説明

防錆型一液ブロックポリウレタン組成物

【目的】 従来からの一液ブロック型ポリウレタン樹脂組成物に防錆性能を付与する。
【構成】 一液ブロックポリウレタン組成物であって、ポリウレタン樹脂1に対して瀝青系樹脂を0.2〜10の割合にて混合してなることを特徴とする防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。瀝青系樹脂の組成中、アスファルテンの占める割合が8重量%未満である上記防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は主として車両に塗布される一液ブロックポリウレタン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車が走行時に跳ね上げる小石が車体にあたり、その傷より水分が侵入して鋼板に錆が発生する事態を防止するため、耐チッピング塗料と呼ばれる厚膜型の塗料が床裏面、ホイルハウス、サイドシル等に塗布されている。また、鋼板の繋ぎ目部分、末端の折り曲げ部分には水の浸入を防止するためシーリング材が塗布されている。また、鋼製建造物への防錆対策として、瀝青系の塗料や、瀝青系物にエポキシ樹脂を併用したタールエポキシ塗料が使用されているが、この場合に使用される瀝青質物は常温において固体若しくは著しく流動性が低い物性を有するため、塗料化するに際しては溶剤添加ワニスとして使用するか、あるいはホットメルトとして塗装するという手段が必要であった。
【0003】当初、これらの部位に塗布される耐チッピング塗料は瀝青系のバインダーに充填材を分散させたタイプが主であったが、瀝青系の塗膜は温度が低くなると堅く割れやすくなり、いわゆる耐寒性に劣るという欠点が露呈し、そのため塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂の単重合体やこれらの樹脂の共重合体を適当な可塑剤、フタル酸系の可塑剤等で可塑化し充填材を分散させたタイプに次第に置き代わり、同時にシーリング材も塩化ビニル樹脂系のプラスチゾル組成物が一般に使用されている。さらに塗膜外観を重要視される部位に関してはウレタン樹脂を重合させたプレポリマーの末端官能基をオキシム類、ラクタム類等の適当なブロック剤によりブロックしたポリイソシアネートとポリアミン、ポリアミド、ポリオール等の活性水素を含む化合物を混合させておき、加熱によってイソシアネートの末端ブロックがはずれる事により活性水素とイソシアネート末端基がウレタン結合を形成する、一液ブロックウレタン型樹脂による耐チッピング塗料や、アミン系硬化剤によるポリエステル系樹脂による耐チッピング塗料が使用されている、というのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、耐チッピング塗料としては、耐チッピング性は従来の耐チッピング性塗料と同等以上にしかも防錆性能を兼備する、シーリング材として使用した場合にも従来は防水性能に比較してやや劣っていた防錆性能を顕現しうる塩化ビニルプラスチゾル組成物を実現する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決せんとして本発明者らは鋭意研究の結果、ポリウレタン樹脂に一定割合で瀝青系樹脂を混合した組成物によって、防錆性能を兼備した耐チッピング塗料として使用できる、一液ブロックポリウレタン組成物が得られる事を見出したものである。すなわち本発明は以下に存する。
【0006】一液ブロックポリウレタン組成物であって、ポリウレタン樹脂1に対して瀝青系樹脂を0.2〜10の割合にて混合してなることを特徴とする防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。
【0007】瀝青系樹脂の組成中、アスファルテンの占める割合が8重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。
【0008】本発明で使用される一液ブロックウレタン樹脂は、従来公知のブロックウレタン樹脂が使用できる。すなわち、ポリイソシアネートとしては予め重合反応を行い高分子化されているプレポリマーでありTDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)、XDI(キシレンジイソシアネート)、HMDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)H12MDI(水添加MDI)IPDI(イソホロンジイソシアネート)等が挙げられる。末端基をブロックするブロック化剤としてはオキシム系化合物、ラクタム系化合物等が例示出来る。
【0009】本発明に使用する活性水素化合物としては水酸基を有するポリアミン、ポリアミド、グリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等のポリオール類が例示出来る。これらの樹脂は適当な高沸点の脂肪族溶剤、芳香族溶剤等によりカットバックすることが可能である。
【0010】本発明では、これら上記ポリウレタン樹脂1に対して0.2〜10の割合で瀝青系樹脂を混合することを必須とする。混合割合が、0.2未満であると所望の防錆効果が得られない虞れがある。一方、10を超えて混合した場合には、塗膜を焼き付け乾燥した時にブリードと呼ばれる塗膜欠陥が発生する虞れがある。使用できる瀝青系樹脂としては、組成が石油学会で規定しているアスファルトの4成分(飽和分、芳香族分、レジン、アスファルテン)を含有するものであれば良いが、特に、その組成中、アスファルテンの占める割合が8重量%未満の物が推奨される。アスファルテンが8重量%未満であると、その瀝青系樹脂の常温における物性は流動性が高く、可塑剤との混合が極めて容易であり、塗膜となった後の防錆効果が極めて高い。アスファルテンの占める割合が8重量%を超えると常温では流動性が乏しくなり、可塑剤との混合が困難となるばかりでなく、防錆効果が低下する虞れが生じる。
【0011】本発明ではこれら瀝青系樹脂を混合したウレタン樹脂に、必要に応じて充填材を配合することができる。本発明に使用できる充填材は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、アルミナ等の顔料類、マイカ等のリン片状充填材、プラスチックバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、炭素中空球等の中空状充填材等が例示できる。
【0012】本発明ではこれら瀝青系樹脂を混合したウレタン樹脂に、必要に応じて各種の添加剤を配合する事ができる。本発明に使用できる添加剤は、タレ防止剤、レオロジーコントロール剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、紫外線吸収剤、吸湿剤、塗装作業性向上のための高沸点溶剤等が例示できる。当該添加剤の配合量は、0〜10重量%とすることが好ましい。
【0013】本発明になる防錆型一液ブロックポリウレタン組成物を製造するには、上記の各種配合物をディゾルバー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、オープンニーダー、真空ニーダー等の従来公知の混合分散機によって分散混練することにより製造される。また、本発明になる防錆型一液ブロックポリウレタン組成物をシーリング材として塗装するには、エアレスポンプ等により駆動する高圧塗装機により、フローガンと呼ばれる専用塗装機によって塗装され、耐チッピング塗料として塗装するにはエアレススプレーガン、エアスプレーガン等によって塗装される。
【0014】
【実施例】以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0015】
【実施例1】ラクタムブロックのTDI、ポリエステルポリオールを反応当量含有するポリウレタン樹脂45重量%、アスファルテン1.5重量%の瀝青系樹脂10重量%、炭酸カルシウム35重量%、高沸点溶剤5重量%、分散剤2重量%、レオロジーコントロール剤1重量%、消泡剤2重量%をプラネタリーミキサーにて分散混合し、耐チッピング塗料1を得た。
【0016】
【実施例2】オキシムブロックのIPDI、ポリエーテルポリオールを反応当量含有するポリウレタン樹脂45重量%、アスファルテン1.5重量%の瀝青系樹脂12重量%、炭酸カルシウム33重量%、高沸点溶剤5重量%、分散剤2重量%、レオロジーコントロール剤1重量%、消泡剤2重量%をプラネタリーミキサーにて分散混合し、耐チッピング塗料2を得た。
【0017】
【実施例3】ラクタムブロックのH12MDI、ポリエーテルポリオールを反応当量含有するポリウレタン樹脂45重量%、アスファルテン1.5重量%の瀝青系樹脂12重量%、炭酸カルシウム33重量%、高沸点溶剤5重量%、分散剤2重量%、レオロジーコントロール剤1重量%、消泡剤2重量%をプラネタリーミキサーにて分散混合し、耐チッピング塗料3を得た。
【0018】
【比較例1】ラクタムブロックのTDI、ポリエステルポリオールを反応当量含有するポリウレタン樹脂45重量%、炭酸カルシウム35重量%、硫酸バリウム10重量%、高沸点溶剤5重量%、分散剤2重量%、レオロジーコントロール剤1重量%、消泡剤2重量%を、耐チッピング塗料4を得た。
【0019】
【試験方法】耐チッピング塗料1〜4を次の手順にて試験板に塗装し防錆試験を行った。
1)化成処理、カチオン電着塗装を終了した、厚さ0.8mm、縦15cm、横8cmの自動車用鋼板に、塗装圧90kg/cm2で塗装し、140℃で15分焼付け硬化させた。
2)中塗塗料を静電塗装機にて塗装し、140℃で25分焼付け約30μの塗膜を形成した。
3)上塗塗料を静電塗装機にて塗装し、140℃で25分焼付け約30μの塗膜を形成した。
4)試験板に6号砕石を1回につき500g圧縮空気で5回衝突させ、耐チッピング性能を観察した。
5)耐チッピング試験を終了した試験板を40℃雰囲気の塩水噴霧試験機中に安置して、10日間放置した後取り出し、錆の発生箇所を数えた。
【0020】
【結果】


【0021】
【発明の効果】本発明になる一液ブロックポリウレタン組成物は、従来の同様の組成物に比較して明らかに防錆性能に優れるため、自動車の耐チッピング塗料として塗装した場合には傷に対して優れた防錆効果を発揮し、また、シーリング材として塗布した場合には防水性能に加えて優れた防錆性能をも発揮する。また、重防食分野において使用されている瀝青系塗料と異なり、一切の溶剤を含まない瀝青系樹脂を使用するため、自動車に塗装して加熱乾燥した場合でも有毒なガスを発生せず環境問題を引き起こす虞れがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一液ブロックポリウレタン組成物であって、ポリウレタン樹脂1に対して瀝青系樹脂を0.2〜10の割合にて混合してなることを特徴とする防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。
【請求項2】 瀝青系樹脂の組成中、アスファルテンの占める割合が8重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の防錆型一液ブロックポリウレタン組成物。

【公開番号】特開平6−299065
【公開日】平成6年(1994)10月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−107172
【出願日】平成5年(1993)4月12日
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)