説明

防着処理された未加硫ゴムの製造方法

【課題】 接着性の高い防着剤層が形成され、粉塵発生の問題が大幅に低減される防着処理された未加硫ゴムを、効率よく製造する方法を提供することにある。
【解決手段】 防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、金属アルコキシドおよび水を触媒の存在下で反応させて、金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を含む製造方法である。前記防着剤層形成工程に先立って、前記金属アルコキシドおよび触媒を含む防着剤原料を準備する準備工程をさらに含み、前記防着剤原料を用いて前記防着剤層を前記未加硫ゴムの表面に形成するとよい。防着処理された未加硫ゴムは、上記製造方法で得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防着処理された未加硫ゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品は、通常、次の工程により製造される。
1)まず、生ゴム(天然ゴム、合成ゴムまたはそれらの混合物)を、素練りロール、バンバリーミキサー、プラチスケーター等で素練りを行い、ゴムに可塑性を与える。
2)次に、配合剤としてのカーボンブラック、硫黄、酸化亜鉛、促進剤、老化防止剤等を素練りゴムに混入しながら、オープンロールまたはバンバリーミキサーを使用して充分に混練する。
3)その後は、ゴムの用途に応じて、成型、加硫等の工程を経て、タイヤ、チューブ等のゴム製品を製造する。
【0003】
上記3)において、ゴム製品の成形加工方法は、シート成形と押出成形とに大別される。シート成形は、ゴム生地を所定の厚さと幅に圧延して、大型のプレスで熱と圧力を加えてゴムシートを成形する加工法である。未加硫ゴムシートはカレンダーロールや押出機を使って成形される。押出成形には、ラム式とスクリュー式とがあり、ラム押出機は油圧式で、シリンダーに装てんしたゴム塊をトコロテンのように押出す成形機である。ホースやウインドシールやタイヤのチューブ等の長い連続体のゴム製品はスクリュー押出機で成形されることが多い。
このようなゴムの生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
【0004】
従来、この密着防止剤としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベントナイト等の無機粒子が、防着性に優れるために使用されている。その使用方法としては、粉末のままゴムに吹き付ける方法、粉末中を通過させる方法等のいわゆるドライ法;前記無機粒子の粉末を水に懸濁させ、その懸濁液をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法や、懸濁液中に浸漬する方法等のいわゆるウェット法等を挙げることができる。ウェット法における水の使用目的は作業性の向上の他にゴムの冷却をも兼ねている。また、押出機を使用したタイヤのチューブ等の中空で薄肉の円筒成形では、密着防止剤を混入した空気をチューブに吹き込みながら押出成形することで、円筒の内面が密着しないようにしている。
しかしながら、このような密着防止剤をゴムに塗布する際に発生する粉塵が作業環境を汚染させることが問題となっている。密着防止剤をゴム表面に付着した後、次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間に粉落ちして粉塵が発生するといった問題がある。密着防止剤は基本的にはゴム製品にとって異物であり、微量の異物でもゴム製品の物理的性質に大きな影響を与える場合があるので、密着防止剤の作業環境への粉塵飛散は極力少ないことが望ましい。粉塵発生による作業環境の汚染を抑制する方法として、局所排気装置を設置する手段もあるが、設備投資費用が必要であるし根本的な解決にはならない。このような理由から粉塵飛散が少なく、防着性に優れる密着防止剤の開発が望まれている。
【0005】
一方、従来の密着防止剤とは異なる発想で成分が構成された密着防止剤がある。たとえば、特許文献1にはポリスチレン樹脂粉体と特定の界面活性剤を用いた水溶液をゴム面に塗布して防着する方法が開示されている。この方法は無機粒子の粉末を使用していない点を特徴としているが、充分な密着防止の効果を発揮させるためには、高濃度で使用することが必要であり、その場合、加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため使用方法が限定され汎用性に乏しい。
また、特許文献2には造膜性を有する水溶性高分子30〜90重量部と陰イオン活性剤または非イオン性界面活性剤70〜10重量部とからなる防着用組成物が開示されている。この防着用組成物は、粉体を使用しないことを特徴としている。しかしながら、水溶性高分子と界面活性剤のみの組成では、防着用組成物を塗布したゴム面の滑り摩擦力が大きく作業現場でゴムが滑り難く作業性の低下が懸念される。またゴムの生産加工工程において凝集して乾固した凝固物が、ゴムに混入した場合、ゴムの練り工程でその凝固物が崩壊しないでゴム中に異物として残存し加硫ゴムの物理的性質を低下させる問題点があるため実用性にかける。
【0006】
また、特許文献3にはゴム表面に粉末状密着防止剤を散布し、次いで水溶性造膜剤を塗布し乾燥させることによって、ゴム表面に密着防止層を形成する方法が開示されている。この方法では粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ塗布する2段階の作業が必要であるため、作業効率が悪く実用性にかける。また、粉末状密着防止剤と水溶性造膜剤をそれぞれ単独で均一にゴム表面に塗布することは極めて困難である。
このように、特許文献1〜3の防着剤にはそれぞれ問題がある。したがって、粉塵が発生し、その飛散の問題を抱えつつも、従来の防着剤を使用せざるを得ないというのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1−258914号公報
【特許文献2】特開昭62−32127号公報
【特許文献3】特開昭53−61639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、接着性の高い防着剤層が形成され、粉塵発生の問題が大幅に低減される防着処理された未加硫ゴムを、効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成することによって、上記課題が解決することを見出し、本発明に到達した。
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、金属アルコキシドおよび水を触媒の存在下で反応させて、金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を含む方法である。
【0010】
前記防着剤層形成工程に先立って、前記金属アルコキシドおよび触媒を含む防着剤原料を準備する準備工程をさらに含み、前記防着剤原料を用いて前記防着剤層を前記未加硫ゴムの表面に形成すると、好ましい。
前記金属アルコキシドが、周期表の1〜16族に属する元素を含むと、好ましい。
【0011】
前記金属アルコキシドが、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Mn、Ni、Cu、Fe、Zn、W、Zr、In、Ti、Li、Na、Ca、Sr、Ba、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、VおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を含むと、好ましい。
前記金属アルコキシドが、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドから選ばれる少なくとも1種を含有すると、好ましい。
【0012】
前記触媒が、無機酸類および有機酸類から選ばれる少なくとも1種を含有すると、好ましい。
アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類およびエステル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒がさらに存在する下で、前記反応を行うと、好ましい。
【0013】
界面活性剤がさらに存在する下で、前記反応を行うと、好ましい。
前記防着剤原料が水をさらに含み、その準備後、15時間以内に前記防着剤層を前記未加硫ゴムの表面に形成すると、好ましい。
防着処理された未加硫ゴムは、上記製造方法によって得られる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、接着性の高い防着剤層が形成され、粉塵発生の問題が大幅に低減される防着処理された未加硫ゴムを、効率よく製造することができる方法である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、金属アルコキシドおよび水を触媒の存在下で反応させ、この反応で得られる金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を含む製造方法である。
本発明の製造方法では、防着剤層形成工程に先立って、金属アルコキシドおよび触媒を含む防着剤原料を準備する準備工程を行い、防着剤原料を用いて防着剤層形成工程を行ってもよい。以下、防着剤層形成工程、準備工程の順に説明する。
【0016】
〔防着剤層形成工程〕
防着剤層形成工程では、金属アルコキシドおよび水を触媒の存在下で反応させる。そして、得られる金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する。
防着剤層は、未加硫ゴム表面等で金属アルコキシドの加水分解および重縮合等の反応を行うことにより得られ、本発明で得られる防着処理された未加硫ゴムの表面には金属−酸素の3次元無機酸化物ネットワークの被膜となった防着剤層が形成されている。そのため、防着剤層は、3次元無機酸化物ネットワークの被膜が未加硫ゴム表面に密着することにより、未加硫ゴムに対する高い接着性が生じ、粉塵発生が大幅に低減される。つまり、本発明において形成される防着剤層は、粉末粒子を未加硫ゴム表面に積層させて形成する従来の防着剤層とは発想が異なり、単なる金属アルコキシド重縮合体の粉体を未加硫ゴム表面に積層させて得られる防着剤層とも発想が異なるものである。従来のように、粉末粒子を単に未加硫ゴム表面に付着し積層させて形成された防着剤層では、通常は、粉体による粉塵発生の問題は避けられない。
【0017】
ここで、上記金属アルコキシドの加水分解および重縮合等の反応が行われる場所は、未加硫ゴムの表面のみに限定されず、反応の開始は未加硫ゴムの表面以外で行い、その後に、原料の金属アルコキシドと生成物である金属アルコキシドの重縮合体が混在する反応混合物を未加硫ゴムの表面に付着させて、反応を継続することによって、防着剤層を形成してもよい。
金属アルコキシドとは、金属元素にアルコキシ基が結合した化合物である。
【0018】
金属アルコキシドに含まれる金属元素としては、たとえば、周期表の1〜16族に属する元素を挙げることができる。金属元素の具体例としては、Li、Na等の1族元素;Ca、Sr、Ba等の2族元素;Y、La、Ce等の3族元素;Ti、Zr等の4族元素;V、Nd、Ta等の5族元素;W等6族元素;Mn等の7族元素;Fe等の8族元素;Ni等の10族元素;Cu等の11族元素;Zn等の12族元素;B、Al、Ga、In等の13族元素;Si、Ge、Sn、Pb等の14族元素;P、Sb等の15族元素等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、金属元素が、Si、Ti、Al、Zr、B、Ta、P、Li、Na、Ga、Ge、Sb、Vから選ばれる少なくとも1種から構成されると、汎用性が高く好ましい。
アルコキシ基としては、たとえば、一般式ではC2n+1O(但し、nは1〜20の整数)で示される有機基等を挙げることができる。アルコキシ基の具体例としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0019】
金属アルコキシドは、官能基を有していてもよい。このような官能基としては、特に限定はないが、たとえば、アミノ基、ウレイド基、エポキシ基、スルフィド基、ビニル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、アルキル基、フェニル基、フルオロ基等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、特に限定はないが、たとえば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、ジビニロキシジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジクロロシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシ−n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、ジ(γ−アクリロイルオキシ−n−プロピル)ジ−n−プロポキシシラン、アクリロイルオキシジメトキシエチルシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリメトキシシラン、γ−ブロモプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のシリコンアルコキシド;チタンn−ブトキシド、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンn−プロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンt−ブトキシド、チタンn−ノニルオキシド、チタンi−ブトキシド、チタンメトキシプロポキシド、チタンジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタンジイソプロポキシドビス(エチルアセトアセテート)、チタン2−エチルヘキシオキシド、チタンオキシドビス(ペンタジオネート)、チタンオキシビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン、チタンアリルアセトアセテートトリイソプロポキシド、チタンビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキシド、チタンメタクリレートトリイソプロポキシド、(2−メタクリルオキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート、チタンメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリイソプロキシド、チタンメチルフェノキシド等のチタンアルコキシド;アルミニウム(III)n−ブトキシド、アルミニウム(III)s−ブトキシド、アルミニウム(III)t−ブトキシド、アルミニウム(III)エトキシド、アルミニウム(III)イソプロポキシド、アルミニウム(III)s−ブトキシドビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウム(III)ジ−s−ブトキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)ジイソプポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウム(III)エトキシエトキシエトキシド、アルミニウムヘキサフルオロペンタジオネート、アルミニウム(III)3−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピロネート、アルミニウム(III)9−オクタデセニルアセトアセテートジイソプロポキシド、アルミニウム(III)2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム(III)フェノキシド、アルミニウム(III)2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等のアルミニウムアルコキシド;ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウム2−エチルヘキシルオキシド、ジルコニウム2−メチル−2−ブトキシド、テトラキス(トリメチルシロキシ)ジルコニウム、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジイソプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート、ジルコニウムメタクリルオキシエチルアセトアセテートトリn−プロポキシド、ジルコニウム2,4−ペンタンジオネート、ジルコニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、ジルコニウムトリフルオロペンタンジオネート等のジルコニウムアルコキシド;ホウ素メトキシド、ホウ素エトキシド、ホウ素イソプロポキシド、ホウ素n−ブトキシド、ホウ素t−ブトキシド、ホウ素アリルオキシド等のボロンアルコキシド;タンタル(IV)メトキシド、タンタル(IV)エトキシド、タンタル(IV)イソプロポキシド、タンタル(IV)n−プロポキシド、タンタル(IV)n−ブトキシド、タンタル(IV)t−ブトキシド、タンタルナトリウムメトキシド、タンタル(V)トリフルオロエトキシド、タンタル(V)テトラエトキシドペンタンジオネート等のタンタルアルコキシド;トリメトキシリン、トリエトキシリン等のリンアルコキシド;リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムt−ブトキシド、リチウム2,4−ペンタンジオネート、リチウムテトラメチルヘプタンジオネート等のリチウムアルコキシド;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド;ガリウムトリエトキシド、ガリウム(III)2,4−ペンタンジオネート、ガリウム(III)2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート等のガリウムアルコキシド;ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムイソプロポキシド、ゲルマニウムn−ブトキシド、ゲルマニウムt−ブトキシド等のゲルマニウムアルコキシド;アンチモントリメトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリn−ブトキシド、アンチモントリt−ブトキシド等のアンチモンアルコキシド;バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、バナジウムトリイソブトキサイドオキシド、バナジウム(III)2,4−ペンタンジオネート、バナジウム(IV)オキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、バナジウム(IV)オキシビス(ベンゾイルアセトネート)等のバナジウムアルコキシド等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、金属アルコキシドが、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドから選ばれる少なくとも1種であると、汎用性が高く好ましい。
【0020】
触媒は、金属アルコキシドの加水分解や重縮合等の反応を促進させて、金属アルコキシドの重縮合体を効率良く得るために重要な働きをする。
触媒としては、特に限定はないが、たとえば、塩化水素(塩酸)、硫酸、硝酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、シュウ酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア(アンモニア水)等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(ネオデカノエート)スズ、ジ−n−ブチルスズ(2−エチルヘキシルマレート)スズ、ジ−n−ブチルスズ(2,4−ペンタンジオネート)スズ、ジ−n−ブチルブトキシクロロスズ、ジ−n−ブチルジアセトキシスズ、ジ−n−ブチルジラウリル酸スズ、ジメチルジネオデカノエートスズ、ジメチルヒドロキシ(オレエート)スズ、ジオクチルジラウリル酸スズ等のスズ触媒;ヘキサクロロ白金(IV)酸6六和物、ジニトロジアンミン白金(II)、テトラアンミンジクロロ白金(II)、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、トランス−ジアンミンジクロロ白金(II)、シス−ジアンミンジクロロ白金(II)、テトラアンミン白金(II)塩化物一水和物、塩化白金(II)、塩化白金(IV)(五水和物)、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(IV)酸カリウム、テトラクロロ白金(IV)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(IV)酸ナトリウム、テトラクロロ白金(IV)酸水素六水和物、テトラシアノ白金(II)酸カリウム、テトラシアノ白金(II)酸セシウム、テトラシアノ白金(II)酸ナトリウム、テトラシアノ白金(II)酸バリウム、テトラシアノ白金(II)酸ルビジウム、テトラニトロ白金(II)酸カリウム、ヘキサブロモ白金(IV)酸カリウム等の白金触媒等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。汎用性の点から、酸触媒(無機酸類、有機酸類)が好ましい。そのなかでも安価で入手しやすいことから、塩酸、硫酸、硝酸が好ましく、特に塩酸が好ましい。
【0021】
触媒の量については、特に限定はないが、金属アルコキシド100重量部に対して、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.001〜3重量部、特に好ましくは0.001〜2量部、最も好ましくは0.001〜1重量部である。触媒の量が金属アルコキシド100重量部に対して10重量部超であると、反応が急激に進行してゲル化してしまいハンドリング性が悪くなることがある。一方、触媒の量が0.001重量部未満であると、反応が遅く完全な加水分解が行われず、未加硫ゴム表面に形成する被膜(防着剤層)が不均一になり防着性が低下することがある。
水は、金属アルコキシドの加水分解や重縮合等の反応に必要な成分であり、この反応によって金属アルコキシドの重縮合体が得られる。防着剤層形成工程における反応は、未加硫ゴム表面に存在させた金属アルコキシドおよび触媒に対して水をスプレー等で噴霧して行ってもよいし、金属アルコキシドや触媒等の組合せによっては空気中に含まれる気化した状態の水(水蒸気)で行ってもよく、後述する溶媒中の水分等で行ってもよい。水の種類については、特に限定はなく、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよい。
【0022】
水の量については、特に限定はなく、空気中や溶媒中に含まれる極微量でもよいし、たとえば、未加硫ゴム表面に存在させた金属アルコキシドおよび触媒に対して水をスプレー等で噴霧する場合には、金属アルコキシド100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部でもよい。後述する準備工程おける防着剤原料が水を含む場合については、たとえば、金属アルコキシド100重量部に対して、好ましくは10〜10000重量部でもよい。
金属アルコキシドおよび水の反応は、溶媒がさらに存在する下で行ってもよい。溶媒としては、特に限定はないが、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,3−ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン等のエステル類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも汎用性の点から、溶媒としては、アルコール類、エーテル類が好ましい。
【0023】
溶媒の量については、特に限定はないが、金属アルコキシド100重量部に対して、通常1〜100000重量部、好ましくは10〜10000重量部、さらに好ましくは100〜1000重量部、特に好ましくは100〜500重量部、最も好ましくは100〜300重量部である。溶媒の量が金属アルコキシド100重量部に対して100000重量部超であると、コストが高くなることがある。一方、溶媒の量が1重量部未満であると、反応速度が遅い場合がある。
金属アルコキシドおよび水の反応は、界面活性剤がさらに存在する下で行ってもよい。界面活性剤は、未加硫ゴムに対して「濡れ」を補助する成分である。反応を界面活性剤がさらに存在する下で行うことによって、未加硫ゴム(ゴム)の表面により均一に被膜化した防着剤層が形成できる。
【0024】
ここで、「濡れ」とは、界面化学では固体または液体の表面にある一つの流体を他の液体で置換する現象と定義される。たとえば、固体/気体の界面が固体/液体の界面に置き換えられたとき、その固体は液体で濡れたという。したがって、防着剤層がゴムに対して濡れたと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/防着剤層の界面に置き換えられたことを意味する。防着剤層がゴムに対して十分濡れていないと表現するときは、ゴム/空気の界面がゴム/防着剤層の界面に完全に置き換えられていないことを意味する。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を含んでいてもよい。界面活性剤が非イオン界面活性剤および/または陰イオン界面活性剤であると好ましい。
【0025】
非イオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンひまし油;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー;アセチレングリコールおよびアセチレングリコールのポリオキシアルキレン付加物、等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、アセチレングリコールおよびアセチレングリコールのポリオキシアルキレン付加物から選ばれる少なくとも1種であると、防着性に優れた被膜(防着剤層)を形成するので好ましい。
陰イオン界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、アニオン性界面活性剤が、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩および長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種であると、防着性に優れた被膜(防着剤層)を形成するので好ましい。
【0026】
陽イオン界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0027】
界面活性剤の量については、特に限定はないが、金属アルコキシド100重量部に対して、通常1〜60重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは1〜30重量部、最も好ましくは10〜30重量部である。界面活性剤の量が金属アルコキシド100重量部に対し60重量部超であると、起泡が発生し易くなることがある。一方、界面活性剤の量が1重量部未満であると、ゴム表面に対する濡れを向上させる効果が少なく、被膜(防着剤層)が不均一になり防着性が低下することがある。
金属アルコキシドおよび水の反応は、上記で説明した触媒、溶媒、界面活性剤以外に、消泡剤や微粉末、水溶性高分子等のその他の成分がさらに存在する下で行ってもよい。
【0028】
消泡剤としては特に限定はないが、たとえば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ−t−アミルフェノキシエタノール、3−ヘプタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ−t−アミルフェノキシエタノール3−ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3−ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;シリコーン系消泡剤;鉱物油等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
微粉末としては、無機化合物、有機化合物、無機化合物/有機化合物の混合物のいずれかで構成されるものであればよく、特に限定はないが、たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピヲライト、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト;オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ドデカン酸カリウム、ドデカン酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸ナトリウム、牛脂硬化脂肪酸カリウム、ヤシ油脂肪酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム等の脂肪酸石鹸、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等の金属石鹸;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、みつろう、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、硬化ひまし油、12−ヒドロキシステアリン酸等のワックス;メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(例えば、シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂等)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;フッ素系樹脂(ETFE,PVDF);ポリスチレン樹脂、クロロポリスチレン樹脂、ポリ−α−メチルスチレン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体);塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ロジン変性マレイン酸樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリエステル樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリブタジエン;アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂;シリコーン樹脂;ケトン樹脂;キシレン樹脂;ポリビニルブチラール樹脂;ポリアミド樹脂;変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等から構成されるものが挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0029】
水溶性高分子としては特に限定はないが、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
防着剤層形成工程で用いる未加硫ゴムとしては、特に限定はないが、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、エチレンプロピレンジエン共重合体ゴム、スチレンイソプレン共重合体ゴム、スチレンイソプレンブタジエン共重合体ゴム、イソプレンブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられ、1種または2種以上を併用したものでもよい。
【0030】
未加硫ゴムは、ゴム工業で通常使用される他の配合剤を含有していてもよい。配合剤としては、特に限定はないが、たとえば、カーボンブラック、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、珪藻土等の補強充填剤;アロマ系オイル、ナフテン系オイル、フタレート系オイル、アジペート系オイル、ホスフェート系オイル、ポリエーテル系オイル、ポリエステル系オイル等の可塑剤;アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N′−イソプロピル−P−フェニレンジアミン、2−メルカプトベンツイミダゾール、マイクロクリスタリンワックス等の老化防止剤;加硫剤;加硫促進剤;加硫活性化剤等が挙げられ、それぞれ必要量配合することができる。
未加硫ゴムは、上記各成分を公知のゴム用混練機械(たとえば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等)を用いて混合することによって製造される。
【0031】
防着剤層形成工程で用いる未加硫ゴムは、好ましくは成形加工されたものであり、それを製造する際の成形加工方法やその形状等について、特に限定はない。成形加工方法としては、たとえば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等を挙げることができる。また、成形加工された未加硫ゴムの形状としては、たとえば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト、靴底等を挙げることができる。
防着剤層形成工程では、未加硫ゴムが加熱された状態にあると、金属アルコキシドの加水分解や重縮合等の反応が速やかに進行して好ましい。この場合の未加硫ゴムの温度としては、特に限定はないが、たとえば、好ましくは0〜200℃、さらに好ましくは25〜175℃、特に好ましくは50〜150℃、最も好ましくは80〜120℃である。
【0032】
防着剤層形成工程で得られる金属アルコキシドの重縮合体は、未加硫ゴム表面で金属−酸素の3次元無機酸化物ネットワークを形成している。この無機酸化物は、完全な「酸化物」だけを意味するのではなく、水酸基や、アルコキシ基等の官能基を部分的に有していてもよい。
無機酸化物の数平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは1000〜100000、さらに好ましくは5000〜80000、特に好ましくは8000〜70000、最も好ましくは10000〜50000である。無機酸化物の数平均分子量が100000超であると、未加硫ゴムの乾燥性が低下することがある。一方、無機酸化物の数平均分子量が1000未満であると、防着性が低下することがある。
【0033】
防着剤層形成工程で得られる防着剤層は、この無機酸化物を含むが、上記で説明した触媒をも含有することになる。界面活性剤や、その他の成分がさらに存在する下で、反応を行った場合は、防着剤層は、これらの界面活性剤や、その他の成分等も含有することになる。また、溶媒がさらに存在する下で反応を行った場合は、たとえば、後述の乾燥工程等によって溶媒が揮散等しなければ、防着剤層は溶媒も含有することになる。
防着剤層形成工程では、防着剤層が未加硫ゴムの表面に均一に形成されることが好ましい。そのためには、金属アルコキシド、水、触媒等や、溶媒、界面活性剤、その他の成分等の個々の物質が、未加硫ゴムの表面にそれぞれ偏りなく均一に存在するように未加硫ゴムの表面に散布されて、防着剤層が形成されるのがよい。
【0034】
本発明の製造方法では、防着剤層形成工程後に、未加硫ゴム表面を乾燥する乾燥工程をさらに実施してもよい。乾燥工程は、たとえば、熱風機やブローヒーター等から槽内に熱風を送ることで乾燥させる熱風乾燥;水分を減圧の変化で乾燥させる真空乾燥;バレル乾燥;スピン乾燥;吸引乾燥;マランゴニー乾燥;赤外線乾燥等によって実施される。これらのうちでも、熱風乾燥が、コスト安であるため好ましい。熱風乾燥する際の加熱温度については、特に限定はないが、好ましくは40〜300℃、さらに好ましくは40〜250℃、特に好ましくは50〜200℃、最も好ましくは50〜180℃である。
このようにして製造された防着処理された未加硫ゴムは、次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、防着剤層の未加硫ゴムに対する接着性が高いため、粉塵発生の問題が大幅に低減され、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
このようにして得られた防着処理された未加硫ゴムは、成型や加硫等の工程をさらに経て、たとえば、タイヤ、ホース、防振ゴム、防舷材、ベルト等の用途に用いられる。
【0035】
〔準備工程〕
準備工程は、防着剤層形成工程に先立って行われる工程であり、金属アルコキシドおよび触媒を含む防着剤原料の準備が行われる。
この防着剤原料を用いて防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を行うと、金属アルコキシドおよび触媒をそれぞれ別々に散布して、防着剤層を形成するよりも手間が省ける。また、防着剤層形成工程で用いられる金属アルコキシドに対して触媒の量はかなり少ないために、金属アルコキシドと触媒とを未加硫ゴムの表面に均一になるように散布するのは困難な場合もある。しかし、防着剤原料を用いることによって、金属アルコキシドおよび触媒の均一な散布が可能になり、その結果、防着剤層が均一に得られるようになる。
【0036】
防着剤原料は、金属アルコキシドおよび触媒を必須とし、適宜、上記で説明した溶媒、界面活性剤、その他の成分等が配合されていてもよい。金属アルコキシドおよび触媒や、溶媒、界面活性剤、その他の成分等の個々の物質の量比も上記で説明したとおりである。
防着剤原料は水をさらに含んでいてもよい。防着剤原料に含まれる水は、防着剤原料に含まれる個々の物質を均一に混和させるという溶媒と同様の働きや、金属アルコキシドと反応する反応原料として働く。
【0037】
水を含む防着剤原料中では、触媒が金属アルコキシドの加水分解や重縮合等の反応を促進させることになるので、防着剤原料の準備後、好ましくは15時間以内(より好ましくは10時間以内、さらに好ましくは8時間以内、特に好ましくは5時間以内)に防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を行うのがよい。
防着剤原料を構成する個々の物質を混合して防着剤原料を調製する方法については、特に限定はなく、容器と攪拌羽根といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。また、防着剤原料の調製は、一般的な揺動または攪拌を行える混合機を用いてもよく、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える混合機等を挙げることができる。また、混合機として、攪拌装置を組み合わせた効率のよい多機能混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)、ハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等を用いてもよい。混合機として、他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミル等の粉砕機を用いてもよい。
【0038】
防着剤原料を用いて防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する場合、防着剤原料および未加硫ゴムを接触させる方法としては、たとえば、防着剤原料(またはその希釈(水溶)液)に未加硫ゴムを浸漬させる浸漬引き上げ法(ディップコーティング方法);未加硫ゴムに防着剤原料(またはその希釈(水溶)液)を噴霧するスプレー法;フローコート法;スピンコート法、リバースコート法、フレキソ法、印刷法、バーコート法、ロールコート法、手塗り法、刷毛塗り法等を挙げることができる。
【実施例】
【0039】
以下に、防着処理された未加硫ゴムの製造方法の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
〔剥離抗力の測定〕
100℃の温度に加熱した天然ゴム試験片10×10cmに防着剤層(被膜)を形成させる。試験片が風乾したら2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置する。恒温槽から出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機テンシロン(PT−200N型、ミネベア株式会社)を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/mm)を測定する。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性(防着力)が高い。剥離抗力が0.05N/mm以下の場合、大きな負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができ、防着性が高い。剥離抗力が0.05N/mm超の場合、未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い。さらに剥離抗力が0.1N/mm超の場合、ゴム同士が密着して剥離が困難である。
【0041】
〔防着処理ゴムの被膜成分付着量および被膜成分飛散量〕
天然ゴム試験片10×10cmを準備し、初期重量(W)を測定する。次いで、この天然ゴム試験片を100℃の温度に加熱し、その表面に防着剤層(被膜)を形成させる。試験片が風乾したらその重量(W)を測定する。さらに試験片の各6面をたわしで15回強くこすった後の試験片の重量(W)を測定する。防着処理ゴムの被膜付着量および被膜飛散量は下記の式により計算される。
防着処理ゴムの被膜成分付着量(被膜付着量)=W−W(mg/100cm
防着処理ゴムの被膜成分飛散量(被膜飛散量)=W−W(mg/100cm
【0042】
防着処理ゴムの被膜成分付着量が大きいほど、ゴムに混入する防着剤原料の量が多くなり、ゴムの物理的性質に悪影響を与える。被膜成分付着量が10mg/100cm以下であれば、ゴムの物理的性質に大きな悪影響を与えず、好ましい。被膜成分付着量が10mg/100cm超であれば、ゴムの物理的性質に悪影響を与える場合があり好ましくない。
防着処理ゴムの被膜飛散量が大きいほど、ゴム表面から脱落した粉塵による飛散問題が大きくなる。被膜成分飛散量が1mg/100cm以下であれば、粉塵発生の問題を大幅に低下できて、好ましい。被膜成分飛散量が1mg/100cm超であれば、ゴム表面から粉落ちした粉塵による飛散が発生し好ましくない。
【0043】
〔測定用ゴム〕
全ての測定には、未加硫の天然ゴムを用いた。用いた天然ゴムの比重は0.92であり、ムーニー粘度は45〜150である。
【0044】
〔実施例1〕
テトラエトキシシラン10gを100℃に加熱された天然ゴム試験片の表面に均一にスプレー噴霧した後、10%濃度の塩酸1g(塩化水素0.1gおよび水0.9g)をさらに均一にスプレー噴霧し、風乾して、表面に防着剤層が形成され防着処理されたゴム試験片を得た。
防着処理されたゴム試験片2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.008N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。被膜付着量は5.0mg/100cm、被膜飛散量は0.1mg/100cmで、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されていた。
【0045】
〔実施例2〜5〕
実施例2〜5では、実施例1において、表1に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に防着処理されたゴム試験片をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。実施例2〜5では、実施例1と同様に、未加硫ゴムであるゴム試験片に対する接着性に優れ脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されており、防着性に優れていた。
【0046】
【表1】

【0047】
〔実施例6〕
トリメチルエトキシシラン10gおよびエタノール1gの混合液を100℃に加熱された天然ゴム試験片の表面に均一にスプレー噴霧した後、10%濃度の塩酸1.0g(塩化水素0.1gおよび水0.9g)をさらに均一にスプレー噴霧し、風乾して、表面に防着剤層が形成され防着処理されたゴム試験片を得た。
防着処理されたゴム試験片2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.009N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。被膜付着量は4.9mg/100cm、被膜飛散量は0.1mg/100cmで、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されていた。
【0048】
〔実施例7〜10〕
実施例7〜10では、実施例6において、表2に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例6と同様に防着処理されたゴム試験片をそれぞれ得て、物性等も実施例6と同様に評価した。その結果を表2に示す。実施例7〜10では、実施例6と同様に、未加硫ゴムであるゴム試験片に対する接着性に優れ脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されており、防着性に優れていた。
【0049】
【表2】

【0050】
〔実施例11〕
水100gに対して、硫酸0.1g、メチルトリメトキシシラン100g、POE(25)ラウリルエーテル5g、ジセチルスルフォサクシネートソーダ塩5gを攪拌しながら添加し、室温で1時間均一に混合攪拌して、防着剤原料を得た。ここで、POE(25)ラウリルエーテルは、ポリオキシエチレン(繰返単位数:25)の片末端にラウリル基が結合したポリエーテルを意味する。
得られた防着剤原料に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げ、風乾して、表面に防着剤層が形成され防着処理されたゴム試験片を得た。
防着処理されたゴム試験片2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.009N/mmであり、負荷なく剥離することができ、防着性が優れていた。被膜付着量は5.0mg/100cm、被膜飛散量は0.1mg/100cmで、脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されていた。
【0051】
〔実施例12〜17〕
実施例12〜17では、実施例11において、表3に示すように組成をそれぞれ変更する以外は実施例11と同様にして、防着処理されたゴム試験片をそれぞれ得て、物性等も実施例11と同様に評価した。その結果を表3に示す。実施例12〜17では、実施例11と同様に、それらは未加硫ゴムであるゴム試験片に対する接着性に優れ脱落による粉塵発生の問題が大幅に低減されており、防着性に優れていた。
【0052】
【表3】

【0053】
〔比較例1〕
ベントナイト50g、カオリン20g、炭酸カルシウム30g、POE(25)ラウリルエーテル10gを均一に混合して、未加硫ゴム用防着剤を得た。さらに、イオン交換水100gに、前記未加硫ゴム用防着剤3gを攪拌しながら加え、水中に均一に分散した未加硫ゴム用防着剤の分散液を得た。
得られた分散液に100℃に加熱された天然ゴム試験片を浸漬してすぐに引き上げ、表面を乾燥させて、防着処理されたゴム試験片を得た。
防着処理されたゴム試験片2枚を重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置した。剥離抗力は0.08N/mmで防着性に優れなかった。被膜付着量は12.1mg/100cm、被膜飛散量は1.2mg/100cmで、被膜付着量が10mg/100cm超、被膜飛散量が1mg/100cm超であり、脱落による粉塵飛散が発生した。
比較例1の結果は、実施例1〜17の結果と比較して、防着性および脱落による粉塵飛散が劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルコキシドおよび水を触媒の存在下で反応させて、金属アルコキシドの重縮合体からなる防着剤層を未加硫ゴムの表面に形成する防着剤層形成工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記防着剤層形成工程に先立って、前記金属アルコキシドおよび触媒を含む防着剤原料を準備する準備工程をさらに含み、前記防着剤原料を用いて前記防着剤層を前記未加硫ゴムの表面に形成する、請求項1に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記金属アルコキシドが、周期表の1〜16族に属する元素を含む、請求項1または2に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記金属アルコキシドが、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Mn、Ni、Cu、Fe、Zn、W、Zr、In、Ti、Li、Na、Ca、Sr、Ba、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、VおよびNdから選ばれる少なくとも1種の元素を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項5】
前記金属アルコキシドが、シリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドから選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項6】
前記触媒が、無機酸類および有機酸類から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜5に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項7】
アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類およびエステル類から選ばれる少なくとも1種の溶媒がさらに存在する下で、前記反応を行う、請求項1〜6に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項8】
界面活性剤がさらに存在する下で、前記反応を行う、請求項1〜7に記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項9】
前記防着剤原料が水をさらに含み、その準備後、15時間以内に前記防着剤層を前記未加硫ゴムの表面に形成する、請求項2〜8のいずれかに記載の防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法によって得られる、防着処理された未加硫ゴム。