説明

防錆剤

【課題】 金属部材の長期保存の際に金属部材表面を清浄に保ちながら発錆を防止する防錆剤及び防錆方法を提供する。
【解決手段】 下記式(1)で示されるヒドロキシルアミン化合物または下記式(2)で示されるヒドラジン化合物と、吸水性樹脂とを含有することを特徴とする防錆剤およびこれを通気性材料で包装した防錆剤、さらには金属部材を前記包装した防錆剤と共にガスバリア性の容器内に保存することを特徴とする防錆方法。


(式(1)中R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。)


(式(2)中R、R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管中における金属材料の防錆剤及び防錆方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属部材の保管中の結露による発錆を防止する方法としては、金属部材を乾燥剤と共に密封包装する方法や気化性防錆剤を含浸させた包装紙で包装する方法や気化性防錆剤を含有させた包装樹脂(フィルム)で包装する方法がある(特許文献1参照)。また、金属部材の保存容器内を不活性ガスに置換する方法もある。乾燥剤を用いる方法は、完全に除湿しても発錆は防止出来ず、さらに時間の経過と共に包装材料から酸素や水分が透過するため発錆が起こる。
【0003】
従来のジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等の気化性防錆剤を含浸させた包装紙を用いる方法は、防錆剤が気化して防錆効果を発揮するまでに時間がかかり、さらに防錆剤成分が金属部材表面に付着するため金属部材表面の清浄度が著しく低下して精密部品等の保管には使用出来ない。気化性防錆剤を含有させた包装樹脂(フィルム)を用いる方法は、包装樹脂の製造時に気化性防錆剤が揮発し、さらに樹脂に含有された気化性防錆剤は気化し難いため包装した時の防錆効果が十分ではない。
【0004】
窒素やアルゴンなどによる不活性ガス置換方法は、保存容器内の酸素を完全に置換することは容易ではなく、また完全に置換しても時間の経過と共に容器材料から酸素や水分が透過するため発錆が起こる。以上のことから従来の方法では、金属部材の長期保管の際に金属部材表面を清浄に保ちながら発錆を防止することは出来ないため、解決方法が強く求められていた。
【特許文献1】特開2003−213462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属部材の長期保存の際に金属部材表面を清浄に保ちながら発錆を防止する防錆剤及び防錆方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ガスバリア性の容器内にヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物を必須成分とし吸水性樹脂に保持させたものを防錆剤包装体として金属部材と共に密封保存することにより、金属部材表面を清浄に保ちながら発錆を防止できることを見い出し本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.下記式(1)で示されるヒドロキシルアミン化合物または下記式(2)で示されるヒドラジン化合物と、吸水性樹脂とを含有することを特徴とする防錆剤、
2.前記1記載の防錆剤を通気性材料で包装した包装体、及び
3.金属部材を前記2記載の包装体と共にガスバリア性の容器内に保存することを特徴とする防錆方法、
に関するものである。
【0008】
【化1】


(式(1)中R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。
【0009】
【化2】


(式(2)中R、R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の金属防錆剤は、長期保存中の結露によって発生する錆の抑制効果に優れ、且
つ金属表面が清浄であるため、保存後の金属加工(メッキ、塗装等)を行う際に、洗浄工程(錆除去、金属表面清浄化処理等)の省略が出来るので、時間、薬液コストの低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の防錆剤が対象とする金属としては、主としては鉄であるがその他として銅、ニッケル、クロム、コバルト、鉛、亜鉛、アルミニウム、チタン、スズ、金、銀等及びこれらの合金を研削・切削加工、ダイカスト成形、焼結加工したものに適応できる。さらに樹脂、ガラス、セラミックス等の表面に接着、圧着、メッキ、蒸着、イオンプレーティング、等の手段により金属化した製品にも適用できる。
【0012】
式(1)で示されるヒドロキシルアミン化合物として、好ましいものを具体的に例示すると、ヒドロキシルアミン、O−メチルヒドロキシルアミン、O−エチルヒドロキシルアミン、N−メチルヒドロキシルアミン、N,N−ジメチルヒドロキシルアミン、N,O−ジメチルヒドロキシルアミン、N−エチルヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,O−ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N−トリメチルヒドロキシルアミン、N−(2−メトキシエチル)ヒドロキシルアミン、N−アリルヒドロキシルアミン、N,O−ジアリルヒドロキシルアミン、O−シクロヘキシル−N,N−ジメチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミンが最適である。
【0013】
式(2)で示されるヒドラジン化合物として、好ましいものを具体的に例示すると、ヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、1,1−ジエチルヒドラジン、1,2−ジエチルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、1,2−ジイソプロピルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、アリルヒドラジン等が挙げられる。これらのうち、ヒドラジン、メチルヒドラジン、1,1−ジメチルヒドラジン、1,2−ジメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、1,1−ジエチルヒドラジン、1,2−ジエチルヒドラジンが最適である。
【0014】
上記ヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物の濃度は、好ましくは0.001〜50重量%、更に好ましくは0.05〜30重量%、特に好ましくは0.5〜30重量%である。0.001重量%未満では防錆効果が不十分であり、また50重量%を越えてもそれ以上の防錆効果は得られないため経済性等で不適当である。
【0015】
本発明において防錆の即効性を必要とする場合には、ヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物に、さらにアセチレンアルコールを添加した組成物を吸水性樹脂に保持させることが好適である。アセチレンアルコールとしては、1−プロピン−3−オール、1−ブチン−3−オール、1−ブチン−4−オール、2−ブチン−1−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−4−オール、1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、1−ヘキシン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、1−ヘプチン−3−オール、1−オクチン−3−オール、1−ノニン−3−オール、1−デシン−3−オール、2−ブチン−1,4−ジオール、3−ヘキシン−2,5−ジオール、3,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、4−エチル−1−オクチン−3−オール等の炭素数3〜10のアセチレンアルコールが好適であり、これらの中でも特に、3−メチル−1−ペンチン−3−オール(メチルペンチノール)、3−メチル−1−ブチン−3−オール(メチルブチノール)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール(ジメチルヘキシノール)、1−エチニルシクロヘキサノール等が最適である。本発明の防錆剤において、アセチレンアルコールの濃度は、好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%である。0.001重量%未満では防錆効果が不十分であり、また50重量%を越えてもそれ以上の防錆効果は得られないため経済性等で不適当である。
【0016】
本発明の吸水性樹脂は、重合体中に結晶構造あるいは架橋構造を有することにより、水と接触した際に速やかに吸収し、膨潤する能力のある重合体からなるものである。具体的にはポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリスルホン酸塩、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸塩とアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニルとアクリル酸エステル共重合体、でんぷんとアクリル酸グラフト重合体の加水分解物等が挙げられる。好ましくは、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する親水性のエポキシ樹脂(a)と1分子中に2個以上の1級または2級アミノ基を有するアミン化合物(b)を必須成分とし、これらを反応させた硬化樹脂である。
【0017】
上記のエポキシ樹脂(a)は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する親水性の化合物であれば、特に限定されるものではない。具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等とエピクロルヒドリンとの反応から得られるポリエーテル型エポキシ樹脂、グリセリン、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等とエピクロルヒドリンとの反応から得られる多価アルコール型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルおよびそれらの混合物が最適である。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、130〜1500g/eqが好ましく、さらに200〜1000g/eqが好ましい。
【0018】
さらに上記のアミン化合物(b)とは、1分子中に少なくとも2個以上の1級又は2級アミノ基を有する化合物であれば特に限定されるものではなく、具体的にはエチレンジアミン、ポリエチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、キシリレンジアミン等の脂肪族第1級アミン類、ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等脂環族第1級アミン類、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族第1級アミン類、エチレンジアミン、ポリエチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、キシリレンジアミン等の各エチレンオキサイド付加物等の脂肪族第2級アミン類、ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の各エチレンオキサイド付加物等の脂環族第2級アミン類、ピペラジン、ジシアンジアミド等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、キシリレンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミンが最適である。
【0019】
上記吸水性樹脂のエポキシ樹脂(a)に対するアミン化合物(b)の割合は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基:アミン化合物(b)の窒素原子に直結した水素原子との当量比(エポキシ当量:活性水素当量)が1:0.3〜1:3が好ましく、さらに1:0.6〜1:2.5、特に1:0.7〜1:2.2が好ましい。
【0020】
上記、エポキシ樹脂(a)とアミン化合物(b)を0〜150℃で1〜48時間、好ましくは40〜120℃で2〜10時間処理することにより硬化して吸水性樹脂が得られる。その際、硬化速度を調整するため一般的に知られている硬化促進剤を添加することも可能である。例えば、3級アミン類、イミダゾール類およびその誘導体等が挙げられる。
【0021】
本発明のヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物からなる必須成分を吸水性樹脂に保持させる方法としては、特に制限はないが、吸水性樹脂を適当な大きさに粉砕して、ヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物の水溶液中に、5〜100℃で0.5〜72時間浸漬させることにより保持出来る。
【0022】
本発明のヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物からなる必須成分を保持させた吸水性樹脂による防錆剤は、25℃、60%RHにおける酸素透過度が1000ml/m2・day・atm以上の通気性を有する包装材料に包装した包装体として使用される。通気性包装材料および構成は特に限定されない。例えば、紙または不織布、孔を空けたプラスチックフィルムやシート等を基材とする積層材料の通気性包装材料に、ヒドロキシルアミン化合物またはヒドラジン化合物からなる必須成分を保持させた吸水性樹脂を充填し、包装材料の周囲をヒートシールして包装体にする。
【0023】
上記包装体とした防錆剤は、保存対象金属と共にガスバリア性容器に密封される。ガスバリア性容器として、材料がガスバリア性のプラスチックや金属からなる袋、ケース、缶等が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリスチレン等の樹脂からなるケース、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等のフィルムやシートからなる積層材料の袋等が挙げられる。材料がプラスチックフィルムやシートの場合、ガスバリア性を確保するため表面にアルミニウム、酸化珪素、酸化セレン等を蒸着して用いられることがある。また、鉄、アルミニウム、ステンレス等からなる金属缶も挙げられる。ガスバリア性容器は、25℃、60%RHにおける酸素透過度が50ml/m2・day・atm以下で、かつ40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が5g/m2・day以下が好ましい。さらに好ましくは25℃、60%RHにおける酸素透過度が10ml/m2・day・atm以下で、かつ40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が1g/m2・day以下が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例1
予め60℃に加温したポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−841ナガセ化成(株)製、エポキシ当量:370g/eq)82部とグリセロールポリグリシジルエーテル(デナコールEX−313ナガセ化成(株)製、エポキシ当量:141g/eq)2部を500mlビーカーに入れて、さらに硬化促進剤としてベンジルジメチルアミン0.1部添加し混合撹拌した。これにメタキシレンジアミン(活性水素当量:34g/eq)16部を加え、さらに撹拌した。この混合溶液をアルミニウム製の成形型に流し込み、乾燥機中で80℃、1時間加熱し、さらに120℃まで昇温して1時間加熱して樹脂硬化物を得た。その樹脂硬化物を乳鉢で粉砕し、この粉砕物3gを5重量%ヒドロキシルアミン水溶液100mlに25℃で24時間浸漬させた。次に、このヒドロキシルアミン含有樹脂硬化物を紙/ポリエチレンフィルムのラミネートよりなる通気性包装材(内寸80mm×50mm)に充填し、ポリエチレンフィルム面を内側にして周縁部をヒートシールして防錆剤包装体を製造した。この防錆剤包装体について、気化性錆止め性試験を行った。(JIS−Z−1519に準じて)試験後、試験片の錆の発生状態を目視観察し下記基準で3段階に評価した。その結果を表1に示す。
○錆の発生全くなし
△試験片の表面積50%未満に錆発生
×試験片の表面積50%以上に錆発生
【0026】
実施例2
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%ヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0027】
実施例3
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%N,N―ジエチルヒドロキシルアミンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0028】
実施例4
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%メチルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0029】
実施例5
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%エチルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0030】
実施例6
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%1,1−ジメチルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0031】
実施例7
5重量%ヒドロキシルアミンの代わりに5重量%1,2−ジメチルヒドラジンを用いた以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0032】
実施例8
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEXー841)82部、グリセロールポリグリシジルエーテル2部、メタキシレンジアミン16部添加の代わりに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861ナガセ化成(株)製、エポキシ当量551g/eq)91.5部、メタキシレンジアミン8.5部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0033】
実施例9
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEXー841)82部、グリセロールポリグリシジルエーテル2部、ベンジルジメチルアミン0.1部、メタキシレンジアミン16部添加の代わりに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861)86部、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(EXー920ナガセ化成(株)製、エポキシ当量176g/eq)8部、ベンジルジメチルアミン1部、イソホロンジアミン(活性水素当量43g/eq)6部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0034】
実施例10
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEXー841)82部、グリセロールポリグリシジルエーテル2部、ベンジルジメチルアミン0.1部、メタキシレンジアミン16部添加の代わりに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861)88.6部、ベンジルジメチルアミン1部、1,3ービスアミノメチルシクロヘキサン(活性水素当量36g/eq)11.4部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0035】
実施例11
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEXー841)82部、グリセロールポリグリシジルエーテル2部、メタキシレンジアミン16部添加の代わりに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861)88.3部、トリエチレンテトラミン(活性水素当量37g/eq)11.7部を添加した以外は、実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0036】
比較例1
ヒドロキシルアミン水溶液の代わりに純水を用いた以外は実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0037】
比較例2
吸水性樹脂を用いる代わりにシリカゲル5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0038】
比較例3
吸水性樹脂を用いる代わりに活性炭5gを用いた以外は実施例1と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0039】
実施例12
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861ナガセ化成(株)製、エポキシ当量:551g/eq)88.3部を500mlビーカーに採取し、これにイオン交換水を100部加え60℃にて混合撹拌した。これにトリエチレンテトラミン(活性水素当量:37g/eq)11.7部を加えさらに撹拌した。これを80℃の乾燥機中で2時間加熱して樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を乳鉢で粉砕し、この粉砕物5gを1重量%1,1−ジエチルヒドラジンと0.1重量%メチルペンチノールの水溶液100mlに25℃で5時間浸漬させた。この浸漬させた樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様に防錆剤包装体を製造して気化性錆止め性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例13
0.1重量%メチルペンチノールの代わりに0.1重量%メチルブチノールを用いた以外は、実施例12と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0041】
実施例14
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(デナコールEX−861ナガセ化成(株)製、エポキシ当量:551g/eq)60部を500mlビーカーに採取し、これにベンジルジメチルアミン0.2部とイオン交換水100部を加え混合撹拌した。これにポリエーテルアミン(活性水素当量:500g/eq)40部を加えさらに撹拌した。これを80℃の乾燥機中で2時間加熱し、さらに90℃まで昇温して3時間加熱して樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を乳鉢で粉砕し、この粉砕物5gを1重量%1,2−ジエチルヒドラジンと0.1重量%ジメチルヘキシノールの水溶液100mlに25℃で5時間浸漬させた。この浸漬させた樹脂硬化物を用いて、実施例1と同様に防錆剤包装体を製造して気化性錆止め性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例15
0.1重量%ジメチルヘキシノールの代わりに0.1重量%1−エチニルシクロヘキサノールを用いた以外は、実施例14と同様に行った。気化性錆止め性試験結果を表1に示す。
【0043】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるヒドロキシルアミン化合物または下記式(2)で示されるヒドラジン化合物と、吸水性樹脂とを含有することを特徴とする防錆剤。
【化1】

(式(1)中R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。)
【化2】

(式(2)中R、R、R、Rは、それぞれ水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数2〜4のアルケニル基であり、これらの基は置換基を有しても良い。)
【請求項2】
式(1)で示される化合物がヒドロキシルアミンまたはN,N−ジエチルヒドロキシルアミンである請求項1記載の防錆剤。
【請求項3】
式(2)で示される化合物がヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、1,1−または1,2−ジメチルヒドラジン、および1,1−または1,2−ジエチルヒドラジンから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の防錆剤。
【請求項4】
さらに炭素数3〜10のアセチレンアルコールを含有する請求項1〜3いずれかに記載の防錆剤。
【請求項5】
アセチレンアルコールが、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールおよび1−エチニルシクロヘキサノールから選ばれる少なくとも一種である請求項4記載の防錆剤。
【請求項6】
吸水性樹脂が1分子中に2個以上のエポキシ基を有する親水性エポキシ樹脂(a)と1分子中に2個以上の1級または2級アミノ基を有するアミン化合物(b)を含有するものを反応させた硬化樹脂である請求項1〜5何れかに記載の防錆剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂(a)がポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種である請求項6記載の防錆剤。
【請求項8】
アミン化合物(b)が、ポリエチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、キシリレンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン及びイソホロンジアミンからなる群から選択された1種以上である請求項6又は7記載の防錆剤。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の防錆剤を通気性材料で包装した包装体。
【請求項10】
金属部材を請求項1〜8の何れかに記載の防錆剤と共にガスバリア性の容器内に保存することを特徴とする防錆方法。