説明

防汚シャツ

【課題】衿付きシャツにおいて、汚れが付きやすい衿部、カフス部について代替えパーツと容易に交換でき、しかも着用感を損なわない、清潔な衿付きシャツを提供する。
【解決手段】衿付きシャツにおいて、シャツ本体に接着剤により接着された、台衿と上衿から構成される衿部パーツおよび/またはカフス部パーツを有するシャツ。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、皮膚との摩擦などにより、汚れがつきやすかったり、すり切れたりしやすい衿部、カフス部をパーツとして取り替え可能であり、また汚れが付きにくくするため、フッ素化合物やポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体やオルガノポリシロキサンを繊維表面に固着させた布帛を少なくとも衿部パーツ、カフス部パーツに使用したシャツに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、衿付きシャツは、衿部や袖口が皮膚と直接触れ、首を動かしたり、手を動かすことによる摩擦により、たんぱく質および油脂を含んだ表皮角質汚れが付着しやすく、また、このような油汚れに更に大気中の塵埃などが付着し、いったん付着した汚れは通常の洗濯ではなかなか落ちにくく、シャツ本体よりも汚れが目立ちやすいという問題があった。また、衿部はネクタイなどによってしめつけられることが多く、袖口は机など堅い物との接触が多いため短期間のうちに、すりきれが発生しやすいといった問題があった。
【0003】これら問題を解決すべく一般に防汚加工としては繊維にポリエチレングリコールなど親水基を有する親水性樹脂を付与し、洗濯時に汚れを落ちやすくしたりする方法、また、油汚れの付きにくさと落ち安さの両方の性能を満足するため、親水基を含有した撥水撥油樹脂なども提案されており(特開平3−70757号公報)、また、第1工程で親水基を付与し第2工程で撥水撥油樹脂を付与する方法(特開平3−39880号公報)などが提案されている。
【0004】ただ単に、親水性樹脂が付与されたものについては、水性汚れには効果があるものの皮脂の油成分などが除々に蓄積された汚れは着用を繰り返すうち、繊維内部にまで浸透し、洗濯しても除去することが困難になってくるものである。
【0005】また、親水基を含有した撥水撥油樹脂などを付与したものについては油成分を含んだ汚れは付きにくく、洗濯により汚れは除去しやすいものの、架橋剤や触媒を使用しても十分な洗濯耐久性が得られていないのが現状である。
【0006】アイロンがけの時に糊剤をスプレー等で塗布し、着用により付着した汚れを洗濯時に糊剤と一緒に脱落させる方法も特許第2575844号公報で提案されているが、糊剤を多量に付与することが必要であり風合い硬化をまねき着用感が悪くなるという問題がある。
【0007】これらは、いずれも効果が十分でないため、残量した汚れが除々に蓄積されるため最も汚れ付着が多い衿部やカフス部の汚れが目立つものである。
【0008】また、シャツ本体と衿部を任意に接合・分割可能な衿付きシャツ(特開平8−49101号公報)が提案されているが、衿部の取り付けをボタン、マジックテープ(登録商標)で行うため衿部が肉厚となり、着用感が悪い上、ボタン部分またはマジックテープ部に凹凸が生じ、首を動かした時の摩擦により、凸部に接圧がかかり汚れが付着しやすいものであった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来かかる技術の背景に鑑み、衿付きシャツにおいて、汚れが付きやすい衿部、カフス部について代替えパーツと容易に交換でき、しかも着用感を損なわない、清潔な衿付きシャツを提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のシャツの一態様は、衿付きシャツにおいて、シャツ本体に接着剤により接着された、台衿と上衿から構成される衿部パーツおよび/またはカフス部パーツを有するシャツである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のシャツにおいては、台衿と上衿から構成される衿部パーツまたはカフス部パーツを有するものである。この衿部パーツ、カフス部パーツは、別に作製された代替えパーツと交換することができるものである。代替えパーツの数は、特に限定されるものではないが、縫製コスト等を考慮すれば2〜3個が好ましく、デザインなどは全く同一でもよく、また、着用する時と場所に適応できるよう異なったデザインであっても何ら差し支えない。
【0012】衿部パーツは、シャツ本体に接合されずに縫製される以外は通常の衿と同様の縫製でよく、図1に示すように台衿(A)、上衿(B)からなる。また、カフス部パーツもシャツ本体に接合されずに縫製される以外は通常の縫製でよく、図2に示すようなものである。
【0013】シャツ本体は、衿部を取り付けるため図3(C)のごとく台衿を接着させるためののりしろ部分を有するものである。
【0014】これら衿部パーツまたはカフス部パーツは、汚れの主成分である皮脂の油成分や汗などの汚染物質が、繊維表面に付着するのを防止するため、フッ素化合物を繊維表面に固着させた布帛で構成されているものであることが好ましい。
【0015】ここでフッ素化合物とは、ポリフルオロアルキル基を含有する化合物が好ましく、より好ましくはその樹脂骨格の一部にOH基やCOOH基などの親水基を有するものを用いることができる。親水基を有することにより単に汚れを付きにくくするだけではなく、洗濯時には、洗濯液を取り込みやすく、汚れを落としやすくするものである。
【0016】特によごれが付きやすい衿部や、カフス部の繊維表面にフッ素化合物を固着させることにより、汚れの蓄積を少なくするものである。
【0017】フッ素化合物を繊維に固着させる方法は、特に限定されるものではなく、パッディング法、スプレー法などを採用できる。
【0018】フッ素化合物の付着量は、繊維重量に対し固形分で0.01〜10%付着していることが好ましく、風合い、性能等から0.1〜3.0%がさらに好ましい。
【0019】フッ素化合物を繊維表面に固着させるため、架橋剤等が使用されることは何ら差し支えなく、特にアミノプラスト樹脂、多官能ブロックイソシアネート含有ウレタン樹脂などは耐久性を向上させるのに有効である。
【0020】また、一般に用いられる処理剤、たとえばポリアミン系やグアニジン系帯電防止剤、アミノやシリコン系柔軟剤、紫外線吸収剤、消臭剤等を併用して使用されていても問題ない。
【0021】また、衿部パーツまたはカフス部パーツは、繊維表面を親水基が覆い洗濯水を取り込みやすくし、付着した油成分やたんぱく質、汗などの汚染物質を落としやすくするため、ポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体を繊維表面に固着させた布帛で構成されていることが好ましい。
【0022】ポリアルキレングリコールは、好ましくは分子中に−Cn2nO−(n=2〜4)なる繰り返し単位を有し分子量が300〜40000の範囲にあるのもの、より好ましくは1000〜10000の範囲にあるものを用いることができる。ポリエチレングリコール、ポリプレピレングリコールまたはこれらのブロックポリマを好ましく使用できる。分子量が300に満たないと耐久性が不十分となる傾向があり、分子量が40000を越えると分散性が低下する傾向にある。
【0023】また、芳香族ジカルボン酸とは、例えばテレフタル酸またはテレフタル酸の低級アルキルエステルおよびイソフタル酸のうち少なくともいずれか、または、イソフタル酸の低級アルキルエステルを好ましく用いることができる。
【0024】また、アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどを好ましく用いることができる。
【0025】ポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体において各々のブロック共重合モル比は、1〜31:1:2〜3のものが防汚性の面からみて好ましい。ブロック共重合体は、ノニオン系またはアニオン系の界面活性剤を用いて水に分散させるとよい。
【0026】ブロック共重合体を繊維に固着させる方法としては、特に限定されるものではなく、ブロック共重合体を含む水分散液中で処理する方法や、パッディング法、スプレー法などがあげられる。
【0027】ブロック共重合体の付着量は、0.02%以下では、防汚性の観点から十分出なく5%以上では、生地のぬめりがおこり、染色堅牢度も低下する傾向にある。
【0028】衿部やカフス部の汚れは、油成分やたんぱく質などに加え大気浮遊の塵埃なども付着し、汚れをより目立ちやすくしているものである。
【0029】このようなことから、繊維表面を粘着性の少ない皮膜で覆い、塵埃などの粒子系汚染物を付きにくくするため、衿部パーツまたはカフス部パーツが、オルガノポリシロキサンを繊維表面に固着させた布帛で構成されていることが好ましい。
【0030】また、本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、下記一般式[I]で表されるものが好ましい。
【0031】RSiO3/2 [I](式中、Rはアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基および置換アリール基からなる群から選ばれる基を表す。)オルガノポリシロキサンは、式[I]で示される三官能シロキサンからの単位を必須構成単位とするものが好ましく、分子量は1000〜100000の樹脂皮膜を形成するものが好ましい。
【0032】オルガノポリシロキサンを繊維に固着させる方法は、特に限定されるものではないが、パッディング法、スプレー法があげられる。
【0033】この際、一般に用いられる処理剤、たとえばポリアミン系やグアニジン系帯電防止剤、柔軟剤、紫外線吸収剤、消臭剤やスリップ防止としてコロイダルシリカ等を併用して使用されていても問題ない。
【0034】また、繊維表面に固着させるため、架橋剤等が使用されることは何ら差し支えなく、特にアミノプラスト樹脂が好ましい。
【0035】オルガノポリシロキサンの付着量は、繊維重量に対し固形分で、0.01〜5%付着しているのが好ましく、0.1〜3%が更に好ましい。0.01%以下では、防汚性の観点から十分出なく5%以上では、風合いが硬くなる傾向にある。
【0036】衿部やカフス部の汚れは洗濯しても落ちずに残った汚れが、除々に蓄積し顕在化してくるものと推察されるが、フッ素化合物やポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体、オルガノポリシロキサンを繊維表面に固着させた布帛で構成された衿部パーツ、カフス部パーツであれば、汚れの蓄積度合いが少なくなるうえ、各々パーツだけを自由に取り替えることができるため、長期間清潔なシャツとして維持することができる。
【0037】本発明においては、シャツ本体と衿部パーツ、カフス部パーツが、接着剤で接着されている。
【0038】接着剤は水溶性接着剤であると、洗濯時に洗濯槽内で自動的にシャツ本体と衿部パーツ、カフス部パーツを分離することもできるので好ましい。接着剤としては、特に限定されるものではないが、アクリル変性樹脂、酢酸ビニル変性樹脂、ポリウレタン変性樹脂等が好ましく、特に接着性と水溶性の観点からアクリル酸とエチルアクリレートまたはブチルアクリレートの共重合体などのアクリル変性樹脂が好ましい。
【0039】接着剤の粘度は、均一に塗布して接着力を得る観点から、10〜1000ポイズの範囲が好ましい。
【0040】塗布方法は、ハケ等で直接塗布してもよいが、市販の糊剤等のようにポリエチレン容器に入れ逆さまにして容器を押さえスポンジ等を介して塗布すればよい。
【0041】衿部パーツでは、図4(D)の首に接触しない方側に、またカフス部パーツでは図5(E)の腕に接触しない方側に接着剤が付着するように接着剤を塗布し、アイロン等で乾燥させればよい。
【0042】着用後、洗濯した際に、接着剤は水溶性であるため、衿部パーツ、カフス部パーツはシャツ本体から容易に分割され、付着していた接着剤もきれいに洗浄できるものである。
【0043】衿部パーツ、カフスパーツは、着用・洗濯のつど代替えパーツと交換してもよく、また同じ物を何回か使用し、汚れやすりきれが目立ちはじめる前に新しい代替えパーツと交換してもよい。代替えパーツを交換することにより、衿部やカフス部だけ、汚れやすりきれが発生することなく、清潔な衿付きシャツを着用することができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例で本発明をさらに詳細に説明する。
【0045】[実施例1]ポリエステル65%、綿35%からなる目付170g/m2 のブロードを使用し、図1R>1の衿部パーツを2つ、図2のカフス部パーツを左右各々2つずつ、図3のようにシャツ本体とを縫製した。
【0046】これら衿部パーツとカフス部パーツとをアクリル変性樹脂を用い図6のようにシャツ本体に接着して長袖カッターシャツを得た。
【0047】1日10時間着用し、JIS L 103法にて洗濯したのち風乾、分割された衿部パーツ、カフス部パーツとは別の代替えパーツを、アクリル変性樹脂を用い図4のように接着した。このように60日間代替えパーツを交互に取り替え着用した。
【0048】シャツ本体と同様に、衿、袖口に汚れが目立つことはなかった。
【0049】[実施例2]実施例1と同様のブロードに下記条件でフッ素化合物を固着させた以外は実施例1と同様の縫製、着用を行った。
【0050】
フッ素化合物 アサヒガードAG−780(明成化学工業(株)製) 50g/L アミノプラスト樹脂 スミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製) 3g/L アミノプラスト樹脂の触媒 スミテックスアクセレレータACX(住友化学工業(株)製) 0.2g/L マングル絞り率 70% 乾燥 120℃×2分 熱処理 180℃×1分シャツ本体と同様に、衿、袖口に汚れが目立つことはなかった。
【0051】[実施例3]実施例1と同様のブロードに下記条件でフッ素化合物を固着させた以外は実施例1と同様の縫製、着用を行った。
【0052】
ポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコール のブロック共重合体 TO−SR−1(高松油脂(株)製) 100g/L マングル絞り率 70% 乾燥 120℃×2分 熱処理 180℃×1分シャツ本体と同様に、衿、袖口に汚れが目立つことはなかった。
【0053】[実施例4]実施例1と同様のブロードに下記条件でフッ素化合物を固着させた以外は実施例1と同様の縫製、着用を行った。
【0054】
オルガノポリシロキサン TSG−888(高松油脂(株)製) 50g/L アミノプラスト樹脂 スミテックスレジンM−3(住友化学工業(株)製) 3g/L アミノプラスト樹脂の触媒 スミテックスアクセレレータACX(住友化学工業(株)製) 0.2g/L マングル絞り率 70% 乾燥 120℃×2分 熱処理 180℃×1分シャツ本体と同様に、衿、袖口に汚れが目立つことはなかった。
【0055】[比較例1]実施例1と同様の生地を使用し、衿部、カフス部が一体となった長袖カッターシャツを縫製した。
【0056】1日10時間着用し、JIS L 103法にて洗濯したのち風乾した。このように60日間着用、洗濯を繰り返した。
【0057】シャツ本体の汚れは、目立たないものの衿部、カフス部は汚れが蓄積され、上衿の折り山部分は摩擦により繊維がすり切れ毛羽が発生していた。
【0058】[比較例2]実施例2と同様の生地を使用し、衿部、カフス部が一体となった長袖カッターシャツを縫製した。
【0059】1日10時間着用し、JIS L 103法にて洗濯したのち風乾した。このように60日間着用、洗濯を繰り返した。
【0060】シャツ本体と同様に、衿、袖口に汚れが目立つことはなかったが、上衿の折り山部分は摩擦により繊維がすり切れ、毛羽が発生していた。
【0061】
【発明の効果】本発明のシャツは、特に汚れやすり切れが目立ちやすい衿部パーツ、カフス部パーツの代替えパーツを有することにより、汚れが付着しやすく、蓄積しやすい衿部、カフス部を容易に取り替えられるため、長期間、清潔なシャツを維持することができる。また、水溶性接着剤で容易に接着・分割が可能であるという手軽さをも兼ね備えたシャツである。
【0062】また、フッ素化合物やポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体やオルガノポリシロキサンを固着させた繊維布帛を使用することにより、さらに汚れは付きにくくなり、着用頻度の高い、ユニフォームや、学童用シャツとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる衿部パーツの一例である。
【図2】本発明に用いられるカフス部パーツの一例である。
【図3】本発明に用いられるシャツ本体の一例である。
【図4】本発明において、衿部パーツをシャツ本体に接着する一態様を示す説明図である。
【図5】本発明において、カフス部パーツをシャツ本体に接着する一態様を示す説明図である。
【図6】本発明に係るシャツの一例である。
【符号の説明】
A:台衿
B:上衿
C:台衿を接着させるためののりしろ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】衿付きシャツにおいて、シャツ本体に接着剤により接着された、台衿と上衿から構成される衿部パーツおよび/またはカフス部パーツを有することを特徴とするシャツ。
【請求項2】少なくとも衿部パーツおよび/またはカフス部パーツがフッ素化合物を繊維表面に固着させた布帛で構成されていることを特徴とする請求項1記載のシャツ。
【請求項3】少なくとも衿部パーツおよび/またはカフス部パーツが、ポリアルキレングリコール、芳香族ジカルボン酸およびアルキレングリコールのブロック共重合体を繊維表面に固着させた布帛で構成されていることを特徴とする請求項1記載のシャツ。
【請求項4】少なくとも衿部パーツおよび/またはカフス部パーツが、オルガノポリシロキサンを繊維表面に固着させた布帛で構成されていることを特徴とする請求項1記載のシャツ。
【請求項5】前記接着剤が水溶性であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のシャツ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【図6】
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