説明

陰極線管のゲッターフラッシング方法及び陰極線管用ゲッター

【課題】 本発明はゲッターの活性金属が拡散される方向をファンネル面に向かうようにゲッターフラッシングを行う陰極線管のゲッターフラッシング方法を提供する。
【解決手段】 装入された活性金属の拡散方向が近接するファンネル2の方に向かう姿勢でゲッター10を設置してゲッターフラッシングを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は小型陰極線管に於いてゲッターフラッシングにより発生する輝度低下及びカラーバーの発現を防止するためにゲッター活性金属の拡散がファンネルの方向に行われるようにする陰極線管のゲッターフラッシング方法及び陰極線管用ゲッターに関する。
【0002】
【従来の技術】一般的に陰極線管の製造工程の中で排気工程とゲッターフラッシング(getter flashing)工程では電子放出に必要な高真空度の真空を実現し、高圧エージング工程では絶縁状態を高め、エミッションエージング(emission aging)工程ではカソードの活性度を上げて電子放出を容易化する。
【0003】前記ゲッターフラッシング工程で使われる従来の陰極線管のゲッターフラッシング方法は、図5に示すように、コップ形状の容器14に活性金属、例を挙げるとバリウムBa、カルシウムCa、マグネシウムMg、ニオブNb、他に、Ta,Th,Ti,Zrなどを装入したゲッター10をその容器14の開放部分がシャドーマスク6の方に向かうように陰極線管の内部に設置し、前記ゲッター10に近接するようにファンネル2の外側に高周波加熱コイル18を設置して前記高周波加熱コイル18に一定の高周波電圧を一定時間供給する高周波誘導加熱を行うことによりゲッター10に含有されたバリウムなどの活性金属を蒸発させて陰極線管の内側にゲッター膜を形成し、蒸発されたバリウムなどの化学作用により残留ガス(例を上げると水素、二酸化炭素、酸素、水蒸気など)を前記ゲッター膜に吸着させることにより陰極線管の内部を電子放出に必要な高真空を実現していた。前記ゲッター10は、電子銃8に帯板形状の支持体12を介して取着される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のように行われる従来の陰極線管のゲッターフラッシング方法はゲッター10の容器14に装入した活性金属であるバリウムなどの拡散方向がシャドーマスク6の方に向かうようにゲッター10を設置して行うため、拡散される活性金属がシャドーマスク6のビーム通過孔を通過してパネル4に塗布された蛍光膜5に付着されて変色の原因になると同時に画面の輝度が低下するという問題があった。
【0005】特に小型陰極線管( 例を上げると10インチまたは6インチ陰極線管) に於いてはゲッター10とシャドーマスク6間の距離が大変短いのでシャドーマスク6に付着する活性金属の量が多いため画面に虹形状のカラーバーが現れるという問題があった。
【0006】本発明の目的は上記問題点を解決するためのもので、ゲッターの活性金属が拡散される方向をファンネル面に向かうようにゲッターフラッシングを行う陰極線管のゲッターフラッシング方法及び陰極線管用ゲッターを提供する点にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による陰極線管のゲッターフラッシング方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した通り、装入された活性金属の拡散方向がゲッターに近接するファンネルの方に向かう姿勢でゲッターを設置して、ゲッターフラッシングを行う点にある。つまり、活性金属がファンネル側に蒸発拡散されてシャドーマスクまたはパネルの蛍光面に付着することがないので画面の輝度の低下を回避することができるのである。
【0008】本発明による陰極線管のゲッターフラッシング方法の第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載した通り、上記第一の特徴構成に加えて、活性金属が装入されたゲッター容器の開放部分をゲッター容器に近接するファンネルの方に向かう姿勢でゲッターを設置し、前記ゲッターに装入された活性金属の拡散方向が前記近接するファンネルの方に向かうようにしてゲッターフラッシングを行う点にある。
【0009】本発明による陰極線管用ゲッターの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載した通り、活性金属が装入される容器と、前記容器をファンネル内面と所定の間隔に維持させる間隔維持部材と、前記容器と間隔維持部材を支持する支持部材を含む点にある。つまり、間隔維持部材により、ファンネル面と活性金属が装入された容器はいつも一定間隔に維持されるので、ゲッターフラッシングを一定に行うことができるのである。
【0010】本発明による陰極線管用ゲッターの第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載した通り、上述の陰極線管用ゲッターの第一の特徴構成に加えて、前記支持部材は所定の弾性を有する材質よりなり、ファンネルの内面に対応する所定の曲率よりなる点にある。
【0011】本発明による陰極線管用ゲッターの第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項5に記載した通り、上述の陰極線管用ゲッターの第一の特徴構成に加えて、前記容器には中央部に前記間隔維持部材が通過する孔と活性金属が装入される溝を形成し、前記間隔維持部材には前記容器に形成された孔を通過して活性金属が装入された溝から所定の高さで突出する突出部を形成する点にある。つまり、突出部の端部がファンネル面と接触することにより、ファンネル面と活性金属が装入された容器はいつも一定間隔に維持されるので、ゲッターフラッシングを一定に行うことができるのである。
【0012】本発明による陰極線管用ゲッターの第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項6に記載した通り、上述の陰極線管用ゲッターの第一の特徴構成に加えて、前記支持部材により支持される前記容器の開放された側が容器に近接するファンネル面に向かうように前記支持部材と間隔維持部材が結合する点にある。
【0013】本発明による陰極線管の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項7に記載した通り、活性金属が装入された容器の開放された部分が容器に近接するファンネルの方に向かう姿勢で形成されたゲッターを含む点にある。
【0014】上述のように行われる本発明陰極線管のゲッターフラッシング方法及び陰極線管用ゲッターを使用してゲッターフラッシングを行うと、蒸発される活性金属は近接するファンネル内面側へ拡散付着し、シャドーマスクに付着することが阻止、または効果的に低減させることができるので、輝度の低下が未然に防止されるだけでなく、小型陰極線管に於いても虹形状のカラーバーの出現を未然に防止できるのである。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る陰極線管のゲッターフラッシング方法の好適の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0016】本発明による陰極線管のゲッターフラッシング方法の一実施形態は、図1及び図2に示すように、ゲッター20に装入された活性金属26の拡散方向がゲッター20に近いファンネル2の方に向かうようにゲッターフラッシングを行う。
【0017】即ち、活性金属26が装入された容器24の開放部分を容器24に近いファンネル2の方に向かうようにゲッター20を電子銃8のシールドコップ9に設置してゲッターフラッシングを行う。
【0018】前記ゲッター20帯板形状の支持部材22の一端部に、活性金属26が装入された容器24を、開放された部分が組み立てられた時に容器24に近いファンネル2の方に向かうように取着し、前記支持部材22のまた他の端部は電子銃8のシールドコップ9の外側に取着して設置される。
【0019】前記ゲッター20はアノードが設置されるファンネル面が隣接する面の中央部分に位置するように設置する。
【0020】前記ゲッター20容器24に装入される活性金属26としては主としてバリウムまたはマグネシウムなどが使われる。
【0021】前記のように行われる本発明に係る陰極線管のゲッターフラッシング方法を使用してゲッターフラッシングを行う、即ち、ファンネル2の外側に前記ゲッター20に近接して設置される高周波加熱コイル18に一定な高周波電圧を一定時間供給する高周波誘導加熱を行うと、前記ゲッター20の容器24に装入されたバリウムなどの活性金属26が前記ファンネル2の方に向かって蒸発し、蒸発された活性金属26の蒸気が陰極線管の内側面にゲッター膜を形成し、蒸発された活性金属26蒸気との化学作用により残留ガス(例を挙げると水素、二酸化炭素、酸素、水蒸気など)が前記ゲッター膜に吸着されることにより、陰極線管の内部が電子放出に必要な高真空となる。
【0022】また本発明による陰極線管用ゲッターは、図3及び図4に示すように、活性金属26が装入される容器30と、前記容器30をファンネル内面と所定の間隔で維持させる間隔維持部材34と前記容器30と間隔維持部材34を支持する支持部材38とからなる。
【0023】前記支持部材38は所定の弾性を有する材質よりなり、ファンネル内面に対応する所定の曲率からなる。また前記支持部材38は帯板形状よりなる。
【0024】前記容器30には中央部に前記間隔維持部材34が通過する孔32を形成し、前記容器30の一端部には活性金属26が装入される溝31を形成する。
【0025】前記間隔維持部材34は前記容器30の溝31の反対側33、即ち、閉鎖面に取着され、前記容器30に形成された孔32を通過して活性金属26が装入された溝31から所定の高さに突出するように突出部35が形成される。前記突出部35は前記容器30の開放された方、即ち溝31の方に突出される。
【0026】前記突出部35はファンネル面と接触するのでファンネル面を損傷しないように曲面に形成するのが好ましい。
【0027】前記突出部35の端部がファンネル面と接触することにより、ファンネル面と活性金属26が装入された容器30はいつも一定間隔に維持される。
【0028】前記間隔維持部材34は前記容器30にスポット溶接などにより取着され、一端部36は容器30の外面より突出して形成され、前記支持部材38の一端部37に取着される。
【0029】前記間隔維持部材34と支持部材38はスポット溶接などにより付着される。前記支持部材38の一端部39は電子銃のシールドコップに付着される。
【0030】電子銃とファンネルが組み立てられた時に、前記容器30の開放部分が、容器30に近いファンネル面側に対向するように、即ち、所定の曲率で形成された前記支持部材38の内側に前記容器30の開放部分が対向するように、間隔維持部材34と支持部材38を結合させる。即ち、前記間隔維持部材34の突出部35が所定の曲率で形成された支持部材38の内側に位置するように間隔維持部材34と支持部材38とを結合させる。
【0031】本発明による陰極線管用ゲッターによると、間隔維持部材34によって活性金属26が拡散される容器30とファンネル内面がいつも一定な間隔に維持されるのでゲッターフラッシングを一定に行うことができる。
【0032】また本発明による陰極線管用ゲッターは電子銃に組み付けられた後、容器30の開放側が容器30に近いファンネル面に向かう姿勢で、ファンネルと電子銃を組み立てると、ゲッターフラッシングを行う時に活性金属26がファンネル側に拡散される。
【0033】
【発明の効果】前記のように行われる本発明による陰極線管のゲッターフラッシング方法及び陰極線管用ゲッターによるとゲッターの容器に装入された活性金属がファンネル側に蒸発拡散されてシャドーマスクまたはパネルの蛍光面に付着することがないので画面の輝度の低下を回避することができる。また小型陰極線管( 例を上げると10インチまたは6インチ陰極線管) においても活性金属がシャドーマスクに全く付着することがないので干渉による虹形状カラーバーが画面に現れることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による陰極線管のゲッターフラッシング方法の一実施例を表す断面図である
【図2】本発明によるゲッターが装着された電子銃の一実施例を表す斜視図である
【図3】本発明による陰極線管用ゲッターの一実施例を表す断面図である
【図4】本発明による陰極線管用ゲッターの一実施例を表す平面図である
【図5】従来の陰極線管のゲッターフラッシング方法を表す断面図である
【符号の説明】
2 ファンネル
4 パネル
5 蛍光膜
6 シャドーマスク
8 電子銃
10 ゲッター
12 支持体
14 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 装入された活性金属の拡散方向がゲッターに近接するファンネルの方に向かう姿勢でゲッターを設置して、ゲッターフラッシングを行う陰極線管のゲッターフラッシング方法。
【請求項2】 活性金属が装入されたゲッター容器の開放部分をゲッター容器に近接するファンネルの方に向かう姿勢でゲッターを設置し、前記ゲッターに装入された活性金属の拡散方向が前記近接するファンネルの方に向かうようにしてゲッターフラッシングを行う請求項1記載の陰極線管のゲッターフラッシング方法。
【請求項3】 活性金属が装入される容器と、前記容器をファンネル内面と所定の間隔に維持させる間隔維持部材と、前記容器と間隔維持部材を支持する支持部材を含む陰極線管用ゲッター。
【請求項4】 前記支持部材は所定の弾性を有する材質よりなり、ファンネルの内面に対応する所定の曲率よりなる請求項3記載の陰極線管用ゲッター。
【請求項5】 前記容器には中央部に前記間隔維持部材が通過する孔と活性金属が装入される溝を形成し、前記間隔維持部材には前記容器に形成された孔を通過して活性金属が装入された溝から所定の高さで突出する突出部を形成する請求項3記載の陰極線管用ゲッター。
【請求項6】 前記支持部材により支持される前記容器の開放された側が容器に近接するファンネル面に向かうように前記支持部材と間隔維持部材が結合する請求項3記載の陰極線管用ゲッター。
【請求項7】 活性金属が装入された容器の開放された部分が容器に近接するファンネルの方に向かう姿勢で形成されたゲッターを含む陰極線管。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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