説明

防虫木質材

【課題】
本発明は、合板もしくは単板積層を従来よりも少ない薬剤添加量で、高い木材保存性能を付与し、シロアリなどの木材加害害虫から保護する事を目的とする。
【解決手段】
本発明は、20度における水溶解度が10g/L以上の殺虫組成物を混入した接着剤を用いた合板または単板積層材で、飢餓状態にあるイエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入したプラスチック容器内に、21日後間静置後の合板または単板積層材の質量減少量が30mg未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来よりも少ない薬剤量で確実に防蟻効果を付与できる合板または単板積層材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来合板や単板積層材の防蟻処理は、その単板接着剤層に薬剤混入されてきた(特許文献1)。また、接着剤に用いるホルムアルデヒドが防虫の一端を担っていた(ホルムアルデヒド自体が防虫効果を示す)。有機フェノール系薬剤を添加して防蟻効果を上げることもされている(特許文献2)。しかしながら、近年シックハウスやVOCの問題から低ホルムアルデヒドの接着剤が用いられるようになりまた合板や単板積層材が住宅などの構造材として使用されるようになり、強度を増したり、製造効率を上げたりするために合板や単板積層材を構成する単板の厚みが増してきたため、薬剤添加量を増しても十分な薬剤効果を得られにくくなっていた。さらに、接着剤の性能へ影響を与えない接着剤への薬剤添加量には限界があり、また薬剤コスト面からも困難な状況となっていた。
【特許文献1】特開平9−136304号公報
【特許文献2】特開2000−192001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、合板もしくは単板積層材の単板接着剤中へ殺虫組成物を添加することにより、高い木材保存性能を付与し、シロアリなどの木材加害害虫から保護する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、合板または単板積層材の接着剤中に20度における水溶解度が10g/L以上である殺虫組成物を混入することで従来よりも使用する薬剤量が少なくても十分な防蟻効力を得ることが可能となった合板または単板積層材に関するものである。
【発明の効果】
【0005】
すなわち、本発明は20度における水溶解度が10g/L以上である殺虫組成物を混入した接着剤を用いて作成した合板または単板積層材で、飢餓状態にあるイエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入したプラスチック容器内に、21日後間静置後の合板または単板積層材の質量減少量が30mg未満であることを特徴とする合板または単板積層材である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明には20度における水への溶解度が10g/L以上である殺虫組成物、特に(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(3−テトラヒドロフリルメチル)グアニジン(一般名ジノテフラン)を用いることが最適である。
【0007】
合板または単板積層材が腐朽されないように、合板または単板積層材の接着剤中に防腐剤を添加、処理してもよく、例えば、3−ヨード−2−プロピニル−N−ブチルカーバメート、パラクロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、3−ジヨード−2−プロペニルエチルカーボナートなどの有機ヨード系化合物、シプロコナゾール((2RS,3RS)−2−(4−クロロフェニル)−3−シクロプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール)、ヘキサコナゾール((RS)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ヘキサン−2−オール)、プロピコナゾール((RS)−1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−4−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−イルメチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)、テブコナゾール((RS)−1−p−クロロフェニル−4,4−ジメチル−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ペンタン−3−オール)、イプコナゾール((1RS,2SR,5RS;1RS,2SR,5SR)−2−(4−クロロベンジル)−5−イソプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1−シクロペンタノール)、アザコナゾール(1−[[2−(2,4−ジクロロフェニル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]メチル]−1H−1,2,4−トリアゾール)、エポキシコナゾール((2RS,3SR)−1−[3−(2−クロロフェニル)−2,3−エポキシ−2−(4−フルオロフェニル)プロピル]−1H−1,2,4−トリアゾール)、メトコナゾール((1RS,5RS,1RS,5SR)−5−(4−クロロベンジル)−2,2−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンタノール)、テトラコナゾール((RS)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)プロピル−1,1,2,2−テトラフルオロエチルエーテル)、ペンコナゾール(1−(2,4−ジクロロ−β−プロピルフェネチル)−1H−1,2,4−トリアゾール)、トリアジメフォン(1−(4−クロロフェノキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オン)、ビテルタノール(1−(ビフェニル−4−イルオキシ)−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール)、ミクロブタニル(2−p−クロロフェニル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)ヘキサンニトリル)、ジニコナゾール((E)−(RS)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペント−1−エン−3−オール)、ジフェノコナゾール(シス,トランス−3−クロロ−4−[4−メチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)−1,3−ジオキソラン−2−イル]フェニル−4−クロロフェニルエーテル)、イミベンコナゾール(4−クロロベンジル−N−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)チオアセタミデート)、トリアジメノール((1RS,2RS,1RS,2SR)−1−(4−クロロフェノキシ−3,3−ジメチル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ブタン−2−オール)等のトリアゾール系化合物を用いることができ、単独もしくは二種類以上を用いても良い。
【0008】
本発明の合板および単板積層材製造時に、上記殺虫組成物および防腐剤を接着剤に混合する場合、それらの有効成分をそのまま用いても良いが、通常製剤化して用いる。製剤の種類は特に限定されないが、扱いやすさの点から液状の製剤が好ましい。液状の製剤としては、水溶剤、乳剤、油剤、フロアブル剤等を挙げることができるが、これらの製剤に限定されない。上記製剤は通常の農薬の製剤と同様の方法で調製することができる。さらに、接着剤に混合した時の安定化や製剤自体の安定化のために一般の細菌に有効な防腐剤、安定剤、酸化防止剤、キレート剤、防錆剤、消泡剤、pH調節剤等を添加しても良い。また、殺虫・防蟻スペクトルの拡大のために他の殺虫剤を混合しても良い。
【実施例】
【0009】
次に実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0010】
(実施例1)
フェノール樹脂(株式会社サンベーク社製、ユーロイドPL−255)100重量部、小麦粉9.4重量部、炭酸カルシウム14.0重量部に、表1記載濃度になるように適当な溶媒に溶解したジノテフランを0.1重量部混合したものを、縦30cm横30cm厚さが3mmのラジアータパイン単板を芯板とし、縦30cm横30cm厚さ3mmのラジアータパイン単板へ、薬剤添加量が表1の処理量になるように接着剤を接着層に塗布して3層の合板にした。これを10kg/cm2で60分間冷圧し、30分放置後9kg/m2、128℃で4分間熱圧した。作成した合板を、縦3cm、横3cmの大きさに切断した。
【0011】
(比較例1〜7)
実施例1の接着剤の調製で防蟻剤をアセタミプリド、イミダクロプリド、クロルフェナピルにしたもので表1の処理量になるように合板を作成した。また薬剤処理をしない合板を比較例7とした。
【0012】
【表1】

【0013】
(試験例 木材防蟻効力試験)
実施例1及び比較例1〜7で作成した合板について、防蟻効力試験を行った。試験は日本工業規格の木材保存剤の性能試験方法及び性能基準(JIS K1571:2004)を参考にして下記の通り実施した。
【0014】
<供試虫>
イエシロアリ Coptotermes formosanus SHIRAKI
【0015】
<耐候操作>
薬液を処理した各木材片を5個1組として500ml容量のビーカーにいれ、その中に木材片容積の10倍のイオン交換水を注ぎ、木材片が浮かび上がらないように適当なおもりを載せ水面下に沈める。マグネチックスターラを用い水温25±3℃で回転子を1分間に400から450回転させ、8時間攪拌した後、直ちに軽く試験体の表層の水切りを行う。続いて60±2℃の循環式乾燥器中に16時間静置し、揮発分を揮散させる。以上の操作を交互に10回繰り返した。
耐候操作が終わった後、温度60±2度で48時間乾燥させ、木材片の重量を測定した。
【0016】
<試験方法>
耐候操作を行った試料を1個ずつ、プラスチック容器内に試料を置き、その上からイエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入し、21日間放置した。その後木材片を温度60±2℃で48時間乾燥させたのち、木材片の重量を測定した。結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の木材処理方法は、合板または単板積層材の接着剤中に防蟻剤を混入し、さらに合板または単板積層材表層に防蟻剤を処理することで従来よりも使用する薬材量が少なくても十分な防蟻効力を得ることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20度における水溶解度が10g/L以上である殺虫組成物を混入した接着剤を用いて作成した合板または単板積層材で、飢餓状態にあるイエシロアリの職蟻150頭と兵蟻15頭を投入したプラスチック容器内に、21日後間静置後の合板または単板積層材の質量減少量が30mg未満であることを特徴とする合板または単板積層材。
【請求項2】
請求項1の殺虫添組成物が(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(3−テトラヒドロフリルメチル)グアニジン(一般名ジノテフラン)である合板または単板積層材。

【公開番号】特開2010−64287(P2010−64287A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230389(P2008−230389)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【Fターム(参考)】