説明

防護シャッタシステム

【課題】防護シャッタの開閉を高速に、そして安定して可動させる防護シャッタシステムを提供する。
【解決手段】プレス機械に取り付けられる防護シャッタシステム10。プレス機械のフレームFの上部に設けられ、第1プーリ16を備えた第1シャフト11と;フレームFの中部に設けられ、第2プーリ17および第3プーリ18が同角度回転するように備えた第2シャフト12と;フレームFの下部に設けられ、第4プーリ19を備えた第3シャフト13と;第1シャフト11と第2シャフト12の間に、第1プーリ16および第2プーリ17に巻きつけられる第1ベルト21と;第2シャフト12と第3シャフト13との間に、第3プーリ18および第4プーリ19に巻きつけられる第2ベルト22と;第1ベルト21に連結されるプレス機械のスライドSと、第2ベルト22に連結される防護シャッタ27とを有している。第2プーリ17の径は第3プーリ18の径より小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械に取り付けられる防護シャッタシステムに関する。詳しくは、プレス機械のスライドを駆動源とした防護シャッタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプレス機械の開口部には、防護シャッタが取り付けられている。このような防護シャッタは、プレス作業中に、作業者が誤って手等を挿入することを防止したり、ワークやパンチ等が破損して、その破片が周辺に飛散するのを防止したりする。
【0003】
このような防護シャッタシステムの1つとして、プレス機械のスライドの昇降運動に連動させて防護シャッタを開閉させるシステムが知られている。
特許文献1には、プレス機械のスライドに取り付けられる滑車と、その滑車に巻き掛けられる駆動ベルトと、その駆動ベルトの一端に取り付けられる防護シャッタとからなり、駆動ベルトの他端はプレス機械の一部に固定されているシステムが開示されている。
この防護シャッタシステムは、スライドを昇降させワークのプレスを行うのと連動して、防護シャッタも昇降する。そのため、作業者は、防護シャッタが開いているときは、安心して微調整や金型の交換等の作業を行うことができる。また、滑車は上下動するスライドに取り付けられているため動滑車として働き、スライドの移動量に対して防護シャッタを2倍移動させることができる。
また、このシステムには、滑車がスライド上を独立して上下できるように滑車昇降手段が設けられている。これにより、防護シャッタを通常より大きく開くことができ、プレス機械のメンテナンス等の大掛かりな作業を容易に行える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−144299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の防護シャッタシステムでは、防護シャッタのストロークの長さとスライドのストロークの長さとの関係は2:1に制限されてしまう。また、防護シャッタは駆動ベルトの一端によって支持されているため、防護シャッタが上昇端に達したときに、防護シャッタが上昇の勢いによって飛び跳ねてしまうおそれがある。そのため、防護シャッタの開閉速度を制限する必要があり、プレス機械の速いストローク数速度(ストローク数/分:SPM)には対応できなかった。
本発明は、防護シャッタの開閉を高速に、ストロークの長さを大きく、そして安定して可動させる防護シャッタシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防護シャッタシステムは、プレス機械に取り付けられる防護シャッタシステムであって、前記プレス機械のフレームの上部に設けられる第1プーリと、前記フレームの中部に設けられる第2プーリと、第2プーリと同角度回転するように同軸上に設けられ、前記第2プーリと径が異なる第3プーリと、前記フレームの下部に設けられる第4プーリと、前記第1プーリおよび第2プーリに巻き掛けられる第1ベルトと、前記第3プーリおよび第4プーリに巻き掛けられる第2ベルトと、前記第1ベルトに連結される前記プレス機械のスライドと、前記第2ベルトに連結される防護シャッタとを備えたことを特徴としている。
【0007】
このような防護シャッタシステムであって、前記第2プーリの径が第3プーリの径より小さく構成されているものが好ましい。さらに、前記フレームが、防護シャッタの上下動を支持するレールをさらに備えたものが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防護シャッタシステムは、プレス機械のスライドと防護シャッタとが第1ベルトおよび第2ベルトを介して完全に同調しているため、スライドが降下してワークにプレスするときに防護シャッタが閉じる。そして、スライドが上昇端で停止し、ワークを交換しているとき、あるいは、プレス機械が停止しているときに防護シャッタが開く。そのため、作業者は防護シャッタの開閉に追従しやすく、安全である。
また、防護シャッタは、第3プーリと第4プーリに巻き掛けられる第2ベルトに連結されており、上下方向から引っ張られた状態で昇降するため、防護シャッタは飛び跳ねたりすることがなく、その開閉を高速に、かつ、安定して行える。
さらに、それぞれ径の異なる第2プーリおよび第3プーリは、フレームに同角度回転するように取り付けられているため、第2プーリおよび第3プーリの径を調整することにより、プレス機械のスライドのストロークに応じて防護シャッタのストロークを設定することができる。特に、第2プーリの径を第3プーリの径より小さくすることにより、防護シャッタのストロークをプレス機械のスライドのストロークより大きくでき、プレス機械の開口部をより大きく開くことができる。
このような防護シャッタシステムであって、前記フレームに防護シャッタの上下動を支持するレールを備えた場合、防護シャッタの昇降運動を一層安定にでき、防護シャッタが傾くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の防護シャッタシステムの一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の防護シャッタシステムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1および図2の防護シャッタシステム10は、プレス機械P、特に、冷間鍛造プレス機械に取り付けられるものであって、プレス機械Pの開口部(作業スペース)を開閉するためのシステムである。図1における右側、図2における奥側がプレス機械Pの内部であり、図1における左側、図2における手前側がプレス機械の前側(外部)である。プレス機械Pは、ボルスタBと、スライドSと、それらを囲むフレームFとからなる。
【0011】
防護シャッタシステム10は、プレス機械Pの開口部を構成するフレームFの上部に相対するように設けられた一対の第1シャフト11と、開口部を跨ぐようにフレームFの中部に架けられた一本の第2シャフト12と、フレームFの下部に相対するように設けられた一対の第3シャフト13とを備えている。
第1シャフト11には、第1プーリ16が取り付けられており、第3シャフト13には、第4プーリ19が取り付けられている。一方、第2シャフト12の左右両端にはそれぞれ径の異なる第2プーリ17と第3プーリ18が1個ずつ取り付けられている。
【0012】
第1シャフト11と第2シャフト12の間には、第1プーリ16および第2プーリ17に巻きつけられる一対の第1ベルト21が取り付けられており、第2シャフト12と第3シャフト13との間には、第3プーリ18および第4プーリ19に巻きつけられる一対の第2ベルト22が取り付けられている。つまり、第1ベルト21および第2ベルト22は、環状に設けられている。このようなベルトとして、例えば、タイミングベルト、Vベルト、チェーンなどの巻き掛け伝動手段が用いられる。
さらに、この一対の第1ベルト21には、このスライドSが上下方向から引っ張られるように連結されており、一対の第2ベルト22には、防護シャッタ27が上下方向から引っ張られるように連結されている。そして、第1ベルト21または第2ベルト22は、スライドSまたは防護シャッタ27を上下方向から引っ張るように両端部22a、bを連結していれば、完全な環状でなくてもよい。
つまり、この防護シャッタシステム10は、プレス機械を駆動させてスライドSを昇降させることにより、防護シャッタ27を上下に移動させ、プレス機械の開口部を開閉する。
【0013】
第1シャフト11は、それぞれプレス機械のフレームFに固定されている。第1シャフト11には、それぞれ第1プーリ16が回転自在に取り付けられている。ただし、第1シャフト11を自軸を中心にして回転自在にフレームFに取り付け、第1プーリ16を第1シャフト11に固定してもよい。
第2シャフト12は、自軸を中心にして回転するようにフレームFに取り付けられている。また、第2シャフト12には、それぞれ第2プーリ17および第3プーリ18が並ぶようにして固定されている。そのため、第2プーリ17と第3プーリ18は、同角度回転する。第2プーリ17の径は、第3プーリ18より小さくなっている。これにより、第1ベルト21の移動距離に対して、第2ベルト22の移動距離は大きくなる。しかし、第2シャフトを固定し、第2プーリ17および第3プーリ18を回転自在に取り付けても良い。この場合、第2プーリ17と第3プーリ18とは一体にするなどして連動させる必要がある。
第3シャフト13は、それぞれプレス機械のフレームFに固定されている。そして、それぞれの第4プーリ19は、第3シャフト13へ回転自在に取り付けられている。しかし、このものも第3シャフト13を回転自在にし、その第3シャフト13に第4プーリ19を固定してもよい。
【0014】
このように構成されているため、第1プーリ16と第2プーリ17に巻かれた第1ベルト21を駆動させることにより、第2シャフト12の第2プーリ17が回転し、それと同時に第3プーリ18が同角度回転する。そして、第3プーリ18と第4プーリ19に巻かれた第2ベルト22が駆動する。
【0015】
プレス機械のスライドSは、プレス機械内の駆動装置(例えば、クランクシャフト、油圧シリンダ等)によって昇降運動をする。スライドSと第1ベルト21とは、スライドSに固定される連結部材32を介して連結される。スライドSは、矩形状のものであり、下端に金型等が取り付けられる。スライドSの前側の表面には、連結部材32を固定する固定部S1が形成されており、前側の上部には、第1ベルト21に挟まれるように前側に突出した突出部S2が形成されている。連結部材32は、細長い平板状のものであり、下端32aでスライドSの固定部S1と固定し、上端32bで第1ベルト21と連結する。
【0016】
防護シャッタ27は、矩形状のものであり、四隅に第2ベルト22と連結する連結部27aを備えている。防護シャッタ27の両側面には、フレームFに取り付けられており、防護シャッタ27の上下動を支持するレール35を転がるコマ27b(またはスライダ)が2個ずつ設けられている。
また、防護シャッタ27には、スライドSとは独立して開閉できる扉36が設けられている。これにより、スライドSが下降しているときでもプレス内の作業を行うことができる。扉36は、手動にしてもよく、機械等によって自動に開閉できるようにしてもよい。
【0017】
また、プレス機械PのフレームFには、プレス機械PのスイッチSWが設けられている。このスイッチSWには、ピン37が挿入されており、ピン37を引き抜くことによりプレス機械の運転ができないようにインターロックされる。また、このピン37は、手動または自動で上昇させた扉36の落下防止ピンとして用いることができるようにしてもよい。これにより、扉36を開いているときは、プレス機械を運転できないようにすることができ、プレス内作業を行う安全に行うことができる。
【0018】
この防護シャッタシステム10は、上述したように防護シャッタ27がプレス機械PのスライドSと連動しており、かつ、防護シャッタ27は第2ベルトに上下から引っ張られるようにして昇降し、プレス機械の開口部を開閉する。そのため、防護シャッタの開閉を高速かつ安定的に行え、さらには、防護シャッタ27の飛び跳ねを防止できる。
また、第2プーリ17と第3プーリ18の径の関係は、第2プーリ17の径:第3プーリ18の径=スライド31の昇降量:防護シャッタ27の昇降量となる。そのため、第2プーリ17と第3プーリ18の径を調整することにより、スライドSの昇降量に応じて防護シャッタ27の昇降量を自由に設定できる。特に第2プーリ17の径を第3プーリ18の径より小さく構成することにより、スライドの昇降量に応じて防護シャッタ27を大きく開くことができ、プレス装置等のメンテナンスが容易に行える。
【符号の説明】
【0019】
P プレス機械
F プレス機械のフレーム
S プレス機械のスライド
B プレス機械のボルスタ
S1 固定部
S2 突出部
10 防護シャッタシステム
11 第1シャフト
12 第2シャフト
13 第3シャフト
16 第1プーリ
17 第2プーリ
18 第3プーリ
19 第4プーリ
21 第1ベルト
22 第2ベルト
27 防護シャッタ
27a 防護シャッタの連結部
27b 防護シャッタのコマ
32a 連結部材の下端
32b 連結部材の上端
35 レール
36 扉
37 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械に取り付けられる防護シャッタシステムであって;
前記プレス機械のフレームの上部に設けられる第1プーリと、
前記フレームの中部に設けられる第2プーリと、
前記第2プーリと同角度回転するように同軸上に設けられ、第2プーリと径が異なる第3プーリと、
前記フレームの下部に設けられる第4プーリと、
前記第1プーリおよび第2プーリに巻き掛けられる第1ベルトと、
前記第3プーリおよび第4プーリに巻き掛けられる第2ベルトと、
前記第1ベルトに連結される前記プレス機械のスライドと、
前記第2ベルトに連結される防護シャッタとを備えた、
防護シャッタシステム。
【請求項2】
前記第2プーリの径が第3プーリの径より小さい、請求項1記載の防護シャッタシステム。
【請求項3】
前記フレームに、防護シャッタの上下動を支持するレールをさらに備えた、請求項1記載の防護シャッタシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−194427(P2011−194427A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63032(P2010−63032)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】