説明

降雪予測装置及び降雪予測方法

【課題】局地における降雪を精度良く予測できるようにする。
【解決手段】気象予測モデルを用いて、メッシュ状に区分されたエリア毎に複数の降雪判定要素に関する気象予測データを予測する気象予測部11と、気象予測データと、気象予測データに対応する実測データである気象観測データとを蓄積するデータ蓄積部12と、降雪判定要素について予め設定された判定値を格納する判定値データベース14と、気象予測データ及び気象観測データをもとに、降雪判定要素毎の判定値を求め、求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合にエリアを降雪と判定する降雪判定部13とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、降雪を予測するための降雪予測装置及び降雪予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気象予測モデルとは、気象庁が提供する20km四方で提供されているGSM(Global Spectrum Model)と呼ばれる気象データを初期値として、より細分化したメッシュにて気象現象を予測し、その結果を提供するものである。また、提供する予測データに関しては、雨のほかに雪やあられをはじめ高層の気象データに関しても従来の気象予測データに比べて充実している。
【0003】
なお、本願に関連する公知文献として次のようなものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−109001公報
【特許文献2】特開2003−090888公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、一般的に降雪の判定は、高層の気象データに基づいて行われるため、地上における降雪を精度良く予測するのは困難であった。降雪は、降雨と比べると交通機関などに与える影響が大きいため、確実性の高い予測が望まれている。
【0006】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、局地における降雪を精度良く予測することができる降雪予測装置及び降雪予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の一態様は、メッシュ状に区分されたエリア毎に複数の降雪判定要素に関する気象予測データを予測する予測手段と、前記気象予測データと、前記気象予測データに対応する実測データである気象観測データとを蓄積する蓄積手段と、前記降雪判定要素について予め設定された判定値を格納する降雪判定データベースと、前記気象予測データ及び前記気象観測データの少なくとも一方をもとに、前記降雪判定要素毎の判定値を求め、前記求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合に前記エリアを降雪と判定する降雪判定手段とを具備する降雪予測装置を提供する。
【0008】
また、この発明の他の態様は、気象予測モデルを用いて、メッシュ状に区分されたエリア毎に複数の降雪判定要素に関する気象予測データを予測し、前記気象予測データと、前記気象予測データに対応する実測データである気象観測データとを蓄積し、前記降雪判定要素について予め設定された判定値を格納し、前記気象予測データ及び前記気象観測データの少なくとも一方をもとに、前記降雪判定要素毎の判定値を求め、前記求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合に前記エリアを降雪と判定する降雪予測方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
したがってこの発明によれば、局地における降雪を精度良く予測することができる降雪予測装置及び降雪予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る降雪予測装置の一実施形態を示す機能ブロック図。
【図2】判定値データベースの構成、及び降雪判定処理の一例を示す図。
【図3】気象情報提供部により提供される予測情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る降雪予測装置を示す機能ブロック図である。
降雪予測装置は、気象予測部11と、データ蓄積部12と、降雪判定部13と、判定値データベース14と、気象情報提供部15とを備える。
【0012】
気象予測部11は、気象予測モデルにより定期的に数時間先までの気象現象を一定時間間隔で再現し、再現結果である気象予測データを演算する。例えば、気象庁が配信する20km四方で提供されているGSM(Global Spectrum Model)と呼ばれる気象データを初期値として、5kmメッシュで区切られたエリア毎に気象予測演算を行う。ここで得られる気象予測データには、例えば、降雨量、降雪量、地上気温、850hPa気温、及び地上湿度が含まれる。
【0013】
データ蓄積部12には、上記気象予測部11により演算された気象予測データと、気象予測データに対応する実測データである気象観測データとが蓄積される。気象観測データは、気象レーダや地域気象観測システム(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)等の外部気象観測機器により取得される。
【0014】
判定値データベース14は、複数の降雪判定要素について予め設定された判定値を格納する。降雪判定部13は、予測地点に対応するエリアに対し、この判定値データベース14を用いて、上記気象予測データ及び気象観測データをもとに、降雪判定要素毎の判定値を求め、求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合を降雪と判定する。判定値データベース14に格納される内容、及び降雪判定部13の処理の詳細は後述する。
【0015】
気象情報提供部15は、降雪判定部13の判定結果に基づいてユーザに提供するための気象予測情報を作成し、ネットワーク等を介してユーザの利用端末に提供する。
【0016】
次に、図2を参照して、判定値データベース14の構成、及び、降雪判定部13の処理の詳細について説明する。
判定値データベース14には、例えば5つの降雪判定要素について予め設定された降雪判定値が格納されているものとする。ここで、降雪判定要素は、図2に示すように、(1)気象予測モデルの予測データにおける降雪の比率、(2)地上気温の予測データ、(3)850hPa気温の予測データ、(4)現在の地上気温の観測データと予測データとの差、(5)地上湿度の予測データ、とし、各降雪判定要素について、気象予測データ及び気象観測データをもとに判定するための降雪判定値が予め設定されている。なお、(1)の降雪の比率とは、例えば、現在から一定期間先までの1時間間隔で予測された降雪の比率(降雪の予測回数/(降雨の予測回数+降雪の予測回数))を表す。
【0017】
降雪判定部13は、上記5つの降雪判定要素について、気象予測データ及び前記気象観測データの少なくとも一方をもとに、(1)から(5)までの降雪判定値を求め、この(1)から(5)までの降雪判定値の合計値が予め定められた閾値“5”以上の場合に当該エリアを降雪と判定し、閾値より小さい場合は降雨と判定する。なお、降雪判定値及び降雨/降雪判定の閾値は、予測精度の評価により調整する。
【0018】
図3に、気象情報提供部15により提供される気象予測情報の一例を示す。図3に示すように、例えば、現在から1時間先毎の降雪予測情報がユーザに認識されやすい形式で提供される。
【0019】
以上述べたように、上記実施形態では、気象予測モデルにより演算された予測データ及び観測データをもとに、複数の降雪判定要素について降雪判定値を求め、求められた降雪判定値の合計値をもとに降雪判定を行う。このように降雪を判定するための要素を増やすことで不確実性を有する降雪の予測データの精度を向上させることができる。
【0020】
したがって上記実施形態によれば、局地における降雪を精度良く予測可能な降雪予測装置を実現することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0022】
11…気象予測部、12…データ蓄積部、13…降雪判定部、14…判定値データベース、15…降雪情報提供部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象予測モデルを用いて、メッシュ状に区分されたエリア毎に複数の降雪判定要素に関する気象予測データを予測する予測手段と、
前記気象予測データと、前記気象予測データに対応する実測データである気象観測データとを蓄積する蓄積手段と、
前記降雪判定要素について予め設定された判定値を格納する判定値データベースと、
前記気象予測データ及び前記気象観測データの少なくとも一方をもとに、前記降雪判定要素毎の判定値を求め、前記求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合に前記エリアを降雪と判定する降雪判定手段と
を具備することを特徴とする降雪予測装置。
【請求項2】
前記降雪判定要素は、基準時刻から一定期間先までの複数時刻に予測された降雪の比率を表す情報を含むことを特徴とする請求項1記載の降雪予測装置。
【請求項3】
気象予測モデルを用いて、メッシュ状に区分されたエリア毎に複数の降雪判定要素に関する気象予測データを予測し、
前記気象予測データと、前記気象予測データに対応する実測データである気象観測データとを蓄積し、
前記降雪判定要素について予め設定された判定値を格納し、
前記気象予測データ及び前記気象観測データの少なくとも一方をもとに、前記降雪判定要素毎の判定値を求め、前記求められた判定値の合計値が予め定められた閾値以上の場合に前記エリアを降雪と判定することを特徴とする降雪予測方法。
【請求項4】
前記降雪判定要素は、基準時刻から一定期間先までの複数時刻に予測された降雪の比率を表す情報を含むことを特徴とする請求項3記載の降雪予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−181175(P2010−181175A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22659(P2009−22659)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)