説明

防音カバー付燃料タンクにおけるドレン構造

【課題】 防音カバー付燃料タンクにおいて、雨水や注油時に漏れた燃料をドレン部材を通して速やかに防音カバーの外に排出することができ、防音カバーに裏打ちした吸音材に、雨水や燃料が染み込むことがなく、吸音材の劣化による吸音効果の低下をもたらすことがない。
【解決手段】 燃料タンクTを、吸音材22を裏打ちした防音カバー20で覆い、燃料タンクTの注入口14を、防音カバー20の貫通孔24を通して外部に臨ませた防音カバー付燃料タンクにおいて、燃料タンクTの上面と、防音カバー20との間に、弾性部材よりなるドレン部材60を設け、ドレン部材60により注入口14と貫通孔24との間を液密に封緘し、ドレン部材60の環状の誘導樋64に連通するドレン管62の先端を、防音カバー20の外方に延出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの外周を、吸音材を裏打ちした防音カバーで覆い、燃料タンクの上面に開口した注入口を、防音カバーの天板部分に開口した貫通孔を通して外部に臨ませた防音カバー付燃料タンクにおいて、注油時に漏れた燃料や雨水を防音カバー外に誘導排出させるようにしたドレン構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンク10に、そのアッパーパネル11を覆うように、裏面に吸音層15を裏打ちしたインシュレータ(防音カバー)13を設置し、そのインシュレータ13に切欠部21を設け、この切欠部21で燃料タンク10の給油パイプ20を逃げるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭63−166831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記特許文献1のものでは、燃料の注油時に漏れた燃料や雨水が、インシュレータ裏面の吸音層に至り、そこに染み込む可能性があり、吸音層を劣化させて所期の吸音効果が発揮できなくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、漏れた燃料や雨水を、速やかに防音カバーの外に排出できるようにして、前記問題を解決できるようにした、新規な防音カバー付燃料タンクにおけるドレン構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、燃料タンクの外周を、吸音材を裏打ちした防音カバーで覆い、燃料タンクの上面に開口した注入口を、防音カバーの天板部分に開口した貫通孔を通して外部に臨ませてなる、防音カバー付燃料タンクにおいて、
燃料タンクの上面と、防音カバーの天板部分との間に、弾性部材よりなるドレン部材を介装させ、該ドレン部材により注入口の外周と貫通孔との間を液密に封緘し、ドレン部材に設けた環状の誘導樋をもって注入口の外周を囲繞し、その誘導樋に連通するドレン管の先端を、防音カバーの外方に延出させたことを特徴としている。
【0006】
また、前記目的を達成するために、請求項2の発明は、前記請求項1のものにおいて、 前記ドレン部材は、注入口の外周と貫通孔との間を液密に封緘すると共に前記誘導樋を形成した環状の主体部分と、その主体部分の外周縁よりその径方向に延長されるドレン管とよりなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、注油時に漏れた燃料や雨水をドレン部材を通して速やかに防音カバーの外に排出することができ、防音カバーに裏打ちした吸音材に、その燃料や雨水が染み込むことがなく、該吸音材の劣化による吸音効果の低下をもたらすことがない。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、ドレン部材は、注入口周囲の燃料や雨水を、確実、迅速に防音カバーの外に誘導することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0010】
図1は、エンジン組立体の全体側面図、図2は、図1の2−2線に沿う拡大断面図、図3は、図2の3−3線に沿う断面図、図4は、防音カバー取付構造の分解斜視図、図5は、図4の5矢視の防音カバーの拡大底面図、図6は、図5の6−6線に沿う断面図、図7は、ドレン部材の斜視図、図8は、図7の8−8線に沿う断面図である。
【0011】
図1において、汎用エンジン組立体Aは、基台1上に設置されるエンジン本体3のクランクケース部3c上に燃料タンクTが搭載され、また、エンジン本体3の斜め上方に延びるシリンダブロック部3bの上方にエアクリーナ2が配置されている。エアクリーナ2の下部には、該エアクリーナ2とエンジン本体3とを連絡する吸気系4が配置されている。また、クランクケース部3cのクランク軸3s方向の一側(図1、手前)には、冷却ファン(図示せず)を覆うファンカバー5が設けられる。クランクケース部3cの上部には、複数の支持ブラケット6が一体に設けられ、これらの支持ブラケット6にボルト・ナット7をもって燃料タンクTが支持される。
【0012】
燃料タンクTは、上下方向に扁平な四角な箱状に形成されており、金属材料、硬質合成樹脂材料などを絞り成形して得られるアッパータンク半体10と、ロアータンク半体を一体に結合してなるものであり、すなわち、アッパータンク半体10の開放下面の周囲およびロアータンク半体11の開放上面の周囲にそれぞれ一体に突出される外向きフランジ部10f,11f同士を合掌接合して、それらを液密に溶接してなる接合フランジ部12を有する密閉状燃料タンクTが構成される。
【0013】
燃料タンクTの上面中央部には、短円筒状の注入口14が上向きに形成され、この注入口14を通して、燃料タンクT内に燃料が注入され、この注入口14は、燃料キャップ17により開閉可能に閉じられる。また、燃料タンクTの上面には、注入口14を囲むようにU字状の凹部15が形成され、この凹部15に後述するドレン部材60の下面が受容される。
【0014】
図1〜3に示すように、前記燃料タンクTの外周は、防音バー20により覆われて、この燃料タンクTから発する騒音をこの防音カバー20により吸収できるようにされる。防音カバー20は、図2〜6に示すように、硬質合成樹脂板などよりなるカバー本体21と、このカバー本体21の内面に一体に裏打ち、すなわちラミネートされるグラスウールなどの吸音材22とより構成されており、燃料タンクTの上面を覆う四角な天板部分20rと、その天板部分20rの周囲より下方に一体に垂下して燃料タンクTの側面を覆う側壁部分20sとを備え、この側壁部分20sの一側面(前記エアクリーナ2に覆われる面)の大部分は開放23されている。防音カバー20の天板部分20rの中央部には、前記注入口14の貫通される貫通孔24が穿設されており、この貫通孔24の径方向両側に一対の係止溝25が形成されている。また、防音カバー20の天板部分20rと側壁部分20sとの境界コーナ部には、後述するドレン部材60のドレン管62の挿通される挿通孔26が開口されている。防音カバー20の天板部分20rの内面に裏打ちされる吸音材22は、かぎ孔状に切り欠かれており、この切欠部27(図5参照)に、後述のドレン部材60の上面が受容される。そして、防音カバー20の側壁部分20sには、後述するステー40を取り付けるための、取付孔を開口した3つの取付部28,29,30が設けられる。
【0015】
前記防音カバー20は、ステー40を介して燃料タンクTに取り付けられる。このステー40は、2つのステー半体41,42とに2分割され、それらを一体に結合して方形枠状に形成される。図4に示すように、2つのステー半体41,42は、いずれも帯状金属板のプレス成形により略同形のホーク状に形成されて、燃料タンクTの、接合フランジ部12直下の胴部の半外周にそれぞれ嵌合される。2つのステー半体41,42は、いずれも外端辺部41a,42aと、その両端より略平行に延びる左右側辺部41b,41c;42b,42cとを有し、それらの上縁には、間隔をあけてかぎ状の複数の係合片45,46が上向きに一体に形成されており、それらの係合片45,46は、後に述べるように、燃料タンクTの接合フランジ部21に係合可能である。また、2つのステー半体41,42の外端辺部41a,42aの中間部には逆三角形状の第1の取付片47,48がそれぞれ一体に垂下されていて、これら第1の取付片47,48の下端にねじ孔とウエルドナットが設けられる。
【0016】
図3,4に示すように、一方のステー半体41の左側辺部41bは、その右側辺部41cよりも若干長く形成されるのに対して他方のステー半体42の右側辺部42cは、その左側辺部42bよりもの若干長く形成されており、一方のステー半体41の左側辺部(長い方)41bと、他方のステー半体42の右側辺部(長い方)42cの自由端近傍には、L字状の第2の取付片49,50がそれぞれ上向きに突設されており、それらの第2の取付片49,50の上端にねじ孔とウエルドナットが設けられる。
【0017】
2つのステー半体41,42の左、右側辺41b,41c;42b,42cの自由端(内端)は、略直角に折り曲げられて、そこに取付片51,52;53,54がそれぞれ形成され、取付片51,54にねじ孔が、取付片52,53にねじ孔とウエルドナットが設けられる。
【0018】
2つのステー半体41,42を、燃料タンクTの両外側方から、該燃料タンクTの接合フランジ部12の直下の胴部に嵌合させる。このとき、それらのステー半体41,42にそれぞれ形成した複数の係合片45,46は接合フランジ部12に係合される。そして、それらのステー半体41,42の取付片51,53および52,54は互いに衝合され、それらはボルトbにより一体に結合される。以上により、図1〜3に示すように、燃料タンクTの接合フランジ部12の直下の胴部を、2つのステー半体41,42よりなるステー40により取り巻いて、そのステー40を燃料タンクTに固定することができ、この状態で、図3に示すように、2つのステー半体41,42は、注入口14の中心に対して点対称に配置される。しかして、ステー40を燃料タンクTに固定するに際して、燃料タンクTには、何らの加工もしない。
【0019】
図1〜3に示すように、燃料タンクTには、その上方から防音カバー20が被覆される。この場合、図1に示すように、防音カバー20の、エアクリーナ2と対面する側壁部分20sは開放23されていて、防音カバー20内のこもった熱は、この開放23部から外部に発散させることができ、また、この開放23部は、エアクリーナ2により覆われるので、防音カバー20の防音作用が損なわれることがない。
【0020】
図3に示すように、防音カバー20の側壁部分20Sの相対向する2つの取付部28,29と、ステー40の第1の取付片47,48とをボルトbにより固定し、さらに他の取付孔30とステー40の第2の取付片50とをボルトbにて一体に結合する。以上により、防音カバー20は、ステー40に3点にて固定支持される。
【0021】
なお、防音カバー20の開放23部(エアクリーナ2側)に対応する第2の取付片49は、この実施例では、防音カバー30の取り付けには寄与しないが、たとえば、開放23部を有しない他の防音カバー20の取り付けに利用される。
【0022】
燃料タンクTから発する騒音は、防音カバー20により吸収されて外部への発散を可及的に低減することができる。また、この防音カバー20の燃料タンクTへの取付に際して、該燃料タンクTには何らの加工もしないですむことから、燃料タンクTの強度損を招くことがなく、その耐久性を高めることができる。また、燃料タンクTの汎用性が高められ、たとえば、防音カバー20を必要としない燃料タンクにも何ら支障なく使用が可能である。
【0023】
図1,2に示すように、燃料タンクTの上面と、防音カバー20の天板部分20rの内面との間には、ドレン部材60が設けられる。このドレン部材60は、図7、8に示すように、ラバーなどの弾性体により形成されており、環状の主体部分61と、この主体部分61の一側からその径方向に延長されるドレン管62とより構成されており、前記主体部分61の中央には、燃料タンクTの注入口14の外周に嵌合される嵌合孔63が穿設されると共にその周囲に環状の誘導樋64が形成されている。さらに、環状の主体部分61の外周縁には断面コ字状の周溝65が形成されている。図7に示すように、周溝65の、ドレン管62と直交する径方向両側に、一対の位置決め片66が一体に形成され、これらの位置決め片66は、防音カバー20の貫通孔24に形成した係止溝25(図4参照)に係合されてドレン部材60の防音カバー20に対する位置決めがなされる。一方、前記ドレン管62は直状の角パイプにより形成されており、その基端は、前記誘導樋64に連通され、また、その先端は斜めにカットされて下向きに開口される。
【0024】
前記ドレン部材60は、燃料タンクTと防音カバー20との間に設けられる。図1,2に示すように、ドレン部材60の嵌合孔63は燃料タンクTの注入口14の外周に密に嵌合され、該ドレン部材60の下面は燃料タンクTの上面の凹部15に受容される。燃料タンクTを覆う防音カバー20の貫通孔24の内周縁は、ドレン部材60の周溝65に密に嵌着される。このとき、貫通孔24の係止溝25は、ドレン部材60の位置決め片66に係合し、ドレン部材60の上面は、防音カバー20の吸音材22の切欠部27(図5参照)に受容される。図2に示すように、ドレン部材60のドレン管62は、防音カバー20に開口した挿通孔26を通して外部に突出され、その先端は、防音カバー20の外側面よりも外方に延長される。
【0025】
以上により、ドレン部材60は、燃料タンクTの上面と防音カバー20の内面間に挟持され、ドレン部材60の主体部分61は、燃料タンクTの注入口14と防音カバー20の貫通孔24との間に形成される間隙を液密に封緘することができ、漏れた燃料や雨水が、防音カバー20の裏側に侵入することがない。そして、図2に示すように、雨水や漏れた燃料などを、誘導樋64からドレン管62を通して防音カバー20の外に速やかに排出することができ、その雨水や燃料が燃料タンクTと防音カバー20の隙間を通って吸音材22に至り、そこに染み込むことがないので、吸音材22の劣化を防止して、長期にわたり、所期の防音機能を発揮させることができる。
【0026】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はその実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0027】
たとえば、前記実施例では、本発明ドレン構造を、汎用エンジン組立体の防音カバー付き燃料タンクに実施した場合を説明したが、これを車両用などの他のエンジンの防音カバー付燃料タンクにも実施できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】エンジン組立体の全体側面図
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図
【図3】図2の3−3線に沿う断面図
【図4】防音カバー取付構造の分解斜視図
【図5】図4の5矢視の防音カバーの拡大底面図
【図6】図5の6−6線に沿う断面図
【図7】ドレン部材の斜視図
【図8】図7の8−8線に沿う断面図
【符号の説明】
【0029】
14 注入口
20 防音カバー
20r 天板部分
22 吸音材
24 貫通孔
20 防音カバー
60 ドレン部材
61 主体部分
62 ドレン管
64 誘導樋
T 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク(T)の外周を、吸音材(22)を裏打ちした防音カバー(20)で覆い、燃料タンク(T)の上面に開口した注入口(14)を、防音カバー(20)の天板部分(20r)に開口した貫通孔(24)を通して外部に臨ませてなる、防音カバー付燃料タンクにおいて、
燃料タンク(T)の上面と、防音カバー(20)の天板部分(20r)との間に、弾性部材よりなるドレン部材(60)を介装させ、該ドレン部材(60)により注入口(14)の外周と貫通孔(24)との間を液密に封緘し、ドレン部材(60)に設けた環状の誘導樋(64)をもって注入口(14)の外周を囲繞し、その誘導樋(64)に連通するドレン管(62)の先端を、防音カバー(20)の外方に延出させたことを特徴とする、防音カバー付燃料タンクにおけるドレン構造。
【請求項2】
前記ドレン部材(60)は、注入口(14)の外周と貫通孔(24)との間を液密に封緘すると共に前記誘導樋(64)を形成した環状の主体部分(61)と、その主体部分(61)の外周縁よりその径方向に延長されるドレン管(62)とよりなることを特徴とする、前記請求項1記載の防音カバー付燃料タンクにおけるドレン構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−36151(P2006−36151A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222806(P2004−222806)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】