説明

陽極酸化装置

【課題】金属基板の絶縁層として陽極酸化被膜を金属基板の片面に高速に製膜する。
【解決手段】陽極酸化装置を、陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる帯状物1を密着支持し、少なくとも帯状物1が密着する部分2aは導電性材料で構成された給電ドラム2と、給電ドラム2に対向して設けられた対向電極3と、帯状物1を密着支持した給電ドラム2の一部と対向電極3とを浸漬する電解液4で満たされた電解槽5と、給電ドラム2に密着支持された帯状物1の短手方向端部と、給電ドラム2のうち帯状物1が密着しない部分とをオーバーラップして電解液4から保護する非導電性材料からなる保護部材6と、給電ドラム2の周速に同期させて給電ドラム2に密着させた帯状物1と保護部材6を電解液4中で共走行させる駆動部とからなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、薄膜トランジスタ回路、ディスプレイ(画像表示装置)等の半導体装置の用途に有用な半導体素子用基板や電解コンデンサー用電極を製造するのに適した陽極酸化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の基板を用いた薄膜太陽電池は、基板の軽量性および可撓性(フレキシビリティー)という観点から、ガラス基板を用いたものに比較して、広い用途への適用の可能性がある。さらに、金属製の基板は高温プロセスにも耐えうるという点で、光電変換特性が向上するため太陽電池の高効率化が期待できる。
【0003】
太陽電池モジュ−ルは、同一基板上で太陽電池セルを直列接続し集積化することで、モジュール効率を向上させる。このとき、太陽電池モジュ−ルの金属基板には絶縁層を形成し、この上に光電変換を行う半導体回路層を設ける必要がある。例えば、ステンレス等の鉄系素材を基板に用いた場合は、CVD等の気相法やゾルゲル法等の液相法によりSiやアルミニウムの酸化物を被覆し絶縁層を形成する必要がある。しかし、これらの手法は、製法的にピンホールやクラックを発生し易く、大面積の薄膜絶縁層を安定に作製する手法としては本質的な課題を抱えている(特許文献1)。
【0004】
一方、アルミニウムの場合には陽極酸化膜(AAO)を形成することにより、ピンホールが無く密着性良好な絶縁被膜を得ることができる(特許文献2)。しかし、アルミニウム上のAAOは、120℃以上に加熱するとクラックが発生することが知られており(非特許文献1)、絶縁性、特にリーク電流が増大してしまうという問題を抱えている。また、アルミニウムは200℃程度で軟化するため、この温度以上を経たアルミニウムは極めて強度が小さく、クリープ変形や座屈変形といった永久変形(塑性変形)を生じ易く、これを用いる半導体装置の製造時にはハンドリングに厳しい制限が必要である。これは屋外用太陽電池などへの適用を困難なものにしている。
【0005】
上記問題を解決するため、所謂アルミニウムクラッド材からなる基板に絶縁層としてAAOを形成し、その上に光吸収層である化合物半導体層や電極層を形成する方法が提案されている。この方法では金属基板と化合物半導体層の線膨張係数の差を小さく設計することが可能であり、500℃以上の高温製膜となる化合物半導体層の形成工程においても、絶縁層のクラックや化合物半導体の剥離などの問題を生じない。またアルミニウムと複合させる金属基材は、アルミニウムに比較して比強度や高温強度が大きいため、製造時のハンドリングも容易である。
【0006】
絶縁層としてのAAOは、電池モジュールとした時の高い電圧で絶縁破壊しないだけでなく、電圧印加時のリーク電流も小さいこと、すなわち体積抵抗が高い必要がある。リーク電流が大きいと、発電した電流が個々の電池間で漏れ電流となり、モジュール発電効率が低下する。従って、AAOは前述の性能を担保するため、1μm以上、好ましくは5μm以上の厚さが必要となる。
【0007】
帯状アルミニウムを連続的に陽極酸化するときの一般的な装置は、電解槽の前部に給電ロールまたは給電槽を置き、アルミニウムに電流を供給する構成であり、給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムにも電流が流れる。陽極酸化とは電解酸化(アルミニウムの場合は3電子反応)であり、AAOの厚さは流した電気量に比例する。従って、帯状アルミニウムを連続的に陽極酸化する装置の場合、ライン速度(帯状アルミニウムの走行速度)にも比例した電流を給電する必要がある。このとき、給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムにも同様に比例した電流が流れることになるので、AAO厚が厚いほど、またライン速度が大きくなるほど、電圧降下が大きくなって電力ロスが発生する。さらに給電部分から電解槽にかけてのアルミニウムはIR発熱により溶断する可能性があり、生成するAAO厚とライン速度には上限が存在する。発熱と溶断限界電流は帯状アルミニウムの単位断面積あたりの抵抗によって決まるので、薄いアルミニウム箔ほど、生成可能なAAO厚とライン速度の上限は小さくなる。
【0008】
一方で、帯状の薄いアルミニウム箔の片面にのみ厚いAAOを形成したいという要求があり、一例は前述の絶縁層付金属基板である。この場合、片面にマスキングフィルムを貼り、前述の装置で製造することは可能であるが、AAO厚とライン速度には上限が存在する。また、メッキなどのadditive被膜と異なり、AAOはsubtractive被膜であり、マスキングフィルム端面からの電解液侵入が生じると、容易に被膜形成する。従って高粘着力のマスキングフィルムを選定する必要がある。さらにクラッド材のような異種金属が接合された帯状金属箔の場合は、局部電池作用による副反応を防止するため、異種金属同士が露出した幅方向の側端面もマスキングフィルムを貼り、電気化学的に不活性にしておく必要がある。
【0009】
帯状アルミニウムの片面にのみAAOを製膜する装置は種々提案されている。代表例は、陽極酸化槽に断面円上の支持ドラムを置き、それにアルミニウム箔を密着させてアルミニウム箔の片面のみを陽極酸化させる手法である(特許文献3)。また、支持ドラムに導電性を持たせ、ドラムに給電する手法も提案されている(特許文献4)。後者の場合は、アルミニウム箔の裏面から直接給電することになるので、前述の電圧降下や発熱を無視できるレベルにまで低下させることが可能である。
【0010】
しかしながら、この手法では、支持ドラムとアルミニウム箔の間に電解液の染込みが容易に生じる。陽極酸化槽側はAAO被膜が形成され過電圧が高くなっているので、支持ドラムに電解液が染込むと支持ドラムと対向電極間の直接電流が大きくなり、陽極酸化槽側のAAO被膜形成電流に対する電流ロスとなる。また、このロス電流は、給電ドラムの密着面に電気化学的作用を及ぼすことになり、密着面側のアルミニウムに対しても陽極酸化被膜を形成したり、給電ドラムが金属である場合はその表面が陽極酸化されたりアノード溶解したりして、いずれも密着面の接触抵抗が高くなって、スパーク等の局部不良を生じる可能性がある。
【0011】
上記のような問題を解決するため、特許文献4では給電ドラムの材質をタンタル、ニオブ等のいわゆるバルブメタルとする装置が提案されているが、この方法では電解操業時間に伴いバルブメタル表面に陽極酸化被膜が成長する。従って接触抵抗が徐々に増加するため、頻繁に交換する必要があるが、これらの材質は高価であり実用性に欠ける。一方、特許文献5では、アルミニウム箔と支持ローラーとの密着面に水を供給することで密着面の電気化学的作用を防止する方法が提案されている。また、特許文献6では、アルミニウム箔の両端をテンションをかけた不導体の圧接バンドで覆い、接触面に電解液が流入することがないようにした構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−339081号公報
【特許文献2】特開2000−49372号公報
【特許文献3】特開平4−371892号公報
【特許文献4】特開昭60−210931号公報
【特許文献5】特開平6−108289号公報
【特許文献6】特開昭46−39441号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】茅島,他,東京都立産業技術研究所研究報告3(2000)p21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献5は装置が複雑になるばかりでなく、電解液がドラム密着面の水によって薄められるため、常に電解液の濃度管理を行う必要がある。また、密着面上の薄層の水が電気分解によりガス発生すると、薄層が気膜となって接触抵抗が上がり、返ってスパーク等の原因になる可能性もある。一方、特許文献6に記載されているテンションをかけたバンドで覆う方法では、バンドは給電ドラムやアルミニウム箔と常に褶動することになり、バンドがアルミニウム箔の端部から位置ズレし易く、連続操業が困難である。また、圧接したテンションをかけることによって、薄いアルミニウム箔の場合はしわが入ってしまい、そのしわ部分から電解液が流入する可能性がある。
【0015】
このように、いずれの方法によっても、密着面側の陽極酸化被膜形成は完全には防止出来ないため、接触抵抗が不安定になるという問題は解決できない。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、薄いあるいは抵抗の高い金属基板の片面に高速で製膜することが可能な陽極酸化装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の陽極酸化装置は、陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる帯状物を密着支持し、少なくとも該帯状物が密着する部分は導電性材料で構成された給電ドラムと、該給電ドラムに対向して設けられた対向電極と、前記帯状物を密着支持した給電ドラムの一部と前記対向電極とを浸漬する電解液で満たされた電解槽と、前記給電ドラムに密着支持された帯状物の短手方向端部と前記給電ドラムのうち前記帯状物が密着しない部分とをオーバーラップして前記電解液から保護する非導電性材料からなる保護部材と、前記給電ドラムの周速に同期させて前記給電ドラムに密着させた前記帯状物と前記保護部材を前記電解液中で共走行させる駆動部とを有することを特徴とするものである。
【0017】
前記給電ドラムには前記帯状物が内接走行する凹部が設けられていることが好ましい。
前記保護部材を前記給電ドラムに圧接するガイドローラーを設ける態様としてもよい。
前記対向電極は多数の貫通孔を有することが好ましい。
【0018】
前記給電ドラムに支持された帯状物が前記電解液に接液する部分および/または離液する部分における前記給電ドラムと前記対向電極との間隔が、前記帯状物の前記電解液浸液中央部分における前記給電ドラムと前記対向電極との間隔よりも大きいことが好ましい。
【0019】
前記保護部材は非導電ゴムまたは非導電ゴムで覆われた金属箔であることが好ましい。
前記給電ドラムの導電性材料は導電プラスチックまたは導電ゴムであることが好ましい。
【0020】
前記対向電極の電位がグランドに対して負極性であることが好ましい。
とりわけ、前記帯状物をグランドと同電位とし、かつ陽極酸化のための電解用電源をグランドに対して絶縁出力とすることが好ましい。
前記グランドの電位に対する前記給電ドラムの電圧を監視する監視部を備えていることがさらに好ましい。
本発明の連続陽極酸化装置は、上記記載の陽極酸化装置を直列に多数配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の陽極酸化装置は、陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる帯状物を密着支持し、少なくともこの帯状物が密着する部分は導電性材料で構成された給電ドラムと、この給電ドラムに対向して設けられた対向電極と、帯状物を密着支持した給電ドラムの一部と対向電極とを浸漬する電解液で満たされた電解槽と、給電ドラムに密着支持された帯状物の短手方向端部と給電ドラムのうち帯状物が密着しない部分とをオーバーラップして電解液から保護する非導電性材料からなる保護部材と、給電ドラムの周速に同期させて給電ドラムに密着させた帯状物と保護部材を電解液中で共走行させる駆動部とを有するので、給電ドラムと帯状物との密着面側の陽極酸化被膜形成を完全に防止することが可能となり、安定した接触抵抗により、帯状物の片面に陽極酸化被膜を製膜することができる。
【0022】
また、帯状物は給電ドラムに密着支持されているため、帯状物の裏面から直接給電することができるので、電圧降下や発熱を無視できるレベルにまで低下させることが可能となり、ライン速度を上げることができるため、単位幅における長さあたりの抵抗が高い帯状物であっても、高速で陽極酸化被膜を製膜することができる。
【0023】
さらに、給電ドラムに帯状物が内接走行する凹部が設ける態様、あるいは保護部材を給電ドラムに圧接するガイドローラーを設ける態様とした場合には、保護部材による帯状物の短手方向端部と給電ドラムのうち帯状物が密着しない部分とのオーバーラップの水密性をより向上させることが可能となり、より安定した接触抵抗により、帯状物の片面に陽極酸化被膜を製膜することができる。
【0024】
また、本発明の連続陽極酸化装置は上記記載の陽極酸化装置を直列に多数配置したものであるので、個々の陽極酸化装置における給電ドラムでの面電流密度を陽極酸化不良の生じない最大に保ったまま、設置数のN倍のライン速度で製造が可能となり、抵抗の高いアルミニウムからなる薄い帯状物または少なくとも片面がアルミニウムである複合導電金属箔からなる帯状物に対して、5μm以上の厚いAAO膜を高速で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の陽極酸化装置の一実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す本発明の陽極酸化装置の概略断面図である。
【図3】帯状物が内接走行する凹部を設けた給電ドラムの概略正面模式図である。
【図4】給電ドラムの幅と径および帯状物と保護部材との関係を示す概略模式図である。
【図5】ガイドローラーが設けられた陽極酸化装置の一実施の形態を示す概略断面図である。
【図6】図5のガイドローラーが設けられた給電ドラムの概略正面図である。
【図7】対向電極の電位をグランドに対して負極性とする場合の陽極酸化装置の概略斜視図である。
【図8】本発明の陽極酸化装置を直列に多数配置した連続陽極酸化装置の概略模式図である。
【図9】走行速度とAAO製膜速度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の陽極酸化装置を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の陽極酸化装置の一実施の形態を示す概略斜視図、図2は図1に示す本発明の陽極酸化装置の概略断面図である。図1および図2に示すように、本発明の陽極酸化装置10は、陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる帯状物1(以下、単に帯状物1ともいう)を密着支持し、少なくとも帯状物1が密着する部分2aは導電性材料で構成された給電ドラム2と、給電ドラム2に対向して設けられた対向電極3(図1において対向電極は他の部分を視認しやすくするために省略している)と、帯状物1を密着支持した給電ドラム2の一部と対向電極3とを浸漬する電解液4で満たされた電解槽5と、給電ドラム2に密着支持された帯状物1の短手方向端部(両側)と、給電ドラム2のうち帯状物1が密着しない部分2b(2bは導電性の無い表面である)とをオーバーラップして電解液4から保護する非導電性材料からなる保護部材6とを有する。
【0027】
さらに、給電ドラム2の上流側には帯状物1をロール状に巻回する巻出しロール21が、下流側には給電ドラム2に送りだされた帯状物1の片面に陽極酸化を実施した後の帯状物1を巻き取る巻取りロール22が設けられている。また、給電ドラム2と巻出しロール21の間には、保護部材6をロール状に巻回する巻出しロール23が、給電ドラム2と巻取りロール22の間には、保護部材6を巻き取る巻取りロール24が、保護部材6によって帯状物1と帯状物1が密着しない部分2bとをオーバーラップできるように帯状物1の両側にそれぞれ設けられている。巻取りロール22および24にはそれぞれ駆動部(図示せず)が設けられており、給電ドラム2の周速に同期させて給電ドラム2に密着させた帯状物1と保護部材6を電解液4中で共走行させることができるようになっている。
【0028】
なお、ここでは巻取りロール22および24に設けられた駆動部が巻取りロール22および24のそれぞれを駆動して、陽極酸化実施後の帯状物1および保護部材6が巻取りロール22および24に巻取られる態様について説明しているが、巻取りロール22および24は単に回転自在な構成で、帯状物1および保護部材6を送り出すだけの機能を有し、その下流にそれぞれ別の駆動部で制御された巻取りロールが配置されている構成であってもよい。なおこの構成の場合には、巻取りロール22と駆動部で制御された別の巻取りロールとの間に、陽極酸化された帯状物を水洗する水洗槽や水洗後に乾燥するための乾燥槽を設置してもよい。
【0029】
給電ドラム2そのものは単に回転自在な構成となっており、上記で説明した駆動部を駆動することによって給電ドラム2は、帯状物1の一方の面のみを電解液4に浸漬した状態で搬送するようになっている。但し、給電ドラム2は駆動源が設けられていてそれ自身が回転するものであってもかまわない。
【0030】
給電ドラム2の直径は生産規模と陽極酸化の製膜速度にもよるが、一般的に50cm〜500cmの範囲で適宜選択することができる。給電ドラム2の帯状物1が密着する部分2aは導電性材料で構成されており、この導電性材料の幅は、必ずしも帯状物1の幅と一致させておく必要はなく、帯状物1の蛇行を許容できる限りの導電材料幅としておけばよい。導電性材料の幅は好ましくは帯状物1に対して50〜100%、さらには70〜90%とすることが望ましい。
【0031】
陽極酸化は面電流密度が一般に500mA/cm2以下であるため、給電ドラムの導電部分はそれ程高い導電性は必要無い。また、給電ドラムの導電性材料が金属の場合、電解液のミストにより酸化膜を形成する等して接触抵抗の経時変化が生じることがあるので、給電ドラムの導電部分は導電性プラスチックや導電ゴムであることが好ましい。これらの材質は表面が軟らかいために、陽極酸化されない面の傷防止にも効果的である。導電性プラスチックや導電ゴムは、通常の汎用材料に対してカーボンを混入させることにより導電性を持たせたものを使用することができる。これらの厚さは、所望とする強度や導電性によっても異なるが0.1mmから10mm程度が好ましい。給電ドラム2のうち帯状物1が密着しない部分2bは非導電性材料で構成される。非導電性材料としては、非導電性プラスチックや非導電ゴム等が好ましい。
【0032】
保護部材は非導電ゴムまたは非導電ゴムで覆われた金属箔であることが好ましい。より水密性を上げるために、帯状物1に密着する側に粘着性を有する材質を塗布したものであってもよい。
給電ドラムの直径にもよるが、共走行させる保護部材は水密性を確保するため、張力を掛けておくことが好ましく、大径給電ドラムの場合は、鋼芯入りの非導電ゴムベルトなどをより好ましく使用することができる。
【0033】
帯状物は、陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる。陽極酸化可能な金属としては、アルミニウム、Nb、Ta、Tiからなる帯状物、または少なくとも片面がこれらの金属である複合導電金属箔からなる。これらの金属は合金であってもよい。例えば、アルミニウムの場合、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を使用することができる。アルミニウム合金は一般に90%以上の純度を有するものが好ましく用いられ、陽極酸化被膜を絶縁膜として利用する場合は、金属Si粒子を析出物として含まない方が好ましい。
【0034】
複合導電金属箔として陽極酸化可能な金属に複合させる金属は、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼、Ti等を好ましく挙げることができる。帯状物の厚みは、一般に、0.02〜0.5mmの範囲である。このような単位幅における長さあたりの抵抗が高い帯状物であっても、帯状物を給電ドラムに密着支持して、帯状物の裏面から直接給電することができるので、より高速で陽極酸化被膜を形成することができる。
【0035】
電解液としては、例えば、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびアミドスルホン酸等の酸またはそれらの塩の水溶液、あるいはそれらの混合液が挙げられるが、所望の品質を得るために最適なものを選べばよい。電解液の濃度、温度も適宜選択することができる。
【0036】
本発明の陽極酸化装置は、給電ドラム2に密着支持された帯状物1の短手方向の両端部と帯状物1が密着しない部分2bとを、保護部材6がオーバーラップして給電ドラム2の周速に同期させて給電ドラム2に密着させた帯状物1と保護部材6を電解液4中で共走行させることができるので、従来、片面に陽極酸化被膜を形成する際に必要とされていたマスキングフィルムを用いなくても、電解液4の染込みを防止することができる。また、帯状物1の短手方向の両端部は保護部材6によって完全に保護されているので、クラッド材の様な異種金属が接合された帯状物に陽極酸化を行う場合であっても、局部電池作用による副反応が起こることがない。そして、給電ドラムと帯状物との密着面側の陽極酸化被膜形成を完全に防止することが可能となり、安定した接触抵抗により、金属基板の片面に高速に陽極酸化被膜を製膜することができる。
【0037】
本発明の陽極酸化装置は、帯状物1とオーバーラップさせる保護部材6との水密性をさらに向上させるべく、帯状物1とオーバーラップさせる保護部材6の蛇行を抑制するために、帯状物1と保護部材6の走行部分の給電ドラム2の径を小さくする態様としてもよい。図3および図4を用いて説明する。図3は給電ドラムに帯状物と保護部材がそれぞれ内接走行する凹部を設けた給電ドラムの概略正面模式図、図4は給電ドラムの幅と径および帯状物と保護部材の関係を説明するための概略模式図である。なお、この図3および図4において図1および図2中の構成要素と同等の構成要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、他の図面においても同様)。
【0038】
図3および図4に示すように、給電ドラム2には帯状物1が内接走行する凹部(切欠け部)と保護部材6が内接走行する凹部が設けられている。図4において、W3およびD3は給電ドラム2の全幅とドラム径を、W2およびD2は保護部材6が給電ドラム2に接触する外側の幅とドラム径を、W1およびD1は帯状物1の幅とドラム径を、W0は給電ドラムの導電材料部分の幅を示している。ドラム径の関係をD3>D2>D1とすることにより、帯状物1とオーバーラップさせる保護部材6とはそれぞれ給電ドラム2に設けられた凹部によって蛇行が抑制され、上記ドラム幅の関係をW3>W2>W1>W0とすることにより、保護部材6によって帯状物1は水密性よくオーバーラップされることとなり、帯状物1の裏面への電解液の侵入をより効果的に阻止することができる。なお、ここでは給電ドラム2に、帯状物1が内接走行する凹部と保護部材6が内接走行する凹部がそれぞれ設けられている態様を示したが、帯状物1が内接走行する凹部のみを設ける態様としてもよい。
【0039】
本発明の陽極酸化装置は、保護部材6を給電ドラム2に圧接するガイドローラーが設けられている態様としてもよい。図5および図6を用いて説明する。図5はガイドローラーが設けられた陽極酸化装置の一実施の形態を示す概略断面図、図6は図5のガイドローラーが設けられた給電ドラムの概略正面図である。図5および図6に示すように、この陽極酸化装置には、帯状物1の短手方向の両端部と帯状物1が密着しない部分2bとをオーバーラップする保護部材6を給電ドラム2に圧接するためのガイドローラー7を4か所に設けている。なお、ガイドローラー7の表面は絶縁処理がなされている。このようなガイドローラー7を設けることにより、保護部材6によって帯状物1はより水密性よくオーバーラップされて、帯状物1の裏面(給電ドラムと密着している面)への電解液の侵入を阻止することができる。
【0040】
なお、ここではガイドローラー7を、給電ドラム2の電解液4に浸漬している部分にのみ設けた態様を示しているが、ガイドローラー7は給電ドラム2の電解液4に浸漬していない部分にも設ける態様としてもよい。例えば、ガイドローラー7を、給電ドラム2の電解液3に浸漬していない部分(保護部材6の巻出し巻取りロール23と電解液4との間)にのみ設けても、保護部材6の蛇行を防止できるため、帯状物1と帯状物1が密着しない部分2bとを水密性よくオーバーラップさせることが可能である。
【0041】
陽極酸化においては反応中に対向電極からは多量の水素ガスが発生し、浮力で帯状物の陽極酸化面に到達する。陽極酸化面に気膜ができると陽極酸化不良を生じるので、電解槽内で電解液を撹拌する必要があるが、この撹拌の効率化を図るために、対向電極は多数の貫通孔を有することが好ましい。貫通孔の形状は電解液の撹拌形式(小型の装置の場合には撹拌子(スターラー)を選択したり、大型の装置の場合には電解液に流れを発生させて撹拌を行う)によっても異なるが、円形、角形やスリット状あるいはメッシュ状等から適宜選択することができる。個々の開口サイズは、給電ドラムと対向電極間の距離によっても異なるが、陽極酸化面に均一電界を印加するという観点からすれば大きすぎることは好ましくなく、例えば、給電ドラムと対向電極間の距離が10cmの場合には、円形開口で直径2cm以下とすることが好ましい。なお、対向電極としてはカーボンやアルミニウム等の汎用のものを使用することができる。
【0042】
陽極酸化時の電源波形としては、直流の場合が一般的であるが、他にも直流を重畳させた交流波形など所望の品質を得るために最適なものを選択できる。陽極酸化時の電流密度としては、自由に選択できる。例えば、処理時間中常に一定値としてもよいし、次第に電流密度を上げていくようにしてもよい。陽極酸化時の電解方式は定電流方式であっても定電圧方式であってもよい。
【0043】
陽極酸化は、対向電極に対し正極性の電位とすることで酸化被膜形成するが、対向電極の電位はグランドに対して負極性電圧を印加することが好ましい。これにより帯状物の電位をグランド電位近傍とすることができ、ロールツーロールで帯状物をハンドリングする設備全体をグランド電位にすることが可能となる。逆の場合は、設備全体をグランドに対して電位を持たせる必要があり、危険なばかりでなく、帯状物と設備の間でスパーク等の異常放電を生じ、製品不良を生じる可能性もある。
【0044】
とりわけ、帯状物をグランド電位に一致させ、電解用電源の正極及び負極出力共に、グランドに対し絶縁出力とすることがより好ましい。これにより、電解槽以外のロールツーロール部分で帯状物と設備の異常放電を完全に防止することができる。これを模式的に示したのが、図7である。帯状物1をグランド電位に一致させるには、電解槽5以外のロールツーロール部分に、少なくとも1つの導電性ロール30を置き、そのロールを電気的にグランド接続することにより可能である。
【0045】
さらに、電解方式(給電ドラムと対向電極との間に電流を流す方式)が定電流方式若しくは定電圧方式の場合は、グランド電位に対する給電ドラムの電圧を監視することが好ましい。これにより、前述の保護部材の水密性が一時的に低下してリーク電流を生じたり、帯状物と給電ドラムの接触抵抗が変化したりするような、帯状物上の陽極酸化被膜の長手方向の品質変動要因を監視することができる。
【0046】
対向電極3は、電解液4に浸漬させた給電ドラム2に密着した帯状物1と対向する全面に略等間隔で設けられることが好ましく、その形状は給電ドラム2と同芯円状の湾曲板形状であることが好ましい。但し、対向電極3が給電ドラム2に完全に等間隔の配置で電解液4中にあると、陽極酸化される帯状物が電解液4に接液する部分および電解液4から離液する部分において、電界集中による電流集中を生じて、陽極酸化不良の原因にもなるため、実効的な電界が小さくなるようにしておくことが好ましい。このように実効電界を小さくするには、電解液抵抗を利用することが簡便であり、接液部分におよび/または離液部分において、給電ドラムと対向電極間との距離を大きくする配置や、接液部分および/または離液部分には対向電極を設けない配置、あるいはそれらを併用した配置とすることができる。
【0047】
図2においては、接液部分および離液部分において給電ドラム2と対向電極3間の距離を大きくする対向電極配置を示している。すなわち、給電ドラム2に支持された帯状物1が電解液4に接液する部分における給電ドラム2と対向電極3との間隔P1および帯状物1が電解液4から離液する部分における給電ドラム2と対向電極3との間隔P2を、帯状物1の電解液4に浸液している中央部分における給電ドラム2と対向電極3との間隔P3よりも大きくしている。ここで、間隔P1〜P3は給電ドラムと対向電極とを結ぶ最短距離である。このような対向電極配置とすることにより、実効電界を小さくすることができ、陽極酸化不良の発生を抑制することができる。なお、接液部分および離液部分に対向電極を設けない配置は図5に示すような配置である。
【0048】
陽極酸化処理の前段階において、帯状物は通常、洗浄処理が施される。この洗浄処理はアルミニウム表面の汚れを除去するためであり、簡便には自然酸化被膜を溶解させつつ汚れを除去する効果をもつアルカリ溶液に浸漬する等の公知の方法が用いられる。また必要に応じて、粗面化処理を施しても良い。この粗面化処理は、陽極酸化被膜の表面に凹凸を設けることにより、その上に設ける層との密着性を向上させるためのもので、機械的粗面化法、化学的粗面化法、電気化学的粗面化法又はそれらを組み合わせた公知の方法により行われる。本発明の陽極酸化装置においても、このような前処理を行う前処理槽と、前処理液を洗浄除去する水洗槽を巻出しロール21の上流に設けてもよい。
一方、陽極酸化処理後のAAO膜が製膜された帯状物は、通常、電解液を洗浄除去する水洗層を経過した後に、乾燥処理が施される。
【0049】
続いて本発明の陽極酸化装置の動作について図1および図2を参照して説明する。まず、巻出しロール21からロール状に巻回された帯状物1を送りだして、給電ドラムに密着支持させた後、巻取りロール22に巻回する。同様に、巻出しロール23からロール状に巻回された保護部材6を送りだして、巻取りロール24に巻回する。このとき、給電ドラム2に密着支持された帯状物1の短手方向端部と、給電ドラム2のうち帯状物1が密着しない部分2bとを、保護部材6によって帯状物1の裏面への電解液の侵入を阻止することができるようにオーバーラップさせる。この状態としたところで、電解槽5内の電解液4に給電ドラム2の一部、例えばドラム中心までを浸漬させる。ここで駆動部を駆動し、給電ドラム2の周速に同期させて給電ドラム2に密着させた帯状物1と保護部材6を電解液4中で共走行させ、陽極酸化装置1の電源を入れて、給電ドラム2と対向電極3との間に電流が流れるようにすると、帯状物1の給電ドラム2に密着していない片表面に陽極酸化膜が形成される。
【0050】
図8に示す連続陽極酸化装置は、陽極酸化装置10a、10b、10cを3つ直列に配置した構成となっており、帯状物1は巻出しロール21から送りだされて陽極酸化装置10a、10b、10cの間を送出しロール25a、26a、25b、26b、25cおよび26cを経由して巻取りロール22に巻き取られるように構成され、保護部材6は巻出しロール23から送りだされて陽極酸化装置10a、10b、10cの間を送出しロール27a、28a、27b、28b、27cおよび28cを経由して巻取りロール24に巻き取られるように構成されている。
【0051】
巻出しロール21と送出しロール25aの間には帯状物1を前処理するための前処理層11が設けられ、送出しロール26cと巻取りロール22の間には、陽極酸化された帯状物を水洗する水洗槽12と水洗後に乾燥するための乾燥槽13が設置されている。なお、図8に示す連続陽極酸化装置においては、陽極酸化装置10a、10b、10cの3台直列で保護部材6を一括して用いる態様を示しているが、各陽極酸化装置10a、10b、10cのそれぞれにおいて個別に巻出しロール23と巻取りロール24を設ける態様としてもよい。
【0052】
アルミニウムの陽極酸化は電解液と電解条件にもよるが、電解酸化のクーロン効率は3C/(cm2・μm)程度であり、面電流密度100mA/cm2の通電電流あたりで2μm/min程度の製膜速度となる。このとき、面電流密度をD1(mA/cm2)、電解時間をT(min)、必要なAAO膜の厚さをH(μm)とすると、T=50×H/D1(min)となる。また、製膜速度をSとすると、S=0.02×D1なので、T=H/Sとなる。帯状物の電解液浸漬長をL(m)、帯状物の走行速度をLS(m/min)とすると、LS=L/T=0.02×L×D1/H=L×S/Hであり、走行速度LSはLとD1またはSに比例し、Hに反比例することとなる。
【0053】
図9に、AAO厚さHを10μmとした場合の走行速度とAAO製膜速度の関係を示したグラフを示す。図中の(a)、(b)、(c)は、各々電解槽長Lが5、10、15mの場合である。走行速度LSは、AAO製膜速度Sに比例して大きくすることができる。本発明の場合、電解槽長Lは給電ドラムが電解液に浸漬している距離である。例えば、給電ドラムの直径が3m程度の場合、ドラム中心より少し大きく浸漬させると、電解槽長は5mとすることができる。AAO膜は片面にのみ形成され、もう片面は金属のままなので、引続き同様のドラム給電で陽極酸化することが可能である。従って、この電解槽を直列にN個配置すれば、走行速度をN倍とすることが可能となる。図9(b)と(c)は、夫々、電解槽を直列に2台と3台配置した場合の走行速度を図示したものである。なお、図9の右側の縦軸は、後述する全浸漬方式の電解装置における帯状物の幅1cmあたりの走行方向に流れる電解電流であり、本発明の場合は、前述の通りこの電流は流れず、帯状物の裏面から直接給電される。
【0054】
従来の帯状物を全浸漬する方式の電解装置においては、前述の通り、給電部分から電解槽にかけての帯状物の走行方向に電解電流を流す必要がある。このとき、帯状物の幅1cmあたりの走行方向に流れる電解電流をD2(A/cm)とすると、単位時間に電解槽に浸漬する帯状物面積に必要厚さ分のAAOを成長させるのに必要な電流は、走行速度LS(m/min)とAAO厚さH(μm)、及びクーロン効率3C/(cm2・μm)から、D2=LS×H×[クーロン効率]×100/60=5×LS×Hとなる。従って、D2は、AAO製膜速度や電解槽長によらず走行速度とAAO厚さに比例した電流となる。図9の右の縦軸に示した値は、AAO厚さ10μmの場合なので、左の縦軸LSに対して、D2=50×LSとなる。
【0055】
一方、帯状物の給電部分から電解槽にかけて流す電流には上限があり、アルミニウム箔が100μmでは、水冷シャワー等で充分冷却したとしても、150A/cmを超えるとアルミニウムの抵抗によるIR発熱により、熱暴走を生じ、溶断する危険性が高まる。従って、図9においてどの様な製膜速度や電解槽長で電解するにせよ、幅方向の電解電流は150A/cm以下、即ち走行速度3m/min以下とする必要がある。帯状物のIR発熱と溶断限界電流は、単位断面積あたりの抵抗によって決まるので、薄いアルミニウム箔ほど幅1cmあたりの限界電流は小さくなる。また、鉄鋼、ステンレス及びTi等の高強度ではあるが高抵抗の金属と薄いアルミニウムとを複合したクラッド材では、同様に限界電流は小さくなり、走行速度も小さくする必要がある。
【0056】
なお、従来の帯状物を全浸漬する方式の電解装置においても、直列多段設置によりライン速度を向上させることは原理的には可能である。しかしながら、片面AAO製膜の場合は、各電解装置毎に給電するために、マスキングフィルムの貼り付け工程と剥がし工程が加わるため、現実的でない。また、全浸漬する方式の電解装置において、給電方法を間接給電とする場合は、給電槽を設け、陽極酸化とは逆極性電圧を印加する。従って電解槽を多段設置し間接給電を行うと、前段の装置で製膜されたAAO膜に給電過程で逆電圧が加わることになり、AAO膜の剥離等の異常を生じる。帯状物の両面にAAOを製膜する場合は、マスキングフィルムが不要であるが、AAO被膜は絶縁性であるので両面にAAO被膜を形成してしまうと、そもそも多段給電が不可能であるばかりでなく、前述の計算のとおり走行方向に流れる電解電流は片面製膜の場合の倍の電流が必要であり、走行速度を大きくすることはさらに困難である。従って、この連続陽極酸化装置は、抵抗の高い薄いアルミニウム箔やクラッド材に対して1μm以上の厚いAAO膜を片面に製造する場合に極めて有効な装置構成である。
【符号の説明】
【0057】
1 帯状物
2 給電ドラム
2a 帯状物密着部分
3 対向電極
4 電解液
5 電解槽
6 保護部材
7 ガイドローラー
10 陽極酸化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極酸化可能な金属からなる帯状物または少なくとも片面が陽極酸化可能な金属である複合導電金属箔からなる帯状物を密着支持し、少なくとも該帯状物が密着する部分は導電性材料で構成された給電ドラムと、
該給電ドラムに対向して設けられた対向電極と、
前記帯状物を密着支持した給電ドラムの一部と前記対向電極とを浸漬する電解液で満たされた電解槽と、
前記給電ドラムに密着支持された帯状物の短手方向端部と、前記給電ドラムのうち前記帯状物が密着しない部分とをオーバーラップして前記電解液から保護する非導電性材料からなる保護部材と、
前記給電ドラムの周速に同期させて前記給電ドラムに密着させた前記帯状物と前記保護部材を前記電解液中で共走行させる駆動部と、
を有することを特徴とする陽極酸化装置。
【請求項2】
前記給電ドラムに前記帯状物が内接走行する凹部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の陽極酸化装置。
【請求項3】
前記保護部材を前記給電ドラムに圧接するガイドローラーが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の陽極酸化装置。
【請求項4】
前記対向電極が多数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の陽極酸化装置。
【請求項5】
前記給電ドラムに支持された帯状物が前記電解液に接液する部分および/または離液する部分における前記給電ドラムと前記対向電極との間隔が、前記帯状物の前記電解液浸液中央部分における前記給電ドラムと前記対向電極との間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の陽極酸化装置。
【請求項6】
前記保護部材が非導電ゴムまたは非導電ゴムで覆われた金属箔であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の陽極酸化装置。
【請求項7】
前記給電ドラムの導電性材料が導電プラスチックまたは導電ゴムであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の陽極酸化装置。
【請求項8】
前記対向電極の電位がグランドに対して負極性であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の陽極酸化装置。
【請求項9】
前記帯状物をグランドと同電位とし、かつ電解用電源がグランドに対して絶縁出力であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の陽極酸化装置。
【請求項10】
前記グランドの電位に対する前記給電ドラムの電圧を監視する監視部を備えていることを特徴とする請求項8または9記載の陽極酸化装置。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項記載の陽極酸化装置を直列に多数配置したことを特徴とする連続陽極酸化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−231395(P2011−231395A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162693(P2010−162693)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【特許番号】特許第4723041号(P4723041)
【特許公報発行日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子