説明

降雨防護装置

【課題】建設中の壁式木造建築物等の室内が雨で濡れるのを防止する。
【解決手段】アングルで構成した枠体1を建築中の木造建築物の中央に設置し、樋3を枠体1に固定板2を利用して斜めに固定する。シート6を部屋の壁及び樋3に固定して部屋の床面全体をシート6で覆い、雨が床面、柱、及び壁等の部材を濡らさないようにする。シート6に降った雨は、樋3に集められて流下し、枠体1の中央に宙吊りにした集水枡5に集められ、ホースで建物外に排水される。雨は、全てシート6で受け止められるので、床面が乾燥状態に保たれる。集水枡5が宙吊となっているので、集められた雨水は、重力によって自然流下で排水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場において降雨によって建築中の部材を濡らすことないように防護すると共に、降雨を建築物から迅速に排除できるようにした降雨防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築中の建築物、特に枠組み壁工法(以下、壁式工法)の木造建築物は、屋根が構築されておらず、降雨があると床、壁、及び柱が濡れてしまい、湿潤状態となり、将来腐食の恐れがあると共に、新築家屋の内部が濡れてしまうことは施主が非常に嫌うものでもあるので、屋根が構築されるまでは、床に粘着シートを施工したり、撥水剤を床面に塗装し、できるだけ部材が濡れるのを防止している。
また、ブルーシートで覆うこともおこなわれているが、シートの重ね部分から水が入ったり、降雨の重みでシートの中央部がたわんで雨が溜まり、その処理が面倒であると共に、シートに溜まった水を排水する際に、水が床面にこぼれたり、大量の降雨があった場合、設置していたシートが溜まった雨水の重みで落ちてしまい部材を濡らしてしまうことがあった。
【0003】
【特許文献1】特許第3044695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、降雨があっても雨水が部材にかからないようにすると共に速やかに建物外に排水できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
枠体と樋からなり、枠体には樋を傾斜状態で固定する固定板が設けてあり、更に、樋にはシート固定部が設けてある降雨防護装置である。
樋は、枠体に対して取付角度が変更可能であり、固定板には長穴が形成してあり、適宜の角度に調節してボルトとナットで取り付けるものである。
枠体内には集水枡が設けてあり、樋に集めた雨水は、この集水枡に一旦集め、集水枡からホース等で排水可能な場所に導いて処理するものである。
枠体及び樋は、分解可能、または、折りたたみ可能としてあり、設置現場への搬送を容易にしている。
また、樋は、継ぎ足し可能にしてあり、設置場所に応じて長さを調節することができる。
【発明の効果】
【0006】
工事中の木造建築物の中央部分に本装置をセットしてシートを壁等に引掛けて固定することによって、降雨は、シートで受け止められて樋に流れ込んで建物の外に速やかに排出されるので、床面やその他の部材に雨がかかることがない。したがって、部材が湿潤状態となることがなく、部材の寿命に影響を与えることがなく、降雨に対する対処が万全であることを示すことができ、施主に安心感を与えることができる。
樋の傾斜角を変更できるので、適用範囲が広く、枠体及び樋が分解、または、折りたたみ可能であるので、現場への搬入及び撤収が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図示する実施例に基づいて説明する。
図1に示すように、枠体1は、アングルなどの鋼材を直方体または立方体の形状に組み立てたものである。枠体1は、分割して持ち運びが可能なように、ボルトとナットで部材が接合されて組み立てられている。
枠体1の上面の対向する辺の中央に固定板2が溶接で固定してある。固定板2には、樋3を固定するための取付穴21が形成してあり、固定位置や樋3の固定角度を調整できるようにするため、長穴としてある。
【0008】
図2及び図3に示すように、樋3は、アルミ製であって、軽量材を使用することによって自重による固定板2に作用する荷重を小さくしてある。樋3の先端部から40〜60cmの範囲にわたって、固定板2に固定するための複数の固定穴31が設けてあり、樋3が枠体1の内部に40〜60cm程度入り込むようにしてある。
樋3は、取り扱いを容易にすると共に、設置場所の大きさに応じて必要長さを確保するため、例えば、1m、2m、3mの長さのものを1セットとし、継手部材32によって必要長さにつなぎ合わせて使用する。継手部材32は、樋3と同様の断面形状のものであり、接続用の穴が設けてあり、ボルト・ナットで固定して樋3を接続するものであり、樋3の一端部に予め固定しておき、重ね合わせ部の隙間はシール材を充填して水漏れを防止してある。
【0009】
樋3の内側には、シート6を引掛けて固定するための固定フック33が適宜の間隔で設けてあり、先端には樋3同士を連結するヒンジ34を取り付けるための穴35が形成してある。
ヒンジ34は、二つの樋3の先端を連結して固定するためのものであり、樋3の先端側面に設けた穴35を利用してボルト・ナットで固定するものである。ヒンジ34によって樋3は安定し、衝撃等で大きく動くことがなくなる。また、樋3の設置傾斜角を変更する場合も、固定板2における樋3の固定を緩めて片側の樋3の傾斜角を調整すると、ヒンジで連結されている他方の樋3の傾斜角も調整されるので、効率的である。
【0010】
枠体1の内部には、集水枡5をその底面が枠体の設置面より高い位置になるようにチェーンや長さを調整可能な棒体によって宙吊り状に固定されている。チェーンや棒体で取り付けられているので、装置の移動時には集水枡5を枠体1からはずすことができ、移動が容易となる。集水枡5の底面を設置面より高くすることによって、集めた雨水を重力によって自然流下させて排水することができる。
集水枡5の上部は開放してあり、セットした状態では、樋3の先端が集水枡5の内側に位置するようになる。集水枡5の底部には蛇腹状の排水管51が設けてあり、集水枡5内の水が排水管51に接続したホース等によって建物の外部に動力を使用することなく排出される。
【0011】
図4には、本発明の降雨防護装置の基本的な使用態様を示している。枠体1を組み立てて降雨から防御すべき建築中の室のほぼ中央に設置し、必要に応じて枠体の下部の部材を構造用の床材にビスで固定し、安定させる。
樋3の先端同士は、予めヒンジ34で接続されており、折り畳んである。この樋3に部屋の大きさに合わせて継手32を介して樋を接続して必要長さにする。接続した樋3を取付穴21を利用して仮固定する。固定板の取付穴21が長穴であるので樋3の固定位置を微調整することができる。
固定板2におけるボルトの締め付けを緩めて樋3の傾斜角の調整をおこない、樋3を固定する。
【0012】
そこで、シート6の一辺を部屋の壁等に引掛けるか固定具で固定し、他辺を樋3のフック33に引掛けて固定し、シート6によって床面を覆う。シート6を壁に固定するために布団固定具のようなものを使用すると、容易におこなうことができる。
樋3に直交する壁に対しては、シート61の角を樋3の先端部に固定し、三角形状に設置することによって、部屋全体をシートで覆い、シートの隙間ができないようにする。
【0013】
集水枡5を枠体1の内部にチェーンの長さを調節してセットし、排水口にホースを接続して、排水設備まで引き回す。
降雨があると、雨水はシート6、61で受け止められ、雨水は、樋3に流れ込み、樋3を導水路として枠体1方向に流下して集水枡5に流下する。
集水枡5に流下した雨水は、排水管51を通ってホースによって排水設備まで流れていく。集水枡5が、宙吊りとなっているので、重力によって雨水は自動的に建物外部に排出される。
【0014】
図5に示す例は、部屋の壁の一部が未だ施工されていない場合の例であり、脚立状等の仮の受け材7を室内に設置してシート6を固定して降雨防護装置を使用するものである。
図6に部屋の状態や、排水設備の位置などに応じた使用例を示す。
(1)の例は、排水の関係などで枠体1を降雨から防護すべき空間の端部に設置した例を示すものである。枠体1の片側に長く接続した樋3を固定してシート6を固定し、壁まで距離のない他方は、短い樋3としたものである。
(2)の例は、壁や柱などが未施工で床面のみを防護する場合であり、樋3を屋根状の傾斜としシート6やテント用の防水布を樋3に固定したものであり、降雨は、矢印のようにシート6の表面を流下し、建物の外部にそのまま排出され、シート6で覆われた部分は、濡れることがなく、乾燥状態に維持される。
(3)の例は、樋3を一直線となるように配置し、片流れにして雨水を建物外部にそのまま流すようにしたものである。
なお、本発明の降雨防護装置は、壁式工法の木造建築物だけでなく、在来工法の木造建築物においても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の降雨防護装置の正面図。
【図2】本発明の樋の平面図。
【図3】本発明の樋の正面図。
【図4】本発明の降雨防護装置の使用状態の説明図。
【図5】本発明の降雨防護装置の使用状態の説明図。
【図6】本発明の降雨防護装置の使用状態の説明図。
【符号の説明】
【0016】
1 枠体
2 固定板
3 樋
6 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樋を傾斜可能に取り付け可能な樋固定部を有する枠体とシート固定部が設けてある樋からなる降雨防護装置。
【請求項2】
請求項1において、樋の傾斜角度が変更可能である降雨防護装置。
【請求項3】
請求項1または2において、樋固定部は固定板であり、樋取り付け用の長穴が形成してある降雨防護装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、樋の先端にヒンジ取付部が設けてある降雨防護装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、樋は継ぎ足し式であり長さが変更可能である降雨防護装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、枠体内に集水枡が設けてある降雨防護装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、枠体が分解、または折りたたみ可能である降雨防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−138383(P2007−138383A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329199(P2005−329199)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)