説明

階段用床材

【課題】 本発明は、階段の踏み面に敷設される部分が比較的柔軟であり、且つ階段の段鼻部の周辺に敷設される部分が比較的高い剛性を有する階段用床材を提供する。
【解決手段】 本発明の階段用床材は、階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部2と、階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部3と、を有し、踏み面敷設部2と蹴上げ面敷設部3が屈曲部4を介して略L字状に連設されており、踏み面敷設部2及び蹴上げ面敷設部3が柔軟性のある合成樹脂層514を有し、合成樹脂層514には、屈曲部4に繋がる踏み面敷設部2の一部領域及び蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部に亘って、繊維を含む補強層511が設けられており、一部領域以外の踏み面敷設部2には、補強層511が設けられていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション、オフィスビルなどの各種構造物の階段に敷設される階段用床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、階段の踏み面を覆うように、階段用床材が階段に敷設されている。
かかる階段用床材は、階段の踏み面に対応して敷設される踏み面敷設部と、階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に対応して敷設される蹴上げ面敷設部と、を有し、前記踏み面敷設部と蹴上げ面敷設部が屈曲部を介して略L字状に連設された部材から構成されている。
このような階段用床材は、容易に施工でき且つ使用感も良好であることから、その多くが合成樹脂の成形品から形成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、防滑用突起が表面から突設された表層1Aと、表層1Aの裏面に積層された中間層1Bと、中間層1Bの裏面に積層された繊維強化合成樹脂層1Cと、を有する複数の合成樹脂層からなり、前記表層1Aが、耐摩耗性を有する合成樹脂層で形成され、前記中間層1Bが、クッション性を有する発泡合成樹脂層で形成された階段用床材が開示されている(同文献の[0026]及び図2など)。
上記特許文献1の階段用床材においては、繊維強化合成樹脂層1Cが床材全体に積層されているので、全体として略均一な曲げ強度及び引張り強度を有する。
【0004】
ところで、本発明者らの研究によれば、階段用床材の踏み面敷設部の後方領域は、階段の踏み面の中央部に敷設されるので、比較的柔軟であることが望ましく、他方、屈曲部に繋がる踏み面敷設部の一部領域及び蹴上げ面敷設部の一部領域は、階段の段鼻部の周辺に対応して敷設されるため、比較的剛性に優れていることが望ましい。
具体的には、階段の踏み面には不陸が存在するので、踏み面敷設部の後方領域は、前記不陸を吸収できるように、適度に伸びることが望ましい。さらに、踏み面敷設部の後方領域の一部を階段の入り隅部において上側に折り曲げて、その上側に折り曲げた部分を上段の蹴上げ面に敷設する場合があるが、このような方法で施工する場合、踏み面敷設部は、前記入り隅部に密着するように、適度に曲がることが望ましい。
【0005】
他方、屈曲部に繋がる踏み面敷設部の一部領域及び蹴上げ面敷設部の一部領域は、上述のように階段の段鼻部の周辺に敷設されるが、かかる段鼻部の周辺は、人が階段を昇降する際、最も大きな衝撃及び荷重が加わりやすい。このため、この段鼻部の周辺に敷設される前記一部領域は、曲げ強度及び引張り強度に優れていることが好ましい。
このように階段用床材は、階段の敷設箇所に応じて求められる特性が異なっている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の階段用床材においては、全体的に繊維強化合成樹脂層が積層されているので、この繊維強化層に起因して略均一な曲げ強度及び引張り強度を有する。さらに、特許文献1には、階段の敷設部分に応じて求められる特性が異なることは一切開示又は示唆されていない。
【0007】
さらに、特許文献1には、踏み面被覆部11の特性を異ならせず、裏面に幅方向に延びる折り曲げ用の溝6を形成することにより、階段用床材1を溝6の位置で折り曲げて、踏み面の大きさに合わせて貼着等することが記載されている(同文献の[0031]及び図3など)。
しかしながら、踏み面被覆部11にこのような溝6を設けると、溝6の位置で踏み面被覆部11の強度が著しく低下する上、踏み面被覆部11の表面が溝6の形状が表出する場合があり美観を損なうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−54277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、階段の敷設部分に応じて適切な特性を有する階段用床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の階段用床材は、踏み面と蹴上げ面とが段鼻部において略直交状に構築された多段構造の階段に敷設される階段用床材であって、前記階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部と、前記階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部と、を有し、前記踏み面敷設部と蹴上げ面敷設部が屈曲部を介して略L字状に連設されており、前記踏み面敷設部及び蹴上げ面敷設部が柔軟性のある合成樹脂層を有し、前記合成樹脂層には、前記屈曲部に繋がる前記踏み面敷設部の一部領域及び蹴上げ面敷設部の一部領域又は全部に亘って、繊維を含む補強層が設けられており、前記一部領域以外の踏み面敷設部には、前記補強層が設けられていない。
【0011】
本発明の好ましい階段用床材は、前記補強層が、前記合成樹脂層の下面に固着されている。
本発明の他の好ましい階段用床材は、前記合成樹脂層を形成する樹脂が前記補強層に含浸しており、前記補強層の下面において、前記補強層の繊維の一部が露出した部分を有する。
本発明の他の好ましい階段用床材は、前記合成樹脂層に、前記補強層と独立した第2の補強層が設けられており、前記第2の補強層が、前記踏み面敷設部から蹴上げ面敷設部の全体に亘って設けられている。
本発明の他の好ましい階段用床材は、前記補強層が不織布であり、前記第2の補強層が、ガラスマットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の階段用床材は、屈曲部に繋がる踏み面敷設部の一部領域及び蹴上げ面敷設部の一部領域又は全部に亘って繊維を含む補強層が設けられているので、この部分が比較的高い剛性を有する。この部分は段鼻部の周辺に敷設されるので、長期間使用しても破損し難い階段用床材を提供できる。
一方、本発明の階段用床材は、前記一部領域以外の踏み面敷設部には、前記補強層が設けられていないので、この部分が比較的柔軟である。この部分は、階段の踏み面に敷設されるので、階段の踏み面の不陸を吸収させながら階段用床材1を敷設できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の階段用床材の平面図。
【図2】同右側面図。
【図3】同正面図。
【図4】図1のA−A線で切断した中央部省略拡大断面図。
【図5】図1のB−B線で切断した中央部省略拡大断面図。
【図6】階段用床材の突部の傾斜面形状の変形例を示す、図1のA−A線と同じ方向で切断した中央部省略拡大断面図。
【図7】本発明の階段用床材を階段に敷設した状態を示す参考断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。
なお、本明細書において、便宜上、方向を示す用語として、「上」は、階段を登っていく側を、「下」は、これと反対に階段を降りていく側を、「前」は、蹴上げ面から離れる側を、「後」は、これと反対に蹴上げ面に近づく側を、「幅方向」は、上下方向と前後方向の双方に直交する方向を、それぞれ意味する。なお、階段用床材については、階段に敷設されたときを基準として前記方向を示す用語を使用している。
【0015】
図1乃至図5において、1は、本発明の階段用床材を示す。
この階段用床材1は、マンション、商業施設、教育施設、医療福祉施設、オフィス、一般住宅などの各種構造物の階段に敷設される。
施工対象である階段は、周知の構造であり、踏み面と蹴上げ面とが段鼻部において略直交状に構築され、この踏み面と蹴上げ面が多段状に連なった構造を有する。段鼻部は、踏み面の前端と蹴上げ面の上端の接続部分である。
【0016】
なお、前記略直交とは、踏み面と蹴上げ面との成す内角が90度という厳密な意味に解してはならず、前記内角が90度±10度を含む。一般的な階段は、前記内角が、80度〜90度である場合が多い。
【0017】
階段用床材1は、前記階段の踏み面に対して敷設される踏み面敷設部2と、前記階段の蹴上げ面に対して敷設される蹴上げ面敷設部3と、前記階段の段鼻部に対して敷設される屈曲部4と、を有する。
踏み面敷設部2は、階段の踏み面全体及び上段の蹴上げ面を覆うことができる長さに形成されている。このような長さの踏み面敷設部2は、階段の入り隅部に対応する箇所にて折り曲げられる。
蹴上げ面敷設部3は、階段の蹴上げ面の上方部を覆うことができる長さに形成されている。例えば、蹴上げ面敷設部3の上下方向長さは、3cm〜10cmである。
【0018】
屈曲部4は、踏み面敷設部2の前端と蹴上げ面敷設部3の上端の接続部分であり、踏み面敷設部2と蹴上げ面敷設部3は全体として略L字状を成している。なお、屈曲部4は、図示したように円弧状に曲げられている。
踏み面敷設部2の裏面の延長線と蹴上げ面敷設部3の裏面の延長線との成す内角は、例えば、90度±10度であり、好ましくは階段の踏み面と蹴上げ面との成す内角と同じであり、より好ましくはその内角よりも小さく、特に好ましくはその内角よりも5度程度小さい。
【0019】
合成樹脂成形品から形成された階段用床材1は、力を加えると踏み面敷設部2と蹴上げ面敷設部3との間の角度を若干拡げることができる。従って、踏み面敷設部2と蹴上げ面敷設部3との成す内角が階段の踏み面と蹴上げ面との成す角の内角よりも小さい階段用床材1は、その施工時に、蹴上げ面敷設部3を蹴上げ面に押し当てながら引っ張ることにより、蹴上げ面敷設部3を蹴上げ面に十分に密着させて敷設できる。
【0020】
踏み面敷設部2、屈曲部4及び蹴上げ面敷設部3は、合成樹脂成形品から一体的に形成されている。
具体的には、階段用床材1の層構成は、図2、図4及び図5に示すように、階段用床材1の全体を形成する略L字状の第1形成層51と、階段用床材1の屈曲部4から踏み面敷設部2の前端部及び蹴上げ面敷設部3の上端部に対応する前記第1形成層51の表面側に設けられ且つ前記第1形成層51よりも短い略L字状の第2形成層52と、を有する。
第1形成層51は、柔軟性のある合成樹脂層514と、繊維を含む補強層と、を少なくとも有し、全体として略L字状に形成されている。前記補強層は、1層でもよいが、別個独立して2層設けられていることが好ましい。以下、2つの補強層を区別するために、第1の補強層、第2の補強層という。
【0021】
第1の補強層511及び第2の補強層512は、同種又は同一でもよいが、異なっていることが好ましい。材質などが異なる第1の補強層511及び第2の補強層512を用いることにより、合成樹脂層514の曲げ強度及び引張り強度をより向上させることができる。第1の補強層511の繊維及び第2の補強層512の繊維の材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル系、ポリオレフィン系などの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。
【0022】
本実施形態では、第1形成層51は、表層と、内部に第2の補強層512が埋設された合成樹脂層514と、第1の補強層511と、が上から順に積層された層構成から構成されている。
表層は、従来公知の層であり、例えば、上から順に、透明な表面保護層と意匠層とを有する。ただし、表層は、図示していない。
【0023】
合成樹脂層514は、主成分として樹脂を含み、人力で簡単に屈曲可能な柔軟な層である。合成樹脂層514は、一般的には、軟質の熱可塑性樹脂シートが用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。
【0024】
優れた柔軟性を有することから、塩化ビニル系樹脂が好ましい。塩化ビニル系樹脂を主成分とする合成樹脂層514を有する階段用床材1は、歩行感が良好であり、さらに、階段の入り隅部に沿うように容易に折り曲げることができる。また、塩化ビニル系樹脂は、安価である上、これを用いると、階段用床材1の製造も容易である。
なお、合成樹脂層514には、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0025】
合成樹脂層514は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。
合成樹脂層514が発泡樹脂である場合、その発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは1.5倍〜2倍である。発泡倍率が余りに低いと、実質的に階段用床材1にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、階段用床材1の耐久性が低下し、長期間使用している間に靴底による傷付きが生じるおそれがある。
合成樹脂層514の厚みは特に限定されないが、通常、0.5mm〜5mmである。
【0026】
第2の補強層512は、合成樹脂層514の全体に設けられている。従って、第2の補強層512は、踏み面敷設部2の後端から蹴上げ面敷設部3の下端にまで設けられている。
第2の補強層512の形成材料は、繊維を含んでいれば特に限定されず、例えば、不織布(フェルトを含む)、織布、ガラスマット及び紙などが挙げられ、好ましくは第1の補強層511とは異なるものが用いられ、より好ましくはガラス織布、ガラス不織布、及びガラスマットなどのガラス繊維からなる基材である。第2の補強層512をガラス繊維から構成することにより、寸法安定性に優れた階段用床材1を構成できる。特に、ガラス織布を用いることで、残留凹み値を著しく改善することができる。
【0027】
第2の補強層512の厚みは、特に限定されないが、通常、0.02mm〜0.5mm、好ましくは0.1mm〜0.3mmである。第2の補強層512の厚みが厚すぎると床材表面に第2の補強層512を構成する繊維が視認されたり、繊維層の層間で剥離しやすくなるなどの弊害が生じる場合がある。一方、第2の補強層512の厚みが薄すぎると、十分な補強効果が得られないだけでなく、製造時にそれが切れる場合がある。
【0028】
第1の補強層511は、階段用床材1の全体に設けられておらず、屈曲部4を含むその周辺領域のみに対応して設けられている。
すなわち、第1の補強層511は、屈曲部4に繋がる踏み面敷設部2の一部領域及び屈曲部4に繋がる蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部に対応して設けられており、前記一部領域以外の踏み面敷設部2の領域には、第1の補強層511は設けられていない。
第1の補強層511は、図示したように、蹴上げ面敷設部3の全部に設けられていることが好ましいが、屈曲部4に繋がる蹴上げ面敷設部3の一部領域に設けられていてもよい。例えば、第1の補強層511が蹴上げ面敷設部3の上方領域に設けられ、且つ蹴上げ面敷設部3の下方領域において第1の補強層511が設けられていなくてもよい。
以下、第1の補強層511が設けられた踏み面敷設部2の一部領域及び屈曲部4に繋がる蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部を、「屈曲部周辺領域」という場合があり、第1の補強層511が設けられていない踏み面敷設部の領域を、「残部領域」という場合がある。
【0029】
上記屈曲部周辺領域における合成樹脂層514は、第1の補強層511及び第2の補強層512で補強されているので、第2の補強層512だけで補強されている残部領域における合成樹脂層514に比して、曲げ強度及び引張り強度に優れている。
階段用床材1の屈曲部周辺領域は、階段の段鼻部の周辺に敷設される領域である。この段鼻部の周辺は、歩行者が階段を昇降する際、最も大きな衝撃及び荷重が加わりやすいが、屈曲部周辺領域は、第1の補強層511の存在によって曲げ強度及び引張り強度に優れているので比較的高い剛性を有し、よって、長期間の使用によっても破損し難い。さらに、屈曲部周辺領域が高い剛性を有するので、蹴上げ面敷設部3を階段の蹴上げ面に引掛けながら階段用床材1を施工するときに、屈曲部周辺領域が変形することによる階段用床材1の位置ずれが生じにくい。
【0030】
一方、階段用床材1の残部領域は、階段の踏み面に敷設され、さらに、入り隅部で折り曲げて上段の蹴上げ面にも敷設される。この踏み面などには不陸が存在するが、残部領域は、屈曲部周辺領域に比して曲げ強度及び引張り強度が低いので、適度に伸張又は比較的簡単に略直角状に折り曲げることができ、よって、不陸を吸収させながら敷設でき、又、入り隅部に沿わせて敷設できる。
【0031】
図2に示すように、踏み面敷設部2の一部領域における第1の補強層511の長さL2は、3cm〜15cmであり、好ましくは、5cm〜15cmであり、より好ましくは5cm〜12cmである。前記第1の補強層511の長さL2が余りに短いと、第1の補強層511を設けた意義がなくなり、一方、余りに長いと、相対的に残部領域の面積が小さくなり、施工時に、踏み面の不陸吸収効果などが十分に得られないおそれがある。
【0032】
また、蹴上げ面敷設部3における第1の補強層511の長さH3は、3cm以上であり、好ましくは、5cm以上である。前記第1の補強層511の長さH3が余りに短いと、第1の補強層511を設けた意義がなくなる。一方、前記第1の補強層511の長さH3の上限は、蹴上げ面敷設部3の下端である。この上限の場合とは、蹴上げ面敷設部3の下端にまで第1の補強層511が設けられる場合である。
【0033】
屈曲部周辺領域(第1の補強層511が設けられている領域)と残部領域(第1の補強層511が設けられていない領域)の剛性度は、通常の施工環境下である5℃から20℃の範囲において、規定される。
屈曲部周辺領域の20℃での剛性度は、好ましくは150kgf/cm〜900kgf/cmであり、より好ましくは250kgf/cm〜750kgf/cmであり、さらに好ましくは350kgf/cm〜700kgf/cmである。前記20℃での剛性度は、JIS K 7106に準拠して、20℃で測定される床材の縦方向又は横方向の少なくとも何れか一方における剛性度である。前記20℃での剛性度が高すぎると、柔軟性が損なわれ脆くなるおそれがある。一方、前記剛性度が低すぎると、柔らかくなりすぎ、歩行による衝撃で破損するおそれがある。
【0034】
一方、残部領域の20℃での剛性度は50kgf/cm〜350kgf/cmであり、より好ましくは100kgf/cm〜250kgf/cmであり、さらに好ましくは120kgf/cm〜200kgf/cmである。前記20℃での剛性度が高すぎると、柔軟性が損なわれ不陸吸収効果が低下する上、施工時に上段の蹴上げ面を沿わせて曲げ難くなる。一方、前記剛性度が低すぎると、耐久性が低下したり、反りが生じやすくなるおそれがある。
【0035】
屈曲部周辺領域の5℃での剛性度は、好ましくは450kgf/cm〜1800kgf/cmであり、より好ましくは500kgf/cm〜1600kgf/cmであり、さらに好ましくは700kgf/cm〜1500kgf/cmである。前記5℃での剛性度は、JIS K 7106に準拠して、5℃で測定される床材の縦方向又は横方向の少なくとも何れか一方における剛性度である。前記範囲内の5℃での剛性度を有することにより、低温条件下(例えば、寒冷地又は冬季など)でも充分な強度と衝撃吸収性を保つことができる。
【0036】
一方、残部領域の5℃での剛性度は、好ましくは250kgf/cm〜750kgf/cmであり、より好ましくは300kgf/cm〜600kgf/cmであり、さらに好ましくは350kgf/cm〜500kgf/cmである。前記範囲内の5℃での剛性度を有する場合、低温条件下(例えば、寒冷地又は冬季など)でも充分な柔軟性を保つことができ、不陸吸収効果や施工性を保つことができる。
【0037】
第1の補強層511は、合成樹脂層514内に埋設されていてもよいが、図示したように、合成樹脂層514の裏面に固着されていることが好ましい。第1の補強層511を合成樹脂層514の裏面に設けることにより、屈曲部周辺領域において、合成樹脂層514が第1の補強層511と第2の補強層512の間に挟まれる。この2つの補強層511,512で挟まれた合成樹脂層514は、曲げ強度及び引張り強度が高くなるため、温度変化による収縮も極めて生じ難くなる。
【0038】
第1の補強層511の形成材料は、繊維を含んでいれば特に限定されず、例えば、不織布(フェルトを含む)、織布、ガラスマット及び紙などが挙げられ、好ましくは不織布、ガラスマット又は織布であり、より好ましくは不織布である。
第1の補強層511として不織布を用い、且つ第2の補強層512としてガラスマットなどのガラス繊維からなる基材を用いることにより、曲げ強度及び引張り強度を向上させることができる。
【0039】
不織布としては、ポリエステル繊維などからなるスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布などが挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、スパンボンド不織布を用いることが好ましい。スパンボンド不織布は長繊維を重ね合わせて熱接着などにより固定した隙間のある不織布である。
【0040】
特に、第2の補強層512をガラス繊維からなる基材によって構成し、第1の補強層511をポリエステル繊維を含むスパンボンド不織布によって構成することにより、ガラス繊維基材が全体の寸法安定性に大きく寄与し、これに積層されている合成樹脂層514の反りとポリエステル繊維不織布の収縮力による反りの拮抗のバランスによって、床材1の反りを防止できる。このため、階段用床材1の屈曲部周辺領域の形状を維持することできる。
また、不織布の繊維は、短繊維又は長繊維の何れでもよいが、引張り強度の観点から、長繊維が好ましい。長繊維の長さは、例えば、100mm以上である。
【0041】
前記不織布は、前記繊維が無秩序に絡み合ったものでもよいし、或いは、繊維がある程度の規則性を以て結合されたものでもよい。繊維がある程度規則性を以て結合された不織布としては、例えば、ほぼ一方向に並べられた複数の長繊維の第1層と、前記一方向と直交する方向に並べられた複数の長繊維の第2層と、が上下交互に積層され、且つその第1層及び第2層の繊維の交点が結合された不織布などが挙げられる。繊維の一部を露出させ易いことから、第1の補強層511として、前記繊維がある程度の規則性を以て結合された不織布を用いることが好ましい。
【0042】
第1の補強層511として用いられる不織布の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、より好ましくは0.2mm〜0.4mmであり、さらに好ましくは0.25mm〜0.35mmである。また、前記不織布の目付け量は、特に限定されないが、好ましくは20g/m〜100g/mであり、より好ましくは30g/m〜50g/mである。第1の補強層511として用いられる不織布が薄すぎると、曲げ強度及び引張り強度を十分に向上できず、一方、厚すぎると、相対的に合成樹脂層514が薄くなる上、合成樹脂層514の樹脂が十分に含浸しないおそれがある。
【0043】
また、第1の補強層511の裏面において、第1の補強層511の繊維の一部が露出した部分を有することが好ましい。このように繊維の一部が露出している部分を有することにより、第1の補強層511の裏面に凹凸が存在する。そして、階段用床材1を施工するときに用いる接着剤などが、前記第1の補強層511の凹凸に入り込み、露出した繊維に接着するので、階段用床材1の屈曲部周辺領域を階段に強固に固定できる。
【0044】
第1の補強層511として不織布を用いた場合、合成樹脂層514を構成する樹脂が不織布の表面から含浸し、不織布と合成樹脂層514を一体化できる一方で、不織布の裏面にまで前記樹脂が含浸しないようにすることにより、第1の補強層511の裏面において繊維の一部が露出した部分を形成できる。
【0045】
次に、第2形成層52は、合成樹脂成形品からなる。第2形成層52は、上記合成樹脂層514と同様に柔軟な合成樹脂から形成されていてもよいし、合成樹脂層514よりも硬質な合成樹脂から形成されていてもよい。
第2形成層52を形成する熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;オレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;アミド系樹脂;エステル系樹脂;ウレタン系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。
【0046】
第2形成層52は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。
階段用床材1の屈曲部周辺領域の踏み面敷設部側は、歩行者の足裏が階段から滑り落ちることを防止する部分である。従って、この部分にグリップ性を付与するために、第2形成層52は発泡樹脂であることが好ましい。発泡倍率は特に限定されないが、好ましくは2倍〜3倍である。発泡倍率がこの範囲外であると、第2形成層52に十分なグリップ性を付与できないおそれがある。
【0047】
第2形成層52は、略L字状に形成されている。第2形成層52は、階段用床材1の屈曲部4から踏み面敷設部2の前端部及び蹴上げ面敷設部3の上端部に対応する、第1形成層51の表面に、第2形成層52を形成する樹脂組成物などを積層し、加熱固化させることにより、第1形成層51と強固に一体化されている。このように加熱固化による固着方法により両層51,52一体形成すると、歩行時の衝撃などにより層間で剥離を生じることがない。もっとも、充分な強度が得られるのであれば、第1形成層51と第2形成層52を別々に成形し、その後、両層51,52を接着剤などの接着手段を用いて固着してもよい。
第2形成層52の表面は、階段用床材1の踏み面敷設部2の前端部、屈曲部4及び蹴上げ面敷設部3の少なくとも上端部を構成している。
【0048】
さらに、第2形成層52の表面には、幅方向に所定間隔を開けて複数並設された幅広な突部61と、幅方向に所定間隔を開けて複数並設された点状の突部62と、が突設されている。以下、幅広な突部を「第1の突部」といい、点状の突部を「第2の突部」という。
【0049】
具体的には、第1の突部61は、階段用床材1の幅方向に所定幅を以て拡がった凸状であり、踏み面敷設部2の前方領域から蹴上げ面敷設部3の上方領域に亘って突設されている。第1の突部61の幅は、特に限定されないが、通常、3cm〜10cmである。
また、第1の突部61の突出高さは、特に限定されないが、1mm〜4mmが好適である。第1の突部61の突出高さが余りに低いと、実質的に凸状とならず、一方、突出高さが余りに高いと、歩行者が躓くおそれがある。なお、前記第1の突部61の突出高さは、踏み面敷設部2の表面(本実施形態の場合には、表層の表面)から第1の突部61の表面までの高さである。
【0050】
第1の突部61の表面は、全体として略平滑であるが、図示したように、踏み面敷設部2に対応する第1の突部61の後方には、幅方向に延びる低い長状突起63が突設されている。この長状突起63は、足裏に対するグリップ性を高めるために設けられている。この長状突起63は設けられていなくてもよいが、次の理由から、これが設けられていることが好ましい。長状突起63は歩行者の歩行安定性を高めるとともに、第1の突部61に降った雨水を横方向に逃がして溝部7に導く作用がある。このように、長状突起63によって、第1の突部61の屈曲部4から下方に流れる雨水の量を少なくできるので、第1の突部61の傾斜面61aに多量の雨水が一時に流れることを防止でき、前記傾斜面61aを雨水が伝って下方に流れる本発明の効果をより確実に発揮できる。従って、長状突起63は、第1の突部61の傾斜面61aと協働して、本発明の水跳ねなどの防止効果を高め得る。
【0051】
複数の第1の突部61は、踏み面敷設部2の前方領域から、屈曲部4及び蹴上げ面敷設部3の上方領域に跨って形成され、且つ幅方向に所定間隔を開けて並んでいる。
この複数の第1の突部61の間には、幅方向に複数の溝部7が並設されている。この溝部7は、突設された第1の突部61間に相対的に生じる溝である。従って、溝部7も、第1の突部61と同様に、踏み面敷設部2の前方領域から、屈曲部4及び蹴上げ面敷設部3の上方領域に亘って形成されている。
【0052】
蹴上げ面敷設部3に対応する第1の突部61の表面は、屈曲部4から蹴上げ面敷設部3の下方領域に向かうに従ってなだらかに傾斜した傾斜面61aを有する。この傾斜面61aの下端と蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面3aは、境界なく連続している。
【0053】
前記傾斜面61aは、なだらかに傾斜していれば直線的あってもよいし、曲線的であってもよい。
傾斜面61aが直線的である場合、図4に示すように、幅方向に対して直交する方向の線を含む断面における、傾斜面61aの各点での接線T1と蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面3aとの成す角αが、150度以上180度未満の範囲内の一定の角度となるように、傾斜面61aを形成することが好ましい。このような角度の傾斜面61aであれば、第1の突部61に付着した雨水が傾斜面61aから蹴上げ面敷設部3の下方領域を伝って流れていく。
【0054】
また、傾斜面61aが曲線的である場合、図6に示すように、幅方向に対して直交する方向の線を含む断面における、傾斜面61aの各点での接線T2と蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面3aとの成す角βが150度以上180度未満の範囲内で連続的に変化するように、傾斜面61aを形成することが好ましい。
【0055】
第2の突部62は、踏み面敷設部2のうち、前記第1の突部61の後方の所定範囲に設けられている。第2の突部62の平面視形状は特に限定されないが、踏み面敷設部2に付着した雨水を溝部7に導くために、前記溝部7に連通する間隙部を有するように前記複数の第2の突部62は形成される。
【0056】
本発明の階段用床材1は、階段の踏み面及び蹴上げ面に施工される。
図7は、階段用床材1を階段11に敷設した状態を示す縦断面図である。
階段用床材1の屈曲部4を階段11の段鼻部14に当て、階段用床材1の蹴上げ面敷設部3が、階段11の蹴上げ面13の上方部に敷設され、階段用床材1の踏み面敷設部2は、階段11の踏み面12及び上段の蹴上げ面13に敷設される。ただし、蹴上げ面敷設部3の裏面と蹴上げ面13の間には、下段に敷設された階段用床材1の踏み面敷設部2の後方部が介在している。
【0057】
図中、91は、蹴上げ面敷設部3の裏面を接着するための粘着テープを示し、92は、踏み面敷設部2の裏面を接着するための接着剤を示し、93は、蹴上げ面敷設部3の下端と下方の踏み面敷設部2の表面の間に生じる段差を埋めるコーキングシール部を示す。
【0058】
上記階段用床材1は、屈曲部4に繋がる踏み面敷設部2の一部領域及び蹴上げ面敷設部3の一部領域又は全部に亘る合成樹脂層514に、繊維を含む補強層が設けられているので、この屈曲部周辺領域における合成樹脂層514は、残部領域における合成樹脂層514に比して、曲げ強度及び引張り強度に優れている。
最も大きな衝撃及び荷重が加わりやすい階段の段鼻部の周辺に敷設される屈曲部周辺領域が、比較的高い剛性を有するので、本発明の階段用床材1は、長期間使用できる。
【0059】
一方、階段の踏み面や入り隅部周辺に敷設される残部領域が、比較的柔軟であるので、適度に伸張又は比較的簡単に略直角状に折り曲げることができる。よって、階段の踏み面の不陸を吸収させながら階段用床材1を敷設でき、又、入り隅部に沿わせて階段用床材1を敷設できる。
【0060】
さらに、上記階段用床材1は、第1の突部61の表面が、屈曲部4から蹴上げ面敷設部3の下方領域に向かうに従ってなだらかに傾斜した傾斜面61aを有し、この傾斜面61aの下端と蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面3aが境界なく連続している。このため、第1の突部61の表面に付着した雨水は、傾斜面61aから蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面を伝い、下方に流れていく。このように第1の突部61に付着した雨水が面伝いで下方に流れるので、下段の踏み面上に液滴痕が発生したり、或いは、水跳ねが発生することを防止できる。また、上記水跳ねにより、下段の踏み面上に水滴が溜まり、滑り易くなる。
【0061】
さらに、通常、階段の踏み面には、階段の幅方向両側に設けられた排水溝等に水を導くために、踏み面中央を頂点として踏み面の幅方向両端に向かってなだらかな傾斜がつけられている。
本発明の階段用床材1によれば、第1の突部61の下端部形状に従って面伝いで下方に流れた雨水を、水跳ねを生じさせることなく面伝いに階段の入り隅部に流し、当該入り隅部の雨水を、さらに、前記踏み面のなだらかな傾斜に従って階段両側の排水溝等に導くことができる。
【0062】
また、通常、階段の踏み面は、前方下がりに若干勾配が付いているので、踏み面敷設部2に付着した雨水は、溝部7から蹴上げ面敷設部3の表面を伝って下方に流れると共に、前記なだらかな傾斜に従って排水溝等から流れていく。
さらに、歩行者が階段を登る際、第1の突部61と蹴上げ面敷設部3の下方領域の境界に凹凸に起因する陰影が強く見えることがない。このため、歩行者の目視が、階段の段鼻部よりも下方に向かず、段鼻部の先端に向きやすくなるので、歩行時の安全性を確保できる上、又、意匠性にも優れている。
【0063】
また、上記階段用床材1は、傾斜面61aの下端と蹴上げ面敷設部3の下方領域の表面3aが境界なく連続しているので、第1の突部61の下端においてカビや液滴痕などが生じることを防止できる。さらに、第1の突部61の下端部形状に段部がないので、ブラシやスポンジなどの清掃具が均質に当接するから、第1の突部61の下端部の清掃も容易に行うことができ、又、歩行者が階段を登る際に、第1の突部61と踏み面敷設部2の下方領域の境界において足先が引っ掛かるおそれもない。
【0064】
本発明の階段用床材1は、上記実施形態に限定されず、本発明の意図する範囲で適宜設計変更できる。
例えば、上記実施形態の階段用床材1においては、第1の補強層511が合成樹脂層514に裏面に固着されているが、第1の補強層511が合成樹脂層514内に埋設されていてもよい。また、第1の補強層511を合成樹脂層514内に埋設し、且つ第2の補強層512を合成樹脂層514の裏面に固着してもよい。
【0065】
また、上記実施形態の階段用床材1においては、合成樹脂層514に第2の補強層512が設けられているが、第2の補強層512を設けずに階段用床材1を構成することもできる。もっとも、合成樹脂層514は、その全体に亘ってある程度の曲げ強度及び引張り強度を有することが好ましいので、第1の補強層511だけでなく、第2の補強層512も設けられていることが好ましい。
【0066】
また、上記実施形態の階段用床材1においては、踏み面敷設部2が階段の踏み面から上段の蹴上げ面にまで敷設できる長さに形成されているが、踏み面敷設部2は、階段の踏み面のみに敷設できる長さに形成されていてもよい。踏み面敷設部2は、階段の踏み面を少なくとも覆うことができる長さであればよい。
また、上記実施形態の階段用床材1においては、蹴上げ面敷設部3が階段の蹴上げ面の上方部に敷設できる長さに形成されているが、蹴上げ面敷設部3は、階段の蹴上げ面の全部に敷設できる長さに形成されていてもよい。蹴上げ面敷設部3は、階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設可能であればよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
【0068】
[実施例1]
ほぼ中間部にガラスマット(第2の補強層)が埋設された塩化ビニル樹脂層の一方の面の約半分の領域に、ポリエステル系繊維からなるスパンボンド不織布(第1の補強層)が熱融着された厚み2.2mmのシート材を準備した。このシート材の前記塩化ビニル樹脂層の他方の面に、エンボスロールを用いて凹凸を形成した。
前記使用したガラスマットは、目付量53g/m(オリベスト(株)製、製品名「MBPT053」)であり、前記スパンボンド不織布は、目付量40g/m(東洋紡績(株)製、製品名「エクーレ 3401A」)であった。
【0069】
[実施例2]
第1の補強層として目付量30g/m(東洋紡績(株)製、製品名「エクーレ 6301A」)のポリエステル系スパンボンド不織布を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にしてシート材を作製した。
【0070】
実施例1及び実施例2の各シート材について、第1の補強層と第2の補強層の双方が設けられた領域と、第2の補強層のみが設けられている領域について、下記の測定方法に従って、5℃及び20℃での各剛性度を測定した。
その結果を表1に示す。
なお、表1中、「W領域」は、第1の補強層と第2の補強層の双方が設けられた領域を指し、「S領域」は、第2の補強層のみが設けられている領域を指す。
【0071】
【表1】

【0072】
[剛性度の測定方法]
剛性度の測定は、JIS K 7106に準拠して行った。
(5℃の剛性度)
5±2℃、湿度50±10%の条件の下、オルゼン型剛性度試験機(以下、試験機と記す)、150mm直定規(JIS C型1級、以下、直定規と記す)、マイクロメーター、及び25mm×100mmの大きさに裁断した試験片を24時間養生した。
次に試験機の水平、支点間距離、及び0点の各調整を行い、マイクロメーターで前記試験片の厚みを1/100mmの位まで測定した。さらに、前記試験片を試験機にセットし、偏位角度指針が所定の偏位角度に達したときの荷重目盛を読み取った。
剛性度E(kgf/cm)は、次式により求めた。
【0073】
E=(4×S×M×(読み値)×C)/(b×h×100×φ)
S:支点間距離(cm)=2cm
b:試料幅(cm)=2.5cm
h:試料厚さ(cm)=2.2cm
M:荷重(Lb)=2Lbs
φ:荷重目盛読み取り角度(rad)=0.1047rad
C:定数=2.3
定数Cは、単位を換算してモーメント値に補正するための数値である。
n=3で行い、試料3個の平均値を測定値の1桁下でJIS Z 8401に準じて統一した。
【0074】
(20℃の剛性度)
20±2℃、湿度65±10%の条件下で24時間養生したこと以外は、上記5℃の剛性度と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の階段用床材は、一般住宅、集合住宅、マンション、商業施設、教育施設、医療福祉施設、オフィスビルなどの各種構造物の階段に施工して利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1…階段用床材、2…踏み面敷設部、3…蹴上げ面敷設部、4…屈曲部、511…補強層(第1の補強層)、512…第2の補強層、514…合成樹脂層、61…突部、61a…突部の傾斜面、7…溝部、11…階段、12…階段の踏み面、13…階段の蹴上げ面、14…階段の段鼻部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み面と蹴上げ面とが段鼻部において略直交状に構築された多段構造の階段に敷設される階段用床材であって、
前記階段の踏み面に敷設される踏み面敷設部と、前記階段の蹴上げ面の少なくとも上方部に敷設される蹴上げ面敷設部と、を有し、前記踏み面敷設部と蹴上げ面敷設部が屈曲部を介して略L字状に連設されており、
前記踏み面敷設部及び蹴上げ面敷設部が柔軟性のある合成樹脂層を有し、
前記合成樹脂層には、前記屈曲部に繋がる前記踏み面敷設部の一部領域及び蹴上げ面敷設部の一部領域又は全部に亘って、繊維を含む補強層が設けられており、前記一部領域以外の踏み面敷設部の領域には、前記補強層が設けられていないことを特徴とする階段用床材。
【請求項2】
前記補強層が、前記合成樹脂層の裏面に固着されている請求項1に記載の階段用床材。
【請求項3】
前記合成樹脂層を形成する樹脂が前記補強層に含浸しており、前記補強層の裏面において、前記補強層の繊維の一部が露出した部分を有する請求項2に記載の階段用床材。
【請求項4】
前記合成樹脂層に、前記補強層と独立した第2の補強層が設けられており、前記第2の補強層が、前記踏み面敷設部から蹴上げ面敷設部の全体に亘って設けられている請求項1乃至3の何れかに記載の階段用床材。
【請求項5】
前記補強層が、不織布であり、前記第2の補強層が、ガラスマットである請求項4に記載の階段用床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77520(P2012−77520A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224028(P2010−224028)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)