説明

除塵装置

【課題】スクリーンに付着した塵芥を、人為的または機械的に除去することなく、しかも、簡単な構成で、かつ、短期間に設置できるようにする。
【解決手段】本水路Waに設けられる堰堤50よりも上流側で、本水路Waから分岐される分岐水路Wbの取水口51に設置され、該取水口51から分岐水路Wbに流入しようとする塵芥Xを堰堤50側に流下させる除塵装置において、直立支持される回転軸2と、該回転軸2に対して同心状に設けられる円筒状のスクリーン6とを有する回転体1を備え、前記スクリーン6は、取水口51の幅寸法よりもやや小さい外径を有し、外周面6bの一部が本水路Wa側に突出して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川などの本水路から分岐される分岐水路の取水口に設置される除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水力発電所の発電に利用される水量を確保するために、例えば、河川などの本水路から分岐して分岐水路が形成される。そして、この分岐水路の下流側には、本水路の上流側から流下してくる塵芥が水力発電所の水車に流入しないように、除塵装置が設置されている。
【0003】
該除塵装置としては、回転軸およびスクリーンを有する回転体を備えている。回転軸は、分岐水路を形成する両側の側壁に跨って配置されているものが公知になっている(特許文献1参照)。スクリーンは、複数の網目を有するネットで構成されている。また、スクリーンは回転軸に対して同心状に固設され、スクリーンの外周面の一部が水面から臨出するように、両側壁に回転支持されている。また、水面から臨出するスクリーンの外周面に対して、略接線方向に、かつ、水流とは反対側に向かってレーキが取り付けられている。そして、回転体は、水流によって回転し、スクリーンに付着した塵芥がレーキによって掻き上げられる。そうすることで、塵芥が水力発電所の水車に流下しないようにしている。
【0004】
また、分岐水路の取水口の開口部に設置された従来の除塵装置がある。該除塵装置は、分岐水路の水流方向に沿って上下方向に平行して配置された複数の棒状部材からなるスクリーンと、該棒状部材の軸方向に沿って往復動自在に走行する電動台車と、該電動台車に、走行方向に対して直交する方向(鉛直方向)に取り付けられたブームと、該ブームの先端部に固設された熊手とを備えたものが公知になっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−307518号公報
【特許文献2】特開平08−253921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の除塵装置の場合、レーキに溜まった塵芥を人為的に除去する必要があるため、常時監視しなければならないという問題が生じる。
【0007】
また、前記特許文献2の除塵装置の場合、電動台車でスクリーンに付着した塵芥を除去しているため、電源を供給する電源設備および電動台車を走行させるレールなどの機材が必要になり、その分コスト高になる。また、装置の構成が大掛かりであるため、設置工事にも日数がかかってしまうという問題がある。
【0008】
ここで、取水口に、前記特許文献1に記載されている回転体を配置し、該回転体のスクリーンに付着した塵芥を、前記特許文献2に記載されている電動台車の熊手で除去して、堰堤側に流下させることも考えられるが、前記特許文献1に記載されている回転体は、スクリーンが分岐水路の水路に跨るように設置されるので、分岐水路の下流側に向かう水流によって回転することになる。したがって、電動台車の熊手で、回転体のスクリーンに付着した塵芥を除去するとしても、塵芥が、回転体のスクリーンを越えて、分岐水路の下流側に流れる可能性は大きく、水力発電に支障をきたすことが考えられる。つまり、前記特許文献1,2の組み合わせによる除塵装置は、水力発電所の除塵装置としては、不適であると考察される。
【0009】
そこで、本発明は、スクリーンに付着した塵芥を、人為的または機械的に除去することなく、しかも、簡単な構成で、かつ、短期間に設置できる除塵装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る除塵装置は、本水路に設けられる堰堤よりも上流側で、本水路から分岐される分岐水路の取水口に設置され、該取水口から分岐水路に流入しようとする塵芥を堰堤側に流下させる除塵装置において、直立支持される回転軸と、該回転軸に対して同心状に設けられる筒状のスクリーンとを有する回転体を備え、前記スクリーンは、取水口の幅寸法よりもやや小さい外径を有し、外周面の一部が本水路側に突出して配置されることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、回転体のスクリーンの外周面の一部が本水路に突出するように、分岐水路の取水口に配置されることで、回転体は、直立支持された回転軸を回転中心にして回転するようになる。また、回転体が本水路の水流によって回転することで、本水路に突出するスクリーンの外周面の一部に、塵芥が当接して堰堤側に受け流されるようになり、流下する塵芥が分岐水路の取水口に滞留することがない。したがって、水力発電所に対する一定水量を常時確保できるようになる。さらに、洪水時においても、上流から流下する塵芥が取水口に滞留することがなく、取水口から常時一定水量を取水することができる。
【0012】
また、本発明によれば、前記スクリーンの外側または内側に複数の羽根を配置するような構成を採用することもできる。
【0013】
かかる構成によれば、回転体は、本水路の水流を複数の羽根で受けるようになるので、水流によって一方向に回転しやすくなり、塵芥を堰堤側に流下させやすくなる。すなわち、取水口に塵芥が溜まることがないので、分岐水路に対して、本水路からは水のみが供給されるようになる。
【0014】
また、本発明によれば、前記スクリーンに浮体を取り付けるような構成を採用することもできる。
【0015】
かかる構成によれば、浮体によって、スクリーンにかかる荷重が低減されて、スクリーンを介して回転軸にかかる荷重を低減できる。したがって、スクリーンが円滑に回転できるようになるとともに、水流が無駄なく回転力に寄与されるようになる。
【0016】
また、本発明によれば、取水口を形成する下流側の側壁に、堰堤側に位置するスクリーンの外周面に対して、スクレーパーが接線方向に延出して形成されるような構成を採用することもできる。
【0017】
かかる構成によれば、堰堤側に位置するスクリーンの一部の外周面に当接しつつ、取水口の下流側の側壁との間に向かって流される塵芥が、堰堤側に位置するスクリーンの一部の外周面に対して接線方向に延出して形成されたスクレーパーによって強制的に離されて、堰堤側に流下されるようになる。すなわち、スクレーパーによって、スクリーンの表面が常時きれいに維持できる。
【0018】
また、本発明によれば、本水路の上流側に位置するスクリーンの外周面を囲むように、取水口を形成する上流側の側壁に遮水部が形成されるような構成を採用することもできる。
【0019】
かかる構成によれば、本水路側に突出するスクリーンの上流側の円弧面が、取水口の上流側の側壁に形成される遮水部によって囲まれるので、下流側に位置するスクリーンの一部の外周面のみが本水路に臨出するようになる。したがって、本水路の上流側から流下してくる塵芥が、本水路側に突出するスクリーンの上流側の円弧面に当接することなく、下流側に位置するスクリーンの一部の外周面によって受け流されて、堰堤側に向かって流下しやすくなる。すなわち、本水路側に突出する、上流側に位置するスクリーンの一部の外周面と取水口の上流側の側壁との間に、塵芥が滞留することがなく、分岐水路における一定水量を確保しやすくなる。
【0020】
また、本発明によれば、塵芥が本水路側に突出するスクリーンの外周面の頂部を越流できる程度に、遮水部の先端部にやや傾斜して延出部が形成されるような構成を採用することもできる。
【0021】
かかる構成によれば、上流から下流に向かう水流の方向が、延出部によってスクリーンを越えて堰堤側に向かう水流が形成されるようになり、取水口における塵芥の滞留がより一層防止できるようになる。
【0022】
また、本発明によれば、前記堰堤は、その一部を開閉するゲートを設けるような構成を採用することもできる。
【0023】
かかる構成によれば、堰堤の一部がゲートによって開放されるので、本水路が増水した場合の越流だけでなく、堰堤付近に集積した塵芥を、堰堤の一部を開放して下流側に流下させることができる。すなわち、取水口および堰堤を含む水域をきれいにできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回転軸に対して同心状に設けられる筒状のスクリーンの外周面の一部が本水路側に突出するように、本水路から分岐される分岐水路の取水口に、回転体の回転軸を直立支持させるようにしたので、回転体が本水路の水流によって回転することができる。すなわち、塵芥の分岐水路への流入を阻止することができる。また、筒体を軸によって回転させる簡単な構成のものを水路に配置するだけで、本水路において上流側から流下する塵芥を、堰堤側に流下させることができて、取水口に対する塵芥の滞留を防止することができ、分岐水路における一定水量を常時確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る除塵装置を示す概略平面図。
【図2】図1の回転体の一部を破断した状態を示す概略斜視図。
【図3】(a)は、水流を羽根の溝状部で受ける状態を示す拡大平面図、(b)は、水流によって羽根がストッパから離間する状態を示す拡大平面図。
【図4】(a)は、角落としを抜き取った堰堤の部位から塵芥が流下する状態を示す概略側面図、(b)は、雨水などで本水路が増水した場合において、塵芥が堰堤を越えて流下する状態を示す概略側面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る除塵装置を示す概略平面図。
【図6】浮体が取り付けられた回転体を示す斜視図。
【図7】ゲートが設けられた堰堤と、該堰堤の部位から塵芥が流下する状態とを示す概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る除塵装置の一実施形態について図1〜図7を参照しながら説明する。なお、図2および図6においては、一部を破断して、内部に設けられた一枚の羽根の支持部分を図示しているが、実際には、図1および図5に示すように、複数配置されているものとする。また、図1および図5は、正面から見て、図面の右側を上流側とし、左側を下流側とする。
【0027】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る除塵装置について図1〜図5を参照して説明するが、まず、本発明の除塵装置Aが設置される水路について簡単に説明する。該水路Wは、図1に示すように、本水路Waと、分岐水路Wbとを備えている。本水路Waは、下流側に堰堤50が設けられている。分岐水路Wbは、水力発電所(図示せず)に所定の水量を供給すべく、堰堤50よりも上流側の本水路Waから分岐されて形成されている。そして、本水路Waの上流側から流下する塵芥Xが分岐水路Wbに流入しないように、分岐水路Wbの取水口51に除塵装置Aが設置される。また、堰堤50には、その上端部に、厚さ方向に沿って溝50aが形成されている。また、溝50aには、塵芥Xを流下させるための複数枚の角落とし500,…が配置されている(図4(a),(b)参照)。
【0028】
該除塵装置Aは、図1および図2に示すように、回転軸2と、スクリーン6、複数の羽根10,…とを有する回転体1を備えている。
【0029】
回転軸2は、分岐水路Wbの取水口51の中央部において、分岐水路Wbを形成する底壁部に固定されたベアリング(軸受け)Bによって、直立した状態で回転自在に支持される。また、回転軸2は、軸方向に所定の間隔をおいて、4枚(複数)の円板状の支持板3a〜3dが固着されている。そして、最上部の支持板3aは、下側の3枚の支持板3b,3c,3dよりも大径で、径外方向(放射状)に複数の支持棒4,…が配置されている。また、下側の3枚の支持板3b,3c,3dの周端面には、後述する羽根10,…の支軸11,…の他端側が挿通されて回転自在に支持される挿通部5,…が同一直線状に位置するように固着されている。また、回転軸2、支持板3a〜3d、支持棒4,…は、アルミ素材により作製されている。
【0030】
スクリーン6は、複数の網目を有する樹脂製のネットから構成されている。また、スクリーン6は、内周面6aの上端部が、回転軸2の支持棒4,…に支持されて、回転軸2に対して同心状に設けられている。また、スクリーン6は、後述する取水口51の幅寸法よりもやや小さい外径を有し、外周面6bの一部(略半分)が本水路Wa側に突出して配置されている。すなわち、回転体1は、スクリーン6の外周面6bの一部(略半分)が本水路Waに突出することで、本水路Waの水流Cによって時計方向に回転することになる。
【0031】
この際、図1に示すように、本水路Waに突出したスクリーン6の外周面6bの頂部60bにおいて、上流側に位置する円弧面61bでは、前記頂部60bに向かって上昇流Caが生成され、下流側に位置する円弧面62bでは、前記頂部60bから取水口51の下流側の側壁51aに向かって下降流Cbが生成される。そして、上昇流Caと下降流Cbとが連続することで、塵芥Xを堰堤50側に流下させる水流が生成される。
【0032】
また、スクリーン6は、その内周面6aの周方向に所定の間隔をおいて複数のストッパ7,…が配置されている。このストッパ7,…は、後述する羽根10,…の回動を規制するためのものである。
【0033】
羽根10は、第1折曲片10aと、第2折曲片10bと、支軸11とを備えている。第1折曲片10aと第2折曲片10bは、平面視L字形状になるように折り曲げられている。例えば、既製の山形鋼を使用することが好ましい。支軸11は、第1折曲片10aが、最上部の支持板3aの周縁部に一端部が貫設され、下側の複数の支持板3b,3c,3dの周端面に固着された挿通部5,…に、他端側が挿通されて回転自在に支持されている。そして、第1折曲片10aは、支軸11の他端側のみに固着されており、支軸11の全体にはない。この理由としては、支軸11の全体に羽根10を固着した場合、水流Cを受けやすくなって回転性能は向上するものの、水力発電所への水量が確保されなくなるからである。また、羽根10は、図3(a)に示すように、本水路Waの水流Cを受けられるように、L字形状の溝状部100aが水流Cに対峙するように配置される。そして、羽根10は、L字形状の溝状部100aが水流Cを受けることで、羽根10の当接部12がストッパ7に当接し、その状態が維持される。一方、図3(b)に示すように、羽根10の溝状部100aの反対側の突状部100bが水流Cを受ける位置に回転するようになると、羽根10の当接部12がストッパ7から離間し、水流Cがスクリーン6を透過するようになる。このような羽根10の動きによって、回転体1が水流Cで時計方向に回転できるようなる。また、羽根10,…は、スクリーン6の内周面6aに配置されているが、スクリーン6の外周面6bに配置するようにしてもよいが、塵芥Xの付着を考慮すると、スクリーン6の内周面6aに配置することが好ましい。
【0034】
つぎに使用態様について図1および図4(a),(b)を参照して説明する。回転体1のスクリーン6の外周面6bの一部(略半分)が本水路Waに突出するように、分岐水路Wbの取水口51に配置されることで、回転体1は、直立支持された回転軸2を回転中心にして、本水路Waの水流Cによって時計方向に回転するようになる。また、回転体1が本水路Waの水流Cによって回転することで、図1の実線に示すように、本水路Waに突出するスクリーン6の上流側の円弧面61bに、塵芥Xが当接し、図1の鎖線に示すように、塵芥Xが堰堤50側に受け流されるようになり、流下する塵芥Xが分岐水路Wbの取水口51に滞留することがない。
【0035】
そして、図4(a)に示すように、堰堤50側に流下した塵芥Xは、最上段の角落とし500が抜き取られた堰堤50の部位から流下する。または、図4(b)に示すように、雨水などによる増水によって、堰堤50を越流して流下するようになる。
【0036】
このように、第1実施形態によれば、分岐水路Wbの取水口51に、回転軸2が直立支持されるように回転体1を設置し、回転軸2に対して同心状にスクリーン6を設けて、スクリーン6の外周面6bの一部が本水路Wa側に突出するようにしたので、回転体1が本水路Waの水流Cによって回転するようになる。また、スクリーン6に当接した塵芥Xが堰堤50側に受け流されるので、スクリーン6に塵芥Xが付着することがなく、スクリーン6を人為的または機械的に清掃することもない。すなわち、本水路Waにおける塵芥Xを、水流Cと回転体1の回転とによって自然に除去できるようになる。つまり、本水路Waにおける塵芥Xを、水流Cと回転体1とで堰堤50側に流下させることで、水力発電所に対する一定水量を常時確保できるようになる。また、鮎や山女などの魚類が分岐水路Wbに迷入することがない。
【0037】
(第2実施形態)
つぎに第2実施形態に係る除塵装置について図5を参照して説明する。同図において、図1と同一符号は同一もしくは相当するものを示し、これらの部位の説明は省略する。そして、図1と異なる点は、スクレーパー20と、遮水部21と、延出部22とを備えた点である。
【0038】
スクレーパー20は、取水口51を形成する下流側の側壁51aに、本水路Wa側に突出するスクリーン6の下流側の円弧面62bに対して接線方向に延出して形成されている。また、スクレーパー20の先端部が回転軸2の中心に位置するように、取水口51の下流側の側壁51aは、図1の場合よりも、本水路Waから後退している。そして、図5の実線に示すように、スクレーパー20によって、スクリーン6の下流側の円弧面62bと、取水口51の下流側の側壁51aとの間に向かって受け流された塵芥Xが、図5の一点鎖線に示すように、堰堤50側に強制的に流されるようになる。
【0039】
遮水部21は、本水路Wa側に突出するスクリーン6の上流側の円弧面61bを囲むように、取水口51の上流側の側壁51bに形成されている。具体的に説明すると、遮水部21は、第1遮水部21aおよび第2遮水部21bを備えている。第1遮水部21aは、取水口51の上流側の側壁51bの端部から本水路の水流に対して直交方向に延出して形成されている。第2遮水部21bは、第1遮水部21aの端部から堰堤50側に延出して形成されている。そして、第1遮水部21aおよび第2遮水部21bが、直角を形成しており、いずれもスクリーン6の外周面6bに対して接線方向に延出されている。そうすることで、スクリーン6の上流側に位置する円弧面61bが、第1遮水部21aおよび第2遮水部21bによって囲まれるようになり、本水路Waの水流Cの影響を受けることがなくなる。一方、本水路Wa側に突出するスクリーン6の下流側の円弧面62bのみが本水路Waに臨出するようになる。すなわち、スクリーン6の上流側の円弧面61bに塵芥Xが溜まることが回避されつつ、スクリーン6の下流側の円弧面62bが有効利用される。つまり、図5の破線に示すように、本水路Waの上流側から流下してくる塵芥Xが、スクリーン6の下流側の円弧面62bによって受け流されて、図5の二点鎖線に示すように、堰堤50側に向かって流下しやすくなる。すなわち、本水路Wa側に突出するスクリーン6の下流側の円弧面62bと取水口51の下流側の側壁51aとの間に、塵芥Xが滞留することがなく、分岐水路Wbにおいて一定水量を常時確保できるようになる。
【0040】
延出部22は、塵芥Xが本水路Wa側に突出するスクリーン6の外周面6bの頂部60bを越流できる程度に、遮水部21の先端部にやや傾斜して形成されている。具体的には、スクリーン6の外周面6bの下流側の円弧面62bが、本水路Wa側に臨出するように、かつ、堰堤50側に向かうにしたがって本水路Wa側に突出するように、遮水部21の先端部にやや傾斜して形成されている。そして、延出部22によって、上流から下流に向かう本水路Waの水流Cの方向が、本水路Wa側に突出するスクリーン6の外周面6bの頂部60bを越えて堰堤50側に向かう水流となり、取水口51における塵芥Xの滞留がより一層防止できる。
【0041】
つぎに使用態様について説明する。回転体1のスクリーン6の外周面6bの半分よりもやや大きく本水路Waに突出するように、分岐水路Wbの取水口51に配置されることで、回転体1は、直立支持された回転軸2を回転中心にして、本水路Waの水流Cによって時計方向に回転するようになる。また、回転体1が本水路Waの水流Cによって回転することで、スクリーン6の下流側に位置する円弧面62bのみに、塵芥Xが当接して堰堤50側に受け流されるようになり、流下する塵芥Xが分岐水路Wbの取水口51に滞留することがない。したがって、分岐水路Wbにおける一定水量を常時確保できるようになる。
【0042】
このように、第2実施形態によれば、スクリーン6の上流側に位置する円弧面61bが、取水口51の上流側の側壁51bに形成された遮水部21で囲まれるので、塵芥Xの流下に寄与するスクリーン6の下流側に位置する円弧面62bが有効活用されるようになる。また、スクリーン6の下流側に位置する円弧面62bに当接する塵芥Xが、取水口51の下流側の側壁51aに形成されるスクレーパー20によって、強制的に離れさせられるので、塵芥Xが堰堤50側により一層流下しやすくなる。また、遮水部21の先端部に形成された延出部22によって、上流側から下流側への単なる本水路Waの水流Cが、スクリーン6を越えて堰堤50側に流下する流れに変わるようになるので、塵芥Xの堰堤50側への流下が促進されるようになる。さらに、洪水時において、上流から流下する塵芥が取水口51に溜まることがなく、取水口51から常時一定水量を取水することができる。
【0043】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々変更することができる。
【0044】
例えば、前記実施形態の場合、図6に示すように、スクリーン6の下端部に、環状の浮体30を固着するようにしてもよい。この場合、浮体30によって、スクリーン6にかかる荷重が低減されて、スクリーン6を介して回転軸2にかかる荷重を低減できる。したがって、回転体1が円滑に回転できるようになるとともに、水流を無駄なく回転力に変換できるようになる。また、環状の浮体30に限定されるものではなく、水力発電所に対する水量を確保できる程度に、スクリーン6の内周面6aまたは外周面6bに、棒状の浮体を周方向に複数配置するようにしてもよい。
【0045】
また、前記実施形態の場合、堰堤50を越流させて、さらなる下流側に流下させるようにしたが、堰堤50の一部、すなわち、本水路Waを形成する側壁に隣接する堰堤50の側端部50aに、図7に示すように、該側端部50aの上部を開閉するゲート40が設けられるようにしてもよい。この場合、ゲート40によって堰堤50の上端部が開放されることで、堰堤50に溜まった塵芥Xを必要に応じて下流側に流下させることができる。つまり、取水口51および堰堤50を含む水域をきれいにできる。
【符号の説明】
【0046】
1…回転体、2…回転軸、6…スクリーン、10…羽根、20…スクレーパー、21…遮水部、22…延出部、30…浮体、40…ゲート、50…堰堤、51…取水口、51a…取水口51の下流側の側壁、51b…取水口51の上流側の側壁、61b…スクリーン6の上流側の円弧面、62b…スクリーン6の下流側の円弧面、Wa…本水路、Wb…分岐水路、X…塵芥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本水路に設けられる堰堤よりも上流側で、本水路から分岐される分岐水路の取水口に設置され、該取水口から分岐水路に流入しようとする塵芥を堰堤側に流下させる除塵装置において、
直立支持される回転軸と、該回転軸に対して同心状に設けられる筒状のスクリーンとを有する回転体を備え、
前記スクリーンは、取水口の幅寸法よりもやや小さい外径を有し、外周面の一部が本水路側に突出して配置されることを特徴とする除塵装置。
【請求項2】
前記スクリーンの外側または内側に複数の羽根が配置されることを特徴とする請求項1に記載の除塵装置。
【請求項3】
前記スクリーンに浮体が取り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の除塵装置。
【請求項4】
取水口を形成する下流側の側壁に、堰堤側に位置するスクリーンの外周面に対して、スクレーパーが接線方向に延出して形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の除塵装置。
【請求項5】
本水路の上流側に位置するスクリーンの外周面を囲むように、取水口を形成する上流側の側壁に遮水部が形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の除塵装置。
【請求項6】
塵芥が本水路側に突出するスクリーンの外周面の頂部を越流できる程度に、遮水部の先端部にやや傾斜して延出部が形成されることを特徴とする請求項5に記載の除塵装置。
【請求項7】
前記堰堤は、その一部を開閉するゲートが設けられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の除塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104227(P2013−104227A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248869(P2011−248869)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)