説明

防虫用エアカーテン装置

【課題】開口部に流すエアカーテン気流を一方向にのみ流す片吹型防虫エアカーテンとし、エアカーテン気流を吹き出すエア吸引吹出装置の設備を少なくすると共に、エアカーテン気流を吹き出すエア吸引吹出装置のエアカーテン気流の吹き出し口近辺における防虫効果の低下を来たすことを無くすことを目的としている。
【解決手段】室内空間への出入口を構成する通路空間の側部に、室外側エアを吸引する室外気吸込口と、通路空間を横方向に横断するエアカーテン気流吹出ノズルとを有するエア吸引吹出装置を設け、該吹出ノズルは吹出した気流が、適宜の吹出角度を有して室外空間側に向けて流れる吹出角度を保って配置され、通路空間の他側部には、前記エアカーテン気流と鋭角をなして当接し、エアカーテン気流を前記通路空間の室外空間側に逃がすバッフルボードを設け、かつ、エア吸引吹出装置の室外気吸込口の外気の吸引速度を高めることで虫の捕捉を良好にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品関係,製薬関係等の衛生環境を保つべきエリア或は精密機器装置等の無塵化対応環境を保つべきエリアにおいて、当該エリア内への害虫の侵入を防止するために用いられる防虫用エアカーテンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、製品に異物の混入を嫌う特に食品製造業等にあっては、作業空間において製品の搬入搬出口からの害虫の進入を阻止すべく、作業空間の出入口開口部に害虫の進入阻止部材を設けている。その1つにエアカーテンがある。エアカーテンは、次の如く構成されている。即ち、作業空間出入口の通路空間の両側壁に、エアカーテンの吸引吹出装置を配し、該装置には通路空間を横方向に横断するようにエアカーテン気流を吹出するエアカーテン気流吹出ノズルと、該エアカーテン気流と交差するようエアカーテン気流を吹出する気流吹出口とを設けると共に、吸引吹出装置には吸引口を設け、対向する壁面から吹出した噴気流を吸引するようにしている(特許文献1)。
【0003】
また、上記同様に通路空間の両側面に設けた側部ケーシング内に前記通路空間を横断するエアカーテン気流の吹出ノズルを設け、前記吹出ノズルより室外側に向けて所定角度にエアカーテン気流を吹出し、通路空間の両側から吹出したエアカーテン気流を、前記通路の天井部から突出させた庇部分の下位で交差させて、庇部分により室内への昆虫の進入を防止しているエアカーテン装置も知られている(特許文献2)。
【0004】
然し、これらの装置は、いずれも図1に示すように通路空間Aの両側壁に設けられた吸引吹出装置D,Eのエアカーテン気流吹出ノズルB,Cから吹出させた圧力気流を吹出ノズルBからの風速を高速に、吹出ノズルCからの風速を低くして通路空間A内において交差させているために、通路空間Aの両側にエア吸引吹出装置D,Eを必要とし結果的には2倍の設備をしなければならない事態となっていた。
【0005】
また、吹出型防虫エアカーテンにあっては、通路空間Aの側部に設けたエアカーテン気流F吹出ノズルから、吹出エアを通路空間Aを横断するように室外側に所定角度向けて保持して吹出しているが、エア吸引吹出装置Dの吹出ノズルB付近にあっては、吹出したエアカーテン気流Fの流れがまだ拡幅されずエアカーテン気流Fの流れの幅が少ないためにややもすると害虫がその流れを突き破って作業空間側に進入する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2920759号公報
【特許文献2】特許第4314374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、通路空間等の開口部から害虫等が作業空間等の室内に進入するのを防止するために、開口部を横切って、開口部を閉塞する状態に気流を流すエアカーテンにおいて、開口部に流すエアカーテン気流を一方向にのみ流す片吹型防虫エアカーテンとすることによって、エアカーテン気流を吹き出すエア吸引吹出装置の設備を少なくすると共に、エアカーテン気流を吹き出すエア吸引装置のエアカーテン気流の吹出ノズル近辺のエアカーテン気流吹出幅の少ない部位における防虫効果の低下を来たすことを無くすために、エアカーテン気流の流れの幅が少ない前記部位の虫が気流を突き抜けて通過することを防ぎ、かつ、該部位の虫を捕捉出来るようエア吸引吹出装置の室外気吸込口の外気の吸引速度を高めることにより虫の捕捉を良好にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明はエアカーテン装置であって、室内空間への出入口を構成する通路空間の側部に、室外側エアを吸引する室外気吸込口と、通路空間を横方向に横断するエアカーテン気流の吹出口とを有するエア吸引吹出装置を設け、該吹出口は吹出した気流が、適宜の吹出角度を有して室外側に向けて流れる吹出角度を保って配置され、通路空間の他側部には、前記エアカーテン気流と鋭角をなして当接し、エアカーテン気流を前記通路空間の室外方に逃がすバッフルボードを設けている。
請求項2の発明はエアカーテン装置であって、エアカーテン気流の吹出角度は、室外側には20乃至25°としている。
請求項3記載の発明はエアカーテン装置であって、エアカーテン気流の吹出ノズルは、幅を30〜80mm、望ましくは50mmとしている。
請求項4記載の発明はエアカーテン装置であって、エア吸引吹出装置の室外気吸込口を室外側に向け偏位させている。
【発明の効果】
【0009】
本発明エアカーテン装置は、通路空間の一側にエア吸引吹出装置を、他側にバッフルボードを設けエア吸引吹出装置からのエアカーテン気流をバッフルボードに鋭角に当てることによりエアカーテン気流の下流部においてエアカーテン気流の密度が高くなり進入しようとする虫を良好に排除することが可能となる。
【0010】
エア吸引吹出装置の室外気吸込口を室外側に向け偏位させることにより、吹出口近傍に位置する虫を捕獲吸引し易くしている。かつ、該吸引口を狭めることにより吸引口を通過する吸引気流の流速を高められるので、ややもすれば捕捉しにくいエアカーテン気流の吹出口付近にいる虫の捕捉が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の両吹型防虫エアカーテンの横断平面図。
【図2】本発明の片吹型防虫エアカーテンの横断平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明エアカーテン装置1の実施のための形態につき図面と共に次に説明する。
エアカーテン装置1は室内空間2への出入口を構成する通路空間3を挟んでその両側部にエア吸引吹出装置4とバッフルボート5とを一対に設けたものである。エア吸引吹出装置4は、函体をなし、通路空間3の一側に設けられ、内部にフィルター6,ファン7,エアカーテン気流吹出ノズル8等を有し、函体の通路空間3に面する函体側面9の室内空間側端部に前記エアカーテン気流吹出ノズル8を、他端の室外空間側端部に位置して函体の角を裁断し、通路空間3に対し斜めに開いた状態に室外気吸込口10を設けている。
【0013】
ファン7の回転により室外空間12側の通路空間3の外気は、室外気吸込口10よりエア吸引吹出装置4内に吸引され、フィルタ6で虫,塵埃等を分離してエアカーテン気流吹出ノズル8からカーテン気流11として通路空間3に吹き出される。
本発明装置は上記した如く、通路空間3の一側部にのみエア吸引吹出装置4を設けた片吹型のエアカーテンであるが、片吹型の防虫エアカーテンで両吹型と同等の防虫性能を維持するためには、吹出ノズル幅を大きくして気流の噴射範囲(平面視)を広くすることにより、飛翔している虫が幅の広い気流の流れを横断し難い状態とすることにより、防虫性能を高める方法がある。然し、噴射範囲を広くしすぎると気流が室内空間側へ入り込み逆に防虫性能を低下させる原因となる。そこで、防虫効果が高くなる最適なノズル幅とノズル角度を種々選択しノズル幅は、ノズル角度や設置空間寸法により30〜80mm、好ましくは50mm、ノズル角度は20〜25度が望ましい。
上記ノズル角度で吹き出されたエアカーテン気流11は通路空間3から離れ、室外空間12方向に逸れることになるため、側面からの虫の侵入が発生する。これを防ぐためにエア吸引吹出装置4に対面して通路空間3を挟んで設けられたバッフルボード5は、エアカーテン気流吹出ノズル8から吹出したエアカーテン気流11がバッフルボード5に達した際に、バッフルボード5とエアカーテン気流11とが鋭角θをなして交差するような角度を保って設置されている。
バッフルボード5は、エアカーテン気流を前記通路空間3の室外空間12方向に逃すことが出来れば、断面三角形としても或は1枚の板状体としてもいずれでも良く、板状体の存在により側部からの虫の侵入を防止している。
【0014】
上記エアカーテン気流吹出ノズル8から吹き出したエアカーテン気流11は吹出直後はエアカーテン気流吹出ノズル8の幅にほぼ等しい幅の気流を構成しているが、次第にその幅を増加し通路空間3を横切るころには、その幅は拡散し、一部はバッフルボート5に当接し、その他は室外空間12に流れ去っている。上記のエアカーテン気流11を横切って虫はしばしば室外から室内に侵入するが,その侵入個所はエアカーテン気流11の流れの幅の少ないエアカーテン気流吹出ノズル8に近い気流幅の少ない部位からの侵入がしばしばである。
【0015】
防虫エアカーテンの防虫効果は、吹出ノズル付近よりもエアカーテン気流吹出ノズルから1.4〜2m離れた位置の方が防虫効果が高い。これは吹出されたエアカーテン気流が広がることで気流幅が大きくなり虫が侵入し難くなるためである。従って、全体の防虫性能を上げるためには、吹出ノズル付近の防虫性能を上げれば良いことになる。そこで、エア吸引吹出装置4の吸引口10の開口付近に集まった虫を効率よく捕捉し防虫効果を高めるために、エア吸引吹出装置4の側面9の先端部に函体の角を斜めに切り吹込口10を室外空間12に向ける状態で吹込口10を設けているが、更に吸込口10は、開口寸法を小さくして吸込み風速を上げている。このため、室外空間12から飛来しエアカーテン気流吹出ノズル8の近傍に滞留していた虫は容易に吸込口10に吸込まれ吹出ノズル8附近の捕捉率を補っている。
【0016】
通路空間3の一側にエアカーテン気流吹出ノズル、他側にバッフルボードを設置した片吹式の本発明装置においてスポンジボールをエアカーテン気流に投入した効率試験結果を見ると、両吹型のスポンジボール効果は90%であったが片吹型の本発明の場合94%となり本発明装置による方が効果は上がっている。
即ち、片吹型の場合ノズル角度が大きくなる程、吹出速度が速い程、効率は高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
前記実施例の説明においては、通路空間の一側にエア吸引吹出装置を、他側にバッフルボードを配した例につき説明したが、通路空間の間口が広い場合、通路空間の両側にエア吸引吹出装置を置くことで両吹きの装置とし、両側のエア吸引吹出装置の間に適宜のバッフルボードを置き、間口の広い場所に対処出来るようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 エアカーテン装置
2 室内空間
3 通路空間
4 エア吸引吹出装置
5 バッフルボード
6 フィルタ
7 ファン
8 エアカーテン気流吹出ノズル
9 函体側面
10 室外気吸込口
11 エアカーテン気流
12 室外空間
A 通路空間
B,C エアカーテン気流吹出ノズル
D,E エア吸引吹出装置
F エアカーテン気流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空間への出入口を構成する通路空間の側部に、室外側エアを吸引する室外気吸込口と、通路空間を横方向に横断するエアカーテン気流吹出ノズルとを有するエア吸引吹出装置を設け、該吹出ノズルは吹出した気流が、適宜の吹出角度を有して室外空間側に向けて流れる吹出角度を保って配置され、通路空間の他側部には、前記エアカーテン気流と鋭角をなして当接し、エアカーテン気流を前記通路空間の室外空間側に逃がすバッフルボードを設けたことを特徴とするエアカーテン装置。
【請求項2】
エアカーテン気流の吹出角度は、室外空間側に向けて20乃至25°としたことを特徴とする請求項1記載のエアカーテン装置。
【請求項3】
エアカーテン気流の吹出ノズルは、その幅を30〜80mm、好ましくは50mmとしたことを特徴とする請求項1記載のエアカーテン装置。
【請求項4】
エア吸引吹出装置の室外気吸込口を狭隘なものとし、吸込口の吸込気流速度を高めたことを特徴とする請求項1記載のエアカーテン装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−226687(P2011−226687A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95586(P2010−95586)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(591066465)日本エアーテック株式会社 (27)