説明

除菌システム

【課題】浄化対象であるガスの閉空間での除菌に適用可能で、製造コストが安価で、高い除菌性能を備えた除菌システムを提供する。
【解決手段】電源5に接続された電極1と電極2との間隙にガス流通性を有するセラミックス構造体3を配置した放電体4を備え、電極1と電極2との間隙に電源5により電圧を印加し、セラミックス構造体3によって電界を歪ませてプラズマを発生させることにより、セラミックス構造体3を流通するガスXに含まれる浮遊菌を除菌することを特徴とする除菌システム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化対象であるガスに含まれる浮遊菌を分解除去して不活化させる除菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋や倉庫の内部や、自動車等の車両の車室内、冷蔵庫等の機器の内部等の閉空間における空気を浄化するために、活性炭に代表される吸着剤が用いられる。特に近年、住空間の気密化が進み、これに伴い、室内の空気を吸引してフィルターでろ過し、活性炭で汚染物質を吸着するガス浄化システムが一般的に用いられる。
【0003】
閉空間の空気を浄化する場合に吸着材を用いたガス浄化システムとしては、例えば、空気循環用のダクト内に吸着剤を備えた吸着フィルターを設け、ダクトを通過させた空気を閉空間内に導いて空気を吸着フィルターに経由させることにより、吸着フィルターにて空気中の臭気成分等の物質を吸着剤により吸着させ、吸着剤の作用により脱臭された空気を閉空間内に導く方法が一般的である。
【0004】
また一方、住空間の空気を浄化するガス浄化システムとして、例えば、沿面放電を用いてプラスイオン、マイナスイオン等と呼ばれる空気質イオンを発生させ、除菌効果を得るシステムが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、光触媒を用いた除菌脱臭技術も開示されている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】特許3467586号公報
【特許文献2】特開平8−103631号公報
【特許文献3】特開平2−107339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような吸着材を用いた脱臭技術によれば、空気中に含まれる浮遊菌等を吸着除去するものの、これらを分解する機能を有しない。従って、フィルターや活性炭に付着・捕集された浮遊菌は、単にフィルターや活性炭の表面に捕捉されているにすぎず、適度な温度、湿度の条件下において、また一緒に捕集されるさまざまな塵などを養分にすることによって捕集された場所において増殖し、そこから再飛散することで逆に発生源となってしまうことがある。さらに、継続使用に伴って吸着機能が低減するため、吸着材の交換が必要である。
【0007】
一方、従来技術のように空気質イオンを用いる除菌方法は、空気質イオンと浮遊菌が空気中で衝突しない限り除菌効果が期待できない。従って、空気中の浮遊菌を除去する確実な除菌手段となりえない点も指摘されている。
【0008】
また、光触媒を用いた除菌システムの場合、効果的な除菌効果が期待できるものの、光触媒自体の材料費が高く、また光触媒を三次元構造の基体に担持するための製造工程が必要である。そのため広い分野で一般的に適用可能な除菌システムを実現するため、製造および材料コストの点でさらに安価で高性能な除菌システムが必要とされていた。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、浄化対象であるガスの閉空間での除菌に適用可能で、製造コストが安価で、高い除菌性能を備えた除菌システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の除菌システムは、上述した課題を解決するために、電源に接続された正電極と負電極との間隙にガス流通性を有するセラミックス構造体を配置した放電体を備え、前記正電極と前記負電極との間に前記電源により電圧を印加し、前記セラミックス構造体によって電界を歪ませてプラズマを発生させ、前記セラミックス構造体を流通するガスに含まれる浮遊菌を前記プラズマに通過させて除菌することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の除菌システムによれば、空気中の浮遊菌を、三次元構造を有するセラミックス構造体に流通させて、電極に電圧を印加することにより発生するプラズマを通過させることにより効果的に除菌することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の除菌システムは、電極間に設置された多孔質のセラミックス構造体が空間の電界を歪ませることにより、低い印加電圧でプラズマを発生させる効果を利用したものである。
【0013】
従来、こうしたセラミックス構造体のような三次元構造体を用いたガス浄化装置や除菌システムの場合、この三次元構造体は、光触媒等の担持体として用いられることが通常であって、セラミックス構造体そのものの有する効果について着目した技術はなかった。
【0014】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、三次元構造のセラミックス構造体には、空間の電界を歪ませる効果があるため低い電圧印加でプラズマを発生することが可能となり、この結果、従来の除菌システムに比較して低いランニングコストでの除菌が可能となるという知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0015】
また、本発明の除菌システムは、正電極および負電極のうち少なくとも一方をガス流通性を有する三次元構造に構成することにより、電極の劣化により放電が起こらなくなったり、また、異常放電が起こることを防止し、安定な放電を長時間持続させるように構成することが可能である。
【0016】
本発明の除菌システムの実施例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に実施例1の除菌システムの構成図を示す。この除菌システム10は、電極1と電極2との間隙に、セラミックス構造体3が挟持されて放電体4が構成される。電極1と電極2とには、電源5がリードによりそれぞれ電気的に接続され、電極間に放電を起こすように構成される。一方、セラミックス構造体3は、三次元構造を有する多孔質のセラミックス基体であり、浄化対象であるガスXの流通性に優れた部材である。
【0018】
さらに本実施例の除菌システム10は、電極1および電極2も、ガス流通性を有する構造部材で構成される。こうした電極1および電極2を構成する部材としては、例えば、メッシュ状の金属部材や、ハニカム構造のものが使用される。一方、電極1および電極2の材質として使用可能な材料は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属材料や、導電性プラスチック等の導電性材料が好適である。なお、電極1および電極2は、正電極および負電極のいずれか一方であって、電極1および電極2のうちどちらが正電極でどちらが負電極であっても、除菌システム10の構成上問題ない。
【0019】
このように構成された除菌システム10において、ガスXは、電極1側から流通し、セラミックス構造体3を透過する。その際、電極1および電極2の間に電源5により電圧が印加されて放電が起こるが、三次元構造体であるセラミックス構造体3の効果により電界が歪み、プラズマの発生が促進される。このプラズマの発生によりセラミックス構造体3内において、ガスX内の浄化対象である浮遊菌が分解および除去される。
【0020】
上記のような構成を有する除菌システムは、低い電圧印加でプラズマを発生するので、低い電力コストでの除菌が可能となるうえ、表面積の大きい多孔質のセラミックス構造体の表面で除菌反応が起こるため、例えば、空気質イオンを用いた従来の除菌システムに比較して、非常に高い除菌性能を実現することが可能である。
【0021】
さらに、このような構成を有する除菌システムは、例えば光触媒をセラミックス構造体に担持させたガス浄化装置に比較して、システムを構成する部材コストや製造コストが低いうえ、浄化対象であるガスの除菌に関して十分な性能を備える。従って、本実施例の除菌システムを搭載することにより、低い製造コストで空調機器の除菌性能を向上することが可能である。
【実施例2】
【0022】
図2に実施例2の除菌システムの構成図を示す。この図2に示す除菌システム20は、電極1と電極2との間の放電によりガスXより生成するオゾンの閉空間への放出を防止するために、放電体4のガスXの流れ方向の下流側にオゾン分解触媒21を設ける構成としたものである。
【0023】
電極1と電極2との間の放電に伴うプラズマにより、ガスX中の酸素分子Oが解離して反応し、オゾンOが生成する。また、同時に放電により発生する紫外光の中で波長が300nm以下の短波長成分を吸収することにより酸素分子Oが励起され、酸素分子Oが反応する結果、オゾンOが生成される。このオゾンOは強い酸化力を有するため、さらにガスX中の臭気成分や浮遊菌が酸化分解される。
【0024】
しかしながら、このオゾンは、特有の臭気を持つ気体であるため、特に室内等の閉空間での使用を目的とする除菌システムの場合、オゾンの分解処理が必要となることがある。特に、除菌性能を向上させるために、放電体4における放電電力を大きくすると、オゾンの生成も増えるため、適切なオゾン処理手段が必要である。
【0025】
そこで、本実施例の除菌システム20は、オゾンを分解する機能を有するオゾン分解触媒21を放電体4のガスX流れ方向の下流側に設ける。このように、オゾン分解触媒21を設けることによりガスXを処理する際に発生するオゾンが分解され、閉空間へのオゾンの放出を防止できる。そのため、オゾンの閉空間への放出の心配がなく、電極1と電極2との間における放電電力をさらに大きくすることができるので、より高性能な除菌システムが実現可能となる。
【実施例3】
【0026】
図3に実施例3の除菌システムの構成図を示す。この除菌システム30のように、電極1と電極2とセラミックス構造体3とからなる除菌システム10の単位構造体を複数個集積して除菌システム30を構成してもよい。このように、ユニット化された単位構造体としての除菌システム10を並列的に配置して除菌システム30を構成することにより、様々な面積や形状の除菌システムを製造することが容易となり、設置場所や形状のバリエーションが豊な除菌システムを実現することが可能となる。
【実施例4】
【0027】
図4に実施例4の除菌システムの構成図を示す。この除菌システム40は、図4に示すように、放電体4のガスX流れ方向の上流側にファン41を備え、セラミックス構造体3へのガスXの流通性を向上させたものである。一方、図5に示す除菌システム50のように、放電体4のガスX流れ方向の下流側にファン41を備える構成としてもよい。このような構成とすることにより、閉空間内のガスを効果的に循環させ、除菌システム40および除菌システム50に流通させることができる。従って、除菌システム40および除菌システム50の除菌性能が効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る除菌システムの実施例1の構成図。
【図2】本発明に係る除菌システムの実施例2の構成図。
【図3】本発明に係る除菌システムの実施例3の構成図。
【図4】本発明に係る除菌システムの実施例4の構成図。
【図5】本発明に係る除菌システムの実施例4の変形例の構成図。
【符号の説明】
【0029】
1 電極
2 電極
3 セラミックス構造体
4 放電体
5 電源
10 除菌システム
20 除菌システム
21 オゾン分解触媒
30 除菌システム
40 除菌システム
41 ファン
50 除菌システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源に接続された正電極と負電極との間隙にガス流通性を有するセラミックス構造体を配置した放電体を備え、前記正電極と前記負電極との間に前記電源により電圧を印加し、前記セラミックス構造体によって電界を歪ませてプラズマを発生させ、前記セラミックス構造体を流通するガスに含まれる浮遊菌を前記プラズマに通過させて除菌することを特徴とする除菌システム。
【請求項2】
前記正電極および前記負電極のうち少なくとも一方がガス流通性を有する三次元構造体であることを特徴とする請求項1記載の除菌システム。
【請求項3】
前記正電極と前記セラミックス構造体と前記負電極とをこの順番に積層してなる単位構造体を複数個直列または並列に接続して構成したことを特徴とする請求項1記載の除菌システム。
【請求項4】
前記放電体の前記ガス流れ方向の下流側にオゾン分解触媒を備えたことを特徴とする請求項1記載の除菌システム。
【請求項5】
前記放電体の前記ガス流れ方向の上流側または下流側に、前記ガスを送風させるためのファンを備えたことを特徴とする請求項1記載の除菌システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−122521(P2006−122521A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317262(P2004−317262)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】