階層型通信シナリオにおける複数の通信層の動作を制御する装置および方法
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層型通信システムの複数の通信層の動作を制御する装置であって、通信チャネルのプロパティを提供するための手段と、第1および第2の通信層の現在の状況を決定するために第1の通信層の第1のセットのパラメータと第2の通信層の第2のセットのパラメータとを取り出すためのエクストラクタと、第1の通信層の特性をモデリングしている第1のアブストラクション・モデルと第2の通信層の特性をモデリングしている第2のアブストラクション・モデルとを提供するための手段と、第1のアブストラクション・モデル、第2のアブストラクション・モデル、チャネル・プロパティおよび最適化の目標に基づいて、第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するための手段と、最適化された第1のセットのパラメータを第1の通信層に提供し、最適化された第2のセットのパラメータを第2の通信層に提供するための手段とを備えている。これにより通信リソースを効率的に活用することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠距離通信技術、特に、伝送される情報を処理するための、および/または受信された情報を処理するためのプロトコル層を使用する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体無線通信環境において、例えば無線リンクといった通信リンクの動的な振る舞いにより、信頼のできるハイクオリティなサービスを提供することは難しい課題である。したがって、システム設計者は、時間に依存するリソース利用性、フェージングエラー、機能停止またはハンドオーバに起因する伝送クオリティの予測不能な変動に対処しなければならない。第3世代システム以降の(Beyond the 3rd Generation:B3G)無線ネットワークにとって、B3Gシステムが、伝送特性が異なるとともに異機種が混成している環境の無線アクセスネットワークテクノロジーに及ぶことが予想されているので、この動的振る舞いは悪影響を与えるであろう。しかしながら、こうした次世代無線ネットワークは、ネットワークの多様性をシームレスに利用することができるように、顧客に対して信頼性が高く、さらに処理を意識させることがないようなサービスを提供することが期待されている。
【0003】
B3Gでのサービスおよびアプリケーションの提供(プロビジョニング)は、ネットワークの多様性だけでなくアプリケーションの多様性も、新規ビジネスモデルと見なさなければならない。この新規ビジネスモデルは、高度なオープンインタフェースを利用しているオペレータのサービス・プラットフォームの上に、第三者プロバイダが自身のアプリケーションを提供できるようにすることが期待されている。例えば、変動しているユーザ・プリファレンスまたは変動しているユーザ状況(コンテクスト)から生ずる動的に変化するアプリケーション要件を考慮に入れるため、オペレータは、前記変動する要件に応えるためにシステム・パラメータを動的に変える能力が必要となる。
【0004】
通常、従来型の通信システムは、情報処理のためプロトコル・スタックに配置された複数の通信層を利用している。図4に階層状に配置された複数の通信層を備えているプロトコル・スタックを示している。図4に示している従来技術のプロトコル・スタックは、Francis Hall社から2003年に出版されたAndrew Tanenbaum著の「Computer Networks」(第4版)に開示されている。
【0005】
プロトコル・スタックは、物理層901と、物理層901の上に配置されたデータリンク層903と、データリンク層903の上に配置されたネットワーク層905と、ネットワーク層905の上に配置されたトランスポート層907と、トランスポート層907の上に配置されたアプリケーション層911とを備えている。
【0006】
一般的に言えば、アプリケーション層は、伝送される情報を管理するように構成されている。例えば、情報は、通信チャネルを通じて伝送される情報として、例えばビデオデータストリームといったメディアデータストリームを含んでいる。代替として、伝送される情報は、通信チャネルを通じて伝送される、ビデオおよびオーディオ情報から構成されているマルチメディアデータストリームを含んでいる場合がある。さらに、アプリケーションは電子メールなどを含むことができる。言い換えると、アプリケーション層は、伝送されるアプリケーションを伝送可能な情報ストリームに変換するように動作している。
【0007】
アプリケーション層911は、トランスポート・サービスを提供するトランスポート層907と直接通信し、通信のために使用される物理ネットワークに応じて宛先シンク(destination sink)に情報を伝送されることができるようになっている。例えば、トランスポート層は、全ての通信ネットワークにおいて共通のピアツーピア(peer to peer:P2P)通信を維持するため、トランスポート・プロトコル・データ単位(TPDU)を情報データストリームに付加している。ピアツーピア通信は、例えば、トランスポート層907が宛先ネットワークに実装された別のトランスポート層と直接通信することを意味している。
【0008】
トランスポート層907は、トランスポート層907によって提供された情報フレームを処理しているネットワーク層905と直接通信し、それによりエンド・ツー・エンド通信、すなわち2つのコンピュータ・エンティティ間の通信が可能となる。
【0009】
ネットワーク層905は、ネットワーク層フレームを、データリンク層903および物理層901から構成されているリンク層に提供している。データリンク層903および物理層901は、例えば、メディア・アクセス制御用の副層のような複数の副層を備えている場合がある。
【0010】
リンク層は、ビットで表現された情報の通信チャネルを通した伝送を維持管理するように動作している。例えば、データリンク層903は、誤りのあったデータフレーム(パケット)を再送するために、そして例えば送達確認フレームを送信することによって各フレームが正しく受信されたことを確認するために、前方誤り訂正符号化(FEC)または前方誤り検出符号化を適用している。さらに、データリンク層903は、例えばマルチユーザ・シナリオにおいて、伝送されるフレームをスケジュールするように動作している。スケジュールする(スケジューリング)とは、あるフレームが所定のタイムスロット(送信時間フレーム)で伝送されることを意味している。
【0011】
データリンク層903は、物理層901と直接通信するようになっている。この物理層901は、データリンク層903によって提供されたストリームを、例えば、伝送される情報に基づいて搬送波を変調する変調スキームを用いて変調を行うことによって、更に符号化するように動作している。
【0012】
図4に示しているプロトコル・スタックの実施形態は、上記参考文献に記述されたTCP/IP参照モデル(TCP=伝送制御プロトコル、IP=インターネット・プロトコル)に対応している。便宜上、図4に示されているプロトコル・スタックは、アプリケーション層901とトランスポート層907との間に配置されたセッション層およびプレゼンテーション層といった2つの層を除いて、OSI参照モデル(OSI=開放型システム間相互接続)にも対応していることに注意されたい。
【0013】
図4に示しているインターネット・プロトコル・スタックは、B3Gシステムおよびアプリケーションの基本プラットフォームとして使用されることが期待されている。しかしながら、変動する伝送環境の中で良好な伝送クオリティを実現するため、利用可能なネットワーク・リソースを効率的に利用することは、問題に直面している通信システムまたはアプリケーションを、例えば変動する伝送特性およびアプリケーション要件に適応させるために必要である。例えば、周波数選択性の通信チャネルのケースでは、所定のビット誤り率、すなわち10-6という値が増大しないように、伝送されるデータビットストリームの適切な符号化が必要となってくる。それに応じて、物理層は、例えば変調スキームを現在のチャネル特性にアダプテーションさせるようになっている。それゆえ、システムをアダプテーションすることは、プロトコル・スタックの全てのプロトコル層で、各々の通信層の動作モードを決める各々のパラメータを適合させることによって、実行することが可能である。
【0014】
従来的に、例えばビデオストリームといった特定のアプリケーションに対応しているシステムの最適化は、例えばPOTS(Plain Old Telephony Service)のケースのように、例えば階層化していないシナリオにおいて唯一のサービスを提供するシステムでは、垂直方式で実行されるようになっている。
【0015】
無線インターネットなどの階層型通信システムでは、従来では、例えば利用可能な帯域幅、一定のビット誤り率を伴う実現可能なデータレートなどにおいて、利用可能な通信リソースの非効率的な利用を結果としてもたらすような、予測される最悪のケースのシナリオ(最悪条件)に対して、一部の層が独立に最適化されるようになっている。
【0016】
現行のシステムでは、層内アダプテーション(intra−layer adaptation)は、層間(inter−layer)の依存性を考慮せずに実現されるようになっている。P.A.ChouおよびZ.Miao共著の「Rate−Distortion Optimization Streaming of Packetized Media」、(米国)、Microsoft Research、テクニカルレポートMSR−TR−2001−35、マイクロソフト社、2001年2月、によれば、メディアフレームのスケジューリングがアプリケーション層によって実行される通信システムが開示されているが、このシステムでは、ビデオおよびオーディオの情報を搬送しているメディアフレームの相互依存関係のみが考慮に入れられている。M.Kalman、E.SteinbachおよびB.Girod共著の「R−D Optimized Media Streaming Enhanced with Adaptive Media Playout」、スイス国ローザンヌ、International Conference on Multimedia and Expo、 ICME2002、2002年8月、では、適応メディア再生スキーム(adaptive media playout scheme)が記述されているが、そこではオーディオデータ(例えば音声)およびビデオデータの再生速度はチャネル状態に応じて変えられるようになっている。S.Saha、M.JamtgaardおよびJ. Villasenor共著の「Bringing the wireless Internet to mobile devices」、(米国)、Computer、2001年6月、第34巻、第6号、p.54−58、では、現在使われている符号化スキームを、変動するチャネル状態に適応させるためにメディアデータのコード変換を適用する適応型中間層が記述されている。H.Imura等共著の「TCP over Second (2.5G) and Third (3G) Generation Wireless Networks」、RFC3481、IETF、2003年2月、には、ネットワーク混雑によるパケット損失と無線リンク上での通信路の消失による損失とを区別する無線TCPスタックが記述されている。F.H.FitzekおよびM.Reisslein共著の「A prefetching protocol for continuous media streaming in wireless environments」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2001年10月、第19巻、第10号、p.2015−2028、には、データリンク層の再送が記述されており、そこでは遅延制約が考慮に入れられている。既に知られているDIFFSERVアプローチは、メディア・パケットの間で設定された優先順位に基づいており、より重要なメディア・パケットがスケジュールされるようになっている。加えて、例えばIEEE802.11a標準に記述されているように、物理層における適応性のある変調および符号化が知られている。
【0017】
しかしながら、上記従来技術のアプローチは、最適化の目標を達成することに関して1つの層のみが最適化されるという事実に悩まされている。例えば、伝送クオリティを改善するために、物理層は伝送パワーを、現在のチャネル状態、例えば現在のチャネル減衰に応じて、適応的に調整するように動作している。言い換えると、上記従来技術のアプローチは、各々の通信層の動作モードを決める1つのセットのパラメータの最適化に依存している。
【0018】
リソースをより有効に活用するため、2つの層をアダプテーションさせることができる。K.Stuhlmuller、N.FarberおよびB.Girod共著の「Analysis of video transmission over lossy channels」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2000年6月、第18巻、第6号、p.1012−1032およびT.Fingscheidt、T.Hindelang、R.V.Cox、N.Seshadri共著の「Joint Source−Channel (De)Coding for Mobile Communications」、IEEE Transactions on Communications、2002年2月、第50巻、第2号、p.200−212、には、ソースおよびチャネルの符号化スキームが記述されている。アダプテーション・スキームは伝送クオリティに関してチャネル状態に応じたソースレートおよびコードレートのアダプテーションに基づいている。より具体的に言えば、ソースレートとチャネルレートの計算を可能にする解析公式が開示されている。
【0019】
W.Yuan、K.Nahrstedt、S.Adve、D.Jones、R.Kravets共著の「Design and Evaluation of a Cross−Layer Adaptation Framework for Mobile Multimedia Systems」、Multimedia Computing and Networking Conference(MMCN)2003に公表予定、には、パワー制御および伝送データレートの最適化が開示されている。S.Toumpis、A.Goldsmith共著の「Performance、optimization、and Cross−Layer Design of Media Access Protocols for Wireless Ad Hoc Networks」、IEEE International Conference on Communications(ICC)2003には、アドホック・ネットワークのためのメディア・アクセス制御(MAC)層および物理層の最適化が開示されている。
【0020】
しかしながら、最適化の目的でクロスレイヤ設計(cross−layer design)を適用している従来技術のコンセプトは、通信システム内において、ある特定の最適化の方法のみしか層内アダプテーションに対して考慮されていないという不都合がある。さらに、従来技術のアプローチは、層間の依存関係を考慮していないため、そのため利用可能なリソースを効率的に利用できていない。
【0021】
さらに、メディア・パケットの伝送時間をチャネル状態に応じて選ぶために、チャネル認識スケジューリングが適用されることがある。
【0022】
上述した従来技術は、最適化の方法を記述している。しかしながら、上記従来技術文献は、異なる種類のクロスレイヤ・アダプテーション(cross−layer adaptation)機構を可能にするためのアプローチは開示していない。
【0023】
従来技術のアプローチの更なる欠点は、開示された最適化スキームがフレキシブルでないという点にある。上述した従来技術のアプローチは、最適化のため、例えばパワー制御および伝送データレートといった1つまたは2つの特定のパラメータを考慮するのみで、利用可能な通信リソースを十分活かすための更なる最適化のシナリオは考慮されていない。
【0024】
最新のシステム・アーキテクチャは、クロスレイヤ・アダプテーションに対して設計されていないことから、Prehofer、W.Kellerer、R.Hirschfeld、H.Berndt、およびK.Kawamura共著の「An Architecture Supporting Adaptation and Evolution in Fourth Generation Mobile Communication Systems」、Journal of Communications and Networks(JCN)、2002年12月、第4巻、第4号において、クロスレイヤ・アダプテーションの概念を使用している開放型プログラマブル通信システムが開示されている。しかしながら、プログラマブル・プラットフォームは、システムレベルごとに存在しているのみである。各プラットフォームは、調整された構成を可能にする安定した最小のプラットフォームベースと、追加または取り外し可能な追加のプラットフォーム・コンポーネントとから構成されている。しかしながら、最後に紹介した従来技術文献は、これらのプログラマブル・プラットフォームの動作モードを制御しているパラメータを決定するためのコンセプトを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで本発明の目的は、伝送される情報を処理するための通信層を使用している通信システムにおける効率的なクロスレイヤ・アダプテーション・スキームの構想を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的は、請求項1に記載された複数の通信層の動作を制御する装置によって、あるいは請求項20に記載された伝送される情報を処理するための通信装置によって、あるいは請求項21に記載された受信信号を処理するための通信装置によって、あるいは請求項22に記載された複数の通信層の動作を制御する方法によって、あるいは請求項23に記載された伝送される情報を処理するための方法によって、あるいは請求項24に記載された受信信号を処理するための方法によって、あるいは請求項25に記載されたコンピュータ・プログラムによって、達成される。
【0027】
本発明は、特定の通信層の動作モードを決めるパラメータが、特定の通信層の振る舞いを記述するアブストラクション・モデル(abstruction model)を同時にエミュレートすることによって同時に決定されるとき、複数の通信層が、効率的に制御可能である、という所見に基づいている。特に、アブストラクション・モデルに基づいて、最適化の目標に関する例えば伝送クオリティといった通信層のパフォーマンスが、例えばビット誤り率といったチャネル・プロパティを考慮した上で最適化できるように、最適なパラメータを求めることができるようになっている。
【0028】
本発明のアプローチは、複数の最適化の目標を達成するため、複数の通信層の同時最適化の概念を提供している。特にマルチユーザ・シナリオにおいて、通信システムは、第1ユーザの信号および第2ユーザの信号を通信チャネルを通じて伝送するようになっている。第1ユーザの信号は、例えばビデオストリームといった、伝送される情報を含んでいる場合があるが、この場合、信号歪みを小さくするために一定の伝送クオリティが必要である。同様に、第2ユーザのストリームは、伝送される情報を含んでいる場合がある。この場合、最適化の目標は、その情報を処理している通信層とその情報を伝送している通信層のパフォーマンスを同時に最適化することにある。特に、伝送される情報を管理または処理している通信層は、既に言及されたアプリケーション層である場合がある。一方、通信チャネルを通じた伝送を管理している通信層は、図4において従来技術のプロトコルとの関連で示した物理層を備えている場合がある。
【0029】
本発明によれば、通信層は、例えば第1の通信層の動作モードを決める第1のセットのパラメータと第2の通信層の動作モードを決める第2のセットのパラメータとを同時に決定することによって、同時に最適化されるようになっている。しかしながら、特定の通信層の動作モードは、層間依存関係に起因して、つまりその特定の通信層によって実行される作業の複雑さおよび実行される複数のジョブに起因して、解析的に設定することはできない。この問題を解決するため、特定の通信チャネルの振る舞い(または特性)をモデリングしているアブストラクション・モデルが使用されるようになっている。状態図によって表されるアブストラクション・モデルは、2003年にPrentice Hall社から出版されたAndrew Tanenbaum著の「Computer Networks」、第4版に記載されている。しかしながら、そこに開示されているアブストラクション・モデルは、単一の通信層をモデリングするために一般的に使用されるようになっている。
【0030】
本発明によれば、最適なセットのパラメータは、最適化すべきプロトコル層の特定の特性をモデリングしているアブストラクション・モデルを基礎として最適化されなければならない少なくとも2つのプロトコル層の振る舞いを、同時にエミュレートすることよって決定されるようになっている。
【発明の効果】
【0031】
本発明の利点は、最適なセットのパラメータが現在のチャネル状態および最適化の目標に基づいて動的に求められるということにある。それゆえ、異なる伝送シナリオにおいて複数の最適化目標を達成するためにプロトコル・スタックを適応的に最適化することに関してフレキシビリティを実現させることができる。
【0032】
本発明の更なる利点は、通信層が同時的に最適化されるということである。それゆえ、層間依存関係を考慮したグローバルな最適化が実行されることから、利用可能な通信リソース、例えば利用可能な帯域幅は、全てまたはほぼ全て有効に活用され得る。
【0033】
本発明の更なる利点は、プロトコル層の現在の状態または現在のチャネル状態の情報が全ての通信層で利用できるので、どのプロトコル層も最適化できるということである。それゆえ、従来技術のアプローチに共通する非効率的な垂直的な情報の転送は回避されるようになっている。それゆえ、最適化の目標やチャネル・プロパティなどに応じて、最良の最適化結果を保証する通信層は、どれも最適化の目標を達成するために最適化することが可能である。
【0034】
通信層(プロトコル層)を使用する通信システム、すなわちB3Gシステム、の最適化に使用される最適化スキームは、クロスレイヤ設計で構成されている。ここでは、アプリケーション・パラメータから物理的伝送に及ぶプロトコル・スタックのいくつかの層が考慮されるようになっている。図5に通信システムの具体的な態様を示している。そこでは、1つの特定のアプリケーションに対する垂直的な方式のクロスレイヤ最適化を基礎としている通信システムの最適化が、実証されている。
【0035】
図5に示したシステムは、送信機1001(基地局)および受信機1003を備えている。送信機1001は、伝送されるアプリケーション(情報)を処理するためにプロトコル・スタック1005を適用している。プロトコル・スタック1005は、アプリケーション層と、トランスポート層と、ネットワーク層と、MACおよびPHYから構成されているリンク層とを備えている。一方、受信機1003は、送信機1001によって送信された送信信号の受信版である受信信号を処理するためにプロトコル・スタック1007を適用している。プロトコル・スタック1007(受信側プロトコル・スタック)は、リンク層と、IP層(ネットワーク層に相当)と、TCP/UDP層(トランスポート層に相当)と、アプリケーション層とを備えている。
【0036】
図5は、対応し合う層、例えばトランスポート層とTCP/UDP層とが互いに通信し合うピアツーピア(P2P)通信原理も明示している。
【0037】
特定のアプリケーションに対してシステムを最適化するため、例えばボトムアップの情報配信が実行されるようになっている。例えば、リンク層は、例えば信号対ノイズ比(SNR)または最大可能送信パワーといった物理的制約パラメータとしてチャネル・プロパティを取り出すようになっている。物理的制約パラメータは、次にアプリケーション層に転送され、そこでリアルタイム符号化・復号化スキーム(codec)を使用するビデオストリーミングが実行されている。言い換えると、アプリケーション層は、ビデオストリーミングに必要な伝送クオリティが実現できるようにリアルタイム・コーデック(codec)を物理的制約パラメータに適用するようになっている。
【0038】
従って、アプリケーション層は、リンク層にサービス品質(QOS)要件(例えば或るサービスに関連している或る決まったビット誤り率)について知らせるように動作している。この場合、リンク層は、QOSが満足されるようにより包括的な符号化スキームを適用している。
【0039】
図5に示した本発明のクロスレイヤ・アダプテーション技術は、システムの部分(パーツ)を動的に変化する環境に適応させるための、プロトコル・スタックの従来的な層にわたる層間情報交換に基づいている。既に言及したように、情報がプロトコル・スタックを上下両方向に伝搬するように動作している。クロスレイヤ情報交換は、アプリケーションがより下位の層(例えばリンク層)から、現在のネットワーク状態、および伝送クオリティに影響を与える予測可能なイベント、例えばハンドオーバに関する情報を受信することを意味している。それゆえ、下位の層は、既に述べたように、アプリケーションの現在の伝送要件についての情報を受信している場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1に、第1の通信層101と第2の通信層103とを含んでいるプロトコル・スタックを示している。第1の通信層101および第2の通信層103の動作モードを制御するために、(プロトコル・スタックに含まれる)複数の通信層の動作を制御する本発明の装置は、第1の入力107と、第2の入力109と、第1の出力111および第2の出力113を有しているエクストラクタ105とを備えている。第1の通信層101は、第1の入力107を介してエクストラクタ105に接続されており、一方、第2の通信層103は、第2の入力109を介してエクストラクタ105に接続されている。第1の出力111および第2の出力113は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115に入力されるように動作している。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、入力117と入力119が更に入力されるように動作している。加えて、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、入力123、第1の出力125、第2の出力127を更に入出力するように動作している。第1の出力125および第2の出力127は、最適化された第1のセットのパラメータおよび最適化された第2のセットのパラメータを提供するための手段129に入力されるように動作している。最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層101に送られる第1の出力131と第2の通信層103に送られる第2の出力133とを備えている。
【0041】
さらに、図1に示した装置は、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段(115)へ入力(123)を送るようになっている最適化の目標を提供するための手段(135)を備えている。
【0042】
図1に示した装置は、通信チャネルのプロパティを提供するための手段135を更に備えている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、第2の通信層103に接続されている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135の出力は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115の入力117を介して接続されている。
【0043】
加えて、図1の装置は、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルとを最適化された第1および第2のセットのパラメータを決定するための手段115に提供するための手段137を備えている。より具体的には、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137は、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115の入力119となる出力を有している。
【0044】
図1に示した装置は、複数の通信層の動作を制御するようになっている。そこには一例にすぎないが、第1の通信層101と第2の通信層103が記載されている。階層型通信システムは、通信チャネルを通じて情報を遠隔の受信機に伝送するように動作している。第1の通信層101の動作は、第1のセットのパラメータによって決まるように動作している。同様に、第2のセットのパラメータは、第2の通信層の動作モードを決めるようになっている。第1の通信層101と第2の通信層103の動作を制御するため、本発明に関係するエクストラクタ105は、第1の通信層と第2の通信層の現在のステージを特定する、第1の通信層の第1のセットのパラメータと第2の通信層の第2のセットのパラメータとを取り出すようになっている。複数の通信層から2層以上の通信層にアクセスするため、エクストラクタ105は、特定の通信層のみが最適化の目標を達成するために同時に最適化されるよう、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115によって制御されることがある。取り出された第1および第2のセットのパラメータは、プロトコル・スタックの最適化された動作モードを実現するために、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115に提供されるように動作する。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の通信チャネル101の振る舞いをモデリングしている第1のアブストラクション・モデルと、第2の通信チャネル103の振る舞いをモデリングしている第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティを提供するための手段135によって提供されるチャネル・プロパティと、例えばデータレートまたはビット誤り率に関する伝送クオリティといった最適化の目標とに基づいて、第1の通信層101によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、第2の通信層103によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するように動作する。
【0045】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1および第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137から第1および第2のアブストラクション・モデルを受け取るように動作する。例えば、第1および第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137は、異なる通信層に対する複数の異なるアブストラクション・モデルを格納するための記憶素子を備えている。特に、第1のアブストラクション・モデルは、第1の通信層の特性(振る舞い)をモデリングするが、そこでは層間依存関係が考慮されている場合がある。第1の通信層の特性は、第1のアブストラクション・モデルによってモデリングされることであり、例えば使用されている符号化スキームについての情報を含んでいる第1のセットのパラメータに依存することである。同様に、第2のアブストラクション・モデルは、第2のセットのパラメータに依存している第2の通信層の特性をモデリングするように動作している。
【0046】
既に言及したように、アブストラクション・モデルは、各々の動作モードを記述している状態図を備えている場合がある。より具体的には、第1のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの両方の状態の間の遷移とを有している第1の状態図を備えている。同様に、第2のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの両方の状態の間の遷移とを有している第2の状態図を備えている。状態図は、例えばマルコフモデル、ペトリネットなどで実施されている場合がある。一般に、第1の状態図は、第1の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングするように動作している。同様に、第2の状態図は、第2の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングするように動作している。このパラメータ依存性は、例えば、2つの状態間の遷移または或る特定の状態で生成された出力が対応しているセットのパラメータによって基本的に決まるということを意味している。
【0047】
最適化された第1および第2のセットのパラメータを決定するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のアブストラクション・モデルおよび第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137から、最適化のために使用されるアブストラクション・モデルを選択するように動作する場合がある。最適化のために使用される第1および第2のアブストラクション・モデルは、固定されることがあり、これらのアブストラクション・モデルのエミュレーションは、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115によって実行されるようになっている場合がある。
【0048】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータを受け取り、第1のセットのパラメータを第1のアブストラクション・モデルに入力し、第2のセットのパラメータを第2のアブストラクション・モデルに入力するとともに、チャネル・プロパティと、最適化の目標と、第1および第2のセットのパラメータによって決まる第1および第2の通信層の現在の状態とに従って、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルとを同時にエミュレートすることによって、最適化の目標を達成するために、第1の最適化されたセットのパラメータと第2の最適化されたセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0049】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータを使用して最適化の目標が達成できないときに、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータが決定されるべきことを合図するために、チャネル・プロパティに従って第1のセットのパラメータを使用する第1のアブストラクション・モデルを解析するとともに第2のセットのパラメータを使用する第2のアブストラクション・モデルを解析するためのアナライザを更に備えている。
【0050】
さらに、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、最適化の目標を達成するために、どの通信層が最適化されなければならないかを決定するように動作する。
【0051】
最適化されたセットのパラメータを対応する通信層に提供するため、図1に示した本発明の装置は、最適化された第1のセットのパラメータを第1の通信層に提供し、最適化された第2のセットのパラメータを第2の通信層に提供するための手段129を備えている。好ましくは、最適化された第1のセットおよび最適化された第2のセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層および第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている場合がある。
【0052】
既に言及したように、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、チャネル・プロパティを考慮に入れている。第2の通信層は、通信チャネルを通じての情報の伝送を管理する働きをするプロトコル層となっている場合がある。また例えば、第2の通信層103は、更に通信チャネルのプロパティを取り出す働きをする物理層を備えているが、これは従来の通信システムで一般的に使用されている技術である。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、通信チャネルのプロパティを受け取るために第2の通信層103に接続するようになっている。好ましくは、通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、物理層とインタフェースで接続するためのプロトコル層インタフェースを備えている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135によって、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115に提供されるチャネル・プロパティは、ビット誤り率または/および該ビット誤り率を伴うチャネル・データレートまたは/および伝送遅延または/および該ビット誤り率を伴う伝送パワーまたは/およびチャネル・コヒーレンス時間または/およびチャネル・コヒーレント帯域幅となっている場合がある。
【0053】
既に言及したように、最適化の目標は、伝送クオリティの最適化を含んでいる場合がある。この場合、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のアブストラクション・モデルを使用している第1の通信層の振る舞いおよび第2のアブストラクション・モデルを使用している第2の通信層の振る舞いをエミュレートすることによって、最適化された第1のセットのパラメータおよび最適化された第2のセットのパラメータを決定するように動作しているが、このときこれらのアブストラクション・モデルのエミュレーションが、各々の通信層の現在のステージから開始して始められることができるように、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータは、初期パラメータとなっている。
【0054】
例えば、第1の通信層は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を提供するために、伝送される情報を符号化するようになっている。第1の通信層は、例えば、従来技術によるプロトコル・スタックとの関連で論じたアプリケーション層である場合がある。歪みは、伝送された情報と受信された情報との間の差異を記述するようになっている。(既知の)レート歪み理論によれば、伝送される情報は、その情報が受信機で再現できるように、一定の歪みまたは一定の歪みプロファイルを伴う最小の情報レートで伝送することが可能なようになっている場合がある。
【0055】
例えば、第1の通信層は、情報信号を提供するために情報を符号化するようになっているが、そこではデータ圧縮が実行されるように動作している。一方、第2の通信層は、通信チャネルを通じて伝送するための伝送信号を取得するためにその情報信号を符号化するように動作している。例えば、第2の通信層は、既に述べたようにデータリンク層と物理層とを備えている。好ましくは、伝送信号は、情報レートをサポートする例えば10-6といった一定のビット誤り率を伴うデータレートを有している。この場合、最適化の目標は、歪みプロファイルを超えないように、最小の達成可能な情報レートが実現されるように情報を符号化することによって、かつ、受信機側で情報が再現できるように、一定のビット誤り率を超えないようなデータレートを有する伝送信号を取得するために情報信号を符号化することによって、伝送クオリティの最適化を図ることにある。最適化の目標を達成するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を取得して情報を符号化するために使用される最適化された第1のセットのパラメータと、情報レートをサポートするデータレートを有している伝送信号を取得して情報信号を符号化するために使用される最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0056】
既に言及したように、本発明のコンセプトは、マルチユーザ伝送スキームの場合のプロトコル層の最適化にも適用されることがある。この場合において、マルチユーザ・シナリオによれば、情報は、第1のユーザに関連している第1の情報と第2のユーザに関連している第2の情報とを含んでいる。最適化の目標は、例えば、第1の情報、すなわち第1のユーザにとっての、更に第2の情報、すなわち第2のユーザにとっての、最適化された伝送クオリティを実現することである。この場合、第1の通信層は、第1のユーザに関連している第1の情報信号と第2のユーザに関連している第2の情報信号とを取得するために、第1の情報を符号化するように動作している。一方、第2の通信層は、通信チャネルを通じて伝送される複合信号を取得するために、第1の情報信号および第2の情報信号を符号化するように動作している。最適化の目標を達成するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の情報および第2の情報を符号化するために、第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、第1の情報信号と第2の情報信号を符号化するために第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを、第1の情報および第2の情報の伝送クオリティを最適化するために同時に決定するように動作する。
【0057】
例えば、第2の通信層は、最適化された第2のセットのパラメータを使用して第1の情報信号および第2の情報信号をスケジュールするように動作している。本文中において、スケジューリングは符号化の一部の形態である。こうして、第1の情報信号は第1の時間フレーム内に伝送され、第2の情報信号は第2の時間フレーム内に伝送されるが、第1および第2の時間フレームは、例えば、複合信号を伝送するのに必要とされる時間フレームによって決まるように動作している。好ましくは、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の歪みを伴う第1の情報レートを有している第1の情報信号を取得し、かつ第2の歪みを伴う第2の情報レートを有している第2の情報信号を取得するために、最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する。それと同時に、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の情報レートおよび第2の情報レートをサポートするようなデータレートを有している複合信号を取得するために第2のセットのパラメータを決定するように動作する。言い換えると、第1の通信層は、伝送される情報を処理するようになっており、第2の通信層は、ユーザ・スケジューリングするように動作している。
【0058】
本発明によれば、例えばメディアデータ・スケジューリングといった情報スケジューリングもまた、プロトコル・スタックの動作モードを最適化すると同時に実行することができる。この場合、第1のユーザに関連している第1の情報は、第1の副情報と第2の副情報とを含んでいる。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、第1の情報信号を取得するために第1の副情報および第2の副情報を選択的に符号化するための第1の通信層によって使用される第1の最適化されたセットのパラメータを決定するように動作する。例えば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の副情報および第2の副情報が第1の情報信号の異なる位置に配置されるように、第1の情報信号内において第1の副情報および第2の副情報をスケジュールするため、最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する。言い換えると、第1の副情報および第2の副情報が伝送フレーム内の異なる時間的瞬間に伝送されるようになっている。
【0059】
既に言及したように、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の通信層および第2の通信層の現在のステータスに基づいて実行される場合がある。本発明の更なる実施形態によれば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、現在のステータス情報を提供するために、第1のセットの係数、すなわち現在使用中の係数で決まる第1の通信層の現在のステータスと、第2のセットの係数、すなわち現在使用中の係数で決まる第2の通信層の現在のステータスとをモニタするようになっている。ステータス情報は、例えば、最適化の目標が第1および第2のセットのパラメータを利用することでは達成不可能あったため、最適化された第1および/または第2のセットのパラメータが決定されなければならないことを示す場合がある。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、どのセットのパラメータが最適化され置き換えられなければならないかの判定を行うように動作する。
【0060】
既に言及したように、本発明のコンセプトは、情報スケジューリングおよびユーザ・スケジューリングによるプロトコル・スタックの最適化にも適用される場合がある。例えば、伝送される情報は、第1のユーザに関連している第1の情報と、第1のユーザに関連している第2の情報と、第2のユーザに関連している第3の情報と、第2のユーザに関連している第4の情報とを含んでいる。第1の通信層は、第1のユーザに関連している第1の情報信号を取得するために第1の情報および第2の情報をスケジュールするように動作する。
【0061】
加えて、第1の通信層は、第2のユーザに関連している第2の情報信号を取得するために第3の情報および第4の情報をスケジュールするように動作している。第2の通信層は、伝送するためのスケジュールされたマルチユーザ・ストリームを取得するために、第1の情報信号および第2の情報信号をスケジュールするように動作している。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、例えば各ユーザの伝送クオリティの最適化が実現されるように、第1の情報信号および最適化された第2の情報信号を提供するために第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、スケジュールされたマルチユーザ信号を提供するために第2の通信層によって使用される第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0062】
各々の通信層に各々の最適化されたセットのパラメータを提供するため、本発明の装置は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータとを第1の通信層101と第2の通信層103とにそれぞれ提供するための手段129を備えている。最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層および第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている。例えば、第2の通信層は、物理層を備えている。この場合、最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、対応している物理層インタフェースを介して、物理層とインタフェースで接続するようになっている。通常、物理層は、変調、例えば振幅変調の機能を担っている。このため、第2のセットのパラメータまたは最適化された第2のセットのパラメータは、使用される変調スキームを決める1つのサブセットの変調パラメータを含んでいることがある。本発明によれば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、物理層の動作モードを、例えば、使用される1サブセットの変調パラメータを決定することによって、制御するようになっている。
【0063】
また、第2の通信層は、使用される前方誤り符号化スキームを決める1サブセットの符号化パラメータを使用して前方誤り符号化を実行するように動作しているデータリンク層を含んでいる場合がある。この場合、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、最適化の目標を達成するために物理層によって使用される1つのサブセットの符号化パラメータを決定するように動作する。
【0064】
好ましくは、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置は、伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための通信装置内に組み込まれている。伝送プロトコルは、伝送される情報を処理するための複数のプロトコル層を備えており、伝送される情報は、例えばCDなどの情報源から提供されるようになっている。複数のプロトコル層を制御するため、本発明の通信装置は、上記説明に従って複数の通信層の動作を制御する装置を備えている。加えて、プロトコル層に従ってその情報を処理するため、本発明の通信装置は、その情報を処理するためのプロセッサを更に備えている。このプロセッサはネットワーク・プロセッサである場合がある。
【0065】
図2に複数の通信層の動作を制御する装置の更なる実施形態を示す。
【0066】
図2の装置は、入力203と、入力205と、入力207と、入力209および出力211を有しているクロスレイヤ・オプティマイザ201とを備えている。第1のインタフェース213は、プロトコル・スタック1005のアプリケーション層とクロスレイヤ・オプティマイザの入力203との間に備えられている。第1のインタフェース213は、ブロック215の入力に対応している出力を有している。ブロック215は、アプリケーション指向オプティマイザであるクロスレイヤ・オプティマイザの入力205に対応している出力を有している。
【0067】
さらに、第2のインタフェース217は、プロトコル層1005のリンク層とクロスレイヤ・オプティマイザ201の入力209との間に備えられている。第2のインタフェース217は、第2のブロック219の入力に対応している出力を更に備えており、該第2のブロック219は、クロスレイヤ・オプティマイザの入力207に対応している出力を有している。
【0068】
クロスレイヤ・オプティマイザ201の出力211は、アプリケーション層に接続している第1の出力とリンク層に接続している第2の出力とを有している決定素子222接続されている。
【0069】
第1のインタフェース213は、マルチメディア・スケジューリング、例えばソースレート・スケジューリングを実行するため、アプリケーション層のパラメータ、すなわち第1のセットのパラメータを取り出すようになっている。インタフェース213によって取り出されたパラメータは、例えば、ソース歪みプロファイルと遅延制約条件とを含んでいる第1のブロック215に提供されている。
【0070】
一方、第2のインタフェース217は、マルチユーザ・スケジューリング、例えば伝送レート・スケジューリングに関してリンク層からパラメータを取り出すようになっており、パラメータ・アブストラクトを第2のブロック219とクロスレイヤ・オプティマイザ201とに提供するようになっている。第2のブロック219は、マルチユーザ伝送データレート、チャネル・コヒーレンス時間またはパケット損失率(Pe)を含んでいる情報を提供するように動作している。クロスレイヤ・オプティマイザは、アブストラクション・モデルをエミュレートすることによって、最適化された1セットのパラメータを決定するように動作している。決定素子222は、最適化されたセットのパラメータを、対応する通信層に提供するように動作している。
【0071】
図2に示しているように、パラメータ・アブストラクトは、単なる一例に過ぎないが、最適化されたセットのパラメータを決定するために使用されるアブストラクション・モデルであるマルコフ・オン/オフ・モデルのパラメトリゼーションに基づいて実行されるように動作している。
【0072】
本発明の装置およびそれに対応する方法は、サービス・プラットフォームのレベルにあるオプティマイザ・コンポーネント(これは複数の通信層の動作を制御する装置に対応している)が、調整機能、モデリング機能および意思決定機能を実行するような方法で、無線環境でのリアルタイム(実時間)アプリケーションにおいてユーザが感受するようなクオリティの改善をもたらす。特に、オプティマイザ・コンポーネントは、以下のようなタスク、すなわち、選ばれたシステム層のステータス情報のモニタリング、ステータス情報を管理可能にする適切なアブストラクション・モデルの保持、アブストラクション・モデルの動的解析、これらのモデルに基づくパラメータの同時最適化、どのような新たなパラメータ設定(セッティング)がどのシステム層に必要かについて判断するような動的意思決定、各々の層でシステムを制御するためのパラメータのフィードバック、パラメータを全ての層に提供するあるいは全ての層で同時にそれらのパラメータを使用するために提供することが不可能な場合の初期状態へのロールバック、といったタスクを実行するようになっている。
【0073】
さらに、本発明の意思決定は、システムのステータスの不必要な揺らぎを回避するため、パラメータ修正の決定が現在の設定(セッティング)および履歴を考慮した上で実行されるということによって特徴付けられている。
【0074】
本発明のオプティマイザ・コンポーネントは、上述したように、調整タスクおよびモデリング・タスクを実行することによるクロスレイヤ最適化のための、異なるアルゴリズムを実現かつサポートすることが可能となっている。例えば、本発明のクロスレイヤ最適化は、無線ネットワーク・リソースの活用の改善を支援し、これにより従来技術のアプローチと比べて同一のシステムにおいて複数のユーザに対して、より同時的に対応することが可能となっている。同じ数のユーザの場合に対し、伝送クオリティは改善し得る。さらに、マルチユーザの間でより均等に配分されているユーザが感受するクオリティが実現可能である。さらに、本発明のアプローチは、同時に様々な伝送特性およびアプリケーション要件に動的に適応する可能性を提供している。まとめると、本発明のコンセプトは、システム・オペレータのコスト節約、より良いユーザ満足度およびサービス受容の可能性を与えている。
【0075】
再び図2に示している実施形態を参照して説明する。図中には、階層型通信システムのアプリケーション支援ミドルウェアに存在しているオプティマイザ・コンポーネントの可能な実装が示されているが、そこでは一例として、ビデオストリーミング・アプリケーションおよびリンク層伝送制御のクロスレイヤ・アダプテーションが実証されている。ここでは、アプリケーション層でのビデオデータ・スケジューリングおよびリンク層でのマルチユーザ・スケジューリングのクロスレイヤ最適化が示されている。目標は、無線リソースを効率的に使用している間にユーザによって感受されるエンド・ツー・エンド品質を最大化することにある。ビデオデータ・スケジューリングは、1ストリーミング・セッション内にどのデータ・セグメントがいつ送られなければならないかを決定するプロセスであり、一方、マルチユーザ・スケジューリングは、例えば、どのユーザが所与の時間、周波数またはコードでチャネルを使用することが許されるかを決定するようになっている。
【0076】
特に、図2に示している実施形態は、本発明のオプティマイザ・コンポーネントのタスクを明示しているが、そこではステータス情報は、選ばれたシステム層から、特にアプリケーション層から、そしてMAC層(MAC)および物理層(PHY)を備えているリンク層から収集されるようになっている。この実施形態では、マルティメデイア・スケジューリング、すなわち全体のクオリティに異なる影響力を持つ異なるタイプのメディアフレームの伝送順序を指定することによる、ソースデータ(情報)のスケジューリングに注意が払われている。加えて、本発明のアプローチは、ソースレートの選択も考慮するようになっている。無数の組み合わせが可能なため、影響力が大きな組み合わせを保持するとともにアブストラクション・モデルをエミュレートすることによって、1つの特定の組み合わせの影響力を迅速に解析するため、オプティマイザ・コンポーネントは、パラメータのアブストラクションを実施するようになっている。この実施形態では、組み合わせごとに、ソースレート歪みプロファイルの実装が保持されている。
【0077】
類似のアブストラクションがリンク層に対しても実行されている。ここでは一例として、可能な伝送時間スケジューリングの選ばれたケースが考慮されている。図3は、ユーザが3人のシステムを例に、7つのケースまで減らしたマルチユーザ・スケジューリング・システムの異なる伝送時間割り振りを示している。
【0078】
アブストラクション・モデルに基づいて、本発明に係るオプティマイザ・コンポーネントは、変化しているチャネル状態の結果を動的に解析するが、それは両方のモデルに基づくコスト関数による感受クオリティに対するリンク層アブストラクション・モデルの一部である。この解析の結果、同時に最適化された1セットのパラメータがもたらされるようになっている。
【0079】
最適化のポリシー(例えばコスト関数に記述されている)によれば、オプティマイザ・コンポーネントは、各々の層におけるシステム挙動を制御するため、どの新たなパラメータ設定(セッティング)がどのシステム層に必要かを決定するとともに、各々のパラメータをフィードバックしている。エラーが発生した場合、例えば、1つの層が制御不能になった場合、初期状態に戻すためにロールバック機構が開始されるようになっている。
【0080】
本発明は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版である受信信号を、受信プロトコルに従って処理するための通信装置を更に提供している。伝送信号は、上述の伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでいる場合があるが、ここで伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まるようになっている。例えば、第1のセットの伝送パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータは、上述した第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングしているアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定されるようになっている。一方、受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層と第2の受信プロトコル層とを備えており、第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決まり、第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決まるようになっている。
【0081】
本発明の装置は、第1のセットの伝送パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータを知らせるパラメータ情報を、例えば信号伝達によって遠隔の通信送信機から受信するための手段を備えている。さらに、本発明の装置は、第1のセットの伝送パラメータに対応している第1のセットの受信パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータに対応している第2のセットの受信パラメータを決定するための手段と、第1のセットの受信パラメータを第1の通信層に提供し、第2のセットの受信パラメータを第2の通信層に提供するための手段とを更に備えている。
【0082】
本発明のアプローチは、一般に複数のユーザの場合および/または各ユーザに複数の情報が付随する場合に使用できる。
【0083】
以下の記述において、無線マルチユーザ・マルチメディア通信のアプリケーション層および無線リンク層のクロスレイヤ最適化を説明する。我々の目的は、無線リソースを効率的に活用するのみならず、無線メディア・アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある。我々の目標を成し遂げるための新規のアーキテクチャが提供かつ考案されている。このアーキテクチャは、パラメータ・アブストラクションのプロセスと、クロスレイヤ・オプティマイザと、決定情報配信のプロセスとから構成されている。加えて、本発明の同時最適化の可能性を明らかにするために、サンプル数値結果が提供されている。移動体通信におけるクロスレイヤ設計は、マルチメディアサービスのプロビジョニング(例えば音声、動画、オーディオ、データ)のコンテクストにおいて最近かなり注目されている。クロスレイヤ設計のコンセプトは、プロトコル・スタックにわたる層間コンセプトを導入し、2以上の層で通信を同時に最適化することを可能にしている。このコンセプトは、全ての通信ネットワークで採用できるが、無線環境に固有の問題(すなわち無線チャネルの時間的に変動する性質とフェージング性)があるため、無線環境では特に重要である。この無線性とユーザ移動性から、ネットワーク性能と接続性がランダムに変動する。加えて、マルチメディア・サポートの要求の厳しいQoS要件(例えばデータレート、待ち時間および誤り率)は、システム設計において移動体マルチメディア通信をより一層チャレンジングなものとしている。このチャレンジは、システム設計を基本的に独立した層に分割する従来の階層型設計アプローチで行うには困難であろう。エンド・ツー・エンドQoSを提供するため、パラメータ・アダプテーションが全てのOSI層で取り組まれなければならない。そこで、異なる層の間で情報が交換されなければならないクロスレイヤ設計という本発明のコンセプトが提供される。以下において、無線マルチメディア通信に対してアプリケーション層と無線リンク層の同時最適化を提案することにより、クロスレイヤ設計コンセプトの層間結合を活用する。無線リンク層は、プロトコル・スタックにおける物理層とデータリンク層と見なされている。我々の目的は、無線リソースを有効利用するのみならず、無線マルチメディア通信アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある。この目的を成し遂げるため、クロスレイヤ最適化コンセプトを実現するための可能なソリューションを提供している、同時層最適化のためのアーキテクチャが開発されている。このアーキテクチャは、パラメータ・アブストラクションのプロセスと、クロスレイヤ・オプティマイザと、決定情報配信のプロセスとから構成されている。このアーキテクチャのあらゆる部分に具体的な形が与えられている。加えて、本発明の同時最適化の可能性を明らかにするためにサンプル数値結果が提供されている。これまでの研究は、主に単一の層における性能を最適化すること、例えばトランスポート層、ネットワーク層、データリンク層および物理層の特性へのアプリケーションのアダプテーション(ボトムアップ型アプローチ)、アプリケーション要件への物理層、データリンク層またはネットワーク層のアダプテーション(トップダウン型アプローチ)、に終始していた。またクロスレイヤ設計に関する進行中のほとんどの研究は、物理層とデータリンク(またはMAC)層の同時最適化に集中している。アドホックな無線ネットワークに対するクロスレイヤ最適化において、ネットワーク層でのルーティングの最適化を含んでいるものもあれば、物理層における伝送パワーおよび前方誤り訂正符号化の同時最適化において、ソースレートを含んでいるものもある。
【0084】
本発明のアプローチは、我々の目標が好ましくはマルチメディア・アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある点であり、これまでのアプローチとは異なっている。このため、我々は、プロトコル・スタック内の3層、すなわちアプリケーション層(第7層)、データリンク層(第2層)、および物理層(第1層)、の同時最適化について考察している。我々は、アプリケーション層を同時最適化の対象に含める。というのも、ユーザによって観察されているエンド・ツー・エンド品質は、アプリケーションに直接依存し、アプリケーション層は、知覚品質に対するメディアデータの複合に成功した各部分の影響力についての直接的な情報を有しているからである。我々は物理層とデータリンク層も考慮に含める。というのも、移動体無線通信特有の問題は、これら2層が問題の対応をしなければならない無線チャネルの性質に起因するからである。我々の目標を達成するための新規のアーキテクチャが提供かつ考案されています。この文書の構造は以下のようなものである。
【0085】
マルチメディアサービスの一応用例としてストリーミングビデオを想定しており、基地局に置かれたビデオストリーミング・サーバと移動端末内に置かれたストリーミング・クライアントとを考慮に入れる。図7に示しているように、K個のストリーミング・クライアントまたはユーザは、同じ無線インタフェースおよびネットワーク・リソースを共有しているが、異なるビデオコンテンツをリクエストしていると想定されている。我々のシナリオでは、ビデオストリーミング・サーバは基地局に直に置かれることから、無線接続に必要なプロトコル・スタックのみが考慮されなければならないことに注意されたい。それゆえ、プロトコル・スタックのトランスポート層およびネットワーク層は、最適化の問題から除外することができる。したがって、アプリケーション層と、物理(PHY)層およびデータリンク層を両方組み込んでいる無線リンク層との間の相互作用に焦点を合わせればよい。基地局では、図8に示しているアーキテクチャが、サービス最適化のエンド・ツー・エンド品質を提供するのに適している。図8に同時最適化に関係しているタスクおよび情報フローを示している。必要な状態情報は、クロスレイヤ・オプティマイザのためのパラメータ・アブストラクションのプロセスを通じて、アプリケーション層と無線リンク層から最初に集められる。パラメータ・アブストラクションのプロセスは、層固有のパラメータの、クロスレイヤ・オプティマイザのための包括的なパラメータ、いわゆるクロスレイヤ・パラメータへの変換を結果としてもたらす。次いで、クロスレイヤ・オプティマイザによって最適化が特定の目的関数に関して実行されるようになっている。与えられたセットの選択候補のクロスレイヤ・パラメータ・タプルから、目的関数を最適化するためのタプルが選ばれるようになっている。特定のクロスレイヤ・パラメータ・タプルに関して決定がなされた後、オプティマイザは、その決定情報を対応する層に返送するように動作している。選択候補のクロスレイヤ・パラメータ・タプルのセットは一般的に無限集合であり得ることに注意されたい。このため決定を迅速に行うために有限集合の適切なタプルを事前に選択しておくことが必要である。こうして、最適なクロスレイヤ・パラメータ・タプルに関する最終決定は、局所最適化のみを結果としてもたらす場合がある。
【0086】
同時最適化を実行するため、状態情報または1セットの主要パラメータが、選ばれた層から抽出され、クロスレイヤ・オプティマイザへ提供されなければならない。クロスレイヤ・オプティマイザへ提供されることは必要なことであり、というのは層固有のパラメータは、他の層およびオプティマイザにおいて理解されないかまたは利用が制限されている場合があるためである。
【0087】
無線ネットワークでは、物理層およびデータリンク層は、特定のサービスの提供の際の無線チャネルの動的変動に対して専用に設計されている。これは動的変動がずっと小さい有線ネットワークとは対照的である。物理層は、伝送パワー(伝送パワー制御を通じて)、チャネル推定、同期、信号形成、変調および信号検出(信号処理を通じて)を含んでいる事項を取扱い、一方、データリンク層は、無線リソース割り当て(マルチユーザ・スケジューリングまたは行列作り)と誤り制御(チャネル符号化、通常は前方誤り訂正符号化(FEC)と自動再送要求(ARQ)の組み合わせによる)を担っている。これら2つの層は、共に無線の性質の固有の特性に密接に関係しているので、それらを一緒に検討することが有用である。以下において、これらの組み合わせ(物理層+データリンク層)を無線リンク層と呼ぶことにする。無線リンク層には多くの事項が存在し、これらの事項は互いに関連し合っているので、パラメータ・アブストラクションが必要である。より具体的には、無線リンク層固有のパラメータrij(例えば、変調文字、符号レート、放送時間、伝送パワー、コヒーレンス時間)のタプルri=(ri1,ri2,...)の集合(セット)R={r1,r2,...}を定義する。これらの無線リンク固有のパラメータは、可変的である場合があるので、集合Rはそれらの値の全ての可能な組み合わせを含み、各タプルriは1つの可能な組み合わせを表している。
【0088】
パラメータ・アブストラクションのプロセスを定式化するため、抽出されたパラメータr~ijのタプルr~i=(r~i1,r~i2,...)の集合R~={r~1,r~2,...}を定義する。集合Rおよび集合R~の関係は、ドメインRおよびコドメインR~の間の写像を表す次の関係式により設定されている。
G⊆R×R~
ここで記号×は直積を表す。Gは、ドメインRおよびコドメインR~の間の写像を定義している(直積空間R×R~の)部分集合(サブセット)である。この写像プロセスを無線リンク層パラメータ・アブストラクションと呼ぶこととする。ユーザが1人のシナリオでは、例えば、4つの主要パラメータを抽出することできる。それらは、伝送データレートd、伝送パケット誤り率e、データパケットサイズs、およびチャネル・コヒーレンス時間tである。これは、抽出されたパラメータのタプルr~i=(di,ei,si,ti)をもたらす。ユーザがK人のシナリオでは、各ユーザのパラメータ・アブストラクションを拡張することができる。パラメータ・タプルr~iは4K個のパラメータr~i=(di(1),ei(1),si(1),ti(1),...,di(K),ei(K),si(K),ti(K))を含んでいる。一群の4個のパラメータは1人のユーザに属している。
【0089】
伝送データレートdは、変調スキーム、チャネル符号化、およびマルチユーザ・スケジューリングによって左右される。伝送パケット誤り率eは、伝送パワー、チャネル推定、信号検出、変調スキーム、チャネル符号化、現在のユーザの位置などによって左右される。ユーザのチャネル・コヒーレンス時間tは、ユーザ速度とその周囲の環境に関係しているが、データパケットサイズsは、通常、無線システムの規格によって規定されている。これらの相互関係により、関係Gが規定される。代わりに、伝送パケット誤り率eおよびチャネル・コヒーレンス時間tを2状態のギルバート−エリオット・モデル(two−state Gilbert−Elliott model)の2つのパラメータ(これらは1つの状態から別の状態への遷移確率(pおよびq)である)へ変換することが可能である。変換は次式で与えられる。
【数1】
および
【数2】
ここでpは良い状態から悪い状態への遷移確率であり、qは悪い状態から良い状態への遷移確率である。
【0090】
こうして、抽出されたパラメータのタプルはr~i=(di(1),pi(1),si(1),qi(1),...,di(K),pi(K),si(K),qi(K))となる。この変換の1つの利点は、結果として現れるr~iがプロトコル・スタックにおける高位層にとってより包括的であるという点にある。
【0091】
アプリケーション層は、メディアデータが伝送のため圧縮され、パケット化され、スケジュールされる層である。クロスレイヤ最適化のために抽出される主要パラメータは、圧縮されたソースデータの特性に関係している。圧縮されたソースデータの特性は、アプリケーションまたはサービスに依存していることがあるので、圧縮されたソースデータの特性は、これらの主要なパラメータがアプリケーション又はサービスの種類によって決まることを意味している。形式的に記述するため、アプリケーション層固有のパラメータa~ijのタプルa~i=(a~i1,a~i2,...)の集合(セット)A={a1,a2,...}を定義する。これらのアプリケーション層固有のパラメータは、可変的な場合があるので、集合はこれらの値の全ての組み合わせを含み、各タプルは1つの可能な組み合わせを表している。ここで、アブストラクトされたパラメータa~ijのタプルa~i=(a~i1,a~i2,...)の集合A~={a~1,a~2,...}を定義する。集合Aと集合A~の関係はドメインAおよびコドメインA~の間の写像を表す次の関係式によって設定されている。
H⊆A×A~
ここで、この写像プロセスをアプリケーション層パラメータ・アブストラクションと呼ぶ。以下において、我々はストリーミングビデオ・サービスを想定している。このサービスのアブストラクトされたパラメータは、ソースデータレートと、毎秒フレーム数(またはピクチャ数)と、各フレーム(またはピクチャ)のサイズ(バイト単位)と、最大遅延時間とを含んでいる。オプティマイザにとって他の重要な情報は、歪みレート関数(符号化歪み)と特定の損失フレーム(またはピクチャ)の歪みプロファイルである(図9参照)。図9には、3つの異なるビデオ(動画)に対する損失フレームの歪みプロファイルと符号化歪みの一例を示している。ここでは各ビデオは、15フレームのGOPから構成され、それは毎秒30フレームのフレームレートにおいて0.5秒に相当する。ビデオシーケンスは、平均データレート100kbpsで符号化されている。各GOPは、独立して復号可能なイントラフレームで始まるようになっている。続く14フレームは、インターフレームであり、それらは同一のGOPの全ての前のフレームが誤りなく復号された場合にのみ、成功裏に復号することができる。歪みは、表示されているビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間で測られる平均二乗再現誤差(MSE)で定量化される。図9の指数は、特定のフレームの損失を示している。誤り補正方針の一部として、GOPの全ての後続フレームが復号可能ではなく、そのときは復号されていないフレームの代わりに直前に正しく復号されたフレームが表示されることが想定される。また、指数16は、全てのフレームが正しく受信されたときにMSEを与えることに注意されたい。また、MSEは、量子化誤りによる符号化歪みと呼んでいる。
【0092】
アプリケーション層および無線リンク層の両方から抽出されたパラメータの集合R~およびA~は、クロスレイヤ・オプティマイザへの入力を形成している。この2つの入力の集合からの抽出されたパラメータの、タプルの任意の組み合わせが有効であるので、以下のようなクロスレイヤ・パラメータの集合を定義することは都合がよい。
X~=R~×A~
これは2つの入力の集合をオプティマイザの1つの入力の集合に組み合わせるものである。集合X~={x~1,x~2,...}はタプルx~n=(r~i,a~j)および|X~|=|R~|・|A~|から構成されている。
【0093】
このように導入された表現形式を用いて、クロスレイヤ・オプティマイザΩの作用は以下のように記述される。
Ω:X~→X∧⊂X~
オプティマイザは、入力の集合X~からオプティマイザの出力である真の空でない部分集合X∧を選択するようになっている。
【0094】
以下において、我々は|X∧|=1、すなわちオプティマイザの出力は単一のタプルでありX∧=x~opt∈X~を想定している。決定すなわちクロスレイヤ・オプティマイザの出力x~optは特定の目的関数
Γ:X~→R
に関して作られる。ここでRは実数集合である。このとき、オプティマイザの出力は以下のように表すことができる。
【数3】
特定の目的関数Γの選択はシステム設計の目標に依存しており、そしてオプティマイザの出力(または決定)は、種々の目的関数に対して異なっている。ストリーミングビデオの実施例では、単一ユーザのシナリオにおける1つの可能な目的関数は、表示されたビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間のMSEである。マルチユーザの状況では、MSEを別個に拡張することが可能である。例えば、目的関数は、全てのユーザのMSEの総和とすることが可能である。すなわち、このことは次式を意味する。
【数4】
ここでMSEk(x~)は、クロスレイヤ・パラメータ・タプルx~∈X~に対するユーザkのMSEである。この目的関数は、全てのユーザにわたる平均のパフォーマンスを最適化している。性能が最悪のユーザ性能を最適にする目的関数の他の共通の定義には、下記が含まれる。
【数5】
これは全てのユーザのピークSNR(信号対ノイズ比)の総和を最大化することに等しい。
【0095】
クロスレイヤ・オプティマイザの出力(または決定)x~opt=(r~opt,a~opt)が得られると、決定r~optおよびa~optは、無線リンク層およびアプリケーション層にそれぞれ返送されなければならない。この際、パラメータ・アブストラクトのプロセスは、逆に実行されなければならず、抽出されたパラメータr~optおよびa~optは、層固有のパラメータropt∈R、aopt∈Aに逆変換される。この逆変換は次式で与えられる。
ropt∈{r|(r,r~opt)∈G}
および
aopt∈{a|(a,a~opt)∈H}
{r|(r,r~opt)∈G}または{a|(a,a~opt)∈H}が2つ以上の要素を含んでいる場合、特定の要素の選択は対応する層において、個別に対応する層で行うことができる。
【0096】
以下の記述において、我々は本発明の同時最適化のパフォーマンスを評価するためにサンプル・シミュレーション結果を提供している。この節全体を通して、我々は3人のユーザ(ユーザ1、ユーザ2,ユーザ3)がそれぞれ異なるビデオをリクエストする状況を想定している。ユーザ1、ユーザ2、およびユーザ3は、それぞれ自動車電話(CP)、現場監督(FM)、母と娘(MD)のビデオをリクエストする。パフォーマンスの尺度として信号対雑音比(PSNR)を選択する。PSNRはPSNR=10log10(2552/MSE)で定義される。PSNRが大きくなるほど、クライアントまたはユーザにおけるオリジナルのビデオシーケンスと表示されたビデオシーケンスとの間で計算されるMSEは小さくなる。それゆえ、PSNRが大きくなるほどパフォーマンスが良くなる。一例として、最悪ケースのユーザのパフォーマンスを最大化する目的関数を使用している。
【0097】
クロスレイヤ・オプティマイザは、ユーザの間でMSEの最大値を最小化する(あるいは同じことだがPSNRの最小値を最大化する)パラメータ・タプルを選択するようになっている。シミュレーションにおいて、無線リンク層におけるデータパケットサイズは54バイトに等しいと想定している。このサイズは、IEEE802.11a規格またはHiperLAN2規格の指定パケットサイズと同じである。チャネル・コヒーレンス時間は、3人のユーザ全てに対して50msであると想定している。これは(搬送波周波数5GHzに対して)ほぼ歩行者速度に相当する。伝送データレートは、変調スキーム、チャネル符号化、およびマルチユーザ・スケジューリングに左右されるので、2つの異なる変調(BPSKおよびQPSK)が想定されている。さらに、図6aに示しているように、時分割多重ベースのマルチユーザ・スケジューリングにおいて7つのケースの時間割り振りが存在すると想定されている。ユーザの伝送データレートは、BPSKが使用されているときには100kbpsに等しいと想定され、全伝送時間の2/9がそれに割り当てられる。一方、QPSKが使用され、全伝送時間の4/9が割り当てられる場合、ユーザは400kbpsと同程度の大きさの伝送データ伝送速度を有することができる。他方、伝送誤り率は、伝送データレート、平均SNRおよびチャネル・コードの誤り訂正能力に依存している。通常、チャネル・コードのパフォーマンスは、所与の受信SNRに対する(チャネル復号後の)残差誤り率に関して評価される。シミュレーションでは、符号レート1/2の畳み込み符号と54バイトのデータパケットサイズを想定している。図10に残差パケット誤り率をSNRの関数として示している。しかしながら、無線リンクでは、受信SNRは一定ではないが、ユーザの移動によって引き起こされる高速フェージングのせいで平均値の周りで不安定となる。こうして、受信SNRは、物理チャネルの伝搬特性によって決まる(例えば、レイリー分布、ライス分布といった)特定の確率分布のランダム変数としてモデリングできる。フェージング無線リンクにおける残差パケット誤り率は、このパケット誤り率を(例えば図10から)フェージングの統計値で平均することによって計算されている。レイリー・フェージングを想定すると、結果として生じる平均パケット誤り率は、平均SNRの関数として図11に与えられている。この結果として生じる平均パケット誤り率は、シミュレーションではパラメータeとして使用されている。無線リンクで一般的に観察されているユーザ位置に依存する経路損失およびシャドウイングは、各ユーザに一様に1から100(0dBから20dB)の範囲内で、長期平均のSNRをランダムかつ独立に選ぶことで考慮に入れられている。アプリケーション層では、ビデオはGOP当たり15フレーム(0.5秒当たり)のH.264ビデオ圧縮規格を使用して符号化されている。ソースレートの2つの異なる値(100kbpsおよび200kbps)についても考慮に入れられている。これは、ビデオが2つの異なる目標レートで事前に符号化されており、両方のバージョンがストリーミングサーバに保存されていることを意味している。GOPの始まりに1つのソースストリームからその他のソースストリームに切り替えることができる。各GOPにおいて、最初のフレームはIフレームであり、後続する14個のフレームはPフレームである。3つの要求されたビデオに対して、特定の損失フレームの測定された歪みプロファイル及び符号化歪みを使用している。図9は、ソース転送速度が100kbpsのGOPに対するMSEによる歪みプロファイルの一例を示している。MSEは、表示されたビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間で測られ、GOP全体で平均される。図9において、指数は特定のフレームの損失を示している。GOPの全ての後続フレームは、復号不能になり、直前の正確に復号されたフレームが、復号されていないフレームの代わりに表示されると想定されている。指数16は、全てのフレームが正しく受信されたときのMSE(これは符号化歪みである)を与えることに注意されたい。また、Pフレームの復号の成功は同一のGOPの全ての前のフレームの誤りのない受信に依存しているので、GOPの第1のフレームの損失は最大の歪みをもたらすのに対してGOPの最後のフレームの損失はほとんど歪みが発生しないということにも注意されたい。さらに、各ビデオフレーム(またはピクチャ)は、最大サイズ54バイトでパケット化され、各パケットは、1つのフレームからのデータを含んでいるのみである。すなわち、各フレームは、整数個のパケットにパケット化される。各フレームのサイズは、符号化段階で決定されている。これらの値は、ビットストリームおよび歪みプロファイルと一緒に保存されるようになっている。図6bに、ソースレート100kbpsにおける3つの測定対象ビデオにおけるGOPのサイズ(パケット単位)を示している。図表中、IおよびPn(n=1,2,...14)は、Iフレームおよびn番目のPフレームをそれぞれ表している。Iフレームのサイズは、Pフレームのサイズよりも遥かに大きく、Pフレームのサイズは、フレームごとに変わることがわかる。このことはビデオのコンテンツに関係している。ARQのない動作モード(フォワード・モード)およびARQのある動作モード(ARQモード)が両方共詳細に調べられている。あらゆるGOPを単位と見なし、各GOPは0.5秒の時間内に伝送されなければならないと想定している。フォワード・モードでは、クライアントからの確認通知が一切利用できず、伝送データレートがソースデータレートよりも大きいときには特定のクライアントに対するあらゆるGOPのビデオフレームが繰り返し伝送されることを想定している。例えば、伝送データレートがソースデータレートの2倍である場合には、あらゆるGOPは2回伝送されるようになっている。伝送データレートがソースデータレートの1.5倍である場合、GOPは一回だけ伝送された後、そのGOPの0.5秒の間隔が終わるまで、第1のIフレーム、第1のPフレーム、第2のPフレームなどが再送されるようになっている。他方、ARQモードでは、伝送されたパケットのクライアントから即時確認通知が利用可能であり、特定のクライアントのあらゆるGOPのデータパケットは、GOPのデータパケットが時間順に受信されるような形で再送されることを想定している。すなわち、新たなパケットを伝送する前に、GOPのその前のパケットが正しく受信されることが保証されている。図12から14に3つのシナリオ(シナリオ1、2および3)のシミュレーション結果を示している。シナリオ1において、無線リンク層ではBPSK変調のみが使用され、アプリケーション層では100kbpsのソースレートのみが利用可能なように制限している。それゆえ、このシナリオにおいて唯一の、一定の抽出されたパラメータ・タプル(3人のユーザ全てに対して100kbps)がアプリケーション層によって提供される一方、無線リンク層は7個の抽出されたパラメータ・タプルを提供し、これにより図6aに示している時間割り振りの7つケースが結果としてもたらされるようになっている。クロスレイヤ・オプティマイザは、目的関数が最適化されるように入力パラメータ・タプルの7つの組み合わせから1つを選択するようになっている。MSEは、既に言及した2つの要素、すなわち高速フェージング並びにユーザの位置に依存している経路損失およびシャドウイング、によって制御されているランダム変数である。一般に、高速フェージングは、経路損失およびシャドウイングよりもずっと小さい時間スケールで起こっている。本明細書では、特定のユーザの位置に対して、又は言い換えると特定の長期のSNRに対して高速フェージングに関するMSEの予想値を取ることによって、高速フェージングに対して平均されたMSEを評価している。この値に基づき、クロスレイヤ・オプティマイザはその決定を行うようになっている。ユーザの位置(ポジション)のアンサンブルに関してその統計的特性も調べている。それゆえ、この平均MSEの累積分布関数(CDF)が両方のモード(フォワード・モードおよびARQモード)のパフォーマンスを示すために選ばれている。本発明の同時最適化を含んでいるシステム(w/JO)におけるパフォーマンスが最悪のユーザは、同時最適化を含んでいないシステム(w/oJO)におけるパフォーマンスが最悪のユーザと比較される。同時最適化を含んでいないシステムは、同じ量の伝送時間を全てのユーザに割り当て(すなわち図6aにおけるケース1)、BPSK変調を使用し、その間、ソースデータレートは100kbpsに固定されることが想定されている。図12から、パフォーマンスが最悪のユーザのPSNRが同時最適化を含んでいるシステム(w/JO)において大きく改善することがわかる。例えば、パフォーマンスが最悪のユーザのPSNRがフォワード・モードのシステムw/JOにおいて30dBを超えるチャンスは約1−40%=60%であり、これはシステムw/oJOと比べると2dB改善している。図13および図14において、シナリオ2およびシナリオ3にも同じような改善傾向が見られる。シナリオ2では、シナリオ1と同じアブストラクトされたパラメータのタプルがアプリケーション層で想定されているが、無線リンク層は、BPSKでの時間割り振りの7つのケースおよびQPSKでの時間割り振りの別の7つのケースの結果生じる14個(タプル個数)の抽出されたパラメータ・タプルを提供している。また図12に示しているように同時最適化のない同じシステム(w/oJO)も比較目的のため提供されている。シナリオ3では、3人のユーザの各々に対して2つの異なるソースレート100kbpsおよび200kbpsがアプリケーション層によって提供される(23=8個のパラメータ・タプルが結果として生じる)ことが想定されている。また、シナリオ2と同じアブストラクトされたパラメータ・タプルが無線リンク層によって提供されている。パフォーマンスは、より多くの抽出されたパラメータ・タプルが与えられたときに、より多くの自由度が得られることから改善するようになっている。このことは図9において、より明確に観察され、そこでは調査対象の3つのシナリオのパフォーマンスの改善が見られている。ここで、PSNRはシステムw/JOおよびシステムw/oJOにおけるパフォーマンスの最も悪いユーザのPSNRの差異として定義されている。図9の左側を詳しく観察すると、フォワード・モードではシナリオ2のパフォーマンス改善量がシナリオ1の改善量よりもずっと大きく、それに対し、シナリオ3のパフォーマンス改善量はシナリオ2のものよりもほんのわずかだけ大きいことがはっきりわかる。これは、無線リンク層によって与えられる(QPSKを使用することによる)より高い伝送データレートの選択がこのアプリケーションモードでは好ましく、オプティマイザは、それを高い頻度で選ぶことを示している。これとは対照的に、アプリケーション層によって与えられているより高いソースレート(200kbps)の選択は、このモードではあまり好ましくなく、オプティマイザは、それを滅多に選ぶことはないようになっている。他方、より高いソースレートのこの選択は、ARQモードでは好ましく、このことは図の右側のグラフからわかる。そこではシナリオ3のパフォーマンス改善量は、シナリオ2のものよりもかなり大きい。それゆえ、抽出されたパラメータ・タプルの適切なセットは、複雑さが少ない状態で最適化すると同時に大きなパフォーマンス改善を実現するのに重要である。また、個別の層ごとに有効な全ての自由度を特定し、クロスレイヤ設計において重要な自由度を考察することが重要であることを、実験は示している。
【0098】
本発明は、ビデオストリーミング・サービスを提供する無線システムにおいて、アプリケーション層および無線リンク層を同時に最適化するためのアーキテクチャを提案している。本アーキテクチャは、3つの主要コンセプト、すなわちパラメータ・アブストラクションと、クロスレイヤの最適化と、決定情報配信とに基づいている。予備的な研究から、本発明のアーキテクチャは、パフォーマンスを改善する可能な方法を提供しており、従って無線マルチメディア通信におけて将来の課題に対処する助けとなり得ることが明らかとなっている。アプリケーション層および無線リンク層の少数の自由度を考慮するときでさえ、同時最適化によってストリーミングビデオ利用におけるユーザが感受するクオリティの大きな改善を得るようになっている。
【0099】
本発明の方法の特定の実施要件に応じて、本発明の方法はハードウェアまたはソフトウェアの形態で実施が可能である。本発明の実施は、本発明の方法が実行されるようにプログラム制御可能なコンピュータシステムと共に動作するようになっているデジタル記憶媒体、特に電子的に読み取り可能な制御信号をその上に有しているディスクまたはCDを使用して行うことができる。従って、一般に、本発明は、コンピュータ上で走らせたときに本発明の方法を実行するプログラム・コードが機械読み取り可能な媒体に記憶されたコンピュータ・プログラム製品である。言い換えると、本発明の方法は、コンピュータ上で走らせたときに本発明の方法を実行するためのプログラム・コードを有しているコンピュータ・プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態による複数の通信層の動作を制御する装置のブロック図である。
【図2】本発明の更なる実施形態による複数の通信層の動作を制御する装置の態様を示している図である。
【図3】マルチユーザ・スケジューリングのシナリオにおける本発明の伝送時間割り振りを実証するための図である。
【図4】プロトコル・スタックの態様を示している図である。
【図5】クロスレイヤ・アプローチを実証するための図である。
【図6a】時間割り振りが異なるマルチユーザ・スケジューリングを示している図である。
【図6b】3つの測定対象ビデオにおけるGOPのサイズ(パケット数)を示している図である。
【図7】考察対象の通信システムのブロック図である。
【図8】本発明に係る同時的層最適化のためのシステム・アーキテクチャを示している図である。
【図9】3つの測定対象ビデオにおけるGOPに対するMSEを示している図である。
【図10】信号対ノイズ比(SNR)に対するフレーム誤り率を示している図である。
【図11】シナリオ1の性能比較を示している図である。
【図12】シナリオ2の性能比較を示している図である。
【図13】シナリオ3の性能比較を示している図である。
【図14】3つの調査対象シナリオの性能改善比較を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠距離通信技術、特に、伝送される情報を処理するための、および/または受信された情報を処理するためのプロトコル層を使用する通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体無線通信環境において、例えば無線リンクといった通信リンクの動的な振る舞いにより、信頼のできるハイクオリティなサービスを提供することは難しい課題である。したがって、システム設計者は、時間に依存するリソース利用性、フェージングエラー、機能停止またはハンドオーバに起因する伝送クオリティの予測不能な変動に対処しなければならない。第3世代システム以降の(Beyond the 3rd Generation:B3G)無線ネットワークにとって、B3Gシステムが、伝送特性が異なるとともに異機種が混成している環境の無線アクセスネットワークテクノロジーに及ぶことが予想されているので、この動的振る舞いは悪影響を与えるであろう。しかしながら、こうした次世代無線ネットワークは、ネットワークの多様性をシームレスに利用することができるように、顧客に対して信頼性が高く、さらに処理を意識させることがないようなサービスを提供することが期待されている。
【0003】
B3Gでのサービスおよびアプリケーションの提供(プロビジョニング)は、ネットワークの多様性だけでなくアプリケーションの多様性も、新規ビジネスモデルと見なさなければならない。この新規ビジネスモデルは、高度なオープンインタフェースを利用しているオペレータのサービス・プラットフォームの上に、第三者プロバイダが自身のアプリケーションを提供できるようにすることが期待されている。例えば、変動しているユーザ・プリファレンスまたは変動しているユーザ状況(コンテクスト)から生ずる動的に変化するアプリケーション要件を考慮に入れるため、オペレータは、前記変動する要件に応えるためにシステム・パラメータを動的に変える能力が必要となる。
【0004】
通常、従来型の通信システムは、情報処理のためプロトコル・スタックに配置された複数の通信層を利用している。図4に階層状に配置された複数の通信層を備えているプロトコル・スタックを示している。図4に示している従来技術のプロトコル・スタックは、Francis Hall社から2003年に出版されたAndrew Tanenbaum著の「Computer Networks」(第4版)に開示されている。
【0005】
プロトコル・スタックは、物理層901と、物理層901の上に配置されたデータリンク層903と、データリンク層903の上に配置されたネットワーク層905と、ネットワーク層905の上に配置されたトランスポート層907と、トランスポート層907の上に配置されたアプリケーション層911とを備えている。
【0006】
一般的に言えば、アプリケーション層は、伝送される情報を管理するように構成されている。例えば、情報は、通信チャネルを通じて伝送される情報として、例えばビデオデータストリームといったメディアデータストリームを含んでいる。代替として、伝送される情報は、通信チャネルを通じて伝送される、ビデオおよびオーディオ情報から構成されているマルチメディアデータストリームを含んでいる場合がある。さらに、アプリケーションは電子メールなどを含むことができる。言い換えると、アプリケーション層は、伝送されるアプリケーションを伝送可能な情報ストリームに変換するように動作している。
【0007】
アプリケーション層911は、トランスポート・サービスを提供するトランスポート層907と直接通信し、通信のために使用される物理ネットワークに応じて宛先シンク(destination sink)に情報を伝送されることができるようになっている。例えば、トランスポート層は、全ての通信ネットワークにおいて共通のピアツーピア(peer to peer:P2P)通信を維持するため、トランスポート・プロトコル・データ単位(TPDU)を情報データストリームに付加している。ピアツーピア通信は、例えば、トランスポート層907が宛先ネットワークに実装された別のトランスポート層と直接通信することを意味している。
【0008】
トランスポート層907は、トランスポート層907によって提供された情報フレームを処理しているネットワーク層905と直接通信し、それによりエンド・ツー・エンド通信、すなわち2つのコンピュータ・エンティティ間の通信が可能となる。
【0009】
ネットワーク層905は、ネットワーク層フレームを、データリンク層903および物理層901から構成されているリンク層に提供している。データリンク層903および物理層901は、例えば、メディア・アクセス制御用の副層のような複数の副層を備えている場合がある。
【0010】
リンク層は、ビットで表現された情報の通信チャネルを通した伝送を維持管理するように動作している。例えば、データリンク層903は、誤りのあったデータフレーム(パケット)を再送するために、そして例えば送達確認フレームを送信することによって各フレームが正しく受信されたことを確認するために、前方誤り訂正符号化(FEC)または前方誤り検出符号化を適用している。さらに、データリンク層903は、例えばマルチユーザ・シナリオにおいて、伝送されるフレームをスケジュールするように動作している。スケジュールする(スケジューリング)とは、あるフレームが所定のタイムスロット(送信時間フレーム)で伝送されることを意味している。
【0011】
データリンク層903は、物理層901と直接通信するようになっている。この物理層901は、データリンク層903によって提供されたストリームを、例えば、伝送される情報に基づいて搬送波を変調する変調スキームを用いて変調を行うことによって、更に符号化するように動作している。
【0012】
図4に示しているプロトコル・スタックの実施形態は、上記参考文献に記述されたTCP/IP参照モデル(TCP=伝送制御プロトコル、IP=インターネット・プロトコル)に対応している。便宜上、図4に示されているプロトコル・スタックは、アプリケーション層901とトランスポート層907との間に配置されたセッション層およびプレゼンテーション層といった2つの層を除いて、OSI参照モデル(OSI=開放型システム間相互接続)にも対応していることに注意されたい。
【0013】
図4に示しているインターネット・プロトコル・スタックは、B3Gシステムおよびアプリケーションの基本プラットフォームとして使用されることが期待されている。しかしながら、変動する伝送環境の中で良好な伝送クオリティを実現するため、利用可能なネットワーク・リソースを効率的に利用することは、問題に直面している通信システムまたはアプリケーションを、例えば変動する伝送特性およびアプリケーション要件に適応させるために必要である。例えば、周波数選択性の通信チャネルのケースでは、所定のビット誤り率、すなわち10-6という値が増大しないように、伝送されるデータビットストリームの適切な符号化が必要となってくる。それに応じて、物理層は、例えば変調スキームを現在のチャネル特性にアダプテーションさせるようになっている。それゆえ、システムをアダプテーションすることは、プロトコル・スタックの全てのプロトコル層で、各々の通信層の動作モードを決める各々のパラメータを適合させることによって、実行することが可能である。
【0014】
従来的に、例えばビデオストリームといった特定のアプリケーションに対応しているシステムの最適化は、例えばPOTS(Plain Old Telephony Service)のケースのように、例えば階層化していないシナリオにおいて唯一のサービスを提供するシステムでは、垂直方式で実行されるようになっている。
【0015】
無線インターネットなどの階層型通信システムでは、従来では、例えば利用可能な帯域幅、一定のビット誤り率を伴う実現可能なデータレートなどにおいて、利用可能な通信リソースの非効率的な利用を結果としてもたらすような、予測される最悪のケースのシナリオ(最悪条件)に対して、一部の層が独立に最適化されるようになっている。
【0016】
現行のシステムでは、層内アダプテーション(intra−layer adaptation)は、層間(inter−layer)の依存性を考慮せずに実現されるようになっている。P.A.ChouおよびZ.Miao共著の「Rate−Distortion Optimization Streaming of Packetized Media」、(米国)、Microsoft Research、テクニカルレポートMSR−TR−2001−35、マイクロソフト社、2001年2月、によれば、メディアフレームのスケジューリングがアプリケーション層によって実行される通信システムが開示されているが、このシステムでは、ビデオおよびオーディオの情報を搬送しているメディアフレームの相互依存関係のみが考慮に入れられている。M.Kalman、E.SteinbachおよびB.Girod共著の「R−D Optimized Media Streaming Enhanced with Adaptive Media Playout」、スイス国ローザンヌ、International Conference on Multimedia and Expo、 ICME2002、2002年8月、では、適応メディア再生スキーム(adaptive media playout scheme)が記述されているが、そこではオーディオデータ(例えば音声)およびビデオデータの再生速度はチャネル状態に応じて変えられるようになっている。S.Saha、M.JamtgaardおよびJ. Villasenor共著の「Bringing the wireless Internet to mobile devices」、(米国)、Computer、2001年6月、第34巻、第6号、p.54−58、では、現在使われている符号化スキームを、変動するチャネル状態に適応させるためにメディアデータのコード変換を適用する適応型中間層が記述されている。H.Imura等共著の「TCP over Second (2.5G) and Third (3G) Generation Wireless Networks」、RFC3481、IETF、2003年2月、には、ネットワーク混雑によるパケット損失と無線リンク上での通信路の消失による損失とを区別する無線TCPスタックが記述されている。F.H.FitzekおよびM.Reisslein共著の「A prefetching protocol for continuous media streaming in wireless environments」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2001年10月、第19巻、第10号、p.2015−2028、には、データリンク層の再送が記述されており、そこでは遅延制約が考慮に入れられている。既に知られているDIFFSERVアプローチは、メディア・パケットの間で設定された優先順位に基づいており、より重要なメディア・パケットがスケジュールされるようになっている。加えて、例えばIEEE802.11a標準に記述されているように、物理層における適応性のある変調および符号化が知られている。
【0017】
しかしながら、上記従来技術のアプローチは、最適化の目標を達成することに関して1つの層のみが最適化されるという事実に悩まされている。例えば、伝送クオリティを改善するために、物理層は伝送パワーを、現在のチャネル状態、例えば現在のチャネル減衰に応じて、適応的に調整するように動作している。言い換えると、上記従来技術のアプローチは、各々の通信層の動作モードを決める1つのセットのパラメータの最適化に依存している。
【0018】
リソースをより有効に活用するため、2つの層をアダプテーションさせることができる。K.Stuhlmuller、N.FarberおよびB.Girod共著の「Analysis of video transmission over lossy channels」、IEEE Journal on Selected Areas in Communications、2000年6月、第18巻、第6号、p.1012−1032およびT.Fingscheidt、T.Hindelang、R.V.Cox、N.Seshadri共著の「Joint Source−Channel (De)Coding for Mobile Communications」、IEEE Transactions on Communications、2002年2月、第50巻、第2号、p.200−212、には、ソースおよびチャネルの符号化スキームが記述されている。アダプテーション・スキームは伝送クオリティに関してチャネル状態に応じたソースレートおよびコードレートのアダプテーションに基づいている。より具体的に言えば、ソースレートとチャネルレートの計算を可能にする解析公式が開示されている。
【0019】
W.Yuan、K.Nahrstedt、S.Adve、D.Jones、R.Kravets共著の「Design and Evaluation of a Cross−Layer Adaptation Framework for Mobile Multimedia Systems」、Multimedia Computing and Networking Conference(MMCN)2003に公表予定、には、パワー制御および伝送データレートの最適化が開示されている。S.Toumpis、A.Goldsmith共著の「Performance、optimization、and Cross−Layer Design of Media Access Protocols for Wireless Ad Hoc Networks」、IEEE International Conference on Communications(ICC)2003には、アドホック・ネットワークのためのメディア・アクセス制御(MAC)層および物理層の最適化が開示されている。
【0020】
しかしながら、最適化の目的でクロスレイヤ設計(cross−layer design)を適用している従来技術のコンセプトは、通信システム内において、ある特定の最適化の方法のみしか層内アダプテーションに対して考慮されていないという不都合がある。さらに、従来技術のアプローチは、層間の依存関係を考慮していないため、そのため利用可能なリソースを効率的に利用できていない。
【0021】
さらに、メディア・パケットの伝送時間をチャネル状態に応じて選ぶために、チャネル認識スケジューリングが適用されることがある。
【0022】
上述した従来技術は、最適化の方法を記述している。しかしながら、上記従来技術文献は、異なる種類のクロスレイヤ・アダプテーション(cross−layer adaptation)機構を可能にするためのアプローチは開示していない。
【0023】
従来技術のアプローチの更なる欠点は、開示された最適化スキームがフレキシブルでないという点にある。上述した従来技術のアプローチは、最適化のため、例えばパワー制御および伝送データレートといった1つまたは2つの特定のパラメータを考慮するのみで、利用可能な通信リソースを十分活かすための更なる最適化のシナリオは考慮されていない。
【0024】
最新のシステム・アーキテクチャは、クロスレイヤ・アダプテーションに対して設計されていないことから、Prehofer、W.Kellerer、R.Hirschfeld、H.Berndt、およびK.Kawamura共著の「An Architecture Supporting Adaptation and Evolution in Fourth Generation Mobile Communication Systems」、Journal of Communications and Networks(JCN)、2002年12月、第4巻、第4号において、クロスレイヤ・アダプテーションの概念を使用している開放型プログラマブル通信システムが開示されている。しかしながら、プログラマブル・プラットフォームは、システムレベルごとに存在しているのみである。各プラットフォームは、調整された構成を可能にする安定した最小のプラットフォームベースと、追加または取り外し可能な追加のプラットフォーム・コンポーネントとから構成されている。しかしながら、最後に紹介した従来技術文献は、これらのプログラマブル・プラットフォームの動作モードを制御しているパラメータを決定するためのコンセプトを開示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで本発明の目的は、伝送される情報を処理するための通信層を使用している通信システムにおける効率的なクロスレイヤ・アダプテーション・スキームの構想を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的は、請求項1に記載された複数の通信層の動作を制御する装置によって、あるいは請求項20に記載された伝送される情報を処理するための通信装置によって、あるいは請求項21に記載された受信信号を処理するための通信装置によって、あるいは請求項22に記載された複数の通信層の動作を制御する方法によって、あるいは請求項23に記載された伝送される情報を処理するための方法によって、あるいは請求項24に記載された受信信号を処理するための方法によって、あるいは請求項25に記載されたコンピュータ・プログラムによって、達成される。
【0027】
本発明は、特定の通信層の動作モードを決めるパラメータが、特定の通信層の振る舞いを記述するアブストラクション・モデル(abstruction model)を同時にエミュレートすることによって同時に決定されるとき、複数の通信層が、効率的に制御可能である、という所見に基づいている。特に、アブストラクション・モデルに基づいて、最適化の目標に関する例えば伝送クオリティといった通信層のパフォーマンスが、例えばビット誤り率といったチャネル・プロパティを考慮した上で最適化できるように、最適なパラメータを求めることができるようになっている。
【0028】
本発明のアプローチは、複数の最適化の目標を達成するため、複数の通信層の同時最適化の概念を提供している。特にマルチユーザ・シナリオにおいて、通信システムは、第1ユーザの信号および第2ユーザの信号を通信チャネルを通じて伝送するようになっている。第1ユーザの信号は、例えばビデオストリームといった、伝送される情報を含んでいる場合があるが、この場合、信号歪みを小さくするために一定の伝送クオリティが必要である。同様に、第2ユーザのストリームは、伝送される情報を含んでいる場合がある。この場合、最適化の目標は、その情報を処理している通信層とその情報を伝送している通信層のパフォーマンスを同時に最適化することにある。特に、伝送される情報を管理または処理している通信層は、既に言及されたアプリケーション層である場合がある。一方、通信チャネルを通じた伝送を管理している通信層は、図4において従来技術のプロトコルとの関連で示した物理層を備えている場合がある。
【0029】
本発明によれば、通信層は、例えば第1の通信層の動作モードを決める第1のセットのパラメータと第2の通信層の動作モードを決める第2のセットのパラメータとを同時に決定することによって、同時に最適化されるようになっている。しかしながら、特定の通信層の動作モードは、層間依存関係に起因して、つまりその特定の通信層によって実行される作業の複雑さおよび実行される複数のジョブに起因して、解析的に設定することはできない。この問題を解決するため、特定の通信チャネルの振る舞い(または特性)をモデリングしているアブストラクション・モデルが使用されるようになっている。状態図によって表されるアブストラクション・モデルは、2003年にPrentice Hall社から出版されたAndrew Tanenbaum著の「Computer Networks」、第4版に記載されている。しかしながら、そこに開示されているアブストラクション・モデルは、単一の通信層をモデリングするために一般的に使用されるようになっている。
【0030】
本発明によれば、最適なセットのパラメータは、最適化すべきプロトコル層の特定の特性をモデリングしているアブストラクション・モデルを基礎として最適化されなければならない少なくとも2つのプロトコル層の振る舞いを、同時にエミュレートすることよって決定されるようになっている。
【発明の効果】
【0031】
本発明の利点は、最適なセットのパラメータが現在のチャネル状態および最適化の目標に基づいて動的に求められるということにある。それゆえ、異なる伝送シナリオにおいて複数の最適化目標を達成するためにプロトコル・スタックを適応的に最適化することに関してフレキシビリティを実現させることができる。
【0032】
本発明の更なる利点は、通信層が同時的に最適化されるということである。それゆえ、層間依存関係を考慮したグローバルな最適化が実行されることから、利用可能な通信リソース、例えば利用可能な帯域幅は、全てまたはほぼ全て有効に活用され得る。
【0033】
本発明の更なる利点は、プロトコル層の現在の状態または現在のチャネル状態の情報が全ての通信層で利用できるので、どのプロトコル層も最適化できるということである。それゆえ、従来技術のアプローチに共通する非効率的な垂直的な情報の転送は回避されるようになっている。それゆえ、最適化の目標やチャネル・プロパティなどに応じて、最良の最適化結果を保証する通信層は、どれも最適化の目標を達成するために最適化することが可能である。
【0034】
通信層(プロトコル層)を使用する通信システム、すなわちB3Gシステム、の最適化に使用される最適化スキームは、クロスレイヤ設計で構成されている。ここでは、アプリケーション・パラメータから物理的伝送に及ぶプロトコル・スタックのいくつかの層が考慮されるようになっている。図5に通信システムの具体的な態様を示している。そこでは、1つの特定のアプリケーションに対する垂直的な方式のクロスレイヤ最適化を基礎としている通信システムの最適化が、実証されている。
【0035】
図5に示したシステムは、送信機1001(基地局)および受信機1003を備えている。送信機1001は、伝送されるアプリケーション(情報)を処理するためにプロトコル・スタック1005を適用している。プロトコル・スタック1005は、アプリケーション層と、トランスポート層と、ネットワーク層と、MACおよびPHYから構成されているリンク層とを備えている。一方、受信機1003は、送信機1001によって送信された送信信号の受信版である受信信号を処理するためにプロトコル・スタック1007を適用している。プロトコル・スタック1007(受信側プロトコル・スタック)は、リンク層と、IP層(ネットワーク層に相当)と、TCP/UDP層(トランスポート層に相当)と、アプリケーション層とを備えている。
【0036】
図5は、対応し合う層、例えばトランスポート層とTCP/UDP層とが互いに通信し合うピアツーピア(P2P)通信原理も明示している。
【0037】
特定のアプリケーションに対してシステムを最適化するため、例えばボトムアップの情報配信が実行されるようになっている。例えば、リンク層は、例えば信号対ノイズ比(SNR)または最大可能送信パワーといった物理的制約パラメータとしてチャネル・プロパティを取り出すようになっている。物理的制約パラメータは、次にアプリケーション層に転送され、そこでリアルタイム符号化・復号化スキーム(codec)を使用するビデオストリーミングが実行されている。言い換えると、アプリケーション層は、ビデオストリーミングに必要な伝送クオリティが実現できるようにリアルタイム・コーデック(codec)を物理的制約パラメータに適用するようになっている。
【0038】
従って、アプリケーション層は、リンク層にサービス品質(QOS)要件(例えば或るサービスに関連している或る決まったビット誤り率)について知らせるように動作している。この場合、リンク層は、QOSが満足されるようにより包括的な符号化スキームを適用している。
【0039】
図5に示した本発明のクロスレイヤ・アダプテーション技術は、システムの部分(パーツ)を動的に変化する環境に適応させるための、プロトコル・スタックの従来的な層にわたる層間情報交換に基づいている。既に言及したように、情報がプロトコル・スタックを上下両方向に伝搬するように動作している。クロスレイヤ情報交換は、アプリケーションがより下位の層(例えばリンク層)から、現在のネットワーク状態、および伝送クオリティに影響を与える予測可能なイベント、例えばハンドオーバに関する情報を受信することを意味している。それゆえ、下位の層は、既に述べたように、アプリケーションの現在の伝送要件についての情報を受信している場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図1に、第1の通信層101と第2の通信層103とを含んでいるプロトコル・スタックを示している。第1の通信層101および第2の通信層103の動作モードを制御するために、(プロトコル・スタックに含まれる)複数の通信層の動作を制御する本発明の装置は、第1の入力107と、第2の入力109と、第1の出力111および第2の出力113を有しているエクストラクタ105とを備えている。第1の通信層101は、第1の入力107を介してエクストラクタ105に接続されており、一方、第2の通信層103は、第2の入力109を介してエクストラクタ105に接続されている。第1の出力111および第2の出力113は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115に入力されるように動作している。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、入力117と入力119が更に入力されるように動作している。加えて、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、入力123、第1の出力125、第2の出力127を更に入出力するように動作している。第1の出力125および第2の出力127は、最適化された第1のセットのパラメータおよび最適化された第2のセットのパラメータを提供するための手段129に入力されるように動作している。最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層101に送られる第1の出力131と第2の通信層103に送られる第2の出力133とを備えている。
【0041】
さらに、図1に示した装置は、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段(115)へ入力(123)を送るようになっている最適化の目標を提供するための手段(135)を備えている。
【0042】
図1に示した装置は、通信チャネルのプロパティを提供するための手段135を更に備えている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、第2の通信層103に接続されている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135の出力は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115の入力117を介して接続されている。
【0043】
加えて、図1の装置は、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルとを最適化された第1および第2のセットのパラメータを決定するための手段115に提供するための手段137を備えている。より具体的には、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137は、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115の入力119となる出力を有している。
【0044】
図1に示した装置は、複数の通信層の動作を制御するようになっている。そこには一例にすぎないが、第1の通信層101と第2の通信層103が記載されている。階層型通信システムは、通信チャネルを通じて情報を遠隔の受信機に伝送するように動作している。第1の通信層101の動作は、第1のセットのパラメータによって決まるように動作している。同様に、第2のセットのパラメータは、第2の通信層の動作モードを決めるようになっている。第1の通信層101と第2の通信層103の動作を制御するため、本発明に関係するエクストラクタ105は、第1の通信層と第2の通信層の現在のステージを特定する、第1の通信層の第1のセットのパラメータと第2の通信層の第2のセットのパラメータとを取り出すようになっている。複数の通信層から2層以上の通信層にアクセスするため、エクストラクタ105は、特定の通信層のみが最適化の目標を達成するために同時に最適化されるよう、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115によって制御されることがある。取り出された第1および第2のセットのパラメータは、プロトコル・スタックの最適化された動作モードを実現するために、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータを決定するための手段115に提供されるように動作する。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の通信チャネル101の振る舞いをモデリングしている第1のアブストラクション・モデルと、第2の通信チャネル103の振る舞いをモデリングしている第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティを提供するための手段135によって提供されるチャネル・プロパティと、例えばデータレートまたはビット誤り率に関する伝送クオリティといった最適化の目標とに基づいて、第1の通信層101によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、第2の通信層103によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するように動作する。
【0045】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1および第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137から第1および第2のアブストラクション・モデルを受け取るように動作する。例えば、第1および第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137は、異なる通信層に対する複数の異なるアブストラクション・モデルを格納するための記憶素子を備えている。特に、第1のアブストラクション・モデルは、第1の通信層の特性(振る舞い)をモデリングするが、そこでは層間依存関係が考慮されている場合がある。第1の通信層の特性は、第1のアブストラクション・モデルによってモデリングされることであり、例えば使用されている符号化スキームについての情報を含んでいる第1のセットのパラメータに依存することである。同様に、第2のアブストラクション・モデルは、第2のセットのパラメータに依存している第2の通信層の特性をモデリングするように動作している。
【0046】
既に言及したように、アブストラクション・モデルは、各々の動作モードを記述している状態図を備えている場合がある。より具体的には、第1のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの両方の状態の間の遷移とを有している第1の状態図を備えている。同様に、第2のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの両方の状態の間の遷移とを有している第2の状態図を備えている。状態図は、例えばマルコフモデル、ペトリネットなどで実施されている場合がある。一般に、第1の状態図は、第1の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングするように動作している。同様に、第2の状態図は、第2の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングするように動作している。このパラメータ依存性は、例えば、2つの状態間の遷移または或る特定の状態で生成された出力が対応しているセットのパラメータによって基本的に決まるということを意味している。
【0047】
最適化された第1および第2のセットのパラメータを決定するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のアブストラクション・モデルおよび第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段137から、最適化のために使用されるアブストラクション・モデルを選択するように動作する場合がある。最適化のために使用される第1および第2のアブストラクション・モデルは、固定されることがあり、これらのアブストラクション・モデルのエミュレーションは、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115によって実行されるようになっている場合がある。
【0048】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータを受け取り、第1のセットのパラメータを第1のアブストラクション・モデルに入力し、第2のセットのパラメータを第2のアブストラクション・モデルに入力するとともに、チャネル・プロパティと、最適化の目標と、第1および第2のセットのパラメータによって決まる第1および第2の通信層の現在の状態とに従って、第1のアブストラクション・モデルと第2のアブストラクション・モデルとを同時にエミュレートすることによって、最適化の目標を達成するために、第1の最適化されたセットのパラメータと第2の最適化されたセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0049】
最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータを使用して最適化の目標が達成できないときに、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータが決定されるべきことを合図するために、チャネル・プロパティに従って第1のセットのパラメータを使用する第1のアブストラクション・モデルを解析するとともに第2のセットのパラメータを使用する第2のアブストラクション・モデルを解析するためのアナライザを更に備えている。
【0050】
さらに、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、最適化の目標を達成するために、どの通信層が最適化されなければならないかを決定するように動作する。
【0051】
最適化されたセットのパラメータを対応する通信層に提供するため、図1に示した本発明の装置は、最適化された第1のセットのパラメータを第1の通信層に提供し、最適化された第2のセットのパラメータを第2の通信層に提供するための手段129を備えている。好ましくは、最適化された第1のセットおよび最適化された第2のセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層および第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている場合がある。
【0052】
既に言及したように、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、チャネル・プロパティを考慮に入れている。第2の通信層は、通信チャネルを通じての情報の伝送を管理する働きをするプロトコル層となっている場合がある。また例えば、第2の通信層103は、更に通信チャネルのプロパティを取り出す働きをする物理層を備えているが、これは従来の通信システムで一般的に使用されている技術である。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、通信チャネルのプロパティを受け取るために第2の通信層103に接続するようになっている。好ましくは、通信チャネルのプロパティを提供するための手段135は、物理層とインタフェースで接続するためのプロトコル層インタフェースを備えている。通信チャネルのプロパティを提供するための手段135によって、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115に提供されるチャネル・プロパティは、ビット誤り率または/および該ビット誤り率を伴うチャネル・データレートまたは/および伝送遅延または/および該ビット誤り率を伴う伝送パワーまたは/およびチャネル・コヒーレンス時間または/およびチャネル・コヒーレント帯域幅となっている場合がある。
【0053】
既に言及したように、最適化の目標は、伝送クオリティの最適化を含んでいる場合がある。この場合、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1のアブストラクション・モデルを使用している第1の通信層の振る舞いおよび第2のアブストラクション・モデルを使用している第2の通信層の振る舞いをエミュレートすることによって、最適化された第1のセットのパラメータおよび最適化された第2のセットのパラメータを決定するように動作しているが、このときこれらのアブストラクション・モデルのエミュレーションが、各々の通信層の現在のステージから開始して始められることができるように、第1のセットのパラメータおよび第2のセットのパラメータは、初期パラメータとなっている。
【0054】
例えば、第1の通信層は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を提供するために、伝送される情報を符号化するようになっている。第1の通信層は、例えば、従来技術によるプロトコル・スタックとの関連で論じたアプリケーション層である場合がある。歪みは、伝送された情報と受信された情報との間の差異を記述するようになっている。(既知の)レート歪み理論によれば、伝送される情報は、その情報が受信機で再現できるように、一定の歪みまたは一定の歪みプロファイルを伴う最小の情報レートで伝送することが可能なようになっている場合がある。
【0055】
例えば、第1の通信層は、情報信号を提供するために情報を符号化するようになっているが、そこではデータ圧縮が実行されるように動作している。一方、第2の通信層は、通信チャネルを通じて伝送するための伝送信号を取得するためにその情報信号を符号化するように動作している。例えば、第2の通信層は、既に述べたようにデータリンク層と物理層とを備えている。好ましくは、伝送信号は、情報レートをサポートする例えば10-6といった一定のビット誤り率を伴うデータレートを有している。この場合、最適化の目標は、歪みプロファイルを超えないように、最小の達成可能な情報レートが実現されるように情報を符号化することによって、かつ、受信機側で情報が再現できるように、一定のビット誤り率を超えないようなデータレートを有する伝送信号を取得するために情報信号を符号化することによって、伝送クオリティの最適化を図ることにある。最適化の目標を達成するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を取得して情報を符号化するために使用される最適化された第1のセットのパラメータと、情報レートをサポートするデータレートを有している伝送信号を取得して情報信号を符号化するために使用される最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0056】
既に言及したように、本発明のコンセプトは、マルチユーザ伝送スキームの場合のプロトコル層の最適化にも適用されることがある。この場合において、マルチユーザ・シナリオによれば、情報は、第1のユーザに関連している第1の情報と第2のユーザに関連している第2の情報とを含んでいる。最適化の目標は、例えば、第1の情報、すなわち第1のユーザにとっての、更に第2の情報、すなわち第2のユーザにとっての、最適化された伝送クオリティを実現することである。この場合、第1の通信層は、第1のユーザに関連している第1の情報信号と第2のユーザに関連している第2の情報信号とを取得するために、第1の情報を符号化するように動作している。一方、第2の通信層は、通信チャネルを通じて伝送される複合信号を取得するために、第1の情報信号および第2の情報信号を符号化するように動作している。最適化の目標を達成するため、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の情報および第2の情報を符号化するために、第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、第1の情報信号と第2の情報信号を符号化するために第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを、第1の情報および第2の情報の伝送クオリティを最適化するために同時に決定するように動作する。
【0057】
例えば、第2の通信層は、最適化された第2のセットのパラメータを使用して第1の情報信号および第2の情報信号をスケジュールするように動作している。本文中において、スケジューリングは符号化の一部の形態である。こうして、第1の情報信号は第1の時間フレーム内に伝送され、第2の情報信号は第2の時間フレーム内に伝送されるが、第1および第2の時間フレームは、例えば、複合信号を伝送するのに必要とされる時間フレームによって決まるように動作している。好ましくは、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の歪みを伴う第1の情報レートを有している第1の情報信号を取得し、かつ第2の歪みを伴う第2の情報レートを有している第2の情報信号を取得するために、最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する。それと同時に、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の情報レートおよび第2の情報レートをサポートするようなデータレートを有している複合信号を取得するために第2のセットのパラメータを決定するように動作する。言い換えると、第1の通信層は、伝送される情報を処理するようになっており、第2の通信層は、ユーザ・スケジューリングするように動作している。
【0058】
本発明によれば、例えばメディアデータ・スケジューリングといった情報スケジューリングもまた、プロトコル・スタックの動作モードを最適化すると同時に実行することができる。この場合、第1のユーザに関連している第1の情報は、第1の副情報と第2の副情報とを含んでいる。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、第1の情報信号を取得するために第1の副情報および第2の副情報を選択的に符号化するための第1の通信層によって使用される第1の最適化されたセットのパラメータを決定するように動作する。例えば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の副情報および第2の副情報が第1の情報信号の異なる位置に配置されるように、第1の情報信号内において第1の副情報および第2の副情報をスケジュールするため、最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する。言い換えると、第1の副情報および第2の副情報が伝送フレーム内の異なる時間的瞬間に伝送されるようになっている。
【0059】
既に言及したように、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、第1の通信層および第2の通信層の現在のステータスに基づいて実行される場合がある。本発明の更なる実施形態によれば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、現在のステータス情報を提供するために、第1のセットの係数、すなわち現在使用中の係数で決まる第1の通信層の現在のステータスと、第2のセットの係数、すなわち現在使用中の係数で決まる第2の通信層の現在のステータスとをモニタするようになっている。ステータス情報は、例えば、最適化の目標が第1および第2のセットのパラメータを利用することでは達成不可能あったため、最適化された第1および/または第2のセットのパラメータが決定されなければならないことを示す場合がある。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、どのセットのパラメータが最適化され置き換えられなければならないかの判定を行うように動作する。
【0060】
既に言及したように、本発明のコンセプトは、情報スケジューリングおよびユーザ・スケジューリングによるプロトコル・スタックの最適化にも適用される場合がある。例えば、伝送される情報は、第1のユーザに関連している第1の情報と、第1のユーザに関連している第2の情報と、第2のユーザに関連している第3の情報と、第2のユーザに関連している第4の情報とを含んでいる。第1の通信層は、第1のユーザに関連している第1の情報信号を取得するために第1の情報および第2の情報をスケジュールするように動作する。
【0061】
加えて、第1の通信層は、第2のユーザに関連している第2の情報信号を取得するために第3の情報および第4の情報をスケジュールするように動作している。第2の通信層は、伝送するためのスケジュールされたマルチユーザ・ストリームを取得するために、第1の情報信号および第2の情報信号をスケジュールするように動作している。最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は、例えば各ユーザの伝送クオリティの最適化が実現されるように、第1の情報信号および最適化された第2の情報信号を提供するために第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、スケジュールされたマルチユーザ信号を提供するために第2の通信層によって使用される第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する。
【0062】
各々の通信層に各々の最適化されたセットのパラメータを提供するため、本発明の装置は、最適化された第1のセットのパラメータと最適化された第2のセットのパラメータとを第1の通信層101と第2の通信層103とにそれぞれ提供するための手段129を備えている。最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、第1の通信層および第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている。例えば、第2の通信層は、物理層を備えている。この場合、最適化されたセットのパラメータを提供するための手段129は、対応している物理層インタフェースを介して、物理層とインタフェースで接続するようになっている。通常、物理層は、変調、例えば振幅変調の機能を担っている。このため、第2のセットのパラメータまたは最適化された第2のセットのパラメータは、使用される変調スキームを決める1つのサブセットの変調パラメータを含んでいることがある。本発明によれば、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、物理層の動作モードを、例えば、使用される1サブセットの変調パラメータを決定することによって、制御するようになっている。
【0063】
また、第2の通信層は、使用される前方誤り符号化スキームを決める1サブセットの符号化パラメータを使用して前方誤り符号化を実行するように動作しているデータリンク層を含んでいる場合がある。この場合、最適化されたセットのパラメータを決定するための手段115は更に、最適化の目標を達成するために物理層によって使用される1つのサブセットの符号化パラメータを決定するように動作する。
【0064】
好ましくは、複数の通信層の動作を制御する本発明の装置は、伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための通信装置内に組み込まれている。伝送プロトコルは、伝送される情報を処理するための複数のプロトコル層を備えており、伝送される情報は、例えばCDなどの情報源から提供されるようになっている。複数のプロトコル層を制御するため、本発明の通信装置は、上記説明に従って複数の通信層の動作を制御する装置を備えている。加えて、プロトコル層に従ってその情報を処理するため、本発明の通信装置は、その情報を処理するためのプロセッサを更に備えている。このプロセッサはネットワーク・プロセッサである場合がある。
【0065】
図2に複数の通信層の動作を制御する装置の更なる実施形態を示す。
【0066】
図2の装置は、入力203と、入力205と、入力207と、入力209および出力211を有しているクロスレイヤ・オプティマイザ201とを備えている。第1のインタフェース213は、プロトコル・スタック1005のアプリケーション層とクロスレイヤ・オプティマイザの入力203との間に備えられている。第1のインタフェース213は、ブロック215の入力に対応している出力を有している。ブロック215は、アプリケーション指向オプティマイザであるクロスレイヤ・オプティマイザの入力205に対応している出力を有している。
【0067】
さらに、第2のインタフェース217は、プロトコル層1005のリンク層とクロスレイヤ・オプティマイザ201の入力209との間に備えられている。第2のインタフェース217は、第2のブロック219の入力に対応している出力を更に備えており、該第2のブロック219は、クロスレイヤ・オプティマイザの入力207に対応している出力を有している。
【0068】
クロスレイヤ・オプティマイザ201の出力211は、アプリケーション層に接続している第1の出力とリンク層に接続している第2の出力とを有している決定素子222接続されている。
【0069】
第1のインタフェース213は、マルチメディア・スケジューリング、例えばソースレート・スケジューリングを実行するため、アプリケーション層のパラメータ、すなわち第1のセットのパラメータを取り出すようになっている。インタフェース213によって取り出されたパラメータは、例えば、ソース歪みプロファイルと遅延制約条件とを含んでいる第1のブロック215に提供されている。
【0070】
一方、第2のインタフェース217は、マルチユーザ・スケジューリング、例えば伝送レート・スケジューリングに関してリンク層からパラメータを取り出すようになっており、パラメータ・アブストラクトを第2のブロック219とクロスレイヤ・オプティマイザ201とに提供するようになっている。第2のブロック219は、マルチユーザ伝送データレート、チャネル・コヒーレンス時間またはパケット損失率(Pe)を含んでいる情報を提供するように動作している。クロスレイヤ・オプティマイザは、アブストラクション・モデルをエミュレートすることによって、最適化された1セットのパラメータを決定するように動作している。決定素子222は、最適化されたセットのパラメータを、対応する通信層に提供するように動作している。
【0071】
図2に示しているように、パラメータ・アブストラクトは、単なる一例に過ぎないが、最適化されたセットのパラメータを決定するために使用されるアブストラクション・モデルであるマルコフ・オン/オフ・モデルのパラメトリゼーションに基づいて実行されるように動作している。
【0072】
本発明の装置およびそれに対応する方法は、サービス・プラットフォームのレベルにあるオプティマイザ・コンポーネント(これは複数の通信層の動作を制御する装置に対応している)が、調整機能、モデリング機能および意思決定機能を実行するような方法で、無線環境でのリアルタイム(実時間)アプリケーションにおいてユーザが感受するようなクオリティの改善をもたらす。特に、オプティマイザ・コンポーネントは、以下のようなタスク、すなわち、選ばれたシステム層のステータス情報のモニタリング、ステータス情報を管理可能にする適切なアブストラクション・モデルの保持、アブストラクション・モデルの動的解析、これらのモデルに基づくパラメータの同時最適化、どのような新たなパラメータ設定(セッティング)がどのシステム層に必要かについて判断するような動的意思決定、各々の層でシステムを制御するためのパラメータのフィードバック、パラメータを全ての層に提供するあるいは全ての層で同時にそれらのパラメータを使用するために提供することが不可能な場合の初期状態へのロールバック、といったタスクを実行するようになっている。
【0073】
さらに、本発明の意思決定は、システムのステータスの不必要な揺らぎを回避するため、パラメータ修正の決定が現在の設定(セッティング)および履歴を考慮した上で実行されるということによって特徴付けられている。
【0074】
本発明のオプティマイザ・コンポーネントは、上述したように、調整タスクおよびモデリング・タスクを実行することによるクロスレイヤ最適化のための、異なるアルゴリズムを実現かつサポートすることが可能となっている。例えば、本発明のクロスレイヤ最適化は、無線ネットワーク・リソースの活用の改善を支援し、これにより従来技術のアプローチと比べて同一のシステムにおいて複数のユーザに対して、より同時的に対応することが可能となっている。同じ数のユーザの場合に対し、伝送クオリティは改善し得る。さらに、マルチユーザの間でより均等に配分されているユーザが感受するクオリティが実現可能である。さらに、本発明のアプローチは、同時に様々な伝送特性およびアプリケーション要件に動的に適応する可能性を提供している。まとめると、本発明のコンセプトは、システム・オペレータのコスト節約、より良いユーザ満足度およびサービス受容の可能性を与えている。
【0075】
再び図2に示している実施形態を参照して説明する。図中には、階層型通信システムのアプリケーション支援ミドルウェアに存在しているオプティマイザ・コンポーネントの可能な実装が示されているが、そこでは一例として、ビデオストリーミング・アプリケーションおよびリンク層伝送制御のクロスレイヤ・アダプテーションが実証されている。ここでは、アプリケーション層でのビデオデータ・スケジューリングおよびリンク層でのマルチユーザ・スケジューリングのクロスレイヤ最適化が示されている。目標は、無線リソースを効率的に使用している間にユーザによって感受されるエンド・ツー・エンド品質を最大化することにある。ビデオデータ・スケジューリングは、1ストリーミング・セッション内にどのデータ・セグメントがいつ送られなければならないかを決定するプロセスであり、一方、マルチユーザ・スケジューリングは、例えば、どのユーザが所与の時間、周波数またはコードでチャネルを使用することが許されるかを決定するようになっている。
【0076】
特に、図2に示している実施形態は、本発明のオプティマイザ・コンポーネントのタスクを明示しているが、そこではステータス情報は、選ばれたシステム層から、特にアプリケーション層から、そしてMAC層(MAC)および物理層(PHY)を備えているリンク層から収集されるようになっている。この実施形態では、マルティメデイア・スケジューリング、すなわち全体のクオリティに異なる影響力を持つ異なるタイプのメディアフレームの伝送順序を指定することによる、ソースデータ(情報)のスケジューリングに注意が払われている。加えて、本発明のアプローチは、ソースレートの選択も考慮するようになっている。無数の組み合わせが可能なため、影響力が大きな組み合わせを保持するとともにアブストラクション・モデルをエミュレートすることによって、1つの特定の組み合わせの影響力を迅速に解析するため、オプティマイザ・コンポーネントは、パラメータのアブストラクションを実施するようになっている。この実施形態では、組み合わせごとに、ソースレート歪みプロファイルの実装が保持されている。
【0077】
類似のアブストラクションがリンク層に対しても実行されている。ここでは一例として、可能な伝送時間スケジューリングの選ばれたケースが考慮されている。図3は、ユーザが3人のシステムを例に、7つのケースまで減らしたマルチユーザ・スケジューリング・システムの異なる伝送時間割り振りを示している。
【0078】
アブストラクション・モデルに基づいて、本発明に係るオプティマイザ・コンポーネントは、変化しているチャネル状態の結果を動的に解析するが、それは両方のモデルに基づくコスト関数による感受クオリティに対するリンク層アブストラクション・モデルの一部である。この解析の結果、同時に最適化された1セットのパラメータがもたらされるようになっている。
【0079】
最適化のポリシー(例えばコスト関数に記述されている)によれば、オプティマイザ・コンポーネントは、各々の層におけるシステム挙動を制御するため、どの新たなパラメータ設定(セッティング)がどのシステム層に必要かを決定するとともに、各々のパラメータをフィードバックしている。エラーが発生した場合、例えば、1つの層が制御不能になった場合、初期状態に戻すためにロールバック機構が開始されるようになっている。
【0080】
本発明は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版である受信信号を、受信プロトコルに従って処理するための通信装置を更に提供している。伝送信号は、上述の伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでいる場合があるが、ここで伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まるようになっている。例えば、第1のセットの伝送パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータは、上述した第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングしているアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定されるようになっている。一方、受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層と第2の受信プロトコル層とを備えており、第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決まり、第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決まるようになっている。
【0081】
本発明の装置は、第1のセットの伝送パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータを知らせるパラメータ情報を、例えば信号伝達によって遠隔の通信送信機から受信するための手段を備えている。さらに、本発明の装置は、第1のセットの伝送パラメータに対応している第1のセットの受信パラメータおよび第2のセットの伝送パラメータに対応している第2のセットの受信パラメータを決定するための手段と、第1のセットの受信パラメータを第1の通信層に提供し、第2のセットの受信パラメータを第2の通信層に提供するための手段とを更に備えている。
【0082】
本発明のアプローチは、一般に複数のユーザの場合および/または各ユーザに複数の情報が付随する場合に使用できる。
【0083】
以下の記述において、無線マルチユーザ・マルチメディア通信のアプリケーション層および無線リンク層のクロスレイヤ最適化を説明する。我々の目的は、無線リソースを効率的に活用するのみならず、無線メディア・アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある。我々の目標を成し遂げるための新規のアーキテクチャが提供かつ考案されている。このアーキテクチャは、パラメータ・アブストラクションのプロセスと、クロスレイヤ・オプティマイザと、決定情報配信のプロセスとから構成されている。加えて、本発明の同時最適化の可能性を明らかにするために、サンプル数値結果が提供されている。移動体通信におけるクロスレイヤ設計は、マルチメディアサービスのプロビジョニング(例えば音声、動画、オーディオ、データ)のコンテクストにおいて最近かなり注目されている。クロスレイヤ設計のコンセプトは、プロトコル・スタックにわたる層間コンセプトを導入し、2以上の層で通信を同時に最適化することを可能にしている。このコンセプトは、全ての通信ネットワークで採用できるが、無線環境に固有の問題(すなわち無線チャネルの時間的に変動する性質とフェージング性)があるため、無線環境では特に重要である。この無線性とユーザ移動性から、ネットワーク性能と接続性がランダムに変動する。加えて、マルチメディア・サポートの要求の厳しいQoS要件(例えばデータレート、待ち時間および誤り率)は、システム設計において移動体マルチメディア通信をより一層チャレンジングなものとしている。このチャレンジは、システム設計を基本的に独立した層に分割する従来の階層型設計アプローチで行うには困難であろう。エンド・ツー・エンドQoSを提供するため、パラメータ・アダプテーションが全てのOSI層で取り組まれなければならない。そこで、異なる層の間で情報が交換されなければならないクロスレイヤ設計という本発明のコンセプトが提供される。以下において、無線マルチメディア通信に対してアプリケーション層と無線リンク層の同時最適化を提案することにより、クロスレイヤ設計コンセプトの層間結合を活用する。無線リンク層は、プロトコル・スタックにおける物理層とデータリンク層と見なされている。我々の目的は、無線リソースを有効利用するのみならず、無線マルチメディア通信アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある。この目的を成し遂げるため、クロスレイヤ最適化コンセプトを実現するための可能なソリューションを提供している、同時層最適化のためのアーキテクチャが開発されている。このアーキテクチャは、パラメータ・アブストラクションのプロセスと、クロスレイヤ・オプティマイザと、決定情報配信のプロセスとから構成されている。このアーキテクチャのあらゆる部分に具体的な形が与えられている。加えて、本発明の同時最適化の可能性を明らかにするためにサンプル数値結果が提供されている。これまでの研究は、主に単一の層における性能を最適化すること、例えばトランスポート層、ネットワーク層、データリンク層および物理層の特性へのアプリケーションのアダプテーション(ボトムアップ型アプローチ)、アプリケーション要件への物理層、データリンク層またはネットワーク層のアダプテーション(トップダウン型アプローチ)、に終始していた。またクロスレイヤ設計に関する進行中のほとんどの研究は、物理層とデータリンク(またはMAC)層の同時最適化に集中している。アドホックな無線ネットワークに対するクロスレイヤ最適化において、ネットワーク層でのルーティングの最適化を含んでいるものもあれば、物理層における伝送パワーおよび前方誤り訂正符号化の同時最適化において、ソースレートを含んでいるものもある。
【0084】
本発明のアプローチは、我々の目標が好ましくはマルチメディア・アプリケーションのエンド・ツー・エンド品質を最適化することにある点であり、これまでのアプローチとは異なっている。このため、我々は、プロトコル・スタック内の3層、すなわちアプリケーション層(第7層)、データリンク層(第2層)、および物理層(第1層)、の同時最適化について考察している。我々は、アプリケーション層を同時最適化の対象に含める。というのも、ユーザによって観察されているエンド・ツー・エンド品質は、アプリケーションに直接依存し、アプリケーション層は、知覚品質に対するメディアデータの複合に成功した各部分の影響力についての直接的な情報を有しているからである。我々は物理層とデータリンク層も考慮に含める。というのも、移動体無線通信特有の問題は、これら2層が問題の対応をしなければならない無線チャネルの性質に起因するからである。我々の目標を達成するための新規のアーキテクチャが提供かつ考案されています。この文書の構造は以下のようなものである。
【0085】
マルチメディアサービスの一応用例としてストリーミングビデオを想定しており、基地局に置かれたビデオストリーミング・サーバと移動端末内に置かれたストリーミング・クライアントとを考慮に入れる。図7に示しているように、K個のストリーミング・クライアントまたはユーザは、同じ無線インタフェースおよびネットワーク・リソースを共有しているが、異なるビデオコンテンツをリクエストしていると想定されている。我々のシナリオでは、ビデオストリーミング・サーバは基地局に直に置かれることから、無線接続に必要なプロトコル・スタックのみが考慮されなければならないことに注意されたい。それゆえ、プロトコル・スタックのトランスポート層およびネットワーク層は、最適化の問題から除外することができる。したがって、アプリケーション層と、物理(PHY)層およびデータリンク層を両方組み込んでいる無線リンク層との間の相互作用に焦点を合わせればよい。基地局では、図8に示しているアーキテクチャが、サービス最適化のエンド・ツー・エンド品質を提供するのに適している。図8に同時最適化に関係しているタスクおよび情報フローを示している。必要な状態情報は、クロスレイヤ・オプティマイザのためのパラメータ・アブストラクションのプロセスを通じて、アプリケーション層と無線リンク層から最初に集められる。パラメータ・アブストラクションのプロセスは、層固有のパラメータの、クロスレイヤ・オプティマイザのための包括的なパラメータ、いわゆるクロスレイヤ・パラメータへの変換を結果としてもたらす。次いで、クロスレイヤ・オプティマイザによって最適化が特定の目的関数に関して実行されるようになっている。与えられたセットの選択候補のクロスレイヤ・パラメータ・タプルから、目的関数を最適化するためのタプルが選ばれるようになっている。特定のクロスレイヤ・パラメータ・タプルに関して決定がなされた後、オプティマイザは、その決定情報を対応する層に返送するように動作している。選択候補のクロスレイヤ・パラメータ・タプルのセットは一般的に無限集合であり得ることに注意されたい。このため決定を迅速に行うために有限集合の適切なタプルを事前に選択しておくことが必要である。こうして、最適なクロスレイヤ・パラメータ・タプルに関する最終決定は、局所最適化のみを結果としてもたらす場合がある。
【0086】
同時最適化を実行するため、状態情報または1セットの主要パラメータが、選ばれた層から抽出され、クロスレイヤ・オプティマイザへ提供されなければならない。クロスレイヤ・オプティマイザへ提供されることは必要なことであり、というのは層固有のパラメータは、他の層およびオプティマイザにおいて理解されないかまたは利用が制限されている場合があるためである。
【0087】
無線ネットワークでは、物理層およびデータリンク層は、特定のサービスの提供の際の無線チャネルの動的変動に対して専用に設計されている。これは動的変動がずっと小さい有線ネットワークとは対照的である。物理層は、伝送パワー(伝送パワー制御を通じて)、チャネル推定、同期、信号形成、変調および信号検出(信号処理を通じて)を含んでいる事項を取扱い、一方、データリンク層は、無線リソース割り当て(マルチユーザ・スケジューリングまたは行列作り)と誤り制御(チャネル符号化、通常は前方誤り訂正符号化(FEC)と自動再送要求(ARQ)の組み合わせによる)を担っている。これら2つの層は、共に無線の性質の固有の特性に密接に関係しているので、それらを一緒に検討することが有用である。以下において、これらの組み合わせ(物理層+データリンク層)を無線リンク層と呼ぶことにする。無線リンク層には多くの事項が存在し、これらの事項は互いに関連し合っているので、パラメータ・アブストラクションが必要である。より具体的には、無線リンク層固有のパラメータrij(例えば、変調文字、符号レート、放送時間、伝送パワー、コヒーレンス時間)のタプルri=(ri1,ri2,...)の集合(セット)R={r1,r2,...}を定義する。これらの無線リンク固有のパラメータは、可変的である場合があるので、集合Rはそれらの値の全ての可能な組み合わせを含み、各タプルriは1つの可能な組み合わせを表している。
【0088】
パラメータ・アブストラクションのプロセスを定式化するため、抽出されたパラメータr~ijのタプルr~i=(r~i1,r~i2,...)の集合R~={r~1,r~2,...}を定義する。集合Rおよび集合R~の関係は、ドメインRおよびコドメインR~の間の写像を表す次の関係式により設定されている。
G⊆R×R~
ここで記号×は直積を表す。Gは、ドメインRおよびコドメインR~の間の写像を定義している(直積空間R×R~の)部分集合(サブセット)である。この写像プロセスを無線リンク層パラメータ・アブストラクションと呼ぶこととする。ユーザが1人のシナリオでは、例えば、4つの主要パラメータを抽出することできる。それらは、伝送データレートd、伝送パケット誤り率e、データパケットサイズs、およびチャネル・コヒーレンス時間tである。これは、抽出されたパラメータのタプルr~i=(di,ei,si,ti)をもたらす。ユーザがK人のシナリオでは、各ユーザのパラメータ・アブストラクションを拡張することができる。パラメータ・タプルr~iは4K個のパラメータr~i=(di(1),ei(1),si(1),ti(1),...,di(K),ei(K),si(K),ti(K))を含んでいる。一群の4個のパラメータは1人のユーザに属している。
【0089】
伝送データレートdは、変調スキーム、チャネル符号化、およびマルチユーザ・スケジューリングによって左右される。伝送パケット誤り率eは、伝送パワー、チャネル推定、信号検出、変調スキーム、チャネル符号化、現在のユーザの位置などによって左右される。ユーザのチャネル・コヒーレンス時間tは、ユーザ速度とその周囲の環境に関係しているが、データパケットサイズsは、通常、無線システムの規格によって規定されている。これらの相互関係により、関係Gが規定される。代わりに、伝送パケット誤り率eおよびチャネル・コヒーレンス時間tを2状態のギルバート−エリオット・モデル(two−state Gilbert−Elliott model)の2つのパラメータ(これらは1つの状態から別の状態への遷移確率(pおよびq)である)へ変換することが可能である。変換は次式で与えられる。
【数1】
および
【数2】
ここでpは良い状態から悪い状態への遷移確率であり、qは悪い状態から良い状態への遷移確率である。
【0090】
こうして、抽出されたパラメータのタプルはr~i=(di(1),pi(1),si(1),qi(1),...,di(K),pi(K),si(K),qi(K))となる。この変換の1つの利点は、結果として現れるr~iがプロトコル・スタックにおける高位層にとってより包括的であるという点にある。
【0091】
アプリケーション層は、メディアデータが伝送のため圧縮され、パケット化され、スケジュールされる層である。クロスレイヤ最適化のために抽出される主要パラメータは、圧縮されたソースデータの特性に関係している。圧縮されたソースデータの特性は、アプリケーションまたはサービスに依存していることがあるので、圧縮されたソースデータの特性は、これらの主要なパラメータがアプリケーション又はサービスの種類によって決まることを意味している。形式的に記述するため、アプリケーション層固有のパラメータa~ijのタプルa~i=(a~i1,a~i2,...)の集合(セット)A={a1,a2,...}を定義する。これらのアプリケーション層固有のパラメータは、可変的な場合があるので、集合はこれらの値の全ての組み合わせを含み、各タプルは1つの可能な組み合わせを表している。ここで、アブストラクトされたパラメータa~ijのタプルa~i=(a~i1,a~i2,...)の集合A~={a~1,a~2,...}を定義する。集合Aと集合A~の関係はドメインAおよびコドメインA~の間の写像を表す次の関係式によって設定されている。
H⊆A×A~
ここで、この写像プロセスをアプリケーション層パラメータ・アブストラクションと呼ぶ。以下において、我々はストリーミングビデオ・サービスを想定している。このサービスのアブストラクトされたパラメータは、ソースデータレートと、毎秒フレーム数(またはピクチャ数)と、各フレーム(またはピクチャ)のサイズ(バイト単位)と、最大遅延時間とを含んでいる。オプティマイザにとって他の重要な情報は、歪みレート関数(符号化歪み)と特定の損失フレーム(またはピクチャ)の歪みプロファイルである(図9参照)。図9には、3つの異なるビデオ(動画)に対する損失フレームの歪みプロファイルと符号化歪みの一例を示している。ここでは各ビデオは、15フレームのGOPから構成され、それは毎秒30フレームのフレームレートにおいて0.5秒に相当する。ビデオシーケンスは、平均データレート100kbpsで符号化されている。各GOPは、独立して復号可能なイントラフレームで始まるようになっている。続く14フレームは、インターフレームであり、それらは同一のGOPの全ての前のフレームが誤りなく復号された場合にのみ、成功裏に復号することができる。歪みは、表示されているビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間で測られる平均二乗再現誤差(MSE)で定量化される。図9の指数は、特定のフレームの損失を示している。誤り補正方針の一部として、GOPの全ての後続フレームが復号可能ではなく、そのときは復号されていないフレームの代わりに直前に正しく復号されたフレームが表示されることが想定される。また、指数16は、全てのフレームが正しく受信されたときにMSEを与えることに注意されたい。また、MSEは、量子化誤りによる符号化歪みと呼んでいる。
【0092】
アプリケーション層および無線リンク層の両方から抽出されたパラメータの集合R~およびA~は、クロスレイヤ・オプティマイザへの入力を形成している。この2つの入力の集合からの抽出されたパラメータの、タプルの任意の組み合わせが有効であるので、以下のようなクロスレイヤ・パラメータの集合を定義することは都合がよい。
X~=R~×A~
これは2つの入力の集合をオプティマイザの1つの入力の集合に組み合わせるものである。集合X~={x~1,x~2,...}はタプルx~n=(r~i,a~j)および|X~|=|R~|・|A~|から構成されている。
【0093】
このように導入された表現形式を用いて、クロスレイヤ・オプティマイザΩの作用は以下のように記述される。
Ω:X~→X∧⊂X~
オプティマイザは、入力の集合X~からオプティマイザの出力である真の空でない部分集合X∧を選択するようになっている。
【0094】
以下において、我々は|X∧|=1、すなわちオプティマイザの出力は単一のタプルでありX∧=x~opt∈X~を想定している。決定すなわちクロスレイヤ・オプティマイザの出力x~optは特定の目的関数
Γ:X~→R
に関して作られる。ここでRは実数集合である。このとき、オプティマイザの出力は以下のように表すことができる。
【数3】
特定の目的関数Γの選択はシステム設計の目標に依存しており、そしてオプティマイザの出力(または決定)は、種々の目的関数に対して異なっている。ストリーミングビデオの実施例では、単一ユーザのシナリオにおける1つの可能な目的関数は、表示されたビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間のMSEである。マルチユーザの状況では、MSEを別個に拡張することが可能である。例えば、目的関数は、全てのユーザのMSEの総和とすることが可能である。すなわち、このことは次式を意味する。
【数4】
ここでMSEk(x~)は、クロスレイヤ・パラメータ・タプルx~∈X~に対するユーザkのMSEである。この目的関数は、全てのユーザにわたる平均のパフォーマンスを最適化している。性能が最悪のユーザ性能を最適にする目的関数の他の共通の定義には、下記が含まれる。
【数5】
これは全てのユーザのピークSNR(信号対ノイズ比)の総和を最大化することに等しい。
【0095】
クロスレイヤ・オプティマイザの出力(または決定)x~opt=(r~opt,a~opt)が得られると、決定r~optおよびa~optは、無線リンク層およびアプリケーション層にそれぞれ返送されなければならない。この際、パラメータ・アブストラクトのプロセスは、逆に実行されなければならず、抽出されたパラメータr~optおよびa~optは、層固有のパラメータropt∈R、aopt∈Aに逆変換される。この逆変換は次式で与えられる。
ropt∈{r|(r,r~opt)∈G}
および
aopt∈{a|(a,a~opt)∈H}
{r|(r,r~opt)∈G}または{a|(a,a~opt)∈H}が2つ以上の要素を含んでいる場合、特定の要素の選択は対応する層において、個別に対応する層で行うことができる。
【0096】
以下の記述において、我々は本発明の同時最適化のパフォーマンスを評価するためにサンプル・シミュレーション結果を提供している。この節全体を通して、我々は3人のユーザ(ユーザ1、ユーザ2,ユーザ3)がそれぞれ異なるビデオをリクエストする状況を想定している。ユーザ1、ユーザ2、およびユーザ3は、それぞれ自動車電話(CP)、現場監督(FM)、母と娘(MD)のビデオをリクエストする。パフォーマンスの尺度として信号対雑音比(PSNR)を選択する。PSNRはPSNR=10log10(2552/MSE)で定義される。PSNRが大きくなるほど、クライアントまたはユーザにおけるオリジナルのビデオシーケンスと表示されたビデオシーケンスとの間で計算されるMSEは小さくなる。それゆえ、PSNRが大きくなるほどパフォーマンスが良くなる。一例として、最悪ケースのユーザのパフォーマンスを最大化する目的関数を使用している。
【0097】
クロスレイヤ・オプティマイザは、ユーザの間でMSEの最大値を最小化する(あるいは同じことだがPSNRの最小値を最大化する)パラメータ・タプルを選択するようになっている。シミュレーションにおいて、無線リンク層におけるデータパケットサイズは54バイトに等しいと想定している。このサイズは、IEEE802.11a規格またはHiperLAN2規格の指定パケットサイズと同じである。チャネル・コヒーレンス時間は、3人のユーザ全てに対して50msであると想定している。これは(搬送波周波数5GHzに対して)ほぼ歩行者速度に相当する。伝送データレートは、変調スキーム、チャネル符号化、およびマルチユーザ・スケジューリングに左右されるので、2つの異なる変調(BPSKおよびQPSK)が想定されている。さらに、図6aに示しているように、時分割多重ベースのマルチユーザ・スケジューリングにおいて7つのケースの時間割り振りが存在すると想定されている。ユーザの伝送データレートは、BPSKが使用されているときには100kbpsに等しいと想定され、全伝送時間の2/9がそれに割り当てられる。一方、QPSKが使用され、全伝送時間の4/9が割り当てられる場合、ユーザは400kbpsと同程度の大きさの伝送データ伝送速度を有することができる。他方、伝送誤り率は、伝送データレート、平均SNRおよびチャネル・コードの誤り訂正能力に依存している。通常、チャネル・コードのパフォーマンスは、所与の受信SNRに対する(チャネル復号後の)残差誤り率に関して評価される。シミュレーションでは、符号レート1/2の畳み込み符号と54バイトのデータパケットサイズを想定している。図10に残差パケット誤り率をSNRの関数として示している。しかしながら、無線リンクでは、受信SNRは一定ではないが、ユーザの移動によって引き起こされる高速フェージングのせいで平均値の周りで不安定となる。こうして、受信SNRは、物理チャネルの伝搬特性によって決まる(例えば、レイリー分布、ライス分布といった)特定の確率分布のランダム変数としてモデリングできる。フェージング無線リンクにおける残差パケット誤り率は、このパケット誤り率を(例えば図10から)フェージングの統計値で平均することによって計算されている。レイリー・フェージングを想定すると、結果として生じる平均パケット誤り率は、平均SNRの関数として図11に与えられている。この結果として生じる平均パケット誤り率は、シミュレーションではパラメータeとして使用されている。無線リンクで一般的に観察されているユーザ位置に依存する経路損失およびシャドウイングは、各ユーザに一様に1から100(0dBから20dB)の範囲内で、長期平均のSNRをランダムかつ独立に選ぶことで考慮に入れられている。アプリケーション層では、ビデオはGOP当たり15フレーム(0.5秒当たり)のH.264ビデオ圧縮規格を使用して符号化されている。ソースレートの2つの異なる値(100kbpsおよび200kbps)についても考慮に入れられている。これは、ビデオが2つの異なる目標レートで事前に符号化されており、両方のバージョンがストリーミングサーバに保存されていることを意味している。GOPの始まりに1つのソースストリームからその他のソースストリームに切り替えることができる。各GOPにおいて、最初のフレームはIフレームであり、後続する14個のフレームはPフレームである。3つの要求されたビデオに対して、特定の損失フレームの測定された歪みプロファイル及び符号化歪みを使用している。図9は、ソース転送速度が100kbpsのGOPに対するMSEによる歪みプロファイルの一例を示している。MSEは、表示されたビデオシーケンスとオリジナルのビデオシーケンスとの間で測られ、GOP全体で平均される。図9において、指数は特定のフレームの損失を示している。GOPの全ての後続フレームは、復号不能になり、直前の正確に復号されたフレームが、復号されていないフレームの代わりに表示されると想定されている。指数16は、全てのフレームが正しく受信されたときのMSE(これは符号化歪みである)を与えることに注意されたい。また、Pフレームの復号の成功は同一のGOPの全ての前のフレームの誤りのない受信に依存しているので、GOPの第1のフレームの損失は最大の歪みをもたらすのに対してGOPの最後のフレームの損失はほとんど歪みが発生しないということにも注意されたい。さらに、各ビデオフレーム(またはピクチャ)は、最大サイズ54バイトでパケット化され、各パケットは、1つのフレームからのデータを含んでいるのみである。すなわち、各フレームは、整数個のパケットにパケット化される。各フレームのサイズは、符号化段階で決定されている。これらの値は、ビットストリームおよび歪みプロファイルと一緒に保存されるようになっている。図6bに、ソースレート100kbpsにおける3つの測定対象ビデオにおけるGOPのサイズ(パケット単位)を示している。図表中、IおよびPn(n=1,2,...14)は、Iフレームおよびn番目のPフレームをそれぞれ表している。Iフレームのサイズは、Pフレームのサイズよりも遥かに大きく、Pフレームのサイズは、フレームごとに変わることがわかる。このことはビデオのコンテンツに関係している。ARQのない動作モード(フォワード・モード)およびARQのある動作モード(ARQモード)が両方共詳細に調べられている。あらゆるGOPを単位と見なし、各GOPは0.5秒の時間内に伝送されなければならないと想定している。フォワード・モードでは、クライアントからの確認通知が一切利用できず、伝送データレートがソースデータレートよりも大きいときには特定のクライアントに対するあらゆるGOPのビデオフレームが繰り返し伝送されることを想定している。例えば、伝送データレートがソースデータレートの2倍である場合には、あらゆるGOPは2回伝送されるようになっている。伝送データレートがソースデータレートの1.5倍である場合、GOPは一回だけ伝送された後、そのGOPの0.5秒の間隔が終わるまで、第1のIフレーム、第1のPフレーム、第2のPフレームなどが再送されるようになっている。他方、ARQモードでは、伝送されたパケットのクライアントから即時確認通知が利用可能であり、特定のクライアントのあらゆるGOPのデータパケットは、GOPのデータパケットが時間順に受信されるような形で再送されることを想定している。すなわち、新たなパケットを伝送する前に、GOPのその前のパケットが正しく受信されることが保証されている。図12から14に3つのシナリオ(シナリオ1、2および3)のシミュレーション結果を示している。シナリオ1において、無線リンク層ではBPSK変調のみが使用され、アプリケーション層では100kbpsのソースレートのみが利用可能なように制限している。それゆえ、このシナリオにおいて唯一の、一定の抽出されたパラメータ・タプル(3人のユーザ全てに対して100kbps)がアプリケーション層によって提供される一方、無線リンク層は7個の抽出されたパラメータ・タプルを提供し、これにより図6aに示している時間割り振りの7つケースが結果としてもたらされるようになっている。クロスレイヤ・オプティマイザは、目的関数が最適化されるように入力パラメータ・タプルの7つの組み合わせから1つを選択するようになっている。MSEは、既に言及した2つの要素、すなわち高速フェージング並びにユーザの位置に依存している経路損失およびシャドウイング、によって制御されているランダム変数である。一般に、高速フェージングは、経路損失およびシャドウイングよりもずっと小さい時間スケールで起こっている。本明細書では、特定のユーザの位置に対して、又は言い換えると特定の長期のSNRに対して高速フェージングに関するMSEの予想値を取ることによって、高速フェージングに対して平均されたMSEを評価している。この値に基づき、クロスレイヤ・オプティマイザはその決定を行うようになっている。ユーザの位置(ポジション)のアンサンブルに関してその統計的特性も調べている。それゆえ、この平均MSEの累積分布関数(CDF)が両方のモード(フォワード・モードおよびARQモード)のパフォーマンスを示すために選ばれている。本発明の同時最適化を含んでいるシステム(w/JO)におけるパフォーマンスが最悪のユーザは、同時最適化を含んでいないシステム(w/oJO)におけるパフォーマンスが最悪のユーザと比較される。同時最適化を含んでいないシステムは、同じ量の伝送時間を全てのユーザに割り当て(すなわち図6aにおけるケース1)、BPSK変調を使用し、その間、ソースデータレートは100kbpsに固定されることが想定されている。図12から、パフォーマンスが最悪のユーザのPSNRが同時最適化を含んでいるシステム(w/JO)において大きく改善することがわかる。例えば、パフォーマンスが最悪のユーザのPSNRがフォワード・モードのシステムw/JOにおいて30dBを超えるチャンスは約1−40%=60%であり、これはシステムw/oJOと比べると2dB改善している。図13および図14において、シナリオ2およびシナリオ3にも同じような改善傾向が見られる。シナリオ2では、シナリオ1と同じアブストラクトされたパラメータのタプルがアプリケーション層で想定されているが、無線リンク層は、BPSKでの時間割り振りの7つのケースおよびQPSKでの時間割り振りの別の7つのケースの結果生じる14個(タプル個数)の抽出されたパラメータ・タプルを提供している。また図12に示しているように同時最適化のない同じシステム(w/oJO)も比較目的のため提供されている。シナリオ3では、3人のユーザの各々に対して2つの異なるソースレート100kbpsおよび200kbpsがアプリケーション層によって提供される(23=8個のパラメータ・タプルが結果として生じる)ことが想定されている。また、シナリオ2と同じアブストラクトされたパラメータ・タプルが無線リンク層によって提供されている。パフォーマンスは、より多くの抽出されたパラメータ・タプルが与えられたときに、より多くの自由度が得られることから改善するようになっている。このことは図9において、より明確に観察され、そこでは調査対象の3つのシナリオのパフォーマンスの改善が見られている。ここで、PSNRはシステムw/JOおよびシステムw/oJOにおけるパフォーマンスの最も悪いユーザのPSNRの差異として定義されている。図9の左側を詳しく観察すると、フォワード・モードではシナリオ2のパフォーマンス改善量がシナリオ1の改善量よりもずっと大きく、それに対し、シナリオ3のパフォーマンス改善量はシナリオ2のものよりもほんのわずかだけ大きいことがはっきりわかる。これは、無線リンク層によって与えられる(QPSKを使用することによる)より高い伝送データレートの選択がこのアプリケーションモードでは好ましく、オプティマイザは、それを高い頻度で選ぶことを示している。これとは対照的に、アプリケーション層によって与えられているより高いソースレート(200kbps)の選択は、このモードではあまり好ましくなく、オプティマイザは、それを滅多に選ぶことはないようになっている。他方、より高いソースレートのこの選択は、ARQモードでは好ましく、このことは図の右側のグラフからわかる。そこではシナリオ3のパフォーマンス改善量は、シナリオ2のものよりもかなり大きい。それゆえ、抽出されたパラメータ・タプルの適切なセットは、複雑さが少ない状態で最適化すると同時に大きなパフォーマンス改善を実現するのに重要である。また、個別の層ごとに有効な全ての自由度を特定し、クロスレイヤ設計において重要な自由度を考察することが重要であることを、実験は示している。
【0098】
本発明は、ビデオストリーミング・サービスを提供する無線システムにおいて、アプリケーション層および無線リンク層を同時に最適化するためのアーキテクチャを提案している。本アーキテクチャは、3つの主要コンセプト、すなわちパラメータ・アブストラクションと、クロスレイヤの最適化と、決定情報配信とに基づいている。予備的な研究から、本発明のアーキテクチャは、パフォーマンスを改善する可能な方法を提供しており、従って無線マルチメディア通信におけて将来の課題に対処する助けとなり得ることが明らかとなっている。アプリケーション層および無線リンク層の少数の自由度を考慮するときでさえ、同時最適化によってストリーミングビデオ利用におけるユーザが感受するクオリティの大きな改善を得るようになっている。
【0099】
本発明の方法の特定の実施要件に応じて、本発明の方法はハードウェアまたはソフトウェアの形態で実施が可能である。本発明の実施は、本発明の方法が実行されるようにプログラム制御可能なコンピュータシステムと共に動作するようになっているデジタル記憶媒体、特に電子的に読み取り可能な制御信号をその上に有しているディスクまたはCDを使用して行うことができる。従って、一般に、本発明は、コンピュータ上で走らせたときに本発明の方法を実行するプログラム・コードが機械読み取り可能な媒体に記憶されたコンピュータ・プログラム製品である。言い換えると、本発明の方法は、コンピュータ上で走らせたときに本発明の方法を実行するためのプログラム・コードを有しているコンピュータ・プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1の実施形態による複数の通信層の動作を制御する装置のブロック図である。
【図2】本発明の更なる実施形態による複数の通信層の動作を制御する装置の態様を示している図である。
【図3】マルチユーザ・スケジューリングのシナリオにおける本発明の伝送時間割り振りを実証するための図である。
【図4】プロトコル・スタックの態様を示している図である。
【図5】クロスレイヤ・アプローチを実証するための図である。
【図6a】時間割り振りが異なるマルチユーザ・スケジューリングを示している図である。
【図6b】3つの測定対象ビデオにおけるGOPのサイズ(パケット数)を示している図である。
【図7】考察対象の通信システムのブロック図である。
【図8】本発明に係る同時的層最適化のためのシステム・アーキテクチャを示している図である。
【図9】3つの測定対象ビデオにおけるGOPに対するMSEを示している図である。
【図10】信号対ノイズ比(SNR)に対するフレーム誤り率を示している図である。
【図11】シナリオ1の性能比較を示している図である。
【図12】シナリオ2の性能比較を示している図である。
【図13】シナリオ3の性能比較を示している図である。
【図14】3つの調査対象シナリオの性能改善比較を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層型通信システムの複数の通信層の動作を制御する装置であって、
前記複数の通信層のうちの第1の通信層の動作モードは第1のセットのパラメータによって決まり、前記複数の通信層のうちの第2の通信層の動作モードは第2のセットのパラメータによって決まり、
前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)と、
前記第1および第2の通信層の現在のステージを決定するために前記第1の通信層の前記第1のセットのパラメータと前記第2の通信層の前記第2のセットのパラメータとを抽出するためのエクストラクタ(105)と、
前記第1のセットのパラメータに依存している第1の通信層の特性をモデリングしている第1のアブストラクション・モデルと第2のセットのパラメータに依存している第2の通信層の特性をモデリングしている第2のアブストラクション・モデルとを提供するための手段(137)と、
前記第1のアブストラクション・モデルと、前記第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティと、最適化の目標とに基づいて、前記第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するための手段(115)と、
前記最適化された第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に提供し、前記最適化された第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に提供するための手段(137)と
を備えている装置。
【請求項2】
前記階層型通信システムの前記複数の通信層は、プロトコル層であり、前記第2の通信層は、前記通信チャネルを通して情報の伝送を管理するとともにその通信チャネルのプロパティを抽出するように動作し、前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段は、前記通信チャネルのプロパティを受け取るために前記第2の通信層に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の通信層は物理層で構成されており、前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)は、前記物理層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)は、前記通信チャネルのプロパティとして、ビット誤り率または/および該ビット誤り率を伴うチャネル・データレートまたは/および伝送遅延または/および該ビット誤り率を伴う伝送パワーまたは/およびチャネル・コヒーレンス時間または/およびチャネル・コヒーレンス帯域幅を提供するように動作する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの状態の間の遷移とを有している第1の状態図を備えており、第2のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの状態の間の遷移とを有している第2の状態図を備えており、前記第1の状態図は、前記第1の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングしており、前記第2の状態図は前記第2の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングしており、最適化された前記第1のセットのパラメータおよび前記最適化された前記第2のセットのパラメータを決定するための手段は、前記第1セットのパラメータを前記第1のアブストラクション・モデルに挿入し、前記第2セットのパラメータを前記第2のアブストラクション・モデルに挿入するとともに、チャネル・プロパティに依存した前記第1のアブストラクション・モデルと前記第2のアブストラクション・モデルとを同時にエミュレートすることにより、前記第1の最適化されたセットのパラメータと前記第2の最適化されたパラメータとを決定して最適化の目標を達成するように動作する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、最適化の目標が前記第1のセットのパラメータと前記第2のセットのパラメータとを使用して達成できないときに、前記最適化された第1のセットのパラメータまたは/および前記最適化された第2のセットのパラメータが将来使用されることを合図するために、チャネル・プロパティに依存した前記第1のセットのパラメータを使用する前記第1のアブストラクション・モデルとチャネル・プロパティに依存した前記第2のセットのパラメータを使用する前記第2のアブストラクション・モデルとを解析するためのアナライザを備えている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記最適化の目標は伝送品質の最適化を含んでおり、前記第1のセットのパラメータおよび前記第2のセットのパラメータが初期パラメータであるとき、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1のアブストラクション・モデルを使用して前記第1の通信層の振る舞いおよび前記第2のアブストラクション・モデルを使用して前記第2の通信層の振る舞いをエミュレートすることにより、前記最適化された第1のセットのパラメータと前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の通信層は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を提供するために伝送される情報を符号化するように動作するとともに、前記第1の通信層は、ビット誤り率を伴うデータレートを有している伝送信号を取得するために前記第1情報信号を符号化するように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を取得するために、情報を符号化するために使用される前記最適化された第1のセットのパラメータと、前記情報レートをサポートしているデータレートを有している伝送信号を取得するために、前記第1情報信号を符号化するために使用される前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
伝送される情報はマルチユーザ・シナリオにおいて第1のユーザに関連している第1の情報と第2のユーザに関連している第2の情報とを含んでおり、最適化の目標は、前記第1の情報および前記第2の情報に対する最適化された伝送品質であり、前記第1の通信層は、第1の情報信号および第2の情報信号を取得するために前記第1の情報を符号化するように動作し、前記第2の通信層は、前記通信チャネルを通じて伝送される複合信号を取得するために前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を符号化するように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の情報および前記第2の情報の伝送品質を最適化するため、前記第1の情報および前記第2の情報を符号化するために前記第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、前記第1の情報および前記第2の情報を符号化するために前記第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の通信層は、前記第1の情報信号が第1の時間フレーム内で伝送され、前記第2の情報信号が第2の時間フレーム内で伝送されるように、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号をスケジュールするようになっており、前記パラメータを決定するための手段(115)は、第1の歪みを伴う第1の情報レートを有している第1の情報信号を取得し、第2の歪みを伴う第2の情報レートを有している第2の情報信号を取得するために、前記最適化された第1のセットのパラメータを決定するとともに、前記第1の情報レートおよび前記第2の情報レートをサポートするデータレートを有している前記複合信号を取得するために、前記第2のセットのパラメータを決定するように動作する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のユーザに関連している前記第1の情報は、第1の副情報および第2の副情報を含んでおり、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、前記第1の副情報および前記第2の副情報を選択的に符号化して前記第1の副情報および前記第2の副情報を含んでいる前記第1の情報信号を取得するための前記第1の通信層によって使用される前記第1の最適化されたセットのパラメータを決定するように動作する、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の副情報および前記第2の副情報が前記第1の情報信号内の異なる位置に配置されるように、前記第1の情報信号内において前記第1の副情報および前記第2の副情報をスケジュールするために、前記最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、第1のセットの係数によって決まる前記第1の通信層の現在の状況と第2のセットの係数によって決まる前記第2の通信層の現在の状況とをモニタしてステータス情報を提供するように動作する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記ステータス情報に基づいて、最適化の目標を達成するためにどの最適化されたセットのパラメータが決定されるべきかを決定するように動作する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
最適化の目標はマルチユーザ・シナリオにおける伝送品質の最適化を含んでおり、伝送される情報は前記第1のユーザに関連している前記第1の情報と該第1のユーザに関連している前記第2の情報と前記第2のユーザに関連している前記第3の情報と該第2のユーザに関連している前記第4の情報とを含んでおり、前記第1の通信層は前記第1のユーザに関連している前記第1の情報信号を取得するために前記第1の情報および前記第2の情報をスケジュールするように動作するとともに、前記第1の通信層は前記第2のユーザに関連している前記第2の情報信号を取得するために前記第3の情報および前記第4の情報をスケジュールするように動作し、前記第2の通信層はスケジュールされたマルチユーザ・ストリームを取得するために前記第1の情報信号および前記第2の情報信号をスケジュールするように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を提供するために前記第1の通信層によって使用される前記最適化された第1のセットのパラメータと、前記スケジュールされたマルチユーザ・ストリームを提供するために前記第2の通信層によって使用される前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のアブストラクション・モデルおよび前記第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段(137)は、複数の通信層に関する複数のアブストラクション・モデルを提供するように動作する、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記パラメータを提供するための手段(129)は、前記第1の通信層および前記第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記第2の通信層は、変調の機能を有している物理層を備えており、前記第2のセットのパラメータは変調スキームを決める1サブセットの変調パラメータを含んでおり、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、最適化の目標を達成するために更なる1サブセットの変調パラメータを決定するように動作する、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の通信層は、前方誤り符号化スキームを決める1サブセットの符号化パラメータを使用する前方誤り符号化の機能を有しているデータリンク層を備えており、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、最適化の目標を達成するためにサブセットの符号化パラメータを決定するように動作する、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
伝送される情報を提供するための情報源と、
複数のプロトコル層を制御する請求項1から19のいずれか一項に記載された装置と、
前記プロトコル層に従って伝送される情報を処理するためのプロセッサと
を備えている、複数のプロトコル層を備えている伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための通信装置。
【請求項21】
受信信号は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版であり、前記伝送信号は、伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでおり、前記伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、前記第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータは、第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングするためのアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定され、前記受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層と第2の受信プロトコル層とを備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは第1のセットの受信パラメータによって決まり、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは第2のセットの受信パラメータによって決まり、
前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータを示しているパラメータ情報を受信するための手段と、
前記第1のセットの伝送パラメータに対応している前記第1のセットの受信パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータに対応している前記第2のセットの受信パラメータを決定するための手段と、
前記第1のセットの受信パラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記第2のセットの受信パラメータを前記第2の通信層に提供するための手段と
を備えている、受信プロトコルに従って受信信号を処理するための通信装置。
【請求項22】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層型通信システムの複数の通信層の動作を制御する方法であって、
前記複数の通信層のうちの第1の通信層の動作モードは第1のセットのパラメータによって決まり、前記複数の通信層のうちの第2の通信層の動作モードは第2のセットのパラメータによって決まり、
前記通信チャネルのプロパティを提供するステップと、
前記第1および第2の通信層の現在の状況を決定するために前記第1の通信層の第1のセットのパラメータと前記第2の通信層の第2のセットのパラメータとを取り出すステップと、
前記第1のセットのパラメータに依存している前記第1の通信層の特性をモデリングする第1のアブストラクション・モデルと前記第2のセットのパラメータに依存している前記第2の通信層の特性をモデリングする第2のアブストラクション・モデルとを提供するステップと、
前記第1のアブストラクション・モデルと、前記第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティと、最適化の目標とに基づいて第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するステップと、
前記最適化された第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記最適化された第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に提供するステップと
を備えている方法。
【請求項23】
情報を提供するステップと、
請求項22に記載された方法に基づいて前記複数のプロトコル層を制御するステップと、
前記情報を前記プロトコル層に従って処理するステップと
を含んでいる、複数のプロトコル層から成る伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための方法。
【請求項24】
受信信号は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版であり、前記伝送信号は、伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでおり、前記伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、前記第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータは、第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングするためのアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定され、前記受信プロトコルは、前記第1の受信プロトコル層と前記第2の受信プロトコル層とを備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決まり、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決まり、
前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータを示しているパラメータ情報を受信するステップと、
前記第1のセットの伝送パラメータに対応している前記第1のセットの受信パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータに対応している前記第2のセットの受信パラメータを決定するステップと、
前記第1のセットの受信パラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記第2のセットの受信パラメータを前記第2の通信層に提供するステップと
を備えている、受信プロトコルに従って受信信号を処理するための方法。
【請求項25】
コンピュータ上で実行するときに請求項22または23または24に記載された方法を実行するためのプログラム・コードを有しているコンピュータ・プログラム。
【請求項1】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層型通信システムの複数の通信層の動作を制御する装置であって、
前記複数の通信層のうちの第1の通信層の動作モードは第1のセットのパラメータによって決まり、前記複数の通信層のうちの第2の通信層の動作モードは第2のセットのパラメータによって決まり、
前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)と、
前記第1および第2の通信層の現在のステージを決定するために前記第1の通信層の前記第1のセットのパラメータと前記第2の通信層の前記第2のセットのパラメータとを抽出するためのエクストラクタ(105)と、
前記第1のセットのパラメータに依存している第1の通信層の特性をモデリングしている第1のアブストラクション・モデルと第2のセットのパラメータに依存している第2の通信層の特性をモデリングしている第2のアブストラクション・モデルとを提供するための手段(137)と、
前記第1のアブストラクション・モデルと、前記第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティと、最適化の目標とに基づいて、前記第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するための手段(115)と、
前記最適化された第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に提供し、前記最適化された第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に提供するための手段(137)と
を備えている装置。
【請求項2】
前記階層型通信システムの前記複数の通信層は、プロトコル層であり、前記第2の通信層は、前記通信チャネルを通して情報の伝送を管理するとともにその通信チャネルのプロパティを抽出するように動作し、前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段は、前記通信チャネルのプロパティを受け取るために前記第2の通信層に接続されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の通信層は物理層で構成されており、前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)は、前記物理層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記通信チャネルのプロパティを提供するための手段(135)は、前記通信チャネルのプロパティとして、ビット誤り率または/および該ビット誤り率を伴うチャネル・データレートまたは/および伝送遅延または/および該ビット誤り率を伴う伝送パワーまたは/およびチャネル・コヒーレンス時間または/およびチャネル・コヒーレンス帯域幅を提供するように動作する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの状態の間の遷移とを有している第1の状態図を備えており、第2のアブストラクション・モデルは、或る状態と、或る状態から更に進んだ状態と、それらの状態の間の遷移とを有している第2の状態図を備えており、前記第1の状態図は、前記第1の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングしており、前記第2の状態図は前記第2の通信層のパラメータ依存性の振る舞いをモデリングしており、最適化された前記第1のセットのパラメータおよび前記最適化された前記第2のセットのパラメータを決定するための手段は、前記第1セットのパラメータを前記第1のアブストラクション・モデルに挿入し、前記第2セットのパラメータを前記第2のアブストラクション・モデルに挿入するとともに、チャネル・プロパティに依存した前記第1のアブストラクション・モデルと前記第2のアブストラクション・モデルとを同時にエミュレートすることにより、前記第1の最適化されたセットのパラメータと前記第2の最適化されたパラメータとを決定して最適化の目標を達成するように動作する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、最適化の目標が前記第1のセットのパラメータと前記第2のセットのパラメータとを使用して達成できないときに、前記最適化された第1のセットのパラメータまたは/および前記最適化された第2のセットのパラメータが将来使用されることを合図するために、チャネル・プロパティに依存した前記第1のセットのパラメータを使用する前記第1のアブストラクション・モデルとチャネル・プロパティに依存した前記第2のセットのパラメータを使用する前記第2のアブストラクション・モデルとを解析するためのアナライザを備えている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記最適化の目標は伝送品質の最適化を含んでおり、前記第1のセットのパラメータおよび前記第2のセットのパラメータが初期パラメータであるとき、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1のアブストラクション・モデルを使用して前記第1の通信層の振る舞いおよび前記第2のアブストラクション・モデルを使用して前記第2の通信層の振る舞いをエミュレートすることにより、前記最適化された第1のセットのパラメータと前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の通信層は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を提供するために伝送される情報を符号化するように動作するとともに、前記第1の通信層は、ビット誤り率を伴うデータレートを有している伝送信号を取得するために前記第1情報信号を符号化するように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、歪みを伴う情報レートを有している情報信号を取得するために、情報を符号化するために使用される前記最適化された第1のセットのパラメータと、前記情報レートをサポートしているデータレートを有している伝送信号を取得するために、前記第1情報信号を符号化するために使用される前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
伝送される情報はマルチユーザ・シナリオにおいて第1のユーザに関連している第1の情報と第2のユーザに関連している第2の情報とを含んでおり、最適化の目標は、前記第1の情報および前記第2の情報に対する最適化された伝送品質であり、前記第1の通信層は、第1の情報信号および第2の情報信号を取得するために前記第1の情報を符号化するように動作し、前記第2の通信層は、前記通信チャネルを通じて伝送される複合信号を取得するために前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を符号化するように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の情報および前記第2の情報の伝送品質を最適化するため、前記第1の情報および前記第2の情報を符号化するために前記第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと、前記第1の情報および前記第2の情報を符号化するために前記第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2の通信層は、前記第1の情報信号が第1の時間フレーム内で伝送され、前記第2の情報信号が第2の時間フレーム内で伝送されるように、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号をスケジュールするようになっており、前記パラメータを決定するための手段(115)は、第1の歪みを伴う第1の情報レートを有している第1の情報信号を取得し、第2の歪みを伴う第2の情報レートを有している第2の情報信号を取得するために、前記最適化された第1のセットのパラメータを決定するとともに、前記第1の情報レートおよび前記第2の情報レートをサポートするデータレートを有している前記複合信号を取得するために、前記第2のセットのパラメータを決定するように動作する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1のユーザに関連している前記第1の情報は、第1の副情報および第2の副情報を含んでおり、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、前記第1の副情報および前記第2の副情報を選択的に符号化して前記第1の副情報および前記第2の副情報を含んでいる前記第1の情報信号を取得するための前記第1の通信層によって使用される前記第1の最適化されたセットのパラメータを決定するように動作する、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の副情報および前記第2の副情報が前記第1の情報信号内の異なる位置に配置されるように、前記第1の情報信号内において前記第1の副情報および前記第2の副情報をスケジュールするために、前記最適化された第1のセットのパラメータを決定するように動作する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、第1のセットの係数によって決まる前記第1の通信層の現在の状況と第2のセットの係数によって決まる前記第2の通信層の現在の状況とをモニタしてステータス情報を提供するように動作する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記ステータス情報に基づいて、最適化の目標を達成するためにどの最適化されたセットのパラメータが決定されるべきかを決定するように動作する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
最適化の目標はマルチユーザ・シナリオにおける伝送品質の最適化を含んでおり、伝送される情報は前記第1のユーザに関連している前記第1の情報と該第1のユーザに関連している前記第2の情報と前記第2のユーザに関連している前記第3の情報と該第2のユーザに関連している前記第4の情報とを含んでおり、前記第1の通信層は前記第1のユーザに関連している前記第1の情報信号を取得するために前記第1の情報および前記第2の情報をスケジュールするように動作するとともに、前記第1の通信層は前記第2のユーザに関連している前記第2の情報信号を取得するために前記第3の情報および前記第4の情報をスケジュールするように動作し、前記第2の通信層はスケジュールされたマルチユーザ・ストリームを取得するために前記第1の情報信号および前記第2の情報信号をスケジュールするように動作し、前記パラメータを決定するための手段(115)は、前記第1の情報信号および前記第2の情報信号を提供するために前記第1の通信層によって使用される前記最適化された第1のセットのパラメータと、前記スケジュールされたマルチユーザ・ストリームを提供するために前記第2の通信層によって使用される前記最適化された第2のセットのパラメータとを同時に決定するように動作する、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1のアブストラクション・モデルおよび前記第2のアブストラクション・モデルを提供するための手段(137)は、複数の通信層に関する複数のアブストラクション・モデルを提供するように動作する、請求項1から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記パラメータを提供するための手段(129)は、前記第1の通信層および前記第2の通信層とインタフェースで接続するためのプロトコル・インタフェースを備えている、請求項1から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記第2の通信層は、変調の機能を有している物理層を備えており、前記第2のセットのパラメータは変調スキームを決める1サブセットの変調パラメータを含んでおり、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、最適化の目標を達成するために更なる1サブセットの変調パラメータを決定するように動作する、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の通信層は、前方誤り符号化スキームを決める1サブセットの符号化パラメータを使用する前方誤り符号化の機能を有しているデータリンク層を備えており、前記パラメータを決定するための手段(115)は更に、最適化の目標を達成するためにサブセットの符号化パラメータを決定するように動作する、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
伝送される情報を提供するための情報源と、
複数のプロトコル層を制御する請求項1から19のいずれか一項に記載された装置と、
前記プロトコル層に従って伝送される情報を処理するためのプロセッサと
を備えている、複数のプロトコル層を備えている伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための通信装置。
【請求項21】
受信信号は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版であり、前記伝送信号は、伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでおり、前記伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、前記第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータは、第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングするためのアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定され、前記受信プロトコルは、第1の受信プロトコル層と第2の受信プロトコル層とを備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは第1のセットの受信パラメータによって決まり、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは第2のセットの受信パラメータによって決まり、
前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータを示しているパラメータ情報を受信するための手段と、
前記第1のセットの伝送パラメータに対応している前記第1のセットの受信パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータに対応している前記第2のセットの受信パラメータを決定するための手段と、
前記第1のセットの受信パラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記第2のセットの受信パラメータを前記第2の通信層に提供するための手段と
を備えている、受信プロトコルに従って受信信号を処理するための通信装置。
【請求項22】
通信チャネルを通じて情報を伝送する階層型通信システムの複数の通信層の動作を制御する方法であって、
前記複数の通信層のうちの第1の通信層の動作モードは第1のセットのパラメータによって決まり、前記複数の通信層のうちの第2の通信層の動作モードは第2のセットのパラメータによって決まり、
前記通信チャネルのプロパティを提供するステップと、
前記第1および第2の通信層の現在の状況を決定するために前記第1の通信層の第1のセットのパラメータと前記第2の通信層の第2のセットのパラメータとを取り出すステップと、
前記第1のセットのパラメータに依存している前記第1の通信層の特性をモデリングする第1のアブストラクション・モデルと前記第2のセットのパラメータに依存している前記第2の通信層の特性をモデリングする第2のアブストラクション・モデルとを提供するステップと、
前記第1のアブストラクション・モデルと、前記第2のアブストラクション・モデルと、チャネル・プロパティと、最適化の目標とに基づいて第1の通信層によって使用される最適化された第1のセットのパラメータと第2の通信層によって使用される最適化された第2のセットのパラメータとを決定するステップと、
前記最適化された第1のセットのパラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記最適化された第2のセットのパラメータを前記第2の通信層に提供するステップと
を備えている方法。
【請求項23】
情報を提供するステップと、
請求項22に記載された方法に基づいて前記複数のプロトコル層を制御するステップと、
前記情報を前記プロトコル層に従って処理するステップと
を含んでいる、複数のプロトコル層から成る伝送プロトコルに従って伝送される情報を処理するための方法。
【請求項24】
受信信号は、通信チャネルを通じて伝送された伝送信号の受信版であり、前記伝送信号は、伝送プロトコルに従って処理された情報を含んでおり、前記伝送プロトコルは、第1の伝送プロトコル層と第2の伝送プロトコル層とを備えており、前記第1の伝送プロトコル層の動作モードは、第1のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第2の伝送プロトコル層の動作モードは、第2のセットの伝送パラメータによって決まり、前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータは、第1の通信層および第2の通信層の振る舞いをモデリングするためのアブストラクション・モデルに基づいてペアで決定され、前記受信プロトコルは、前記第1の受信プロトコル層と前記第2の受信プロトコル層とを備えており、前記第1の受信プロトコル層の動作モードは、第1のセットの受信パラメータによって決まり、前記第2の受信プロトコル層の動作モードは、第2のセットの受信パラメータによって決まり、
前記第1のセットの伝送パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータを示しているパラメータ情報を受信するステップと、
前記第1のセットの伝送パラメータに対応している前記第1のセットの受信パラメータおよび前記第2のセットの伝送パラメータに対応している前記第2のセットの受信パラメータを決定するステップと、
前記第1のセットの受信パラメータを前記第1の通信層に提供するとともに前記第2のセットの受信パラメータを前記第2の通信層に提供するステップと
を備えている、受信プロトコルに従って受信信号を処理するための方法。
【請求項25】
コンピュータ上で実行するときに請求項22または23または24に記載された方法を実行するためのプログラム・コードを有しているコンピュータ・プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−515832(P2007−515832A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−509809(P2005−509809)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011441
【国際公開番号】WO2005/041516
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011441
【国際公開番号】WO2005/041516
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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