陽陰圧換気システムおよび胸腔内圧調整方法
医療技術は、患者に陽圧換気、終末呼気陽圧、および真空を施すためのシステムおよび方法を含む。解決策は、患者を胸腔内圧調整器で治療して患者の自律神経系を調節または亢進することと、胸腔内圧調整治療と大動脈内バルーンポンプ治療とを組合わせて患者を治療することも含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的には体循環圧および頭蓋内圧の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には実施形態は、低血圧や循環不良を引起こす外傷性脳損傷、失血、およびその他の傷病または治療介入(たとえば手術や麻酔)などの結果として、頭蓋内圧を減少させ、体動脈圧および全身の重要臓器潅流を増加させるための装置と方法とに関係する。実施形態は、低血圧であり重要臓器潅流および酸素供給を維持するために自力呼吸できない患者において、十分な血圧と換気を維持するための手段を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5551420号明細書
【特許文献2】米国特許第5692498号明細書
【特許文献3】米国特許第6062219号明細書
【特許文献4】米国特許第5730122号明細書
【特許文献5】米国特許第6155257号明細書
【特許文献6】米国特許第6234916号明細書
【特許文献7】米国特許第6224562号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】『麻酔』(第3版、編集者:ロン・ミラー、著者:シャピロおよびドラモンド、54章(1990年))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臓器潅流が減少すると、細胞死につながる。体循環圧が低いか、または脳の場合には頭蓋内圧が高いと、いずれも重要臓器潅流を減少させる。それゆえ頭部外傷およびショックは、一般に合衆国において子供と若年成人の罹患および死亡の主因と見なされている。頭部外傷は、しばしば脳の腫脹を引起こす。頭蓋骨は、拡張できないため、脳内で増加した圧力は、死亡または重度の脳損傷を招くことがある。脳腫脹を低減するために過換気およびステロイドの使用を含め、多数の治療法が評価されてきたが、頭蓋内圧を治療し、または脳潅流圧を改善するための効果的な方法は、依然として重要な医療課題である。同様に、低血圧や多臓器損傷および多臓器疾患も臓器潅流を減少させ、これが頭部外傷に結び付く場合には脳内の圧力が増加し、それに伴い脳血流が減少する。これらの患者は、死亡率が極めて高く、同様に主要な医療課題であり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、胸腔内圧、気道圧、気管内圧、および肺内の呼吸ガスの量を調整するための技術を包含する。或る解決策は、有利には、胸部が損傷していないときには頭蓋内圧または眼球内圧を減少させて体循環圧を増加させることを含む。本発明の類似の実施形態は、開胸した患者にも使用できる。回路が開いているので、肺容量と圧力が変化しても胸腔内圧は、変化しないでよい。或る場合には、真空を適用する前に終末呼気陽圧(PEEP)を提供できる。或る場合には、真空を適用した後で終末呼気陽圧を提供できる。終末呼気陽圧を追加することで、疾患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給および保護を提供できる。或る場合には、胸腔内圧調整(IPR)を使用することで、自律神経系を調節するとともに、脳圧および体循環圧を変化させることが
できる。また或る場合には、胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ(IABP)を組合わせることで、循環の増進にいずれか単独の場合よりも大きい効果を提供できる。たとえば開心術で胸部を開いて胸腔内圧調整療法を適用する場合、肺は、陽圧相(吸気)では呼吸ガスで満たされ、呼気相では呼吸ガスが肺から能動的に抜出される。この結果、肺内の血液は、急速に左心房に移され、それによって左心に血液が供給される。交互に肺を呼吸ガスで満たし、同時に右心からの血液のためにスペースを提供し、次に呼吸ガスを抜出して肺リザーバ内で血液を前進させることで、肺は、蠕動スポンジのように働いて右心と静脈循環の両方から血液を吸い上げ、それを左心に送込む。「スポンジから絞り出す」ことによって、肺実質の拡張と収縮は、血液循環が低いか減少した状況で血液を前進させるための新規の手段を提供する。この「絞り出し」プロセスの前または後に終末呼気陽圧を追加することで、酸素供給を維持して肺機能を保全および保護するのを助ける手段が提供される。このプロセスの間、吸気相で供給される1回換気量は、変化してよく、この方法または装置による呼吸ガスの除去速度は、供給される1回換気量に伴って直接的または間接的に変化でき、それによって所望の目標気道圧および/または胸腔内圧を達成する手段が提供される。それゆえ胸腔内圧調整療法を提供するこのような方法と装置は、開心術の間または後などに胸部が大気圧に対して開いているときでも、循環を増進して血圧を高めるために使用できる。この方法と装置で呼吸ガスを肺に入れ、および肺から抜出すことが可能である限り、これは両肺にも片方の肺のみにも適用できる。
【0007】
胸腔内圧調整療法によって達成される肺内の圧力の変化は、肺内の呼吸ガス量が変化した直接的な結果である。ガス量は、陽圧換気の度に増加し、能動的に抜出されると減少する。このプロセスにおいて血液は、肺から押出され、血液は、損傷していない一方向弁(この場合には肺動脈と僧帽弁)のために心臓内を前進できるのみである。こうしてガス抜出し相では血液は、巨大なリザーバとして働く肺から圧出され、肺が膨らむと呼吸ガスが肺胞を満たして、間接的に動脈床と静脈床の構造を回復するので、肺が膨らむとすぐに右心からの血液は、肺血液リザーバに突入する。胸腔内圧調整療法による呼吸ガスの能動的な注入と除去によって、血液を左心に圧入するための新規の手段が提供される。ここで留意すべき重要なことは、胸部が大気圧に対して開いているときには、胸部の非肺構造内の圧力は、気道圧または肺圧の変化に伴って変わらないので、肺容量の変化は、典型的には頭蓋内圧を変えないということである。
【0008】
一実施形態において、本発明は、胸部が損傷していない場合には、頭蓋内圧または眼球内圧力を減少させて、全身血圧と臓器潅流を増加させるための装置を提供する。この装置は、患者の気道に接続するように適合された吸入口と排出口を有するハウジングを含む。装置はさらに、自発呼吸または人工呼吸の間、ハウジングを通って患者の肺に入る呼吸ガス流を調節するように作動できる弁システムを含む。人工呼吸を必要とする患者に対して、弁システムは、真空源に装着できる。弁システムは、自発呼吸中に気道圧を下げるのを補助し、能動的に呼吸できない非呼吸患者では逆に頭蓋内圧または眼球内圧を下げて全身潅流圧を高めるのを補助する。弁システムは、胸部の圧力を下げることによって頭部の圧力を連続的または間欠的に下げるためにも使用できる。その上、本発明は、陽圧換気が提供されていないときには、左心と右心内の圧力を下げる。心臓を含む胸部の圧力が減少すると、より多くの血液を心臓に還流させ、それによって心臓機能と心拍出量の効率が増すのを助ける。それゆえ本発明は、頭蓋内圧および眼球内圧の上昇、ショック、低血圧、循環虚脱、心停止、心不全、術中低血圧を含むがこれらに限られない多数の疾患状態を患っている患者、ならびに透析中の患者の治療に使用できる。本発明は、また肝臓や腸の手術などの外科処置の間、腹部内の静脈圧を下げ、同時にこれらの臓器およびその他の重要臓器、たとえば腎臓、脳、および心臓によって多量の血流を提供できる。静脈圧を下げることで、外科処置の間の失血を減らすのを助けることができる。この新規の方法と装置は、上述した機構によって、敗血症、多発外傷性臓器障害、および急性呼吸促迫症候群(ARDS)に伴う低血圧や循環不良も治療できる。この意図は、また「コンパートメント症候
群」において静脈圧を下げるために使用してもよく、それゆえより多くの血液を循環させて組織の生存能力と機能を保つのを助けることができる。本発明は、胸腔内圧を下げる結果、頭蓋内圧が低下して心臓への血流が増進されるという発見に基づく。開胸した患者においてこの装置は、気道と肺内の圧力を下げ、それによって肺から呼吸ガスを取除く。この結果、濡れたスポンジにその都度真空を加えるように肺の「絞り出し」が行われ、そして肺動脈弁が経肺動脈の逆流を妨げるので肺内の血液は、左心に送込まれる。次の吸気で、呼吸ガスが肺に充満して血液が肺に突入する。次に低いレベルの真空を加えると血液は、押出される。このように、気道圧が変化すると肺ポンプが提供されて択一的に血液を肺から押出し、陽圧呼吸が行われる度に肺内に空の血管リザーバが提供されて右心内の血液から急速に再び満たされる。
【0009】
このような装置は、胸部が損傷していない場合には脳脊髄液の運動を促進するために用いることもできる。こうすると頭蓋内圧をさらに減らすことができる。それゆえこのような装置は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者、および全身低血圧を引起こす状態に苦しんでいる患者の治療にも使用できる。
【0010】
一面において弁システムは、自発呼吸中に胸腔内陰圧が約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲の圧力に達して胸腔内圧を下げ、ひいては頭蓋内圧または眼球内圧を下げると、開いて呼吸ガスが自由に患者の肺に流れるのを許すように構成されている。このようにして、胸腔内陰圧は、閾圧に達し、その時点で弁が開くまで下げられる。このサイクルは、連続的または周期的に繰返して、胸腔内圧を反復的に下げることができる。別の面において弁システムは、約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲で胸腔内真空を生成して胸腔内圧を下げ、ひいては頭蓋内圧または眼球内圧を下げ、そして心臓への血流を増進するように構成されている。装置は、低血液循環または心停止を呈する患者の血液循環を改善するために、反復的に胸部を圧縮する手段を含むか、これと一緒に使用されてもよい。圧縮は、自動胸部圧縮、外周ベスト(circumferential vest)、手動胸部圧縮などで達成できる。これによって血液循環が低い患者で心臓と脳への血流が改善されよう。装置が胸部を圧縮すると、血液は、強制的に心臓から押出されて重要臓器の潅流を増加させる。圧縮手段が解除されると、血流は、心臓に戻る。或る場合には減圧装置は、胸部を能動的に持ち上げまたは減圧して心臓に戻る血流を増進できよう。
【0011】
装置は、患者に弁システムを通して人工的に呼吸させる手段を含んでよい。たとえば装置は、電極、鉄製胸甲装置、胸部持上げ装置、換気装置などを利用できる。胸部の圧力を下げることによって、呼吸ガスは、肺に流入して酸素を提供する。胸部を圧縮するのに続けて胸部を減圧することによって、胸部は、ブロワとなり、血液が循環して呼吸ガスが交換される。この動作は、心臓の自然収縮、たとえばECG(心電図)に同期させることができる。一実施形態において、胸部を圧縮した後に胸部を反動で安静位置に戻らせて血液と呼吸ガスを循環させる。胸壁が反動する度に装置を用いて胸腔内圧を下げて胸腔内真空を作り、心臓に戻る血流を増進する。他の実施形態において、胸部を圧縮した後で能動的に減圧して血液と呼吸ガスを循環させ、そして胸部が減圧される度に装置を用いて胸腔内圧を下げて胸腔内真空を作り、心臓に戻る血流を増進し、頭蓋内圧も下げる。胸腔内圧を下げるために使用できる装置は、任意のタイプの真空または真空源を含み、これには換気装置に組込まれたものも含まれる。減圧の少なくとも一部の間、呼吸ガスは、肺に自由に流れて適当な換気を提供できる。
【0012】
他の実施形態において、装置は、気道内に真空を加えることによって胸腔内圧を減じる手段を含んでよい。真空は、周波数、振幅、および持続に関して調節できる。この結果、胸部が損傷していない場合には適用される真空の程度に比例して頭蓋内圧が減少する。したがって、単に気道圧を操作して胸腔内圧を減じることで頭蓋内圧を減らすことができる。その上、胸部内に作られた真空が心臓に戻る血流を増進し、それによって同時に心拍出
量と全身の重要臓器潅流を増加させる。このような真空は、気道または肋骨の間の胸腔チューブを通して外部真空源から生成されてよく、または陰圧を加えることができる換気装置を用いて生成されてよい。
【0013】
装置はさらに、弁システムのインピーダンスすなわち抵抗のレベルを変化させるための機構を含んでよい。装置は、胸部が圧縮されているときに呼気陽圧を加えることを含むことができる。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用されてよい。このようにして、胸腔内圧のレベルを変化させるための機構は、センサから信号を受取り、それらの信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。使用できるセンサの例は、呼吸速度、胸腔内圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、頭蓋内潅流、および頭蓋内圧を測定するセンサを含む。胸部が損傷していないとき、装置は、弁システムの抵抗のレベルを変化させるための機構を含むことができる。装置は、呼気陽圧を適用することを含んでよい。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用されてよい。このようにして、肺内の圧力および/または呼吸ガスの量を変化させるための機構は、センサから信号を受取り、信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。これがまた呼吸ガス量の値および/またはガスが能動的に肺に注入され、かつ肺から抜出される圧力と速度の値を調整する。使用できるセンサの例は、気道圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、および左心圧を測定するセンサを含む。
【0014】
一面において、弁システムを患者の気道に連結するために連結機構が使用されてよい。連結機構の例は、マウスピース、気管チューブ、声門上気道、およびフェイスマスクを含む。
【0015】
患者の胸腔内圧、または肺に注入され、次いで肺から抜出される呼吸ガスの量を反復的に減少させるために、多種多様な弁システムが使用されてよい。たとえば使用できる弁システムは、バネ付勢装置を有する弁システム、弁室を開閉する自動化システム、電気的システムまたは機械的システムを有する弁システム、ダックビル弁、ボール弁、自発呼吸および/または胸腔内圧を操作する外部システム(たとえば換気装置、横隔神経刺激装置、鉄製胸甲など)によって引起こされる低差圧を感知すると開閉できるその他の感圧弁システムを含む。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、胸部が損傷していない場合に、頭蓋内圧または眼球内圧を減少させる方法を提供する。これらのシステムと方法は、開胸した患者に使用するのに適している。回路が開いているので、肺容量と圧力が変化しても胸腔内圧は、変化しないでよい。開胸しているとき、この解決策は、一般に頭蓋内圧を下げない。この方法に従い、弁システムは、患者の気道に連結され、呼吸ガスが患者の肺に流れるのを少なくとも周期的に減らすか、または妨げるように構成されている。弁システムが気道に連結されると、患者の胸腔内陰圧は、反復的に減少し、これがまた頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力を反復的に下げる。このようにすれば頭蓋内圧と眼球内圧が減少する。このような方法は、また脳脊髄液の運動を促進する。こうして頭蓋内圧は、さらに減少する。したがってこの方法は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者、頭蓋内圧を増加させる心臓状態、たとえば心房細動や心不全を患っている患者、および一部または全部が心拍出量または心臓機能の低下によって引起こされる低血圧を患っている患者の治療にも使用できる。
【0017】
患者の胸腔内陰圧は、患者が反復的に弁システムを通して吸入すると反復的に減少させることができる。これは患者自身の努力(自発呼吸と呼ぶ)か、または患者に人工的に弁
システムを通して反復的に吸入させることによってなされる。たとえば胸部が損傷していない場合には、横隔神経を反復的に刺激することで、胸部を鉄製胸甲装置で操作することで、換気装置を用いて胸部内に陰圧を生成することで、胸部内に弁システムによって調整できる真空を加えることで、1分間約200〜約2000回の速度で振動を供給する高周波数換気装置を適用することなどによって患者の胸腔内圧を下げることができる。胸腔内圧を下げることは、呼吸ガスを肺に引込むため、より多くの血液を心臓に戻すため、または両方のために使用できる。胸腔内圧を下げることは、頭蓋内圧と眼球内圧を下げるためにも使用できる。
【0018】
別の面において、弁システムのインピーダンスレベルは、一定であっても、可変であってもよい。可変で或る場合には、患者の少なくとも1つの生理的パラメータが測定されてよく、測定されたパラメータに基づきインピーダンスレベルを変えることができる。
【0019】
弁システムを気道に連結するために、たとえばマウスピース、気管チューブ、フェイスマスクなどを用いることで多様な技術を使用できる。さらに弁システムによって、約0cmH2O〜約−25cmH2Oの範囲の胸腔内陰圧に達した時点で弁システムが呼吸ガスを肺に通すまで、呼吸ガスが肺に入るのを妨げることができる。
【0020】
他の実施形態において本発明は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者を治療するための方法を提供する。この方法に従い、胸部を損傷していない患者に陽圧呼吸が送込まれる。換気装置と患者の気道との間に配置された装置に装着された真空源によって患者の気道から呼吸ガスを抜出して胸腔内真空を作る。これはまた頭蓋内圧を減らし、頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力を下げることもできる。幾つかの任意選択肢において呼吸ガスを提供するために肺に陽圧呼吸が送込まれる。陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すステップを繰返して治療を継続する。さらに陽圧呼吸は、ガスを抜出す前毎に送込まれる必要はなく、適当な換気を行う必要を有するときだけ送込まれる。或る場合にはガスを抜出す前または後で終末呼気陽圧を加えることができる。この解決策によって、方法と装置は、気道圧と、胸部が損傷していない場合に胸腔内圧を3段階で調節する手段を提供する。すなわち肺を膨ませ、肺からガスを取除き、肺を終末呼気陽圧によって部分的に膨らませることで、無気肺を低減して肺の完全性を保つのを助ける。或る場合には、胸腔内圧を下げることによって頭蓋内圧を下げる効果を高めるために、利尿薬、または意図的失血または体液量減少を含むがこれらに限らない他の手段を用いて血液量を減らすことができる。
【0021】
幾つかの任意選択肢において、患者は、外部胸部陽圧源を用いて外部から胸腔内圧を操作されて、陽圧呼吸が送込まれ気道からガスが抜出される。外部胸部陽圧源の例は、機械的胸腔外ベスト、胸甲、圧縮ピストン、圧縮カップなどを含む。これらの装置は、空気圧源、電源、燃焼源など多様な源からエネルギーを供給できる。さらに外部圧縮は、心臓の活動、たとえば心電図活動に同期させることができる。さらに外部圧縮および/または陽圧呼吸と真空の適用は、血圧を維持するための侵襲的手段、たとえば患者から血液を除去することと組合わせて用いてよい。また或る場合には、患者の胸部を少なくとも周期的に減圧することが必要となる。そのような場合には、患者の気道に弁を配置して、患者の肺に空気が突入するのを少なくとも一定時間妨げて、作られる胸腔内陰圧の大きさを増すことができる。
【0022】
一面において、陽圧呼吸を送込んでガスを抜出すことは、機械的換気装置を用いて行われる。呼吸ガスは、一定抜出しまたはパルス状抜出しによって抜出されてよい。
別の面において、呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒の範囲の時間で供給されてよい。また呼吸は、1秒間約0.1リットル〜約5リットルの範囲の速度で供給されてよい。さらに別の面において、真空は、約0mmHg〜約−50mmHgのレベルの圧力に維持され
てよい。真空は、負の流れによって、または流れなしで維持されてよい。呼吸ガスが抜出される時間に対して陽圧呼吸が送込まれる時間の比は、約0.5〜約0.1の範囲であってよい。呼吸ガスは、250ミリ秒〜約10秒の範囲の持続時間にわたって肺から抜出すことができる。目標気道陰圧を達成する時間は、供給される1回換気量の値または所望の臨床効果に応じて異なってよい。これはオペレータによって手動で調節するか、IPR(胸腔内圧調整)装置または方法によって自動的に調節できる。このプロセスは、フィードバックループを含んでよく、たとえば1回換気量が増加したときには、能動的なガス抜取プロセスを加速して、目標気道陰圧がより低い1回換気量と同じ速度で達成されるようにする。
【0023】
呼吸ガスを抜出すために、機械的換気装置、横隔神経刺激装置、換気バッグ、気道装置に装着された真空装置、鉄製胸甲装置、胸腔チューブなどを含む多様な装備が使用されてよい。或る場合には、患者の気道に閾値弁が連結されてもよい。閾値弁は、成人の胸腔内陰圧が約−3cmH2Oを越えると開くように構成されてよい。小児症例では、弁は、圧力が約−2cmH2O〜約−5cmH2Oを越えると開いてよい。このようにして、患者が吸入するときに胸腔内陰圧を下げることができる。患者が機械的換気装置で換気されるときには、胸腔内圧調整法を実施することで周期的に気道圧を下げて循環を増進し、また胸部が損傷していないときには頭蓋内圧を下げることができる。或る場合には胸腔内圧調整法と装置は、陽圧換気を提供するための手段(たとえば蘇生バッグ、機械的換気装置または麻酔器)に組込まれる。或る実施形態において、機械的換気装置を用いて患者を種々の吸呼気比(I:E比)で治療するときに胸腔内圧調整療法を適用できる。たとえば患者をより高い吸呼気比(2:1〜5:1)で治療し、毎回吸気の後で陽圧を回復する前に、胸腔内圧調整で気道圧および/または胸腔内圧を100ミリ秒〜2秒の時間の間、−1〜−20mmHgに下げることができる。この手段によって、患者の肺から呼吸ガスを急速に抜出して循環を増加させることができる。
【0024】
呼吸ガスを送込み、および抜出すために多様なスキームを用いることができる。たとえば呼吸ガスを抜出して約−5mmHg〜約−10mmHgの圧力を達成し、そして一般に次の陽圧呼吸まで一定に保つ。別の例として、陽圧呼吸をゆっくり送込んで胸腔内圧を急速に約−10mmHg〜約−20mmHgの圧力に下げ、次いで徐々に約0mmHgまで上げることができる。さらに別の例として、胸腔内圧を約−20mmHgの圧力にゆっくり下げることができる。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、胸腔内圧を下げるための装置を提供する。この装置は、ハウジングを患者の気道に連結するように整えられたインタフェースを有するハウジングを含む。呼吸ガスを患者の肺および気道から反復的に抜出して胸腔内陰圧を作り、周期的に維持するために、真空源がハウジングに流体連通している。患者の肺および気道からの呼吸ガスの抜取を調整するために、真空調整器が用いられる。また必要があれば、陽圧呼吸を間欠的に患者に供給するために、陽圧源がハウジングに流体連通している。このような装置は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷、低血圧、低血液循環、低血液量、心停止、および心不全など多様な病気を治療するために使用できる。
【0026】
或る場合には、呼吸ガスの抜取を停止し、または陽圧呼吸を送込むためにスイッチ機構が用いられてよい。機械的装置、磁気装置、および電子装置など、多様なスイッチ機構を使用できる。また呼吸ガスを抜出すために、機械的換気装置、真空調整器を有する真空装置、横隔神経刺激装置、胸腔外ベスト、換気バッグ、および鉄製胸甲装置、吸込管、酸素タンクに装着されたベンチュリ装置など多様な真空源を使用できる。
【0027】
真空を調整するために、患者の気道に流体連通するように閾値弁を配置する。閾値弁は、患者の胸腔内陰圧が約−3cmH2O〜約−20cmH2Oに達すると開いて、呼吸ガ
スを患者の気道に通すように構成されてよい。また陽圧呼吸を送込むために多様な圧力源、たとえば機械的換気装置、手持ち式蘇生バッグ、口移し、または間欠的陽圧換気を提供するための手段を使用できる。装置には、患者に適用される真空圧およびその他の生理的測定値、たとえば気管内圧または頭蓋内圧を測定するためのセンサに連結された多様なゲージを組込むことができる。
【0028】
本発明は具体的な面において、胸部を圧縮および減圧して、いわば胸部をブロワに変える方法および装置を提供する。本明細書に記されるように、胸部を圧縮および減圧するために非常に多様な装置またはシステムを使用できる。さらに能動的に胸部を圧縮または減圧しないときに胸部内の胸腔内圧を下げて心臓に戻る血流を増進し、かつ頭蓋内圧を下げるためにインピーダンス弁および/または胸腔内真空調整器を使用できる。随意に装置は、周期的な陽圧換気を提供する能力を有してよい。特定の選択肢において、たとえば心電図を使用することで、圧縮を心拍に同期化できる。減圧を毎圧縮後よりも少ない頻度で行うこともできよう。たとえば胸部を1分間に約6〜約30回減圧して、適当な陰圧換気を提供し、すなわち胸部内に真空を作り、たとえば鉄製胸甲、横隔神経刺激、胸部に付着された吸引カップを使用するなどして妨げられない気道を通して空気を自然吸入できるようにする。このような装置は、こうして陰圧換気および/または陽圧換気によって血圧および換気を人工的に維持する方法を提供する。装置は、また呼吸できるか呼吸できないかを問わず低血圧患者の重要臓器循環を増進して頭蓋内圧を下げる。
【0029】
一面において、本発明の実施形態は、患者を治療する医療法を包含する。例示的な方法は、患者の気道に陽圧換気を施すこと、陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すこと、および終末呼気陽圧を施した後で患者の気道に真空を施すことを含んでよい。関連する例示的な方法は、患者の気道に陽圧換気を施すこと、陽圧換気を施した後で患者の気道に真空を施すこと、および真空を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含んでよい。
【0030】
別の面において、本発明の実施形態は、胸腔内圧調整システムを作動させる方法を包含する。これらの方法は、換気制御弁を解除して陽圧換気を提供すること、換気制御弁および真空供給弁を作動させること、終末呼気陽圧供給弁を解除すること、および内部ガス混合器から患者に終末呼気陽圧を調整された圧力で供給すること、終末呼気陽圧弁を付勢し真空供給弁を消勢して患者の気道に調整された真空を生成すること、および随意に上記の方法ステップのいずれかを反復することを含んでよい。
【0031】
実施形態はさらに、患者に胸腔内圧調整治療を提供するためのシステムを包含する。或る場合にはシステムは、混合ガス圧源、終末呼気陽圧供給機構、真空源、真空調節機構、真空供給機構、換気制御弁、プロセス制御装置、換気機構、および患者接続を含んでよい。
【0032】
ある面において本発明の実施形態は、患者を治療するための方法を包含し、これには胸腔内圧調整器で患者の自律神経系を調整することによって治療することを含む。
さらに別の面において実施形態は、たとえば圧力計、換気ポート、吸入キャップ、本体、患者ポート、真空ステム、ピストンと弁座を有する弁、およびダイヤフラムを有する胸腔内圧調整システムを含む。
【0033】
一面において、本発明の実施形態は、患者から呼吸ガスを取除く方法を含む。例示的な方法は、患者の気道に真空を加えること、および送込まれる1回換気量の値に基づく速度で患者から呼吸ガスを取除くことを含んでよい。
【0034】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、患者を治療するための医療法を包含し、
これには胸腔内圧調整治療と大動脈内バルーンポンプ治療とを組合わせて患者を治療することを含む。
【0035】
別の面において、実施形態は、患者を治療する間、麻酔ガスをリサイクルするシステムを包含する。そのようなシステムは、たとえば気管(ET)チューブまたはマスク、胸腔内圧調整器(ITPR)、患者Y形管、胸腔内圧調整器真空ライン、陰圧生成器、循環装置、陰圧生成装置、真空環流装置、および麻酔器を含んでよい。
【0036】
ある面に従い、実施形態は、医療処置の間、麻酔ガスをリサイクルするシステムと方法を包含する。そのような技術は、麻酔器内で二次ガスをリサイクルして流れを増加させ、または呼気ガスを別個のチャンバまたは洗浄システムに捕捉することを含むことができる。
【0037】
本発明の実施形態は、患者に胸腔内圧調整治療を提供するためのシステムも含む。そのようなシステムは、第1制御弁、第2制御弁、陽圧吸気ブロワ機構、陰圧呼気ブロワ機構、換気機構、および麻酔機構を含むことができる。
【0038】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、自動化された換気装置システムまたは麻酔器で患者を治療するための方法を含む。方法は、たとえば患者に胸腔内圧調整治療を施して患者の循環を増すことを含んでよい。方法は、また患者の胸部が損傷していないときには、患者の頭蓋内圧を下げることを含む。方法は、随意に胸腔内圧調整治療の後で患者の気道に終末呼気陽圧治療を施すことを含んでよい。
【0039】
別の面において、例示的な実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者を治療する方法を含む。実施形態は、また低血液循環または低血圧治療の間、患者の所要流体量を減らす方法、または患者の微小循環を増大させる方法、または患者の薬剤循環を増進する方法を含んでよい。そのような方法のいずれかは随意に患者に胸腔内圧調整治療を施すことを含んでよい。
【0040】
一面において、本発明の実施形態は、治療を必要としている患者に治療を提供するための方法を包含し、患者に胸腔内圧調整プロトコルを施すこと、および患者に心肺蘇生(CPR)プロトコルを施すことを含む。本発明の実施形態は、また患者に静脈量補充療法を施すか決定する方法を含んでよい。そのような方法は、患者に胸腔内圧調整プロトコルを施すこと、患者の血圧を評価すること、および患者の評価された血圧が急速に上昇した場合には、患者に静脈量補充療法を施すことを含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、患者に晶質液を投与することを含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、患者に膠質液を投与することを含んでよい。
【0041】
別の面において、本発明の実施形態に従う医療は、患者に間欠的に吐息を送入することを含んでよい。吐息は、機械的換気処置を行っている間、患者に施すことができる。たとえば技術者またはオペレータが換気装置または機械上のバッグを絞って所定量の膨張を患者の肺胞に送込み、患者の肺システムに保護効果を提供する。
【0042】
本発明の実施形態は、患者に胸腔内圧調整治療を提供するシステムと方法を包含する。例示的なシステムは、システムが循環補助モードにあるときには患者に調節可能な陰圧治療を提供する調節可能な陰圧機構と、システムが換気モードにあるときには患者に陽圧治療を提供する陽圧換気機構と、調節可能な陰圧機構と、システムが持続的気道陽圧(CPAP)モードにあるときには患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な
持続的気道陽圧機構とを含む。随意に換気機構は、麻酔器を含んでよい。或る場合にシステムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施した後で、患者に低大気圧治療を施す低大気圧機構を含む。関連してシステムは、循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードからなるグループから選択された一要素を指定するオペレータ選択入力と、オペレータ選択入力に伴って指定された要素を作動させるオペレータ確認入力とを受取る制御機構またはプロセッサを含んでよい。或る場合には治療システムは、患者に補足酸素治療を施す補足酸素機構を含む。システムはさらに、バッテリに結合するように構成された電源入力を含んでよい。或る場合には、治療システムは、バッテリに動作結合している電源入力を含む。随意に治療システムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施す前に、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。或る場合には治療システムは、センサ機構、たとえば生理的センサまたは機械的センサを含む。治療システムの動作は、少なくとも一部は、センサ機構から受取った情報に基づき制御されてよい。
【0043】
ある例示的なシステムにおいて、陽圧換気機構は、心肺蘇生(CPR)処置の間、患者に施す陽圧換気治療を患者の胸部の圧縮および減圧に同期化する。システムはさらに、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施した後で患者に低大気圧治療を施す低大気圧機構、ならびに循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力と、オペレータ選択入力に伴って指定された要素を作動させるオペレータ確認入力とを受取る制御機構またはプロセッサを含んでよい。関連してシステムは、患者に補足酸素治療を施す補足酸素機構を含んでよい。或る場合に治療システムは、バッテリに結合するように構成された電源入力と、バッテリに動作結合している電源入力とを含む。さらに治療システムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施す前に、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。陽圧換気機構は、心肺蘇生(CPR)処置の間、患者に施す陽圧換気治療を患者の胸部の圧縮および減圧に同期化できる。
【0044】
ある面において治療システムは、圧力ゲージを有するセンサアセンブリと、フィードバックアセンブリとを含む。センサアセンブリは、心肺蘇生治療中の胸部圧縮と減圧の数と質を感知でき、フィードバックアセンブリは、患者に手動圧縮を行っている人員にリアルタイムフィードバックを提供できる。リアルタイムフィードバックは、心肺蘇生治療の質に関する情報を含むことができ、この情報は、深さ(たとえば胸部圧縮の深さ)に関するデータ、完全な胸壁反動データ、および中断時間データを含むことができる。或る場合には、センサは、患者の気道内の圧力、または胸部圧縮の深さもしくは強さを検出でき、そのような情報は、フィードバックアセンブリに回されて、患者に心肺蘇生または治療を行っている人員にフィードバックを提供することができる。随意に治療システムは、センサ電極、コンデンサ、および患者に除細動治療を施す高エネルギー除細動機構を有する除細動器を含んでよい。除細動器は、単相性ショック、二相性ショック、多相性ショック、またはこれらの任意の組合せを含む治療を提供できる。或る場合に治療システムは、調節可能な陰圧機構、陽圧換気機構、持続的気道陽圧機構、またはこれらの任意の組合せを、患者から出る測定された生理的信号に基づき調節する調節機構を含むことができる。患者の測定された生理的信号は、たとえば血圧信号、終末呼気二酸化炭素信号、または脳酸素信号を含むことができる。或る場合に治療装置は、外部医療装置に通信する通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、たとえばブルートゥースアセンブリまたはラジオ周波数アセンブリを含むことができる。或る場合に通信モジュールは、除細動器または自動胸部圧縮器などの外部医療装置に通信する。
【0045】
本発明の実施形態に従う治療システムは、また調節可能な陰圧機構、陽圧換気機構、または持続的気道陽圧機構によって提供される胸腔内圧の変化を、医療装置による治療、たとえば除細動ショック処置または胸部圧縮および解除処置に合わせるタイミング機構を含
む。例示的な治療システムは、ユーザインタフェースも含んでよい。或る場合にユーザインタフェースは、円形コントロールパネルを含む。或る場合にはユーザインタフェースは、対称的コントロールパネルを含む。随意にユーザインタフェースは、円周に配置された3個のリムセグメントを有する円形コントロールパネルを含んでよい。治療システムは、患者に二相性気道陽圧治療を施す二相性気道陽圧機構も含んでよい。
【0046】
別の面において、本発明の実施形態は、胸腔内圧調整治療中に患者の心拍出量、1回拍出量および脈圧を増すためのシステムを含む。治療システムは、患者に陽圧換気治療を施す陽圧換気機構を含んでよく、陽圧換気治療は、一連の反復された陽圧換気を含むことができる。治療システムはさらに、連続する陽圧換気の間に患者から能動的に呼吸ガスを抜出す呼吸抜取機構を含む。随意にシステムの重量は、12ポンド(5.4kg)未満であることができる。或るシステム実施形態において、陽圧換気機構または呼吸抜取機構は、測定された患者パラメータに基づき自動的にフィードバックループで気道陰圧のレベルを調整するように動作できる。或る場合には、測定された患者パラメータは、増加した循環の指標を提供する。或る場合には測定された患者パラメータは、終末呼気二酸化炭素、心拍出量、経胸腔インピーダンス、筋酸素供給または筋pHを含むことができる。
【0047】
例示的なシステムは、プロセッサおよびプロセッサに連結されたメモリを含んでよい。メモリは、陽圧換気機構を作動させるための指示を包含する陽圧換気コードモジュールと、呼吸抜取機構を作動させるための指示を包含する呼吸抜取コードモジュールを含んでよい。或る場合に治療システムは、2本の分岐、吸気ガスと呼気ガスとの分離を維持するマニホールド、および衝撃と湿気を防ぐ取外可能な保護ケースを有する回路を含む。治療システムは、呼吸制御を促進するセンサアセンブリも含んでよい。さらには、治療システムは、呼気抵抗の制御を促進するブロワ機構を含んでよい。随意にシステムは、ブロワ機構がフィードバック制御ループに基づき動作するように構成できる。
【0048】
別の面において本発明の実施形態は、胸腔内圧調整システムのユーザインタフェースを包含する。例示的なユーザインタフェースは、一連の患者体格選択入力を有する循環補助モードサブインタフェース、一連の患者体格選択入力を有する換気モードサブインタフェース、および一連の圧力選択入力を有する持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェースからなる基本モードディスプレイを含んでよい。インタフェースはまた気道陽圧セクションと気道陰圧セクションを備えた気道圧ディスプレイを有してもよい。インタフェースは、さらにモード確認サブインタフェースと、呼吸速度選択入力、1回換気量選択入力、終末呼気陽圧選択入力、および循環補助選択入力を備えた手動制御インタフェースを有する高度モードディスプレイとを含むことができる。或る場合にはユーザインタフェースは、高度モードディスプレイの使用をロックアウトするロックアウト機構を含んでよい。随意に循環補助モードサブインタフェースと、換気モードサブインタフェースと、持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェースとを、円の3個のリムセグメントとして円周に配置できる。
【0049】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムを包含する。例示的なシステムは、患者に流体連通する患者ポート、患者ポートを介して患者に施される陽圧換気処置を促進するための換気機構に流体連通する換気ポート、患者ポートを介して患者に施される真空処置を促進するための真空機構に流体連通する真空ポート、および流体の流れを制御するための弁を含む。弁は、陽圧換気処置を施す間には、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを許して、真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように動作できる。弁は、真空処置を施している間には、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止して、真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを許すように動作できる。随意に換気機構は、麻酔器を含んでよい。或る場合に、システムは、弁に動作結合している終末呼気陽圧機構を含む。随意に弁は、真空
処置を施す前または後で行われる終末呼気陽圧治療を施す間には、終末呼気陽圧機構と患者ポートとの間の流体の流れを許すように動作できる。関連する実施形態において、システムは、患者ポートに流体連通している圧力センサを含む。圧力センサは、陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用を示し、真空処置を施す間には陰圧の適用を示すことができる。或る場合には、陽圧換気処置が開始すると、弁は、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、かつ真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように動作する。
【0050】
関連する面において、本発明の実施形態は、患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムを提供する。システムは、循環補助モード、換気モードまたは持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサを含むことができる。システムは、またプロセッサに動作結合しているマニホールドアセンブリも含むことができる。マニホールドアセンブリは、酸素吸入ポートに流体連通していることができる。吸気面酸素吸入ポートは、酸素源から酸素を受取ることができる。マニホールドアセンブリは、また吸気面に流体連通している空気吸入ポートも含むことができる。空気吸入ポートは、空気源から空気を受取ることができる。マニホールドアセンブリは、また呼気面に流体連通している呼気ガス排出ポートも含むことができる。呼気ガス排出ポートは、呼気ガスを陰圧機構に向けて通過させることができる。マニホールドアセンブリはさらに、空気と酸素を患者に向けて送出す吸気腔および呼気ガスを患者から引取る呼気腔を有する患者回路インタフェースを含むことができる。治療システムは、また吸気面と吸気腔との間の流体の流れを制御する制御弁アセンブリ、呼気面と呼気ガス排出ポートとの間の流体の流れを制御する呼気制御弁アセンブリ、およびシステムが循環補助モードにあるときに呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構も含むことができる。或る場合にシステムは、システムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構、またはシステムが持続的気道陽圧モードにあるときには、呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構、または両方とも含む。随意に換気機構は、麻酔器を含むことができる。随意にシステムは、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。或る治療システムは、ユーザディスプレイ、およびセンサ機構、たとえば生理的センサまたは機械的センサを含む。プロセッサは、センサ機構から受取った患者情報に基づき、心肺蘇生の質または循環に関連する情報を表示するために、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送るように動作できる。或る場合に、プロセッサは、センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送るように動作できる。ディスプレイ指示は、心肺蘇生治療を施している間、心肺蘇生の質に関係することができる。或る場合にプロセッサは、センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送ることができる。ディスプレイ指示は、非心肺蘇生治療を施している間、循環に関係することができる。
【0051】
別の面において本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法を包含する。これらの方法は、換気機構によって生成される陽圧換気を胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すこと、および真空機構によって生成される真空を胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すことを含んでよい。陽圧換気を施す間には、胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と患者ポートとの間の流体の流れを許して、真空機構と患者ポートとの間の流体の流れを阻止することができ、真空を施す間には、胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と患者ポートとの間の流体の流れを阻止して、真空機構と患者ポートとの間の流体の流れを許すことができる。これらの治療方法は、また陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含んでよい。終末呼気陽圧を施し
た後で、患者の気道に真空を施すことができる。幾つかの方法は、真空を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含む。陽圧換気を施した後で、患者の気道に真空を施すことができる。随意に方法は、陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用の指示を表示し、真空処置を施している間には陰圧の適用の指示を表示することを含んでよい。
【0052】
さらに別の面において本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法を包含する。例示的な方法は、システムが循環補助モードにあるときに胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して患者に一定または調節可能な陰圧治療を施すこと、およびシステムが換気モードにあるときに胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すか、またはシステムが持続的気道陽圧モードにあるときに胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を施すことを含む。或る場合にこの方法は、胸腔内圧調整システムの終末呼気陽圧機構で患者に終末呼気陽圧治療を施すことを含む。或る場合にこの方法は、システムが換気モードにあるときに胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すことと、陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことの両方を含む。終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に陰圧治療を施すことができる。
【0053】
或る場合に方法は、システムが換気モードにあるときに、胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施し、陰圧治療を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含む。陽圧換気を施した後で、患者の気道に陰圧治療を施すことができる。或る場合に方法は、心肺蘇生治療を施している間、胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに心肺蘇生の質に関する情報を表示することを含む。或る場合に方法は、非心肺蘇生治療を施している間、循環に関する情報を胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを含む。
【0054】
本発明の本質および利点をより良く理解するために、以下に添付の図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるための一方法を示すフローチャート。
【図2】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できるフェイスマスクと弁システムの一実施形態の斜視図。
【図3】図2の弁システムの斜視図。
【図4】図3の弁システムの断面図。
【図5】図3の弁システムの分解図。
【図6】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるためのシステムの図式的な概念図。
【図7】動物実験による頭蓋内圧低下を示す一連のグラフ。
【図8】別の動物実験による頭蓋内圧の減少を示す一連のグラフ。
【図9A】正常な人の脳の図式的な概念図。
【図9B】腫脹が増大した後の図9Aの脳を示す図。
【図10】胸腔内圧の減少が頭蓋内圧と右心房圧に及ぼす影響を示す3点のグラフ。
【図11】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるための別の方法を示すフローチャート。
【図12A】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図12B】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼気ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図12C】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図13A】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる一装置を図式的に示す図。
【図13B】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる一装置を図式的に示す図。
【図14A】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる別の装置を図式的に示す図。
【図14B】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる別の装置を図式的に示す図。
【図15A】図14Aおよび図14Bの装置で使用できる閾値弁システムの一実施形態を示す図。
【図15B】図14Aおよび図14Bの装置で使用できる閾値弁システムの一実施形態を示す図。
【図16A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図16B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図17】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを図式的に示す図。
【図18A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図18B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図18C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図19A−1】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19A−2】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19D】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19E】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19F】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19G】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図20】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを示す図。
【図21】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを図式的に示す図。
【図22A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22D】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22E】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22F】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22G】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図23】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図24】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図25A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図25B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態は、胸腔内圧、気道圧または気管内圧を調整するための技術を包含する。或る場合には、真空を適用する前に終末呼気陽圧(PEEP)を提供できる。或る場合には、真空を適用した後で終末呼気陽圧を提供できる。終末呼気陽圧を追加すると、疾
患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給および保護を提供できる。或る場合には、終末呼気陽圧は、機械的換気を介して提供され、呼吸サイクルの終末に気道内に存在する大気圧よりも高い圧力であることができる。終末呼気陽圧は、肺胞虚脱を妨げ、より多くの肺単位を回復し、機能的残気量を増し、流体を肺胞内に再分配することによってガス交換を改善できる。或る場合には、胸腔内圧調整器を使用することで自律神経系を上方調節できる。また或る場合には、胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ(IABP)を組合わせることで、循環の増進にいずれか単独の場合よりも大きい効果を提供できる。
【0057】
広い意味で本発明は、頭蓋内圧と眼球内圧を下げて脳潅流圧を増すための装置および技術を提供する。そのような装置および技術は、特に外傷性脳損傷を患った患者や、低血流状態および低血圧の患者に有用であり得る。治療できる状態の例は、低血圧、血液量減少に続発するショック、敗血症、心不全などを含む。頭部の圧力は下げるが、体循環圧は維持または増加する一方法は、患者の気道に連結されて胸腔内圧を下げるために使用される弁システムを用いることである。そのようにする際に、脳からの静脈血の除去を加速し、それによって頭蓋内圧と眼球内圧を減少させる弁システムが使用されてよい。同時に、心臓への静脈環流が増進されるために体循環圧が増加する。別の技術も使用してよく、たとえば胸部内に間欠的に真空を作り、および/または外部胸部陽圧源を用いて患者の胸部を反復的に圧縮および/または減圧してよい。頭蓋内圧を減じることによって、脳脊髄液の運動も増進される。このようにすると、頭蓋内圧は、さらに減少し、それによって頭部外傷を患っている患者にさらに治療が提供される。或る場合に弁システムは、頭蓋内圧上昇を招く心臓状態(心房細動、心不全、心タンポナーデなど)を患っている患者において脳機能の治療にも使用できる。そのような心臓状態は、たとえば心房細動または心不全を含んでよい。頭蓋内圧を減じることによって、脳脊髄液の運動と移動が増加して脳機能の改善を助ける。
【0058】
頭蓋内圧は、頭部に対する動脈血圧によって決まる脳潅流圧、頭蓋骨内の圧力、および脳から血流を排出する静脈系内の圧力の値によって調整される。本発明の装置と方法は、脳からの静脈血の放出を増進し、それによって頭蓋内圧を下げるために使用されてよい。装置と方法は、自発的に呼吸する患者および補助換気を必要とする患者に使用できる。このようにするために装置と方法を用いて、患者が吸入する度に(または無呼吸患者の場合には胸部の圧力が大気圧以下に低下するように操作される度に)胸腔内真空作用を増大させ、それによって胸部内、および脳から血液を運び出す静脈血管内の圧力を下げることができる。真空作用は、脳に導入され、その結果として吸気努力の度に頭蓋内圧が下げられる。これはまた他の仕方で可能であるよりも多くの静脈血を頭部から流出させて、頭蓋内圧と眼球内圧を低下させる。その上、胸腔内陰圧が生成される度に心臓への静脈環流が増加するので重要臓器への循環が増加して、心拍出量の増加と臓器潅流の改善をもたらす。このように、本発明は、低心拍出量状態や低血圧を患っている患者を助けるために使用されてよい。
【0059】
呼吸ガスが肺に流れるのを妨害または抑制するために、多様な抑制機構または妨害機構が使用されてよく、これには特許文献1〜特許文献7、ならびに2002年8月19日に出願された米国特許出願第10/224263号明細書(「血液循環を増進させるためのシステムおよび方法」代理人整理番号16354−000115)、2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/401493号明細書(「糖尿病治療のシステムと方法」代理人整理番号16354−000116)、2001年9月28日に出願された米国特許出願第09/966945号明細書、および2001年9月28日に出願された米国特許出願第09/967029号明細書に記載されているものを含み、参照によってこれらの全内容が本明細書に編入される。弁システムは、患者が吸入する間、呼吸ガスが患者に流入するのを完全に妨げるか、または抑制するように構成されてよい。呼吸ガスの
流れを完全に妨げる弁システムについて、そのような弁は、胸腔内陰圧閾値に達すると開く感圧弁として構成されてよい。
【0060】
たとえば呼吸ガスの流入に対する抵抗は、約0cmH2O〜約−25cmH2Oの間で設定でき、可変または一定であってよい。より好ましくは、弁システムは、胸腔内陰圧が約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲にあると開くように構成されてよい。その上、弁システムは、連続的または可変的に使用されてよい。たとえば弁システムは、他のすべての自発呼吸に使用されてよい。
【0061】
制限を意図するものではないが、頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できる特定の種類のインピーダンス弁は、バネ付勢装置を有する弁システム、弁室を開閉する自動的/電子的手段および機械的手段、ダックビル弁、ボール弁、自発呼吸および/または胸腔内圧を操作する外部システム(たとえば換気装置、横隔神経刺激装置、鉄製胸甲など)によって引起こされる低差圧を感知すると開閉できるその他の感圧弁システムを含む。
【0062】
過去において、そのような閾値弁システムは、心臓に対する静脈前負荷を増すため、ならびに後続の心臓収縮に対する胸腔内真空の作用の増大のために心拍出量、1回拍出量および血圧を増す目的で使用されてきた。これと対照的に、本発明の技術は、脳の静脈側から血液を除去することを促進することによって機能する。そのような弁システを使用すると心臓から重要臓器(脳を含む)への血流は、増加するであろうが、脳への血流が増加することが知られているので、弁システムが頭蓋内圧を下げる効果は、全く予想されなかった。しかしながら注目すべきことに、弁システムを使用すると、脳からの静脈血圧の低下は、相当なものである。こうして、脳への血流が増加するにもかかわらず、弁システムの正味の効果は、頭蓋内圧を減らすことである。
【0063】
弁システムを患者の気道に連結すると、弁システムを通して吸入することで胸腔内陰圧を増進できる。患者が自発的に呼吸している場合、患者は、単に弁システムを通して呼吸するだけでよい。患者が呼吸していない場合、横隔膜の電気刺激、胴鎧すなわち鉄製胸甲などの陰圧換気装置、または陽圧換気の間に真空も生成できる陽圧換気装置を含む多様な技術を用いて人工呼吸を誘導できる。
【0064】
弁システムは、一定の作動圧力を有してよく、または可変であって、所望の胸腔内陰圧に達したら流れ抵抗が減少してよい。さらに本発明の弁は、手動的または自動的に可変であるように構成されてよい。流れ抵抗が変化する程度は、治療されている患者につながれた1つ以上のセンサで測定された生理的パラメータに基づきよい。このように、流れ抵抗は、患者の生理的パラメータが妥当な範囲内にもたらされるように変えることができる。自動化されたシステムを使用する場合、そのようなセンサは、参照によって編入された引例に一般的に説明されているように、流入弁の抵抗または作動圧力を変える1つ以上の機構を制御するために用いられる制御装置に連結されてよい。
【0065】
したがって本発明の弁システムは、胸腔内圧またはその他の生理的パラメータの変化を感知するために使用されるセンサを組込むか、またはこれらに結合されてよい。一面においてセンサは、測定された信号を制御装置に通信している遠隔受信装置に無線伝送するように構成されてよい。制御装置の方では測定された信号を用いて、上述した弁システムまたは参照によって本明細書に編入された弁システムの動作を変化させることができる。たとえばセンサは、血圧、圧力心臓内の、胸腔内圧、終末呼気陽圧、呼吸速度、頭蓋内圧、眼球内圧、呼吸流、酸素供給、温度、血中pH、終末呼気二酸化炭素、組織内二酸化炭素、血液酸素、心拍出量などを検出するために使用できる。これらのセンサから出る信号は、受信装置に無線伝送できる。次にこの情報は、参照によって本明細書に編入された引例に記されている流入弁の動作圧力または抵抗を制御するために制御装置によって使用され
てよい。
【0066】
頭蓋内圧を減じる技術は、多様な状況で使用できる。たとえば技術は、自発的に呼吸している患者、呼吸していないが心臓が鼓動している患者、および心停止状態にある患者で使用されてよい。後者のケースでは、技術は、心肺蘇生の実施中に胸部内に間欠的に真空を作るための何らかの手段を使用してよい。これは、弁システムまたは他の何らかのタイプの圧力操作システムを用いることによって可能であろう。さらにそのようなシステムは、患者が呼吸している場合を含む他の状況でも使用されてよい。
【0067】
図1は、頭蓋内圧または眼球内圧を減じるための一方法を示すフローチャートである。ステップ10に示されているように、プロセスは、弁システムを患者の気道に連結することによって進行する。任意の種類の連結機構、たとえばマウスピース、気管チューブ、フェイスマスクなどが使用されてよい。さらに本明細書に記載または編入された任意の弁システムが使用されてよい。ステップ20において、患者の胸腔内陰圧を(人工呼吸または自発呼吸で)反復的に減少させる。胸腔内陰圧を人工的に減じる技術の例は、鉄製胸甲装置、陰圧を生成することができる換気装置、1分間に約200〜約2000回の速度で高周波数振動を提供できる換気装置、横隔神経刺激装置などの使用を含む。弁システムが気道に連結されている間、患者の胸腔内陰圧が反復的に減じられるので、頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力も低下する。このようにすると、頭蓋内圧と眼球内圧が減少する。
【0068】
ステップ30に示されているように、患者の種々の生理的パラメータが随意に測定されてよい。そのようなパラメータの例は、呼吸速度、胸腔内圧、気管内圧、頭蓋内圧、頭蓋内血流、眼球内圧、血圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素飽和などを含む。さらにステップ40に示されているように、弁システムを作動させる閾値レベルは、測定された生理的パラメータに基づき随意に変更されてよい。これは脳から引出される血液の量を最大化するため、または単に患者の状態を監視して患者を安定させておくために行うことができる。
【0069】
図2に、弁システム200に連結されるフェイスマスク100の一実施形態を示す。マスク100は、患者の顔に固定されて口と鼻を覆うように構成されている。マスク100と弁システム200は、胸腔内圧を下げ、それによって頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できる装備の一タイプの例である。しかしながら、たとえば既述のものを含む他の弁システムおよび他の連結装置も使用されてよいことは、認識されよう。したがって本発明は、以下に述べる特定の弁システムおよびマスクに制限されるものではない。
【0070】
図3〜図5も参照して、弁システム200をより詳しく説明する。弁システム200は、換気チューブ208のボール206を受容するソケット204を有する弁ハウジング202を含む。このようにして換気チューブ208は、水平軸回りを回転でき、垂直軸に対して旋回できる。換気を補助するために換気バッグなどの呼吸源をチューブ208に連結できる。換気チューブ208内には、ダックビル弁212の上方に離れてフィルタ210が配置されている。弁ハウジング202内部には、ダイヤフラム216を保持するダイヤフラムホルダ214が保持されている。弁システム200はさらに、第2ハウジング220によって所定位置に保持される患者ポート218を含む。ハウジング220は、適宜に弁システム200をフェイスマスク100に連結するのを容易にするためのタブ222を含む。ハウジング220内には、バネ224a、リング部材224b、およびOリング224cを有する逆止弁224も保持されている。バネ224aは、リング部材224bを患者ポート218に対して付勢している。患者ポート218は、バイパス開口部226を含んでおり、これは患者ポート218内の圧力が閾値陰圧に達してバネ224aを圧縮するまで逆止弁224のOリング224cによって覆われている。
【0071】
患者が能動的に換気されると、呼吸ガスは、強制的に換気チューブ208を通される。ガスは、フィルタ210およびダックビル弁212を通って流れ、そしてダイヤフラム216を上昇させることによってポート218を通って出ることができる。したがって単に呼吸ガスを強制的にチューブ208に通すことによって患者は、随時換気され得る。
【0072】
呼吸サイクルの呼気相の間、呼気ガスは、ポート218を通って流れ、ダイヤフラム216を持ち上げる。次にガスは、換気チューブ208内の通路227を通って流れ、開口部229を通ってシステムから出る(図3参照)。
【0073】
呼吸サイクルの吸気相の間、弁システム200は、胸腔内陰圧レベルの閾値を越えるまで呼吸ガスが肺に流入するのを妨げる。この圧力レベルを越えるとバネ224aが圧縮されるために逆止弁224は、下方に引っ張られて、呼吸ガスを最初は、チューブ208、次にダックビル弁212を通って開口部226から患者の肺に流す。弁224は、胸腔内陰圧が約0cmH2O〜約−25cmH2O、より好ましくは約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲にあると開くように設定できる。したがって、患者が弁システム200を用いて吸入する間、胸腔内陰圧の大きさと持続時間を増進できる。胸腔内圧が閾値以下に低下すると、復座バネ224aが再び逆止弁224を閉じる。このようにして、脳から血液を運び出す静脈血管内の圧力も下げられる。こうしてより多くの血液が脳から引出されて頭蓋内圧と眼球内圧を減じる。
【0074】
図6に例示されているように、本明細書に記載された任意の弁システムを治療システム300に組込むことができる。治療システム300は、適宜にフェイスマスク100および弁システム200を含むが、本明細書に記載された任意の弁システムまたはインタフェース機構などが使用されてよく、図14の弁システムを含むがこれに限らない。弁システム200は、適宜に制御装置310に連結されてよい。制御装置310もまた本明細書に記載または編入される任意の実施形態に準じる仕方で弁システム200のインピーダンスレベルを制御するために使用されてよい。インピーダンスのレベルは、生理的パラメータの測定に基づき、またはプログラムされた変更スケジュールを用いて変えられてよい。治療システム300は、本明細書に記載された任意の生理的パラメータを測定するために、非常に多様なセンサおよび/または測定装置を含んでよい。これらのセンサまたは測定装置は、弁システム200またはフェイスマスクに統合されるか、これらに連結されるか、または別個であることができる。
【0075】
たとえば弁システム200は、圧力測定(たとえば胸腔内圧、頭蓋内圧、眼球内圧)を行うための圧力変換器、肺に入るまたは肺から出る空気の流量を測定するための流量測定装置、または呼気二酸化炭素を測定するための二酸化炭素センサを含んでよい。
【0076】
別のセンサまたは測定装置の例は、心拍数センサ330、血液圧力センサ340、および温度センサ350を含む。これらのセンサは、制御装置310に連結されて、測定結果を記録することもできる。さらに種々の生理的パラメータ、たとえば酸素飽和および/または血中酸素濃度、血中乳酸塩、血中pH、組織内乳酸塩、組織内pH、血圧、圧力心臓内の、胸腔内圧、終末呼気陽圧、呼吸速度、頭蓋内圧、眼球内圧、呼気流、酸素供給、温度、終末呼気二酸化炭素、組織内二酸化炭素、心拍出量などを測定するために、別のタイプの測定装置を使用できることは認識されよう。
【0077】
或る場合には、制御装置310を用いて弁システム200を制御し、何らかのセンサまたは測定装置を制御し、測定結果を記録し、そして比較を行うことができる。代替として、そのような作業を実行するために、一連のコンピュータおよび/または制御装置を組合わせて使用できる。この装備は、治療システム300を操作するのに必要とされる適当な
プロセッサ、ディスプレイスクリーン、入出力装置、登録装置、メモリまたはデータベース、ソフトウェアなどを有してよい。
【0078】
患者に人工的に呼吸させるために多様な装置が制御装置310に連結されてよい。たとえばそのような装置は、換気装置360、鉄製胸甲装置370または横隔神経刺激装置380を含むことができる。換気装置360は、患者の体内に胸腔内陰圧を作るように構成されてよく、または1分間約200〜約2000回の振動を発生できる高周波数換気装置であってよい。
【0079】
<例1>
以下に、本発明に従い頭蓋内圧を下げる方法を非制限的な例で説明する。この例では30kgのブタに、プロポフォールで麻酔を施した。ミラー社製圧計測電子カテーテルを硬膜下に挿入し、自発的に呼吸するブタの頭蓋内圧を連続的に測定した。竜骨の高さで気管に配置されたミラーカテーテルを用いて胸腔内圧(ITP)を記録した。ブタの血圧、心拍数、および換気量が安定した後で、頭蓋内圧(ICP)と胸腔内圧を吸気インピーダンス0cmH2Oで記録し、次いで吸気インピーダンス5、10、15、および20cmH2Oで記録した。吸気インピーダンスは、図2〜図5に記載されたインピーダンス閾値弁(ITV)を用いて達成された。
【0080】
ベースとして頭蓋内圧は、約8/4mmHgであった。図7に示されているように、吸気インピーダンスの値が上昇するに連れて、頭蓋内圧は、比例的に低下した。ブタがインピーダンス20cmH2Oを通して呼吸したとき頭蓋内圧は、6/−2mmHgであった。この所見は、複数のブタの調査で観察され、再現可能であった。次にミラーカテーテルをブタの脳内に3cm挿入した。プローブの挿入に伴う外傷に続いて頭蓋内圧は、増加した。頭蓋内圧は、25/22mmHgに上がり、これを新しいベースラインとした。次に種々の抵抗レベルでインピーダンス閾値弁を評価した(図8)。再び、頭蓋内圧は、吸気インピーダンスの大きさに比例して減少した。
【0081】
<例2>
この例では、心停止から回復する状況で頭蓋内圧が増加した。この例に使用したブタモデルは、心室細動が6分間続いた後、心肺蘇生を6分間施し、次いで除細動を行った。動物が例1に類似の弁システムを用いて吸気インピーダンス10cmH2Oを通して呼吸したとき、自発呼吸の結果として頭蓋内圧は、最大50%減少した。
【0082】
上記のすべての例において、胸腔内圧は、体の残余の部分に対して減少して吸引効果を生み出し、それが脳から出る静脈血管内の圧力を低下させ、それによって頭蓋内圧を低下させた。
【0083】
本発明はさらに、脳脊髄液(CFS)の運動を促進することで頭蓋内圧(ICP)を減じるための技術および装置を提供する。頭蓋内圧が上昇する原因は、多数あり、頭部損傷、虚血、浸透圧不均衡、脳浮腫、腫瘍、透析の合併症、感染、脳卒中、高血圧性発症を含む。いずれも徐々に、また或る場合には急激に頭蓋内圧を増加させる。脳内容の固形物は、頭蓋骨で包囲された物質の約80〜85%を占める。脳血液量は3〜6%、および脳脊髄液は5〜15%である。これについては、非特許文献1の参照を求め、参照によってその全内容が本明細書に編入される。脳脊髄液は、正常の生理的状態では脳内部の産生される部位から脳内に再吸収される部位に妨げられずに移動する。脳内容は、事実上非圧縮性なので、3つの主要な構成要素(固形物、血液量、脳脊髄液量)のいずれか1つ量が変化すると、相互的に他の1つまたは2つの脳構成要素を変化させる。脳脊髄液以外の構成要素の増大に伴って脳の容積が拡大したら、脳脊髄液の一部は、他の場所に移動せざるを得ず、大後頭孔(頭蓋骨を脊髄が位置している場所に接続している頭蓋骨中の孔)を通って
脊髄を包囲している脳脊髄液腔に移る。脳脊髄液以外の構成要素が量または大きさを増したら、頭蓋内圧が上昇する。正常な頭蓋内圧レベルは、仰臥位で10〜15mmHgである。レベルが15〜20mmHgを越えると、圧縮に続発して脳に損傷を来す結果、組織虚血(十分な血流の欠如)を招くことがある。頭蓋内圧レベルの低下は、多数の臨床的治療介入によって達成でき、これには水分制限、利尿薬、ステロイド、過換気、脳静脈圧の減少、低体温、脳脊髄液排出、および外科的減圧を含む。
【0084】
頭蓋内圧が上昇すると、脳脊髄液の運動と移動が減少する。頭蓋内圧が上昇しても脳脊髄液の産生は、概して一定している(約150ml/日)。頭蓋内圧を上昇させることで、脳脊髄液の再吸収を遅くすることができる。本明細書に記載された弁システムを用いることで、中心静脈圧を下げることができる。これはまた頭蓋内圧の減少をもたらし、脳脊髄液の運動または移動および再吸収の増加をもたらす。この結果、さらに頭蓋内圧は、さらに減少する。
【0085】
本発明の弁システムは、自発的に呼吸する患者、陰圧換気で換気される患者、または呼吸サイクルの少なくとも一部で中心静脈圧を減少させる換気装置で換気される患者に使用されてよい。本発明の弁システムによって胸腔内圧が減じられる度に、同時に頭蓋内圧が減少して脳脊髄液の運動が増加する。言い換えれば、弁システムを使用すると頭蓋内圧波形のピークと谷の差が増大する。自発的に呼吸する患者では胸部の圧力が変化すると正弦波運動が生じ、静脈血管を介して脳に伝達される。正常に変動する脳脊髄液圧(吸気の度に圧力が増減する)は、弁システムによって変化させられる。より具体的には、弁システムは、より低い谷値を作り、それによって吸気の度に頭蓋内圧の全体的な変化を生み出す。無呼吸患者においても弁システムを、鉄製胸甲、横隔神経刺激装置(たとえば米国特許第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書に記載されており、参照によって本明細書に編入される)、胸部を周期的に拡張するために使用される胸部上の吸引カップなどの多様な換気装置と一緒に使用することで類似の効果を生み出すことができる。
【0086】
脳脊髄液の運動が増大すると、脳の代謝状態が全体的に改善される。これは図9Aおよび図9Bに図式的に示されている。図9Aには、脳400が正常な状態で示されている。脳400は、部位404で産生される脳脊髄液402によって包囲されている。脳脊髄液は、また頭蓋骨406によって包囲されている。血液は、動脈408を通って脳400に入り、静脈410を通って出る。静脈410は、脳脊髄液を排出する部位412も含んでいる。図9Aに示された矢印は、脳脊髄液が排出されるときに流れる方向を示している。脳400から脊髄414が延び、大後頭孔416によって囲まれている。
【0087】
図9Bにおいて脳400は、著しく腫脹して脳脊髄液が位置するスペース402を狭めている。脳400が腫脹すると、矢印418で示されているように脳脊髄液が脊髄414に流れるのを阻止することがある。また脳脊髄液の部位412への運動も減少して、脳脊髄液が頭蓋骨406の外に出る運動が妨げられる。
【0088】
上述したすべての状態に伴って上昇した頭蓋内圧を、本明細書に記載された弁システムを用いて治療することで、脳腫脹を低減できる。このようにすると、同じ状態の下で脳脊髄液の運動と液移動が増大する。この結果、脳脊髄液が変位できるので頭蓋内圧がさらに減少する。
【0089】
次に図10を参照して、心房の収縮が頭蓋内圧に与える影響について説明する。周知のように心房の収縮は、頭蓋内圧の相動性運動を生じる。これは、心室細動の間に最も明瞭に実証できる。この状況で心房は、しばしば自発的に拍動し、各々の収縮および弛緩波形の圧力は、直ちに脳に伝達されて、頭蓋内圧のほぼ同一の変動となって現れる。発明者は
、流体系(静脈血管および脳脊髄液)は、非常に密接に結合しており、心臓リズムの微妙な変化も直ちに脳脊髄液圧を変化させることを発見した。こうして顕著な心臓リズムまたは顕著な心不全を有する患者において、そのような状態の結果として右心圧が上昇すると、頭蓋内圧の上昇をもたらす。そのような頭蓋内圧の上昇は、脳潅流の減少につながる。なぜなら脳潅流は、脳に入る血液の圧力(平均動脈圧)から脳を出る血液の圧力(頭蓋内圧および中心静脈圧)を減算した値によって決まるからである。本明細書に記載された弁および胸腔内真空システムを用いると、胸腔内圧の減少がもたらされる。図10に示されているように、下方を指している矢印は、弁システムを通した各々の吸気のタイミングを表している。心房細動を開始する前のベースライン状態において、各々の吸気(小さい矢印)の結果、胸腔内圧の減少、右心房圧の減少、中心静脈圧の減少、そして直ちに頭蓋内圧の減少が生じる。心房細動が開始すると、頭蓋内圧の上昇および頭蓋内圧振幅変化の正弦波パターンが穏やかになる。動物が吸気インピーダンス−10cmH2Oを通して吸入し始めると直ちに胸腔内圧(ITP)が減少し、右心房(RA)圧が直ちに減少し、そして直ちに頭蓋内圧(ICP)が減少すると共に吸気の度に頭蓋内圧の正弦波変動が回復する。頭蓋内圧が上昇しているときに妨害手段を通して吸気すると、頭蓋内圧の減少、脳脊髄液流の増加、および脳潅流の増加に続いて脳虚血の減少がもたらされる。このように、弁システムは、心房細動などの心臓リズムを有する患者や、心不全のために頭蓋内圧が増加した患者に使用して、頭蓋内圧を下げ、脳脊髄液の運動と移動を増進し、最終的に脳機能の改善を助けることができる。
【0090】
したがって、吸気抵抗の値、または(多様な技術を用いて生成できる)胸腔内陰圧生成の値は、頭蓋内圧、血圧、呼吸速度、心拍出量、またはその他の生理的パラメータ測定からのフィードバックによって制御または調整できる。このようなシステムは、閉ループフィードバックシステムを含むことができよう。
【0091】
図11は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者を治療するための別の方法を例示するフローチャートである。こうすればそのような技術は、とりわけ低血圧を患っている患者または心停止状態にある患者の治療にも使用できることが認識されよう。この技術は、特に患者が呼吸していない場合に有用であるが、或る場合には呼吸している患者にも同様に使用できよう。
【0092】
広い意味で、頭部外傷を患っている患者を治療するとき、患者の胸腔内圧を下げて頭蓋内圧を減らす。これは、また二次性脳損傷の緩和を補助する。ステップ500に示されているように、患者の胸腔内圧を下げるのを補助するために患者に装備が連結されてよい。胸腔内圧を減らすために非常に多様な装備と技術を使用できるが、これにはたとえば米国特許第6584973号明細書に記載された呼吸ガスを抜出すことができる機械的換気装置、たとえば米国特許第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書;第6463327号明細書に記載された横隔神経またはその他の筋肉の刺激装置(たとえば米国特許第5551420号明細書;第5692498号明細書;第6062219号明細書;第5730122号明細書;第6155257号明細書;第6234916号明細書;第6224562号明細書に記載されたインピーダンス機構を使用する、または使用しない)、鉄製胸甲装置、胸壁上で外方に引っ張って鉄製胸甲の効果に類似に胸腔内真空を作ることができる胸部ベスト、たとえば2003年11月9日に出願された米国同時係属出願第10/660366号明細書(代理人整理番号16354−005400)に記載された換気バッグなどを使用することを含む。参照によって以上の引例の全内容を本明細書に編入する。呼吸している患者に対しては吸気中に約5cmH2Oが生成されると開くように設定された上記の閾値弁を用いて、患者の胸腔内陰圧を増進できる。
【0093】
患者が呼吸していないときには、ステップ502に示されているように、患者に陽圧呼
吸が送込まれる。これは機械的換気装置、換気バッグ、口移しなどで行われてよい。これに続いて直ちに胸腔内圧を減らす。これはステップ504に示されているように、患者の肺から呼吸ガスを抜出すか押出すことによって行うことができる。胸腔内圧を下げるために、上述した任意の技術が使用されてよい。そのように胸腔内圧を下げると、中心静脈圧および頭蓋内圧も下がる。
【0094】
呼気相の間の真空作用は、一定であるか、時間と共に変化するか、パルス状であってよい。後で真空を適用する種々の方法の例を図12A〜図12Cに関連して説明する。初期陽圧呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒、より好ましくは約0.75秒〜約1.5秒の時間で供給されてよい。呼吸ガスは、陽圧呼吸の時間に対して約0.5〜約0.1の時間で抜出されてよい。陽圧呼吸は、1秒間約0.1リットル〜約5リットル、より好ましくは1秒間約0.2リットル〜約2リットルの範囲の流量で送込まれてよい。呼気流(たとえば機械的換気装置を使用する場合)は、1秒間約0.1リットル〜約5リットル、より好ましくは1秒間約0.2リットル〜約2リットルの範囲にあってよい。真空は、負の流れで、または流れなしで維持されてよい。真空は、約0mmHg〜約−50mmHg、より好ましくは約0mmHg〜約−20mmHgの範囲にあってよい。
【0095】
ステップ506に示されているように、陽圧呼吸を送込んで直ちに胸腔内圧を下げるプロセスは、頭蓋内圧を制御するために必要である限り反復されてよい。その必要がなくなれば、プロセスは、ステップ508で終了する。
【0096】
陽圧呼吸と真空の作り方は、具体的な用途に応じて異なってよい。これらは異なる持続時間と勾配を有する多様な波形で適用されてよい。例は方形波、二相性(真空が作られた後に陽圧が続く)、減衰(真空が作られた後に減衰させる)などを使用することを含む。これらがどのように起こるかを表す3つの特定の例が図12A〜図12Cに示されているが、他の例も可能である。説明の便宜のため、陽圧呼吸が起きている間の時間は、吸気相という用語で定義し、胸腔内圧が下げられる間の時間は、呼気相という用語で定義できる。陽圧呼吸は、1分間約10〜約16回行われてよく、吸気相は、約1.0〜約1.5秒続き、呼気相は、約3〜約5秒続く。図12Aに示されているように、呼吸ガスは、急速に圧力が約22mmHgになるまで供給される。これは直ちに約−10mmHgの陰圧に逆転される。この圧力は、呼気相の終了まで比較的一定に保たれ、このサイクルが繰返される。
【0097】
図12Bにおいて、陽圧は、より緩慢に適用される。約10〜約15mmHgの圧力に達すると、圧力は、急速に約−20mmHgの陰圧に逆転される。陰圧は、徐々に減退して呼気相の終末には約0mmHgになる。次いでこのサイクルが繰返される。したがって図12Bのサイクルでは、陽圧は、図12Aに示すサイクルと比べて低く、陰圧は、最初より低いが徐々に上昇する。この技術は、可能な気道虚脱を低減するのを助けるように設計されている。
【0098】
図12Cにおいて、陽圧は、20mmHgにもたらされてから直ちに約0mmHgに下げられる。次に陰圧が呼気相の終末に向かって徐々に約−20mmHgまで増大される。このサイクルは、可能な気道虚脱を低減するのを助けるように設計されている。
【0099】
図13Aと図13Bは、無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる装置500の一実施形態を図式的に示す。装置500は、任意のタイプの患者インタフェースを用いて患者の気道に直接的または間接的に連結できるインタフェース開口部504を備えたハウジング502を包含する。ハウジング502は、真空を生成できる任意のタイプの装置またはシステムに流体連通している真空源インタフェース506も含む。またハウジング502には真空を調整するための手段、たとえば感圧弁システム508も連結されている。
装置500はさらに、真空が適用されていないときに必要があれば、患者に呼吸を提供するために使用できる換気インタフェース510を含む。
【0100】
この実施形態において、真空は、本質的に任意のタイプの真空源によって提供されてよく、調整器は、インピーダンス弁、たとえば米国特許第5551420号明細書;第5692498号明細書;第6062219号明細書;第5730122号明細書;第6155257号明細書;第6234916号明細書;第6224562号明細書;第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書;第6463327号明細書に記載されたインピーダンス弁、および本明細書に記載された別のインピーダンス弁を含むことができる。呼吸を供給するために多様な換気源、たとえば換気インタフェース510に連結されるバッグ弁蘇生器が使用されてよい。装置500はさらに、バッグ弁蘇生器から患者に呼吸を送込むときに真空を阻止するための機構512を含んでよい。呼吸が供給されたら、機構512は、胸部内に真空が再び適用されるのを許すように動作する。真空源を入れたり切ったりするために用いられる機構512は、図13Bに例示されているように、真空源を有するハウジング502内で動いて分岐路を閉じるスライドスイッチを含むことができる。しかしながら、別のタイプのスイッチまたは機構が使用されてもよい。或る場合に真空源は、呼吸が施されていて機構512が必要とされないときに真空を止めるように構成された制御装置を有することができる。また呼吸の供給と停止を感知して、機構512が制御装置によって適切に操作できるようにするために、制御装置と適当なセンサを用いることもできよう。呼吸が送込まれた後で機構512は、図13Aに示す位置に戻って、患者に真空が供給され得る。真空が閾値量に達すると、調整器508は、真空のレベルをほぼ閾値量に維持するように動作する。
【0101】
図14Aと図14Bは、装置530を患者の治療に使用できる別の実施形態を示す。装置530は、図13Aと図13Bに示す装置500に同様の原理を用いて動作する。装置530は、患者の気道に連結できる患者インタフェース534と、真空源に連結できる真空インタフェース536とを有するハウジング532を包含する。ハウジング532は、陽圧呼吸を供給できる換気インタフェース538も含む。ハウジング532には、患者に供給される真空の量を調整する真空調整器540も連結されている。使用できる流量調整器の一例を、以下に図15Aと図15Bを参照して説明する。しかしながら、本明細書に記載された任意の流量調整器が使用されてよいことは、認識されよう。ハウジング532内に配置されている流れ制御装置542は、ハウジング532を通るガス流を集結するために使用される。流れ制御装置542は、ハウジング532内でスライドできる円筒部材544を包含し、かつ流れ制御装置542が図14Aに示す位置にあるときに患者インタフェース534と真空インタフェース536との間のガス流を許す流路546を含む。適宜に、流れ制御装置542を図14Aに示す定位置に保持するためにバネ548またはその他の付勢機構が使用される。流れ制御装置542は、図14Aに矢印で示すように調整器540と真空インタフェース536との間のガス流を許す流路550も含む。したがって、定位置にあるとき、真空インタフェース536を通して真空が供給されて、患者の胸腔内圧を下げることができる。真空が大きくなり過ぎると、調整器540を通ってガスが流されて真空の量を下げる。
【0102】
図14Bに例示されているように、流れ制御装置542は、換気インタフェース538から患者インタフェース534に通じる流路552も含む。これは換気インタフェース538を通して患者に陽圧呼吸が供給されるようにする。より具体的には、換気インタフェース538を通してガスが注入されると、流れ制御装置542に流入し、これをハウジング532内で動かしてバネ548を圧縮する。このようにすると、ハウジング532がブロックされて流路546は、閉じる。流路550も閉じて、流路552のみ開いておき、呼吸ガスが患者に流れるようにする。陽圧呼吸が停止するとバネ548が流れ制御装置を定位置に戻して、再び患者に真空が供給される。
【0103】
したがって、真空インタフェース536から真空が適用されるときには、インピーダンス弁540のクラッキング圧に達するまで、患者インタフェース534を通して患者から空気が引出される。この時点で空気は、換気インタフェース538の換気源からインピーダンス弁540を通過し、患者内で達成される真空を制限する。換気インタフェース538の換気源から陽圧換気が供給されるときには、内部スライドスイッチシリンダ542が下方に動いて真空源を閉じ、陽圧容積を送込んで患者に呼吸を提供する。流れ制御装置542は、装置542が最小の力を加えるだけで動くのを助けるカップ形開口部556を含んでよい。呼吸が供給され終わると、換気源から装置542に正の力が加えられず、バネ548は、上方に押し上げて患者を再び真空源に曝露する。
【0104】
装置530は、随意の圧力ポップオフ調整器560も含んでよい。真空源が大き過ぎる場合には、ポップオフ調整器560が開いて所望の真空圧を越える圧力を逃がす。ポップオフ調整器560は、約20〜約100mmHgより大きい圧力に対して開くように構成されてよい。
【0105】
図13と図14に示す装置は、(真空を入れたり切ったりするための)機械的スイッチ機構を備えて示されているが、他のスイッチたとえば磁気的、電子的、または電気的スイッチも用いられてよい。他の種類の可能なスイッチは、ボール弁、フラッパ弁、僧帽弁、またはその他の機械的手段、ならびにソレノイドを含む電気的または電子的弁システムを含んで、換気源から陽圧呼吸が送込まれると一時的に真空を阻止できる。真空の流れまたは力を制限するために真空源に追加の調整器も使用できる。たとえば真空源は、閾値レベルが達成されたら一定の真空を提供するように構成できよう。その上、真空調整器とインピーダンス弁508および530は、可変であっても、一定のレベルのインピーダンスに設定されてもよい。真空源は、吸込管であってよく、または酸素タンクに装着されたベント装置から出て、患者に酸素と真空源の両方を提供できるようにされてもよい。さらに本発明は、真空を調整するために、ここに示されたインピーダンス弁を使用することに限られない。それに代えて多数の切替え手段および調整手段が使用されてよい。換気源も同様に制限するものではなく、口移し、バッグ弁蘇生器、自動換気装置などの換気源を含んでよい。
【0106】
図15Aと図15Bは、流量調整器540をより詳細に示している。調整器540は、患者ポート572と換気ポート574を有するハウジング570を包含する。随意に補足酸素ポート576も提供されてよい。ガスは、ハウジング570(患者ポート572と換気ポート574の間)内を2つの流路のいずれか一方を通って流れる。第1流路は、逆止弁ガスケット580とバネ582を有する一方向逆止弁578によってブロックされる。第2流路は、ダイヤフラム584によってブロックされる。
【0107】
動作中は、真空ポート536で真空源から真空が引入れられると患者ポート572で真空が感知される(図14A参照)。真空が閾値レベルに達すると、バネ582が圧縮してガスケット580を下方に動かし、それによって図15Bに例示されているような流路を作る。真空が引入れられるとダイヤフラム584が閉じて空気が流路を流れるのを妨げる。真空が閾値レベルにある限り、ガスケット580は、開口部から離れた位置にある。このようにして調整器540は、真空を一定のレベルに維持することができる。
【0108】
患者を喚起する準備ができたら、真空が止められて呼吸ガスが換気ポート574および/または補足酸素ポート576に注入される。これらのガスは、ダイヤフラム584を持ち上げて、ガスが患者に流れるようにする。
【0109】
<例3>
例3は、本発明の一面に従い頭蓋内圧と胸腔内圧を下げて収縮期動脈圧を上げる方法を示すもう1つの非制限的な例である。この例では30kgのブタにプロポフォールで麻酔を施した。ミラー社製圧計測電子カテーテルを硬膜下に2cm挿入し、自発的に無呼吸ブタで頭蓋内圧を測定した。竜骨の高さで気管に配置されたミラーカテーテルを用いて胸腔内圧(ITP)を記録した。大動脈でミラーカテーテルを用いて収縮期大動脈圧血圧(SBP)を測定した。胸腔内圧を調整するために、図14A、図14B、図15A、および図15Bに示すシステムに類似のシステムを用い、吸気インピーダンス(−8cmH2Oおよび流量30L/分)を適用した。陽圧換気は、搬送用自動換気装置を用いて10呼吸/分の速度、および1.0秒間に送込まれる1回換気量約400mlで供給された。これらの新規の心肺・頭蓋相互作用を記述する目的、方法、結果、および結論を以下に要約する。
【0110】
この例の目的は、制御された連続真空(CV)源に装着された新規の吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)の緊急使用を評価するために、心停止と止血された一定出血による出血性低血圧ショックで順次障害された無呼吸ブタモデルにおいて、胸腔内圧(ITP)と頭蓋内圧(ICP)を減少させるのと同時に平均動脈圧(MAP)、冠動脈潅流圧(CPP)、および脳潅流圧(CerPP)を増加させることであった。この動物モデルは、心停止後の頭蓋内圧の上昇と出血後の顕著な低血圧の両方を発現した。
【0111】
この例は、6頭の雌の飼育ブタ(28〜32kg)を使用して、プロポフォールで麻酔し、挿管および換気して正常二酸化炭素状態および酸素飽和>90%を維持した。心室細動を誘導して6分間治療せず、続いて6分間標準心肺蘇生を施した後、除細動を行った。自発循環が戻った後、機械的に10呼吸/分で呼吸している間に血液量の35%を60cc/分の速度で除去した。5分後に吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空を5分間適用すると共に100%酸素の陽圧換気を10呼吸/分の速度で施した。次いで吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空を取外し、再び陽圧換気を10呼吸/分の速度で適用した。吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空の適用前、適用中、および適用後に血行動態パラメータと動脈血ガスを評価した。対応を有するt−検定とANOVAで統計的分析を行って+/−吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空使用を比較した。
【0112】
結果を以下の表に要約する。ここに示されるように、胸部圧力を調整することで、吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空の使用は、胸腔内圧と頭蓋内圧の瞬時の減少、および平均動脈圧の急速な上昇と脳潅流圧の著しい増加を引起こす。したがって吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空は、低血圧、ショック、および脳高血圧の治療に使用されてよい。
【0113】
【表1】
1つの具体的な実施形態において、患者は、多数の技術を単独でまたは組合わせて用いて、その胸腔内圧を操作され得る。たとえば何らかのタイプの外部胸部陽圧源を用いて患者の胸腔内圧を増加させた後に減少させることで、心臓と肺から血液を抜出し、また送込
むことを反復的に行うことができる。このような外部胸部陽圧源の例は、機械的胸腔外ベスト、胸甲、圧縮ピストン、圧縮カップなどを含む。そのような装置は、低血圧患者において血圧と循環の増加を維持するための非侵襲的な血行動態支援装置として機能できる。
【0114】
患者の胸腔内圧が外部から操作される(たとえば増減される)間、患者は、本明細書に記載された任意の技術を用いて陽圧呼吸と真空を適用することでその胸腔内圧を操作されることができる。さらに本明細書に記載された任意の弁システムを組合わせて用いることもできる。したがって、患者の胸部が圧縮および弛緩される間、同時に陽圧呼吸に続けて真空を適用することができる。このようにして、重要臓器への血流を改善するために非侵襲的な技術が限定されない期間にわたって提供され、患者がショックや重度の低血圧を有するケースや、心停止状態にある患者などに用いることができる。またそのような技術は、より信頼できる処理法が利用できるまで、心筋保護剤の等効物として心臓保存液を循環させるために使用されてよい。
【0115】
これらの各々のステップのタイミングを制御して任意のやり方で関連付けてよく、たとえば患者の胸部に加える力を弛緩させる間に真空を適用してもよい。また胸部圧縮のタイミングを別の変数に結び付け、たとえばタイミング圧縮および/または減圧を内因性心臓リズム(すなわちECG活動つまり心電図活動)に同期させることができよう。さらに陽圧呼吸は、必要とされるときのみ行い、各々の胸部圧縮に結合させなくてもよい。さらに所定数の胸部圧縮の後でのみ胸部を減圧してもよい。
【0116】
別の実施形態によるように、十分な呼吸を提供するために患者に周期的な陽圧換気または体外酸素供給器を供給してよい。陰圧換気は、適当な換気を提供するためにも使用できる。たとえば気道を妨げることなく胸部を減圧して陰圧換気を提供できる。また今述べた技術は、血圧を維持するためにも、単独で、または侵襲的な方法と組合わせて用いることができる。たとえば患者の血液の幾らかを体から取除けば、頭蓋内圧によって大きい効果を生み出せよう。
【0117】
そのような技術に使用できるシステムの具体的な配置構成の1つが図6(既述)に説明されており、部材370(鉄製胸甲装置)は、本明細書に記載された任意の外部胸部陽圧源を図式的に代表するものである。さらに制御装置310は、陽圧源を作動させるための何らかのタイプのエネルギー源、たとえば空気圧源、電子源、燃焼源なども含んでよい。このように多様なエネルギー源を使用して、交互に胸部を圧縮し、次いで圧縮を解除することができる。本明細書に記載された任意の技術によって、換気装置360を用いて陽圧呼吸に続いて真空を適用し、さらに適当な換気を提供することができる。さらに弁システム200が図示されているが、本明細書に記載されたその他の任意の弁システムも使用されてよいことは、認識されよう。また温度センサ350は、別のタイプのセンサおよび/またはモニタ、たとえば心電図モニタで代替されてよく、胸部圧縮および/または減圧を心電図活動に同期化できることも認識されよう。
【0118】
<胸腔内圧調整および終末呼気陽圧>
無呼吸患者または補助換気を必要とする患者の換気中に吸気/呼気サイクルで終末呼気陽圧を適用する胸腔内圧調整(IPR)技術において、陽圧呼吸または換気(PPV)を提供し、次いで終末呼気陽圧(PEEP)を提供し、それから真空を引入れることが可能である。このような技術の諸特徴が図16Aに例示されている。代替として、最初に陽圧呼吸または換気を提供し、次いで真空を引入れ、それから終末呼気陽圧を供給することも可能である。このような技術の諸特徴は、図16Bに例示されている。或る実施形態に従い、これらの治療は、少なくとも一部は、プッシュ・プル換気装置を用いて達成できる。或る場合には、これらの治療は、心肺蘇生(CPR)処置または治療低血圧もしくは低循環を治療するためのその他の解決策と組合わせて実施できる。陽圧換気、終末呼気陽圧、
および胸部内の真空生成の持続時間は、患者の生理的必要性に応じて異なってよい。図16Aと図16Bに示されたグラフには、新規の胸腔内圧調整技術に対する圧力対時間曲線が例示されている。圧力は、胸腔内圧(ITP)、気道圧、または気管内圧の用語で示され、単位はcmH2Oである。タイミングは、換気装置で設定される吸呼気比(I:E比)および呼吸速度の設定に依存してよい。ここに示す例では、吸呼気比は、1:3すなわち3分の1であり、呼吸速度は、1分間10呼吸である。或る場合に吸呼気比は、約1:1〜約1:4の範囲のいずれであってもよい。また或る場合に呼吸速度は、1分間約6〜約30呼吸の範囲内にあってよい。終末呼気陽圧を追加すると、疾患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給を提供できる。或る場合に終末呼気陽圧は、機械的換気によって提供され、終末呼気陽圧のレベルと持続時間は、可変または一定であってよく、閉ループ制御システムによって調整されてよい。或る場合に終末呼気陽圧は、呼吸サイクルの間または終末に気道内に存在する大気圧よりも高い圧力を指すことがある。陽圧呼吸の供給は、機械的換気装置または麻酔器を用いて実施できる。終末呼気陽圧を施す持続時間に対応する時間tの値は、たとえば約0.1秒〜約1.5秒の範囲内にあってよい。或る場合に陽圧呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒の範囲内の時間で患者に送込むことができる。或る場合に陽圧呼吸は、患者に1秒間約0.1リットル〜約5リットルの範囲の速度で送込むことができる。陽圧呼吸が供給される時間と終末呼気陽圧および/または真空が供給される時間の比は、約0.5〜約0.1の範囲内にあってよい。患者が呼吸していないときには、患者に陽圧呼吸を供給できる。これは機械的換気装置、換気バッグ、口移しなどで行われてよい。この方法と組合わせて、本出願に包含される任意の吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)技術を使用できる。本出願に包含される解決策は、糖尿病治療モダリティと組合わせて使用できることも理解される。これらの治療モダリティは、たとえば2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/401493号明細書および2007年4月13日に出願された米国特許出願第11/735320号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。本出願に包含される解決策は、心不全およびその他の状態の治療モダリティと組合わせて使用できる。たとえば米国特許第5551420号明細書、第5692498号明細書、第6062219号明細書、第6526973号明細書、第6604523号明細書、第7210480号明細書および第6986349号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。図16Aと図16Bに示す圧力曲線は、或る場合には換気装置または麻酔器を組入れることによって達成されてよい。これに関連して或る場合にそのような曲線は、換気装置なしで達成され得る。胸腔内圧を減少させ、または負胸腔内圧を達成するために任意の多様な機構または処置が使用されてよく、真空源、吸引装置、プッシュ・プル換気装置または能動的圧縮減圧装置を含むが、これらに限らない。
【0119】
図17は、患者に治療を施すための例示的なシステムの模式図を提供する。ここに示されるように、システム1700は、真空供給装置1720に動作結合しているプロセス制御装置1710、換気制御弁装置1730、および終末呼気陽圧供給装置1740を含む。真空供給装置1720は、随意に真空調節装置1724を介して、真空源装置1722に動作結合している。終末呼気陽圧供給装置1740は、随意に圧力調整装置1744を介して、ガス圧力源混合装置1742に動作結合している。換気制御弁装置1730は、随意に呼気分岐装置1752と吸気分岐装置1754を有する呼吸循環装置1751を介して、換気装置1750に動作結合している。終末呼気陽圧供給装置1740は、所望の通り調節可能な量の終末呼気陽圧を供給するように構成できる。ここに示されるように、システム1700は、圧力変換器1731も含むことができる。システム1760は、またたとえば気管チューブまたはその他の患者気道装置を介して患者に連結できる患者接続装置1760も含む。
【0120】
ある実施形態に従い、治療方法は、換気制御弁装置1730を解除して陽圧換気を提供することを包含する第1ステップを含んでよい。治療方法陽圧呼吸の終末に換気制御弁装
置1730と真空供給装置または弁1720を作動させることを包含する第2ステップも含んでよい。終末呼気陽圧供給装置は、弁1740が解除されると、内部ガス混合器装置1742から調整された圧力で患者に終末呼気陽圧を供給できる。治療方法は、さらに終末呼気陽圧段の終末に終末呼気陽圧弁1740を付勢し、真空供給弁1720を消勢して、患者の気道に調整された真空を生成する第3ステップを含んでよい。治療方法は、また上述した第1、第2、および第3ステップを繰返すことを含んでよい。或るケースでは換気装置1750を使用して患者に陽圧換気もしくは陽圧呼吸または真空、または両方を供給してよい。或る実施形態に従い、手動蘇生器を使用して患者に陽圧呼吸を供給できる。換気装置の追加の動作特性は、本明細書の別の場所で、たとえば図19A〜図19Fに関連して説明する。
【0121】
<胸腔内圧調整が交感神経系の緊張に及ぼす作用>
胸腔内圧調整器(ITPR)は、吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)を、たとえば陽圧換気を許しながら心肺蘇生(CPR)中に気管内に真空を生成するための真空源に結合できる。胸腔内圧調整器を使用することで自律神経系を調節できる。吸気中に弁システムが機能して胸部内に真空を生み出して胸腔内圧を一時的に減少させ、それによって患者の自律機能を調節する。より具体的には、胸腔内圧を下げることで、患者は、心臓によって多くの静脈血液が環流するのを経験し、それによって心拍出量の増加、血圧の上昇、脳への血流の増加、および頭蓋内圧の減少が引起こされ、自律神経系が交感神経系の緊張緩和を調節し、その結果として末梢動脈抵抗が減少する。その結果右心、次いで肺に戻る静脈血流が増加することで心臓前負荷が高まって右心室と左心室の再充填が促進される。後続の心臓収縮は、1回拍出量と心拍出量の増加をもたらす。これによって体の受容器、たとえば頸部に頸動脈圧受容器が生じて血圧と循環の増大を感知し自律神経系のバランスを変化させる。このことは、皮膚電極で記録した心電図を標準心拍変動解析法で分析するとより低い周波数パワースペクトルからシフトしていることによって実証され得る。本出願に包含される解決策は、たとえば米国特許第7195013号明細書に記載された治療モダリティと組合わせて使用でき、その内容は、参照によって本明細書に編入される。
【0122】
したがって胸腔内圧調整(IPR)を使用すると、自律神経系を調節できる。或る場合には、たとえば開心術で胸部を開いたときに胸腔内圧調整療法を適用する場合、肺は、陽圧相(吸気)では呼吸ガスで満たされ、呼気相では呼吸ガスが肺から能動的に抜出される。この結果、肺内の血液は、急速に左心房に移され、それによって左心に血液が供給される。交互に肺を呼吸ガスで満たし、同時に右心からの血液のためにスペースを提供し、次に呼吸ガスを抜出して肺リザーバ内で血液を前進させることで、肺は、蠕動スポンジのように働いて右心から血液を吸い上げ、それを左心に送込む。「スポンジから絞り出す」ことによって、肺実質の拡張と収縮は、血液循環が低いか減少した状況で血液を前進させるための新規の手段を提供する。この「絞り出し」プロセスの前または後に終末呼気陽圧を追加することで、酸素供給を維持して肺機能を保全および保護するのを助ける手段が提供される。このプロセスの間、吸気相で供給される1回換気量は、変化してよく、この方法または装置による呼吸ガスの除去速度は、供給される1回換気量に伴って直接的または間接的に変化でき、それによって所望の目標気道圧および/または胸腔内圧を達成する手段が提供される。それゆえ胸腔内圧調整療法を提供するこのような方法と装置は、開心術の間または後などに胸部が大気圧に対して開いているときでも、循環を増進して血圧を高めるために使用できる。この方法と装置で呼吸ガスを肺に入れ、および肺から抜出すことが可能である限り、これは両肺にも片方の肺のみにも適用できる。
【0123】
胸腔内圧調整療法によって達成される肺内の圧力の変化は、肺内の呼吸ガス量が変化した直接的な結果である。ガス量は、陽圧換気の度に増加し、能動的に抜出されると減少する。このプロセスにおいて血液は、肺から押出され、血液は、損傷していない一方向弁(この場合には肺動脈と僧帽弁)のために心臓内を前進できるのみである。こうしてガス抜
出し相では血液は、巨大なリザーバとして働く肺から圧出され、肺が膨らむと呼吸ガスが肺胞を満たして、間接的に動脈床と静脈床の構造を回復するので、肺が膨らむとすぐに右心からの血液は、肺血液リザーバに突入する。胸腔内圧調整療法による呼吸ガスの能動的な注入と除去によって、血液を左心に圧入するための新規の手段が提供される。胸部が大気圧に対して開いているときには、胸部の非肺構造内の圧力は、気道圧または肺圧の変化に伴って変わらないので、肺容量の変化は、典型的には頭蓋内圧を変えない。
【0124】
それゆえ本発明の実施形態は、頭蓋内圧および眼球内圧の上昇、ショック、低血圧、循環虚脱、心停止、心不全、術中低血圧を含むがこれらに限られない多数の疾患状態を患っている患者、ならびに透析中の患者の治療に使用できる。本発明は、また肝臓や腸の手術などの外科処置の間、腹部内の静脈圧を下げ、同時にこれらの臓器およびその他の重要臓器、たとえば腎臓、脳、および心臓によって多量の血流を提供できる。静脈圧を下げることで、外科処置の間の失血を減らすのを助けることができる。この新規の方法と装置は、上述した機構によって、敗血症、多発外傷性臓器障害および急性呼吸促迫症候群(ARDS)に伴う低血圧や循環不良も治療できる。このような意図の実施形態はまた「コンパートメント症候群」において静脈圧を下げるために使用してもよく、それゆえより多くの血液を循環させて組織の生存能力と機能を保つのを助けることができる。本発明の実施形態は、胸腔内圧を下げる結果、頭蓋内圧が低下して心臓への血流が増進されるという発見に基づく。開胸した患者においてこの装置は、気道と肺内の圧力を下げ、それによって肺から呼吸ガスを取除く。この結果、濡れたスポンジにその都度真空を加えるように肺の「絞り出し」が行われ、そして肺動脈弁が経肺動脈の逆流を妨げるので肺内の血液は、左心に送込まれる。次の吸気で、呼吸ガスが肺に充満して血液が肺に突入する。次に低いレベルの真空を加えると血液は、押出される。このように、気道圧が変化すると肺ポンプが提供されて血液を肺から押出し、陽圧呼吸が行われる度に肺内に空の血管リザーバが提供されて右心内の血液から急速に再び満たされる。
【0125】
胸部が損傷していない場合、装置の実施形態は、弁システムの抵抗のレベルを変化させるための機構も含んでよい。たとえば実施形態は、呼気陽圧を追加することを含んでよい。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用できる。このようにして、肺内の呼吸ガスの圧力および/または量を変化させるための機構は、センサから信号を受取り、それらの信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。これがまた呼吸ガス量の値および/またはガスが能動的に肺に注入され、かつ肺から抜出される圧力と速度の値を調整する。使用できるセンサの例は、気道圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、および左心圧を測定するセンサを含む。
【0126】
本明細書の別の箇所に記したように、本発明の実施形態は、患者の胸部が損傷していないときには、頭蓋内圧または眼球内圧を減少させるために使用するのにも適している。このような技術は、開胸して使用できる。回路が開いているので、胸腔内圧が変わることなく肺容量と圧力は、変化できる。開胸しているときには、この解決策は、典型的に頭蓋内圧を下げない。
【0127】
或る場合には、ガスを抜出す前または後で終末呼気陽圧を加えることができる。この解決策によって、方法と装置は、気道圧と、胸部が損傷していない場合に胸腔内圧を3段階で調節する手段を提供する。すなわち肺を膨ませ、肺からガスを取除き、肺を終末呼気陽圧によって部分的に膨らませることで、無気肺を低減して肺の完全性を保つのを助ける。
【0128】
本明細書の別の箇所で説明したように、陽圧呼吸の供給とガスの抜出しは、機械的換気装置を用いて行うことができ、呼吸ガスは、一定抜出しまたはパルス状抜出しによって抜
出されてよい。ガス注入および抜出しの速度と量と圧力は、患者の状態に応じて異なってよい。たとえば1回換気量が増加すれば、多量のガスが抜出される速度も変化してよい。このことは、胸腔内陰圧(胸部が損傷していない場合)の持続時間を最大化し、開胸している場合には気道圧と肺圧を最大化するために重要であり得る。図18A〜図18Cは、1回換気量および気道圧変化の特性を示す。
【0129】
図18A〜図18C上のチャートは、胸腔内圧(ITP)をmmHgの単位で時間の関数として示している。胸腔内圧調整療法が提供されて胸腔内真空−7.0mmHgを生成し、陽圧呼吸が最大胸腔内圧14mmHgを提供する。図18A〜図18Cの中央のチャートは、頸動脈の血流(たとえば総頸動脈血流)をmL/minの単位で時間の関数として示している。図18Aでは、下のチャートが3つの軌跡(上の軌跡、中央の軌跡、下の軌跡)を提供する。下のチャートの上の軌跡は、血圧に時間の関数として対応している。下のチャートの中央の軌跡は、頭蓋内圧に時間の関数として対応しており、下のチャートの下の軌跡は、右心房圧に時間の関数として対応している。図18Bは、図18Aに示した研究の138分付近のセグメントから取られており、1回換気量は、10ml/kgであった。図18Cは、図18Aに示した同じ実験の140分付近のセグメントから取られている。図18Bは、約276mlの吸気1回換気量(TV)と、約27.2kg×10ml/kgの目標を示している。図18Cは、約192mlの吸気1回換気量(TV)と、約27.2kg×7.5ml/kgの目標を示している。1回換気量は、減少するが呼気ガスが取除かれる速度が変わらないとき(図18Cに示されている)、気道圧が目標レベル−70mmHgにある時間の値は、より大きくなり、それによって提供される療法の全体的効果は、図18Bに示す結果と比較して増大する。
【0130】
麻酔して開胸した体重27.6kgのブタを使ったこの胸腔内圧調整療法実験で、最初にブタを14呼吸/分(bpm)および吸呼気比(I:E比)1:3で陽圧換気した。図18Aと18B(上のチャート)に示ように、胸腔内圧調整療法が施されたことは、気道圧の減少によって示される。これらのチャートの軌跡に従い、胸腔内圧(ITP)は、換気呼吸の度に14.0mmHgから−7.0mmHgに減少している。気道圧を目標値−7.0mmHgに下げるために必要な時間は、0.84秒であった。
【0131】
図18A(下のチャートの139.4分付近)で矢印によって示されているように、この体重28kgの麻酔したブタで1回換気量(TV)を276ml(10ml/kg)(たとえば図18B)から192ml(〜7ml/kg)(たとえば図18C)に減少させることで、気道圧を目標値−7.0mmHgに下げるのに必要な時間は、0.64秒に減少した。この減少した時間幅が図18C(上のチャート)に示されている。気道陰圧がより長く続くと、血圧は、約75/42mmHg(たとえば図18B、下のチャート、上の軌跡)から約95/55mmHg(たとえば図18A、下のチャート、上の軌跡)に増加した。頸動脈の血流も同様に増加した。
【0132】
ある実施形態に従い、図18A〜図18Cは、供給される1回換気量の値に依存した呼吸ガスの除去(たとえば真空の適用)を示す(たとえば1回換気量が多ければ多いほどゆっくりガスを除去できる)。
【0133】
上述したように、このような方法に使用するのによく適している胸腔内圧調整装置を図19A〜図19Fで説明する。例示的な胸腔内圧調整装置は、真空を調整できる閾値弁を提供する。図19A−1は、ある視点から見て、圧力計または圧力センサ1910、換気ポート1920、吸入キャップ1930、本体1940、患者ポート1950、真空ステム1960、および弁(図示せず)を有する胸腔内圧調整システム1900を示している。図19A−2は、別の視点から見て、圧力計または圧力センサ1910、換気ポート1920、吸入キャップ1930、本体1940、患者ポート1950、真空ステム196
0、および弁(図示せず)を有する胸腔内圧調整システム1900を示している。図19B〜図19Fは、胸腔内圧調整システム1900を種々の動作構成において断面図で示す。図19Bに示されているように、真空ステム1960は、完全に挿入され、もしくは押し入れられている。真空ステム1960は、真空ポートもしくは真空孔1961を含むことができる。弁1970は、ピストン1971、弁座1972、およびローリングダイヤフラム1973を含む。真空ステム1960の第1部分1962は、弁座1972をローリングダイヤフラム1973から離して、弁1970内に開口部1975を提供し、矢印Aによって示されているようにこの開口部1975を通って空気、ガス、または流体が流れることができる。ここに示されるように、吸気ガスは、換気装置(図示せず)から換気ポート1920、弁1970の開口部1975、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通り、患者ポート1950を介して患者(図示せず)内に、またはこれに向かって流れることができる。随意に真空ステムバネ1963は、真空ステム1960を弁座1972に押し付けることができ、こうして真空ステム1960を密封すると、空気は、真空ポート1961を通って流れず、同時に弁1970が開いて排気する。或る実施形態において、弁ステムの第1部分1962と弁座1972は、真空連結点でオン・オフスイッチを形成して、弁ステムの第1部分1962と弁座1972が互いに接触しているときには、第1部分1962と弁座1972との間に形成されるベントシールのために真空が閉鎖される。図19Bに示す動作構成において、真空ステム1960は、所定位置にロックまたは保持でき、こうして真空を密封し、換気装置と患者との間の開放接続を維持する。真空ステムが密封される間、ベントシールが開いて吸気ガスと呼気ガスは、両方向に流れることができる。
【0134】
図19Cは、真空ステム1960を部分的に引戻された構成で胸腔内圧調整システム1900を示す。真空ステム1960は、引戻され、弁座1972は、同時にローリングダイヤフラム1973と真空ステム1960の端面に座着でき、こうしてダイヤフラムとステムの両方を密封する。ダイヤフラム1973が密封されると、空気は、弁1970を通って流れるのを妨げられる。ここに示されているように、弁座1972がダイヤフラム1973に対して密封されているので、流体は、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通って流れることができない。ステム1960の第1部分1962が密封されると、空気または流体は、ステム1960の真空ポート1961を通って流れるのを妨げられる。或る実施形態に従い、システム1700は、2位置を有する3方向弁を提供する。したがって弁1970が開くと、患者と換気装置の間(たとえば図19Bに示す)または患者と真空の間(たとえば図19Dに示す)に流体連通を提供できる。図19Cに例示されているように、患者と真空の間の接続または通路が作成もしくは形成される前に、患者と換気装置の間の接続または通路を中断もしくは遮断できる。或る実施形態に従い、この一連の動作は、ユーザが選択的に真空ステム1960を真空治療位置に動かすときに起こる。同一または類似の動作手順は、換気ポート1920を通して陽圧呼吸が施される間、真空ステム1960を通して真空治療が施されるときに起こる。後者の場合には、真空ステムではなく、むしろ陽圧が弁座1972を真空ステム1960の第1部分1962に押し付けて、患者と換気装置の間の流路を開く前に真空を閉鎖する。したがって、弁とステムのこの二重密封は、図19Dに表現されている通り、たとえばCirQlatorまたは類似の装置によって、真空ステム1960が真空治療を施すことが可能となる位置に動かされる瞬間に起こり得る。
【0135】
図19Dに示されているように、ダイヤフラムは、完全に閉じて、換気ポートを密封し、真空ステムが患者ポートに開いている位置にあることができる。真空は、圧力計のピストンを下方に引っ張って、患者に真空が適用されていることを医師またはオペレータに示す。圧力計と装置の本体との間の開口部によって、圧力が圧力計を作動させることができる。医師またはオペレータは、真空ステムを引いて治療位置にロックし、弁機構が治療を施すのを可能にできる。
【0136】
図19Dは、真空ステム1960が完全にまたはほぼ引戻され、随意に所定位置にロックされている状態を示す。たとえば医師またはオペレータは、真空ステムを引いて真空治療位置にロックし、胸腔内圧調整システム1900が真空治療を施せるようにする。ここで真空ステムの第1部分1962は、もはや弁座1972に対して密封されておらず、こうして矢印Aで示されているように真空治療を施すことができる。ここに示されているように、ガスは、患者から患者ポート1950、第1部分1962、および弁座1972、および弁ステム孔1961を通って、真空源もしくは機構(図示せず)の方へ引戻される。ローリングダイヤフラム1973は、閉じた位置にあって、換気ポート1920を密封する。したがってダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通って流体は、流れない。真空ステム1960は、患者ポート1950に対して開いている。真空が施されると、圧力計1910の圧力計ピストン1911を下方に、または圧力計本体1942内にまたはこれに向かって引くことができる。ピストン1911がこの位置にあるときには、患者に真空が適用されていることを医師またはオペレータに示す指標となる。たとえば圧力計は、医師に機械的信号を提供できる。圧力計1910と本体1940との間の開口部1912によって、圧力または真空が圧力計1910を作動させることができる。
【0137】
図19B〜図19Eに示すローリングダイヤフラム1973は、胸腔内圧調整システム1900の本体1940から延びた、もしくは離れた拡張位置で示されている。ローリングダイヤフラム1973は、バネ1974によってこの拡張位置に保持されるか、またはこれに向かって押し付けられるが、図19Eに示されているように換気ポート1920を介して提供される換気装置からの陽圧がバネ1974を克服すると、ダイヤフラム1973を矢印Aで示される方向で下方に本体1940内にまたはこれに向かって動かす。或る場合には、上部バネによってこの動作を補助できる。したがって陽圧呼吸が開始すると、換気装置からの流体は、矢印Bで示されているように換気ポート1920に入り、陽圧がダイヤフラム1973と弁座1972を本体1940に向かって押す。図19Eには、半行程構成が示されており、真空と換気装置の双方への通路が一瞬の間閉じられている。ここに示されるように、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976は、閉じられている。圧力計は、ダイヤフラムの位置に関わりなく、患者が曝露されている圧力状態を示す。
【0138】
図19Eに示されているように、陽圧呼吸が開始すると、陽圧は、ダイヤフラムとベントシールを下方に押して、シールと真空ステムを接触させることができる。装置は、半行程の段階で示されており、真空と換気装置のいずれも一瞬間閉じている。
【0139】
図19Fは、陽圧呼吸の作用を示す。特に、陽圧呼吸は、ピストン1971、弁座1972およびダイヤフラム1973を、弁座1972が真空ステム1960の第1部分1962を密封するまで本体1940内に、またはこれに向かって動かす。1972と1962の間が密封されるため、真空は、遮断される。図19Fは、矢印Bによって示されているように、ダイヤフラム1973が本体1940内に、またはこれに向かって移動し続ける作用、したがって真空ステム1960に対する相対的な運動を示している。しかしながら弁座1972が真空ステム1960に接触すると、ピストン1971と弁座1972は、もはや真空ステム1960に沿って動かなくなる。したがって陽圧呼吸は、ダイヤフラムを下方に、または本体1940に向かって動かし続け、こうしてガス流路を開いて患者に呼吸が送込まれるようにする一方、弁座1972は、弁ステムの第1部分1962に座着して患者からの真空を密封する。陽圧呼吸またはガスは、矢印Aによって示されているように、換気ポート1920、弁座1972とダイヤフラム1973の間、およびダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通り、患者ポート1950から出て患者に向かう。したがって流路が開いて陽圧呼吸がダイヤフラム1973を通過、横断、もしくは通り越して患者に達する一方、弁座1972と弁ステム1960の第1部分1962との間が密封される結果として真空が遮断されている。図示されているように、呼吸からの陽圧は、
矢印Cで示されるように圧力計1910を上方に、または圧力計本体1942から離すように動かすが、これは、患者に陽圧が適用されていることを医師またはオペレータに示す指標を提供する。陽圧が解除、停止、または十分減少すると、ダイヤフラム復元バネ1974は、ダイヤフラム1973をその静止位置に戻し、ここで図19B〜図19Eに示されているようにダイヤフラム1973は、本体1940から延び、もしくは離れており、それによって流路が真空に対して開く前に換気装置からの流路を密封する。
【0140】
図19Fに示されているように、換気装置シールは、真空ステムに座着して、患者から真空を密封する。陽圧呼吸は、ダイヤフラムを下方に動かし続け、ガス流路を開いて患者に呼吸が送込まれるようにする。呼吸からの陽圧は、圧力計を上方に動かして、患者に陽圧が適用されていることを示すことができる。
【0141】
送込まれる呼吸の終末で陽圧が解除されると、図19Gに示されているように、弁は、逆の動作で動く。陽圧が停止すると、弁は、図19Dに示す位置に戻ることができる。患者と換気装置の間の接続は、密封されて、図19Eに示されているのと同じやり方で、しかし逆の順序で真空が開く。或る実施形態に従い、呼吸を施す目標開口部圧力は、8cmH2Oである。真空は、12cmH2Oに制限されてよく、弁を開くには不十分である。患者が自発的に息を吐くときのように二次弁を克服するために要求される圧力は、最小化できる。図19A〜図19Gに示されているような胸腔内圧調整装置の実施形態は、終末呼気陽圧機構で補足し、または終末呼気陽圧機構と組合わせることができ、こうして図17に示すような治療システムを提供する。或る場合には、図19A〜図19Gに示されているような胸腔内圧調整装置の実施形態は、終末呼気陽圧処置なしで使用することができる。
【0142】
<胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ>
胸腔内圧調整(IPR)および大動脈内バルーンポンプ(IABP)、または他の補助装置と組合わせて使用すると、心臓と脳およびその他の重要臓器への循環の増進に、いずれかの解決策を単独で講じる場合よりも大きい効果をもたらすことができる。或る場合には、この組合わせた技術は、カフ治療の諸特徴を組込むことができる。これは、たとえば米国特許第6234985号明細書、第6224562号明細書、第6312399号明細書、第6463327号明細書、および第6587726号明細書、ならびに2008年6月30日に出願された米国特許出願第12/165366号明細書、および2008年5月12日に出願された米国特許出願第12/119374号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。或る実施形態において、大動脈内バルーンポンプ装置は、心筋酸素を減少させ、心拍出量を増大させることができる。大動脈内バルーンポンプ装置は、大動脈に配置された対抗脈動膨張性バルーンを含んでよく、収縮期には、能動的にしぼませ、拡張期には能動的に膨らませることができる。膨張性部材またはバルーンは、コンピュータで制御でき、随意に心電図または圧力変換器に連結される。
【0143】
<麻酔リサイクル>
本発明の実施形態は、胸腔内圧調整器(ITPR)を麻酔器と一緒に使用する場合に麻酔ガスをリサイクルするための技術を包含する。たとえば図20に示されているように、麻酔器内で麻酔ガスをリサイクルすることが可能である。したがって、胸腔内圧調整は、麻酔を過度に消費することなく使用できる。また呼気ガスを個別チャンバ/洗浄システムに捕捉することも可能である。有利には、そのような解決策は、麻酔ガスの全体的な消費を減らす一助となり得ることである。図20は、本発明の実施形態に従い、麻酔器で気道陰圧を生成するシステムと方法の諸特徴を示す。治療システム2000は、胸腔内圧調整器(ITPR)2020に連結できる気管(ET)チューブまたはマスク2010を含む。或る実施形態に従い、胸腔内圧調整器2020は、図19A〜図19Gに示す胸腔内圧
調整装置の1つ以上の部材を組込むことができる。図20に示されているように、患者Y形管2030は、胸腔内圧調整器装置2020に連結している。胸腔内圧調整器真空ライン2040は、胸腔内圧調整器装置2020を陰圧生成器2050に連結している。真空環流装置2060は、導管または通路2065を介して陰圧生成装置2050に連結している。真空環流装置2060は、麻酔器2090および回路の呼気分岐2070とも連結されている。或る場合には、麻酔器2090は、換気装置を組込むか、または換気装置と置き換えることができる。麻酔器2090は、また吸気分岐2080とも連結されている。患者Y形管2030は、呼気分岐2070および吸気分岐2080に連結される。ここに示されるように、麻酔器の呼気分岐2070内で陰圧を生成するためにバルク流機構を採用できる。これに関連して、胸腔内圧調整器治療を用いる際に新鮮な補給ガスの量は、減少する。陰圧生成器2050は、胸腔内圧調整器真空ライン2040を通して胸腔内圧調整器治療に真空を引入れ、呼気ガスの全部またはほとんどを回路の呼気分岐2070上のT形回路を通して麻酔器2090に戻す。呼気ガスを陰圧生成器2050に回してから麻酔回路に戻すことによって、準閉回路とこれに対応する低流量の補給ガスおよび麻酔剤が維持される。麻酔回路は、種々の理由で準閉回路と見なすことができる。たとえば患者から吐き出されたガスは、しばしばガス流から呼気二酸化炭素が除去されなければならない。さらに患者によって代謝される酸素と麻酔剤は、吐き出されず入れ替えなければならない。代謝された酸素の入れ替えは、低流量のガスまたは補給ガスを回路に加えることによって行われる。或る場合には低流量が選好されて麻酔剤が節約される。
【0144】
<換気装置および胸腔内圧調整器による麻酔>
図21は、本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システム2100の諸特徴を示す。或る場合に胸腔内圧調整システム2100は、プッシュ・プル換気装置の諸特徴を備えてよい。患者が機械的換気装置で換気されるときには、胸腔内圧調整法を実施することで周期的に気道圧を下げて循環を増進し、また胸部が損傷していないときには頭蓋内圧を下げることができる。或る場合に胸腔内圧調整法と装置は、陽圧換気を提供する機構(たとえば蘇生バッグ、機械的換気装置、麻酔器、または陽圧換気を提供するその他の手段)に組込まれ得る。或る実施形態において、機械的換気装置を用いて患者を種々の吸呼気比(I:E比)で治療するときに胸腔内圧調整療法を適用できる。たとえば患者をより高いI:E比(1:2〜1:5)で治療し、毎回吸気の後で陽圧を回復する前に、胸腔内圧調整で気道圧および/または胸腔内圧を100ミリ秒〜2秒の時間の間、−1〜−20mmHgに下げることができる。この手段によって、患者の肺から呼吸ガスを急速に抜出して循環を増加させることができる。
【0145】
図21の空気回路図に示されるように、胸腔内圧調整システム2100は、フィルタ2104を有する周囲空気入口2102と、フィルタ2108を有する酸素入口2106を含む。周囲空気入口2102は、吸気陽圧(PIP)機構もしくはブロワ2112を有する排気マニホールド2110に流体連通できる。排気マニホールド2110は、流量計2114に連結され、これはまた第1吸気逆止弁2116に連結されている。酸素入口2106は、第1電圧感知(VSO)酸素弁2120および第2電圧感知酸素弁2122に流体連通できる。電圧感知弁2120および2122は、また流量計2124に連結され得る。逆止弁2116と流量計2124は、第1制御弁2126に連結されており、これはまたPS2すなわち第2圧力センサ2128および陽圧供給機構2129に連結されている。ここに示されるように、第2圧力センサ2128は、制御弁2126および陽圧供給機構2129に動作結合している。
【0146】
胸腔内圧調整システム2100は、第2制御弁2132に連結された呼気陰圧機構、真空源、もしくはブロワ2130、ならびに第2制御弁2132および呼気逆止弁2136に動作結合している持続的気道陽圧(CPAP)制御機構2134も含む。制御弁2132は、逆止弁2136に連結され、これはまたPSlすなわち第1圧力センサ2138に
連結される。或る場合には、ブロワ2130の動作は、第1圧力センサ2138によって感知された圧力状態に基づくことができる。呼気逆止弁2136および第1圧力センサ2138は、真空ライン2140に動作結合しており、これはまた吐出フィルタ2142に連結されている。陽圧供給機構2129は、吐出フィルタ2142にも連結されている。ここに示されるように、吐出フィルタ2142は、接続機構2144、たとえば気管チューブまたはマスクに連結される。接続機構2144は、また患者もしくは個人に動作結合している。
【0147】
吸気構成において第2制御弁2132は、オフにされて開き、第1制御弁2126は、オンにされて閉じる。吸気陽圧ブロワ2112は、オンにされて動作を開始できる。たとえばブロワは、何らかの慣性を有してよく、制御弁を介して呼吸を開始する前にブロワの運転をスタートして、制御弁が開くと直ちに流れを開始できるようにすることが可能である。陰圧呼気ブロワ機構2130は、オフにされる。或る実施形態に従い、いずれかの制御弁をオフにして、装置がa)呼吸を提供するか、またはb)胸腔内圧調整器治療を提供するのを容易にすることが有用であり得る。ブロワをオフにする手順は、事例ごとに異なってよい。さらに或る場合に吸気構成の諸動作は、非常に近接して、たとえば20ミリ秒以内に起きてよい。
【0148】
ある実施形態に従う呼気構成において、第2制御弁2132は、オンにされて閉じ、第1制御弁2126は、オフにされて開く。吸気陽圧ブロワ2112は、オフにされる。陰圧呼気ブロワ機構2130は、オンにされて動作を開始できる。或る場合に呼気構成の諸動作は、非常に近接して、たとえば20ミリ秒以内に起きてよい。図21は、換気装置または換気動作に関連する諸特徴を含み、または包含してよい。たとえば或る場合には、陰圧呼気ブロワ機構2130を除くすべての要素が換気装置に関連してよい。図21の諸特徴は、図17に示す換気装に関連付けられてよい。或る実施形態に従う空気圧の観点から、図17の換気装置1750は、陰圧呼気ブロワ機構2130を除いて図21と内部的に類似してよい。したがって換気装置1750は、陰圧呼気ブロワ機構2130を別として図21の諸特徴と置き換えることが可能であろう。
【0149】
<医学的条件および補充療法>
本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者の治療に使用するためによく適している。さらに例示的な技術は、低血液循環または低血圧治療の間、患者の所要流体量を減らすために使用できる。或る場合にこれらのシステムと方法は、患者の微小循環を増大させ、または低微小循環の患者を治療するために採用できる。随意にこれらのシステムと方法は、患者の薬剤循環を増進するために使用できる。例示的な技術は、薬剤治療と組合わせて使用できる。或る解決策に従い、胸腔内圧調整プロトコルと組合わせて、または胸腔内圧調整プロトコルを施すことに加えて患者に心肺蘇生プロトコルが施される。
【0150】
本発明の実施形態は、さらに患者の流体状態を評価するための方法を包含し、これは患者に胸腔内圧調整プロトコルを施し、血圧に与える影響を評価することを含む。血圧が急速に上昇した場合には、患者は、静脈量補充療法を受けることができる。或る場合には、静脈量補充療法は、晶質液の投与を含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、膠質液の投与を含んでよい。
【0151】
ある実施形態に従い、胸腔内圧調整は、循環を増進し、こうしてより多くの血液と低流量状態で投与された薬剤をより効果的で安全に循環させる手段を提供することができる。胸腔内圧調整療法によって低血液状態で循環の増大が提供されるため、薬剤は、より速く
循環し、多くの場合によって少ない用量を投与できる。こうして胸腔内圧調整と薬剤療法を組合わせると、特に臨床的に有用であり得る。たとえば心肺蘇生の間に循環を増進するために胸腔内圧調整療法を用いると、通常血圧を危険なレベルまで下げる恐れを有する薬剤、たとえばニトロプルシド・ナトリウムを投与する手段が提供される。ショック状態を経験した患者には、さらに循環を増進するためにバソプレシンやエピネフリンなどの薬剤を低用量で投与できる。バソプレシンやエピネフリンを多量に投与すると、顕著な悪影響を及ぼす可能性がある。他の例では、低血圧の治療で投与されるエストロゲンおよびプロゲステロンの効果が、胸腔内圧調整療法によって増大する。特に脳への循環が増加して効果が高まる。
【0152】
<圧力センサ配置とブロワ>
本発明の実施形態は、呼吸制御のための独特の圧力センサ配置と、真空モードに対する独特のブロワ構成を提供して、ブロワをオンにして準備することで、随意にフィードバック制御ループを使用して、呼気抵抗を制御できるようにする。
【0153】
引続き図21を参照して、胸腔内圧調整(IPR)システム2100は、呼吸制御で使用するために種々の位置に圧力センサを含むことができる。随意に圧力センサは、システムに何らかのレベルの冗長性を提供してよい。胸腔内圧調整システム2100は、吸気と呼気分岐圧の両方の圧力監視を提供し、循環補助モードにあるときに呼気終末圧を低大気圧レベルに能動的に制御するように構成できる。胸腔内圧調整システム2100は、欠陥を有するセンサによって引起こされる恐れを有する患者損傷を保護するために、圧力センサ冗長性の使用を組込むことができる。装置に圧力変換器を注意深く配置することで、安全冗長性、および患者回路2141の呼気分岐2141Eと吸気分岐2141Iの監視の目標を達成することが可能である。図21に示されているように、第1圧力センサ2138は、呼気分岐2141Eの圧力を監視するように動作でき、第2圧力センサ2128は、吸気ライン2141Iの圧力を監視するように動作できる。或る場合に、呼気分岐2141E上に、またはこれに連通して配置された圧力センサ2138は、循環補助モードまたは処置において能動的呼気機能を監視および制御するために使用できる。患者の気道の冗長的安全監視を常時維持するために、圧力センサは、呼吸回路2141がマニホールドまたは装置に接続されたときに、各々の圧力センサまたは変換器が呼吸回路の特定の側(たとえば呼気側2141Eまたは吸気側2141I)を監視するように配置されており、1台の変換器は、フィードバック制御ループのために使用でき、別の1台の変換器は、冗長的安全監視機能のために使用できる。変換器をこのように配置することで、たとえば4台の変換器を含み、2台の変換器は、回路の吸気側にあり、2台の変換器は、回路の呼気側にあるシステムではなく、むしろ2台の変換器を制御と安全冗長性のために使用することが可能になる。本明細書に記載された2台の変換器システムによって圧力変換器位置と呼吸回路の接続ポイントが直接連通することが可能になる。比較において、圧力変換器位置と呼吸回路の接続ポイントが直接連通できないようなやり方で変換器が配置されたなら、4台の変換器が必要であろう。圧力センサ位置は、図21に示す空気回路図で詳細に示されている。センサは、PSlおよびPS2で表示され、PSlである第1圧力センサ2138は、呼気分岐2141Eを監視し、PS2である第2圧力センサ2128は、吸気ライン2141Iを監視する。
【0154】
換気サイクルの呼気相は、機械的換気の副次的な焦点に過ぎない。機械的換気の主要な焦点は、患者の肺に空気を送込むことにあり、肺から空気をどのように出すかにはそれほど焦点が置かれない。機械的換気装置の呼気分岐は、受動的呼気流を可能にして吸気1回換気量を除去する程度まで空気流抵抗を減らすことを目標として設計され得る。呼気流に作用する機械的換気装置で共通に見出されるもう1つの特徴は、終末呼気陽圧(PEEP)を加えることである。終末呼気陽圧と低抵抗の流路の設計を除けば、機械的換気において呼気流は、ほとんど無視されてきた。現在、幾つかの換気装置は、供給される1回換気
量の自然放出を増大させるために、呼気陰圧の生成能力を制限している。本発明の実施形態に従う治療システムは、陰圧を生成して呼気流を増進する、ブロワを用いて呼気流を豊富化する制御を提供し、これは或る場合にはプライミング処置に関連付けられてよい。サーボ制御された呼気圧源を使用すると、呼気流の広範な制御が可能となる。サーボ制御された呼気圧によって、装置は、多様なレベルの終末呼気圧で胸部真空を生成でき、圧力プロファイルを吸気終末圧から終末呼気圧に変化させる。
【0155】
本発明の実施形態は、独特の二分岐回路を有する治療システムを提供する。図21に示されているように、吸気流路と呼気流路は、治療システムもしくはマニホールドから二重分岐患者回路2141を通って患者につながっている。2本の分岐2141I、2141Eは、同心的であることができる。たとえばチューブアセンブリは、吸気流路を提供する内側腔と、呼気流路を提供する外側腔とを含むことができる。患者端の接続は、標準22mm雌形円錐ISO継手を含むことができる。治療装置側の接続は、装置内に収容されたマニホールドシステムに直接取付けることができる。治療装置側の接続は、同心的に向けられた1対の円錐継手を含むことができる。この接続構成によって、看護者は、吸気回路分岐と呼気回路分岐の両方を1回の動作で同時に接続することができる。その上、この配置構成は、看護者が吸気分岐と呼気分岐を不注意に混同するのを防ぐことができる。さらに本明細書の別の箇所で説明されているように、吸気流路と呼気流路は、2面マニホールドシステムに組付けた2個のソレノイド弁(各流れ方向に1個)で制御できる。流路は、開口部の外側リングで弁に入り中心腔で弁を出る。吸気圧と呼気圧は、マニホールドの各面に配置された空気圧ポートを通して監視できる。さらに本明細書の別の箇所で説明されているように、吸気面は、陽圧ブロワから出る新鮮空気と、酸素の流量を制御する別個の弁付きマニホールドから出る酸素を集めて結合できる。新鮮空気と酸素の吸入位置に逆止弁を配置して、逆方向に流れるのを妨げることができる。弁が開くと、流路は、結合された酸素と空気を患者回路に接続された中心腔に通して流す。患者回路は、しばしば同心的に配置され、典型的に吸気ガスと呼気ガスは、混ざらないため、吸気流路は、患者回路に接続する前にマニホールドの呼気面を通る。これはスライドシールによって達成され、1つのコンポーネントが他のコンポーネント内に入れ子式に入り、それらの間でOリングを半径方向に圧縮する。呼気ガスは、患者回路の外側腔を通ってマニホールドに入る。呼気流路の入口に逆止弁が配置されて、呼気ガスが患者によって再び呼吸されるのを妨げる。弁は、吸気流に類似のやり方で開閉して呼気ガスの流れを制御する。ガスは、開口部の外側リングを通って弁に入り、中心腔を通って出る。弁が開くと流れは、マニホールドの呼気面から陰圧ブロワに達し、ここで大気に排出される。マニホールドの呼気面と陰圧ブロワの接続は、吸気ガスについて説明されたものに類似のOリングシール機構を利用する。
【0156】
ある実施形態において治療装置は、外部医療装置に通信する通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、たとえばブルートゥースアセンブリ、ラジオ周波数アセンブリ、または選択された帯域もしくは所望の帯域で通信する通信アセンブリを含むことができる。外部医療装置は、除細動器または自動胸部圧縮器などであってよい。そのような通信は、胸腔内陽圧と胸腔内陰圧の供給変化を除細動ショックおよび/または胸部圧縮および解除に同期化させるために用いることができる。
【0157】
<マニホールドシステムと方法>
図22A〜図22Gは、本発明の実施形態に従うマニホールドシステムと方法の諸特徴を示す。例示的なマニホールドシステムは、吸気ガスと呼気ガスを分離する2面マニホールドを提供できる。図22Aに示されているように、マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁
アセンブリ2250も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、マニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240を開くと、吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、吸気制御弁アセンブリ2240を閉じると吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。呼気制御弁アセンブリ2250を作動して、マニホールドシステム2200に入る呼気ガスの流れを制御する。たとえば呼気制御弁アセンブリ2250を開くと呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、呼気制御弁アセンブリ2250を閉じると呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に呼気制御弁アセンブリ2250は、ソレノイド弁を含む。呼気制御弁アセンブリ2250は、多様な仕方で動作でき、たとえば真空機構または陰圧ブロワに結合して陰圧治療の提供を促進し、または終末呼気陽圧治療の提供を促進する。或る場合には、呼気制御弁アセンブリ2250が開放構成にあると、真空機構は、陰圧を引入れて気道圧を減じることができる。代替として、呼気制御弁アセンブリ2250は、気道に所定量の陽圧が残っていると閉じることができ、こうして終末呼気陽圧プロトコルを提供する。したがって同じ制御弁アセンブリ2250が2つの異なる機能を提供するように動作できる。
【0158】
患者に供給するための吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。したがって、空気吸入ポート2212は、たとえばチューブなどの流体通路手段を介して空気源に流体連通でき、酸素吸入口2222は、チューブなどの流体通路手段を介して酸素源に流体連通できる。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。呼気ガスは、マニホールドシステム2200を通過して、たとえば中心インタフェース2220の呼気ガス排出ポート2224から出て陰圧ブロワに向かうことができる。呼気ガス排出ポート2224は、たとえばチューブなどの流体通路手段を介して陰圧ブロワに流体連通できる。
【0159】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で圧力を評価するための1つ以上のサンプリングポートも含んでよい。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、呼気圧サンプリングで用いる呼気サンプリングポート2226を含む。同様に、遠位インタフェース2210は、吸気圧力サンプリングで用いる吸気サンプリングポート2214を含む。
【0160】
或る場合には、マニホールドシステム2200は、持続的気道陽圧(CPAP)アセンブリ2260も含んでよい。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、持続的気道陽圧アセンブリ2260に連結された持続的気道陽圧ポート2228を含む。持続的気道陽圧アセンブリ2260の動作は、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を患者に施すことを促進できる。
【0161】
図22Bは、マニホールドシステム2200の別の図を示す。ここに示されているように、マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。中心インタフェース
2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよい。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Bに示されているように、患者回路インタフェース2232は、内側腔もしくは吸気腔2232aと、外側腔もしくは呼気腔2232bとを有する同心的構成を見せている。内側腔2232aは、マニホールドから出た吸気ガスを患者に向かって運ぶように動作し、外側腔2232bは、患者から出た呼気ガスをマニホールドに運び入れるように動作する。典型的に、吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で、吸気ガスのための第1通路と呼気ガスのための第2通路を有するチューブアセンブリを介して送られる。たとえば吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で同心的チューブアセンブリを介して送ることができる。同心的チューブアセンブリは、内側腔2232aに流体連通する内側通路、および外側腔2232bに流体連通する外側通路を含むことができる。
【0162】
図22Cは、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、マニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240を開くと、吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、吸気制御弁アセンブリ2240を閉じると吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。
【0163】
患者に供給するための吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。呼気ガスは、マニホールドシステム2200を通過して、たとえば中心インタフェース2220の呼気ガス排出ポート2224から出て陰圧ブロワに向かうことができる。呼気ガス排出ポート2224は、チューブなどの流体通路手段を介して陰圧ブロワに連通できる。
【0164】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で圧力を評価するための1つ以上のサンプリングポートも含んでよい。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、呼気圧サンプリングで用いる呼気サンプリングポート2226を含む。たとえば呼気サンプリングポート2226は、近位インタフェース2230と中心インタフェース2220との間に画定された呼気面もしくは呼気室2202に存在する呼気圧をサンプリングするために使用できる。同様に、遠位インタフェース2210は、吸気圧サンプリングで用いる吸気サンプリングポート2212を含む。たとえば吸気サンプリングポート2212は、遠位インタフェース2210と中心インタフェース2220との間に画定された吸気面もしくは吸気室2204に存在する吸気圧をサンプリングするために使用できる。
【0165】
ある実施形態に従い、吸気サンプリングポート2214または呼気サンプリングポート2226で感知された圧力または流量は、マニホールド全体の流体流量を決定するために使用できる。
【0166】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で流体の流れを調節または制御するための1つ以上の逆止弁も含んでよい。図22Cに示されているように、マニホールドシステム2200は、酸素吸入口2222を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する酸素逆止弁2223を含んでおり、酸素は、矢印2222Aで示された方向で吸入口2222を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2222Bで示された方向に吸入口2222を介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。同様に、マニホールドシステム2200は、空気吸入口2212を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する空気逆止弁2213を含んでおり、空気は、矢印2212Aで示された方向で吸入口2212を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2212Bで示された方向に吸入口2212を介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。さらにマニホールドシステム2200は、患者回路インタフェース2232を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する患者回路逆止弁すなわち呼気逆止弁2233を含んでおり、流体は、矢印2232b(i)で示される方向に外側腔もしくは呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2232b(ii)で示す方向に外側腔もしくは呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。
【0167】
或る場合に、マニホールドシステム2200は、持続的気道陽圧(CPAP)アセンブリ2260も含んでよい。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、持続的気道陽圧アセンブリ2260に連結された持続的気道陽圧ポート2228を含む。吸気面もしくは吸気室2204は、陽圧ブロワから出る新鮮空気と、酸素の流量を制御する別個の弁付きマニホールドから出る酸素を集めて結合するように動作できる。新鮮空気と酸素の吸入位置の両方に逆止弁2213と2223が配置され、それぞれ逆方向に流れるのを妨害または阻止する。逆止弁2242が開くと、流路は、矢印Aで示されているように、結合された酸素と空気を、患者回路に接続された中心腔2221に通して流す。或る実施形態に従い、患者回路は、同心的に配置されていて吸気ガスと呼気ガスは、混ざることがなく、吸気流路は、患者回路に接続する前にマニホールドの呼気面を通る。これらの目的は、スライドシールを用いることによって達成され、1つのコンポーネントが他のコンポーネント内に入れ子式に入り、それらの間でOリングを半径方向に圧縮する。図22Cに示されているように、Oリングは、中心インタフェース2220の中心腔2221と遠位インタフェース2210の中心腔2242との間に配置できる。さらに本明細書の別の箇所で説明されたように、呼気ガスは、患者回路の外側腔2232bを通ってマニホールドに入る。呼気流路の入口に逆止弁2233が配置されて、呼気ガスが患者によって再び呼吸されるのを妨げる。弁2250は、吸気流に類似のやり方で開閉して呼気ガスの流れを制御する。ガスは、開口部2251の外側リングを通って弁2250に入り、中心腔2252を通って出る。弁2250が開くと、流れは、マニホールドの呼気面2202から陰圧ブロワに達し、ここで大気に排出される。マニホールドの呼気面2202と陰圧ブロワの接続は、吸気ガスについて説明されたものに類似のOリングシール機構を使用できる。たとえばOリングは、オリフィス2252とフランジ2224のオリフィス内径との間に配置できる。
【0168】
図22Dは、マニホールドシステムによって提供される吸気流路2201の諸特徴に加えて、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の一部の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース
(図示せず)、および遠位インタフェース2210と近位インタフェースの間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、種々の流体源からマニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240が開くと、矢印2212iiと2222iiで示されているように吸気ガスが吸気面もしくは吸気室2204から出ることと、矢印2212iiiと2222iiiで示されているように吸気ガスが遠位インタフェース2210に向かって環流することを促進し、および矢印2212ivと2222ivで示されているように呼気ガスが中心インタフェース2220の吸気供給ポート2221に入るのを促進する。反対に、吸気制御弁アセンブリ2240が閉じると、たとえば酸素源および空気源から出た吸気ガスがマニホールドシステム2200に入るのを阻止する。或る場合には、吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。
【0169】
患者に供給される吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Dに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で流体の流れを調節または制御するための1つ以上の逆止弁も含んでよい。たとえばマニホールドシステム2200は、酸素吸入口2222を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する酸素逆止弁2223を含んでおり、酸素は、矢印2222iと2222iiで示された方向では吸入口2222を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢反対方向では吸入口2222を介してマニホールドシステム2200から流出するのを妨害または阻止される。これに関連して、制御弁2240は、矢印2212iiと2222iiで示されているように吸気面もしくは吸気室2204から出て、矢印2212iiiと2222iiiで示されているように弁2240を通り、さらに矢印2212ivと2222ivで示されているように中心インタフェース2220の吸気供給ポート2221を通り、近位インタフェースの患者回路インタフェースの吸気腔すなわち内部腔を介して患者に向かう流れを制御するように動作する。このように吸気制御弁2240を選択的に開閉して、患者への空気と酸素の流れを調節する。図22Dに例示されているように、流路は、開口部の外側リング2241で弁に入り中心腔2242で弁を出る。マニホールドシステム2200は、空気吸入口2212を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する空気逆止弁2213を含んでおり、空気は、矢印2212iと2212iiで示された方向では吸入口2212を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、反対の方向では吸入口2212を介してマニホールドシステム2200から流出することが妨害または阻止される。動作中、吸気室2204内で空気と酸素は、随意に所望の空気・酸素比で混合でき、吸気制御弁2240および吸気供給ポート2221を通り、患者回路インタフェースの内側腔もしくは吸気腔を介して患者に達する。或る場合には、マニホールド内への空気と酸素の導入は、独立に制御できる。システムは、流量または圧力または両方を測定するセンサを含んでよい。患者に施す吸気ガスの制御は、そのような流量または圧力の組合せに基づくことができる。
【0170】
図22Eは、マニホールドシステムによって提供される呼気流路2203の諸特徴に加えて、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の一部の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース(図示せず)、近位インタフェース2230、および遠位インタフェースと近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。呼気制御弁アセンブリ2250を作動すると、マニホールドシステム2200に入る呼気ガスの流れを制御するように動作する。たとえば呼気制御弁アセンブリ2250が開くと、矢印2232iと
2232iiで示されているように呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、呼気制御弁アセンブリ2250が閉じると、呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合には、呼気制御弁アセンブリ2250は、ソレノイド弁を含む。
【0171】
患者から出る呼気ガスは、矢印2232iで示されているように、最初にインタフェース2230の患者回路インタフェース2232の呼気腔すなわち外側腔2232bを通ってマニホールドシステム2200を循環できる。マニホールドシステム2200は、近位インタフェースで流体の流れを調節または制御するための逆止弁も含んでよい。たとえばマニホールドシステム2200は、回路インタフェース2232を通る逆流を妨害または阻止するように動作する呼気逆止弁2233を含んでおり、矢印2232iと2232iiで示された方向では呼気は、患者から出て回路インタフェース2232の呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200に流入できるが、反対の方向では流体は、回路インタフェース2232の呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200から流出することが妨害または阻止される。これに関連して、制御弁2250は、矢印2232iiで示されているように呼気面もしくは呼気室2202から出て、矢印2232iiiで示されているように弁2250を通り、さらに矢印2232ivで示されているように中心インタフェース2220の呼気排出ポート2224を通る流れを制御するように動作する。このように呼気制御弁2250を選択的に開閉して、患者から出る呼気ガスの流れを調節する。図22Eに例示されているように、流路は、開口部の外側リング2251で弁2250に入り、中心腔2252で弁から出る。
【0172】
図22Fは、本発明の実施形態に従う患者回路インタフェースの諸特徴を示す。患者回路インタフェース2232は、内側腔もしくは吸気腔2232aと、外側腔もしくは呼気腔2232bとを有する同心的構成を見せている。内側腔もしくは吸気腔2232aは、矢印Aで示されているように吸気ガスを患者に向かって運ぶように動作し、外側腔もしくは呼気腔2232bは、矢印Bで示されているように患者から出た呼気ガスを運ぶように動作する。典型的に、吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で、内側腔2232aに流体連通する内側通路もしくは吸気通路、および外側腔もしくは呼気腔2232bに流体連通する外側通路もしくは呼気通路を有するチューブアセンブリを介して送られる。例示的な実施形態に従い、治療システムは、患者回路上の相手の円錐継手に係合する同心的円錐継手を有するチューブ接続を含んでよく、こうして患者回路の吸気分岐と呼気分岐をいずれも同時に急速かつ直感的に取付けることが提供される。同心的配置構成によって看護者は、患者回路を1回の動作で患者に装着でき、しかも片手で行うことができる。
【0173】
図22Gは、本発明の実施形態に従うハンドル2280を有するケースもしくはボンネット2270の諸特徴を示す。ケース2270は、本明細書に記載されたマニホールドシステムを保持または受容するように構成できる。ここに示されるように、ハンドル2280は、ケース2270の裏側2272を包み込んでいる。この配置構成によって装着ポイントが強化されて、ケース2270の上背部コーナー2274に衝撃保護を提供できる。或る実施形態に従い、ハンドル2280は、ケースの裏側を約1インチの距離で包み込んでいる。ハンドル2280は、下側2284を有する装着点2282を含んでよい。ケース2270は、流体をケース内に受容するように構成された吸入ポート2286を含んでよい。たとえば吸入ポート2286は、冷却空気をケース内に受容するように構成できる。或る場合にハンドル2280は、1つ以上の冷却空気フィルタ(図示せず)を保持または受容するための保持部もしくは凹部2288を提供してよい。随意にハンドル2280は、ケース2270上に配置された弾性フラップとして構成されてよい。或る場合には、ハンドル2280は、準弾性材料を含むことができ、ケース側面の円弧状切欠部の下側に装着できる。或る実施形態に従い、ハンドル材料は、運ぶために掴むと外側に曲がるよう
に十分柔軟であることができる。ハンドルが軟質材料を含む場合、軟質材料は、ケースまたはケースに結合するかケース内に包含されたその他の構造部材、たとえばマニホールドシステムの要素に対して衝撃保護を提供できる。或る実施形態において、保護ケースは、取外可能である。ケースは、衝撃および浸水に対する保護を提供でき、こうしてマニホールドを好ましくない力、ショックおよび水による損傷から遮蔽する。
【0174】
或る場合にケースは、複数のハンドルを有してよい。たとえばケースは、第1ハンドルをケースの左側、第2ハンドルをケースの右側を有することができる。ハンドルは、適度に軟質のプラスチックから作られ、使用していないときには装置の側面に平らに当接できる。ハンドルとして使用するか、または固定するための装着ポイントとして使用するときにはハンドル材料は、容易に掴めるように十分柔軟である。ハンドルは、また装置の包囲体内で循環すべき冷却空気の吸入口でフィルタを隠して保持できる。吸入口の位置のために装置は、縦に置いたときには湿気侵入(たとえば雨)から保護され得るが、何らかのケースで浸漬され、または表を下にして置くことが許される場合には保護しなくともよい。
【0175】
図23は、本発明の実施形態に従う治療システムで使用するためのユーザインタフェース2300の諸特徴を示している。さらに治療システムの使用に動作に関する追加の詳細が、図23を参照して理解され得る。ここに示されるように、ユーザインタフェース2300は、治療システムの動作または使用の種々のモードに対応する幾つかのサブインタフェースを含む。たとえばインタフェース2300は、循環補助モードサブインタフェース2310、換気モードサブインタフェース2320、および持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェース2330を含む。循環補助モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの陰圧を提供するように構成されている。持続的気道陽圧モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を提供するように構成されており、換気モードにあるとき治療システムは、終末呼気陽圧(PEEP)を伴い、または伴わずに陽圧換気を提供するように構成されている。或る場合に治療システムは、二相性気道陽圧(BIPAP)治療を提供し、吸気気道陽圧(IPAP)と、呼気を容易にするためのより低い呼気気道陽圧(EPAP)を含む2種類のレベルの圧力を施すように構成できる。したがって、ユーザインタフェース2300は、二相性気道陽圧モードサブインタフェース(図示せず)も含んでよい。
【0176】
ユーザインタフェース2300は、幾つかの革新的な特徴を備えた独特の設計を見せる。ここに表現されているように、モードサブインタフェース2310、2320、および2330は、円形レイアウトで提供されている。ユーザインタフェース2300は、次の2段階のスタートプロセスを容易にする。循環補助モードでは、ユーザは、最初に治療される患者の体格(すなわちそれぞれ大型成人、中型成人、小型成人、または小児)に応じて体格アイコン2312a、2312b、2312c、2312dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。選択すべき体格アイコンを決定するとき、ユーザは、インタフェースに提示される患者体格凡例2350を参照できる。ここに示されるように、患者体格凡例2350は、身長が5’10”(5フィート10インチ。1.78m)〜6’3” (6フィート3インチ。1.90m)の患者を
治療するときには大型アイコンを選択するのが適切であり、身長が5’4”(1.62m)〜5’9”の患者を治療するときには中型アイコンを選択するのが適切であり、身長が4’8” (1.42m)〜5’3”の患者を治療するときには小型アイコンを選択する
のが適切であり、身長が4’(1.21m)〜4’7”の患者を治療するときには小児体格アイコンを選択するのが適切であることを指示する。換気モードでは、ユーザは、最初に治療される患者の体格(すなわちそれぞれ大型成人、中型成人、小型成人または小児)に応じて体格アイコン2322a、2322b、2322c、2322dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。持続的気道陽圧モードでは、ユーザは、最初に所望の圧力値(たとえば5cmH2O、7.5cmH2O
、10cmH2Oまたは15cmH2O)に応じて圧力値アイコン2332a、2332b、2332c、2332dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。したがって、インタフェースは、直感的で理解しやすく、こうして好適なユーザビリティーを提供し、ユーザは、所望の目的を達成することができる。ユーザインタフェース2300は、患者の気道内で1つ以上の圧力センサを用いて決定されるリアルタイムの気動陽圧と気道陰圧を表示できる圧力インジケータ2302も含むことができる。
【0177】
ユーザインタフェース2302は、また基本モードサブインタフェース2304と高度モードサブインタフェース2306を提供するように構成できる。ここに示されるように、基本モードは、ディスプレイの上の部分(たとえば円形が描かれている場所)および高度モードは、ディスプレイの下の部分に現れている。或る実施形態に従い、基本モードを採用するとき、オペレータは、どの治療モード(たとえば循環補助、換気、または持続的気道陽圧)を使用するか決定し、患者の体格(たとえば大型、中型、小型または小児)に関して決定する。基本モードでは、他の治療システムのパラメータ、たとえば呼吸速度、1回換気量、終末呼気陽圧のレベル、および陰圧のレベルを、既定値としてあらかじめプログラムできる。高度モードを採用する実施形態に従い、オペレータは、ある特定の治療パラメータ、呼吸速度、1回換気量、終末呼気陽圧のレベルおよび陰圧のレベル(循環補助レベル)の実装に関して、随意に手動制御によって決定および調節できる。たとえばユーザは、呼吸速度コントロール2306a(i)を調節することによって呼吸速度(bpm)を調節でき、呼吸速度は、呼吸速度ディスプレイ2306a(ii)上に表示され得る。同様にユーザは、1回換気量コントロール2306b(i)を調節することによって1回換気量(ml)を調節でき、1回換気量は、1回換気量ディスプレイ2306b(ii)上に表示され得る。同様にユーザは、終末呼気陽圧(PEEP)コントロール2306c(i)を調節することによって終末呼気陽圧(PEEP)(cmH2O)を調節でき、終末呼気陽圧(PEEP)は、終末呼気陽圧(PEEP)ディスプレイ2306c(ii)上に表示され得る。さらにユーザは、循環補助コントロール2306d(i)を調節することによって循環補助(cmH2O)を調節でき、循環補助は、循環補助ディスプレイ2306d(ii)上に表示され得る。或る場合に、インタフェース2300は、ロックアウト機構2308を含んでおり、オペレータまたはその他の個人は、機構2308を作動して、高度モードの使用をロックアウトすることができる。
【0178】
ある実施形態において、治療システムは、測定された患者パラメータ(たとえば終末呼気二酸化炭素または気管二酸化炭素、心拍出量、経胸腔インピーダンス、筋酸素供給、筋pHなど)を循環増大の指標として用いて、装置が自動的にフィードバックループで気道陰圧のレベルを調整するように構成できる。或る場合に、治療システムの重量は、12ポンド(5.4kg)未満となるように構成できる。治療システムは、特注ソフトウェアを組込むか、または特注ソフトウェアで制御され得る。
【0179】
或る場合には、外部ユーザインタフェース表面は、多数の目的に役立ち得る透明なプラスチック膜質材料で覆われてよい。この膜は、ユーザインタフェースを湿気から保護し、表面は、保護されていないコントロールパネルよりも簡単に清掃できる。このカバーは、装置の周囲にクッションを提供できる材料から作られてよい。
【0180】
低圧酸素サブインタフェース2380は、たとえば治療システムが低圧酸素源に連結されるときに、オペレータが低酸素処置を選択するための入力を含むことができる。これに関連して、吸入酸素濃度サブインタフェース2390は、たとえば治療システムが高圧(たとえば15psi。0.1MPa)酸素源に連結されるときに、オペレータが吸入酸素濃度処置を選択するための入力を含むことができる。吸入酸素濃度プロトコルの間、システムは、患者に施される酸素のパーセンテージを制御するように動作できる。たとえばシ
ステムは、酸素100%、酸素40%と空気60%の混合、酸素21%と空気79%の混合などを供給するように選択できる。随意にパーセンテージは、患者の必要に基づき選択できる。
【0181】
図24は、例示的なモジュールシステムの単純化されたブロック図であり、モジュールシステム2400の個々のシステム要素を個別的または統合的に実装する仕方を例解している。モジュールシステム2400は、本発明の実施形態に従う治療システムの一部であるか、またはこれに接続されてよい。モジュールシステム2400は、オペレータ、患者または両者からの入力もしくは情報を受取り、出力もしくは情報を胸腔内圧治療の一部として表示するのによく適している。ここに示されるモジュールシステム2400は、バスサブシステム2402を介して電気的に連結されたハードウェア要素を含んでおり、これには1つ以上のプロセッサ2404、1つ以上の入力装置2406、たとえばユーザインタフェース入力装置、1つ以上の出力装置2408たとえばユーザインタフェース出力装置、ネットワークインタフェース2410、およびロードシステム2442から信号を受取り、これに信号を送ることができるロードシステムインタフェース2440が含まれる。
【0182】
ある実施形態において、モジュールシステム2400は、現在はメモリ2414のワーキングメモリ2412内に置かれて示されているソフトウェア要素も包含し、これにはオペレーティングシステム2416およびその他のコード2418、たとえば本発明の方法を実現するために設計されたプログラムが含まれる。
【0183】
同様に、ある実施形態においてモジュールシステム2400は、本発明の種々の実施形態の機能性を提供する基本プログラミングおよびデータ構造を記憶できる記憶サブシステム2420も含んでよい。たとえば本発明の方法の機能性を実現するソフトウェアモジュールは、本明細書に記載されているように、記憶サブシステム2420に記憶されてよい。これらのソフトウェアモジュールは、一般的には1つ以上のプロセッサ2404によって実行される。分散環境においては、ソフトウェアモジュールは、複数のコンピュータシステムに記憶され、複数のコンピュータシステムのプロセッサによって実行され得る。記憶サブシステム2420は、メモリサブシステム2422とファイル記憶サブシステム2428を含むことができる。メモリサブシステム2422は、多数のメモリを含んでよく、これにはプログラム実行中に命令とデータを記憶するためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)2426、および特定の命令が記憶されているリードオンリーメモリ(ROM)2424が含まれる。ファイル記憶サブシステム2428は、プログラムとデータファイルのための永続的な(非揮発性)記憶を提供でき、随意に患者、治療、評価またはその他のデータを具体化した有形記憶媒体を含んでよい。ファイル記憶サブシステム2428は、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブおよび関連する取外可能な媒体、コンパクトデジタル・リードオンリーメモリ(CD−ROM)ドライブ、光学式ドライブ、DVD、CD−R、CDRW、取外可能なソリッドステートメモリ、または取外可能な媒体カートリッジまたはディスクなどを含んでよい。1つ以上のドライブは、モジュールシステム2400に連結された他の部位で接続されたコンピュータ上の遠隔位置に配置されてよい。本発明の機能性を実現するモジュールは、ファイル記憶サブシステム2428によって記憶されてよい。或る実施形態において、ソフトウェアまたはコードは、モジュールシステム2400が通信ネットワーク2430に通信するのを可能にするためのプロトコルを提供しよう。随意にそのような通信は、ダイヤルアップまたはインターネット接続通信を含んでよい。
【0184】
システム2400は、本発明の方法の種々の特徴を実現するように構成できることが認識される。たとえばプロセッサのコンポーネントもしくはモジュール2404は、センサ入力装置もしくはモジュール2432またはユーザインタフェース入力装置もしくはモジ
ュール2406から、生理パラメータ信号、装置パラメータ信号または治療パラメータ信号を受取り、これらの治療信号を出力装置もしくはモジュール2436、ユーザインタフェース出力装置もしくはモジュール2408、ネットワークインタフェース装置もしくはモジュール2410、またはこれらの何らかの組合せに送るように構成されたマイクロプロセッサ制御モジュールであることができる。本発明の実施形態に従う各々の装置もしくはモジュールは、プロセッサまたはハードウェアモジュール、またはこれらの何らかの組合せによって処理されるコンピュータ可読媒体に1つ以上のソフトウェアモジュールを含むことができる。本発明の実施形態を実現するために、一般に使用されている任意の多様なプラットフォーム、たとえばウィンドウズ(登録商標)、マッキントッシュ、およびユニックスは、一般に使用されている任意の多様なプログラミング言語と併せて用いられてよい。
【0185】
ユーザインタフェース入力装置2406は、たとえばタッチパッド、キーボード、マウスなどのポインティングデバイス、トラックボール、グラフィックタブレット、スキャナ、ジョイスティック、ディスプレイに組込まれたタッチスクリーン、音声認識システムなどの音声入力装置、マイクロホン、およびその他のタイプの入力装置を含んでよい。ユーザ入力装置2406は、またコンピュータ実行可能コードを有形記憶媒体または通信ネットワーク2430からダウンロードしてよく、これらのコードは、本発明のいずれかの方法を具体化している。端末ソフトウェアは、時々更新され、必要に応じて端末にダウンロードされてよいことは、認識されよう。一般に「入力装置」という用語の使用は、情報をモジュールシステム2400に入力するための多様な慣用または独自の装置および方法を含むことが意図されている。
【0186】
ユーザインタフェース出力装置2406は、たとえばディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機械、または音声出力装置などの非視覚的ディスプレイを含んでよい。ディスプレイサブシステムは、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネル装置、投影装置などであってよい。ディスプレイサブシステムは、音声出力装置などの非視覚的ディスプレイも提供してよい。一般に、「出力装置」という用語の使用は、情報をモジュールシステム2400からユーザに出力するための多様な慣用または独自の装置および方法を含むことが意図されている。
【0187】
バスサブシステム2402は、モジュールシステム2400の種々のコンポーネントおよびサブシステムを互いに意図された通りに通信させる機構を提供する。モジュールシステム2400の種々のコンポーネントおよびサブシステムは、同じ物理的位置にある必要はなく、分散型ネットワーク内部で種々異なる位置に分散されてよい。バスサブシステム2402は、図式的に単一バスとして示されているが、バスサブシステムの代替的実施形態は、多重バスを利用してよい。
【0188】
ネットワークインタフェース2410は、外部ネットワーク2430またはその他の装置とのインタフェースを提供できる。外部通信ネットワーク2430は、他の関係者と必要または所望の通り通信させるように構成できる。こうして外部通信ネットワーク2430は、モジュールシステム2400から電子パケットを受取り、必要な情報または所望される情報を通りモジュールシステム2400に送返す。そのようなシステム内部のインフラストラクチャ通信リンクを提供することに加えて、通信ネットワークシステム2430は、インターネットなど他のネットワークとの接続も提供でき、有線接続、無線接続、モデム接続および/またはその他のタイプのインタフェース接続を含んでよい。
【0189】
特定の要求に従い相当な変化例が用いられてよいことは、当業者には明白であろう。たとえばカスタマイズされたハードウェアも使用でき、および/または特別の要素をハードウェア、ソフトウェア(アプレットなど携帯ソフトウェアを含む)、または両方に実装で
きよう。さらにネットワーク入力/出力装置など他のコンピュータデバイスとの接続が採用されてよい。モジュールターミナルシステム2400自体は、種々のタイプであってよく、コンピュータターミナル、パーソナルコンピュータ、携帯コンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、または他の任意のデータ処理システムを含む。コンピュータとネットワークは、本質的に変化し続けるものであるため、図24に示すモジュールシステム2400の説明は、本発明の1つ以上の実施形態を説明するための具体例として意図されたものに過ぎない。モジュールシステム2400の他の多くの構成が可能であり、図24に示すモジュールシステムより多い、または少ないコンポーネントを有する。モジュールシステム2400の任意のモジュールもしくはコンポーネント、またはそのようなモジュールもしくはコンポーネントの任意の組合せを、本明細書で開示された実施形態の何らかの治療システムに連結または統合するなどして接続できる。これに関連して、上述した任意のハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントは、他の位置で使用される評価システムまたは治療システムと統合でき、またはこれらとインタフェース接続できる。
【0190】
ある実施形態において、モジュールシステム2400は、入力モジュールで患者の生理的パラメータを受取るように構成できる。生理的パラメータデータは、評価モジュールに送られ、そこで生理的プロファイルを決定できる。プロファイルは、出力モジュールを介してシステムに出力され得る。或る場合にモジュールシステム2400は、たとえば治療モジュール治療を用いることで、生理的パラメータまたはプロファイルに基づき患者のための治療プロトコルを決定できる。治療は、出力モジュールを介してシステムユーザに出力できる。随意に出力装置によって治療の特徴を決定して、治療システムまたは治療システムのサブデバイスに送ることができる。年齢、体重、性別、治療歴、病歴などを含む患者に関する任意の多様なデータをモジュールシステムに入力できる。そのようなデータに基づき、治療計画または、診断評価のパラメータを決定できる。
【0191】
図25Aと図25Bは、本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システム2500の諸特徴を示す図である。或る実施形態に従い、胸腔内圧調整システム2500は、内部真空源と陽圧換気装置のいずれも組込んだ完全自動装置を有する。胸腔内圧調整システム2500は、たとえば循環補助モードサブインタフェース2510、換気モードサブインタフェース2520、および持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェース2530を介して、循環補助モード、換気モードまたは持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサを含むことができる。循環補助モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの陰圧を供給するように構成される。持続的気道陽圧モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を供給するように構成され、換気モードにあるとき治療システムは、終末呼気陽圧(PEEP)を伴い、または伴わずに陽圧換気を提供するように構成されている。或る場合に治療システムは、二相性気道陽圧(BIPAP)治療を提供し、吸気気道陽圧(IPAP)と、呼気を容易にするためのより低い呼気気道陽圧(EPAP)を含む2種類のレベルの圧力を施すように構成できる。したがって、ユーザインタフェース2500は、二相性気道陽圧モードサブインタフェース(図示せず)も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、図21〜図24に関して本明細書の別の箇所で説明されているように、インタフェースまたはシステム特徴を含むことができる。
【0192】
或る場合には、胸腔内圧調整システム2500は、多数のモードを備えたブロワベースの可搬式換気装置を包含し、陽圧換気モード(随意に調節可能な終末呼気陽圧を備える)、持続的気道陽圧モード、および循環補助モードを含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、バッテリで給電されてよい。或る場合には、胸腔内圧調整システム2500は、酸素治療を伴い、または伴わずに使用できる。胸腔内圧調整システム2500は、体身長図によって選択する体格アイコンに基づき、随意に予測される体重計算に基づき、所望
する1回換気量および呼吸速度情報であらかじめプログラムされてよい。或る場合に胸腔内圧調整システム2500は、多数の吸気中酸素濃度レベルを施すために使用できる。胸腔内圧調整システム2500は、ボタンを1回押して作動もしくは展開できる多数の展開モードを有する。手動モード(オンオフ)は、医長レベルで無効にできる。胸腔内圧調整システム2500は、持続的気道陽圧を混合、呼吸波形下降(生体模倣)、酸素源または、バッテリ電源、および低酸素状況での自動切替えと統合して実現してよい。
【0193】
胸腔内圧調整システム2500は、ハンドル2580を有するケース2570を含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、流体をケース内に受容するように構成された吸入ポート2586も含んでよい。たとえば吸入ポート2586は、冷却空気をケース内に受容するように構成できる。胸腔内圧調整システム2500は、空気、酸素または両方を患者に向けて送る吸気腔2592と、呼気ガスを患者から引取る呼気腔2594を有する患者回路インタフェース2590も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、少なくとも部分的にケース2570内に包含されたマニホールドアセンブリを含んでよい。胸腔内圧調整システム2500はさらに、たとえばシステムが循環補助モードにあるときには、呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構を含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、たとえばシステムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、たとえばシステムが持続的気道陽圧モードにあるときには、呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、システムに動作結合している1つ以上のセンサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、システムユーザに情報を表示するユーザディスプレイまたはインタフェース2501を含んでよい。ディスプレイ情報は、心肺蘇生治療を施している間の心肺蘇生の質に関係してよい。これに関連して、ディスプレイ情報は、循環パラメータまたは非心肺蘇生治療を施している間に患者において発生する状態に関係してよい(たとえば患者ショックの治療)。
【0194】
以上、本発明について明確さと理解を目的として詳細に説明した。しかしながら、添付の請求項の範囲内で特定の変更および修正が行われてよいことは、認識されよう。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般的には体循環圧および頭蓋内圧の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には実施形態は、低血圧や循環不良を引起こす外傷性脳損傷、失血、およびその他の傷病または治療介入(たとえば手術や麻酔)などの結果として、頭蓋内圧を減少させ、体動脈圧および全身の重要臓器潅流を増加させるための装置と方法とに関係する。実施形態は、低血圧であり重要臓器潅流および酸素供給を維持するために自力呼吸できない患者において、十分な血圧と換気を維持するための手段を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5551420号明細書
【特許文献2】米国特許第5692498号明細書
【特許文献3】米国特許第6062219号明細書
【特許文献4】米国特許第5730122号明細書
【特許文献5】米国特許第6155257号明細書
【特許文献6】米国特許第6234916号明細書
【特許文献7】米国特許第6224562号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】『麻酔』(第3版、編集者:ロン・ミラー、著者:シャピロおよびドラモンド、54章(1990年))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臓器潅流が減少すると、細胞死につながる。体循環圧が低いか、または脳の場合には頭蓋内圧が高いと、いずれも重要臓器潅流を減少させる。それゆえ頭部外傷およびショックは、一般に合衆国において子供と若年成人の罹患および死亡の主因と見なされている。頭部外傷は、しばしば脳の腫脹を引起こす。頭蓋骨は、拡張できないため、脳内で増加した圧力は、死亡または重度の脳損傷を招くことがある。脳腫脹を低減するために過換気およびステロイドの使用を含め、多数の治療法が評価されてきたが、頭蓋内圧を治療し、または脳潅流圧を改善するための効果的な方法は、依然として重要な医療課題である。同様に、低血圧や多臓器損傷および多臓器疾患も臓器潅流を減少させ、これが頭部外傷に結び付く場合には脳内の圧力が増加し、それに伴い脳血流が減少する。これらの患者は、死亡率が極めて高く、同様に主要な医療課題であり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、胸腔内圧、気道圧、気管内圧、および肺内の呼吸ガスの量を調整するための技術を包含する。或る解決策は、有利には、胸部が損傷していないときには頭蓋内圧または眼球内圧を減少させて体循環圧を増加させることを含む。本発明の類似の実施形態は、開胸した患者にも使用できる。回路が開いているので、肺容量と圧力が変化しても胸腔内圧は、変化しないでよい。或る場合には、真空を適用する前に終末呼気陽圧(PEEP)を提供できる。或る場合には、真空を適用した後で終末呼気陽圧を提供できる。終末呼気陽圧を追加することで、疾患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給および保護を提供できる。或る場合には、胸腔内圧調整(IPR)を使用することで、自律神経系を調節するとともに、脳圧および体循環圧を変化させることが
できる。また或る場合には、胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ(IABP)を組合わせることで、循環の増進にいずれか単独の場合よりも大きい効果を提供できる。たとえば開心術で胸部を開いて胸腔内圧調整療法を適用する場合、肺は、陽圧相(吸気)では呼吸ガスで満たされ、呼気相では呼吸ガスが肺から能動的に抜出される。この結果、肺内の血液は、急速に左心房に移され、それによって左心に血液が供給される。交互に肺を呼吸ガスで満たし、同時に右心からの血液のためにスペースを提供し、次に呼吸ガスを抜出して肺リザーバ内で血液を前進させることで、肺は、蠕動スポンジのように働いて右心と静脈循環の両方から血液を吸い上げ、それを左心に送込む。「スポンジから絞り出す」ことによって、肺実質の拡張と収縮は、血液循環が低いか減少した状況で血液を前進させるための新規の手段を提供する。この「絞り出し」プロセスの前または後に終末呼気陽圧を追加することで、酸素供給を維持して肺機能を保全および保護するのを助ける手段が提供される。このプロセスの間、吸気相で供給される1回換気量は、変化してよく、この方法または装置による呼吸ガスの除去速度は、供給される1回換気量に伴って直接的または間接的に変化でき、それによって所望の目標気道圧および/または胸腔内圧を達成する手段が提供される。それゆえ胸腔内圧調整療法を提供するこのような方法と装置は、開心術の間または後などに胸部が大気圧に対して開いているときでも、循環を増進して血圧を高めるために使用できる。この方法と装置で呼吸ガスを肺に入れ、および肺から抜出すことが可能である限り、これは両肺にも片方の肺のみにも適用できる。
【0007】
胸腔内圧調整療法によって達成される肺内の圧力の変化は、肺内の呼吸ガス量が変化した直接的な結果である。ガス量は、陽圧換気の度に増加し、能動的に抜出されると減少する。このプロセスにおいて血液は、肺から押出され、血液は、損傷していない一方向弁(この場合には肺動脈と僧帽弁)のために心臓内を前進できるのみである。こうしてガス抜出し相では血液は、巨大なリザーバとして働く肺から圧出され、肺が膨らむと呼吸ガスが肺胞を満たして、間接的に動脈床と静脈床の構造を回復するので、肺が膨らむとすぐに右心からの血液は、肺血液リザーバに突入する。胸腔内圧調整療法による呼吸ガスの能動的な注入と除去によって、血液を左心に圧入するための新規の手段が提供される。ここで留意すべき重要なことは、胸部が大気圧に対して開いているときには、胸部の非肺構造内の圧力は、気道圧または肺圧の変化に伴って変わらないので、肺容量の変化は、典型的には頭蓋内圧を変えないということである。
【0008】
一実施形態において、本発明は、胸部が損傷していない場合には、頭蓋内圧または眼球内圧力を減少させて、全身血圧と臓器潅流を増加させるための装置を提供する。この装置は、患者の気道に接続するように適合された吸入口と排出口を有するハウジングを含む。装置はさらに、自発呼吸または人工呼吸の間、ハウジングを通って患者の肺に入る呼吸ガス流を調節するように作動できる弁システムを含む。人工呼吸を必要とする患者に対して、弁システムは、真空源に装着できる。弁システムは、自発呼吸中に気道圧を下げるのを補助し、能動的に呼吸できない非呼吸患者では逆に頭蓋内圧または眼球内圧を下げて全身潅流圧を高めるのを補助する。弁システムは、胸部の圧力を下げることによって頭部の圧力を連続的または間欠的に下げるためにも使用できる。その上、本発明は、陽圧換気が提供されていないときには、左心と右心内の圧力を下げる。心臓を含む胸部の圧力が減少すると、より多くの血液を心臓に還流させ、それによって心臓機能と心拍出量の効率が増すのを助ける。それゆえ本発明は、頭蓋内圧および眼球内圧の上昇、ショック、低血圧、循環虚脱、心停止、心不全、術中低血圧を含むがこれらに限られない多数の疾患状態を患っている患者、ならびに透析中の患者の治療に使用できる。本発明は、また肝臓や腸の手術などの外科処置の間、腹部内の静脈圧を下げ、同時にこれらの臓器およびその他の重要臓器、たとえば腎臓、脳、および心臓によって多量の血流を提供できる。静脈圧を下げることで、外科処置の間の失血を減らすのを助けることができる。この新規の方法と装置は、上述した機構によって、敗血症、多発外傷性臓器障害、および急性呼吸促迫症候群(ARDS)に伴う低血圧や循環不良も治療できる。この意図は、また「コンパートメント症候
群」において静脈圧を下げるために使用してもよく、それゆえより多くの血液を循環させて組織の生存能力と機能を保つのを助けることができる。本発明は、胸腔内圧を下げる結果、頭蓋内圧が低下して心臓への血流が増進されるという発見に基づく。開胸した患者においてこの装置は、気道と肺内の圧力を下げ、それによって肺から呼吸ガスを取除く。この結果、濡れたスポンジにその都度真空を加えるように肺の「絞り出し」が行われ、そして肺動脈弁が経肺動脈の逆流を妨げるので肺内の血液は、左心に送込まれる。次の吸気で、呼吸ガスが肺に充満して血液が肺に突入する。次に低いレベルの真空を加えると血液は、押出される。このように、気道圧が変化すると肺ポンプが提供されて択一的に血液を肺から押出し、陽圧呼吸が行われる度に肺内に空の血管リザーバが提供されて右心内の血液から急速に再び満たされる。
【0009】
このような装置は、胸部が損傷していない場合には脳脊髄液の運動を促進するために用いることもできる。こうすると頭蓋内圧をさらに減らすことができる。それゆえこのような装置は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者、および全身低血圧を引起こす状態に苦しんでいる患者の治療にも使用できる。
【0010】
一面において弁システムは、自発呼吸中に胸腔内陰圧が約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲の圧力に達して胸腔内圧を下げ、ひいては頭蓋内圧または眼球内圧を下げると、開いて呼吸ガスが自由に患者の肺に流れるのを許すように構成されている。このようにして、胸腔内陰圧は、閾圧に達し、その時点で弁が開くまで下げられる。このサイクルは、連続的または周期的に繰返して、胸腔内圧を反復的に下げることができる。別の面において弁システムは、約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲で胸腔内真空を生成して胸腔内圧を下げ、ひいては頭蓋内圧または眼球内圧を下げ、そして心臓への血流を増進するように構成されている。装置は、低血液循環または心停止を呈する患者の血液循環を改善するために、反復的に胸部を圧縮する手段を含むか、これと一緒に使用されてもよい。圧縮は、自動胸部圧縮、外周ベスト(circumferential vest)、手動胸部圧縮などで達成できる。これによって血液循環が低い患者で心臓と脳への血流が改善されよう。装置が胸部を圧縮すると、血液は、強制的に心臓から押出されて重要臓器の潅流を増加させる。圧縮手段が解除されると、血流は、心臓に戻る。或る場合には減圧装置は、胸部を能動的に持ち上げまたは減圧して心臓に戻る血流を増進できよう。
【0011】
装置は、患者に弁システムを通して人工的に呼吸させる手段を含んでよい。たとえば装置は、電極、鉄製胸甲装置、胸部持上げ装置、換気装置などを利用できる。胸部の圧力を下げることによって、呼吸ガスは、肺に流入して酸素を提供する。胸部を圧縮するのに続けて胸部を減圧することによって、胸部は、ブロワとなり、血液が循環して呼吸ガスが交換される。この動作は、心臓の自然収縮、たとえばECG(心電図)に同期させることができる。一実施形態において、胸部を圧縮した後に胸部を反動で安静位置に戻らせて血液と呼吸ガスを循環させる。胸壁が反動する度に装置を用いて胸腔内圧を下げて胸腔内真空を作り、心臓に戻る血流を増進する。他の実施形態において、胸部を圧縮した後で能動的に減圧して血液と呼吸ガスを循環させ、そして胸部が減圧される度に装置を用いて胸腔内圧を下げて胸腔内真空を作り、心臓に戻る血流を増進し、頭蓋内圧も下げる。胸腔内圧を下げるために使用できる装置は、任意のタイプの真空または真空源を含み、これには換気装置に組込まれたものも含まれる。減圧の少なくとも一部の間、呼吸ガスは、肺に自由に流れて適当な換気を提供できる。
【0012】
他の実施形態において、装置は、気道内に真空を加えることによって胸腔内圧を減じる手段を含んでよい。真空は、周波数、振幅、および持続に関して調節できる。この結果、胸部が損傷していない場合には適用される真空の程度に比例して頭蓋内圧が減少する。したがって、単に気道圧を操作して胸腔内圧を減じることで頭蓋内圧を減らすことができる。その上、胸部内に作られた真空が心臓に戻る血流を増進し、それによって同時に心拍出
量と全身の重要臓器潅流を増加させる。このような真空は、気道または肋骨の間の胸腔チューブを通して外部真空源から生成されてよく、または陰圧を加えることができる換気装置を用いて生成されてよい。
【0013】
装置はさらに、弁システムのインピーダンスすなわち抵抗のレベルを変化させるための機構を含んでよい。装置は、胸部が圧縮されているときに呼気陽圧を加えることを含むことができる。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用されてよい。このようにして、胸腔内圧のレベルを変化させるための機構は、センサから信号を受取り、それらの信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。使用できるセンサの例は、呼吸速度、胸腔内圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、頭蓋内潅流、および頭蓋内圧を測定するセンサを含む。胸部が損傷していないとき、装置は、弁システムの抵抗のレベルを変化させるための機構を含むことができる。装置は、呼気陽圧を適用することを含んでよい。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用されてよい。このようにして、肺内の圧力および/または呼吸ガスの量を変化させるための機構は、センサから信号を受取り、信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。これがまた呼吸ガス量の値および/またはガスが能動的に肺に注入され、かつ肺から抜出される圧力と速度の値を調整する。使用できるセンサの例は、気道圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、および左心圧を測定するセンサを含む。
【0014】
一面において、弁システムを患者の気道に連結するために連結機構が使用されてよい。連結機構の例は、マウスピース、気管チューブ、声門上気道、およびフェイスマスクを含む。
【0015】
患者の胸腔内圧、または肺に注入され、次いで肺から抜出される呼吸ガスの量を反復的に減少させるために、多種多様な弁システムが使用されてよい。たとえば使用できる弁システムは、バネ付勢装置を有する弁システム、弁室を開閉する自動化システム、電気的システムまたは機械的システムを有する弁システム、ダックビル弁、ボール弁、自発呼吸および/または胸腔内圧を操作する外部システム(たとえば換気装置、横隔神経刺激装置、鉄製胸甲など)によって引起こされる低差圧を感知すると開閉できるその他の感圧弁システムを含む。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、胸部が損傷していない場合に、頭蓋内圧または眼球内圧を減少させる方法を提供する。これらのシステムと方法は、開胸した患者に使用するのに適している。回路が開いているので、肺容量と圧力が変化しても胸腔内圧は、変化しないでよい。開胸しているとき、この解決策は、一般に頭蓋内圧を下げない。この方法に従い、弁システムは、患者の気道に連結され、呼吸ガスが患者の肺に流れるのを少なくとも周期的に減らすか、または妨げるように構成されている。弁システムが気道に連結されると、患者の胸腔内陰圧は、反復的に減少し、これがまた頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力を反復的に下げる。このようにすれば頭蓋内圧と眼球内圧が減少する。このような方法は、また脳脊髄液の運動を促進する。こうして頭蓋内圧は、さらに減少する。したがってこの方法は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者、頭蓋内圧を増加させる心臓状態、たとえば心房細動や心不全を患っている患者、および一部または全部が心拍出量または心臓機能の低下によって引起こされる低血圧を患っている患者の治療にも使用できる。
【0017】
患者の胸腔内陰圧は、患者が反復的に弁システムを通して吸入すると反復的に減少させることができる。これは患者自身の努力(自発呼吸と呼ぶ)か、または患者に人工的に弁
システムを通して反復的に吸入させることによってなされる。たとえば胸部が損傷していない場合には、横隔神経を反復的に刺激することで、胸部を鉄製胸甲装置で操作することで、換気装置を用いて胸部内に陰圧を生成することで、胸部内に弁システムによって調整できる真空を加えることで、1分間約200〜約2000回の速度で振動を供給する高周波数換気装置を適用することなどによって患者の胸腔内圧を下げることができる。胸腔内圧を下げることは、呼吸ガスを肺に引込むため、より多くの血液を心臓に戻すため、または両方のために使用できる。胸腔内圧を下げることは、頭蓋内圧と眼球内圧を下げるためにも使用できる。
【0018】
別の面において、弁システムのインピーダンスレベルは、一定であっても、可変であってもよい。可変で或る場合には、患者の少なくとも1つの生理的パラメータが測定されてよく、測定されたパラメータに基づきインピーダンスレベルを変えることができる。
【0019】
弁システムを気道に連結するために、たとえばマウスピース、気管チューブ、フェイスマスクなどを用いることで多様な技術を使用できる。さらに弁システムによって、約0cmH2O〜約−25cmH2Oの範囲の胸腔内陰圧に達した時点で弁システムが呼吸ガスを肺に通すまで、呼吸ガスが肺に入るのを妨げることができる。
【0020】
他の実施形態において本発明は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者を治療するための方法を提供する。この方法に従い、胸部を損傷していない患者に陽圧呼吸が送込まれる。換気装置と患者の気道との間に配置された装置に装着された真空源によって患者の気道から呼吸ガスを抜出して胸腔内真空を作る。これはまた頭蓋内圧を減らし、頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力を下げることもできる。幾つかの任意選択肢において呼吸ガスを提供するために肺に陽圧呼吸が送込まれる。陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すステップを繰返して治療を継続する。さらに陽圧呼吸は、ガスを抜出す前毎に送込まれる必要はなく、適当な換気を行う必要を有するときだけ送込まれる。或る場合にはガスを抜出す前または後で終末呼気陽圧を加えることができる。この解決策によって、方法と装置は、気道圧と、胸部が損傷していない場合に胸腔内圧を3段階で調節する手段を提供する。すなわち肺を膨ませ、肺からガスを取除き、肺を終末呼気陽圧によって部分的に膨らませることで、無気肺を低減して肺の完全性を保つのを助ける。或る場合には、胸腔内圧を下げることによって頭蓋内圧を下げる効果を高めるために、利尿薬、または意図的失血または体液量減少を含むがこれらに限らない他の手段を用いて血液量を減らすことができる。
【0021】
幾つかの任意選択肢において、患者は、外部胸部陽圧源を用いて外部から胸腔内圧を操作されて、陽圧呼吸が送込まれ気道からガスが抜出される。外部胸部陽圧源の例は、機械的胸腔外ベスト、胸甲、圧縮ピストン、圧縮カップなどを含む。これらの装置は、空気圧源、電源、燃焼源など多様な源からエネルギーを供給できる。さらに外部圧縮は、心臓の活動、たとえば心電図活動に同期させることができる。さらに外部圧縮および/または陽圧呼吸と真空の適用は、血圧を維持するための侵襲的手段、たとえば患者から血液を除去することと組合わせて用いてよい。また或る場合には、患者の胸部を少なくとも周期的に減圧することが必要となる。そのような場合には、患者の気道に弁を配置して、患者の肺に空気が突入するのを少なくとも一定時間妨げて、作られる胸腔内陰圧の大きさを増すことができる。
【0022】
一面において、陽圧呼吸を送込んでガスを抜出すことは、機械的換気装置を用いて行われる。呼吸ガスは、一定抜出しまたはパルス状抜出しによって抜出されてよい。
別の面において、呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒の範囲の時間で供給されてよい。また呼吸は、1秒間約0.1リットル〜約5リットルの範囲の速度で供給されてよい。さらに別の面において、真空は、約0mmHg〜約−50mmHgのレベルの圧力に維持され
てよい。真空は、負の流れによって、または流れなしで維持されてよい。呼吸ガスが抜出される時間に対して陽圧呼吸が送込まれる時間の比は、約0.5〜約0.1の範囲であってよい。呼吸ガスは、250ミリ秒〜約10秒の範囲の持続時間にわたって肺から抜出すことができる。目標気道陰圧を達成する時間は、供給される1回換気量の値または所望の臨床効果に応じて異なってよい。これはオペレータによって手動で調節するか、IPR(胸腔内圧調整)装置または方法によって自動的に調節できる。このプロセスは、フィードバックループを含んでよく、たとえば1回換気量が増加したときには、能動的なガス抜取プロセスを加速して、目標気道陰圧がより低い1回換気量と同じ速度で達成されるようにする。
【0023】
呼吸ガスを抜出すために、機械的換気装置、横隔神経刺激装置、換気バッグ、気道装置に装着された真空装置、鉄製胸甲装置、胸腔チューブなどを含む多様な装備が使用されてよい。或る場合には、患者の気道に閾値弁が連結されてもよい。閾値弁は、成人の胸腔内陰圧が約−3cmH2Oを越えると開くように構成されてよい。小児症例では、弁は、圧力が約−2cmH2O〜約−5cmH2Oを越えると開いてよい。このようにして、患者が吸入するときに胸腔内陰圧を下げることができる。患者が機械的換気装置で換気されるときには、胸腔内圧調整法を実施することで周期的に気道圧を下げて循環を増進し、また胸部が損傷していないときには頭蓋内圧を下げることができる。或る場合には胸腔内圧調整法と装置は、陽圧換気を提供するための手段(たとえば蘇生バッグ、機械的換気装置または麻酔器)に組込まれる。或る実施形態において、機械的換気装置を用いて患者を種々の吸呼気比(I:E比)で治療するときに胸腔内圧調整療法を適用できる。たとえば患者をより高い吸呼気比(2:1〜5:1)で治療し、毎回吸気の後で陽圧を回復する前に、胸腔内圧調整で気道圧および/または胸腔内圧を100ミリ秒〜2秒の時間の間、−1〜−20mmHgに下げることができる。この手段によって、患者の肺から呼吸ガスを急速に抜出して循環を増加させることができる。
【0024】
呼吸ガスを送込み、および抜出すために多様なスキームを用いることができる。たとえば呼吸ガスを抜出して約−5mmHg〜約−10mmHgの圧力を達成し、そして一般に次の陽圧呼吸まで一定に保つ。別の例として、陽圧呼吸をゆっくり送込んで胸腔内圧を急速に約−10mmHg〜約−20mmHgの圧力に下げ、次いで徐々に約0mmHgまで上げることができる。さらに別の例として、胸腔内圧を約−20mmHgの圧力にゆっくり下げることができる。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、胸腔内圧を下げるための装置を提供する。この装置は、ハウジングを患者の気道に連結するように整えられたインタフェースを有するハウジングを含む。呼吸ガスを患者の肺および気道から反復的に抜出して胸腔内陰圧を作り、周期的に維持するために、真空源がハウジングに流体連通している。患者の肺および気道からの呼吸ガスの抜取を調整するために、真空調整器が用いられる。また必要があれば、陽圧呼吸を間欠的に患者に供給するために、陽圧源がハウジングに流体連通している。このような装置は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷、低血圧、低血液循環、低血液量、心停止、および心不全など多様な病気を治療するために使用できる。
【0026】
或る場合には、呼吸ガスの抜取を停止し、または陽圧呼吸を送込むためにスイッチ機構が用いられてよい。機械的装置、磁気装置、および電子装置など、多様なスイッチ機構を使用できる。また呼吸ガスを抜出すために、機械的換気装置、真空調整器を有する真空装置、横隔神経刺激装置、胸腔外ベスト、換気バッグ、および鉄製胸甲装置、吸込管、酸素タンクに装着されたベンチュリ装置など多様な真空源を使用できる。
【0027】
真空を調整するために、患者の気道に流体連通するように閾値弁を配置する。閾値弁は、患者の胸腔内陰圧が約−3cmH2O〜約−20cmH2Oに達すると開いて、呼吸ガ
スを患者の気道に通すように構成されてよい。また陽圧呼吸を送込むために多様な圧力源、たとえば機械的換気装置、手持ち式蘇生バッグ、口移し、または間欠的陽圧換気を提供するための手段を使用できる。装置には、患者に適用される真空圧およびその他の生理的測定値、たとえば気管内圧または頭蓋内圧を測定するためのセンサに連結された多様なゲージを組込むことができる。
【0028】
本発明は具体的な面において、胸部を圧縮および減圧して、いわば胸部をブロワに変える方法および装置を提供する。本明細書に記されるように、胸部を圧縮および減圧するために非常に多様な装置またはシステムを使用できる。さらに能動的に胸部を圧縮または減圧しないときに胸部内の胸腔内圧を下げて心臓に戻る血流を増進し、かつ頭蓋内圧を下げるためにインピーダンス弁および/または胸腔内真空調整器を使用できる。随意に装置は、周期的な陽圧換気を提供する能力を有してよい。特定の選択肢において、たとえば心電図を使用することで、圧縮を心拍に同期化できる。減圧を毎圧縮後よりも少ない頻度で行うこともできよう。たとえば胸部を1分間に約6〜約30回減圧して、適当な陰圧換気を提供し、すなわち胸部内に真空を作り、たとえば鉄製胸甲、横隔神経刺激、胸部に付着された吸引カップを使用するなどして妨げられない気道を通して空気を自然吸入できるようにする。このような装置は、こうして陰圧換気および/または陽圧換気によって血圧および換気を人工的に維持する方法を提供する。装置は、また呼吸できるか呼吸できないかを問わず低血圧患者の重要臓器循環を増進して頭蓋内圧を下げる。
【0029】
一面において、本発明の実施形態は、患者を治療する医療法を包含する。例示的な方法は、患者の気道に陽圧換気を施すこと、陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すこと、および終末呼気陽圧を施した後で患者の気道に真空を施すことを含んでよい。関連する例示的な方法は、患者の気道に陽圧換気を施すこと、陽圧換気を施した後で患者の気道に真空を施すこと、および真空を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含んでよい。
【0030】
別の面において、本発明の実施形態は、胸腔内圧調整システムを作動させる方法を包含する。これらの方法は、換気制御弁を解除して陽圧換気を提供すること、換気制御弁および真空供給弁を作動させること、終末呼気陽圧供給弁を解除すること、および内部ガス混合器から患者に終末呼気陽圧を調整された圧力で供給すること、終末呼気陽圧弁を付勢し真空供給弁を消勢して患者の気道に調整された真空を生成すること、および随意に上記の方法ステップのいずれかを反復することを含んでよい。
【0031】
実施形態はさらに、患者に胸腔内圧調整治療を提供するためのシステムを包含する。或る場合にはシステムは、混合ガス圧源、終末呼気陽圧供給機構、真空源、真空調節機構、真空供給機構、換気制御弁、プロセス制御装置、換気機構、および患者接続を含んでよい。
【0032】
ある面において本発明の実施形態は、患者を治療するための方法を包含し、これには胸腔内圧調整器で患者の自律神経系を調整することによって治療することを含む。
さらに別の面において実施形態は、たとえば圧力計、換気ポート、吸入キャップ、本体、患者ポート、真空ステム、ピストンと弁座を有する弁、およびダイヤフラムを有する胸腔内圧調整システムを含む。
【0033】
一面において、本発明の実施形態は、患者から呼吸ガスを取除く方法を含む。例示的な方法は、患者の気道に真空を加えること、および送込まれる1回換気量の値に基づく速度で患者から呼吸ガスを取除くことを含んでよい。
【0034】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、患者を治療するための医療法を包含し、
これには胸腔内圧調整治療と大動脈内バルーンポンプ治療とを組合わせて患者を治療することを含む。
【0035】
別の面において、実施形態は、患者を治療する間、麻酔ガスをリサイクルするシステムを包含する。そのようなシステムは、たとえば気管(ET)チューブまたはマスク、胸腔内圧調整器(ITPR)、患者Y形管、胸腔内圧調整器真空ライン、陰圧生成器、循環装置、陰圧生成装置、真空環流装置、および麻酔器を含んでよい。
【0036】
ある面に従い、実施形態は、医療処置の間、麻酔ガスをリサイクルするシステムと方法を包含する。そのような技術は、麻酔器内で二次ガスをリサイクルして流れを増加させ、または呼気ガスを別個のチャンバまたは洗浄システムに捕捉することを含むことができる。
【0037】
本発明の実施形態は、患者に胸腔内圧調整治療を提供するためのシステムも含む。そのようなシステムは、第1制御弁、第2制御弁、陽圧吸気ブロワ機構、陰圧呼気ブロワ機構、換気機構、および麻酔機構を含むことができる。
【0038】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、自動化された換気装置システムまたは麻酔器で患者を治療するための方法を含む。方法は、たとえば患者に胸腔内圧調整治療を施して患者の循環を増すことを含んでよい。方法は、また患者の胸部が損傷していないときには、患者の頭蓋内圧を下げることを含む。方法は、随意に胸腔内圧調整治療の後で患者の気道に終末呼気陽圧治療を施すことを含んでよい。
【0039】
別の面において、例示的な実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者を治療する方法を含む。実施形態は、また低血液循環または低血圧治療の間、患者の所要流体量を減らす方法、または患者の微小循環を増大させる方法、または患者の薬剤循環を増進する方法を含んでよい。そのような方法のいずれかは随意に患者に胸腔内圧調整治療を施すことを含んでよい。
【0040】
一面において、本発明の実施形態は、治療を必要としている患者に治療を提供するための方法を包含し、患者に胸腔内圧調整プロトコルを施すこと、および患者に心肺蘇生(CPR)プロトコルを施すことを含む。本発明の実施形態は、また患者に静脈量補充療法を施すか決定する方法を含んでよい。そのような方法は、患者に胸腔内圧調整プロトコルを施すこと、患者の血圧を評価すること、および患者の評価された血圧が急速に上昇した場合には、患者に静脈量補充療法を施すことを含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、患者に晶質液を投与することを含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、患者に膠質液を投与することを含んでよい。
【0041】
別の面において、本発明の実施形態に従う医療は、患者に間欠的に吐息を送入することを含んでよい。吐息は、機械的換気処置を行っている間、患者に施すことができる。たとえば技術者またはオペレータが換気装置または機械上のバッグを絞って所定量の膨張を患者の肺胞に送込み、患者の肺システムに保護効果を提供する。
【0042】
本発明の実施形態は、患者に胸腔内圧調整治療を提供するシステムと方法を包含する。例示的なシステムは、システムが循環補助モードにあるときには患者に調節可能な陰圧治療を提供する調節可能な陰圧機構と、システムが換気モードにあるときには患者に陽圧治療を提供する陽圧換気機構と、調節可能な陰圧機構と、システムが持続的気道陽圧(CPAP)モードにあるときには患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な
持続的気道陽圧機構とを含む。随意に換気機構は、麻酔器を含んでよい。或る場合にシステムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施した後で、患者に低大気圧治療を施す低大気圧機構を含む。関連してシステムは、循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードからなるグループから選択された一要素を指定するオペレータ選択入力と、オペレータ選択入力に伴って指定された要素を作動させるオペレータ確認入力とを受取る制御機構またはプロセッサを含んでよい。或る場合には治療システムは、患者に補足酸素治療を施す補足酸素機構を含む。システムはさらに、バッテリに結合するように構成された電源入力を含んでよい。或る場合には、治療システムは、バッテリに動作結合している電源入力を含む。随意に治療システムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施す前に、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。或る場合には治療システムは、センサ機構、たとえば生理的センサまたは機械的センサを含む。治療システムの動作は、少なくとも一部は、センサ機構から受取った情報に基づき制御されてよい。
【0043】
ある例示的なシステムにおいて、陽圧換気機構は、心肺蘇生(CPR)処置の間、患者に施す陽圧換気治療を患者の胸部の圧縮および減圧に同期化する。システムはさらに、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施した後で患者に低大気圧治療を施す低大気圧機構、ならびに循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力と、オペレータ選択入力に伴って指定された要素を作動させるオペレータ確認入力とを受取る制御機構またはプロセッサを含んでよい。関連してシステムは、患者に補足酸素治療を施す補足酸素機構を含んでよい。或る場合に治療システムは、バッテリに結合するように構成された電源入力と、バッテリに動作結合している電源入力とを含む。さらに治療システムは、陽圧換気機構が患者に陽圧換気治療を施す前に、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。陽圧換気機構は、心肺蘇生(CPR)処置の間、患者に施す陽圧換気治療を患者の胸部の圧縮および減圧に同期化できる。
【0044】
ある面において治療システムは、圧力ゲージを有するセンサアセンブリと、フィードバックアセンブリとを含む。センサアセンブリは、心肺蘇生治療中の胸部圧縮と減圧の数と質を感知でき、フィードバックアセンブリは、患者に手動圧縮を行っている人員にリアルタイムフィードバックを提供できる。リアルタイムフィードバックは、心肺蘇生治療の質に関する情報を含むことができ、この情報は、深さ(たとえば胸部圧縮の深さ)に関するデータ、完全な胸壁反動データ、および中断時間データを含むことができる。或る場合には、センサは、患者の気道内の圧力、または胸部圧縮の深さもしくは強さを検出でき、そのような情報は、フィードバックアセンブリに回されて、患者に心肺蘇生または治療を行っている人員にフィードバックを提供することができる。随意に治療システムは、センサ電極、コンデンサ、および患者に除細動治療を施す高エネルギー除細動機構を有する除細動器を含んでよい。除細動器は、単相性ショック、二相性ショック、多相性ショック、またはこれらの任意の組合せを含む治療を提供できる。或る場合に治療システムは、調節可能な陰圧機構、陽圧換気機構、持続的気道陽圧機構、またはこれらの任意の組合せを、患者から出る測定された生理的信号に基づき調節する調節機構を含むことができる。患者の測定された生理的信号は、たとえば血圧信号、終末呼気二酸化炭素信号、または脳酸素信号を含むことができる。或る場合に治療装置は、外部医療装置に通信する通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、たとえばブルートゥースアセンブリまたはラジオ周波数アセンブリを含むことができる。或る場合に通信モジュールは、除細動器または自動胸部圧縮器などの外部医療装置に通信する。
【0045】
本発明の実施形態に従う治療システムは、また調節可能な陰圧機構、陽圧換気機構、または持続的気道陽圧機構によって提供される胸腔内圧の変化を、医療装置による治療、たとえば除細動ショック処置または胸部圧縮および解除処置に合わせるタイミング機構を含
む。例示的な治療システムは、ユーザインタフェースも含んでよい。或る場合にユーザインタフェースは、円形コントロールパネルを含む。或る場合にはユーザインタフェースは、対称的コントロールパネルを含む。随意にユーザインタフェースは、円周に配置された3個のリムセグメントを有する円形コントロールパネルを含んでよい。治療システムは、患者に二相性気道陽圧治療を施す二相性気道陽圧機構も含んでよい。
【0046】
別の面において、本発明の実施形態は、胸腔内圧調整治療中に患者の心拍出量、1回拍出量および脈圧を増すためのシステムを含む。治療システムは、患者に陽圧換気治療を施す陽圧換気機構を含んでよく、陽圧換気治療は、一連の反復された陽圧換気を含むことができる。治療システムはさらに、連続する陽圧換気の間に患者から能動的に呼吸ガスを抜出す呼吸抜取機構を含む。随意にシステムの重量は、12ポンド(5.4kg)未満であることができる。或るシステム実施形態において、陽圧換気機構または呼吸抜取機構は、測定された患者パラメータに基づき自動的にフィードバックループで気道陰圧のレベルを調整するように動作できる。或る場合には、測定された患者パラメータは、増加した循環の指標を提供する。或る場合には測定された患者パラメータは、終末呼気二酸化炭素、心拍出量、経胸腔インピーダンス、筋酸素供給または筋pHを含むことができる。
【0047】
例示的なシステムは、プロセッサおよびプロセッサに連結されたメモリを含んでよい。メモリは、陽圧換気機構を作動させるための指示を包含する陽圧換気コードモジュールと、呼吸抜取機構を作動させるための指示を包含する呼吸抜取コードモジュールを含んでよい。或る場合に治療システムは、2本の分岐、吸気ガスと呼気ガスとの分離を維持するマニホールド、および衝撃と湿気を防ぐ取外可能な保護ケースを有する回路を含む。治療システムは、呼吸制御を促進するセンサアセンブリも含んでよい。さらには、治療システムは、呼気抵抗の制御を促進するブロワ機構を含んでよい。随意にシステムは、ブロワ機構がフィードバック制御ループに基づき動作するように構成できる。
【0048】
別の面において本発明の実施形態は、胸腔内圧調整システムのユーザインタフェースを包含する。例示的なユーザインタフェースは、一連の患者体格選択入力を有する循環補助モードサブインタフェース、一連の患者体格選択入力を有する換気モードサブインタフェース、および一連の圧力選択入力を有する持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェースからなる基本モードディスプレイを含んでよい。インタフェースはまた気道陽圧セクションと気道陰圧セクションを備えた気道圧ディスプレイを有してもよい。インタフェースは、さらにモード確認サブインタフェースと、呼吸速度選択入力、1回換気量選択入力、終末呼気陽圧選択入力、および循環補助選択入力を備えた手動制御インタフェースを有する高度モードディスプレイとを含むことができる。或る場合にはユーザインタフェースは、高度モードディスプレイの使用をロックアウトするロックアウト機構を含んでよい。随意に循環補助モードサブインタフェースと、換気モードサブインタフェースと、持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェースとを、円の3個のリムセグメントとして円周に配置できる。
【0049】
さらに別の面において、本発明の実施形態は、患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムを包含する。例示的なシステムは、患者に流体連通する患者ポート、患者ポートを介して患者に施される陽圧換気処置を促進するための換気機構に流体連通する換気ポート、患者ポートを介して患者に施される真空処置を促進するための真空機構に流体連通する真空ポート、および流体の流れを制御するための弁を含む。弁は、陽圧換気処置を施す間には、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを許して、真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように動作できる。弁は、真空処置を施している間には、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止して、真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを許すように動作できる。随意に換気機構は、麻酔器を含んでよい。或る場合に、システムは、弁に動作結合している終末呼気陽圧機構を含む。随意に弁は、真空
処置を施す前または後で行われる終末呼気陽圧治療を施す間には、終末呼気陽圧機構と患者ポートとの間の流体の流れを許すように動作できる。関連する実施形態において、システムは、患者ポートに流体連通している圧力センサを含む。圧力センサは、陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用を示し、真空処置を施す間には陰圧の適用を示すことができる。或る場合には、陽圧換気処置が開始すると、弁は、換気ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、かつ真空ポートと患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように動作する。
【0050】
関連する面において、本発明の実施形態は、患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムを提供する。システムは、循環補助モード、換気モードまたは持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサを含むことができる。システムは、またプロセッサに動作結合しているマニホールドアセンブリも含むことができる。マニホールドアセンブリは、酸素吸入ポートに流体連通していることができる。吸気面酸素吸入ポートは、酸素源から酸素を受取ることができる。マニホールドアセンブリは、また吸気面に流体連通している空気吸入ポートも含むことができる。空気吸入ポートは、空気源から空気を受取ることができる。マニホールドアセンブリは、また呼気面に流体連通している呼気ガス排出ポートも含むことができる。呼気ガス排出ポートは、呼気ガスを陰圧機構に向けて通過させることができる。マニホールドアセンブリはさらに、空気と酸素を患者に向けて送出す吸気腔および呼気ガスを患者から引取る呼気腔を有する患者回路インタフェースを含むことができる。治療システムは、また吸気面と吸気腔との間の流体の流れを制御する制御弁アセンブリ、呼気面と呼気ガス排出ポートとの間の流体の流れを制御する呼気制御弁アセンブリ、およびシステムが循環補助モードにあるときに呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構も含むことができる。或る場合にシステムは、システムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構、またはシステムが持続的気道陽圧モードにあるときには、呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構、または両方とも含む。随意に換気機構は、麻酔器を含むことができる。随意にシステムは、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を含むことができる。或る治療システムは、ユーザディスプレイ、およびセンサ機構、たとえば生理的センサまたは機械的センサを含む。プロセッサは、センサ機構から受取った患者情報に基づき、心肺蘇生の質または循環に関連する情報を表示するために、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送るように動作できる。或る場合に、プロセッサは、センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送るように動作できる。ディスプレイ指示は、心肺蘇生治療を施している間、心肺蘇生の質に関係することができる。或る場合にプロセッサは、センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、ディスプレイ指示をユーザディスプレイに送ることができる。ディスプレイ指示は、非心肺蘇生治療を施している間、循環に関係することができる。
【0051】
別の面において本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法を包含する。これらの方法は、換気機構によって生成される陽圧換気を胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すこと、および真空機構によって生成される真空を胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すことを含んでよい。陽圧換気を施す間には、胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と患者ポートとの間の流体の流れを許して、真空機構と患者ポートとの間の流体の流れを阻止することができ、真空を施す間には、胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と患者ポートとの間の流体の流れを阻止して、真空機構と患者ポートとの間の流体の流れを許すことができる。これらの治療方法は、また陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含んでよい。終末呼気陽圧を施し
た後で、患者の気道に真空を施すことができる。幾つかの方法は、真空を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含む。陽圧換気を施した後で、患者の気道に真空を施すことができる。随意に方法は、陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用の指示を表示し、真空処置を施している間には陰圧の適用の指示を表示することを含んでよい。
【0052】
さらに別の面において本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法を包含する。例示的な方法は、システムが循環補助モードにあるときに胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して患者に一定または調節可能な陰圧治療を施すこと、およびシステムが換気モードにあるときに胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すか、またはシステムが持続的気道陽圧モードにあるときに胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を施すことを含む。或る場合にこの方法は、胸腔内圧調整システムの終末呼気陽圧機構で患者に終末呼気陽圧治療を施すことを含む。或る場合にこの方法は、システムが換気モードにあるときに胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すことと、陽圧換気を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことの両方を含む。終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に陰圧治療を施すことができる。
【0053】
或る場合に方法は、システムが換気モードにあるときに、胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施し、陰圧治療を施した後で患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを含む。陽圧換気を施した後で、患者の気道に陰圧治療を施すことができる。或る場合に方法は、心肺蘇生治療を施している間、胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに心肺蘇生の質に関する情報を表示することを含む。或る場合に方法は、非心肺蘇生治療を施している間、循環に関する情報を胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを含む。
【0054】
本発明の本質および利点をより良く理解するために、以下に添付の図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるための一方法を示すフローチャート。
【図2】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できるフェイスマスクと弁システムの一実施形態の斜視図。
【図3】図2の弁システムの斜視図。
【図4】図3の弁システムの断面図。
【図5】図3の弁システムの分解図。
【図6】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるためのシステムの図式的な概念図。
【図7】動物実験による頭蓋内圧低下を示す一連のグラフ。
【図8】別の動物実験による頭蓋内圧の減少を示す一連のグラフ。
【図9A】正常な人の脳の図式的な概念図。
【図9B】腫脹が増大した後の図9Aの脳を示す図。
【図10】胸腔内圧の減少が頭蓋内圧と右心房圧に及ぼす影響を示す3点のグラフ。
【図11】本発明に従い頭蓋内圧と眼球内圧を下げるための別の方法を示すフローチャート。
【図12A】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図12B】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼気ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図12C】本発明に従い陽圧呼吸を送込んで呼吸ガスを抜出すパターンを示すグラフ。
【図13A】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる一装置を図式的に示す図。
【図13B】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる一装置を図式的に示す図。
【図14A】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる別の装置を図式的に示す図。
【図14B】本発明に従い無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる別の装置を図式的に示す図。
【図15A】図14Aおよび図14Bの装置で使用できる閾値弁システムの一実施形態を示す図。
【図15B】図14Aおよび図14Bの装置で使用できる閾値弁システムの一実施形態を示す図。
【図16A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図16B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図17】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを図式的に示す図。
【図18A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図18B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図18C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整技術の諸特徴を示す図。
【図19A−1】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19A−2】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19D】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19E】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19F】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図19G】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整装置の諸特徴を示す図。
【図20】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを示す図。
【図21】本発明の実施形態に従い患者に圧力調整治療を施すためのシステムを図式的に示す図。
【図22A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22C】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22D】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22E】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22F】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図22G】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図23】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図24】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図25A】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【図25B】本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システムの諸特徴を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の実施形態は、胸腔内圧、気道圧または気管内圧を調整するための技術を包含する。或る場合には、真空を適用する前に終末呼気陽圧(PEEP)を提供できる。或る場合には、真空を適用した後で終末呼気陽圧を提供できる。終末呼気陽圧を追加すると、疾
患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給および保護を提供できる。或る場合には、終末呼気陽圧は、機械的換気を介して提供され、呼吸サイクルの終末に気道内に存在する大気圧よりも高い圧力であることができる。終末呼気陽圧は、肺胞虚脱を妨げ、より多くの肺単位を回復し、機能的残気量を増し、流体を肺胞内に再分配することによってガス交換を改善できる。或る場合には、胸腔内圧調整器を使用することで自律神経系を上方調節できる。また或る場合には、胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ(IABP)を組合わせることで、循環の増進にいずれか単独の場合よりも大きい効果を提供できる。
【0057】
広い意味で本発明は、頭蓋内圧と眼球内圧を下げて脳潅流圧を増すための装置および技術を提供する。そのような装置および技術は、特に外傷性脳損傷を患った患者や、低血流状態および低血圧の患者に有用であり得る。治療できる状態の例は、低血圧、血液量減少に続発するショック、敗血症、心不全などを含む。頭部の圧力は下げるが、体循環圧は維持または増加する一方法は、患者の気道に連結されて胸腔内圧を下げるために使用される弁システムを用いることである。そのようにする際に、脳からの静脈血の除去を加速し、それによって頭蓋内圧と眼球内圧を減少させる弁システムが使用されてよい。同時に、心臓への静脈環流が増進されるために体循環圧が増加する。別の技術も使用してよく、たとえば胸部内に間欠的に真空を作り、および/または外部胸部陽圧源を用いて患者の胸部を反復的に圧縮および/または減圧してよい。頭蓋内圧を減じることによって、脳脊髄液の運動も増進される。このようにすると、頭蓋内圧は、さらに減少し、それによって頭部外傷を患っている患者にさらに治療が提供される。或る場合に弁システムは、頭蓋内圧上昇を招く心臓状態(心房細動、心不全、心タンポナーデなど)を患っている患者において脳機能の治療にも使用できる。そのような心臓状態は、たとえば心房細動または心不全を含んでよい。頭蓋内圧を減じることによって、脳脊髄液の運動と移動が増加して脳機能の改善を助ける。
【0058】
頭蓋内圧は、頭部に対する動脈血圧によって決まる脳潅流圧、頭蓋骨内の圧力、および脳から血流を排出する静脈系内の圧力の値によって調整される。本発明の装置と方法は、脳からの静脈血の放出を増進し、それによって頭蓋内圧を下げるために使用されてよい。装置と方法は、自発的に呼吸する患者および補助換気を必要とする患者に使用できる。このようにするために装置と方法を用いて、患者が吸入する度に(または無呼吸患者の場合には胸部の圧力が大気圧以下に低下するように操作される度に)胸腔内真空作用を増大させ、それによって胸部内、および脳から血液を運び出す静脈血管内の圧力を下げることができる。真空作用は、脳に導入され、その結果として吸気努力の度に頭蓋内圧が下げられる。これはまた他の仕方で可能であるよりも多くの静脈血を頭部から流出させて、頭蓋内圧と眼球内圧を低下させる。その上、胸腔内陰圧が生成される度に心臓への静脈環流が増加するので重要臓器への循環が増加して、心拍出量の増加と臓器潅流の改善をもたらす。このように、本発明は、低心拍出量状態や低血圧を患っている患者を助けるために使用されてよい。
【0059】
呼吸ガスが肺に流れるのを妨害または抑制するために、多様な抑制機構または妨害機構が使用されてよく、これには特許文献1〜特許文献7、ならびに2002年8月19日に出願された米国特許出願第10/224263号明細書(「血液循環を増進させるためのシステムおよび方法」代理人整理番号16354−000115)、2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/401493号明細書(「糖尿病治療のシステムと方法」代理人整理番号16354−000116)、2001年9月28日に出願された米国特許出願第09/966945号明細書、および2001年9月28日に出願された米国特許出願第09/967029号明細書に記載されているものを含み、参照によってこれらの全内容が本明細書に編入される。弁システムは、患者が吸入する間、呼吸ガスが患者に流入するのを完全に妨げるか、または抑制するように構成されてよい。呼吸ガスの
流れを完全に妨げる弁システムについて、そのような弁は、胸腔内陰圧閾値に達すると開く感圧弁として構成されてよい。
【0060】
たとえば呼吸ガスの流入に対する抵抗は、約0cmH2O〜約−25cmH2Oの間で設定でき、可変または一定であってよい。より好ましくは、弁システムは、胸腔内陰圧が約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲にあると開くように構成されてよい。その上、弁システムは、連続的または可変的に使用されてよい。たとえば弁システムは、他のすべての自発呼吸に使用されてよい。
【0061】
制限を意図するものではないが、頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できる特定の種類のインピーダンス弁は、バネ付勢装置を有する弁システム、弁室を開閉する自動的/電子的手段および機械的手段、ダックビル弁、ボール弁、自発呼吸および/または胸腔内圧を操作する外部システム(たとえば換気装置、横隔神経刺激装置、鉄製胸甲など)によって引起こされる低差圧を感知すると開閉できるその他の感圧弁システムを含む。
【0062】
過去において、そのような閾値弁システムは、心臓に対する静脈前負荷を増すため、ならびに後続の心臓収縮に対する胸腔内真空の作用の増大のために心拍出量、1回拍出量および血圧を増す目的で使用されてきた。これと対照的に、本発明の技術は、脳の静脈側から血液を除去することを促進することによって機能する。そのような弁システを使用すると心臓から重要臓器(脳を含む)への血流は、増加するであろうが、脳への血流が増加することが知られているので、弁システムが頭蓋内圧を下げる効果は、全く予想されなかった。しかしながら注目すべきことに、弁システムを使用すると、脳からの静脈血圧の低下は、相当なものである。こうして、脳への血流が増加するにもかかわらず、弁システムの正味の効果は、頭蓋内圧を減らすことである。
【0063】
弁システムを患者の気道に連結すると、弁システムを通して吸入することで胸腔内陰圧を増進できる。患者が自発的に呼吸している場合、患者は、単に弁システムを通して呼吸するだけでよい。患者が呼吸していない場合、横隔膜の電気刺激、胴鎧すなわち鉄製胸甲などの陰圧換気装置、または陽圧換気の間に真空も生成できる陽圧換気装置を含む多様な技術を用いて人工呼吸を誘導できる。
【0064】
弁システムは、一定の作動圧力を有してよく、または可変であって、所望の胸腔内陰圧に達したら流れ抵抗が減少してよい。さらに本発明の弁は、手動的または自動的に可変であるように構成されてよい。流れ抵抗が変化する程度は、治療されている患者につながれた1つ以上のセンサで測定された生理的パラメータに基づきよい。このように、流れ抵抗は、患者の生理的パラメータが妥当な範囲内にもたらされるように変えることができる。自動化されたシステムを使用する場合、そのようなセンサは、参照によって編入された引例に一般的に説明されているように、流入弁の抵抗または作動圧力を変える1つ以上の機構を制御するために用いられる制御装置に連結されてよい。
【0065】
したがって本発明の弁システムは、胸腔内圧またはその他の生理的パラメータの変化を感知するために使用されるセンサを組込むか、またはこれらに結合されてよい。一面においてセンサは、測定された信号を制御装置に通信している遠隔受信装置に無線伝送するように構成されてよい。制御装置の方では測定された信号を用いて、上述した弁システムまたは参照によって本明細書に編入された弁システムの動作を変化させることができる。たとえばセンサは、血圧、圧力心臓内の、胸腔内圧、終末呼気陽圧、呼吸速度、頭蓋内圧、眼球内圧、呼吸流、酸素供給、温度、血中pH、終末呼気二酸化炭素、組織内二酸化炭素、血液酸素、心拍出量などを検出するために使用できる。これらのセンサから出る信号は、受信装置に無線伝送できる。次にこの情報は、参照によって本明細書に編入された引例に記されている流入弁の動作圧力または抵抗を制御するために制御装置によって使用され
てよい。
【0066】
頭蓋内圧を減じる技術は、多様な状況で使用できる。たとえば技術は、自発的に呼吸している患者、呼吸していないが心臓が鼓動している患者、および心停止状態にある患者で使用されてよい。後者のケースでは、技術は、心肺蘇生の実施中に胸部内に間欠的に真空を作るための何らかの手段を使用してよい。これは、弁システムまたは他の何らかのタイプの圧力操作システムを用いることによって可能であろう。さらにそのようなシステムは、患者が呼吸している場合を含む他の状況でも使用されてよい。
【0067】
図1は、頭蓋内圧または眼球内圧を減じるための一方法を示すフローチャートである。ステップ10に示されているように、プロセスは、弁システムを患者の気道に連結することによって進行する。任意の種類の連結機構、たとえばマウスピース、気管チューブ、フェイスマスクなどが使用されてよい。さらに本明細書に記載または編入された任意の弁システムが使用されてよい。ステップ20において、患者の胸腔内陰圧を(人工呼吸または自発呼吸で)反復的に減少させる。胸腔内陰圧を人工的に減じる技術の例は、鉄製胸甲装置、陰圧を生成することができる換気装置、1分間に約200〜約2000回の速度で高周波数振動を提供できる換気装置、横隔神経刺激装置などの使用を含む。弁システムが気道に連結されている間、患者の胸腔内陰圧が反復的に減じられるので、頭部から血液を運び出す静脈血管内の圧力も低下する。このようにすると、頭蓋内圧と眼球内圧が減少する。
【0068】
ステップ30に示されているように、患者の種々の生理的パラメータが随意に測定されてよい。そのようなパラメータの例は、呼吸速度、胸腔内圧、気管内圧、頭蓋内圧、頭蓋内血流、眼球内圧、血圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素飽和などを含む。さらにステップ40に示されているように、弁システムを作動させる閾値レベルは、測定された生理的パラメータに基づき随意に変更されてよい。これは脳から引出される血液の量を最大化するため、または単に患者の状態を監視して患者を安定させておくために行うことができる。
【0069】
図2に、弁システム200に連結されるフェイスマスク100の一実施形態を示す。マスク100は、患者の顔に固定されて口と鼻を覆うように構成されている。マスク100と弁システム200は、胸腔内圧を下げ、それによって頭蓋内圧と眼球内圧を下げるために使用できる装備の一タイプの例である。しかしながら、たとえば既述のものを含む他の弁システムおよび他の連結装置も使用されてよいことは、認識されよう。したがって本発明は、以下に述べる特定の弁システムおよびマスクに制限されるものではない。
【0070】
図3〜図5も参照して、弁システム200をより詳しく説明する。弁システム200は、換気チューブ208のボール206を受容するソケット204を有する弁ハウジング202を含む。このようにして換気チューブ208は、水平軸回りを回転でき、垂直軸に対して旋回できる。換気を補助するために換気バッグなどの呼吸源をチューブ208に連結できる。換気チューブ208内には、ダックビル弁212の上方に離れてフィルタ210が配置されている。弁ハウジング202内部には、ダイヤフラム216を保持するダイヤフラムホルダ214が保持されている。弁システム200はさらに、第2ハウジング220によって所定位置に保持される患者ポート218を含む。ハウジング220は、適宜に弁システム200をフェイスマスク100に連結するのを容易にするためのタブ222を含む。ハウジング220内には、バネ224a、リング部材224b、およびOリング224cを有する逆止弁224も保持されている。バネ224aは、リング部材224bを患者ポート218に対して付勢している。患者ポート218は、バイパス開口部226を含んでおり、これは患者ポート218内の圧力が閾値陰圧に達してバネ224aを圧縮するまで逆止弁224のOリング224cによって覆われている。
【0071】
患者が能動的に換気されると、呼吸ガスは、強制的に換気チューブ208を通される。ガスは、フィルタ210およびダックビル弁212を通って流れ、そしてダイヤフラム216を上昇させることによってポート218を通って出ることができる。したがって単に呼吸ガスを強制的にチューブ208に通すことによって患者は、随時換気され得る。
【0072】
呼吸サイクルの呼気相の間、呼気ガスは、ポート218を通って流れ、ダイヤフラム216を持ち上げる。次にガスは、換気チューブ208内の通路227を通って流れ、開口部229を通ってシステムから出る(図3参照)。
【0073】
呼吸サイクルの吸気相の間、弁システム200は、胸腔内陰圧レベルの閾値を越えるまで呼吸ガスが肺に流入するのを妨げる。この圧力レベルを越えるとバネ224aが圧縮されるために逆止弁224は、下方に引っ張られて、呼吸ガスを最初は、チューブ208、次にダックビル弁212を通って開口部226から患者の肺に流す。弁224は、胸腔内陰圧が約0cmH2O〜約−25cmH2O、より好ましくは約−2cmH2O〜約−20cmH2Oの範囲にあると開くように設定できる。したがって、患者が弁システム200を用いて吸入する間、胸腔内陰圧の大きさと持続時間を増進できる。胸腔内圧が閾値以下に低下すると、復座バネ224aが再び逆止弁224を閉じる。このようにして、脳から血液を運び出す静脈血管内の圧力も下げられる。こうしてより多くの血液が脳から引出されて頭蓋内圧と眼球内圧を減じる。
【0074】
図6に例示されているように、本明細書に記載された任意の弁システムを治療システム300に組込むことができる。治療システム300は、適宜にフェイスマスク100および弁システム200を含むが、本明細書に記載された任意の弁システムまたはインタフェース機構などが使用されてよく、図14の弁システムを含むがこれに限らない。弁システム200は、適宜に制御装置310に連結されてよい。制御装置310もまた本明細書に記載または編入される任意の実施形態に準じる仕方で弁システム200のインピーダンスレベルを制御するために使用されてよい。インピーダンスのレベルは、生理的パラメータの測定に基づき、またはプログラムされた変更スケジュールを用いて変えられてよい。治療システム300は、本明細書に記載された任意の生理的パラメータを測定するために、非常に多様なセンサおよび/または測定装置を含んでよい。これらのセンサまたは測定装置は、弁システム200またはフェイスマスクに統合されるか、これらに連結されるか、または別個であることができる。
【0075】
たとえば弁システム200は、圧力測定(たとえば胸腔内圧、頭蓋内圧、眼球内圧)を行うための圧力変換器、肺に入るまたは肺から出る空気の流量を測定するための流量測定装置、または呼気二酸化炭素を測定するための二酸化炭素センサを含んでよい。
【0076】
別のセンサまたは測定装置の例は、心拍数センサ330、血液圧力センサ340、および温度センサ350を含む。これらのセンサは、制御装置310に連結されて、測定結果を記録することもできる。さらに種々の生理的パラメータ、たとえば酸素飽和および/または血中酸素濃度、血中乳酸塩、血中pH、組織内乳酸塩、組織内pH、血圧、圧力心臓内の、胸腔内圧、終末呼気陽圧、呼吸速度、頭蓋内圧、眼球内圧、呼気流、酸素供給、温度、終末呼気二酸化炭素、組織内二酸化炭素、心拍出量などを測定するために、別のタイプの測定装置を使用できることは認識されよう。
【0077】
或る場合には、制御装置310を用いて弁システム200を制御し、何らかのセンサまたは測定装置を制御し、測定結果を記録し、そして比較を行うことができる。代替として、そのような作業を実行するために、一連のコンピュータおよび/または制御装置を組合わせて使用できる。この装備は、治療システム300を操作するのに必要とされる適当な
プロセッサ、ディスプレイスクリーン、入出力装置、登録装置、メモリまたはデータベース、ソフトウェアなどを有してよい。
【0078】
患者に人工的に呼吸させるために多様な装置が制御装置310に連結されてよい。たとえばそのような装置は、換気装置360、鉄製胸甲装置370または横隔神経刺激装置380を含むことができる。換気装置360は、患者の体内に胸腔内陰圧を作るように構成されてよく、または1分間約200〜約2000回の振動を発生できる高周波数換気装置であってよい。
【0079】
<例1>
以下に、本発明に従い頭蓋内圧を下げる方法を非制限的な例で説明する。この例では30kgのブタに、プロポフォールで麻酔を施した。ミラー社製圧計測電子カテーテルを硬膜下に挿入し、自発的に呼吸するブタの頭蓋内圧を連続的に測定した。竜骨の高さで気管に配置されたミラーカテーテルを用いて胸腔内圧(ITP)を記録した。ブタの血圧、心拍数、および換気量が安定した後で、頭蓋内圧(ICP)と胸腔内圧を吸気インピーダンス0cmH2Oで記録し、次いで吸気インピーダンス5、10、15、および20cmH2Oで記録した。吸気インピーダンスは、図2〜図5に記載されたインピーダンス閾値弁(ITV)を用いて達成された。
【0080】
ベースとして頭蓋内圧は、約8/4mmHgであった。図7に示されているように、吸気インピーダンスの値が上昇するに連れて、頭蓋内圧は、比例的に低下した。ブタがインピーダンス20cmH2Oを通して呼吸したとき頭蓋内圧は、6/−2mmHgであった。この所見は、複数のブタの調査で観察され、再現可能であった。次にミラーカテーテルをブタの脳内に3cm挿入した。プローブの挿入に伴う外傷に続いて頭蓋内圧は、増加した。頭蓋内圧は、25/22mmHgに上がり、これを新しいベースラインとした。次に種々の抵抗レベルでインピーダンス閾値弁を評価した(図8)。再び、頭蓋内圧は、吸気インピーダンスの大きさに比例して減少した。
【0081】
<例2>
この例では、心停止から回復する状況で頭蓋内圧が増加した。この例に使用したブタモデルは、心室細動が6分間続いた後、心肺蘇生を6分間施し、次いで除細動を行った。動物が例1に類似の弁システムを用いて吸気インピーダンス10cmH2Oを通して呼吸したとき、自発呼吸の結果として頭蓋内圧は、最大50%減少した。
【0082】
上記のすべての例において、胸腔内圧は、体の残余の部分に対して減少して吸引効果を生み出し、それが脳から出る静脈血管内の圧力を低下させ、それによって頭蓋内圧を低下させた。
【0083】
本発明はさらに、脳脊髄液(CFS)の運動を促進することで頭蓋内圧(ICP)を減じるための技術および装置を提供する。頭蓋内圧が上昇する原因は、多数あり、頭部損傷、虚血、浸透圧不均衡、脳浮腫、腫瘍、透析の合併症、感染、脳卒中、高血圧性発症を含む。いずれも徐々に、また或る場合には急激に頭蓋内圧を増加させる。脳内容の固形物は、頭蓋骨で包囲された物質の約80〜85%を占める。脳血液量は3〜6%、および脳脊髄液は5〜15%である。これについては、非特許文献1の参照を求め、参照によってその全内容が本明細書に編入される。脳脊髄液は、正常の生理的状態では脳内部の産生される部位から脳内に再吸収される部位に妨げられずに移動する。脳内容は、事実上非圧縮性なので、3つの主要な構成要素(固形物、血液量、脳脊髄液量)のいずれか1つ量が変化すると、相互的に他の1つまたは2つの脳構成要素を変化させる。脳脊髄液以外の構成要素の増大に伴って脳の容積が拡大したら、脳脊髄液の一部は、他の場所に移動せざるを得ず、大後頭孔(頭蓋骨を脊髄が位置している場所に接続している頭蓋骨中の孔)を通って
脊髄を包囲している脳脊髄液腔に移る。脳脊髄液以外の構成要素が量または大きさを増したら、頭蓋内圧が上昇する。正常な頭蓋内圧レベルは、仰臥位で10〜15mmHgである。レベルが15〜20mmHgを越えると、圧縮に続発して脳に損傷を来す結果、組織虚血(十分な血流の欠如)を招くことがある。頭蓋内圧レベルの低下は、多数の臨床的治療介入によって達成でき、これには水分制限、利尿薬、ステロイド、過換気、脳静脈圧の減少、低体温、脳脊髄液排出、および外科的減圧を含む。
【0084】
頭蓋内圧が上昇すると、脳脊髄液の運動と移動が減少する。頭蓋内圧が上昇しても脳脊髄液の産生は、概して一定している(約150ml/日)。頭蓋内圧を上昇させることで、脳脊髄液の再吸収を遅くすることができる。本明細書に記載された弁システムを用いることで、中心静脈圧を下げることができる。これはまた頭蓋内圧の減少をもたらし、脳脊髄液の運動または移動および再吸収の増加をもたらす。この結果、さらに頭蓋内圧は、さらに減少する。
【0085】
本発明の弁システムは、自発的に呼吸する患者、陰圧換気で換気される患者、または呼吸サイクルの少なくとも一部で中心静脈圧を減少させる換気装置で換気される患者に使用されてよい。本発明の弁システムによって胸腔内圧が減じられる度に、同時に頭蓋内圧が減少して脳脊髄液の運動が増加する。言い換えれば、弁システムを使用すると頭蓋内圧波形のピークと谷の差が増大する。自発的に呼吸する患者では胸部の圧力が変化すると正弦波運動が生じ、静脈血管を介して脳に伝達される。正常に変動する脳脊髄液圧(吸気の度に圧力が増減する)は、弁システムによって変化させられる。より具体的には、弁システムは、より低い谷値を作り、それによって吸気の度に頭蓋内圧の全体的な変化を生み出す。無呼吸患者においても弁システムを、鉄製胸甲、横隔神経刺激装置(たとえば米国特許第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書に記載されており、参照によって本明細書に編入される)、胸部を周期的に拡張するために使用される胸部上の吸引カップなどの多様な換気装置と一緒に使用することで類似の効果を生み出すことができる。
【0086】
脳脊髄液の運動が増大すると、脳の代謝状態が全体的に改善される。これは図9Aおよび図9Bに図式的に示されている。図9Aには、脳400が正常な状態で示されている。脳400は、部位404で産生される脳脊髄液402によって包囲されている。脳脊髄液は、また頭蓋骨406によって包囲されている。血液は、動脈408を通って脳400に入り、静脈410を通って出る。静脈410は、脳脊髄液を排出する部位412も含んでいる。図9Aに示された矢印は、脳脊髄液が排出されるときに流れる方向を示している。脳400から脊髄414が延び、大後頭孔416によって囲まれている。
【0087】
図9Bにおいて脳400は、著しく腫脹して脳脊髄液が位置するスペース402を狭めている。脳400が腫脹すると、矢印418で示されているように脳脊髄液が脊髄414に流れるのを阻止することがある。また脳脊髄液の部位412への運動も減少して、脳脊髄液が頭蓋骨406の外に出る運動が妨げられる。
【0088】
上述したすべての状態に伴って上昇した頭蓋内圧を、本明細書に記載された弁システムを用いて治療することで、脳腫脹を低減できる。このようにすると、同じ状態の下で脳脊髄液の運動と液移動が増大する。この結果、脳脊髄液が変位できるので頭蓋内圧がさらに減少する。
【0089】
次に図10を参照して、心房の収縮が頭蓋内圧に与える影響について説明する。周知のように心房の収縮は、頭蓋内圧の相動性運動を生じる。これは、心室細動の間に最も明瞭に実証できる。この状況で心房は、しばしば自発的に拍動し、各々の収縮および弛緩波形の圧力は、直ちに脳に伝達されて、頭蓋内圧のほぼ同一の変動となって現れる。発明者は
、流体系(静脈血管および脳脊髄液)は、非常に密接に結合しており、心臓リズムの微妙な変化も直ちに脳脊髄液圧を変化させることを発見した。こうして顕著な心臓リズムまたは顕著な心不全を有する患者において、そのような状態の結果として右心圧が上昇すると、頭蓋内圧の上昇をもたらす。そのような頭蓋内圧の上昇は、脳潅流の減少につながる。なぜなら脳潅流は、脳に入る血液の圧力(平均動脈圧)から脳を出る血液の圧力(頭蓋内圧および中心静脈圧)を減算した値によって決まるからである。本明細書に記載された弁および胸腔内真空システムを用いると、胸腔内圧の減少がもたらされる。図10に示されているように、下方を指している矢印は、弁システムを通した各々の吸気のタイミングを表している。心房細動を開始する前のベースライン状態において、各々の吸気(小さい矢印)の結果、胸腔内圧の減少、右心房圧の減少、中心静脈圧の減少、そして直ちに頭蓋内圧の減少が生じる。心房細動が開始すると、頭蓋内圧の上昇および頭蓋内圧振幅変化の正弦波パターンが穏やかになる。動物が吸気インピーダンス−10cmH2Oを通して吸入し始めると直ちに胸腔内圧(ITP)が減少し、右心房(RA)圧が直ちに減少し、そして直ちに頭蓋内圧(ICP)が減少すると共に吸気の度に頭蓋内圧の正弦波変動が回復する。頭蓋内圧が上昇しているときに妨害手段を通して吸気すると、頭蓋内圧の減少、脳脊髄液流の増加、および脳潅流の増加に続いて脳虚血の減少がもたらされる。このように、弁システムは、心房細動などの心臓リズムを有する患者や、心不全のために頭蓋内圧が増加した患者に使用して、頭蓋内圧を下げ、脳脊髄液の運動と移動を増進し、最終的に脳機能の改善を助けることができる。
【0090】
したがって、吸気抵抗の値、または(多様な技術を用いて生成できる)胸腔内陰圧生成の値は、頭蓋内圧、血圧、呼吸速度、心拍出量、またはその他の生理的パラメータ測定からのフィードバックによって制御または調整できる。このようなシステムは、閉ループフィードバックシステムを含むことができよう。
【0091】
図11は、頭蓋内圧上昇を伴う頭部外傷を患っている患者を治療するための別の方法を例示するフローチャートである。こうすればそのような技術は、とりわけ低血圧を患っている患者または心停止状態にある患者の治療にも使用できることが認識されよう。この技術は、特に患者が呼吸していない場合に有用であるが、或る場合には呼吸している患者にも同様に使用できよう。
【0092】
広い意味で、頭部外傷を患っている患者を治療するとき、患者の胸腔内圧を下げて頭蓋内圧を減らす。これは、また二次性脳損傷の緩和を補助する。ステップ500に示されているように、患者の胸腔内圧を下げるのを補助するために患者に装備が連結されてよい。胸腔内圧を減らすために非常に多様な装備と技術を使用できるが、これにはたとえば米国特許第6584973号明細書に記載された呼吸ガスを抜出すことができる機械的換気装置、たとえば米国特許第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書;第6463327号明細書に記載された横隔神経またはその他の筋肉の刺激装置(たとえば米国特許第5551420号明細書;第5692498号明細書;第6062219号明細書;第5730122号明細書;第6155257号明細書;第6234916号明細書;第6224562号明細書に記載されたインピーダンス機構を使用する、または使用しない)、鉄製胸甲装置、胸壁上で外方に引っ張って鉄製胸甲の効果に類似に胸腔内真空を作ることができる胸部ベスト、たとえば2003年11月9日に出願された米国同時係属出願第10/660366号明細書(代理人整理番号16354−005400)に記載された換気バッグなどを使用することを含む。参照によって以上の引例の全内容を本明細書に編入する。呼吸している患者に対しては吸気中に約5cmH2Oが生成されると開くように設定された上記の閾値弁を用いて、患者の胸腔内陰圧を増進できる。
【0093】
患者が呼吸していないときには、ステップ502に示されているように、患者に陽圧呼
吸が送込まれる。これは機械的換気装置、換気バッグ、口移しなどで行われてよい。これに続いて直ちに胸腔内圧を減らす。これはステップ504に示されているように、患者の肺から呼吸ガスを抜出すか押出すことによって行うことができる。胸腔内圧を下げるために、上述した任意の技術が使用されてよい。そのように胸腔内圧を下げると、中心静脈圧および頭蓋内圧も下がる。
【0094】
呼気相の間の真空作用は、一定であるか、時間と共に変化するか、パルス状であってよい。後で真空を適用する種々の方法の例を図12A〜図12Cに関連して説明する。初期陽圧呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒、より好ましくは約0.75秒〜約1.5秒の時間で供給されてよい。呼吸ガスは、陽圧呼吸の時間に対して約0.5〜約0.1の時間で抜出されてよい。陽圧呼吸は、1秒間約0.1リットル〜約5リットル、より好ましくは1秒間約0.2リットル〜約2リットルの範囲の流量で送込まれてよい。呼気流(たとえば機械的換気装置を使用する場合)は、1秒間約0.1リットル〜約5リットル、より好ましくは1秒間約0.2リットル〜約2リットルの範囲にあってよい。真空は、負の流れで、または流れなしで維持されてよい。真空は、約0mmHg〜約−50mmHg、より好ましくは約0mmHg〜約−20mmHgの範囲にあってよい。
【0095】
ステップ506に示されているように、陽圧呼吸を送込んで直ちに胸腔内圧を下げるプロセスは、頭蓋内圧を制御するために必要である限り反復されてよい。その必要がなくなれば、プロセスは、ステップ508で終了する。
【0096】
陽圧呼吸と真空の作り方は、具体的な用途に応じて異なってよい。これらは異なる持続時間と勾配を有する多様な波形で適用されてよい。例は方形波、二相性(真空が作られた後に陽圧が続く)、減衰(真空が作られた後に減衰させる)などを使用することを含む。これらがどのように起こるかを表す3つの特定の例が図12A〜図12Cに示されているが、他の例も可能である。説明の便宜のため、陽圧呼吸が起きている間の時間は、吸気相という用語で定義し、胸腔内圧が下げられる間の時間は、呼気相という用語で定義できる。陽圧呼吸は、1分間約10〜約16回行われてよく、吸気相は、約1.0〜約1.5秒続き、呼気相は、約3〜約5秒続く。図12Aに示されているように、呼吸ガスは、急速に圧力が約22mmHgになるまで供給される。これは直ちに約−10mmHgの陰圧に逆転される。この圧力は、呼気相の終了まで比較的一定に保たれ、このサイクルが繰返される。
【0097】
図12Bにおいて、陽圧は、より緩慢に適用される。約10〜約15mmHgの圧力に達すると、圧力は、急速に約−20mmHgの陰圧に逆転される。陰圧は、徐々に減退して呼気相の終末には約0mmHgになる。次いでこのサイクルが繰返される。したがって図12Bのサイクルでは、陽圧は、図12Aに示すサイクルと比べて低く、陰圧は、最初より低いが徐々に上昇する。この技術は、可能な気道虚脱を低減するのを助けるように設計されている。
【0098】
図12Cにおいて、陽圧は、20mmHgにもたらされてから直ちに約0mmHgに下げられる。次に陰圧が呼気相の終末に向かって徐々に約−20mmHgまで増大される。このサイクルは、可能な気道虚脱を低減するのを助けるように設計されている。
【0099】
図13Aと図13Bは、無呼吸患者で胸腔内圧を下げるために使用できる装置500の一実施形態を図式的に示す。装置500は、任意のタイプの患者インタフェースを用いて患者の気道に直接的または間接的に連結できるインタフェース開口部504を備えたハウジング502を包含する。ハウジング502は、真空を生成できる任意のタイプの装置またはシステムに流体連通している真空源インタフェース506も含む。またハウジング502には真空を調整するための手段、たとえば感圧弁システム508も連結されている。
装置500はさらに、真空が適用されていないときに必要があれば、患者に呼吸を提供するために使用できる換気インタフェース510を含む。
【0100】
この実施形態において、真空は、本質的に任意のタイプの真空源によって提供されてよく、調整器は、インピーダンス弁、たとえば米国特許第5551420号明細書;第5692498号明細書;第6062219号明細書;第5730122号明細書;第6155257号明細書;第6234916号明細書;第6224562号明細書;第6234985号明細書;第6224562号明細書;第6312399号明細書;第6463327号明細書に記載されたインピーダンス弁、および本明細書に記載された別のインピーダンス弁を含むことができる。呼吸を供給するために多様な換気源、たとえば換気インタフェース510に連結されるバッグ弁蘇生器が使用されてよい。装置500はさらに、バッグ弁蘇生器から患者に呼吸を送込むときに真空を阻止するための機構512を含んでよい。呼吸が供給されたら、機構512は、胸部内に真空が再び適用されるのを許すように動作する。真空源を入れたり切ったりするために用いられる機構512は、図13Bに例示されているように、真空源を有するハウジング502内で動いて分岐路を閉じるスライドスイッチを含むことができる。しかしながら、別のタイプのスイッチまたは機構が使用されてもよい。或る場合に真空源は、呼吸が施されていて機構512が必要とされないときに真空を止めるように構成された制御装置を有することができる。また呼吸の供給と停止を感知して、機構512が制御装置によって適切に操作できるようにするために、制御装置と適当なセンサを用いることもできよう。呼吸が送込まれた後で機構512は、図13Aに示す位置に戻って、患者に真空が供給され得る。真空が閾値量に達すると、調整器508は、真空のレベルをほぼ閾値量に維持するように動作する。
【0101】
図14Aと図14Bは、装置530を患者の治療に使用できる別の実施形態を示す。装置530は、図13Aと図13Bに示す装置500に同様の原理を用いて動作する。装置530は、患者の気道に連結できる患者インタフェース534と、真空源に連結できる真空インタフェース536とを有するハウジング532を包含する。ハウジング532は、陽圧呼吸を供給できる換気インタフェース538も含む。ハウジング532には、患者に供給される真空の量を調整する真空調整器540も連結されている。使用できる流量調整器の一例を、以下に図15Aと図15Bを参照して説明する。しかしながら、本明細書に記載された任意の流量調整器が使用されてよいことは、認識されよう。ハウジング532内に配置されている流れ制御装置542は、ハウジング532を通るガス流を集結するために使用される。流れ制御装置542は、ハウジング532内でスライドできる円筒部材544を包含し、かつ流れ制御装置542が図14Aに示す位置にあるときに患者インタフェース534と真空インタフェース536との間のガス流を許す流路546を含む。適宜に、流れ制御装置542を図14Aに示す定位置に保持するためにバネ548またはその他の付勢機構が使用される。流れ制御装置542は、図14Aに矢印で示すように調整器540と真空インタフェース536との間のガス流を許す流路550も含む。したがって、定位置にあるとき、真空インタフェース536を通して真空が供給されて、患者の胸腔内圧を下げることができる。真空が大きくなり過ぎると、調整器540を通ってガスが流されて真空の量を下げる。
【0102】
図14Bに例示されているように、流れ制御装置542は、換気インタフェース538から患者インタフェース534に通じる流路552も含む。これは換気インタフェース538を通して患者に陽圧呼吸が供給されるようにする。より具体的には、換気インタフェース538を通してガスが注入されると、流れ制御装置542に流入し、これをハウジング532内で動かしてバネ548を圧縮する。このようにすると、ハウジング532がブロックされて流路546は、閉じる。流路550も閉じて、流路552のみ開いておき、呼吸ガスが患者に流れるようにする。陽圧呼吸が停止するとバネ548が流れ制御装置を定位置に戻して、再び患者に真空が供給される。
【0103】
したがって、真空インタフェース536から真空が適用されるときには、インピーダンス弁540のクラッキング圧に達するまで、患者インタフェース534を通して患者から空気が引出される。この時点で空気は、換気インタフェース538の換気源からインピーダンス弁540を通過し、患者内で達成される真空を制限する。換気インタフェース538の換気源から陽圧換気が供給されるときには、内部スライドスイッチシリンダ542が下方に動いて真空源を閉じ、陽圧容積を送込んで患者に呼吸を提供する。流れ制御装置542は、装置542が最小の力を加えるだけで動くのを助けるカップ形開口部556を含んでよい。呼吸が供給され終わると、換気源から装置542に正の力が加えられず、バネ548は、上方に押し上げて患者を再び真空源に曝露する。
【0104】
装置530は、随意の圧力ポップオフ調整器560も含んでよい。真空源が大き過ぎる場合には、ポップオフ調整器560が開いて所望の真空圧を越える圧力を逃がす。ポップオフ調整器560は、約20〜約100mmHgより大きい圧力に対して開くように構成されてよい。
【0105】
図13と図14に示す装置は、(真空を入れたり切ったりするための)機械的スイッチ機構を備えて示されているが、他のスイッチたとえば磁気的、電子的、または電気的スイッチも用いられてよい。他の種類の可能なスイッチは、ボール弁、フラッパ弁、僧帽弁、またはその他の機械的手段、ならびにソレノイドを含む電気的または電子的弁システムを含んで、換気源から陽圧呼吸が送込まれると一時的に真空を阻止できる。真空の流れまたは力を制限するために真空源に追加の調整器も使用できる。たとえば真空源は、閾値レベルが達成されたら一定の真空を提供するように構成できよう。その上、真空調整器とインピーダンス弁508および530は、可変であっても、一定のレベルのインピーダンスに設定されてもよい。真空源は、吸込管であってよく、または酸素タンクに装着されたベント装置から出て、患者に酸素と真空源の両方を提供できるようにされてもよい。さらに本発明は、真空を調整するために、ここに示されたインピーダンス弁を使用することに限られない。それに代えて多数の切替え手段および調整手段が使用されてよい。換気源も同様に制限するものではなく、口移し、バッグ弁蘇生器、自動換気装置などの換気源を含んでよい。
【0106】
図15Aと図15Bは、流量調整器540をより詳細に示している。調整器540は、患者ポート572と換気ポート574を有するハウジング570を包含する。随意に補足酸素ポート576も提供されてよい。ガスは、ハウジング570(患者ポート572と換気ポート574の間)内を2つの流路のいずれか一方を通って流れる。第1流路は、逆止弁ガスケット580とバネ582を有する一方向逆止弁578によってブロックされる。第2流路は、ダイヤフラム584によってブロックされる。
【0107】
動作中は、真空ポート536で真空源から真空が引入れられると患者ポート572で真空が感知される(図14A参照)。真空が閾値レベルに達すると、バネ582が圧縮してガスケット580を下方に動かし、それによって図15Bに例示されているような流路を作る。真空が引入れられるとダイヤフラム584が閉じて空気が流路を流れるのを妨げる。真空が閾値レベルにある限り、ガスケット580は、開口部から離れた位置にある。このようにして調整器540は、真空を一定のレベルに維持することができる。
【0108】
患者を喚起する準備ができたら、真空が止められて呼吸ガスが換気ポート574および/または補足酸素ポート576に注入される。これらのガスは、ダイヤフラム584を持ち上げて、ガスが患者に流れるようにする。
【0109】
<例3>
例3は、本発明の一面に従い頭蓋内圧と胸腔内圧を下げて収縮期動脈圧を上げる方法を示すもう1つの非制限的な例である。この例では30kgのブタにプロポフォールで麻酔を施した。ミラー社製圧計測電子カテーテルを硬膜下に2cm挿入し、自発的に無呼吸ブタで頭蓋内圧を測定した。竜骨の高さで気管に配置されたミラーカテーテルを用いて胸腔内圧(ITP)を記録した。大動脈でミラーカテーテルを用いて収縮期大動脈圧血圧(SBP)を測定した。胸腔内圧を調整するために、図14A、図14B、図15A、および図15Bに示すシステムに類似のシステムを用い、吸気インピーダンス(−8cmH2Oおよび流量30L/分)を適用した。陽圧換気は、搬送用自動換気装置を用いて10呼吸/分の速度、および1.0秒間に送込まれる1回換気量約400mlで供給された。これらの新規の心肺・頭蓋相互作用を記述する目的、方法、結果、および結論を以下に要約する。
【0110】
この例の目的は、制御された連続真空(CV)源に装着された新規の吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)の緊急使用を評価するために、心停止と止血された一定出血による出血性低血圧ショックで順次障害された無呼吸ブタモデルにおいて、胸腔内圧(ITP)と頭蓋内圧(ICP)を減少させるのと同時に平均動脈圧(MAP)、冠動脈潅流圧(CPP)、および脳潅流圧(CerPP)を増加させることであった。この動物モデルは、心停止後の頭蓋内圧の上昇と出血後の顕著な低血圧の両方を発現した。
【0111】
この例は、6頭の雌の飼育ブタ(28〜32kg)を使用して、プロポフォールで麻酔し、挿管および換気して正常二酸化炭素状態および酸素飽和>90%を維持した。心室細動を誘導して6分間治療せず、続いて6分間標準心肺蘇生を施した後、除細動を行った。自発循環が戻った後、機械的に10呼吸/分で呼吸している間に血液量の35%を60cc/分の速度で除去した。5分後に吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空を5分間適用すると共に100%酸素の陽圧換気を10呼吸/分の速度で施した。次いで吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空を取外し、再び陽圧換気を10呼吸/分の速度で適用した。吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空の適用前、適用中、および適用後に血行動態パラメータと動脈血ガスを評価した。対応を有するt−検定とANOVAで統計的分析を行って+/−吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空使用を比較した。
【0112】
結果を以下の表に要約する。ここに示されるように、胸部圧力を調整することで、吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空の使用は、胸腔内圧と頭蓋内圧の瞬時の減少、および平均動脈圧の急速な上昇と脳潅流圧の著しい増加を引起こす。したがって吸気インピーダンス閾値弁装置−連続真空は、低血圧、ショック、および脳高血圧の治療に使用されてよい。
【0113】
【表1】
1つの具体的な実施形態において、患者は、多数の技術を単独でまたは組合わせて用いて、その胸腔内圧を操作され得る。たとえば何らかのタイプの外部胸部陽圧源を用いて患者の胸腔内圧を増加させた後に減少させることで、心臓と肺から血液を抜出し、また送込
むことを反復的に行うことができる。このような外部胸部陽圧源の例は、機械的胸腔外ベスト、胸甲、圧縮ピストン、圧縮カップなどを含む。そのような装置は、低血圧患者において血圧と循環の増加を維持するための非侵襲的な血行動態支援装置として機能できる。
【0114】
患者の胸腔内圧が外部から操作される(たとえば増減される)間、患者は、本明細書に記載された任意の技術を用いて陽圧呼吸と真空を適用することでその胸腔内圧を操作されることができる。さらに本明細書に記載された任意の弁システムを組合わせて用いることもできる。したがって、患者の胸部が圧縮および弛緩される間、同時に陽圧呼吸に続けて真空を適用することができる。このようにして、重要臓器への血流を改善するために非侵襲的な技術が限定されない期間にわたって提供され、患者がショックや重度の低血圧を有するケースや、心停止状態にある患者などに用いることができる。またそのような技術は、より信頼できる処理法が利用できるまで、心筋保護剤の等効物として心臓保存液を循環させるために使用されてよい。
【0115】
これらの各々のステップのタイミングを制御して任意のやり方で関連付けてよく、たとえば患者の胸部に加える力を弛緩させる間に真空を適用してもよい。また胸部圧縮のタイミングを別の変数に結び付け、たとえばタイミング圧縮および/または減圧を内因性心臓リズム(すなわちECG活動つまり心電図活動)に同期させることができよう。さらに陽圧呼吸は、必要とされるときのみ行い、各々の胸部圧縮に結合させなくてもよい。さらに所定数の胸部圧縮の後でのみ胸部を減圧してもよい。
【0116】
別の実施形態によるように、十分な呼吸を提供するために患者に周期的な陽圧換気または体外酸素供給器を供給してよい。陰圧換気は、適当な換気を提供するためにも使用できる。たとえば気道を妨げることなく胸部を減圧して陰圧換気を提供できる。また今述べた技術は、血圧を維持するためにも、単独で、または侵襲的な方法と組合わせて用いることができる。たとえば患者の血液の幾らかを体から取除けば、頭蓋内圧によって大きい効果を生み出せよう。
【0117】
そのような技術に使用できるシステムの具体的な配置構成の1つが図6(既述)に説明されており、部材370(鉄製胸甲装置)は、本明細書に記載された任意の外部胸部陽圧源を図式的に代表するものである。さらに制御装置310は、陽圧源を作動させるための何らかのタイプのエネルギー源、たとえば空気圧源、電子源、燃焼源なども含んでよい。このように多様なエネルギー源を使用して、交互に胸部を圧縮し、次いで圧縮を解除することができる。本明細書に記載された任意の技術によって、換気装置360を用いて陽圧呼吸に続いて真空を適用し、さらに適当な換気を提供することができる。さらに弁システム200が図示されているが、本明細書に記載されたその他の任意の弁システムも使用されてよいことは、認識されよう。また温度センサ350は、別のタイプのセンサおよび/またはモニタ、たとえば心電図モニタで代替されてよく、胸部圧縮および/または減圧を心電図活動に同期化できることも認識されよう。
【0118】
<胸腔内圧調整および終末呼気陽圧>
無呼吸患者または補助換気を必要とする患者の換気中に吸気/呼気サイクルで終末呼気陽圧を適用する胸腔内圧調整(IPR)技術において、陽圧呼吸または換気(PPV)を提供し、次いで終末呼気陽圧(PEEP)を提供し、それから真空を引入れることが可能である。このような技術の諸特徴が図16Aに例示されている。代替として、最初に陽圧呼吸または換気を提供し、次いで真空を引入れ、それから終末呼気陽圧を供給することも可能である。このような技術の諸特徴は、図16Bに例示されている。或る実施形態に従い、これらの治療は、少なくとも一部は、プッシュ・プル換気装置を用いて達成できる。或る場合には、これらの治療は、心肺蘇生(CPR)処置または治療低血圧もしくは低循環を治療するためのその他の解決策と組合わせて実施できる。陽圧換気、終末呼気陽圧、
および胸部内の真空生成の持続時間は、患者の生理的必要性に応じて異なってよい。図16Aと図16Bに示されたグラフには、新規の胸腔内圧調整技術に対する圧力対時間曲線が例示されている。圧力は、胸腔内圧(ITP)、気道圧、または気管内圧の用語で示され、単位はcmH2Oである。タイミングは、換気装置で設定される吸呼気比(I:E比)および呼吸速度の設定に依存してよい。ここに示す例では、吸呼気比は、1:3すなわち3分の1であり、呼吸速度は、1分間10呼吸である。或る場合に吸呼気比は、約1:1〜約1:4の範囲のいずれであってもよい。また或る場合に呼吸速度は、1分間約6〜約30呼吸の範囲内にあってよい。終末呼気陽圧を追加すると、疾患または障害を有する肺に陽圧呼吸だけの場合よりも多くの酸素供給を提供できる。或る場合に終末呼気陽圧は、機械的換気によって提供され、終末呼気陽圧のレベルと持続時間は、可変または一定であってよく、閉ループ制御システムによって調整されてよい。或る場合に終末呼気陽圧は、呼吸サイクルの間または終末に気道内に存在する大気圧よりも高い圧力を指すことがある。陽圧呼吸の供給は、機械的換気装置または麻酔器を用いて実施できる。終末呼気陽圧を施す持続時間に対応する時間tの値は、たとえば約0.1秒〜約1.5秒の範囲内にあってよい。或る場合に陽圧呼吸は、約250ミリ秒〜約2秒の範囲内の時間で患者に送込むことができる。或る場合に陽圧呼吸は、患者に1秒間約0.1リットル〜約5リットルの範囲の速度で送込むことができる。陽圧呼吸が供給される時間と終末呼気陽圧および/または真空が供給される時間の比は、約0.5〜約0.1の範囲内にあってよい。患者が呼吸していないときには、患者に陽圧呼吸を供給できる。これは機械的換気装置、換気バッグ、口移しなどで行われてよい。この方法と組合わせて、本出願に包含される任意の吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)技術を使用できる。本出願に包含される解決策は、糖尿病治療モダリティと組合わせて使用できることも理解される。これらの治療モダリティは、たとえば2003年3月28日に出願された米国特許出願第10/401493号明細書および2007年4月13日に出願された米国特許出願第11/735320号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。本出願に包含される解決策は、心不全およびその他の状態の治療モダリティと組合わせて使用できる。たとえば米国特許第5551420号明細書、第5692498号明細書、第6062219号明細書、第6526973号明細書、第6604523号明細書、第7210480号明細書および第6986349号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。図16Aと図16Bに示す圧力曲線は、或る場合には換気装置または麻酔器を組入れることによって達成されてよい。これに関連して或る場合にそのような曲線は、換気装置なしで達成され得る。胸腔内圧を減少させ、または負胸腔内圧を達成するために任意の多様な機構または処置が使用されてよく、真空源、吸引装置、プッシュ・プル換気装置または能動的圧縮減圧装置を含むが、これらに限らない。
【0119】
図17は、患者に治療を施すための例示的なシステムの模式図を提供する。ここに示されるように、システム1700は、真空供給装置1720に動作結合しているプロセス制御装置1710、換気制御弁装置1730、および終末呼気陽圧供給装置1740を含む。真空供給装置1720は、随意に真空調節装置1724を介して、真空源装置1722に動作結合している。終末呼気陽圧供給装置1740は、随意に圧力調整装置1744を介して、ガス圧力源混合装置1742に動作結合している。換気制御弁装置1730は、随意に呼気分岐装置1752と吸気分岐装置1754を有する呼吸循環装置1751を介して、換気装置1750に動作結合している。終末呼気陽圧供給装置1740は、所望の通り調節可能な量の終末呼気陽圧を供給するように構成できる。ここに示されるように、システム1700は、圧力変換器1731も含むことができる。システム1760は、またたとえば気管チューブまたはその他の患者気道装置を介して患者に連結できる患者接続装置1760も含む。
【0120】
ある実施形態に従い、治療方法は、換気制御弁装置1730を解除して陽圧換気を提供することを包含する第1ステップを含んでよい。治療方法陽圧呼吸の終末に換気制御弁装
置1730と真空供給装置または弁1720を作動させることを包含する第2ステップも含んでよい。終末呼気陽圧供給装置は、弁1740が解除されると、内部ガス混合器装置1742から調整された圧力で患者に終末呼気陽圧を供給できる。治療方法は、さらに終末呼気陽圧段の終末に終末呼気陽圧弁1740を付勢し、真空供給弁1720を消勢して、患者の気道に調整された真空を生成する第3ステップを含んでよい。治療方法は、また上述した第1、第2、および第3ステップを繰返すことを含んでよい。或るケースでは換気装置1750を使用して患者に陽圧換気もしくは陽圧呼吸または真空、または両方を供給してよい。或る実施形態に従い、手動蘇生器を使用して患者に陽圧呼吸を供給できる。換気装置の追加の動作特性は、本明細書の別の場所で、たとえば図19A〜図19Fに関連して説明する。
【0121】
<胸腔内圧調整が交感神経系の緊張に及ぼす作用>
胸腔内圧調整器(ITPR)は、吸気インピーダンス閾値弁装置(ITD)を、たとえば陽圧換気を許しながら心肺蘇生(CPR)中に気管内に真空を生成するための真空源に結合できる。胸腔内圧調整器を使用することで自律神経系を調節できる。吸気中に弁システムが機能して胸部内に真空を生み出して胸腔内圧を一時的に減少させ、それによって患者の自律機能を調節する。より具体的には、胸腔内圧を下げることで、患者は、心臓によって多くの静脈血液が環流するのを経験し、それによって心拍出量の増加、血圧の上昇、脳への血流の増加、および頭蓋内圧の減少が引起こされ、自律神経系が交感神経系の緊張緩和を調節し、その結果として末梢動脈抵抗が減少する。その結果右心、次いで肺に戻る静脈血流が増加することで心臓前負荷が高まって右心室と左心室の再充填が促進される。後続の心臓収縮は、1回拍出量と心拍出量の増加をもたらす。これによって体の受容器、たとえば頸部に頸動脈圧受容器が生じて血圧と循環の増大を感知し自律神経系のバランスを変化させる。このことは、皮膚電極で記録した心電図を標準心拍変動解析法で分析するとより低い周波数パワースペクトルからシフトしていることによって実証され得る。本出願に包含される解決策は、たとえば米国特許第7195013号明細書に記載された治療モダリティと組合わせて使用でき、その内容は、参照によって本明細書に編入される。
【0122】
したがって胸腔内圧調整(IPR)を使用すると、自律神経系を調節できる。或る場合には、たとえば開心術で胸部を開いたときに胸腔内圧調整療法を適用する場合、肺は、陽圧相(吸気)では呼吸ガスで満たされ、呼気相では呼吸ガスが肺から能動的に抜出される。この結果、肺内の血液は、急速に左心房に移され、それによって左心に血液が供給される。交互に肺を呼吸ガスで満たし、同時に右心からの血液のためにスペースを提供し、次に呼吸ガスを抜出して肺リザーバ内で血液を前進させることで、肺は、蠕動スポンジのように働いて右心から血液を吸い上げ、それを左心に送込む。「スポンジから絞り出す」ことによって、肺実質の拡張と収縮は、血液循環が低いか減少した状況で血液を前進させるための新規の手段を提供する。この「絞り出し」プロセスの前または後に終末呼気陽圧を追加することで、酸素供給を維持して肺機能を保全および保護するのを助ける手段が提供される。このプロセスの間、吸気相で供給される1回換気量は、変化してよく、この方法または装置による呼吸ガスの除去速度は、供給される1回換気量に伴って直接的または間接的に変化でき、それによって所望の目標気道圧および/または胸腔内圧を達成する手段が提供される。それゆえ胸腔内圧調整療法を提供するこのような方法と装置は、開心術の間または後などに胸部が大気圧に対して開いているときでも、循環を増進して血圧を高めるために使用できる。この方法と装置で呼吸ガスを肺に入れ、および肺から抜出すことが可能である限り、これは両肺にも片方の肺のみにも適用できる。
【0123】
胸腔内圧調整療法によって達成される肺内の圧力の変化は、肺内の呼吸ガス量が変化した直接的な結果である。ガス量は、陽圧換気の度に増加し、能動的に抜出されると減少する。このプロセスにおいて血液は、肺から押出され、血液は、損傷していない一方向弁(この場合には肺動脈と僧帽弁)のために心臓内を前進できるのみである。こうしてガス抜
出し相では血液は、巨大なリザーバとして働く肺から圧出され、肺が膨らむと呼吸ガスが肺胞を満たして、間接的に動脈床と静脈床の構造を回復するので、肺が膨らむとすぐに右心からの血液は、肺血液リザーバに突入する。胸腔内圧調整療法による呼吸ガスの能動的な注入と除去によって、血液を左心に圧入するための新規の手段が提供される。胸部が大気圧に対して開いているときには、胸部の非肺構造内の圧力は、気道圧または肺圧の変化に伴って変わらないので、肺容量の変化は、典型的には頭蓋内圧を変えない。
【0124】
それゆえ本発明の実施形態は、頭蓋内圧および眼球内圧の上昇、ショック、低血圧、循環虚脱、心停止、心不全、術中低血圧を含むがこれらに限られない多数の疾患状態を患っている患者、ならびに透析中の患者の治療に使用できる。本発明は、また肝臓や腸の手術などの外科処置の間、腹部内の静脈圧を下げ、同時にこれらの臓器およびその他の重要臓器、たとえば腎臓、脳、および心臓によって多量の血流を提供できる。静脈圧を下げることで、外科処置の間の失血を減らすのを助けることができる。この新規の方法と装置は、上述した機構によって、敗血症、多発外傷性臓器障害および急性呼吸促迫症候群(ARDS)に伴う低血圧や循環不良も治療できる。このような意図の実施形態はまた「コンパートメント症候群」において静脈圧を下げるために使用してもよく、それゆえより多くの血液を循環させて組織の生存能力と機能を保つのを助けることができる。本発明の実施形態は、胸腔内圧を下げる結果、頭蓋内圧が低下して心臓への血流が増進されるという発見に基づく。開胸した患者においてこの装置は、気道と肺内の圧力を下げ、それによって肺から呼吸ガスを取除く。この結果、濡れたスポンジにその都度真空を加えるように肺の「絞り出し」が行われ、そして肺動脈弁が経肺動脈の逆流を妨げるので肺内の血液は、左心に送込まれる。次の吸気で、呼吸ガスが肺に充満して血液が肺に突入する。次に低いレベルの真空を加えると血液は、押出される。このように、気道圧が変化すると肺ポンプが提供されて血液を肺から押出し、陽圧呼吸が行われる度に肺内に空の血管リザーバが提供されて右心内の血液から急速に再び満たされる。
【0125】
胸部が損傷していない場合、装置の実施形態は、弁システムの抵抗のレベルを変化させるための機構も含んでよい。たとえば実施形態は、呼気陽圧を追加することを含んでよい。この装置は、患者の少なくとも1つの生理的パラメータを監視するように構成された、少なくとも1つの生理的センサと組合わせて使用できる。このようにして、肺内の呼吸ガスの圧力および/または量を変化させるための機構は、センサから信号を受取り、それらの信号に基づき弁システムのインピーダンスのレベルを変化させるように構成されてよい。これがまた呼吸ガス量の値および/またはガスが能動的に肺に注入され、かつ肺から抜出される圧力と速度の値を調整する。使用できるセンサの例は、気道圧、気管内圧、血圧、右心圧、心拍数、終末呼気二酸化炭素、酸素レベル、および左心圧を測定するセンサを含む。
【0126】
本明細書の別の箇所に記したように、本発明の実施形態は、患者の胸部が損傷していないときには、頭蓋内圧または眼球内圧を減少させるために使用するのにも適している。このような技術は、開胸して使用できる。回路が開いているので、胸腔内圧が変わることなく肺容量と圧力は、変化できる。開胸しているときには、この解決策は、典型的に頭蓋内圧を下げない。
【0127】
或る場合には、ガスを抜出す前または後で終末呼気陽圧を加えることができる。この解決策によって、方法と装置は、気道圧と、胸部が損傷していない場合に胸腔内圧を3段階で調節する手段を提供する。すなわち肺を膨ませ、肺からガスを取除き、肺を終末呼気陽圧によって部分的に膨らませることで、無気肺を低減して肺の完全性を保つのを助ける。
【0128】
本明細書の別の箇所で説明したように、陽圧呼吸の供給とガスの抜出しは、機械的換気装置を用いて行うことができ、呼吸ガスは、一定抜出しまたはパルス状抜出しによって抜
出されてよい。ガス注入および抜出しの速度と量と圧力は、患者の状態に応じて異なってよい。たとえば1回換気量が増加すれば、多量のガスが抜出される速度も変化してよい。このことは、胸腔内陰圧(胸部が損傷していない場合)の持続時間を最大化し、開胸している場合には気道圧と肺圧を最大化するために重要であり得る。図18A〜図18Cは、1回換気量および気道圧変化の特性を示す。
【0129】
図18A〜図18C上のチャートは、胸腔内圧(ITP)をmmHgの単位で時間の関数として示している。胸腔内圧調整療法が提供されて胸腔内真空−7.0mmHgを生成し、陽圧呼吸が最大胸腔内圧14mmHgを提供する。図18A〜図18Cの中央のチャートは、頸動脈の血流(たとえば総頸動脈血流)をmL/minの単位で時間の関数として示している。図18Aでは、下のチャートが3つの軌跡(上の軌跡、中央の軌跡、下の軌跡)を提供する。下のチャートの上の軌跡は、血圧に時間の関数として対応している。下のチャートの中央の軌跡は、頭蓋内圧に時間の関数として対応しており、下のチャートの下の軌跡は、右心房圧に時間の関数として対応している。図18Bは、図18Aに示した研究の138分付近のセグメントから取られており、1回換気量は、10ml/kgであった。図18Cは、図18Aに示した同じ実験の140分付近のセグメントから取られている。図18Bは、約276mlの吸気1回換気量(TV)と、約27.2kg×10ml/kgの目標を示している。図18Cは、約192mlの吸気1回換気量(TV)と、約27.2kg×7.5ml/kgの目標を示している。1回換気量は、減少するが呼気ガスが取除かれる速度が変わらないとき(図18Cに示されている)、気道圧が目標レベル−70mmHgにある時間の値は、より大きくなり、それによって提供される療法の全体的効果は、図18Bに示す結果と比較して増大する。
【0130】
麻酔して開胸した体重27.6kgのブタを使ったこの胸腔内圧調整療法実験で、最初にブタを14呼吸/分(bpm)および吸呼気比(I:E比)1:3で陽圧換気した。図18Aと18B(上のチャート)に示ように、胸腔内圧調整療法が施されたことは、気道圧の減少によって示される。これらのチャートの軌跡に従い、胸腔内圧(ITP)は、換気呼吸の度に14.0mmHgから−7.0mmHgに減少している。気道圧を目標値−7.0mmHgに下げるために必要な時間は、0.84秒であった。
【0131】
図18A(下のチャートの139.4分付近)で矢印によって示されているように、この体重28kgの麻酔したブタで1回換気量(TV)を276ml(10ml/kg)(たとえば図18B)から192ml(〜7ml/kg)(たとえば図18C)に減少させることで、気道圧を目標値−7.0mmHgに下げるのに必要な時間は、0.64秒に減少した。この減少した時間幅が図18C(上のチャート)に示されている。気道陰圧がより長く続くと、血圧は、約75/42mmHg(たとえば図18B、下のチャート、上の軌跡)から約95/55mmHg(たとえば図18A、下のチャート、上の軌跡)に増加した。頸動脈の血流も同様に増加した。
【0132】
ある実施形態に従い、図18A〜図18Cは、供給される1回換気量の値に依存した呼吸ガスの除去(たとえば真空の適用)を示す(たとえば1回換気量が多ければ多いほどゆっくりガスを除去できる)。
【0133】
上述したように、このような方法に使用するのによく適している胸腔内圧調整装置を図19A〜図19Fで説明する。例示的な胸腔内圧調整装置は、真空を調整できる閾値弁を提供する。図19A−1は、ある視点から見て、圧力計または圧力センサ1910、換気ポート1920、吸入キャップ1930、本体1940、患者ポート1950、真空ステム1960、および弁(図示せず)を有する胸腔内圧調整システム1900を示している。図19A−2は、別の視点から見て、圧力計または圧力センサ1910、換気ポート1920、吸入キャップ1930、本体1940、患者ポート1950、真空ステム196
0、および弁(図示せず)を有する胸腔内圧調整システム1900を示している。図19B〜図19Fは、胸腔内圧調整システム1900を種々の動作構成において断面図で示す。図19Bに示されているように、真空ステム1960は、完全に挿入され、もしくは押し入れられている。真空ステム1960は、真空ポートもしくは真空孔1961を含むことができる。弁1970は、ピストン1971、弁座1972、およびローリングダイヤフラム1973を含む。真空ステム1960の第1部分1962は、弁座1972をローリングダイヤフラム1973から離して、弁1970内に開口部1975を提供し、矢印Aによって示されているようにこの開口部1975を通って空気、ガス、または流体が流れることができる。ここに示されるように、吸気ガスは、換気装置(図示せず)から換気ポート1920、弁1970の開口部1975、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通り、患者ポート1950を介して患者(図示せず)内に、またはこれに向かって流れることができる。随意に真空ステムバネ1963は、真空ステム1960を弁座1972に押し付けることができ、こうして真空ステム1960を密封すると、空気は、真空ポート1961を通って流れず、同時に弁1970が開いて排気する。或る実施形態において、弁ステムの第1部分1962と弁座1972は、真空連結点でオン・オフスイッチを形成して、弁ステムの第1部分1962と弁座1972が互いに接触しているときには、第1部分1962と弁座1972との間に形成されるベントシールのために真空が閉鎖される。図19Bに示す動作構成において、真空ステム1960は、所定位置にロックまたは保持でき、こうして真空を密封し、換気装置と患者との間の開放接続を維持する。真空ステムが密封される間、ベントシールが開いて吸気ガスと呼気ガスは、両方向に流れることができる。
【0134】
図19Cは、真空ステム1960を部分的に引戻された構成で胸腔内圧調整システム1900を示す。真空ステム1960は、引戻され、弁座1972は、同時にローリングダイヤフラム1973と真空ステム1960の端面に座着でき、こうしてダイヤフラムとステムの両方を密封する。ダイヤフラム1973が密封されると、空気は、弁1970を通って流れるのを妨げられる。ここに示されているように、弁座1972がダイヤフラム1973に対して密封されているので、流体は、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通って流れることができない。ステム1960の第1部分1962が密封されると、空気または流体は、ステム1960の真空ポート1961を通って流れるのを妨げられる。或る実施形態に従い、システム1700は、2位置を有する3方向弁を提供する。したがって弁1970が開くと、患者と換気装置の間(たとえば図19Bに示す)または患者と真空の間(たとえば図19Dに示す)に流体連通を提供できる。図19Cに例示されているように、患者と真空の間の接続または通路が作成もしくは形成される前に、患者と換気装置の間の接続または通路を中断もしくは遮断できる。或る実施形態に従い、この一連の動作は、ユーザが選択的に真空ステム1960を真空治療位置に動かすときに起こる。同一または類似の動作手順は、換気ポート1920を通して陽圧呼吸が施される間、真空ステム1960を通して真空治療が施されるときに起こる。後者の場合には、真空ステムではなく、むしろ陽圧が弁座1972を真空ステム1960の第1部分1962に押し付けて、患者と換気装置の間の流路を開く前に真空を閉鎖する。したがって、弁とステムのこの二重密封は、図19Dに表現されている通り、たとえばCirQlatorまたは類似の装置によって、真空ステム1960が真空治療を施すことが可能となる位置に動かされる瞬間に起こり得る。
【0135】
図19Dに示されているように、ダイヤフラムは、完全に閉じて、換気ポートを密封し、真空ステムが患者ポートに開いている位置にあることができる。真空は、圧力計のピストンを下方に引っ張って、患者に真空が適用されていることを医師またはオペレータに示す。圧力計と装置の本体との間の開口部によって、圧力が圧力計を作動させることができる。医師またはオペレータは、真空ステムを引いて治療位置にロックし、弁機構が治療を施すのを可能にできる。
【0136】
図19Dは、真空ステム1960が完全にまたはほぼ引戻され、随意に所定位置にロックされている状態を示す。たとえば医師またはオペレータは、真空ステムを引いて真空治療位置にロックし、胸腔内圧調整システム1900が真空治療を施せるようにする。ここで真空ステムの第1部分1962は、もはや弁座1972に対して密封されておらず、こうして矢印Aで示されているように真空治療を施すことができる。ここに示されているように、ガスは、患者から患者ポート1950、第1部分1962、および弁座1972、および弁ステム孔1961を通って、真空源もしくは機構(図示せず)の方へ引戻される。ローリングダイヤフラム1973は、閉じた位置にあって、換気ポート1920を密封する。したがってダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通って流体は、流れない。真空ステム1960は、患者ポート1950に対して開いている。真空が施されると、圧力計1910の圧力計ピストン1911を下方に、または圧力計本体1942内にまたはこれに向かって引くことができる。ピストン1911がこの位置にあるときには、患者に真空が適用されていることを医師またはオペレータに示す指標となる。たとえば圧力計は、医師に機械的信号を提供できる。圧力計1910と本体1940との間の開口部1912によって、圧力または真空が圧力計1910を作動させることができる。
【0137】
図19B〜図19Eに示すローリングダイヤフラム1973は、胸腔内圧調整システム1900の本体1940から延びた、もしくは離れた拡張位置で示されている。ローリングダイヤフラム1973は、バネ1974によってこの拡張位置に保持されるか、またはこれに向かって押し付けられるが、図19Eに示されているように換気ポート1920を介して提供される換気装置からの陽圧がバネ1974を克服すると、ダイヤフラム1973を矢印Aで示される方向で下方に本体1940内にまたはこれに向かって動かす。或る場合には、上部バネによってこの動作を補助できる。したがって陽圧呼吸が開始すると、換気装置からの流体は、矢印Bで示されているように換気ポート1920に入り、陽圧がダイヤフラム1973と弁座1972を本体1940に向かって押す。図19Eには、半行程構成が示されており、真空と換気装置の双方への通路が一瞬の間閉じられている。ここに示されるように、ダイヤフラムの穴もしくは開口部1976は、閉じられている。圧力計は、ダイヤフラムの位置に関わりなく、患者が曝露されている圧力状態を示す。
【0138】
図19Eに示されているように、陽圧呼吸が開始すると、陽圧は、ダイヤフラムとベントシールを下方に押して、シールと真空ステムを接触させることができる。装置は、半行程の段階で示されており、真空と換気装置のいずれも一瞬間閉じている。
【0139】
図19Fは、陽圧呼吸の作用を示す。特に、陽圧呼吸は、ピストン1971、弁座1972およびダイヤフラム1973を、弁座1972が真空ステム1960の第1部分1962を密封するまで本体1940内に、またはこれに向かって動かす。1972と1962の間が密封されるため、真空は、遮断される。図19Fは、矢印Bによって示されているように、ダイヤフラム1973が本体1940内に、またはこれに向かって移動し続ける作用、したがって真空ステム1960に対する相対的な運動を示している。しかしながら弁座1972が真空ステム1960に接触すると、ピストン1971と弁座1972は、もはや真空ステム1960に沿って動かなくなる。したがって陽圧呼吸は、ダイヤフラムを下方に、または本体1940に向かって動かし続け、こうしてガス流路を開いて患者に呼吸が送込まれるようにする一方、弁座1972は、弁ステムの第1部分1962に座着して患者からの真空を密封する。陽圧呼吸またはガスは、矢印Aによって示されているように、換気ポート1920、弁座1972とダイヤフラム1973の間、およびダイヤフラムの穴もしくは開口部1976を通り、患者ポート1950から出て患者に向かう。したがって流路が開いて陽圧呼吸がダイヤフラム1973を通過、横断、もしくは通り越して患者に達する一方、弁座1972と弁ステム1960の第1部分1962との間が密封される結果として真空が遮断されている。図示されているように、呼吸からの陽圧は、
矢印Cで示されるように圧力計1910を上方に、または圧力計本体1942から離すように動かすが、これは、患者に陽圧が適用されていることを医師またはオペレータに示す指標を提供する。陽圧が解除、停止、または十分減少すると、ダイヤフラム復元バネ1974は、ダイヤフラム1973をその静止位置に戻し、ここで図19B〜図19Eに示されているようにダイヤフラム1973は、本体1940から延び、もしくは離れており、それによって流路が真空に対して開く前に換気装置からの流路を密封する。
【0140】
図19Fに示されているように、換気装置シールは、真空ステムに座着して、患者から真空を密封する。陽圧呼吸は、ダイヤフラムを下方に動かし続け、ガス流路を開いて患者に呼吸が送込まれるようにする。呼吸からの陽圧は、圧力計を上方に動かして、患者に陽圧が適用されていることを示すことができる。
【0141】
送込まれる呼吸の終末で陽圧が解除されると、図19Gに示されているように、弁は、逆の動作で動く。陽圧が停止すると、弁は、図19Dに示す位置に戻ることができる。患者と換気装置の間の接続は、密封されて、図19Eに示されているのと同じやり方で、しかし逆の順序で真空が開く。或る実施形態に従い、呼吸を施す目標開口部圧力は、8cmH2Oである。真空は、12cmH2Oに制限されてよく、弁を開くには不十分である。患者が自発的に息を吐くときのように二次弁を克服するために要求される圧力は、最小化できる。図19A〜図19Gに示されているような胸腔内圧調整装置の実施形態は、終末呼気陽圧機構で補足し、または終末呼気陽圧機構と組合わせることができ、こうして図17に示すような治療システムを提供する。或る場合には、図19A〜図19Gに示されているような胸腔内圧調整装置の実施形態は、終末呼気陽圧処置なしで使用することができる。
【0142】
<胸腔内圧調整と大動脈内バルーンポンプ>
胸腔内圧調整(IPR)および大動脈内バルーンポンプ(IABP)、または他の補助装置と組合わせて使用すると、心臓と脳およびその他の重要臓器への循環の増進に、いずれかの解決策を単独で講じる場合よりも大きい効果をもたらすことができる。或る場合には、この組合わせた技術は、カフ治療の諸特徴を組込むことができる。これは、たとえば米国特許第6234985号明細書、第6224562号明細書、第6312399号明細書、第6463327号明細書、および第6587726号明細書、ならびに2008年6月30日に出願された米国特許出願第12/165366号明細書、および2008年5月12日に出願された米国特許出願第12/119374号明細書に記載されており、その内容は、参照によって本明細書に編入される。或る実施形態において、大動脈内バルーンポンプ装置は、心筋酸素を減少させ、心拍出量を増大させることができる。大動脈内バルーンポンプ装置は、大動脈に配置された対抗脈動膨張性バルーンを含んでよく、収縮期には、能動的にしぼませ、拡張期には能動的に膨らませることができる。膨張性部材またはバルーンは、コンピュータで制御でき、随意に心電図または圧力変換器に連結される。
【0143】
<麻酔リサイクル>
本発明の実施形態は、胸腔内圧調整器(ITPR)を麻酔器と一緒に使用する場合に麻酔ガスをリサイクルするための技術を包含する。たとえば図20に示されているように、麻酔器内で麻酔ガスをリサイクルすることが可能である。したがって、胸腔内圧調整は、麻酔を過度に消費することなく使用できる。また呼気ガスを個別チャンバ/洗浄システムに捕捉することも可能である。有利には、そのような解決策は、麻酔ガスの全体的な消費を減らす一助となり得ることである。図20は、本発明の実施形態に従い、麻酔器で気道陰圧を生成するシステムと方法の諸特徴を示す。治療システム2000は、胸腔内圧調整器(ITPR)2020に連結できる気管(ET)チューブまたはマスク2010を含む。或る実施形態に従い、胸腔内圧調整器2020は、図19A〜図19Gに示す胸腔内圧
調整装置の1つ以上の部材を組込むことができる。図20に示されているように、患者Y形管2030は、胸腔内圧調整器装置2020に連結している。胸腔内圧調整器真空ライン2040は、胸腔内圧調整器装置2020を陰圧生成器2050に連結している。真空環流装置2060は、導管または通路2065を介して陰圧生成装置2050に連結している。真空環流装置2060は、麻酔器2090および回路の呼気分岐2070とも連結されている。或る場合には、麻酔器2090は、換気装置を組込むか、または換気装置と置き換えることができる。麻酔器2090は、また吸気分岐2080とも連結されている。患者Y形管2030は、呼気分岐2070および吸気分岐2080に連結される。ここに示されるように、麻酔器の呼気分岐2070内で陰圧を生成するためにバルク流機構を採用できる。これに関連して、胸腔内圧調整器治療を用いる際に新鮮な補給ガスの量は、減少する。陰圧生成器2050は、胸腔内圧調整器真空ライン2040を通して胸腔内圧調整器治療に真空を引入れ、呼気ガスの全部またはほとんどを回路の呼気分岐2070上のT形回路を通して麻酔器2090に戻す。呼気ガスを陰圧生成器2050に回してから麻酔回路に戻すことによって、準閉回路とこれに対応する低流量の補給ガスおよび麻酔剤が維持される。麻酔回路は、種々の理由で準閉回路と見なすことができる。たとえば患者から吐き出されたガスは、しばしばガス流から呼気二酸化炭素が除去されなければならない。さらに患者によって代謝される酸素と麻酔剤は、吐き出されず入れ替えなければならない。代謝された酸素の入れ替えは、低流量のガスまたは補給ガスを回路に加えることによって行われる。或る場合には低流量が選好されて麻酔剤が節約される。
【0144】
<換気装置および胸腔内圧調整器による麻酔>
図21は、本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システム2100の諸特徴を示す。或る場合に胸腔内圧調整システム2100は、プッシュ・プル換気装置の諸特徴を備えてよい。患者が機械的換気装置で換気されるときには、胸腔内圧調整法を実施することで周期的に気道圧を下げて循環を増進し、また胸部が損傷していないときには頭蓋内圧を下げることができる。或る場合に胸腔内圧調整法と装置は、陽圧換気を提供する機構(たとえば蘇生バッグ、機械的換気装置、麻酔器、または陽圧換気を提供するその他の手段)に組込まれ得る。或る実施形態において、機械的換気装置を用いて患者を種々の吸呼気比(I:E比)で治療するときに胸腔内圧調整療法を適用できる。たとえば患者をより高いI:E比(1:2〜1:5)で治療し、毎回吸気の後で陽圧を回復する前に、胸腔内圧調整で気道圧および/または胸腔内圧を100ミリ秒〜2秒の時間の間、−1〜−20mmHgに下げることができる。この手段によって、患者の肺から呼吸ガスを急速に抜出して循環を増加させることができる。
【0145】
図21の空気回路図に示されるように、胸腔内圧調整システム2100は、フィルタ2104を有する周囲空気入口2102と、フィルタ2108を有する酸素入口2106を含む。周囲空気入口2102は、吸気陽圧(PIP)機構もしくはブロワ2112を有する排気マニホールド2110に流体連通できる。排気マニホールド2110は、流量計2114に連結され、これはまた第1吸気逆止弁2116に連結されている。酸素入口2106は、第1電圧感知(VSO)酸素弁2120および第2電圧感知酸素弁2122に流体連通できる。電圧感知弁2120および2122は、また流量計2124に連結され得る。逆止弁2116と流量計2124は、第1制御弁2126に連結されており、これはまたPS2すなわち第2圧力センサ2128および陽圧供給機構2129に連結されている。ここに示されるように、第2圧力センサ2128は、制御弁2126および陽圧供給機構2129に動作結合している。
【0146】
胸腔内圧調整システム2100は、第2制御弁2132に連結された呼気陰圧機構、真空源、もしくはブロワ2130、ならびに第2制御弁2132および呼気逆止弁2136に動作結合している持続的気道陽圧(CPAP)制御機構2134も含む。制御弁2132は、逆止弁2136に連結され、これはまたPSlすなわち第1圧力センサ2138に
連結される。或る場合には、ブロワ2130の動作は、第1圧力センサ2138によって感知された圧力状態に基づくことができる。呼気逆止弁2136および第1圧力センサ2138は、真空ライン2140に動作結合しており、これはまた吐出フィルタ2142に連結されている。陽圧供給機構2129は、吐出フィルタ2142にも連結されている。ここに示されるように、吐出フィルタ2142は、接続機構2144、たとえば気管チューブまたはマスクに連結される。接続機構2144は、また患者もしくは個人に動作結合している。
【0147】
吸気構成において第2制御弁2132は、オフにされて開き、第1制御弁2126は、オンにされて閉じる。吸気陽圧ブロワ2112は、オンにされて動作を開始できる。たとえばブロワは、何らかの慣性を有してよく、制御弁を介して呼吸を開始する前にブロワの運転をスタートして、制御弁が開くと直ちに流れを開始できるようにすることが可能である。陰圧呼気ブロワ機構2130は、オフにされる。或る実施形態に従い、いずれかの制御弁をオフにして、装置がa)呼吸を提供するか、またはb)胸腔内圧調整器治療を提供するのを容易にすることが有用であり得る。ブロワをオフにする手順は、事例ごとに異なってよい。さらに或る場合に吸気構成の諸動作は、非常に近接して、たとえば20ミリ秒以内に起きてよい。
【0148】
ある実施形態に従う呼気構成において、第2制御弁2132は、オンにされて閉じ、第1制御弁2126は、オフにされて開く。吸気陽圧ブロワ2112は、オフにされる。陰圧呼気ブロワ機構2130は、オンにされて動作を開始できる。或る場合に呼気構成の諸動作は、非常に近接して、たとえば20ミリ秒以内に起きてよい。図21は、換気装置または換気動作に関連する諸特徴を含み、または包含してよい。たとえば或る場合には、陰圧呼気ブロワ機構2130を除くすべての要素が換気装置に関連してよい。図21の諸特徴は、図17に示す換気装に関連付けられてよい。或る実施形態に従う空気圧の観点から、図17の換気装置1750は、陰圧呼気ブロワ機構2130を除いて図21と内部的に類似してよい。したがって換気装置1750は、陰圧呼気ブロワ機構2130を別として図21の諸特徴と置き換えることが可能であろう。
【0149】
<医学的条件および補充療法>
本発明の実施形態は、敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有する患者の治療に使用するためによく適している。さらに例示的な技術は、低血液循環または低血圧治療の間、患者の所要流体量を減らすために使用できる。或る場合にこれらのシステムと方法は、患者の微小循環を増大させ、または低微小循環の患者を治療するために採用できる。随意にこれらのシステムと方法は、患者の薬剤循環を増進するために使用できる。例示的な技術は、薬剤治療と組合わせて使用できる。或る解決策に従い、胸腔内圧調整プロトコルと組合わせて、または胸腔内圧調整プロトコルを施すことに加えて患者に心肺蘇生プロトコルが施される。
【0150】
本発明の実施形態は、さらに患者の流体状態を評価するための方法を包含し、これは患者に胸腔内圧調整プロトコルを施し、血圧に与える影響を評価することを含む。血圧が急速に上昇した場合には、患者は、静脈量補充療法を受けることができる。或る場合には、静脈量補充療法は、晶質液の投与を含んでよい。或る場合には、静脈量補充療法は、膠質液の投与を含んでよい。
【0151】
ある実施形態に従い、胸腔内圧調整は、循環を増進し、こうしてより多くの血液と低流量状態で投与された薬剤をより効果的で安全に循環させる手段を提供することができる。胸腔内圧調整療法によって低血液状態で循環の増大が提供されるため、薬剤は、より速く
循環し、多くの場合によって少ない用量を投与できる。こうして胸腔内圧調整と薬剤療法を組合わせると、特に臨床的に有用であり得る。たとえば心肺蘇生の間に循環を増進するために胸腔内圧調整療法を用いると、通常血圧を危険なレベルまで下げる恐れを有する薬剤、たとえばニトロプルシド・ナトリウムを投与する手段が提供される。ショック状態を経験した患者には、さらに循環を増進するためにバソプレシンやエピネフリンなどの薬剤を低用量で投与できる。バソプレシンやエピネフリンを多量に投与すると、顕著な悪影響を及ぼす可能性がある。他の例では、低血圧の治療で投与されるエストロゲンおよびプロゲステロンの効果が、胸腔内圧調整療法によって増大する。特に脳への循環が増加して効果が高まる。
【0152】
<圧力センサ配置とブロワ>
本発明の実施形態は、呼吸制御のための独特の圧力センサ配置と、真空モードに対する独特のブロワ構成を提供して、ブロワをオンにして準備することで、随意にフィードバック制御ループを使用して、呼気抵抗を制御できるようにする。
【0153】
引続き図21を参照して、胸腔内圧調整(IPR)システム2100は、呼吸制御で使用するために種々の位置に圧力センサを含むことができる。随意に圧力センサは、システムに何らかのレベルの冗長性を提供してよい。胸腔内圧調整システム2100は、吸気と呼気分岐圧の両方の圧力監視を提供し、循環補助モードにあるときに呼気終末圧を低大気圧レベルに能動的に制御するように構成できる。胸腔内圧調整システム2100は、欠陥を有するセンサによって引起こされる恐れを有する患者損傷を保護するために、圧力センサ冗長性の使用を組込むことができる。装置に圧力変換器を注意深く配置することで、安全冗長性、および患者回路2141の呼気分岐2141Eと吸気分岐2141Iの監視の目標を達成することが可能である。図21に示されているように、第1圧力センサ2138は、呼気分岐2141Eの圧力を監視するように動作でき、第2圧力センサ2128は、吸気ライン2141Iの圧力を監視するように動作できる。或る場合に、呼気分岐2141E上に、またはこれに連通して配置された圧力センサ2138は、循環補助モードまたは処置において能動的呼気機能を監視および制御するために使用できる。患者の気道の冗長的安全監視を常時維持するために、圧力センサは、呼吸回路2141がマニホールドまたは装置に接続されたときに、各々の圧力センサまたは変換器が呼吸回路の特定の側(たとえば呼気側2141Eまたは吸気側2141I)を監視するように配置されており、1台の変換器は、フィードバック制御ループのために使用でき、別の1台の変換器は、冗長的安全監視機能のために使用できる。変換器をこのように配置することで、たとえば4台の変換器を含み、2台の変換器は、回路の吸気側にあり、2台の変換器は、回路の呼気側にあるシステムではなく、むしろ2台の変換器を制御と安全冗長性のために使用することが可能になる。本明細書に記載された2台の変換器システムによって圧力変換器位置と呼吸回路の接続ポイントが直接連通することが可能になる。比較において、圧力変換器位置と呼吸回路の接続ポイントが直接連通できないようなやり方で変換器が配置されたなら、4台の変換器が必要であろう。圧力センサ位置は、図21に示す空気回路図で詳細に示されている。センサは、PSlおよびPS2で表示され、PSlである第1圧力センサ2138は、呼気分岐2141Eを監視し、PS2である第2圧力センサ2128は、吸気ライン2141Iを監視する。
【0154】
換気サイクルの呼気相は、機械的換気の副次的な焦点に過ぎない。機械的換気の主要な焦点は、患者の肺に空気を送込むことにあり、肺から空気をどのように出すかにはそれほど焦点が置かれない。機械的換気装置の呼気分岐は、受動的呼気流を可能にして吸気1回換気量を除去する程度まで空気流抵抗を減らすことを目標として設計され得る。呼気流に作用する機械的換気装置で共通に見出されるもう1つの特徴は、終末呼気陽圧(PEEP)を加えることである。終末呼気陽圧と低抵抗の流路の設計を除けば、機械的換気において呼気流は、ほとんど無視されてきた。現在、幾つかの換気装置は、供給される1回換気
量の自然放出を増大させるために、呼気陰圧の生成能力を制限している。本発明の実施形態に従う治療システムは、陰圧を生成して呼気流を増進する、ブロワを用いて呼気流を豊富化する制御を提供し、これは或る場合にはプライミング処置に関連付けられてよい。サーボ制御された呼気圧源を使用すると、呼気流の広範な制御が可能となる。サーボ制御された呼気圧によって、装置は、多様なレベルの終末呼気圧で胸部真空を生成でき、圧力プロファイルを吸気終末圧から終末呼気圧に変化させる。
【0155】
本発明の実施形態は、独特の二分岐回路を有する治療システムを提供する。図21に示されているように、吸気流路と呼気流路は、治療システムもしくはマニホールドから二重分岐患者回路2141を通って患者につながっている。2本の分岐2141I、2141Eは、同心的であることができる。たとえばチューブアセンブリは、吸気流路を提供する内側腔と、呼気流路を提供する外側腔とを含むことができる。患者端の接続は、標準22mm雌形円錐ISO継手を含むことができる。治療装置側の接続は、装置内に収容されたマニホールドシステムに直接取付けることができる。治療装置側の接続は、同心的に向けられた1対の円錐継手を含むことができる。この接続構成によって、看護者は、吸気回路分岐と呼気回路分岐の両方を1回の動作で同時に接続することができる。その上、この配置構成は、看護者が吸気分岐と呼気分岐を不注意に混同するのを防ぐことができる。さらに本明細書の別の箇所で説明されているように、吸気流路と呼気流路は、2面マニホールドシステムに組付けた2個のソレノイド弁(各流れ方向に1個)で制御できる。流路は、開口部の外側リングで弁に入り中心腔で弁を出る。吸気圧と呼気圧は、マニホールドの各面に配置された空気圧ポートを通して監視できる。さらに本明細書の別の箇所で説明されているように、吸気面は、陽圧ブロワから出る新鮮空気と、酸素の流量を制御する別個の弁付きマニホールドから出る酸素を集めて結合できる。新鮮空気と酸素の吸入位置に逆止弁を配置して、逆方向に流れるのを妨げることができる。弁が開くと、流路は、結合された酸素と空気を患者回路に接続された中心腔に通して流す。患者回路は、しばしば同心的に配置され、典型的に吸気ガスと呼気ガスは、混ざらないため、吸気流路は、患者回路に接続する前にマニホールドの呼気面を通る。これはスライドシールによって達成され、1つのコンポーネントが他のコンポーネント内に入れ子式に入り、それらの間でOリングを半径方向に圧縮する。呼気ガスは、患者回路の外側腔を通ってマニホールドに入る。呼気流路の入口に逆止弁が配置されて、呼気ガスが患者によって再び呼吸されるのを妨げる。弁は、吸気流に類似のやり方で開閉して呼気ガスの流れを制御する。ガスは、開口部の外側リングを通って弁に入り、中心腔を通って出る。弁が開くと流れは、マニホールドの呼気面から陰圧ブロワに達し、ここで大気に排出される。マニホールドの呼気面と陰圧ブロワの接続は、吸気ガスについて説明されたものに類似のOリングシール機構を利用する。
【0156】
ある実施形態において治療装置は、外部医療装置に通信する通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、たとえばブルートゥースアセンブリ、ラジオ周波数アセンブリ、または選択された帯域もしくは所望の帯域で通信する通信アセンブリを含むことができる。外部医療装置は、除細動器または自動胸部圧縮器などであってよい。そのような通信は、胸腔内陽圧と胸腔内陰圧の供給変化を除細動ショックおよび/または胸部圧縮および解除に同期化させるために用いることができる。
【0157】
<マニホールドシステムと方法>
図22A〜図22Gは、本発明の実施形態に従うマニホールドシステムと方法の諸特徴を示す。例示的なマニホールドシステムは、吸気ガスと呼気ガスを分離する2面マニホールドを提供できる。図22Aに示されているように、マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁
アセンブリ2250も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、マニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240を開くと、吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、吸気制御弁アセンブリ2240を閉じると吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。呼気制御弁アセンブリ2250を作動して、マニホールドシステム2200に入る呼気ガスの流れを制御する。たとえば呼気制御弁アセンブリ2250を開くと呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、呼気制御弁アセンブリ2250を閉じると呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に呼気制御弁アセンブリ2250は、ソレノイド弁を含む。呼気制御弁アセンブリ2250は、多様な仕方で動作でき、たとえば真空機構または陰圧ブロワに結合して陰圧治療の提供を促進し、または終末呼気陽圧治療の提供を促進する。或る場合には、呼気制御弁アセンブリ2250が開放構成にあると、真空機構は、陰圧を引入れて気道圧を減じることができる。代替として、呼気制御弁アセンブリ2250は、気道に所定量の陽圧が残っていると閉じることができ、こうして終末呼気陽圧プロトコルを提供する。したがって同じ制御弁アセンブリ2250が2つの異なる機能を提供するように動作できる。
【0158】
患者に供給するための吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。したがって、空気吸入ポート2212は、たとえばチューブなどの流体通路手段を介して空気源に流体連通でき、酸素吸入口2222は、チューブなどの流体通路手段を介して酸素源に流体連通できる。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。呼気ガスは、マニホールドシステム2200を通過して、たとえば中心インタフェース2220の呼気ガス排出ポート2224から出て陰圧ブロワに向かうことができる。呼気ガス排出ポート2224は、たとえばチューブなどの流体通路手段を介して陰圧ブロワに流体連通できる。
【0159】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で圧力を評価するための1つ以上のサンプリングポートも含んでよい。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、呼気圧サンプリングで用いる呼気サンプリングポート2226を含む。同様に、遠位インタフェース2210は、吸気圧力サンプリングで用いる吸気サンプリングポート2214を含む。
【0160】
或る場合には、マニホールドシステム2200は、持続的気道陽圧(CPAP)アセンブリ2260も含んでよい。図22Aに示されているように、中心インタフェース2220は、持続的気道陽圧アセンブリ2260に連結された持続的気道陽圧ポート2228を含む。持続的気道陽圧アセンブリ2260の動作は、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を患者に施すことを促進できる。
【0161】
図22Bは、マニホールドシステム2200の別の図を示す。ここに示されているように、マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。中心インタフェース
2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよい。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Bに示されているように、患者回路インタフェース2232は、内側腔もしくは吸気腔2232aと、外側腔もしくは呼気腔2232bとを有する同心的構成を見せている。内側腔2232aは、マニホールドから出た吸気ガスを患者に向かって運ぶように動作し、外側腔2232bは、患者から出た呼気ガスをマニホールドに運び入れるように動作する。典型的に、吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で、吸気ガスのための第1通路と呼気ガスのための第2通路を有するチューブアセンブリを介して送られる。たとえば吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で同心的チューブアセンブリを介して送ることができる。同心的チューブアセンブリは、内側腔2232aに流体連通する内側通路、および外側腔2232bに流体連通する外側通路を含むことができる。
【0162】
図22Cは、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース2230、および遠位インタフェース2210と近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240、および近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、マニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240を開くと、吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、吸気制御弁アセンブリ2240を閉じると吸気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合に吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。
【0163】
患者に供給するための吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。患者に供給するための吸気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232を介してマニホールドシステム2200から患者に向けて放出できる。患者から出る呼気ガスは、たとえば近位インタフェース2230の患者回路インタフェース2232でマニホールドシステム2200に入ることができる。呼気ガスは、マニホールドシステム2200を通過して、たとえば中心インタフェース2220の呼気ガス排出ポート2224から出て陰圧ブロワに向かうことができる。呼気ガス排出ポート2224は、チューブなどの流体通路手段を介して陰圧ブロワに連通できる。
【0164】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で圧力を評価するための1つ以上のサンプリングポートも含んでよい。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、呼気圧サンプリングで用いる呼気サンプリングポート2226を含む。たとえば呼気サンプリングポート2226は、近位インタフェース2230と中心インタフェース2220との間に画定された呼気面もしくは呼気室2202に存在する呼気圧をサンプリングするために使用できる。同様に、遠位インタフェース2210は、吸気圧サンプリングで用いる吸気サンプリングポート2212を含む。たとえば吸気サンプリングポート2212は、遠位インタフェース2210と中心インタフェース2220との間に画定された吸気面もしくは吸気室2204に存在する吸気圧をサンプリングするために使用できる。
【0165】
ある実施形態に従い、吸気サンプリングポート2214または呼気サンプリングポート2226で感知された圧力または流量は、マニホールド全体の流体流量を決定するために使用できる。
【0166】
マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で流体の流れを調節または制御するための1つ以上の逆止弁も含んでよい。図22Cに示されているように、マニホールドシステム2200は、酸素吸入口2222を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する酸素逆止弁2223を含んでおり、酸素は、矢印2222Aで示された方向で吸入口2222を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2222Bで示された方向に吸入口2222を介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。同様に、マニホールドシステム2200は、空気吸入口2212を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する空気逆止弁2213を含んでおり、空気は、矢印2212Aで示された方向で吸入口2212を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2212Bで示された方向に吸入口2212を介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。さらにマニホールドシステム2200は、患者回路インタフェース2232を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する患者回路逆止弁すなわち呼気逆止弁2233を含んでおり、流体は、矢印2232b(i)で示される方向に外側腔もしくは呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢印2232b(ii)で示す方向に外側腔もしくは呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200から流出することは、妨げられる。
【0167】
或る場合に、マニホールドシステム2200は、持続的気道陽圧(CPAP)アセンブリ2260も含んでよい。図22Cに示されているように、中心インタフェース2220は、持続的気道陽圧アセンブリ2260に連結された持続的気道陽圧ポート2228を含む。吸気面もしくは吸気室2204は、陽圧ブロワから出る新鮮空気と、酸素の流量を制御する別個の弁付きマニホールドから出る酸素を集めて結合するように動作できる。新鮮空気と酸素の吸入位置の両方に逆止弁2213と2223が配置され、それぞれ逆方向に流れるのを妨害または阻止する。逆止弁2242が開くと、流路は、矢印Aで示されているように、結合された酸素と空気を、患者回路に接続された中心腔2221に通して流す。或る実施形態に従い、患者回路は、同心的に配置されていて吸気ガスと呼気ガスは、混ざることがなく、吸気流路は、患者回路に接続する前にマニホールドの呼気面を通る。これらの目的は、スライドシールを用いることによって達成され、1つのコンポーネントが他のコンポーネント内に入れ子式に入り、それらの間でOリングを半径方向に圧縮する。図22Cに示されているように、Oリングは、中心インタフェース2220の中心腔2221と遠位インタフェース2210の中心腔2242との間に配置できる。さらに本明細書の別の箇所で説明されたように、呼気ガスは、患者回路の外側腔2232bを通ってマニホールドに入る。呼気流路の入口に逆止弁2233が配置されて、呼気ガスが患者によって再び呼吸されるのを妨げる。弁2250は、吸気流に類似のやり方で開閉して呼気ガスの流れを制御する。ガスは、開口部2251の外側リングを通って弁2250に入り、中心腔2252を通って出る。弁2250が開くと、流れは、マニホールドの呼気面2202から陰圧ブロワに達し、ここで大気に排出される。マニホールドの呼気面2202と陰圧ブロワの接続は、吸気ガスについて説明されたものに類似のOリングシール機構を使用できる。たとえばOリングは、オリフィス2252とフランジ2224のオリフィス内径との間に配置できる。
【0168】
図22Dは、マニホールドシステムによって提供される吸気流路2201の諸特徴に加えて、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の一部の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210、近位インタフェース
(図示せず)、および遠位インタフェース2210と近位インタフェースの間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース2210に連結された吸気制御弁アセンブリ2240も含む。吸気制御弁アセンブリ2240を作動して、種々の流体源からマニホールドシステム2200に入る吸気ガスの流れを制御する。たとえば吸気制御弁アセンブリ2240が開くと、矢印2212iiと2222iiで示されているように吸気ガスが吸気面もしくは吸気室2204から出ることと、矢印2212iiiと2222iiiで示されているように吸気ガスが遠位インタフェース2210に向かって環流することを促進し、および矢印2212ivと2222ivで示されているように呼気ガスが中心インタフェース2220の吸気供給ポート2221に入るのを促進する。反対に、吸気制御弁アセンブリ2240が閉じると、たとえば酸素源および空気源から出た吸気ガスがマニホールドシステム2200に入るのを阻止する。或る場合には、吸気制御弁アセンブリ2240は、ソレノイド弁を含む。
【0169】
患者に供給される吸気ガスは、多様な仕方でマニホールドシステム2200に入ることができる。図22Dに示されているように、中心インタフェース2220は、酸素源から酸素を受取る酸素吸入口2222を含んでよく、遠位インタフェース2210は、陽圧ブロワなどの空気源から空気を受取る空気吸入ポート2212を含んでよい。マニホールドシステム2200は、マニホールドシステム全体の種々異なる位置で流体の流れを調節または制御するための1つ以上の逆止弁も含んでよい。たとえばマニホールドシステム2200は、酸素吸入口2222を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する酸素逆止弁2223を含んでおり、酸素は、矢印2222iと2222iiで示された方向では吸入口2222を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、矢反対方向では吸入口2222を介してマニホールドシステム2200から流出するのを妨害または阻止される。これに関連して、制御弁2240は、矢印2212iiと2222iiで示されているように吸気面もしくは吸気室2204から出て、矢印2212iiiと2222iiiで示されているように弁2240を通り、さらに矢印2212ivと2222ivで示されているように中心インタフェース2220の吸気供給ポート2221を通り、近位インタフェースの患者回路インタフェースの吸気腔すなわち内部腔を介して患者に向かう流れを制御するように動作する。このように吸気制御弁2240を選択的に開閉して、患者への空気と酸素の流れを調節する。図22Dに例示されているように、流路は、開口部の外側リング2241で弁に入り中心腔2242で弁を出る。マニホールドシステム2200は、空気吸入口2212を通って逆流するのを妨害または阻止するように動作する空気逆止弁2213を含んでおり、空気は、矢印2212iと2212iiで示された方向では吸入口2212を介してマニホールドシステム2200に流入できるが、流体は、反対の方向では吸入口2212を介してマニホールドシステム2200から流出することが妨害または阻止される。動作中、吸気室2204内で空気と酸素は、随意に所望の空気・酸素比で混合でき、吸気制御弁2240および吸気供給ポート2221を通り、患者回路インタフェースの内側腔もしくは吸気腔を介して患者に達する。或る場合には、マニホールド内への空気と酸素の導入は、独立に制御できる。システムは、流量または圧力または両方を測定するセンサを含んでよい。患者に施す吸気ガスの制御は、そのような流量または圧力の組合せに基づくことができる。
【0170】
図22Eは、マニホールドシステムによって提供される呼気流路2203の諸特徴に加えて、本発明の実施形態に従うマニホールドシステム2200の一部の分解斜視図を示す。マニホールドシステム2200は、遠位インタフェース(図示せず)、近位インタフェース2230、および遠位インタフェースと近位インタフェース2230の間に配置された中心インタフェース2220を含む。マニホールドシステム2200は、近位インタフェース2230に連結された呼気制御弁アセンブリ2250も含む。呼気制御弁アセンブリ2250を作動すると、マニホールドシステム2200に入る呼気ガスの流れを制御するように動作する。たとえば呼気制御弁アセンブリ2250が開くと、矢印2232iと
2232iiで示されているように呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが促進され、呼気制御弁アセンブリ2250が閉じると、呼気ガスがマニホールドシステム2200に入ることが阻止される。或る場合には、呼気制御弁アセンブリ2250は、ソレノイド弁を含む。
【0171】
患者から出る呼気ガスは、矢印2232iで示されているように、最初にインタフェース2230の患者回路インタフェース2232の呼気腔すなわち外側腔2232bを通ってマニホールドシステム2200を循環できる。マニホールドシステム2200は、近位インタフェースで流体の流れを調節または制御するための逆止弁も含んでよい。たとえばマニホールドシステム2200は、回路インタフェース2232を通る逆流を妨害または阻止するように動作する呼気逆止弁2233を含んでおり、矢印2232iと2232iiで示された方向では呼気は、患者から出て回路インタフェース2232の呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200に流入できるが、反対の方向では流体は、回路インタフェース2232の呼気腔2232bを介してマニホールドシステム2200から流出することが妨害または阻止される。これに関連して、制御弁2250は、矢印2232iiで示されているように呼気面もしくは呼気室2202から出て、矢印2232iiiで示されているように弁2250を通り、さらに矢印2232ivで示されているように中心インタフェース2220の呼気排出ポート2224を通る流れを制御するように動作する。このように呼気制御弁2250を選択的に開閉して、患者から出る呼気ガスの流れを調節する。図22Eに例示されているように、流路は、開口部の外側リング2251で弁2250に入り、中心腔2252で弁から出る。
【0172】
図22Fは、本発明の実施形態に従う患者回路インタフェースの諸特徴を示す。患者回路インタフェース2232は、内側腔もしくは吸気腔2232aと、外側腔もしくは呼気腔2232bとを有する同心的構成を見せている。内側腔もしくは吸気腔2232aは、矢印Aで示されているように吸気ガスを患者に向かって運ぶように動作し、外側腔もしくは呼気腔2232bは、矢印Bで示されているように患者から出た呼気ガスを運ぶように動作する。典型的に、吸気ガスと呼気ガスは、患者と患者回路インタフェース2232との間で、内側腔2232aに流体連通する内側通路もしくは吸気通路、および外側腔もしくは呼気腔2232bに流体連通する外側通路もしくは呼気通路を有するチューブアセンブリを介して送られる。例示的な実施形態に従い、治療システムは、患者回路上の相手の円錐継手に係合する同心的円錐継手を有するチューブ接続を含んでよく、こうして患者回路の吸気分岐と呼気分岐をいずれも同時に急速かつ直感的に取付けることが提供される。同心的配置構成によって看護者は、患者回路を1回の動作で患者に装着でき、しかも片手で行うことができる。
【0173】
図22Gは、本発明の実施形態に従うハンドル2280を有するケースもしくはボンネット2270の諸特徴を示す。ケース2270は、本明細書に記載されたマニホールドシステムを保持または受容するように構成できる。ここに示されるように、ハンドル2280は、ケース2270の裏側2272を包み込んでいる。この配置構成によって装着ポイントが強化されて、ケース2270の上背部コーナー2274に衝撃保護を提供できる。或る実施形態に従い、ハンドル2280は、ケースの裏側を約1インチの距離で包み込んでいる。ハンドル2280は、下側2284を有する装着点2282を含んでよい。ケース2270は、流体をケース内に受容するように構成された吸入ポート2286を含んでよい。たとえば吸入ポート2286は、冷却空気をケース内に受容するように構成できる。或る場合にハンドル2280は、1つ以上の冷却空気フィルタ(図示せず)を保持または受容するための保持部もしくは凹部2288を提供してよい。随意にハンドル2280は、ケース2270上に配置された弾性フラップとして構成されてよい。或る場合には、ハンドル2280は、準弾性材料を含むことができ、ケース側面の円弧状切欠部の下側に装着できる。或る実施形態に従い、ハンドル材料は、運ぶために掴むと外側に曲がるよう
に十分柔軟であることができる。ハンドルが軟質材料を含む場合、軟質材料は、ケースまたはケースに結合するかケース内に包含されたその他の構造部材、たとえばマニホールドシステムの要素に対して衝撃保護を提供できる。或る実施形態において、保護ケースは、取外可能である。ケースは、衝撃および浸水に対する保護を提供でき、こうしてマニホールドを好ましくない力、ショックおよび水による損傷から遮蔽する。
【0174】
或る場合にケースは、複数のハンドルを有してよい。たとえばケースは、第1ハンドルをケースの左側、第2ハンドルをケースの右側を有することができる。ハンドルは、適度に軟質のプラスチックから作られ、使用していないときには装置の側面に平らに当接できる。ハンドルとして使用するか、または固定するための装着ポイントとして使用するときにはハンドル材料は、容易に掴めるように十分柔軟である。ハンドルは、また装置の包囲体内で循環すべき冷却空気の吸入口でフィルタを隠して保持できる。吸入口の位置のために装置は、縦に置いたときには湿気侵入(たとえば雨)から保護され得るが、何らかのケースで浸漬され、または表を下にして置くことが許される場合には保護しなくともよい。
【0175】
図23は、本発明の実施形態に従う治療システムで使用するためのユーザインタフェース2300の諸特徴を示している。さらに治療システムの使用に動作に関する追加の詳細が、図23を参照して理解され得る。ここに示されるように、ユーザインタフェース2300は、治療システムの動作または使用の種々のモードに対応する幾つかのサブインタフェースを含む。たとえばインタフェース2300は、循環補助モードサブインタフェース2310、換気モードサブインタフェース2320、および持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェース2330を含む。循環補助モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの陰圧を提供するように構成されている。持続的気道陽圧モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を提供するように構成されており、換気モードにあるとき治療システムは、終末呼気陽圧(PEEP)を伴い、または伴わずに陽圧換気を提供するように構成されている。或る場合に治療システムは、二相性気道陽圧(BIPAP)治療を提供し、吸気気道陽圧(IPAP)と、呼気を容易にするためのより低い呼気気道陽圧(EPAP)を含む2種類のレベルの圧力を施すように構成できる。したがって、ユーザインタフェース2300は、二相性気道陽圧モードサブインタフェース(図示せず)も含んでよい。
【0176】
ユーザインタフェース2300は、幾つかの革新的な特徴を備えた独特の設計を見せる。ここに表現されているように、モードサブインタフェース2310、2320、および2330は、円形レイアウトで提供されている。ユーザインタフェース2300は、次の2段階のスタートプロセスを容易にする。循環補助モードでは、ユーザは、最初に治療される患者の体格(すなわちそれぞれ大型成人、中型成人、小型成人、または小児)に応じて体格アイコン2312a、2312b、2312c、2312dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。選択すべき体格アイコンを決定するとき、ユーザは、インタフェースに提示される患者体格凡例2350を参照できる。ここに示されるように、患者体格凡例2350は、身長が5’10”(5フィート10インチ。1.78m)〜6’3” (6フィート3インチ。1.90m)の患者を
治療するときには大型アイコンを選択するのが適切であり、身長が5’4”(1.62m)〜5’9”の患者を治療するときには中型アイコンを選択するのが適切であり、身長が4’8” (1.42m)〜5’3”の患者を治療するときには小型アイコンを選択する
のが適切であり、身長が4’(1.21m)〜4’7”の患者を治療するときには小児体格アイコンを選択するのが適切であることを指示する。換気モードでは、ユーザは、最初に治療される患者の体格(すなわちそれぞれ大型成人、中型成人、小型成人または小児)に応じて体格アイコン2322a、2322b、2322c、2322dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。持続的気道陽圧モードでは、ユーザは、最初に所望の圧力値(たとえば5cmH2O、7.5cmH2O
、10cmH2Oまたは15cmH2O)に応じて圧力値アイコン2332a、2332b、2332c、2332dの1つを押し、次に確認アイコン2340を押してシステムモードの動作を開始できる。したがって、インタフェースは、直感的で理解しやすく、こうして好適なユーザビリティーを提供し、ユーザは、所望の目的を達成することができる。ユーザインタフェース2300は、患者の気道内で1つ以上の圧力センサを用いて決定されるリアルタイムの気動陽圧と気道陰圧を表示できる圧力インジケータ2302も含むことができる。
【0177】
ユーザインタフェース2302は、また基本モードサブインタフェース2304と高度モードサブインタフェース2306を提供するように構成できる。ここに示されるように、基本モードは、ディスプレイの上の部分(たとえば円形が描かれている場所)および高度モードは、ディスプレイの下の部分に現れている。或る実施形態に従い、基本モードを採用するとき、オペレータは、どの治療モード(たとえば循環補助、換気、または持続的気道陽圧)を使用するか決定し、患者の体格(たとえば大型、中型、小型または小児)に関して決定する。基本モードでは、他の治療システムのパラメータ、たとえば呼吸速度、1回換気量、終末呼気陽圧のレベル、および陰圧のレベルを、既定値としてあらかじめプログラムできる。高度モードを採用する実施形態に従い、オペレータは、ある特定の治療パラメータ、呼吸速度、1回換気量、終末呼気陽圧のレベルおよび陰圧のレベル(循環補助レベル)の実装に関して、随意に手動制御によって決定および調節できる。たとえばユーザは、呼吸速度コントロール2306a(i)を調節することによって呼吸速度(bpm)を調節でき、呼吸速度は、呼吸速度ディスプレイ2306a(ii)上に表示され得る。同様にユーザは、1回換気量コントロール2306b(i)を調節することによって1回換気量(ml)を調節でき、1回換気量は、1回換気量ディスプレイ2306b(ii)上に表示され得る。同様にユーザは、終末呼気陽圧(PEEP)コントロール2306c(i)を調節することによって終末呼気陽圧(PEEP)(cmH2O)を調節でき、終末呼気陽圧(PEEP)は、終末呼気陽圧(PEEP)ディスプレイ2306c(ii)上に表示され得る。さらにユーザは、循環補助コントロール2306d(i)を調節することによって循環補助(cmH2O)を調節でき、循環補助は、循環補助ディスプレイ2306d(ii)上に表示され得る。或る場合に、インタフェース2300は、ロックアウト機構2308を含んでおり、オペレータまたはその他の個人は、機構2308を作動して、高度モードの使用をロックアウトすることができる。
【0178】
ある実施形態において、治療システムは、測定された患者パラメータ(たとえば終末呼気二酸化炭素または気管二酸化炭素、心拍出量、経胸腔インピーダンス、筋酸素供給、筋pHなど)を循環増大の指標として用いて、装置が自動的にフィードバックループで気道陰圧のレベルを調整するように構成できる。或る場合に、治療システムの重量は、12ポンド(5.4kg)未満となるように構成できる。治療システムは、特注ソフトウェアを組込むか、または特注ソフトウェアで制御され得る。
【0179】
或る場合には、外部ユーザインタフェース表面は、多数の目的に役立ち得る透明なプラスチック膜質材料で覆われてよい。この膜は、ユーザインタフェースを湿気から保護し、表面は、保護されていないコントロールパネルよりも簡単に清掃できる。このカバーは、装置の周囲にクッションを提供できる材料から作られてよい。
【0180】
低圧酸素サブインタフェース2380は、たとえば治療システムが低圧酸素源に連結されるときに、オペレータが低酸素処置を選択するための入力を含むことができる。これに関連して、吸入酸素濃度サブインタフェース2390は、たとえば治療システムが高圧(たとえば15psi。0.1MPa)酸素源に連結されるときに、オペレータが吸入酸素濃度処置を選択するための入力を含むことができる。吸入酸素濃度プロトコルの間、システムは、患者に施される酸素のパーセンテージを制御するように動作できる。たとえばシ
ステムは、酸素100%、酸素40%と空気60%の混合、酸素21%と空気79%の混合などを供給するように選択できる。随意にパーセンテージは、患者の必要に基づき選択できる。
【0181】
図24は、例示的なモジュールシステムの単純化されたブロック図であり、モジュールシステム2400の個々のシステム要素を個別的または統合的に実装する仕方を例解している。モジュールシステム2400は、本発明の実施形態に従う治療システムの一部であるか、またはこれに接続されてよい。モジュールシステム2400は、オペレータ、患者または両者からの入力もしくは情報を受取り、出力もしくは情報を胸腔内圧治療の一部として表示するのによく適している。ここに示されるモジュールシステム2400は、バスサブシステム2402を介して電気的に連結されたハードウェア要素を含んでおり、これには1つ以上のプロセッサ2404、1つ以上の入力装置2406、たとえばユーザインタフェース入力装置、1つ以上の出力装置2408たとえばユーザインタフェース出力装置、ネットワークインタフェース2410、およびロードシステム2442から信号を受取り、これに信号を送ることができるロードシステムインタフェース2440が含まれる。
【0182】
ある実施形態において、モジュールシステム2400は、現在はメモリ2414のワーキングメモリ2412内に置かれて示されているソフトウェア要素も包含し、これにはオペレーティングシステム2416およびその他のコード2418、たとえば本発明の方法を実現するために設計されたプログラムが含まれる。
【0183】
同様に、ある実施形態においてモジュールシステム2400は、本発明の種々の実施形態の機能性を提供する基本プログラミングおよびデータ構造を記憶できる記憶サブシステム2420も含んでよい。たとえば本発明の方法の機能性を実現するソフトウェアモジュールは、本明細書に記載されているように、記憶サブシステム2420に記憶されてよい。これらのソフトウェアモジュールは、一般的には1つ以上のプロセッサ2404によって実行される。分散環境においては、ソフトウェアモジュールは、複数のコンピュータシステムに記憶され、複数のコンピュータシステムのプロセッサによって実行され得る。記憶サブシステム2420は、メモリサブシステム2422とファイル記憶サブシステム2428を含むことができる。メモリサブシステム2422は、多数のメモリを含んでよく、これにはプログラム実行中に命令とデータを記憶するためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)2426、および特定の命令が記憶されているリードオンリーメモリ(ROM)2424が含まれる。ファイル記憶サブシステム2428は、プログラムとデータファイルのための永続的な(非揮発性)記憶を提供でき、随意に患者、治療、評価またはその他のデータを具体化した有形記憶媒体を含んでよい。ファイル記憶サブシステム2428は、ハードディスクドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブおよび関連する取外可能な媒体、コンパクトデジタル・リードオンリーメモリ(CD−ROM)ドライブ、光学式ドライブ、DVD、CD−R、CDRW、取外可能なソリッドステートメモリ、または取外可能な媒体カートリッジまたはディスクなどを含んでよい。1つ以上のドライブは、モジュールシステム2400に連結された他の部位で接続されたコンピュータ上の遠隔位置に配置されてよい。本発明の機能性を実現するモジュールは、ファイル記憶サブシステム2428によって記憶されてよい。或る実施形態において、ソフトウェアまたはコードは、モジュールシステム2400が通信ネットワーク2430に通信するのを可能にするためのプロトコルを提供しよう。随意にそのような通信は、ダイヤルアップまたはインターネット接続通信を含んでよい。
【0184】
システム2400は、本発明の方法の種々の特徴を実現するように構成できることが認識される。たとえばプロセッサのコンポーネントもしくはモジュール2404は、センサ入力装置もしくはモジュール2432またはユーザインタフェース入力装置もしくはモジ
ュール2406から、生理パラメータ信号、装置パラメータ信号または治療パラメータ信号を受取り、これらの治療信号を出力装置もしくはモジュール2436、ユーザインタフェース出力装置もしくはモジュール2408、ネットワークインタフェース装置もしくはモジュール2410、またはこれらの何らかの組合せに送るように構成されたマイクロプロセッサ制御モジュールであることができる。本発明の実施形態に従う各々の装置もしくはモジュールは、プロセッサまたはハードウェアモジュール、またはこれらの何らかの組合せによって処理されるコンピュータ可読媒体に1つ以上のソフトウェアモジュールを含むことができる。本発明の実施形態を実現するために、一般に使用されている任意の多様なプラットフォーム、たとえばウィンドウズ(登録商標)、マッキントッシュ、およびユニックスは、一般に使用されている任意の多様なプログラミング言語と併せて用いられてよい。
【0185】
ユーザインタフェース入力装置2406は、たとえばタッチパッド、キーボード、マウスなどのポインティングデバイス、トラックボール、グラフィックタブレット、スキャナ、ジョイスティック、ディスプレイに組込まれたタッチスクリーン、音声認識システムなどの音声入力装置、マイクロホン、およびその他のタイプの入力装置を含んでよい。ユーザ入力装置2406は、またコンピュータ実行可能コードを有形記憶媒体または通信ネットワーク2430からダウンロードしてよく、これらのコードは、本発明のいずれかの方法を具体化している。端末ソフトウェアは、時々更新され、必要に応じて端末にダウンロードされてよいことは、認識されよう。一般に「入力装置」という用語の使用は、情報をモジュールシステム2400に入力するための多様な慣用または独自の装置および方法を含むことが意図されている。
【0186】
ユーザインタフェース出力装置2406は、たとえばディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機械、または音声出力装置などの非視覚的ディスプレイを含んでよい。ディスプレイサブシステムは、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネル装置、投影装置などであってよい。ディスプレイサブシステムは、音声出力装置などの非視覚的ディスプレイも提供してよい。一般に、「出力装置」という用語の使用は、情報をモジュールシステム2400からユーザに出力するための多様な慣用または独自の装置および方法を含むことが意図されている。
【0187】
バスサブシステム2402は、モジュールシステム2400の種々のコンポーネントおよびサブシステムを互いに意図された通りに通信させる機構を提供する。モジュールシステム2400の種々のコンポーネントおよびサブシステムは、同じ物理的位置にある必要はなく、分散型ネットワーク内部で種々異なる位置に分散されてよい。バスサブシステム2402は、図式的に単一バスとして示されているが、バスサブシステムの代替的実施形態は、多重バスを利用してよい。
【0188】
ネットワークインタフェース2410は、外部ネットワーク2430またはその他の装置とのインタフェースを提供できる。外部通信ネットワーク2430は、他の関係者と必要または所望の通り通信させるように構成できる。こうして外部通信ネットワーク2430は、モジュールシステム2400から電子パケットを受取り、必要な情報または所望される情報を通りモジュールシステム2400に送返す。そのようなシステム内部のインフラストラクチャ通信リンクを提供することに加えて、通信ネットワークシステム2430は、インターネットなど他のネットワークとの接続も提供でき、有線接続、無線接続、モデム接続および/またはその他のタイプのインタフェース接続を含んでよい。
【0189】
特定の要求に従い相当な変化例が用いられてよいことは、当業者には明白であろう。たとえばカスタマイズされたハードウェアも使用でき、および/または特別の要素をハードウェア、ソフトウェア(アプレットなど携帯ソフトウェアを含む)、または両方に実装で
きよう。さらにネットワーク入力/出力装置など他のコンピュータデバイスとの接続が採用されてよい。モジュールターミナルシステム2400自体は、種々のタイプであってよく、コンピュータターミナル、パーソナルコンピュータ、携帯コンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、または他の任意のデータ処理システムを含む。コンピュータとネットワークは、本質的に変化し続けるものであるため、図24に示すモジュールシステム2400の説明は、本発明の1つ以上の実施形態を説明するための具体例として意図されたものに過ぎない。モジュールシステム2400の他の多くの構成が可能であり、図24に示すモジュールシステムより多い、または少ないコンポーネントを有する。モジュールシステム2400の任意のモジュールもしくはコンポーネント、またはそのようなモジュールもしくはコンポーネントの任意の組合せを、本明細書で開示された実施形態の何らかの治療システムに連結または統合するなどして接続できる。これに関連して、上述した任意のハードウェアおよびソフトウェアコンポーネントは、他の位置で使用される評価システムまたは治療システムと統合でき、またはこれらとインタフェース接続できる。
【0190】
ある実施形態において、モジュールシステム2400は、入力モジュールで患者の生理的パラメータを受取るように構成できる。生理的パラメータデータは、評価モジュールに送られ、そこで生理的プロファイルを決定できる。プロファイルは、出力モジュールを介してシステムに出力され得る。或る場合にモジュールシステム2400は、たとえば治療モジュール治療を用いることで、生理的パラメータまたはプロファイルに基づき患者のための治療プロトコルを決定できる。治療は、出力モジュールを介してシステムユーザに出力できる。随意に出力装置によって治療の特徴を決定して、治療システムまたは治療システムのサブデバイスに送ることができる。年齢、体重、性別、治療歴、病歴などを含む患者に関する任意の多様なデータをモジュールシステムに入力できる。そのようなデータに基づき、治療計画または、診断評価のパラメータを決定できる。
【0191】
図25Aと図25Bは、本発明の実施形態に従う胸腔内圧調整システム2500の諸特徴を示す図である。或る実施形態に従い、胸腔内圧調整システム2500は、内部真空源と陽圧換気装置のいずれも組込んだ完全自動装置を有する。胸腔内圧調整システム2500は、たとえば循環補助モードサブインタフェース2510、換気モードサブインタフェース2520、および持続的気道陽圧(CPAP)モードサブインタフェース2530を介して、循環補助モード、換気モードまたは持続的気道陽圧モードを指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサを含むことができる。循環補助モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの陰圧を供給するように構成される。持続的気道陽圧モードにあるとき治療システムは、調節可能なレベルの持続的気道陽圧を供給するように構成され、換気モードにあるとき治療システムは、終末呼気陽圧(PEEP)を伴い、または伴わずに陽圧換気を提供するように構成されている。或る場合に治療システムは、二相性気道陽圧(BIPAP)治療を提供し、吸気気道陽圧(IPAP)と、呼気を容易にするためのより低い呼気気道陽圧(EPAP)を含む2種類のレベルの圧力を施すように構成できる。したがって、ユーザインタフェース2500は、二相性気道陽圧モードサブインタフェース(図示せず)も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、図21〜図24に関して本明細書の別の箇所で説明されているように、インタフェースまたはシステム特徴を含むことができる。
【0192】
或る場合には、胸腔内圧調整システム2500は、多数のモードを備えたブロワベースの可搬式換気装置を包含し、陽圧換気モード(随意に調節可能な終末呼気陽圧を備える)、持続的気道陽圧モード、および循環補助モードを含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、バッテリで給電されてよい。或る場合には、胸腔内圧調整システム2500は、酸素治療を伴い、または伴わずに使用できる。胸腔内圧調整システム2500は、体身長図によって選択する体格アイコンに基づき、随意に予測される体重計算に基づき、所望
する1回換気量および呼吸速度情報であらかじめプログラムされてよい。或る場合に胸腔内圧調整システム2500は、多数の吸気中酸素濃度レベルを施すために使用できる。胸腔内圧調整システム2500は、ボタンを1回押して作動もしくは展開できる多数の展開モードを有する。手動モード(オンオフ)は、医長レベルで無効にできる。胸腔内圧調整システム2500は、持続的気道陽圧を混合、呼吸波形下降(生体模倣)、酸素源または、バッテリ電源、および低酸素状況での自動切替えと統合して実現してよい。
【0193】
胸腔内圧調整システム2500は、ハンドル2580を有するケース2570を含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、流体をケース内に受容するように構成された吸入ポート2586も含んでよい。たとえば吸入ポート2586は、冷却空気をケース内に受容するように構成できる。胸腔内圧調整システム2500は、空気、酸素または両方を患者に向けて送る吸気腔2592と、呼気ガスを患者から引取る呼気腔2594を有する患者回路インタフェース2590も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、少なくとも部分的にケース2570内に包含されたマニホールドアセンブリを含んでよい。胸腔内圧調整システム2500はさらに、たとえばシステムが循環補助モードにあるときには、呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構を含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、たとえばシステムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、たとえばシステムが持続的気道陽圧モードにあるときには、呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構も含んでよい。胸腔内圧調整システム2500は、システムに動作結合している1つ以上のセンサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき、システムユーザに情報を表示するユーザディスプレイまたはインタフェース2501を含んでよい。ディスプレイ情報は、心肺蘇生治療を施している間の心肺蘇生の質に関係してよい。これに関連して、ディスプレイ情報は、循環パラメータまたは非心肺蘇生治療を施している間に患者において発生する状態に関係してよい(たとえば患者ショックの治療)。
【0194】
以上、本発明について明確さと理解を目的として詳細に説明した。しかしながら、添付の請求項の範囲内で特定の変更および修正が行われてよいことは、認識されよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムであって、前記胸腔内圧調整システムは、
患者に流体連通する患者ポートと;
換気機構に流体連通する換気ポートであって、前記換気機構は、前記患者ポートを介して患者に施される陽圧換気処置を促進することと;
真空機構に流体連通する真空ポートであって、前記真空機構は、前記患者ポートを介して患者に施される真空処置を促進することと;
流体の流れを制御するための弁と
を有し、
前記弁は、
前記陽圧換気処置を施している間には、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを許して前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、
前記真空処置を施している間には、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止して前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
胸腔内圧調整システム。
【請求項2】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、前記弁に動作結合している終末呼気陽圧機構を有し、
前記弁はさらに、前記真空処置を施す前または後で行われる終末呼気陽圧治療を施す間には、前記終末呼気陽圧機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項3】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、前記患者ポートに流体連通している圧力センサを有し、
前記圧力センサは、
前記陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用を示し、
前記真空処置を施している間には陰圧の適用を示す、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項4】
前記弁は、前記陽圧換気処置が開始すると、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、かつ前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように作動する、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項5】
前記換気機構は、麻酔器を有する、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項6】
患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムであって、前記胸腔内圧調整システムは、
循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードからなるグループから選択された一要素を指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサと;
前記プロセッサに動作結合しているマニホールドアセンブリと;
前記胸腔内圧調整システムが前記循環補助モードにあるときには、呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構と;
前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構と、前記胸腔内圧調整システムが持続的気道陽圧モードにあるときには、前記呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構とからなるグループから選択された一要素と
を有し、
前記マニホールドアセンブリは、
吸気面に流体連通して酸素源から酸素を受取る酸素吸入ポートと;
前記吸気面に流体連通して空気源から空気を受取る空気吸入ポートと;
呼気面に流体連通して呼気ガスを前記陰圧機構に向けて通過させる呼気ガス排出ポートと;
空気と酸素を患者に向けて送出す吸気腔と、呼気ガスを患者から引取る前記呼気腔とを備えた患者回路インタフェースと;
前記吸気面と前記吸気腔との間の流体の流れを制御する吸気制御弁アセンブリと;
前記呼気面と前記呼気ガス排出ポートとの間の流体の流れを制御する呼気制御弁アセンブリと
を有する、胸腔内圧調整システム。
【請求項7】
前記胸腔内圧調整システムは、前記陽圧換気機構と、調節可能な前記持続的気道陽圧機構とを有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項8】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項9】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、
ユーザディスプレイと;
生理的センサと機械的センサとからなるグループから選択されたセンサ機構と
を有し、
前記プロセッサは、心肺蘇生の質または循環に関する情報を表示するために、前記センサ機構から受取った患者情報に基づき前記ユーザディスプレイにディスプレイ指示を送る、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき前記ユーザディスプレイに前記ディスプレイ指示を送り、
前記ディスプレイ指示は、心肺蘇生治療を施している間の心肺蘇生の質に関係する、
請求項9記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき前記ユーザディスプレイに前記ディスプレイ指示を送り、
前記ディスプレイ指示は、非心肺蘇生治療を施している間の循環に関係する、
請求項9記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項12】
前記換気機構は、麻酔器を有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項13】
患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法であって、前記患者は敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧、もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有し、
前記方法は、
換気機構によって生成された陽圧換気を、胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すことと;
真空機構によって生成された真空を、前記患者ポートを介して患者の気道に施すこととを備え、
前記陽圧換気を施す間には、前記胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許すことで、前記真空機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、
前記真空を施す間には、前記流体制御弁は、前記換気機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止することで、前記真空機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
方法。
【請求項14】
前記方法はさらに、前記陽圧換気を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを備え、
前記終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に前記真空が施される、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法はさらに、前記真空を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを備え、
前記陽圧換気を施した後で、患者の気道に前記真空が施される、
請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記方法はさらに、
陽圧換気処置を施している間には、陽圧の適用の指示を表示することと;
真空処置を施している間には、陰圧の適用の指示を表示することと
を備える、
請求項13記載の方法。
【請求項17】
患者に胸腔内圧調整治療を提供する胸腔内圧調整システムの動作方法であって、前記患者は敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有し、
前記動作方法は、
前記胸腔内圧調整システムが循環補助モードにあるときには、前記胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して、患者に一定または調節可能な陰圧治療を施すことと;
前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、前記胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して、患者に陽圧換気治療を施すことと、または前記胸腔内圧調整システムが持続的気道陽圧モードにあるときには、前記呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を施すことと
を備える、
胸腔内圧調整システムの動作方法。
【請求項18】
前記動作方法はさらに、前記胸腔内圧調整システムの終末呼気陽圧機構によって、患者に終末呼気陽圧治療を施すことを備える、
請求項17記載の動作方法。
【請求項19】
前記動作方法はさらに、
前記胸腔内圧調整システムが前記換気モードにあるときには、前記吸気腔を介して患者に前記陽圧換気治療を施すことと;
陽圧換気を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことと
を備え、
前記終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に前記陰圧治療が施される、
請求項17記載の動作方法。
【請求項20】
前記動作方法はさらに、前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、前記吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すことと;
前記陰圧治療を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことと
を備え、
陽圧換気を施した後で、患者の気道に前記陰圧治療が施される、
請求項17記載の動作方法。
【請求項21】
前記動作方法はさらに、心肺蘇生治療を施している間には、心肺蘇生の質に関する情報を、前記胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを備える、
請求項17記載の動作方法。
【請求項22】
前記動作方法はさらに、非心肺蘇生治療を施している間には、循環に関する情報を、前記胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを備える、
請求項17記載の動作方法。
【請求項1】
患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムであって、前記胸腔内圧調整システムは、
患者に流体連通する患者ポートと;
換気機構に流体連通する換気ポートであって、前記換気機構は、前記患者ポートを介して患者に施される陽圧換気処置を促進することと;
真空機構に流体連通する真空ポートであって、前記真空機構は、前記患者ポートを介して患者に施される真空処置を促進することと;
流体の流れを制御するための弁と
を有し、
前記弁は、
前記陽圧換気処置を施している間には、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを許して前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、
前記真空処置を施している間には、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止して前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
胸腔内圧調整システム。
【請求項2】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、前記弁に動作結合している終末呼気陽圧機構を有し、
前記弁はさらに、前記真空処置を施す前または後で行われる終末呼気陽圧治療を施す間には、前記終末呼気陽圧機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項3】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、前記患者ポートに流体連通している圧力センサを有し、
前記圧力センサは、
前記陽圧換気処置を施している間には陽圧の適用を示し、
前記真空処置を施している間には陰圧の適用を示す、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項4】
前記弁は、前記陽圧換気処置が開始すると、前記換気ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、かつ前記真空ポートと前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止するように作動する、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項5】
前記換気機構は、麻酔器を有する、
請求項1記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項6】
患者の治療に使用するための胸腔内圧調整システムであって、前記胸腔内圧調整システムは、
循環補助モード、換気モード、および持続的気道陽圧モードからなるグループから選択された一要素を指定するオペレータ選択入力を受取るプロセッサと;
前記プロセッサに動作結合しているマニホールドアセンブリと;
前記胸腔内圧調整システムが前記循環補助モードにあるときには、呼気腔を介して患者に陰圧治療を提供する一定または調節可能な陰圧機構と;
前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を提供する陽圧換気機構と、前記胸腔内圧調整システムが持続的気道陽圧モードにあるときには、前記呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を提供する調節可能な持続的気道陽圧機構とからなるグループから選択された一要素と
を有し、
前記マニホールドアセンブリは、
吸気面に流体連通して酸素源から酸素を受取る酸素吸入ポートと;
前記吸気面に流体連通して空気源から空気を受取る空気吸入ポートと;
呼気面に流体連通して呼気ガスを前記陰圧機構に向けて通過させる呼気ガス排出ポートと;
空気と酸素を患者に向けて送出す吸気腔と、呼気ガスを患者から引取る前記呼気腔とを備えた患者回路インタフェースと;
前記吸気面と前記吸気腔との間の流体の流れを制御する吸気制御弁アセンブリと;
前記呼気面と前記呼気ガス排出ポートとの間の流体の流れを制御する呼気制御弁アセンブリと
を有する、胸腔内圧調整システム。
【請求項7】
前記胸腔内圧調整システムは、前記陽圧換気機構と、調節可能な前記持続的気道陽圧機構とを有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項8】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、患者に終末呼気陽圧治療を提供する終末呼気陽圧機構を有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項9】
前記胸腔内圧調整システムはさらに、
ユーザディスプレイと;
生理的センサと機械的センサとからなるグループから選択されたセンサ機構と
を有し、
前記プロセッサは、心肺蘇生の質または循環に関する情報を表示するために、前記センサ機構から受取った患者情報に基づき前記ユーザディスプレイにディスプレイ指示を送る、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき前記ユーザディスプレイに前記ディスプレイ指示を送り、
前記ディスプレイ指示は、心肺蘇生治療を施している間の心肺蘇生の質に関係する、
請求項9記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記センサ機構から受取った患者フィードバック情報に基づき前記ユーザディスプレイに前記ディスプレイ指示を送り、
前記ディスプレイ指示は、非心肺蘇生治療を施している間の循環に関係する、
請求項9記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項12】
前記換気機構は、麻酔器を有する、
請求項6記載の胸腔内圧調整システム。
【請求項13】
患者に胸腔内圧調整治療を提供する方法であって、前記患者は敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧、もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有し、
前記方法は、
換気機構によって生成された陽圧換気を、胸腔内圧調整システムの患者ポートを介して患者の気道に施すことと;
真空機構によって生成された真空を、前記患者ポートを介して患者の気道に施すこととを備え、
前記陽圧換気を施す間には、前記胸腔内圧調整システムの流体制御弁は、換気機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許すことで、前記真空機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止し、
前記真空を施す間には、前記流体制御弁は、前記換気機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを阻止することで、前記真空機構と前記患者ポートとの間の流体の流れを許す、
方法。
【請求項14】
前記方法はさらに、前記陽圧換気を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを備え、
前記終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に前記真空が施される、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記方法はさらに、前記真空を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことを備え、
前記陽圧換気を施した後で、患者の気道に前記真空が施される、
請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記方法はさらに、
陽圧換気処置を施している間には、陽圧の適用の指示を表示することと;
真空処置を施している間には、陰圧の適用の指示を表示することと
を備える、
請求項13記載の方法。
【請求項17】
患者に胸腔内圧調整治療を提供する胸腔内圧調整システムの動作方法であって、前記患者は敗血症、ショック、心不全、心停止、急性呼吸促迫症候群、多発性外傷、頭部疾患、肝静脈圧もしくは門脈圧の上昇、腹部、頭部、および頚部手術中の出血、または開心術中の循環不全を患っているか、または発現させるリスクを有し、
前記動作方法は、
前記胸腔内圧調整システムが循環補助モードにあるときには、前記胸腔内圧調整システムの呼気腔を介して、患者に一定または調節可能な陰圧治療を施すことと;
前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、前記胸腔内圧調整システムの吸気腔を介して、患者に陽圧換気治療を施すことと、または前記胸腔内圧調整システムが持続的気道陽圧モードにあるときには、前記呼気腔を介して患者に調節可能な持続的気道陽圧治療を施すことと
を備える、
胸腔内圧調整システムの動作方法。
【請求項18】
前記動作方法はさらに、前記胸腔内圧調整システムの終末呼気陽圧機構によって、患者に終末呼気陽圧治療を施すことを備える、
請求項17記載の動作方法。
【請求項19】
前記動作方法はさらに、
前記胸腔内圧調整システムが前記換気モードにあるときには、前記吸気腔を介して患者に前記陽圧換気治療を施すことと;
陽圧換気を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことと
を備え、
前記終末呼気陽圧を施した後で、患者の気道に前記陰圧治療が施される、
請求項17記載の動作方法。
【請求項20】
前記動作方法はさらに、前記胸腔内圧調整システムが換気モードにあるときには、前記吸気腔を介して患者に陽圧換気治療を施すことと;
前記陰圧治療を施した後で、患者の気道に終末呼気陽圧を施すことと
を備え、
陽圧換気を施した後で、患者の気道に前記陰圧治療が施される、
請求項17記載の動作方法。
【請求項21】
前記動作方法はさらに、心肺蘇生治療を施している間には、心肺蘇生の質に関する情報を、前記胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを備える、
請求項17記載の動作方法。
【請求項22】
前記動作方法はさらに、非心肺蘇生治療を施している間には、循環に関する情報を、前記胸腔内圧調整システムのユーザディスプレイに表示することを備える、
請求項17記載の動作方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9A】
【図9B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図19A−1】
【図19A−2】
【図19C】
【図22B】
【図22G】
【図25A】
【図25B】
【図1】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19B】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図19G】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23】
【図24】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9A】
【図9B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図19A−1】
【図19A−2】
【図19C】
【図22B】
【図22G】
【図25A】
【図25B】
【図1】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19B】
【図19D】
【図19E】
【図19F】
【図19G】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22C】
【図22D】
【図22E】
【図22F】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−530556(P2012−530556A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516376(P2012−516376)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/039391
【国際公開番号】WO2010/148412
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511308613)アドバンスド サーキュレートリー システムズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED CIRCULATORY SYSTEMS,INC.
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/039391
【国際公開番号】WO2010/148412
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511308613)アドバンスド サーキュレートリー システムズ インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED CIRCULATORY SYSTEMS,INC.
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