説明

雄型面ファスナーと装飾布帛

【課題】装飾布帛として繊維が網目状に細かく絡み合った下地材に張替自在に施工し得、裏面が繊維が網目状に細かく絡み合った装飾布帛を張替自在に施工する下地材としても使用し得、防滑敷物裏材としても使用し得、両面粘着テープのように表裏両面雄型面ファスナーとして布帛同士の貼合にも使用し得る雄型面ファスナーを効率的に得る。
【解決手段】地経糸11がウエール方向Wに一直線状に形成してコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列間12・12を挿入糸13で連結して編成されるベース経編地にパイル糸14が編み込まれたパイル経編布帛16の非パイル面(裏面)に基布15を積層してニードルパンチングを施して雄型面ファスナー18とする。挿入糸と基布は20dtex以下の繊維で構成し、地経糸とパイル糸には50dtex以上のモノフィラメント糸を適用する。パイルの先端には溶融塊17を形成して雄型フックとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄型フックを構成するパイルの形成されていない非パイル面(裏面)を表側に向けて、パイル床材や繊維製クッション材等に着脱自在に接合することが出来、椅子カバーやベッドカバー、天井化粧シート、壁面化粧シート、敷物等の装飾布帛として使用することも出来る雄型面ファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パイル床材に着脱自在に係止するために敷物の裏面全体に雄型面ファスナーを貼り合わせること、又、不織布状の繊維製クッション材に着脱自在に貼り合わせるために椅子カバーの裏面全体に雄型面ファスナーを貼り合わせることは公知である(例えば、特許文献1、2参照)。又、ニードルパンチングフエルトカーペットの裏面に火焔を当て、その裏面に突き出た毛羽の先端に溶融塊のある雄型フックを形成することは公知である(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭59−069006号公報(特公平3−060483)
【特許文献2】特開平01−042147号公報
【特許文献3】実開昭58−080080号公報(実公昭60−024263)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
在来の雄型面ファスナーは、その雄型フックだけではなく、その雄型フックを係止するベース地にも太手のモノフィラメント糸を使用して緻密に織成されているので、粗硬で接着し難い。そして、椅子カバー、ベッドカバー、天井化粧シート、壁面化粧シート、敷物等(以下、“装飾布帛”と総称する。)に雄型面ファスナーを貼り合わせてパイル床材や繊維製クッション材等に着脱自在に接合し得るようにするためには、その表面材である敷物や椅子カバーを製造する工程と、その裏面に雄型面ファスナーを貼り合わせる工程との二工程を経たなければならず、又、その貼合に使用する接着剤によって装飾布帛や雄型面ファスナーが補強されて粗硬になる。このため、上記特許文献1・2に記載の従来技術では、柔軟可撓な装飾布帛を効率的に得ることは出来ない。
【0004】
上記特許文献3に記載の従来技術では、ニードルパンチングによって絡合させてフエルト化し得る繊維の繊度は実際上20dtexを限度するので、雌型面ファスナーに強固に接合し得る剛直な雄型フックを形成することは出来ない。そして、毛羽立った布帛に火焔を当てることは、その毛羽を消去して表面を平滑にする毛羽焼き仕上として周知であり、繊度が20dtex程度の毛羽は火焔によって消失するので、上記特許文献3に記載の従来技術では、雌型面ファスナーとの接合に有効な雄型フックは形成されない。
【0005】
そこで本発明は、装飾布帛を仕上げるニードルパンチング工程において、その装飾布帛の基材に雄型面ファスナーを重ね合わせ、接着剤を用いることなく基材に雄型面ファスナーを貼り合わせ、接着剤よって接着して使用し易く、(1) 繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やトリコット経編布帛に成る下地材に装飾布帛として張替自在に施工して使用することが出来、(2) 裏面が繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やトリコット経編布帛に成る装飾布帛を張替自在に施工するための下地材として使用することも出来、(3) パイルカーペットやニードルパンチングフエルトカーペットの置き敷き使用される敷物のズレ移動を防ぐ防滑敷物裏材としても使用することが出来、更には、(4) 表裏両面雄型面ファスナーとして、両面粘着テープのように、繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やシンカーループの突き出たトリコット経編布帛等を着脱自在に貼り合わせるために使用することが出来る雄型面ファスナー18を効率的に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る雄型面ファスナーは、地経糸11がウエール方向Wに一直線状に形成してコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列12と鎖編目列12の間を挿入糸13で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸11の鎖編目に係止されたパイル14を形成しているパイル経編布帛16の非パイル面(裏面)に基布15を積層してニードルパンチングを施してパイル経編布帛16と基布15を一体化して成り、パイル経編布帛の挿入糸13と基布15が20dtex以下の繊維を主材として構成され、パイル経編布帛の地経糸11とパイル14が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されており、パイル14の先端が溶融して固化した溶融塊17を形成していることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係る雄型面ファスナーの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、ベース経編地のコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列12と鎖編目列12の間の間隔(T)が5mm以上であり、挿入糸13が無撚糸または撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸であり、挿入糸の太さ(総繊度)が200dtex以上であり、基布15が繊維を積層して形成された繊維積層シートであり、基布15と挿入糸13が10dtex以下の繊維を主材として構成されている点にある。
【0008】
本発明に係る雄型面ファスナーの第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、ベース経編地と基布15がバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂を介して挿入糸13の繊維と基布15の繊維が接着されている点にある。
【0009】
本発明に係る雄型面ファスナーの第4の特徴は、地経糸11がウエール方向Wに一直線状に形成してコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列12と鎖編目列12の間を挿入糸13で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸11の鎖編目に係止されたパイル14を形成しており、挿入糸13が20dtex以下の繊維を主材として構成され、地経糸11とパイル14が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されている2枚のパイル経編布帛16・16を、それらのパイル面(14・14)を外向きにして重ね合わせ、バインダー樹脂によって接合し、又は、ニードルパンチングを施して接合し、一体化して成り、表裏のパイル14・14の先端が溶融して固化した溶融塊17・17を形成している点にある。
【0010】
本発明に係る装飾布帛は、地経糸11がウエール方向Wに一直線状に形成してコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列12と鎖編目列12の間を挿入糸13で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸11の鎖編目に係止されたパイル14を形成しているパイル経編布帛16の非パイル面(裏面)に基布15を積層してニードルパンチングを施してパイル経編布帛16と基布15を一体化して成り、パイル経編布帛の挿入糸13と基布15が20dtex以下の繊維を主材として構成され、パイル経編布帛の地経糸11とパイル14が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されており、パイル14の先端が溶融して固化した溶融塊17を形成している雄型面ファスナー18が裏面を構成していることを第1の特徴とする。
【0011】
本発明に係る装飾布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、ベース経編地のコース方向Cにおいて隣合う鎖編目列12と鎖編目列12の間の間隔(T)が5mm以上であり、挿入糸13が無撚糸または撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸であり、挿入糸の太さ(総繊度)が200dtex以上であり、基布15が繊維を積層して形成された繊維積層シートであり、基布15と挿入糸13が10dtex以下の繊維を主材として構成されている点にある。
【0012】
本発明に係る装飾布帛の第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、ベース経編地と基布15がバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂を介して挿入糸13の繊維と基布15の繊維が接着されている点にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、地経糸11とパイル14が、ニードルパンチング工程においてニードルの作用を受け難い50dtex以上の太手の繊維(モノフィラメント)によって構成されており、又、パイル経編布帛16の長さ方向(ウエール方向W)に一直線状に続く鎖編目列12を構成しているのでニードルに触れ難い。このため、ニードルパンチング工程において地経糸11とパイル14が損傷を受けることなく、パイル14(雄型フック)の安定した形態が維持される。一方、挿入糸13は、地経糸11やパイル糸(14)の介しない鎖編目列12と鎖編目列12の間で帯状を成してウエール方向Wに連続しており、而も、絡合し易い20dtex以下の繊維によって構成されているので、ニードルの作用を受け易い。そして、基布15も、挿入糸13と同様に、絡合し易い20dtex以下の繊維によって構成されているので、ニードルの作用を受けて挿入糸13の繊維と絡合し易い。このため、本発明(請求項1・4)によると、パイル経編布帛16と基布15が接合一体化した雄型面ファスナー18が得られる。
【0014】
こうして得られる雄型面ファスナー18は、雄型フック(パイル14)の突出していない非パイル面が、ニードルパンチングの施された基布15によって構成されている。このため、雄型面ファスナー18は、特許文献1が示すように、非パイル面を表側に向け、椅子カバーやベッドカバー、天井張地、壁張地等の装飾布帛として、その雄型フック(14)が係合可能なトリコット経編布帛や不織布等の繊維が網目状に細かく絡み合った下地材によって調整された椅子フレーム、ベッドフレーム、天井、壁面等の下地面に、装飾布帛として着脱自在に施工することが出来る装飾布帛兼用雄型面ファスナーとなる。
【0015】
本発明の雄型面ファスナー18は、それを下地材として、椅子フレーム、ベッドフレーム、天井、壁面、床面等の下地面、或いは、繊維製クッション材や発泡樹脂製クッション材等に全面接着すると、その雄型面ファスナー18によって調製された下地面に、裏面がトリコット経編布帛のシンカーループや繊維が網目状に細かく絡み合った不織布によって構成された椅子カバーやベッドカバー、天井張地、壁張地、敷物等の装飾布帛を着脱自在に施工することが出来る。
【0016】
又、本発明の雄型面ファスナー18は、その非パイル面(15)に接着剤が吸着し易いので、2枚の雄型面ファスナー18・18を非パイル面を向かい合わせに貼り合わせ、表裏両面に雄型フック14・14の突き出た両面雄型面ファスナー19とし、両面粘着テープのように、繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やシンカーループが突き出たトリコット経編布帛等を着脱自在に貼り合わせるために使用することが出来る。
【0017】
本発明によると、鎖網目列間の間隔(T)が5mm以上なので、鎖網目列間のスペース20にだけニードルパンチングを施すことが出来、そのように鎖網目列間のスペース20にだけニードルパンチングを施しても、挿入糸13と基布15を構成している繊維が10dtex以下であって絡合し易く、又、挿入糸も無撚状態にあってニードルが刺さり易く、而も、基布15が堆積物のように繊維が触れ合い繊維積層シートによって構成されていてニードルが刺さり易い。このため、本発明よると、挿入糸13と基布15がよく絡み合い、基布15とパイル経編布帛16との間で剥離し難く、柔軟可撓性に優れた雄型面ファスナー18が得られる。
【0018】
本発明によると、ベース経編地と基布15がバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂を介して挿入糸13の繊維と基布15の繊維が接着されているので、雄型面ファスナー18を、その非パイル面を表に向けて、防滑敷物その他の装飾布帛として使用することが出来る。
【0019】
更に、本発明のパイル経編布帛16は、その非パイル面(15)が接着剤の吸着し易い20dtex以下の細手の繊維によって構成されているので、接着剤によって2枚貼り合わせにして両面雄型面ファスナー19とすることが出来、又、前記特許文献2が示すように、パイル経編布帛16を防滑裏材として敷物裏面に貼り合わせ、防滑敷物を得ることも出来、特に、ニードルパンチングの施されたものや、非パイル面(15)に起毛処理が施されたものでは、非パイル面(15)に接着剤が吸着し易い繊維間空隙が細かく緻密に形成されているので貼り合わせ易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
雄型面ファスナー18を、繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やトリコット経編布帛に成る下地材を被覆する装飾布帛として使用する場合、それとは逆に、裏面の繊維が網目状に細かく絡み合った装飾布帛を貼り合わせて施工する下地材として使用する場合、その慣用される装飾布帛や下地材は、広い施工面に使用し得る幅90cm以上の長尺物であるから、雄型面ファスナー18のパイル面に突出している雄型フック(パイル14)の分布密度を、数cm角の小片に裁断して使用される在来の雄型面ファスナーのように緻密にする必要はなく、雄型フック(パイル14)を係止する鎖編目列12と鎖編目列12の間の間隔(T)は10〜50mm程度に広くし、雄型フック(パイル14)の分布密度を粗くしてもよい。そのように粗くすると、鎖編目列12を避け、鎖編目列12と鎖編目列12の間の基布15や挿入糸13にだけ容易にニードルパンチングを施すことが出来、ニードルパンチングによる地経糸11とパイル14の損傷を回避することが出来る。
【0021】
基布15の繊維と挿入糸13の繊維を絡合し易くするためには、それらの繊維を可能な限り細く、概して5dtex以下にすることが望ましく、又、基布15には、ニードルパンチングによって繊維が移動し易い不織布やフエルト、或いは、ニードルパンチングフエルトの素材となる繊維ウエブのように、繊維がシート状に積層された繊維積層シートを用い、又、挿入糸13には、ニードルパンチングによって繊維が移動し易い無撚マルチフィラメント糸や無撚結束紡績糸等の無撚糸、又は、撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸、特に、短繊維に成る紡績スライバーに結束糸(ラップヤーン)を巻き付けて結束した無撚結束紡績糸を用いることが望ましい。
【0022】
そのように繊維積層シートを基布15に用い、無撚糸を挿入糸13に用いると共に、ベース経編地の鎖編目列と鎖編目列の間の間隔(T)を10mm以上、概して15mm前後(10〜20mm)にすると、柔軟可撓性に富む雄型面ファスナーが得られる。そして、そのように鎖編目列間12・12を広くしても不都合は生ぜず、却って、そこに介在する挿入糸13が基布15から突き出された繊維毛羽に覆われ、雄型フック面(パイル面14)が繊維毛羽に覆われたフエルト面から雄型フック(14)の先端(17)が露出して点在した恰好になって美しく、商品価値の高い雄型面ファスナー18に仕上がる。
【0023】
更に、ニードルパンチングによって基布15と挿入糸13を絡合一体化し易くするためには、パイル経編布帛16の非パイル面に起毛処理を施しておくとよく、その場合、地経糸11とパイル14が、50dtex以上の太手の繊維(モノフィラメント)であっ起毛毛羽を発生せず、又、起毛針布の巻き付けられている起毛ロールの回転方向に沿ったウエール方向Wに一直線状に続く鎖編目列12を構成しているので、起毛針布に擦られて損傷することがない。そして、挿入糸13は、20dtex以下の繊維によって構成されているので起毛毛羽を発生し易く、而も、鎖編目列間をジグザグに連結してウエール方向Wに帯状に続き、鎖編目列間ではパイル経編布帛の幅方向に続いているので、起毛針布に引っ掛けられ易く、起毛毛羽を発生し易い。そのように起毛し易くするうえでも、鎖編目列間の間隔(T)を5mm以上にし、無撚マルチフィラメント糸や無撚結束紡績糸等の無撚糸、又は、撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸を挿入糸13に使用することが推奨される。
【0024】
ニードルパンチングフエルトでは、その主材となる繊維ウエブのシート状形状を維持するために薄手の布帛が芯材として使用されることがあり、又、無撚結束紡績糸では、その主材となる紡績スライバーを結束する細手の結束糸を必要とする。本発明において「挿入糸と基布が20dtex以下の繊維を主材とする」とは、そのように繊維ウエブの補助的に使用される芯材や、無撚結束紡績糸に補助的に使用される結束糸には、繊度が20dtexを超える繊維の使用が許容されることを意味する。
【0025】
ニードルパンチング工程において、ニードルの作用を受けて雄型フック(パイル14)が押し倒されないようにするためには、雄型フック(パイル14)を太く短くすると共に、ニードルを非パイル面から雄型フック面(パイル面14)に向けて、即ち、基布側(15)からパイル経編布帛側(16)へと差し込んでニードルパンチングを行うとよい。そうすると、雄型フック面(14)が基布15突き出された繊維毛羽に覆われてフエルトの観を呈し、その繊維毛羽の間から雄型フック(14)が点在するように露出して、雄型面ファスナー18が商品として好ましい美観を呈し、又、繊維毛羽に根元が支えられて雄型フック(パイル14)が押し倒され難くなり、雄型フック(14)と雄型フック(14)の間に塵埃が入り込み難く、雄型面ファスナー18が汚れ難くなる。雄型フック面(14)の美観を整えるためには、基布15の繊維と挿入糸13の繊維を同系色にし、雄型フック面(14)を無地一色にするとよい。
【0026】
雄型フック(パイル)の先端の溶融塊17は、パイル経編布帛16と基布15を一体化してから形成してもよいし、又、基布15と一体化する前のパイル経編布帛16の状態で形成してもよい。パイル経編布帛15と基布15が一体化された状態では、ベース経編地がニードルパンチングによる繊維毛羽で覆われているので、パイル面(14)に火焔を当てて溶融塊17を形成してもベース経編地が破れることはない。パイル経編布帛16は、ダブルラッシェル経編機においてベース経編地を二重に編成しつつ、それら2枚のベース経編地をパイル糸(14)で連結して二重構造編地とし、その後、2枚のベース経編地の間でパイル糸(14)をナイフによって所謂センターカットし、2枚同時に形成される。従って、雄型フック(パイル)の先端の溶融塊17を、基布15と一体化する前のパイル経編布帛16の状態で形成する場合には、そのセンターカット時にナイフに代えてヒーターや加熱ナイフを使用し、センターカットと同時に溶融塊17を形成することが出来る。その場合でも、隣合う鎖編目列間の間隔(T)を5mm以上にしておくと、その隣合う鎖編目列12・12に係止されているパイル14とパイル14が溶融塊(17)を介して接合することはなく、雄型フック(パイル14)として有効な溶融塊17が形成されるので好都合である。
【0027】
挿入糸13の繊維と基布15の繊維をバインダー樹脂によって接合するためには、それらの繊維にバインダー樹脂を鞘成分とする芯鞘複合繊維を使用してもよく、又、低粘に調製された接着剤溶液を付与して雄型面ファスナー18を仕上げてもよく、その場合、50dtex以上の太いモノフィラメントによって雄型フック(パイル14)を構成しておくと、雄型フック(パイル14)が押し倒されたままベース経編地に接着セットされることはなく、雄型フック面(パイル面14)に突き出された繊維毛羽に押し返されて起立状態に維持される。
【0028】
パイル経編布帛(16)は、基布(15)として使用することも出来る。その場合は、非パイル面同士を向かい合わせにして2枚のパイル経編布帛16・16を重ね合わせてニードルパンチングが施され、表裏両面に雄型フック(14)の突き出た両面雄型面ファスナー19が得られることになる(図2)。
【0029】
上記の通り、本発明によると、繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やトリコット経編布帛に成る下地材に装飾布帛として張替自在に施工し得る装飾布帛兼用雄型面ファスナーとして使用することも出来、裏面が繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やトリコット経編布帛に成る装飾布帛を張替自在に施工するための下地材兼用雄型面ファスナーとして使用することも出来、又、パイルカーペットやニードルパンチングフエルトカーペットの置き敷き使用される敷物のズレ移動を防ぐ防滑敷物裏材としても使用することが出来、更には、表裏両面雄型面ファスナー19として、両面粘着テープのように、繊維が網目状に細かく絡み合った不織布やシンカーループの突き出たトリコット経編布帛等を着脱自在に貼り合わせるために使用することが出来る雄型面ファスナー18が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る雄型面ファスナーの斜視図であり、一部を円で囲んで拡大して図示している。
【図2】本発明に係る雄型面ファスナーの斜視図であり、一部を円で囲んで拡大して図示している。
【符号の説明】
【0031】
11:地経糸
12:鎖編目列
13:挿入糸
14:パイル(雄型フック、パイル面)
15:基布
16:パイル経編布帛
17:溶融塊
18:雄型面ファスナー
19:両面雄型面ファスナー
20:スペース
C :コース方向
T :鎖編目列と鎖編目列の間のスペース間隔
W :ウエール方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地経糸(11)がウエール方向(W)に一直線状に形成してコース方向(C)において隣合う鎖編目列(12)と鎖編目列(12)の間を挿入糸(13)で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸(11)の鎖編目に係止されたパイル(14)を形成しているパイル経編布帛(16)の非パイル面(裏面)に基布(15)を積層してニードルパンチングを施してパイル経編布帛(16)と基布(15)を一体化して成り、パイル経編布帛の挿入糸(13)と基布(15)が20dtex以下の繊維を主材として構成され、パイル経編布帛の地経糸(11)とパイル(14)が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されており、パイル(14)の先端が溶融して固化した溶融塊(17)を形成している雄型面ファスナー。
【請求項2】
ベース経編地のコース方向(C)において隣合う鎖編目列(12)と鎖編目列(12)の間の間隔(T)が5mm以上であり、挿入糸(13)が無撚糸または撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸であり、挿入糸の太さ(総繊度)が200dtex以上であり、基布(15)が繊維を積層して形成された繊維積層シートであり、基布(15)と挿入糸(13)が10dtex以下の繊維を主材として構成されている前掲請求項1に記載の雄型面ファスナー。
【請求項3】
ベース経編地と基布(15)がバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂を介して挿入糸(13)の繊維と基布(15)の繊維が接着されている前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の雄型面ファスナー。
【請求項4】
地経糸(11)がウエール方向(W)に一直線状に形成してコース方向(C)において隣合う鎖編目列(12)と鎖編目列(12)の間を挿入糸(13)で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸(11)の鎖編目に係止されたパイル(14)を形成しており、挿入糸(13)が20dtex以下の繊維を主材として構成され、地経糸(11)とパイル(14)が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されている2枚のパイル経編布帛(16・16)を、それらのパイル面(14・14)を外向きにして重ね合わせ、バインダー樹脂によって接合し、又は、ニードルパンチングを施して接合し、一体化して成り、表裏のパイル(14・14)の先端が溶融して固化した溶融塊(17・17)を形成している雄型面ファスナー。
【請求項5】
地経糸(11)がウエール方向(W)に一直線状に形成してコース方向(C)において隣合う鎖編目列(12)と鎖編目列(12)の間を挿入糸(13)で連結して編成されるベース経編地に編み込まれたパイル糸が地経糸(11)の鎖編目に係止されたパイル(14)を形成しているパイル経編布帛(16)の非パイル面(裏面)に基布(15)を積層してニードルパンチングを施してパイル経編布帛(16)と基布(15)を一体化して成り、パイル経編布帛の挿入糸(13)と基布(15)が20dtex以下の繊維を主材として構成され、パイル経編布帛の地経糸(11)とパイル(14)が50dtex以上のモノフィラメント糸によって構成されており、パイル(14)の先端が溶融して固化した溶融塊(17)を形成している雄型面ファスナー(18)が裏面を構成している装飾布帛。
【請求項6】
ベース経編地のコース方向(C)において隣合う鎖編目列(12)と鎖編目列(12)の間の間隔(T)が5mm以上であり、挿入糸(13)が無撚糸または撚山間隔(撚ピッチ)が鎖編目列の間隔(T)の2倍以上の甘撚糸であり、挿入糸の太さ(総繊度)が200dtex以上であり、基布(15)が繊維を積層して形成された繊維積層シートであり、基布(15)と挿入糸(13)が10dtex以下の繊維を主材として構成されている前掲請求項5に記載の装飾布帛。
【請求項7】
ベース経編地と基布(15)がバインダー樹脂を含有し、そのバインダー樹脂を介して挿入糸(13)の繊維と基布(15)の繊維が接着されている前掲請求項5と請求項6の何れかに記載の装飾布帛。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−55467(P2006−55467A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241919(P2004−241919)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(392029236)レイテック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】