付けておく。
【0046】
このように、面木102を設けることと、型枠101の傾斜壁40の四隅に面取り401を施すことによって、一人の作業者であっても、型枠101を構築空間Sを得る前記外側の型枠90Bに簡便に取り付けることができるのである。
【0047】
次いで、このようにして得られた上屋構築空間S内にコンクリートCを流し込み、固化を待って内外両側の型枠90A、90Bを取り除く。型枠90を取り除いた後には、図8に示すように、四周外面に連続した不等辺の台形凹入部80の備わった上屋Pが得られる。また、前記型枠101を上屋構築のための外側の型枠90Bに保持しているセパレータ100はこれを前記垂下壁30のセパレータ貫通孔50(図5参照)から取り除く。
【0048】
得られた上屋Pは、矩形に形成され傾斜壁の四隅外面には面取りが施された型枠101が、その凹入部80が上屋Pの四周外方へ開放され、水平上壁20並びに傾斜壁40の夫々の前端が上屋Pの外表面とほぼ同一の仮想鉛直面上にあるようにして上屋P内に一体に埋設される。
【0049】
引き続き、表面処理F、例えばモルタルこて押さえなどして外表面を整える。また、上屋の外面P3の下部表面は、屋上R面から防水シート150が立ち上げられる。この防水シート150は、前記防水層の端部処理部、つまりは型枠101の傾斜壁40の表面から更に垂下壁30の表面を覆うように設置され、端縁をこの垂下壁30の上端と水平上壁20の内奥部の下面との角隅でシール材160によって水密的に始末して、防水処理を施す(図8参照)。
【0050】
尚、図6〜8中、符号170で示される部材は上屋Pの内部に配される鉄筋である。
【0051】
このように構成された方形に形成された型枠101は、上屋Pを構築するための型枠90に着脱自在に取り付けられて、打ち込み型枠として用いることができるようになったので、従来のものと全く違って、工作物を構築するための型枠にコンクリートCを流し込むだけで、上屋Pが得られる。しかも複雑な型枠は一切不要であり、したがってまた熟練を要しない。併せて上屋Pの構築後に、新たにセメント系組成物を取り付けるなどの作業も必要なく、労務の軽減は言うまでも無く、時間、コストの軽減も一挙に達成できる。加えて、面木102を設けることと、型枠101の傾斜壁40の四隅に面取り401を施すことによって、一人の作業者であっても、型枠101を前記外側の型枠90Bに簡便に取り付けることができるのである。
【0052】
尚、以上の各実施例において、型枠1、101を工作物用の型枠9、90に取り付けるに当たって、セパレータ10,100並びにフォームタイ12、120を採用したが、必要に応じて他の部材を転用しても良い。また、実施例2で型枠101は方形の例を示したが、必ずしも祖この形状に限定されることなく、広い概念の矩形であればどのような形状にも転用できる。更に各実施例では防水層の端部処理部を形成する場合を説明したが、適用される箇所は、例えば床下の基礎などでも良く、本発明の概念を逸脱しない範囲でいかなる場所にも適用できる。また、型枠1、101における凸部7、70は、水返しによる止水機能が期待できるものであれば足り、不等辺台形状である必要はないので、例えば、図9に示すように、テーパー面で形成される山型形状の凸部7、70であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る防水処理用打ち込み型枠の実施例1の外観斜視図である。
【図2】図1に示される防水処理用打ち込み型枠を用いたパラペットの構築状況の説明図である。
【図3】図1に示される防水処理用打ち込み型枠を用いたパラペットの構築完成図である。
【図4】本発明に係る防水処理用打ち込み型枠の実施例2の外観斜視図である。
【図5】図4に示される防水処理用打ち込み型枠の拡大端面図である。
【図6】図4に示される防水処理用打ち込み型枠を用いた上屋の構築状況の説明平面図である。
【図7】図4に示される防水処理用打ち込み型枠を用いた上屋の構築状況の説明図である。
【図8】図4に示される防水処理用打ち込み型枠を用いた上屋の完成図である。
【図9】本発明に係る防水処理用打ち込み型枠の他の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1、101…型枠
2、20…水平上壁
3、30…垂下壁
4、40…傾斜壁
5、50…セパレータ貫通孔
6、60…水きり目地
7、70…凸部
8、80…凹入部
9、90…型枠
10、100…セパレータ
11、110…セパレータ貫通孔
12、120…フォームタイ
15、150…防水シート
16、160…シール材
C…コンクリート
P…パラペット(上屋)
P1…内面
P2…突出部
P3…外表面
R…屋上
S…構築空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断面形状に於いて、水平上壁と、その内奥部から下方へ垂下される垂下壁と、この垂下壁の下端から前方へ下端ほど低位となる傾斜壁とを一体に備えてなる防水処理用打ち込み型枠。
【請求項2】
水平上壁の上面には、前後方向の中間に上方へ突出する凸部で形成される返し部が備わっている請求項1記載の防水処理用打ち込み型枠。
【請求項3】
水平上壁の上面の前方側は先端程下位となる傾斜面に形成されている請求項1〜2のいずれかに記載の防水処理用打ち込み型枠。
【請求項4】
少なくとも垂下壁はセパレータを取り付け可能に形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の防水処理用打ち込み型枠。
【請求項5】
長尺物に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の防水処理用打ち込み型枠。
【請求項6】
矩形状に形成され、その傾斜壁の四隅外面には面取りが施されてなる請求項1〜4のいずれかに記載の防水処理用打ち込み型枠。
【請求項7】
長尺物に形成された請求項1〜4に記載の防水処理用打ち込み型枠が、その凹入部が工作物の外方へ開放され、水平上壁並びに傾斜壁の夫々の前端が工作物外表面とほぼ同一の仮想鉛直面上にあるようにして工作物内に一体に埋設されていることを特徴とする防水層の端部処理構造。
【請求項8】
矩形状に形成され傾斜壁の四隅外面には面取りが施されてなる請求項1〜4記載の防水処理用打ち込み型枠が、その凹入部が工作物の外方へ開放され、水平上壁並びに傾斜壁の夫々の前端が工作物外表面とほぼ同一の仮想鉛直面上にあるようにして工作物内に一体に埋設されていることを特徴とする防水層の端部処理構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−150169(P2009−150169A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330324(P2007−330324)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)