説明

防虫剤で仕上げた繊維およびシート状布地

【課題】防虫剤が実際に虫を撃退するために利用される、即ち、繊維に吸収されないが、十分長期にわたって有効なままであり、かなり多数回の洗濯に洗い流されることなく耐えるように、防虫剤を布地に適用する。
【解決手段】(a)マイクロカプセル化防虫剤および(b)バインダーの混合物で仕上げたことを特徴とする繊維およびシート状布地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、布地の処理、特に、虫による刺咬を防いで防護するための仕上げをした繊維およびシート状布地、布地を処理するための特定混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、単細胞生物(plasmodiae)によって引き起こされ、ハマダラカ(アノフェレス)によって媒介される、熱帯および亜熱帯地方特有の生命にかかわる伝染病である。plasmodiaeは赤血球を攻撃し、そこで増殖する。病原菌が成熟すると、赤血球が破裂し、新たなplasmodiaeを放出する。赤血球の破壊は発熱を生ずる。新たなplasmodiaeは次々と赤血球を攻撃し、そこで再び増殖する。薬物療法を行わなければ、これがサイクルとなり、一般に、循環系の虚脱または肺水腫によって死に至る。
【0003】
世界保健機関(WHO)の推定によると、世界全体で1年間に約1億1,000万人がマラリアに冒され、それが原因で最大270万人が死亡している。このように、マラリアは、世界で結核に次ぐ第2の最も一般的な病気となっている。観光旅行の増加に伴って、旅行者でさえも、特に危険な熱帯熱マラリアにかかることが増えてきている。現在ヨーロッパでは、マラリアが年間約12,000件発生している。
【0004】
マラリアは、十分早い時期に発見されれば常に成功裏に治療することができる。関連地域によって病原体の耐性の危険性は増加するが、(特に、センダンの樹皮から予め得たキニーネ化合物を用いて)マラリアを予防することも可能である。しかしながら、マラリアに対する最良の予防法は、まず第1に刺咬されないことである。ハマダラカは、夕暮れおよび夜に活動し、湿地帯および淀んだ水の中および周辺に生息しているので、マラリア感染の危険性は特に雨期末期に高まる。この時期、ハマダラカが産卵できる小さい水溜まりが、熱帯地方のあちこちに形成される。その後、ハマダラカは爆発的に繁殖する。しかしながら、乾期の間により高地へ単に移動するだけでは、感染地域でマラリア発病の危険性に対抗することは必ずしも可能ではない。同様のことが、虫による刺咬によってのみ媒介される他の病気、例えば西ナイル熱またはレユニオンでの流行で知られているチクングンヤ熱についても言える。
【0005】
むしろ、虫による刺咬によって生じる感染を、確実に防ぐことができるかまたは少なくとも著しく減少することができる製剤に対する必要性が存在する。既知の防虫剤は、セスキテルペン、ジエチルトルアミド(DEET)、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR 3535)、および既知の「Autan」混合物の成分でもあるヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート(Bayrepel)を包含する。しかしながら、特に有効な防虫剤はピレスロイド類の化合物であり、これは、その名で知られている菊の毒素に非常に類似している。この群の中で、化合物ペルメトリン:
【化1】

が特に有効であることが知られている。
【0006】
これらの多くの防虫剤は、例えばクリーム、ローションまたはスプレーの状態で、直接皮膚に塗布される。しかしながら、これらは、容易に洗い流されたり或いは発汗によって分解されたりして、その有効性を早期に失ってしまい、かつ、十分に皮膚科的に適合でかつ毒物学的に安全な製品のみが、この特定の用途に適していると見なされ得るという問題点がある。従って、特に有効な天然の菊抽出物、例えば除虫菊は、一般にこれらの理由から除外される。なぜなら、これは水によって加水分解され、日光によって分解されるからである。
【0007】
局所塗布の代替法として、防虫剤による布地の仕上げがある。防虫剤は、一般に含浸によって適用される。しかしながら実際には、これは有効ではない。例えばパンティーストッキングに適用する場合、活性成分量は、広いメッシュ素材を考慮すると非常に少量となり、防虫剤自体が既に不十分である。クローザーメッシュ布地、即ちスラックス、シャツ、Tシャツ、並びに例えば天幕、蚊帳および偽装網では、その繊維に防虫剤が吸収されないので、活性成分は非常に迅速に洗い流されるか、または防虫のために全く利用されない。繊維または布地への直接塗布は多量の活性成分を必要とし、作業安全性の観点から特別な要求が課されるという別の欠点がある。
【0008】
これに関しては、米国特許第5,229,122号明細書(Burroughs)を参照されたい。同特許は、木材、材料および建造物の処理に使用するカプセル化および非カプセル化ピレスロイド活性成分の混合物に関する。欧州特許第1359247号明細書(Cognis)は、マイクロカプセル化美容活性成分およびバインダーで仕上げたシート状布地を開示している。
【特許文献1】米国特許第5,229,122号明細書
【特許文献2】欧州特許第1359247号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決される複雑な課題は、防虫剤が実際に虫を撃退するために利用される、即ち、繊維に吸収されないが、十分長期にわたって有効なままであり、かなり多数回の洗濯に洗い流されることなく耐えるように、防虫剤を布地に適用することである。同時に、活性成分が化学的または物理的分解から保護される適用状態を確実にする。最後に、ピレスロイドが特に容易に溶解する有機溶媒、例えばヘキサンに対する十分な耐性を有する適用状態を確実にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
(a)マイクロカプセル化防虫剤および
(b)バインダー
の混合物で仕上げたことを特徴とする繊維およびシート状布地に関する。
【0011】
意外なことに、バインダーを伴ったマイクロカプセル化防虫剤での繊維および布地の仕上げ効果によって、実地試験で、該物質が虫による刺咬に対する優れた防護を与えることが見出された。従来技術と比較して、該マイクロカプセルは繊維に強固に付着するので、2つのことが同時に達成される。第1に、活性成分が虫の撃退に実際に利用され得る。第2に、カプセル化が非常に堅牢であるため複数回の洗濯サイクルに耐えるが、活性成分が意図的に遅延して放出される。別の利点としては、マイクロカプセルのサイズが実質上、昆虫の刺咬器官の径と同等なことである。これによって、刺咬器官と布地が直接接触した場合、実際にカプセルが十分に作用し、活性成分を高濃度で放出し、従って昆虫を死滅させることが確実となる。また、カプセル化は、敏感な活性成分が物理的または化学的過程によって分解せず、従ってその有効性を失わないことを確実にする。カプセルの適用は、特に工業上の衛生面から考えると簡単かつ安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
防虫剤
本発明に従った繊維および布地を仕上げるためのマイクロカプセルの状態で使用され得る防虫剤は、例えば、セスキテルペン、ジエチルトルアミド(DEET)、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR 3535)、ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート、特にピレスロイドおよびこれらの混合物を包含する。ピレスロイドの典型例は、5-ベンジル-3-フリルメチル (+)-シス-(1R,3S,E)-2,2-ジメチル-3-(2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロチオフェニリデンメチル)-シクロプロパンカルボキシレート、6-クロロピペロニル 2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロペニル)-シクロプロパンカルボキシレート、アクリナトリン、アレスリン、ビフェントリン、ビオレスメトリン、シスメトリン、シクレトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、ジメトリン、エンペントリン、エスフェンバレレート、フェンフルトリン、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルメトリン、フルバリネート、フレトリン、ハルフェンプロックス、イミプロトリン、メチル-シス/トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシレート、特に、ペルメトリンおよびこれらの混合物である。
【0013】
マイクロカプセル
「マイクロカプセル」または「ナノカプセル」は、当業者によって、少なくとも1つの連続した膜によって包まれた少なくとも1つの固体または液体コアを有し、約0.0001〜約0.5mm、好ましくは0.001〜0.01mm(即ち1〜10μm)の径を有する球状集合体であると理解される。より正確には、それらは、フィルム形成ポリマーで被覆されている良好に分散した液相または固相である。その製造方法では、乳化およびコアセルべーションまたは界面重合後、物質上をポリマーが被覆し、カプセル化する。別の方法では、溶融ワックスをマトリックス(「マイクロスポンジ」)に吸収させ、それをマイクロ粒子として更にフィルム形成ポリマーで被覆してもよい。第3の方法では、粒子を異なった電荷の高分子電解質層で交互に被覆する(layer-by-layer法)。微視的に小さいカプセルを、粉体と同様に乾燥することができる。シングルコアマイクロカプセルの他に、マイクロスフェアとしても知られているマルチコア集合体もあり、これは、連続した膜物質内に分布する2つ以上のコアを有する。また、シングルコアまたはマルチコアマイクロカプセルは、更なる第2、第3などの膜で覆われていてもよい。
【0014】
膜は、天然、半合成または合成物質からなってよい。天然の膜物質は、例えば、アラビアゴム、寒天、アガロース、マルトデキストリン、アルギン酸およびその塩、例えばアルギン酸ナトリウムまたはアルギン酸カルシウム、脂肪および脂肪酸、セチルアルコール、コラーゲン、キトサン、レシチン、ゼラチン、アルブミン、セラック、多糖類、例えばデンプンまたはデキストラン、ポリペプチド、タンパク質水解物、スクロースおよびワックスである。半合成の膜物質は、とりわけ化学的変性セルロース、特にセルロースエステルおよびエーテル、例えば酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース、並びにデンプン誘導体、特にデンプンエーテルおよびエステルである。合成の膜物質は、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンのようなポリマーである。
【0015】
既知のマイクロカプセルの例は、以下の市販品である(膜物質を括弧内に示す):Hallcrest Microcapsules(ゼラチン、アラビアゴム)、Coletica Thalaspheres(海洋性コラーゲン)、Lipotec Millicapseln(アルギン酸、寒天)、Induchem Unispheres(ラクトース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Unicerin C30(ラクトース、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Kobo Glycospheres(変性デンプン、脂肪酸エステル、リン脂質)、Softspheres(変性寒天)、Kuhs Probiol Nanospheres(リン脂質)、PrimaspheresおよびPrimasponges(キトサン、アルギン酸塩)、並びにPrimasys(リン脂質)。
【0016】
キトサンマイクロカプセルおよびその製造方法は、先の特許出願の対象である[国際特許公開第01/01926号公報、同第01/01927号公報、同第01/01928号公報、同第01/01929号公報]。膜および活性成分含有マトリックスからなり、平均径0.0001〜5mm、好ましくは0.0005〜0.05mm、特に0.001〜0.01mmを有するマイクロカプセルは、例えば下記工程によって得ることができる。
【0017】
(a1)ゲル形成剤、キトサンおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(a2)任意にマトリックスを油相に分散する工程、
(a3)任意分散したマトリックスをアニオン性ポリマー水溶液で処理し、その過程で任意に油相を除去する工程、
または
(b1)ゲル形成剤、アニオン性ポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(b2)任意にマトリックスを油相に分散する工程、
(b3)任意分散したマトリックスをキトサン水溶液で処理し、その過程で任意に油相を除去する工程、
または
(c1)アニオン性ポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(c2)マトリックスを油相に分散する工程、
(c3)分散マトリックスをメラミン/ホルムアルデヒド樹脂または無水マレイン酸でカプセル化する工程、
または
(d1)乳化剤の存在下、活性成分を油相で処理してo/wエマルションを形成する工程、
(d2)このように得られたエマルションをアニオン性ポリマー水溶液で処理する工程、
(d3)このように得られたマトリックスをキトサン水溶液と接触させる工程、
(d4)このように得られたカプセル化生成物を水相から取り出す工程、
または
異なった電荷の高分子電解質層で交互に活性成分を被覆する(layer-by-layer法)工程。
【0018】
ゲル形成剤
本発明の目的に好ましいゲル形成剤は、40℃超の温度で、水溶液中ゲルを形成できる物質である。このようなゲル形成剤の典型例は、ヘテロ多糖類およびタンパク質である。好ましい熱ゲル化ヘテロ多糖類はアガロースであり、紅藻類から得られる寒天の状態で、30重量%までの量の非ゲル形成アガロペクチンと共に存在することができる。アガロースの主成分は、β-1,3-およびβ-1,4-グリコシド結合を交互に有するD-ガラクトースおよび3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースの直鎖多糖類である。ヘテロ多糖類は、好ましくは110,000〜160,000の分子量を有し、無味無臭である。適当な代替物は、ペクチン、キサンタン(キサンタンガムを含む)およびこれらの混合物である。他の好ましいタイプは、80℃未満で融解せず、40℃超で再び凝固するゲルを1重量%水溶液中でなお形成するものである。熱ゲル化タンパク質の例は、種々のゼラチンである。
【0019】
カチオン性ポリマー
適当なカチオン性ポリマーは、例えばカチオン性セルロース誘導体、例えばAmercholからPolymer JR 400(登録商標)の商品名で得られる四級化ヒドロキシエチルセルロース、カチオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えばLuviquat(登録商標)(BASF)、ポリグリコールとアミンとの縮合生成物、四級化コラーゲンポリペプチド、例えば、ラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(Lamequat(登録商標)L、Gruenau)、四級化小麦ポリペプチド、ポリエチレンイミン、カチオン性シリコーンポリマー、例えば、アモジメチコン、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンとのコポリマー(Cartaretine(登録商標)、Sandoz)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドとのコポリマー(Merquat(登録商標)550、Chemviron)、ポリアミノポリアミドおよびその架橋水溶性ポリマー、カチオン性キチン誘導体、例えば、四級化キトサン、場合により微晶質分布のもの、ジハロアルキル(例えばジブロモブタン)とビス-ジアルキルアミン(例えばビス-ジメチルアミノ-1,3-プロパン)との縮合生成物、カチオン性グアーガム、例えば、CelaneseのJaguar(登録商標)CBS、Jaguar(登録商標)C-17、Jaguar(登録商標)C-16、四級化ポリマーアンモニウム塩、例えば、MiranolのMirapol(登録商標)A-15、Mirapol(登録商標)AD-1、Mirapol(登録商標)AZ-1である。
【0020】
キトサンがカプセル化物質として好ましく使用される。キトサンは親水コロイドに属する生物ポリマーである。化学的にはキトサンは、以下の(理想的)モノマー単位を有する分子量の異なった部分脱アセチル化キチンである。
【化2】

【0021】
生物学上のpH値で負に帯電する多くの親水コロイドとは対照的に、この条件下でキトサンはカチオン性の生物ポリマーである。正に帯電しているキトサンは、逆に帯電している表面と相互作用でき、それ故、美容用ヘアケア用品およびボディケア用品、並びに医薬品に使用される。キトサンは、キチンから、好ましくは安価な原料として多量に入手可能な甲殻類の殻残留物から製造される。Hackmannらによって初めて示された製法では、通常、キチンに、まず塩基を添加してタンパク質を取り除き、無機酸を添加して脱塩し、最後に強塩基を添加して脱アセチル化する。その分子量は広範囲に分布している。好ましいタイプは、10,000〜500,000ダルトンまたは800,000〜1,200,000ダルトンの平均分子量および/または5,000mPas未満のブルックフィールド粘度(1重量%のグリコール酸溶液)、80〜88%の脱アセチル化度、並びに0.3重量%未満の灰分を有するものである。より良好な水溶性のために、キトサンは一般にその塩、好ましくはグリコール酸塩の状態で使用される。
【0022】
油相
膜の形成前に、マトリックスを場合により油相に分散してもよい。この目的のために適当な油は、例えば、C6〜18、好ましくはC8〜10脂肪アルコールベースのゲルベアルコール、直鎖C6〜22脂肪酸と直鎖C6〜22脂肪アルコールとのエステル、分枝C6〜13カルボン酸と直鎖C6〜22脂肪アルコールとのエステル、例えば、ミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルオレエート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネートおよびエルシルエルケートである。
【0023】
また、直鎖C6〜22脂肪酸と分枝アルコール、特に2-エチルヘキサノールとのエステル、ヒドロキシカルボン酸と直鎖または分枝C6〜22脂肪アルコールとのエステル、特にジオクチルマレート、直鎖および/または分枝脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、二量体ジオールまたは三量体トリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6〜10脂肪酸ベースのトリグリセリド、C6〜18脂肪酸ベースの液体モノ-/ジ-/トリ-グリセリド混合物、C6〜22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル、C2〜12ジカルボン酸と直鎖または分枝C1〜22アルコールまたは2〜6個のヒドロキシル基を有するC2〜10ポリオールとのエステル、植物油、分枝1級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分枝C6〜22脂肪アルコールカーボネート、ゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖および/または分枝C6〜22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv(登録商標)TN)、アルキル基1個あたり6〜22個の炭素原子を有する直鎖または分枝の対称または非対称ジアルキルエーテル、エポキシド化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーン油および/または脂肪族またはナフテン族炭化水素、例えば、スクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサンも適当である。
【0024】
アニオン性ポリマー
アニオン性ポリマーの機能は、キトサンと膜を形成することである。好ましいアニオン性ポリマーはアルギン酸の塩である。アルギン酸は、以下の理想的モノマー単位を有するカルボキシル基含有多糖の混合物である。
【化3】

【0025】
アルギン酸またはアルギン酸塩の平均分子量は、150,000〜250,000の範囲である。アルギン酸塩並びにその完全および部分中和生成物は、特にアルカリ金属塩、好ましくはアルギン酸ナトリウム(「アルギン」)、並びにアンモニウム塩およびアルカリ土類金属塩であると理解される。混合アルギン酸塩、例えば、アルギン酸のナトリウム塩/マグネシウム塩またはナトリウム塩/カルシウム塩が特に好ましい。しかしながら、本発明の別の態様では、アニオン性キトサン誘導体、例えばカルボキシル化、とりわけスクシニル化生成物も、この目的のために適している。その他、5,000〜50,000ダルトンの平均分子量を有するポリ(メタ)アクリレート、および種々のカルボキシメチルセルロールも使用できる。アニオン性ポリマーに代えて、アニオン性界面活性剤または低分子量無機塩、例えばピロリン酸塩も膜形成のために使用され得る。
【0026】
アニオン性ポリマーをメラミン/ホルムアルデヒド樹脂と縮合することが望ましい場合は、ポリビニルメチルエーテル(PVM)の使用を推奨する。アニオン性ポリマーとしてポリビニルメタクリレートを使用する場合、カプセルは、無水マレイン酸(MA)の添加によっても形成することができる。PVM/MAタイプのカプセルも全般的に好ましい。なぜなら、それらは、ヘキサンのような溶剤に対する耐性が極めて優れており、バインダー、好ましくはシリコーン、ポリウレタンおよびエチルビニルアセテートを伴うと繊維および布地に特に耐久的に付着し、そうして最適な防護が実現されるからである。
【0027】
乳化剤
適当な乳化剤は、下記群の少なくとも1つのから選ばれる、アニオン性、両性、カチオン性または好ましくは非イオン性界面活性剤である。
・直鎖C8〜22脂肪アルコール、C12〜22脂肪酸、アルキル基中に8〜15個の炭素原子を有するアルキルフェノール、およびアルキル基中に8〜22個の炭素原子を有するアルキルアミンの、エチレンオキシド2〜30molおよび/またはプロピレンオキシド0〜5mol付加生成物;
・アルキル基に8〜22個の炭素原子を有するアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、並びにそれらのエトキシル化類似体;
・ひまし油および/または水素化ひまし油のエチレンオキシド1〜15mol付加生成物;
・ひまし油および/または水素化ひまし油のエチレンオキシド15〜60mol付加生成物;
・グリセロールおよび/またはソルビタンと不飽和直鎖または飽和分枝C12〜22脂肪酸および/またはC3〜18ヒドロキシカルボン酸との部分エステル、並びにそれらのエチレンオキシド1〜30mol付加生成物;
【0028】
・ポリグリセロール(平均自己縮合度2〜8)、ポリエチレングリコール(分子量400〜5,000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えば、セルロース)と飽和および/または不飽和の直鎖または分枝C12〜22脂肪酸および/またはC3〜18ヒドロキシカルボン酸との部分エステル、並びにそれらのエチレンオキシド1〜30mol付加生成物;
・ペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステル、および/またはC6〜22脂肪酸、メチルグリコースおよびポリオール、好ましくはグリセロールまたはポリグリセロールの混合エステル;
・モノ-、ジ-およびトリアルキルホスフェート、並びにモノ-、ジ-および/またはトリ-PEG-アルキルホスフェート、並びにそれらの塩;
・羊毛ワックスアルコール;
・ポリシロキサン/ポリアルキル/ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体;
・ブロックコポリマー、例えばポリエチレングリコール-30 ジポリヒドロキシステアレート;
・ポリマー乳化剤、例えばGoodrichのPemulenタイプ(TR-1、TR-2);
・ポリアルキレングリコール;
・グリセロールカーボネート;
【0029】
・C12〜22脂肪族脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはベヘン酸、およびC12〜22ジカルボン酸、例えばアゼライン酸またはセバシン酸;
・ベタイン、例えばアルキルまたはアシル基に8〜18個の炭素原子を有する、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココアシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン、並びにココアシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネート。
【0030】
マイクロカプセルの製造方法
マイクロカプセルを製造するために、1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%のゲル形成剤(好ましくは寒天)水溶液を通常どおり調製し、還流下で加熱する。0.1〜2重量%、好ましくは0.25〜0.5重量%のカチオン性ポリマー、好ましくはキトサン、および0.1〜25重量%、特に0.25〜10重量%の活性物質を含む第2の水溶液を、沸騰温度、好ましくは80〜100℃で添加する。この混合物をマトリックスと称する。従って、マイクロカプセルの活性物質含有量は、カプセルの重量に基づいて0.1〜25重量であり得る。所望により、水不溶性成分、例えば無機顔料を一般には水性または水/アルコール性分散体の状態で粘度調整のためにこの段階で添加できる。また、活性物質を乳化または分散するために、乳化剤および/または安定化剤をマトリックスに添加することも有用であり得る。
【0031】
後のカプセル化工程において小粒子を製造するために、ゲル形成剤、カチオン性ポリマーおよび活性物質からのマトリックス調製後、マトリックスを任意に強い剪断によって非常に良好に油相に分散することができる。これに関して、油相を10〜20℃に冷却し、マトリックスを40〜60℃に加熱することが特に有利であることが分かっている。実際のカプセル化、即ち、マトリックス中のカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの接触による膜形成は、最後の必須工程で生じる。このために、油相中に任意分散したマトリックスを約1〜50重量%、好ましくは10〜15重量%のアニオン性ポリマー水溶液で洗浄し、必要に応じて、同時または後に油相を除去することが望ましい。得られる水性製剤は、一般に1〜10重量%のマイクロカプセル含有量を有する。ある場合には、ポリマー溶液が、他成分、例えば乳化剤または防腐剤を含むことが有利であり得る。
【0032】
濾過後、好ましくは約0.01〜1mmの平均径を有するマイクロカプセルが得られる。均一な粒度分布を確実にするには、カプセルを篩い分けることが望ましい。このように得られたマイクロカプセルは、製造に関する制限範囲内であれば如何なる形状であってもよいが、好ましくは実質上球状である。別の方法として、アニオン性ポリマーをマトリックスの調製に使用してもよい。この場合、カプセル化はカチオン性ポリマー、特にキトサンによって行われ得る。別の方法として、カプセル化を、カチオン性ポリマーのみを使用し、そのpK値を超えるpH値でのその凝固特性を利用して行ってもよい。
【0033】
第2の代替法では、活性成分をアニオン性ポリマーと混合し、このようにして得たマトリックスを油成分に分散する。メラミン/ホルムアルデヒド樹脂の添加後、分散体はカプセル化される。別の方法では、活性成分を油相に分散し、続いてカプセル化実施前にアニオン性ポリマーを添加する。
【0034】
本発明のマイクロカプセルの別の製造方法は、まず、油成分、水および活性成分の他に有効量の乳化剤を含むo/wエマルションを調製することを含む。マトリックスを形成するために、適当な量のアニオン性ポリマー水溶液をこの調剤に強く撹拌しながら添加する。キトサン溶液を添加すると膜が形成される。全体の工程は、好ましくは3〜4の穏やかな酸性pH下で行う。必要に応じて、pHを無機酸の添加によって調整する。膜形成後、例えばトリエタノールアミンまたは他の塩基の添加によって、pH値を5〜6に上昇させる。これによって粘度上昇が生じ、これは他の増粘剤、例えば、多糖類、特にキサンタンガム、グアー、寒天、アルギン酸塩およびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、比較的高分子量の脂肪酸ポリエチレングリコールモノ-およびジ-エステル、ポリアクリレート、ポリアクリルアミドなどの添加により補うことができる。最後に、マイクロカプセルを水相から、例えばデカンテーション、濾過または遠心分離によって分離する。
【0035】
更に別の方法では、小滴形成およびビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーによる安定化、続くメラミン/ホルムアルデヒド樹脂による架橋によって、カプセルを形成する。対応する製法は従来技術、例えばドイツ国特許公開第3512565号公報(BASF)および米国特許第4,089,802号明細書(NRC Corp.)から既知である。
【0036】
最後の代替法では、好ましくは固体、例えば結晶質のコア周囲を逆帯電した高分子電解質層で被覆することによってマイクロカプセルを形成する。欧州特許第1064088号明細書(Max-Planck Gesellschaft)を参照されたい。
【0037】
バインダー
本発明の目的に適した重合体フィルム形成バインダーは、下記群から選択され得る:
・ポリウレタン、
・ポリエチルビニルアセテート、
・重合体メラミン化合物、
・重合体グリオキサール化合物、
・重合体シリコーン化合物
・エピクロロヒドリン架橋ポリアミドアミン、
・ポリ(メタ)アクリレート、および
・重合体フルオロカーボン。
【0038】
・ポリウレタンおよびポリビニルアセテート
適当なポリウレタン(PU)およびポリエチルビニルアセテート(EVA)は、Cognis Deutschland GmbH & Co. KGからStabiflex(登録商標)およびStabicryl(登録商標)シリーズで商業的に入手可能な製品である。
【0039】
・重合体メラミン化合物
メラミン(別名:2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン)は、一般に、ジシアノジアミドの三量化、または二酸化炭素およびアンモニアの除去を伴った尿素の環化によって形成される。本発明において、メラミン類は、メラミンとホルムアルデヒド、尿素、フェノールまたはそれらの混合物とのオリゴマーまたはポリマー縮合生成物であると理解される。
【0040】
・重合体グリオキサール化合物
グリオキサール(別名:オキソアルデヒド、エタンジアール)は、銀触媒の存在下、エチレングリコールの空気での気相酸化によって形成される。本発明において、グリオキサール類は、グリオキサールの自己縮合生成物(ポリグリオキサール)であると理解される。
【0041】
・重合体シリコーン化合物
適当なシリコーン化合物は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状シリコーン、および室温で液状および樹脂様であり得るアミノ-、脂肪酸-アルコール-、ポリエーテル-、エポキシ-、フッ素-、グリコシド-および/またはアルキル-変性シリコーン化合物である。他の適当なシリコーン化合物は、ジメチルシロキサン単位数200〜300の平均鎖長を有するジメチコンと水素化シリケートの混合物であるシメチコンである。アミノシロキサン、例えば、Cognis Deutschland GmbH & Co. KG製Cognis 3001の使用が特に好ましい。そのH-シロキサンとの更なる架橋タイプ、例えばCognis Deutschland GmbH & Co. KG製Cognis 3002は、バインダーとしての特性を更に増強できる。
【0042】
・エピクロロヒドリン架橋ポリアミドアミン
「fibrabon」または「湿潤強度増強樹脂」としても知られているエピクロロヒドリン架橋ポリアミドアミンは、繊維および製紙技術から十分によく知られている。これらは、好ましくは以下の2つの方法によって製造される:
i)ポリアミノアミドを、(a)まず、四級化に利用可能な窒素に基づいて5〜30mol%の量の四級化剤と反応させ、(b)次いで、得られた四級化ポリアミノアミドを非四級化窒素含有量に相当するモル量のエピクロロヒドリンにより架橋する;または
ii)ポリアミノアミドを、(a)まず、架橋に利用可能な窒素に基づいて5〜40mol%のエピクロロヒドリンと10〜35℃で反応させ、(b)該中間生成物を8〜11のpHに調整し、合計モル率が架橋に利用可能な窒素に基づいて90〜125mol%となるように更なるエピクロロヒドリンにより20〜45℃で架橋する。
【0043】
・ポリ(メタ)アクリレート
ポリ(メタ)アクリレートは、アクリル酸、メタクリル酸および場合によりそれらのエステル、特に低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、異性体ブタノール、シクロヘキサノールなどとのエステルのホモポリマー化およびコポリマー化生成物であると理解される。これらは、既知の方法、例えばUV光によるラジカル重合によって得られる。該ポリマーの平均分子量は、一般には、100〜10,000ダルトン、好ましくは200〜5,000ダルトン、特に400〜2,000ダルトンである。
活性物質として表されるこれらバインダーは、通常0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、特に1〜5重量%の量で繊維に適用される。
【0044】
使用量
マイクロカプセルのバインダーに対する重量比は、90:10〜10:90であってよく、好ましくは75:25〜25:75、特に70:30〜30:70である。付着の異なった状態は、製造方法およびマイクロカプセル/バインダー比に従って実現され得る。より少量のバインダーを使用すれば(例えば、マイクロカプセルのバインダーに対する重量比が50:50超)、マイクロカプセルは単層バインダー内の小繊維に付着するので、着用時にマイクロカプセル膜と皮膚表面との直接接触が生じる。この付着状態(担持タイプ)によって、活性成分が機械的摩擦によって非常に迅速に放出されることが明らかである。一方、多量のバインダーを使用すれば(例えば、マイクロカプセルのバインダーに対する重量比が50:50未満)、一般にマイクロカプセルが繊維に十分付着しないばかりか、マイクロカプセルがバインダーに包囲されるか被覆される(イグルータイプ)。これに対応して仕上げた繊維のマイクロカプセルは、着用時、皮膚表面と直接接触しないので、マイクロカプセルはより少量しか放出されないけれども、より長期にわたって活性である。
【0045】
産業上の応用例
マイクロカプセル化活性成分とバインダーの組合せを、繊維およびあらゆる布地、即ち、最終製品および半製品を仕上げるために、その製造工程中または製造工程後に使用し、そうして虫による刺咬に対する防護機能を向上する。繊維または布地要素の材料の選択は、非常に広範で非限定的である。適当な材料は、あらゆる標準的な天然および合成材料ならびにそれらの混合物であり、特に、綿、ポリアミド、ポリエステル、ビスコース、ポリアミド/ライクラ、綿/ライクラ、および綿/ポリエステルである。繊維製品の選択も同様に非限定的であるが、理論上は、皮膚と直接接触するか、または一般に虫による刺咬に対する防護を意図されている最終製品、即ち、肌着、シャツ、スラックス、Tシャツ、制服、蚊帳および偽装網である。
【0046】
適用方法
繊維または布地を仕上げる第1の適切な方法は、基材を、マイクロカプセル化活性成分およびバインダーの水を含んだ組合せに含浸することを特徴とする。繊維または布地の含浸は、いわゆるバッチ法によって行ってもよい。これは、市販洗濯機または繊維産業で一般的に使用されている染色機で行うことができる。
【0047】
代わりに、本発明は、マイクロカプセル化活性成分およびバインダーを加圧塗布によって適用する、繊維および布地を仕上げる第2の方法にも関する。この方法では、処理する繊維および布地を、マイクロカプセル化活性成分およびバインダーを含む浸漬浴に通過させ、該製剤をプレスで加圧下適用する。この技術は、パジングとして知られている。
【0048】
活性成分の濃度は、通常、含浸液または浸漬浴に基づいて0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。繊維または布地に活性成分を満たすためには、一般に、含浸液は加圧適用浸漬浴より低濃度であることが望ましい。
【0049】
最後に、本発明は、
(a)マイクロカプセル化防虫剤および
(b)バインダー
含有混合物の繊維および布地を仕上げるための使用に関する。
【実施例1】
【0050】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、ペルメトリン5g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、60℃に加熱し、0.5重量%アルギン酸ナトリウム溶液に滴加した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを8重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて40:60の重量比で混合した。
【実施例2】
【0051】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、DEET5g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、50℃に加熱し、予め15℃に冷却した2.5倍容のパラフィン油に強く撹拌しながら分散させた。次いで、該分散体を、ラウリル硫酸ナトリウム1重量%およびアルギン酸ナトリウム0.5重量%を含む水溶液で洗浄し、続いて、0.5重量%Phenonip水溶液で繰り返し洗浄し、油相を除去した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを8重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて50:50の重量比で混合した。
【実施例3】
【0052】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート5g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、60℃に加熱し、15重量%ラウレス硫酸ナトリウム溶液に滴加した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを9重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて50:50の重量比で混合した。
【実施例4】
【0053】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート5g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、60℃に加熱し、15重量%ピロリン酸ナトリウム溶液に滴加した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを8重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて70:30の重量比で混合した。
【実施例5】
【0054】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、デルタメトリン5g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、50℃に加熱し、予め15℃に冷却した2.5倍容のパラフィン油に強く撹拌しながら分散させた。次いで、該分散体を、15重量%ピロリン酸ナトリウム溶液で洗浄し、続いて、0.5重量%Phenonip水溶液で繰り返し洗浄し、油相を除去した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを10重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて70:30の重量比で混合した。
【実施例6】
【0055】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、ゼラチン3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、ペルメトリン2.5g、デルタメトリン2.5gおよびPhenonip(登録商標)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、60℃に加熱し、0.5重量%Hydagen(登録商標)SCD(スクシニル化キトサン、Cognis社製)溶液に滴加した。篩い分け後、平均径1mmのマイクロカプセルを8重量%含む水性調剤を得た。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて70:30の重量比で混合した。
【実施例7】
【0056】
撹拌機および還流冷却器を備えた500ml容の三ッ口フラスコで、沸騰温度下、寒天3gを水200mlに溶解した。該混合物に、まず、グリセロール10gおよびタルク2gの更なる水100g中均一分散液を、次いで、キトサン(Hydagen(登録商標)DCMF、グリコール酸中1重量%、ドイツ国デュッセルドルフ在Cognis社製)25g、ペルメトリン4g、Autan1g、Phenonip(登録商標)(フェノキシエタノールおよびパラベン含有防腐剤混合物)0.5gおよびPolysorbate 20(Tween(登録商標)20、ICI社製)0.5gの更なる水100g中調剤を、強く撹拌しながら約30分かけて添加した。得られたマトリックスを濾過し、60℃に加熱し、0.5重量%アルギン酸ナトリウム溶液に滴加した。同じ径のマイクロカプセルを得るために、調剤を篩い分けた。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて70:30の重量比で混合した。
【実施例8】
【0057】
撹拌容器で、防腐剤(Phenonip(登録商標))0.5gを2重量%カルボキシメチルセルロース水性調剤50gに溶解し、この溶液をpH3.5に調整した。次いで、デルタメトリン1gおよびモノステアリン酸ソルビタン+20EO(Eumulgin(登録商標)SMS 20、Cognis Deutschland GmbH製)0.5gの混合物を、強く撹拌しながら添加した。続いて、調剤に基づいたキトサン濃度が0.075重量%となる量の、キトサンの1重量%グリコール酸溶液(Hydagen(登録商標)DCMF、Cognis Deutschland GmbH製)を連続撹拌しながら添加した。その後、該溶液のpHを、トリエタノールアミンを添加することによって5.5に上昇させ、形成されたマイクロカプセルをデカントした。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて40:60の重量比で混合した。
【実施例9】
【0058】
撹拌容器で、防腐剤(Phenonip(登録商標))0.5gを2重量%ポリアクリル酸(Pemulen(登録商標)TR-2)水性調剤50gに溶解したところ、自然にこの溶液のpHが3になった。次いで、DEET1g、ペルメトリン0.5gおよびモノステアリン酸ソルビタン+20EO(Eumulgin(登録商標)SMS 20、Cognis Deutschland GmbH製)0.5gの混合物を、強く撹拌しながら添加した。続いて、調剤に基づいたキトサン濃度が0.01重量%となる量の、キトサンの1重量%グリコール酸溶液(Hydagen(登録商標)DCMF、Cognis Deutschland GmbH製)を連続撹拌しながら添加した。その後、該溶液のpHを、トリエタノールアミンを添加することによって5.5に上昇させ、形成されたマイクロカプセルをデカントした。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて40:60の重量比で混合した。
【実施例10】
【0059】
撹拌容器で、防腐剤(Phenonip(登録商標))0.5gを2重量%ポリアクリル酸(Pemulen(登録商標)TR-2)水性調剤50gに溶解したところ、自然にこの溶液のpHが3になった。次いで、デルタメトリン1gおよびココグルコシド(Plantacare APG 1200、Cognis Deutschland GmbH製)0.5gの混合物を、強く撹拌しながら添加した。続いて、調剤に基づいたキトサン濃度が0.01重量%となる量の、キトサンの1重量%グリコール酸溶液(Hydagen(登録商標)DCMF、Cognis Deutschland GmbH製)を連続撹拌しながら添加した。その後、該溶液のpHを、トリエタノールアミンを添加することによって5.5に上昇させ、形成されたマイクロカプセルをデカントした。最後に、該マイクロカプセルをポリウレタンバインダーと、固形分に基づいて40:60の重量比で混合した。
【0060】
有効性試験
ワイシャツ形状のニット綿布地を、8%Cognis 3001-Aおよび0.3%Cognis 3002-Aと組み合わせた6重量%Skintex(登録商標)MR III(主成分:ドイツ国特許公開第3512565号公報に対応するポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマー、活性成分:ペルメトリン)で仕上げた。6人の異なる有志が該サンプルを1日8時間着用し、その後洗濯した。2時間毎に、該布地サンプルで覆った腕の選択部位を、約100匹の血に飢えたネッタイシマカ(Aedes aegypti)の集団に2分間暴露した。「長時間着地」し刺咬した数を記録した。2分間あたり3回未満の刺咬率を防護の許容レベルと定義した。一連の試験を2回連続行って3回刺咬された場合、Aedesによる試験を終了し、攻撃性の低い種であるCulex quinquefasciatusで試験を続けた。一連の試験を2回連続行ってCulexに3回刺咬された場合も、試験を終了した。結果を表1(Aedes aegypti)および表2(Culex quinquefasciatus)に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
この結果は、最悪の条件下でさえ、本発明に従って仕上げた布地が、少なくとも5日間にわたって十分な防護効果を与えることを示している。
【0064】
耐洗濯性
耐洗濯性試験のために、下記布地:
・ブラウス(綿68%、ポリエステル32%)
・白色スラックス(綿99%、ライクラ1%)
・着色半ズボン(綿97%、ライクラ3%)
・青色半ズボン(綿98%、ライクラ2%)
・着色カプリパンツ(綿98%、ライクラ2%)
を8%Cognis 3001-Aおよび0.3%Cognis 3002-Aと組み合わせた6重量%Skintex(登録商標)MR IIIで仕上げ、次いで、60℃で25回洗濯機で洗濯した。各洗濯サイクル後、布地を乾燥し、残留ペルメトリン含有量を測定した。比較のために、同じ布地を非カプセル化ペルメトリン含有エマルションで含浸し、同じ試験条件に付した。各種布地に対する試験結果の平均値を表3に示す。
【0065】
【表3】

【0066】
この結果は、25回洗濯機で洗濯した後でさえ、本発明に従って仕上げた布地は初期に適用されたペルメトリンの80%超をなお含むのに対し、同条件下での非カプセル化ペルメトリン含有量は40%未満まで低下することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マイクロカプセル化防虫剤および
(b)バインダー
の混合物で仕上げたことを特徴とする繊維およびシート状布地。
【請求項2】
セスキテルペン、ジエチルトルアミド(DEET)、エチルブチルアセチルアミノプロピオネート(IR 3535)、ヒドロキシエチルイソブチルピペリジンカルボキシレート、ピレスロイドおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる防虫剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の繊維およびシート状布地。
【請求項3】
5-ベンジル-3-フリルメチル (+)-シス-(1R,3S,E)-2,2-ジメチル-3-(2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロチオフェニリデンメチル)-シクロプロパンカルボキシレート、6-クロロピペロニル 2,2-ジメチル-3-(2-メチルプロペニル)-シクロプロパンカルボキシレート、アクリナトリン、アレスリン、ビフェントリン、ビオレスメトリン、シスメトリン、シクレトリン、シクロプロトリン、シフルトリン、シハロトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、ジメトリン、エンペントリン、エスフェンバレレート、フェンフルトリン、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルメトリン、フルバリネート、フレトリン、ハルフェンプロックス、イミプロトリン、メチル-シス/トランス-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパン-1-カルボキシレート、特に、ペルメトリンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる防虫剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載の繊維およびシート状布地。
【請求項4】
マイクロカプセルが1〜30重量%の活性成分含有量を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維およびシート状布地。
【請求項5】
膜および活性成分含有マトリックスからなり、
(a1)ゲル形成剤、キトサンおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(a2)任意にマトリックスを油相に分散する工程、
(a3)任意分散したマトリックスをアニオン性ポリマー水溶液で処理し、その過程で任意に油相を除去する工程、
または
(b1)ゲル形成剤、アニオン性ポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(b2)任意にマトリックスを油相に分散する工程、
(b3)任意分散したマトリックスをキトサン水溶液で処理し、その過程で任意に油相を除去する工程、
または
(c1)アニオン性ポリマーおよび活性成分からマトリックスを調製する工程、
(c2)マトリックスを油相に分散する工程、
(c3)分散マトリックスをメラミン/ホルムアルデヒド樹脂または無水マレイン酸でカプセル化する工程、
または
(d1)乳化剤の存在下、活性成分を油相で処理してo/wエマルションを形成する工程、
(d2)このように得られたエマルションをアニオン性ポリマー水溶液で処理する工程、
(d3)このように得られたマトリックスをキトサン水溶液と接触させる工程、
(d4)このように得られたカプセル化生成物を水相から取り出す工程、
または
異なった電荷の高分子電解質層で交互に活性成分を被覆する(layer-by-layer法)工程
によって得ることができ、平均径0.0001〜5mmを有する、マイクロカプセルで仕上げたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維およびシート状布地。
【請求項6】
平均径0.001〜0.5mmを有するマイクロカプセルを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維およびシート状布地。
【請求項7】
ポリウレタン、ポリエチルビニルアセテート、重合体メラミン化合物、重合体グリオキサール化合物、重合体シリコーン化合物、エピクロロヒドリン架橋ポリアミドアミン、ポリ(メタ)アクリレートおよび重合体フルオロカーボンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれるバインダーで仕上げたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維およびシート状布地。
【請求項8】
重量比90:10〜10:90で2成分を含んでなるマイクロカプセルとバインダーとの混合物で仕上げたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維およびシート状布地。
【請求項9】
(a)マイクロカプセル化防虫剤および
(b)バインダー
含有混合物の繊維およびシート状布地を仕上げるための使用。

【公開番号】特開2007−277800(P2007−277800A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102445(P2007−102445)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】