説明

除菌装置及び除菌方法

【課題】マイクロプラズマ発生手段を用いて良好に流体の除菌を行うことができる除菌装置を提供する。
【解決手段】除菌対象の流体を流す流体駆動手段3と、マイクロプラズマ発生手段4と、マイクロプラズマ発生手段4より下流側に配設されるオゾン分解除去手段5とを備えて構成され、マイクロプラズマ発生手段4が、除菌流路2を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板40と、電極板40にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置42とを備えて構成されるとともに、一対の電極板40の夫々に、除菌対象の流体が通過可能な貫通孔41を電極板40の厚み方向に形成して構成され、電極板40の表面に誘電体膜が形成され、マイクロプラズマ発生手段4によりマイクロプラズマが形成される状態で、貫通孔41を通過した除菌対象の流体がオゾン分解除去手段5を通過する除菌装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプラズマ発生手段を用いた除菌装置及び除菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気圧マイクロプラズマを用いた環境浄化技術の開発が積極的に行われている。例えば、下記の特許文献1には、大気圧マイクロプラズマを低消費電力で高効率に生成可能なマイクロプラズマ発生手段に関する技術が開示されている。具体的には、当該マイクロプラズマ発生手段は、表面に誘電体膜が形成されるとともにプラズマ処理の対象となる流体が流通可能な貫通孔が厚み方向に複数形成された一対の電極板を、数十μm程度の間隔をあけて互いに略平行に配置されてなるプラズマ電極を備えて構成される。そして、プラズマ電極を構成する一対の電極板間に交流電圧を印加してマイクロプラズマを発生させ、当該マイクロプラズマにより生成されるオゾンや各種ラジカルを用いて流体の浄化が行われる。
【0003】
引用文献1には、上記のようなマイクロプラズマ発生手段を用いて高効率にオゾンを生成し、電極板に形成された貫通孔を通過する空気中のホルムアルデヒドを当該オゾンにより分解できることが示されている(図6)。また、引用文献1には、マイクロプラズマ発生手段を用いて発生させたマイクロプラズマを除菌のために用いることに言及した記載もある(段落〔0002〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−250284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1には、マイクロプラズマ発生手段を用いて発生させたマイクロプラズマを除菌のために用いることに言及した記載があるものの、それ以上の具体的な記載はされておらず、マイクロプラズマ発生手段を用いて除菌を有効に行うための技術は未だに確立されていない。さらに、マイクロプラズマ発生手段を用いて流体の除菌を行った場合にどのような課題が発生するかも判明しておらず、その課題を解決するための手段も当然ながら示されていない。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイクロプラズマ発生手段を用いて良好に流体の除菌を行うことができる除菌装置及び除菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る除菌装置の特徴構成は、除菌流路に除菌対象の流体を流す流体駆動手段と、前記除菌流路に配設されるマイクロプラズマ発生手段と、前記除菌流路における前記マイクロプラズマ発生手段より下流側に配設されるオゾン分解除去手段とを備えて構成され、前記マイクロプラズマ発生手段が、前記除菌流路を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、前記除菌対象の流体が通過可能な貫通孔を前記電極板の厚み方向に形成して構成され、前記電極板の表面に誘電体膜が形成され、前記マイクロプラズマ発生手段によりマイクロプラズマが形成される状態で、前記貫通孔を通過した前記除菌対象の流体が前記オゾン分解除去手段を通過する点にある。
【0008】
また、上記目的を達成するための本発明に係る除菌方法の特徴構成は、除菌流路を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、除菌対象の流体が通過可能な貫通孔が前記電極板の厚み方向に形成され、前記電極板の表面に誘電体膜が形成されたマイクロプラズマ発生手段に、前記除菌対象の流体を導いて、当該マイクロプラズマ発生手段で発生させたマイクロプラズマにより前記除菌対象の流体を除菌する第一除菌工程と、前記第一除菌工程を経て除菌された前記除菌対象の流体を、オゾン分解除去手段に導いて、前記マイクロプラズマ発生手段で発生したオゾンを分解除去するとともに、当該オゾンの分解により発生する酸素原子によりさらに除菌する第二除菌工程と、を実行する点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、除菌対象の流体は電極板に形成された貫通孔を通過するため、流体の流れを大きく阻害することなく一対の電極板を厚さ方向に近接して配置することができる。よって、マイクロプラズマを発生させるために一対の電極板間に印加することが必要となる電圧の大きさを低く抑えることができ、少ない消費電力で効率的にマイクロプラズマ発生手段にマイクロプラズマを発生させることができる。そして、マイクロプラズマにより生成された高速電子、各種活性ラジカル、強電界、紫外線により、除菌流路を流通する流体を除菌することができる(本願では、この除菌工程を「第一除菌工程」という)。
【0010】
また、発明者らは、鋭意研究の結果、一定の除菌効果が得られる程度の電圧を一対の電極板間に印加すると、一対の電極板間に発生するマイクロプラズマにより環境上の観点から無視できない程度の濃度のオゾンが生成されるという課題を見出した。しかしながら、上記の特徴構成によれば、マイクロプラズマ発生手段により生成されたオゾンは、除菌された流体とともにオゾン分解除去手段に導かれ、オゾン分解除去手段により無害な酸素分子に変化する。よって、オゾンが除菌装置の外部に流出することを抑制することができる。しかも、オゾンは酸素分子に変化する過程で酸素原子として存在するため、オゾン分解除去手段に導かれた流体は、当該酸素原子によってもさらに除菌される(本願では、この除菌工程を「第二除菌工程」という)。すなわち、オゾン分解除去手段を設けることで、マイクロプラズマ発生手段を用いて流体の除菌を行う際にオゾンが生成されるという課題を解決できるとともに、流体の除菌効果を高めることが可能となっている。
【0011】
以上のように、除菌流路を流れる流体に対して、マイクロプラズマによる除菌(第一除菌工程)とオゾンによる除菌(第二除菌工程)との双方を行うことができ、両者の働きで流体の除菌効果を格段に高めることができることを発明者らは知見し、本願発明を完成した。従って、本願発明によれば、マイクロプラズマ発生手段を使用して除菌を行う上での課題の解決と、除菌装置全体としての除菌効率を高めるという作用の実現を、一のオゾン分解除去手段を設けることで達成できる。
【0012】
ここで、前記貫通孔の孔径が1.5mm以上3mm以下であると好適である。
【0013】
この構成によれば、貫通孔の孔径が3mm以下であるため、電極板に形成された貫通孔を通過する際に、除菌対象の流体がマイクロプラズマにより生成された高速電子、各種活性ラジカル、強電界、紫外線に接触する頻度や割合を高めることができ、除菌率の向上を図ることができる。なお、貫通孔の孔径の上限値を3mmに替えて2mmとすると、除菌率の向上をより一層図ることができる。また、多数の貫通孔を有する電極板を採用するマイクロプラズマ発生手段を構成する場合、本願の目的を達成できる程度の開孔率が得られるように複数の貫通孔を形成するためには、電極板の板厚の下限値は1mm程度となる。この構成によれば、貫通孔の孔径が1.5mm以上であるため、このような電極板に貫通孔を安定的に穿孔することができ、電極板の製造コストを低く抑えることができる。
【0014】
また、前記電極板に隣接して配設される貫通孔間に位置する電極板部分に関し、前記隣接して配設される貫通孔間の最小離間長さが少なくとも1mmとされていると好適である。
【0015】
この構成によれば、電極板部分に関する貫通孔間の最小離間長さが貫通孔の孔径と同じオーダの値となるため、電極板に貫通孔を安定的に穿孔でき、電極板の製造コストを低く抑えることができる。また、一対の電極板間に誘電体バリア放電を生起させる構成においては、一対の電極板の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面に誘電体膜を形成する必要がある。この構成によれば、当該誘電体膜を形成する面の面積を十分に確保することができ、電極板の表面に形成した誘電体膜が剥離することが抑制される。したがって、一対の電極板間にマイクロプラズマを安定して発生させることができる。
【0016】
また、前記一対の電極板の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面には誘電体膜が形成され、前記一対の電極板は、当該2枚の電極板間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さが30μm以下となるように配置され、前記一対の電極板間には、波高値が1000V以上の交流電圧が印加される構成とすると好適である。
【0017】
この構成によれば、一対の電極板間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さが30μm以下に設定されているため、マイクロプラズマを発生させるために一対の電極板間に印加することが必要となる交流電圧の波高値の下限値を1000Vという比較的低い値に抑えることができる。
【0018】
また、前記オゾン分解除去手段は、オゾン分解触媒フィルタを備えて構成され、前記オゾン分解触媒フィルタは、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四三酸化鉄、酸化銅、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、及び炭酸銅の何れか一種又は複数種の組み合わせからなるオゾン分解触媒を備えると好適である。
【0019】
この構成によれば、オゾン分解除去手段の構成を簡素なものとすることができる。
【0020】
また、前記流体は空気であり、当該空気中のカビを除去する構成とすると好適である。
【0021】
本発明に係るマイクロプラズマ発生手段は、除菌のためのマイクロプラズマを大気圧中で発生させることができる。そのため、本発明に係る除菌装置は、空気中のカビを除去する除菌装置として特に適している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る除菌装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る除菌装置の要部分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電極板の模式図である。
【図4】本発明の実施例に係る試験装置の概略図である。
【図5】放電電圧と放電電流との関係に関する試験結果を示す図である。
【図6】放電電圧とオゾン濃度との関係に関する試験結果を示す図である。
【図7】放電電圧、除菌率、及びオゾン濃度の関係に関する試験結果を示す図である。
【図8】オゾン分解触媒フィルタを備えない場合の除菌率の測定結果を示す図である。
【図9】オゾン分解触媒フィルタを備える場合の除菌率の測定結果を示す図である。
【図10】線速と圧力損失との関係に関する試験結果を示す図である。
【図11】本発明の実施形態に係る除菌方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る除菌装置及び除菌方法の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されるものではなく、同様の作用効果を奏する構成であれば種々の改変が可能である。
ここでは、除菌対象の流体を空気とし、当該空気中のカビを除去する除菌装置に本発明を適用した場合を例として説明する。本実施形態に係る除菌装置1は、図1に示すように、除菌対象の流体が流れる除菌流路2における上流側から、マイクロプラズマ発生装置4とオゾン分解除去装置5とが記載の順に備えられていることに特徴を有している。そして、除菌対象の当該流体は、マイクロプラズマ発生装置4及びオゾン分解除去装置5の双方により除菌されることで、除菌効率の向上が図られている。
【0024】
1.除菌装置の概略構成
図1に示すように、除菌装置1は、マイクロプラズマ発生装置4と、ファン3と、オゾン分解除去装置5とを備えて構成されている。本実施形態では、マイクロプラズマ発生装置4が本発明における「マイクロプラズマ発生手段」に相当し、ファン3が本発明における「流体駆動手段」に相当し、オゾン分解除去装置5が本発明における「オゾン分解除去手段」に相当する。マイクロプラズマ発生装置4を構成する一対の電極板40は、ハウジング60,61により固定支持されている。具体的には、図2にも示すように、ハウジング60,61は、一対の電極板40を挟持した状態でボルト62及びナット63により互いに締結固定されている。また、ファン3はハウジング60に固定され、オゾン分解除去装置5はハウジング61に固定されている。
【0025】
除菌対象の流体である空気は、ハウジング60,61の内部に形成された除菌流路2を、図1に破線矢印で示す方向に流れる。そして、ファン3、マイクロプラズマ発生装置4、オゾン分解除去装置5は、このような空気の流下方向に沿って記載の順に配設されている。すなわち、除菌流路2における上流側から下流側に向かって、ファン3、マイクロプラズマ発生装置4、オゾン分解除去装置5の順に配設されている。言い換えれば、オゾン分解除去装置5は、除菌流路2におけるマイクロプラズマ発生装置4より下流側に配設されている。また、本実施形態では、ファン3は、一例として、内部に多数の羽根を備えたシロッコファンとされている。
【0026】
図示は省略するが、最上流側に位置するファン3の上流側及び下流側の端部には開口が設けられており、上流側の開口が除菌対象の空気を取り込む取入口とされている。一方、最下流側に位置するオゾン分解除去装置5の上流側及び下流側の端部にも開口が設けられており、下流側の開口が除菌された空気を送り出す送出口とされている。従って、この除菌装置1では、除菌流路2に除菌対象の流体である空気を流す流体駆動手段としてのファン3の働きにより、取入口から取り込まれた空気は、除菌流路2を、ファン3、マイクロプラズマ発生装置4、オゾン分解除去装置5の配設箇所を順次流下し、送出口から送り出される。
【0027】
2.マイクロプラズマ発生装置の構成
マイクロプラズマ発生装置4は、図1に示すように、除菌流路2を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板40と、電極板40にプラズマ発生用の電圧を印加する高周波電源42とを備えて構成されるとともに、一対の電極板40の夫々に、除菌対象の流体である空気が通過可能な貫通孔41を電極板40の厚み方向に形成して構成されている。本実施形態では、高周波電源42が本発明における「電圧印加装置」に相当する。また、詳細は後述するが、電極板40の表面には誘電体膜(図示せず)が形成されている。高周波電源42と一対の電極板40のそれぞれとは電気配線により電気的に接続されている。そして、一対の電極板40間に高周波電源42から交流電圧を印加することで、一対の電極板40間にストリーマ形式の誘電体バリア放電を生起させ、マイクロプラズマを生成することができる。このマイクロプラズマにより生成された高速電子、各種活性ラジカル(N*,O*,OH*等)、強電界、紫外線が、一対の電極板40に形成された貫通孔41を上流側から下流側へ向かって通過する空気を除菌する。
【0028】
電極板40は、大気圧中でマイクロプラズマを発生させるための電極として用いるため、高温での耐酸化性を有する各種のステンレス鋼で形成されたものを用いるのが好ましい。このようなステンレス鋼としては、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼(martensitic stainless steels)、フェライト系ステンレス鋼(ferritic stainless steels)、オーステナイト系ステンレス鋼(austenitic stainless steels)、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(austenitic-ferritic stainless steels)、析出硬化系ステンレス鋼(precipitation hardening stainless steels)等がある。なお、ステンレス鋼以外の金属を用いて電極板40を形成しても良い。
【0029】
図1から図3に示すように、電極板40には空気が通過可能な貫通孔41が厚み方向に複数形成されている。本実施形態では、貫通孔41は、断面形状が円形であり、図3に示すように、平面視で六方格子(三角格子、60度千鳥)状に配置されている。複数の貫通孔41は同一の孔径φを有しており、貫通孔41間に位置する電極板部分に関し、隣接して配置される貫通孔41間の最小離間長さsは、貫通孔41によらず一定の値となっている。なお、複数の貫通孔41の孔径φが同一でなく、孔径φが所定の範囲内で分布する構成としても好適である。また、複数の貫通孔41の配置は六方格子状の配置に限られるものではなく、例えば、複数の貫通孔41を正方格子状に配置したり、不規則に配置しても良い。
【0030】
ここで、電極板40の板厚t(図3参照)は、1mm以上とするのが好ましい。電極板40の厚みtが1mm未満の場合、電極板40の縁部近傍で両電極板間にわたって直接放電が発生するおそれがあるが、電極板40の板厚tを1mm以上に設定することで、電極板40の縁部近傍で両電極板間にわたって直接放電が発生することを抑制することができる。結果、一対の電極板40間に安定してマイクロプラズマを発生させることができる。なお、電極板40の板厚tの上限値は、製造コストの抑制や製造工程の簡素化の観点から定めたり、電極板40に形成する貫通孔41の孔径φに基づいて定めると好適である。一般的に、板厚tより小さい孔径φの貫通孔41を電極板40に形成するのは、製造工程を簡素化するという観点から望ましくない。そのため、電極板40の板厚tは、貫通孔41の孔径φと同じ値としたり、貫通孔41の孔径φより小さな値とすることが好ましく、電極板40の板厚tの上限値としては、例えば、1.5mm、2mm、或いは3mm程度とすることができる。なお、当然ながら、本発明は、電極板40の板厚tが1mm以上である構成に限定されるものではなく、厚さtが1mm未満の電極板40を備えてマイクロプラズマ発生装置4を構成してもよい。
【0031】
また、電極板40に形成される貫通孔41の孔径φは、1.5mm以上3mm以下とするのが好ましい。貫通孔41の孔径φが1.5mm未満となると、電極板の製造コストの上昇や、除菌対象の流体を貫通孔41に流通させる際の圧力損失の上昇を招来するおそれがある。そこで、上記のように貫通孔41の孔径φを1.5mm以上とすることで、電極板40に貫通孔41を安定的に穿孔でき、製造コストの上昇を抑制することができる。また、圧力損失の上昇も抑制することができる。また、貫通孔41の孔径φが3mmを超えると、除菌対象の流体がマイクロプラズマにより処理されずに電極板40に形成された貫通孔41を通過する割合が高くなり、除菌性能が低下するおそれがある。そこで、貫通孔41の孔径φを3mm以下とすることで、除菌対象の空気がマイクロプラズマにより処理されずに電極板40に形成された貫通孔41を通過することが抑制され、除菌率の向上を図ることができる。なお、貫通孔41の孔径φの上限値を3mmに替えて2mmとすると更に好ましい。また、当然ながら、本発明は、貫通孔41の孔径φが1.5mm以上3mm以下である構成に限定されるものではなく、貫通孔41の孔径φを1.5mm未満としたり3mmより大きな値としてもよい。
【0032】
本実施形態に係るマイクロプラズマ発生装置4は、一対の電極板40間に誘電体バリア放電を生起させマイクロプラズマを発生させる。そのため、一対の電極板40の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面には誘電体膜(図示せず)を形成することになる。そこで、電極板40に隣接して配設される貫通孔41間に位置する電極板部分に関し、隣接して配設される貫通孔41間の最小離間長さs(図3参照)は、少なくとも1mmとするのが好ましい。最小離間長さsが1mm未満の場合、電極板40の他方の電極板40に対向する面の面積が小さくなり、電極板40の表面に形成した誘電体膜が剥離しやすくなるおそれがある。しかし、上記のように最小離間長さsを設定することで、誘電体膜を形成する面の面積を十分に確保することができ、電極板40の表面に形成した誘電体膜が剥離することが抑制され、一対の電極板40間にマイクロプラズマを安定して発生させることができる。一方、最小離間長さsが大きくなるにつれて除菌対象の空気を貫通孔41に流通させる際の圧力損失が大きくなるため、最小離間長さsの上限値は、許容できる圧力損失の大きさに応じて定めると好適である。例えば、最小離間長さsの上限値は、1.5mmや2mm程度とすることができる。なお、当然ながら、本発明は、最小離間長さsが1mm以上である構成に限定されるものではなく、最小離間長さsが1mm未満となる構成としてもよい。
【0033】
先にも述べたように、電極板40の表面には誘電体膜が形成されている。本実施形態では、上記のように、一対の電極板40間に誘電体バリア放電を生起させるため、一対の電極板40の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面或いは双方の面には誘電体膜を形成することとなる。また、これらの面に加え、貫通孔41の内周面にも誘電体膜を形成する構成としてもよい。このように誘電体膜を形成することで、一対の電極板40間に安定してマイクロプラズマを発生させることができる。誘電体膜の膜厚は、例えば、50μm以上500μm以下とすることが好ましい。また、誘電体膜は、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、Y23、PbZrO3−PbTiO3、BaTiO3、TiO2、ZnO等や、これらの複合酸化物により構成することができる。
【0034】
本実施形態では、一対の電極板40は、電極板40の周縁部に沿う形状の円環状のスペーサ(図示せず)を間に挟持した状態で互いに固定されている。このスペーサは一様の厚みを有しており、一対の電極板40は互いに略平行になるように配置される。よって、一対の電極板40間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さd(図1参照)は、このスペーサの厚みにより概ね定められる。一対の電極板40をこのように配設することで、一対の電極板40間に形成される空隙を板面に沿う方向において略均一にすることができ、誘電体バリア放電を均一に安定して発生させることが可能となっている。スペーサの厚みは、例えば、30μm以下の値から選択することができる。この時、上記の長さdも30μm以下となり、一対の電極板40間に印加する交流電圧の波高値を1000V程度と比較的低い値としても、マイクロプラズマを発生させることができる。この場合、一対の電極板間に波高値が1000V以上の交流電圧が印加される構成とすると好適である。このようなスペーサは、例えば、ポリエチレン樹脂、テフロン(登録商標)樹脂等の合成樹脂等の絶縁材料により形成することができる。
【0035】
なお、一対の電極板40の互いに対向する面の双方に誘電体膜が形成され、当該誘電体膜が電極板40の板面に直交する方向(厚み方向)に凹凸(例えば、5μm以上50μm以下の高低差を有する凹凸)を有する場合には、上記のスペーサを介さずに一対の電極板40を積層するように互いに固定する構成としても好適である。この場合、上記の凹凸により形成される間隙において誘電体バリア放電が生じるため、一対の電極板40間にマイクロプラズマを発生させることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、一対の電極板40は同じ構成のものであり、一対の電極板40は、板面に直交する方向からみて、双方の電極板40に形成された貫通孔41同士が全体として互いに重なり合うように円周方向に位置決めされ、互いに固定されている。そのため、図1に示すように、除菌対象の空気は貫通孔41の間を通過することができ、除菌対象の空気の流れを大きく阻害することなく一対の電極板40を厚さ方向に近接して配置することができる。その結果、マイクロプラズマを発生させるために一対の電極板40間に印加することが必要となる電圧の大きさを低く抑えることができ、少ない消費電力で効率的にマイクロプラズマ発生装置4にマイクロプラズマを発生させることが可能な構成となっている。なお、当然ながら、一対の電極板40を、板面に直交する方向からみて、双方の電極板40に形成された貫通孔41同士の一部のみが互いに重なり合うように円周方向に位置決めしたり、一対の電極板40を異なる構成の2枚の電極板40により構成してもよい。
【0037】
3.オゾン分解除去装置の構成
オゾン分解除去装置5は、本実施形態では、オゾン分解触媒フィルタを備えて構成されている。オゾン分解触媒フィルタは、例えば、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四三酸化鉄、酸化銅、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、及び炭酸銅の何れか一種又は複数種の組み合わせからなるオゾン分解触媒と、ハニカム状に構成された触媒担持用の構造体とから構成される。そして、マイクロプラズマ発生装置4によりマイクロプラズマが形成される状態で、電極板40に形成された貫通孔41を通過した除菌対象の空気がオゾン分解除去装置5の配設箇所を通過するように構成されている。具体的には、除菌対象の空気は、オゾン分解触媒フィルタを通過するように構成されている。なお、このようなオゾン分解触媒フィルタの構成は公知であるため、ここでは詳細な説明は省く。
【0038】
詳しくは実施例で後述するが、発明者らは、鋭意研究の結果、一定の除菌効果が得られる程度の電圧を一対の電極板40間に印加すると、一対の電極板40間に発生するマイクロプラズマにより環境上の観点から無視できない程度の濃度のオゾンが生成されることを見出した。そして、マイクロプラズマにより発生したオゾンは、貫通孔41を通過した除菌対象の空気とともにオゾン分解除去装置5に導かれる。
【0039】
オゾン分解除去装置5に導かれたオゾンは、上記のオゾン分解触媒フィルタにより無害な酸素分子に変化するため、オゾンが除菌装置1の外部に流出することが抑制されている。しかも、オゾンは酸素分子に変化する過程で酸素原子として存在するため、オゾン分解除去手段に導かれた空気は、当該酸素原子によっても除菌される。そのため、オゾン分解除去装置5を設けることで、マイクロプラズマ発生手段を用いて流体の除菌を行う際にオゾンが発生するという課題を解決できるとともに、空気の除菌効果を高めることも可能となっている。
【0040】
4.実施例
これまで説明してきたように、本発明に係る除菌装置1は、除菌流路2を流れる空気に対して、マイクロプラズマによる除菌とオゾンによる除菌との双方を行うことができ、両者の働きで空気の除菌効果を格段に高めることが可能となっている。このような本発明に係る除菌装置1の効果を確かめるため、上記実施形態の構成を有する除菌装置1を用いて試験を実施した。試験内容を以下に実施例として説明する。
【0041】
(1)試験概要
本試験では、貫通孔41が形成された電極板40としてステンレス製のパンチングメタルを用いてマイクロプラズマ発生装置4を構成し、除菌性能を評価するための試験を行った。なお、電極板40に形成された貫通孔41の孔径φによる除菌性能の違いを調べるため、本試験では、孔径φが異なるパンチングメタルを電極板40として備える4種類のマイクロプラズマ発生装置4により試験を行った。表1に、4種類のマイクロプラズマ発生装置4のそれぞれが備えるパンチングメタルの仕様(孔径φ、開口率r、及び厚さt)を示す。なお、試験に用いたパンチングメタルは直径が6cmの円形の形状を有している。また、開口率rは、電極板40(パンチングメタル)の厚み方向に直交する断面において、パンチングメタルの外周により規定される円の面積に対する、複数の貫通孔41の面積の総和の割合である。また、本試験では、一対の電極板40を構成する双方のパンチングメタルとして、高周波電源42との電気配線に必要な部分を除いた全ての面(貫通孔41の内周面を含む)を誘電体膜で覆ったものを用いた。この誘電体膜は、チタン酸バリウム及びアルミナを主成分とする材料からなるものであり、膜厚は200μm程度とした。
【表1】

【0042】
上記のようなパンチングメタルにより構成した一対の電極板40間に、高周波電源42により約25kHzの交流電圧を印加し、マイクロプラズマ発生装置4の評価試験を行った。その後、上記の4種類のマイクロプラズマ発生装置4を用いて除菌装置1を構成し、以下に述べるような除菌性能の評価試験を行った。なお、除菌性能の評価試験では、オゾン分解除去装置5が備えるオゾン分解触媒フィルタとして、二酸化マンガンからなるオゾン分解触媒を備えたものを使用した。
【0043】
試験に使用した除菌評価装置の概略構成を図4に示す。除菌性能を確認するための試験用カビ粉体72は、以下のようにして作製した。まず、カビが浮遊する室内環境を再現するため、浮遊カビを空気中から分離した。分離した浮遊カビは、遺伝子解析によりPenicillium chrysogenumであることがわかった。室内環境中では、浮遊カビは、胞子の状態で埃に付着して浮遊していると考えられる。そこで、空気中から分離したPenicillium chrysogenumをPDA(Potato Dextrose Agar)寒天培地上で培養して胞子を形成し、単離した胞子をタルクからなる試験用粉体と混合することで、室内環境中を浮遊する浮遊カビの状態に近い試験用カビ粉体72を作製した。
【0044】
上記のように作製した試験用カビ粉体72を、図4に示すように、フィーダ70(回転数:9.5回/分)に投入し、ナイロンメッシュ71(ポアサイズ:27μm)を通過させて自然落下させた。そして、ナイロンメッシュ71の下方にはシロッコファン3が配設されているため、試験用カビ粉体72を含む空気は一対の電極板40に供給される。なお、シロッコファン3は、風量が0.5m3/分となるように駆動した。上述のように、電極板40としてのパンチングメタルは、直径が6cmの円形の形状を有している。そのため、シロッコファン3により0.5m3/分の風量で空気を流通させることで、電極板40に供給される空気の線速は約2.9m/秒となる。この値は、一般的な空気清浄機における線速と略一致する。そして、電極板40の貫通孔41を通過し除菌装置1の外部に送出された試験用カビ粉体72を含む空気をPDA寒天培地73に供給し、PDA寒天培地73にて試験用カビ粉体72を捕集した。そして、PDA寒天培地73に捕集されたカビを培養して発現したコロニー数を計測した。
【0045】
上記のコロニー数の計測は、マイクロプラズマ発生装置4にマイクロプラズマを発生させた場合と、マイクロプラズマ発生装置4にマイクロプラズマを発生させなかった場合との双方について行い、各々の試験で得られたコロニー数の比から除菌率を算出した。なお、図4に示す吸引機75は、試験用カビ粉体72が除菌評価装置の外部に漏れないように、PDA寒天培地73に捕集されなかった試験用カビ粉体72を吸引するためのものである。また、ダンパ74は、吸引機75の吸引量を調節するためのものである。
【0046】
(2)試験結果
まず初めに、マイクロプラズマ発生装置4の評価試験の結果を示す。図5は、電極板40に形成された貫通孔41の孔径φが2mm及び3mmの場合における、放電電圧に対する放電電流の測定結果を示す図である。図6は、電極板40に形成された貫通孔41の孔径φが2mm及び3mmの場合における、放電電圧に対するオゾン濃度の測定結果を示す図である。ここで、放電電圧の数値は、一対の電極板40間に印加される交流電圧の最大値である波高値として表している。すなわち、図5及び図6の横軸は、一対の電極板40間に印加される交流電圧の振幅の1/2倍の値となっている。以下、特に断らない限り、放電電圧の数値は波高値(振幅の1/2倍の値)を示すものとする。この試験結果より、放電電流は貫通孔41の孔径φにあまり依存せず、放電電圧が500Vを超えるあたりから放電が発生することがわかる。一方、オゾン濃度は貫通孔41の孔径φに大きく依存するが、何れの孔径φの場合でも、放電電圧を大きくすると環境上の観点から無視できない程度の濃度のオゾンがマイクロプラズマにより生成されることが分かる。
【0047】
次に、除菌評価装置による除菌性能の試験結果を示す。図7は、マイクロプラズマ発生装置4に備えられる電極板40の孔径φが2mmの場合における、放電電圧に対する除菌率の測定結果を示す図である。なお、この試験は、マイクロプラズマ発生装置4のみによる除菌性能を確かめるため、オゾン分解除去装置5にオゾン分解触媒フィルタを備えずに行った。また、図7には、図6のオゾン濃度の測定結果も併せて示してある。この結果より、放電電圧の値が放電が発生し始めるような500V程度である場合には除菌率は低く、放電電圧が1000V程度と大きくなると一定の除菌率が得られることがわかる。また、除菌率の上昇とともにマイクロプラズマにより生成されるオゾンの濃度も上昇することがわかる。この試験結果より、本発明に係るマイクロプラズマ発生装置4を用いて空気の除菌をする場合には、放電電圧を1000V以上とする必要があるとともに、無視できない程度の濃度のオゾンが発生することが確かめられた。
【0048】
図8は、放電電圧を1200Vとした場合の除菌率の測定結果を示す図である。この図より、孔径φが1.5mmの場合と孔径φが2.0mmの場合とでは除菌率に大きな差異がないことがわかる。具体的には、孔径φが1.5mmの場合の除菌率は68%であり、孔径φが2.0mmの場合の除菌率は67%である。一方、孔径φが3mmの場合や孔径φが4mmの場合では除菌率は低く、孔径φが3.0mmの場合の除菌率は53%であり、孔径φが4.0mmの場合の除菌率は28%である。本発明に係るマイクロプラズマ発生装置4では、マイクロプラズマは電極板40に形成された貫通孔41の孔周辺を中心に発生するため、孔径φが大きくなるにつれてマイクロプラズマにより処理されずに貫通孔41を通過する空気の割合が増加し、除菌率が低くなっているものと思われる。
【0049】
図9は、オゾン分解除去装置5にオゾン分解触媒フィルタを備えた場合の除菌率の測定結果を示す図である。なお、この測定は図8と同様放電電圧を1200Vとして行った。図8と比較すると、オゾン分解触媒フィルタを備えることで、全ての孔径φに対して除菌率が向上していることがわかる。具体的には、孔径φが1.5mmの場合の除菌率は89%まで向上した。孔径φが2.0mmの場合の除菌率は86%まで向上した。孔径φが3.0mmの場合の除菌率は65%まで向上した。孔径φが4.0mmの場合の除菌率は57%まで向上した。除菌性能が向上した理由として、オゾン分解触媒フィルタへの捕捉効果に加えて、一対の電極板40間に発生したマイクロプラズマにより生成されたオゾンがオゾン分解触媒フィルタにより分解し、発生した酸素原子(O*)により空気がさらに除菌されたものと思われる。この試験結果より、本発明に係る除菌装置1によれば、除菌流路2を流れる空気に対してマイクロプラズマによる除菌とオゾンによる除菌との双方を行うことができ、両者の働きで空気の除菌効果が格段に向上することが確かめられた。
【0050】
除菌装置1の使用用途にもよるが、除菌率は少なくとも60%以上であることが求められる。この観点から図9の試験結果をみると、貫通孔41の孔径φの上限値は3mmとするのが好ましいことがわかる。また、貫通孔41の孔径φの上限値を2mmとすると、除菌率を80%以上とすることができ、更に好ましい。一方、貫通孔41の孔径φの下限値は、除菌率の値ではなく他の要因によって定めると好適である。例えば、電極板40の板厚を1mmとした場合に孔径φを1mm未満の値とすると、電極板40の製造コストの上昇を招くおそれがある。このような観点から、貫通孔41の孔径φの下限値は1.5mmとするのが好ましい。
【0051】
また、除菌対象の流体である空気を貫通孔41に流通させる際の圧力損失の観点から貫通孔41の孔径φの下限値を定めることもできる。図10は、孔径φが1.5mm、2.0mm、及び3.0mmの場合おける、空気が一対の電極板40に設けられた貫通孔41を通過する際に生じる圧力損失の測定結果を示す図である。上述したように、一般的な空気清浄機の線速は2.9m/秒であるため、ここでは線速が2.9m/秒付近での圧力損失の測定結果に着目する。圧力損失は100Pa以下であることが望ましいが、図10より、孔径φが1.5mmの場合でも圧力損失が100Pa以下に抑えられていることがわかる。孔径φが小さくなると一般的に圧力損失が大きくなることを考慮すると、孔径φが1.5mm未満となると圧力損失が100Paを超える可能性がある。よって、圧力損失の観点からも、貫通孔41の孔径φの下限値は1.5mmとするのが好ましい。
【0052】
以上のように、貫通孔41の孔径φは、1.5mm以上3mm以下とするのが好ましいことが確認された。この結果と表1とを照らし合わせると、開孔率rを、39%以上51%以下とするのが好ましいともいえる。
【0053】
5.除菌方法
これまで説明してきた除菌装置1は、図11にフローチャートで示すような除菌方法に適用することができる。ここで、第一除菌工程(ステップ#01)は、マイクロプラズマ発生装置4に、除菌対象の流体である空気を導いて、マイクロプラズマ発生装置4で発生させたマイクロプラズマにより空気を除菌する工程である。また、第二除菌工程(ステップ#02)は、第一除菌工程を経て除菌された空気を、オゾン分解除去装置5に導いて、マイクロプラズマ発生装置4で発生したオゾンを分解除去するとともに、当該オゾンの分解により発生する酸素原子によりさらに除菌する工程である。このように、除菌流路2を流れる空気に対して、マイクロプラズマによる除菌(第一除菌工程)とオゾンによる除菌(第二除菌工程)との双方を行うことで、空気の除菌効果を格段に高めることが可能となっている。
【0054】
6.その他の実施形態
(1)上記の実施形態においては、流体駆動手段としてのファン3が、除菌流路2における最上流側に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、ファン3を除菌流路2におけるマイクロプラズマ発生装置4とオゾン分解除去装置5との間に配置する構成としたり、ファン3を除菌流路2の最下流側に配置する構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。また、当然ながら、流体駆動手段はファン3により構成されるものに限られず、ファン以外の機構により流体駆動手段を構成しても良い。
【0055】
(2)上記の実施形態においては、マイクロプラズマ発生装置4が一対の電極板40を備えて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、マイクロプラズマ発生装置4が複数対の電極板40を備え、除菌対象の流体が複数回マイクロプラズマにより除菌される構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。また、マイクロプラズマによる除菌後の流体をマイクロプラズマ発生装置4の上流側に戻すリターン流路を設けることで、除菌対象の流体がマイクロプラズマにより除菌される頻度を増やす構成としても好適である。
【0056】
(3)上記の実施形態においては、オゾン分解除去装置5が、オゾン分解触媒フィルタを備えて構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、オゾン分解除去装置5を、除菌流路2を流れる流体に紫外線を照射可能な紫外線光源を備えて構成することも本発明の好適な実施形態の一つである。この構成においては、紫外線を照射することによりオゾンから酸素原子を生成し、当該酸素原子を用いて除菌対象の流体に対して除菌処理を施すことができる。
【0057】
(4)上記の実施形態においては、電極板40に形成される貫通孔41の断面形状が円形である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、貫通孔41の断面形状を楕円形状としたり、三角形や四角形などの多角形状とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
【0058】
(5)上記の実施形態においては、除菌対象の流体が空気であり、当該空気中のカビを除去する除菌装置に本発明を適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、マイクロプラズマにより殺菌することが可能な菌を含むあらゆる流体(気体及び液体)の除菌を行う除菌装置に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、マイクロプラズマ発生手段を用いた除菌装置及び除菌方法に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:除菌装置
2:除菌流路
3:ファン(流体駆動手段)
4:マイクロプラズマ発生装置(マイクロプラズマ発生手段)
5:オゾン分解除去装置(オゾン分解除去手段)
40:電極板
41:貫通孔
42:高周波電源(電圧印加装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌流路に除菌対象の流体を流す流体駆動手段と、前記除菌流路に配設されるマイクロプラズマ発生手段と、前記除菌流路における前記マイクロプラズマ発生手段より下流側に配設されるオゾン分解除去手段とを備えて構成され、
前記マイクロプラズマ発生手段が、前記除菌流路を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、前記除菌対象の流体が通過可能な貫通孔を前記電極板の厚み方向に形成して構成され、前記電極板の表面に誘電体膜が形成され、
前記マイクロプラズマ発生手段によりマイクロプラズマが形成される状態で、前記貫通孔を通過した前記除菌対象の流体が前記オゾン分解除去手段を通過する除菌装置。
【請求項2】
前記貫通孔の孔径が1.5mm以上3mm以下である請求項1記載の除菌装置。
【請求項3】
前記電極板に隣接して配設される貫通孔間に位置する電極板部分に関し、
前記隣接して配設される貫通孔間の最小離間長さが少なくとも1mmとされている請求項2記載の除菌装置。
【請求項4】
前記一対の電極板の互いに対向する面のうち少なくとも一方の面には誘電体膜が形成され、
前記一対の電極板は、当該2枚の電極板間に形成される空隙の板面に直交する方向の長さが30μm以下となるように配置され、
前記一対の電極板間には、波高値が1000V以上の交流電圧が印加される請求項2又は3記載の除菌装置。
【請求項5】
前記オゾン分解除去手段は、オゾン分解触媒フィルタを備えて構成され、
前記オゾン分解触媒フィルタは、二酸化マンガン、酸化ニッケル、四三酸化鉄、酸化銅、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、及び炭酸銅の何れか一種又は複数種の組み合わせからなるオゾン分解触媒を備える請求項1から4の何れか一項記載の除菌装置。
【請求項6】
前記流体は空気であり、当該空気中のカビを除去する請求項1から5の何れか一項記載の除菌装置。
【請求項7】
除菌流路を横断して互いに略平行に配置される一対の電極板と、前記電極板にプラズマ発生用の電圧を印加する電圧印加装置とを備えて構成されるとともに、前記一対の電極板の夫々に、除菌対象の流体が通過可能な貫通孔が前記電極板の厚み方向に形成され、前記電極板の表面に誘電体膜が形成されたマイクロプラズマ発生手段に、前記除菌対象の流体を導いて、当該マイクロプラズマ発生手段で発生させたマイクロプラズマにより前記除菌対象の流体を除菌する第一除菌工程と、
前記第一除菌工程を経て除菌された前記除菌対象の流体を、オゾン分解除去手段に導いて、前記マイクロプラズマ発生手段で発生したオゾンを分解除去するとともに、当該オゾンの分解により発生する酸素原子によりさらに除菌する第二除菌工程と、を実行する除菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−10835(P2011−10835A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157211(P2009−157211)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】