説明

階段被覆材及び階段被覆工法

【課題】貼着剤で踏み面被覆部を階段下地の踏み面に貼着するにも拘わらず、位置決め、位置決めのし直し、微調整など簡単に行うことができる施工性に優れた階段被覆材と、この階段被覆材を用いた階段被覆工法を提供する。
【解決手段】階段下地20の踏み面20aと段鼻20bと蹴上げ面20cに亘って被覆する逆L字状に屈曲した階段被覆材1であって、その踏み面被覆部1aの下面に第一の貼着剤層2Aが積層され、第一の貼着剤層2Aの下面に第一の剥離紙3Aが積層され、第一の剥離紙3Aの段鼻20b側の端縁に引き剥がし用突片4が設けられた階段被覆材とする。階段被覆材1を階段下地20に重ねて第一の剥離紙3Aを剥離除去する前に位置決め等を簡単に行うことができ、引き剥がし用突片4を摘んで剥離紙3Aを破断なく容易に剥離除去して踏み面被覆部1cを貼着できるので、この階段被覆材を用いた階段被覆工法は施工性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段被覆材及びこれを用いた階段被覆工法に関し、更に詳しくは、階段下地に貼着するときに位置決めを容易にやり直したり、位置の微調整を簡単に行うことができる施工性に優れた階段被覆材と、この階段被覆材を用いた階段被覆工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って被覆する逆L字状に屈曲した合成樹脂製の階段被覆材を使用し、階段被覆材の踏み面被覆部と階段下地の踏み面を接着剤で、階段被覆材の段鼻被覆部と階段下地の段鼻をシーリング剤で、階段被覆材の蹴上げ面被覆部と階段下地の蹴上げ面を粘着剤で、それぞれ貼着した階段被覆構造が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、逆L字状に屈曲した合成樹脂製の階段被覆材を使用し、階段被覆材の踏み面被覆部の一部を帯状に設けられた接着剤層で階段下地の踏み面に貼着すると共に、階段被覆材の他の部分をブチルゴム系粘着剤層で階段下地に貼着した階段被覆構造も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−125643号公報
【特許文献2】特開平09−096073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の階段被覆構造ように、階段被覆材の踏み面被覆部を接着剤で階段下地の踏み面に貼着するものは、接着剤を階段下地の踏み面に塗布し、オープンタイムを設けて階段被覆材を貼着しなければならないため、手間と時間がかかり、施工性にやや難点がある。これに対し、特許文献2の階段被覆構造のように階段被覆材の大部分を粘着剤層で階段下地に貼着するものは、予め粘着剤層を階段被覆材の裏面に設けておけば、階段被覆材を階段下地に押圧するだけで簡単に貼着でき、上記の手間と時間を省くことができる。
【0006】
しかしながら、階段被覆材の踏み面被覆部などを粘着剤層で階段下地に貼着する場合は、一旦、階段被覆材の裏面の粘着剤層を階段下地に接触させると、階段被覆材が階段下地に貼着して固定されるため、階段被覆材の位置決めをやり直したり、階段被覆材の位置を僅かにずらせて微調整を行うことが難しいという問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、その解決しようとする課題は、粘着剤などの貼着剤で踏み面被覆部を階段下地の踏み面に貼着するものであるにも拘わらず、位置決め作業、位置決めし直し作業、位置の微調整作業を簡単に行うことができる施工性に優れた階段被覆材と、この階段被覆材を用いた階段被覆工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る階段被覆材は、階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って被覆する逆L字状に屈曲した階段被覆材であって、その踏み面被覆部の下面に第一の貼着剤層が形成され、この第一の貼着剤層の下面に第一の剥離紙が積層され、この第一の剥離紙の上記段鼻側の端縁に引き剥がし用突片が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の階段被覆材においては、引き剥がし用突片が、第一の剥離紙の端縁を第一の貼着剤層より段鼻側に延設して形成されていることが望ましい。そして、蹴上げ面被覆部の裏面に、第二の貼着剤層と第二の剥離紙がこの順で積層されていることが望ましい。
【0010】
また、本発明に係る階段被覆工法は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載された階段被覆材を用いて階段下地を被覆する階段被覆工法であって、階段被覆材を階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って重ね、階段被覆材を適正に位置決めしたうえで、踏み面被覆部を上記段鼻と反対側の端部から捲り上げ、第一の剥離紙の引き剥がし用突片を上記段鼻と反対側に引っ張って第一の剥離紙を剥離除去し、踏み面被覆部を階段下地の踏み面に押圧して貼着することを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明にいう「貼着」とは、粘着と接着の双方を包括する概念の用語である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の階段被覆材は、その踏み面被覆部の下面に形成された第一の貼着剤層が、その下面に形成された第一の剥離紙で覆われているため、階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って階段被覆材を重ねた状態では、自由に階段被覆材を移動させて適正な位置に位置決めしたり、位置決めをし直したり、位置の微調整を行ったりすることができる。そして、適正に位置決めしたうえで、階段被覆材の踏み面被覆部を上記段鼻と反対側の端部から捲り上げ、第一の剥離紙の引き剥がし用突片を上記段鼻と反対側に引っ張ると、段鼻側の狭い捲り上げ空間から第一の剥離紙を破断させることなく容易に剥離、除去することができ、かくして第一の貼着剤層を露出させた踏み面被覆部を階段下地の踏み面に押圧すると、踏み面被覆部が第一の貼着剤層を介して階段下地の踏み面に確実に貼着される。
【0013】
このように、本発明の階段被覆材は、踏み面被覆部をその下面に形成された第一の貼着剤層によって階段下地の踏み面に貼着するものであるから、接着剤を塗布する手間やオープンタイムの設定が不要であり、しかも、上記のごとく階段被覆材の位置決め作業、位置決めし直し作業、位置の微調整作業などを容易に行うことができるので、施工性に優れており、本発明の階段被覆工法を効率良く実施できるものである。
【0014】
また、引き剥がし用突片が、第一の剥離紙の端縁を第一の貼着剤層より段鼻側に延設して形成されている階段被覆材は、簡便かつ安価に引き剥がし用突片を形成できる利点がある。
【0015】
そして、蹴上げ面被覆部の裏面に、第二の貼着剤層と第二の剥離紙がこの順で積層されている階段被覆材は、適正に位置決めした後、第二の剥離紙を剥離除去して蹴上げ面被覆部を第二の貼着剤層で階段下地の蹴上げ面に貼着することにより、階段被覆材を適正な位置に容易かつ確実に固定することができ、その後、踏み面被覆部を捲り上げて第一の剥離紙の引き剥がし突片を引っ張って第一の剥離紙を剥離除去する際にも、階段被覆材の位置ズレを阻止して適正な位置を維持できる利点がある。
【0016】
また、本発明に係る階段被覆工法は、上記の階段被覆材を階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って重ね、階段被覆材を適正に位置決めしたうえで、踏み面被覆部を上記段鼻と反対側の端部から捲り上げ、第一の剥離紙の引き剥がし用突片を上記段鼻と反対側に引っ張って第一の剥離紙を剥離除去し、踏み面被覆部を階段下地の踏み面に押圧して貼着するものであるから、接着剤を塗布する手間やオープンタイムの設定が不要であり、しかも、第一の剥離紙を剥離除去して踏み面被覆部を貼着する前に、階段被覆材の位置決め作業、位置決めし直し作業、位置の微調整作業などを容易かつ正確に行うことができるので、施工性に優れ効率良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る階段被覆材の断面図である。
【図2】同階段被覆材を斜め下方から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る階段被覆工法を説明するもので、階段被覆材の段鼻被覆部の裏側に充填材を付着し、階段被覆材を階段下地に重ねる前の状態示す断面図である。
【図4】本発明に係る階段被覆工法を説明するもので、階段被覆材を階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って重ねた状態を示す断面図である。
【図5】本発明に係る階段被覆工法を説明するもので、階段被覆材を位置決めし、第二の剥離紙を剥離除去して蹴上げ面被覆部を第二の貼着剤層で階段下地の蹴上げ面に貼着した状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る階段被覆工法を説明するもので、階段被覆材の踏み面被覆部を段鼻と反対側の端部から捲り上げて、第一の剥離紙を剥離している状態を示す断面図である。
【図7】本発明に係る階段被覆工法を説明するもので、階段被覆材を貼着し終えた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明に係る階段被覆材と階段被覆工法のそれぞれの実施形態を詳述する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る階段被覆材の断面図、図2は同階段被覆材を斜め下方から見た斜視図である。
【0020】
図1〜3に示す階段被覆材1は、逆L字状に屈曲した柔軟な被覆材であって、図1に仮想線で示す階段下地20の踏み面20aを被覆する踏み面被覆部1aと、階段下地20の段鼻20bを被覆する段鼻被覆部1bと、階段下地20の蹴上げ面20cを被覆する蹴上げ面被覆部1cが一体に形成されたものである。この階段被覆材1の踏み面被覆部1aの下面には、第一の貼着剤層2Aが該下面の略全体に亘って積層されており、この第一の貼着剤層2Aの下面には、該貼着剤層2Aを覆う第一の剥離紙3Aが積層されている。また、階段被覆材1の蹴上げ面被覆部1cの裏面には、第二の貼着剤層2Bが蹴上げ面被覆部1cの下縁沿いに全幅に亘って形成されており、更にこの第二の貼着剤層2Bを覆う第二の剥離紙3Bが積層されている。
【0021】
上記階段被覆材1は、柔軟な合成樹脂(例えば軟質塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂等)や合成ゴムなどで成形されたものであって、踏み面被覆部1aの上面には、防滑用の大小の突起1d,1eが多数配列形成されており、また、階段昇降時にストレスが繰返し加えられる段鼻被覆部1bには、補強用の肉盛部1fが形成されている。本実施形態の階段被覆材1それ自体は単層構造であるが、模様や図柄等を有する表面層と無模様の裏面層(バッキング層)を積層した二層構造としてもよく、また、表面層と中間層と裏面層を積層した三層構造としてもよい。
【0022】
第一の貼着剤層2Aは、粘着剤や接着剤を階段被覆材1の踏み面被覆部1aの下面に塗布したり、シート状ないしフィルム状の粘着剤や接着剤を踏み面被覆部1aの下側に積層して形成された層である。この第一の貼着剤層2は、階段昇降時の施工性の向上や衝撃緩和などの観点から、粘弾性のあるものが用いられる。前者の粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの粘着剤が使用され、特にアクリル系の粘着剤が好ましく使用される。これらの粘着剤で形成される第一の貼着剤層2Aの厚さは0.05〜1mmの範囲内とするのが好適であり、特にアクリル系の粘着剤で形成される貼着剤層2Aの場合は0.1mm程度の厚さとするのが最適である。また、後者の接着剤としては、ウレタン系、エポキシ系、変成シリコーン系、酢酸ビニル系、アクリル系などの接着剤が使用され、特にウレタン系の接着剤が好ましく使用される。これらの接着剤で形成される第一の貼着剤層2Aの厚さは0.2〜2.5mmの範囲内とするのが好適であり、特にウレタン系の接着剤で形成される貼着剤層2Aの場合は1mm程度の厚さとするのが最適である。
【0023】
本実施形態では、階段被覆材1の踏み面被覆部1aの下面に単層の第一の貼着剤層2Aを積層しているが、第一の貼着剤層2Aとして、樹脂発泡シートの両面に上記貼着剤(粘着剤または接着剤)を塗布した三層構造の両面貼着シートや、樹脂発泡シートの両面にシート状の上記貼着剤(粘着剤または接着剤)を積層した三層構造の両面貼着シートなどを使用してもよい。このような両面貼着シートが踏み面被覆部1aの下面に設けられていると、樹脂発泡シートによって階段昇降時の衝撃荷重の緩和や音の発生を緩和するとともに、歩行者が万一転倒した際の衝撃がより一層吸収、緩和される利点がある。
【0024】
また、本実施形態では、第一の貼着剤層2Aを階段被覆材1の踏み面被覆部1aの下面の略全域に亘って積層形成しているが、踏み面被覆部1aの下面の段鼻被覆部1b側のみに部分的に積層形成してもよい。また、第一の貼着剤層2Aは、段鼻被覆部1b(換言すれば階段被覆材1のコーナー部)から3〜20mm程度の間隔をあけて、踏み面被覆部1aの下面に積層形成してもよい。
【0025】
この第一の貼着剤層2Aを覆う第一の剥離紙3Aは、第一の貼着剤層2Aを階段下地20の踏み面20aに接触させて階段被覆材1の踏み面被覆部1aを貼着するまでに、第一の貼着剤層2Aが汚れたり濡れたりして貼着力が低下しないように保護し、また、第一の貼着剤層2Aが他の物と貼着して被覆貼着作業を阻害しないように第一の貼着剤層2Aをカバーしておくものであって、剥離性のある材質の薄いシートもしくはフィルムからなるものである。その材質は任意であり、例えば、シリコーン含浸紙や、表面を剥離処理した合成樹脂シートまたはフィルムや、剥離性を有する合成樹脂を薄いシート状若しくはフィルム状に成形したものなどが用いられ、その中でもシリコーン含浸紙が特に好ましく使用される。第一の剥離紙3Aの厚さは特に限定されないが、0.05〜1mm程度の厚さを有するものが好適に使用される。0.05mmより薄い剥離紙3Aは強度が小さいため、剥離の際に破断する可能性があり、1mmより厚い剥離紙3Aは可撓性に劣るため、後述する剥離作業がし辛くなる虞れがある。
【0026】
第一の剥離紙3Aは、段鼻20b側(段鼻被覆部1b側)の端縁が第一の貼着剤層3Aより段鼻20b側(段鼻被覆部1b側)に延設されており、この延設された端部が反対側に折り曲げられて、剥離の際に指で摘んで第一の剥離紙3Aを引き剥がす、引き剥がし用突片4が形成されている。この引き剥がし用突片4の突出寸法(延設寸法)は特に限定されないが、例えば5〜100mm程度の突出寸法とするのが好適である。引き剥がし用突片4の突出寸法が5mmより小さい場合は、引き剥がし用突片4を指で摘まみにくくなり、100mmより大きくなると、第一の貼着剤層2Aよりもかなり面積の大きい第一の剥離紙3Aが必要にあるので材料の無駄が多くなる。
【0027】
本実施形態では、上記のように第一の剥離紙3Aの端縁を延設して折り曲げることにより、引き剥がし用突片4を第一の剥離紙3Aと一体に設けているが、別個に引き剥がし用突片4を作製し、この引き剥がし用突片4を第一の剥離紙3Aの段鼻被覆部1b側の端縁に、接着や溶着(熱溶着、高周波溶着、超音波溶着等)、ステープラーなどによる物理的接合などの公知の手段で接合して設けるようにしてもよい。
【0028】
階段被覆材1の蹴上げ面被覆部1cの下縁に沿って該被覆部1cの裏面に積層される第二の貼着剤層2Bは、階段被覆材1を位置決めしたあと、階段被覆材1の位置がずれないように蹴上げ面被覆部1cを階段下地20の蹴上げ面20cに貼着して階段被覆材1を固定する役目と、階段被覆材1を階段下地20に貼着したのち蹴上げ面被覆部1cが階段下地20の蹴上げ面20cから剥離して階段被覆材1が捲れ上がらないように、蹴上げ被覆部1cを階段下地20の蹴上げ面20cに貼着、固定する役目を果たすものであって、例えば、帯状の樹脂発泡シートの両面に貼着剤を塗布した三層構造の両面貼着テープや、帯状の単層のブチルゴムシートが使用される。両面貼着テープの好ましい例としては、帯状の厚さ0.5〜5mmのポリエチレン発泡シートの両面に、厚さ0.1〜1mmのアクリル系粘着剤層を設けたものが挙げられる。
第二の貼着剤層2Bの幅寸法(上下寸法)は特に制限されないが、30〜150mm程度であることが好ましい。幅寸法が30mmより小さい場合は、貼着力が不足して階段被覆材1の蹴上げ被覆部1cが剥離する虞れがあり、一方、150mmより大きくしても、それに見合った効果が得られず、材料の無駄となる。
【0029】
この第二の貼着剤層2Bを覆う帯状の第二の剥離紙3Bは、前述した第一の剥離紙3Aと同様の材質のものが使用される。
【0030】
なお、図示はしていないが、階段被覆材1と第一の貼着剤層2Aとの間には発泡層を形成してもよく、このように発泡層が形成されていると、階段昇降時の衝撃が発泡層で吸収、緩和される利点があるので好ましい。発泡層としては、例えば合成樹脂を連続発泡又は独立発泡させた厚さ1〜5mm程度の発泡シートなどが好ましく使用される。
【0031】
次に、図3〜図7を参照して、前記の階段被覆材を用いた本発明の階段被覆工法について説明する。
【0032】
先ず、階段被覆材1を階段下地20に重ねる前に、図3に示すように、階段被覆材1の段鼻被覆部1bの裏側に充填材5を付着させ、図4に示すように階段被覆材1を階段下地20に重ねたときに、階段被覆材1の段鼻被覆部1bと階段下地20の段鼻20bとの間に充填材5が充填されるようにする。この充填材5は、階段被覆材1の貼着時の小さな位置ズレや第二の貼着剤層2Bの厚みによって生じる間隙を埋めたり、階段下地20の段鼻20bの欠損部を埋めたりすることを目的として充填するもので、例えば、1成分型もしくは2成分型のウレタン系、2成分型のエポキシ系、1成分型の変成シリコーン系などの充填材が好適に用いられる。
【0033】
次いで、図4に示すように、階段被覆材1を階段下地20の踏み面20aと段鼻20bと蹴上げ面20cに亘って重ね、階段被覆材1の段鼻被覆部1bと階段下地20の段鼻20bとが適正な位置関係となるように、階段被覆材1の位置決めを行う。このように階段被覆材1を階段下地20に重ねた状態では、図4に示すように、第一の貼着剤層2Aが第一の剥離紙3Aに覆われ、第二の貼着剤層2Bも第二の剥離紙3Bに覆われているため、階段被覆材1を移動させながら容易に位置決め作業を行うことができ、勿論、位置決めし直し作業や位置の微調整作業も容易に行うことができる。なお、引き剥がし用突片4は、図4に示すように完全に折り返されて階段下地20の踏み面20aに当接する。
【0034】
階段被覆材1の位置決めが終わると、第二の剥離紙3Bを剥離除去し、図5に示すように、階段被覆材1の蹴上げ面被覆部1cを第二の貼着剤層2Bによって階段下地20の蹴上げ面20cに貼着、固定する。このように、最初に階段被覆材1の蹴上げ面被覆部1cを位置決め固定すると、階段被覆材1の全体的な位置決めを容易かつ正確に行うことができ、かつ、次の工程で階段被覆材1の踏み面被覆部1aを捲り上げて第一の剥離紙3Aを剥離除去する際に、階段被覆材1の位置がずれのを防止することができる。そして、施工後には、蹴上げ面被覆部1cが階段下地20の蹴上げ面20cから剥離して捲れ上がる心配もなくなる。
【0035】
次いで、図6に示すように、階段被覆材1の踏み面被覆部1aを、段鼻20b(段鼻被覆部1b)と反対側の端部(換言すれば奥端側の端部)から捲り上げ、第一の剥離紙3Aの引き剥がし用突片4を指で摘んで、矢印のように段鼻20b(段鼻被覆部1b)と反対側に引っ張って第一の剥離紙3Aを剥離除去する。このように踏み面被覆部1aを捲り上げて第一の剥離紙3Aの引き剥がし用突片4を段鼻20bと反対側に引っ張ると、段鼻20b側の狭い捲り上げ空間から第一の剥離紙3Aを破断させることなく容易かつ確実に剥離除去することができる。
【0036】
そして、図7に示すように、踏み面被覆部1aを階段下地20の踏み面20aに押圧して、踏み面被覆部1aを第一の貼着剤層2Aで貼着固定し、更に、階段被覆材1の周囲の端部をシーリング材6でシールしてもよい。このシーリング材6は階段被覆材1の捲れ防止や防水を目的とするものであり、例えば、1成分型もしくは2成分型のウレタン系、2成分型のエポキシ系、1成分型の変成シリコーン系などのシーリング材が好ましく使用される。
【0037】
なお、階段被覆材1の踏み面被覆部1aの後端(段鼻被覆部1bと反対側の端部)と、第一の貼着剤層2Aの後端を延長し、これらの延長部分を上方に折り曲げて、階段下地20の上段の蹴上げ面に踏み面被覆部1aの後端延長部分を第一の貼着剤層2Aの後端延長部分を介して貼着固定してもよい。
【0038】
以上の説明から理解できるように、本発明の階段被覆材は、踏み面被覆部1aをその下面に積層された第一の貼着剤層2Aによって階段下地20の踏み面20aに貼着すると共に、蹴上げ面被覆部1cをその裏面に積層された第二の貼着剤層2Bによって階段下地20の蹴上げ面20cに貼着するものであるから、接着剤を塗布する手間やオープンタイムの設定が不要であり、しかも、第一の剥離紙3Aと第二の剥離紙3Bを剥離除去する前に階段被覆材1の位置決め作業、位置決めし直し作業、位置の微調整作業などを容易に行うことができ、位置決め後には引き剥がし用突片4を指で摘んで第一の剥離紙3Aを破断することなく容易かつ確実に剥離除去できるものであるから、施工性に優れている。従って、この階段被覆材を用いた本発明の階段被覆工法は、効率良く実施、施工することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 階段被覆材
1a 階段被覆材の踏み面被覆部
1b 階段被覆材の段鼻被覆部
1c 階段被覆材の蹴上げ面被覆部
2A 第一の貼着剤層
2B 第二の貼着剤層
3A 第一の剥離紙
3B 第二の剥離紙
4 引き剥がし用突片
20 階段下地
20a 階段下地の踏み面
20b 階段下地の段鼻
20c 階段下地の蹴上げ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って被覆する逆L字状に屈曲した階段被覆材であって、その踏み面被覆部の下面に第一の貼着剤層が形成され、この第一の貼着剤層の下面に第一の剥離紙が積層され、この第一の剥離紙の上記段鼻側の端縁に引き剥がし用突片が設けられていることを特徴とする階段被覆材。
【請求項2】
引き剥がし用突片が、第一の剥離紙の端縁を第一の貼着剤層より段鼻側に延設して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の階段被覆材。
【請求項3】
蹴上げ面被覆部の裏面に、第二の貼着剤層と第二の剥離紙がこの順で積層されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の階段被覆材。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載された階段被覆材を用いて階段下地を被覆する階段被覆工法であって、階段被覆材を階段下地の踏み面と段鼻と蹴上げ面に亘って重ね、階段被覆材を適正に位置決めしたうえで、踏み面被覆部を上記段鼻と反対側の端部から捲り上げ、第一の剥離紙の引き剥がし用突片を上記段鼻と反対側に引っ張って第一の剥離紙を剥離除去し、踏み面被覆部を階段下地の踏み面に押圧して貼着することを特徴とする階段被覆工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28992(P2013−28992A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166962(P2011−166962)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)