説明

集卵機の卵転出機構

【課題】養鶏用多段家禽ゲージの集卵コンベアに設置された集卵用上下送り装置の卵排出時において卵を確実に排出可能とする集卵機の卵転出機構を提供する。
【解決手段】集卵用上下送り装置12が、卵を載置し任意の位置で卵を排出する卵載置手段Aと、これが、その卵載置位置の直下に前記卵の底面に対して接触可能な空間部を備え、該卵載置手段Aが回収した卵を任意の位置まで搬送する無端コンベア11と連結し、しかも無端コンベア11の移送方向が変わることに対応して卵載置手段Aに対する相対距離が変化するようにした卵転出用突出部Tを卵載置手段下流側に設け、相対距離が最小になったときに、前記卵転出用突出部の端部が前記空間部に達するようにして、卵の転出を助けるようにした集卵機の卵転出機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏用多段家禽ケージに設けられたケージの各ケージで産卵される卵を回収しケージの長手水平方向の一端側へ回収および搬送する集卵コンベアと、養鶏用多段家禽ケージの一端側に設けられ、上下方向に卵を移送し予め設定した位置で、集卵コンベアで回収した卵を排出する集卵用上下送り装置に関し、特に上記集卵用上下送り装置が卵排出時において、所望の適切な位置(高さ)で卵を確実に排出可能とする、集卵機の卵転出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
上記集卵用上下送り装置は、例えば予め設定した集中集卵コンベアの卵入口まで、卵を落とさず且つ正確に卵を送り届ける必要があるが、集卵用上下送り装置の特に卵載置手段が、必要以上に卵をホールドするトラブルが生じ、そのホールドした卵は予定外の場所で落下し、再び卵載置手段を汚染する場合もあり、更に必要以上の卵のホールドが助長されたり、散乱した卵により不衛生になっていた。
【特許文献1】特開2003−259754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記、集卵用上下送り装置に取り付けられた卵載置手段に乗せられた卵は、例えば上位置に設けられた集中集卵コンベアにその卵が転出される。その際に載置手段を構成する例えば卵載置バーは、スプロケットに沿って傾斜させることにより転出を可能としている。通常において、何ら問題なく転出は完了するが、載置される卵が想定する標準的なサイズよりも極端に小さいサイズである場合、または何らかのタイミングで卵が割れて、その割れた卵が卵載置バーに付着し、予定外の粘性を持った場合、または予想外の湿度(湿気)が卵載置バー周辺に存在した場合などによって、卵が上記卵載置バーから希望するタイミングで離れず、集中集卵コンベアに転出されない、あるいは、集中集卵コンベアに対して不安定な状況で転出されるという問題が生じていた。本発明は以上のような予想外の条件が生じた場合でも卵の転出を希望するタイミングで行えるようにすることを目的としている。なお、必要以上のホールドが生じないように卵載置手段周辺にスクレーパを設ける手法が考えられるが、スクレーパのような実質面積が大きく汚れを呼び込むような処理装置を設置することは、衛生面において不利、かつ清掃作業を困難にし、結果としてコンベアを通過する卵の品質を低下させることになる。従って、衛生面でより有利な手法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するために、本発明の集卵機の卵転出機構は、養鶏用多段家禽ケージに設けられたケージの各ケージで産卵される卵を回収しケージの長手水平方向の一端側へ回収および搬送する集卵コンベアと、養鶏用多段家禽ケージの一端側に設けられ、上下方向に卵を移送し予め設定した位置で、集卵コンベアで回収した卵を排出する集卵用上下送り装置において、上記集卵用上下送り装置が、前記卵を載置し且つ任意の位置で卵を排出可能とする卵載置手段と、該卵載置手段が、その卵載置位置の直下に前記卵の底面に対して接触可能な空間部を備え、且つ、該卵載置手段が、回収した卵を任意の位置まで搬送する力を伝達する無端コンベアと連結し、且つ、無端コンベアの移送方向の変化に応じて、該卵載置手段に対して相対距離が変化するように構成した、卵転出用突出部を該卵載置手段下流側に隣接して設け、該相対距離が最小になったときに、前記卵転出用突出部の端部が前記空間部に達するようにしたことを特徴としている。
なお、好ましくは前記卵を排出する位置において、卵転出用突出部(T)の端部が前記空間部(K)に達するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1で定義される本発明は、まず養鶏用多段家禽ケージに設けられたケージの各ケージで産卵される卵を回収しケージの長手水平方向の一端側へ回収および搬送する集卵コンベアに利用されることを前提とし、
しかも上下方向に卵を移送し予め設定した位置で、集卵コンベアで回収した卵を排出するように構成された集卵用上下送り装置において利用され、
上記集卵用上下送り装置が、前記卵を載置し且つ任意の位置で卵を排出可能とする卵載置手段と、該卵載置手段が、その卵載置位置の直下に前記卵の底面に対して接触可能な空間部を備え、
該卵載置手段が、回収した卵を任意の位置まで搬送する力を伝達する無端コンベアと連結することにより、該卵載置手段は無端コンベアの移送する向きに依存し、
且つ、無端コンベアの移送方向の変化に応じて、該卵載置手段に対して相対距離が変化するように構成した、卵転出用突出部を該無端コンベアの搬送方向に対する下流側に隣接して設け、
さらに、該相対距離が最小になったときに、前記卵転出用突出部の端部が前記空間部に達するように構成したことを特徴としている。
従って、卵載置手段に載置された卵のサイズ如何では、上記空間部に卵の底部が位置し、しかも上記空間部に卵の底が位置するような条件では、卵が卵載置手段から抜け難く、このような状況下においても、卵転出用突出部が、その卵の底部である上記空間部に移動して来ることにより、卵の下から卵転出用突出部によって押されることにより、間違いなく転出できるようになる。
なお、好ましくは前記卵を排出する位置において、卵転出用突出部の端部が前記空間部に達するようにすることが望ましい。また、その具体的な手段としては、上記前記卵を排出する位置において、無端コンベアの移送方向の角度変位が最大となるように、案内用スプロケット12aで形成される、無端コンベアの移送方向(角度)を決定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付図面に示した一実施例を参照しながら本発明に係る卵転出機構について説明する。
図1は、本発明に係る集卵機の卵転出機構を備えた集卵装置システムの概略側面図であり、図2は、図1のQ−Q’−R−R’で囲われた部分拡大図であり、図3は卵転出機構の各部品を示す分解斜視図であり、図4は組み立てられた卵転出機構の斜視図を示し、更に図5は上記図4の動作を説明するために機構部分を断面とした説明図である。
【0007】
図中、符号1は多段式ケージユニットを示している。このケージユニット1は、複数のケージ室2に仕切られたケージ列3を垂直方向に複数重ねたもので、各ケージ列3に沿って集卵コンベア4が設けられ、これら集卵コンベア4で各ケージ室2内に収容されている鶏が生んだ卵を、ケージユニット1の一方の端部(図1では左端)に向けて移送するように構成されている。
【0008】
前述のように集卵コンベア4によって卵が移送されて来るケージユニット1の左端部にはコントロールコンベア5及び集卵用上下送り装置12が設けられており、前記コントロールコンベア5の上方には、ケージユニット1の長手方向に略直交する方向に伸びる1本の集中集卵コンベア7が集卵用上下送り装置12の上部に隣接するように設置されている(所望により集中集卵コンベア7は集卵用上下送り装置12の下部に設けることができる)。
【0009】
前記コントロールコンベア5は、各段の集卵コンベア4に対応した複数のループ状に形成される複数本の卵載置用シャフト5dを備え、これら卵載置用シャフト5dでケージユニット1の各集卵コンベア4の卵を、卵の転がる姿勢を制御しつつ集卵用上下送り装置12に乗せ変える。
【0010】
前記集卵用上下送り装置12は、少なくともケージユニット1の最下段に位置する集卵コンベア4’より下方から上側の集中集卵コンベア7の上方まで略垂直方向の軌道に沿って駆動する無端コンベア11を備え、該無端コンベア11には複数のバー型卵受け部A(該バー型卵受け部Aは卵載置手段の一例である)が一定間隔に多数固定され、さらに、このバー型卵受け部Aの下流側に、本発明の卵転出機構における主要部品である卵転出用突出部Tが設けられている。
【0011】
次ぎに、図3を参照して卵転出機構の各部品を説明する。同図において、11は無端コンベア、Aはバー型卵受け部、Tは卵転出用組立体である。無端コンベア11は、略8の字形状の構成部材Cが回動自在に接続される接続部C1によって、連結されて構成されるチェーン組立体である(このチェーンの構成要素に関しては極標準的なタイプである)。
【0012】
バー型卵受け部Aは、上記接続部C1と挿入固定する連結支持棒A1および連結支持棒A2が設けられ、さらに、該連結支持棒A1およびA2の両端側には略三角形の側壁部材A4が設けられる。また、側壁部材間を連結し、且つ卵に対して衝撃を与えないような素材(例えば、プラスチック材)によって構成された載置用棒A1’およびA3が設けられる。この載置用棒A1’は上記連結支持棒A1に貫通固定され、載置用棒A3は上記側壁部材A4のチェーンから離れた一端に設けられている。また、これら載置用棒A1’およびA3にまたがるように卵は載置され、また、載置用棒A1’およびA3の間には載置された卵の底面が位置可能な空間部Kが構成されている。
一方、卵転出用組立体Tは、上記空間部Kに向かって角度が付けられて突出形成された突出用部材T1と、上記突出用部材T1を上記チェーン間に安定して配置するための組立用棒T2および、これら突出用部材T1と組立用棒T2とを溶接にて結合するための結合棒T3とから構成されている。
【0013】
以上から成るバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tとは1つの接続部C1を隔てて隣接する接続部C1に各々結合される。(なお、この隔てる間隔は、必ず一つの接続部C1とは限らず、無端コンベア11の軌道の形状や、バー型卵受け部Aや卵転出用組立体Tの形状によっては、2つ分の間隔を隔てて利用することもある)。
【0014】
図4は図2中で指示したy部分におけるバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tの部分拡大斜視図であり、視点を下方に設けている。また、チェーンの軌道を決定しているスプロケットGは簡略的に示している。
【0015】
図5は、図4で示したバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tとを中央縦断面として表した図であり、同図における左側の図面と右側の図面は同じものであるが、左側は視点を上に設け、右側は下方に視点を設けて描いており、両図を参照することにより、隠れた線が少なくなるように配慮したものである。さて、同図においては上下2つの位置違いのバー型卵受け部Aと2つの位置違いの卵転出用組立体Tが描かれており、下側のバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tとは、直線上に位置している。それは、無端コンベア11を構成するチェーンが直線状態にあるためである(当然の状況であるが、チェーンを牽引するためのスプロケットと該スプロケットの間に位置しているために直線状になっており、スプロケット上に位置している場合には、上側のバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tのように、スプロケットの半径に沿って曲線を描く)。この下側のバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tの位置関係において、載置された卵の底面と、上記突出用部材T1との距離は、隔たりがある。この隔たりは、卵の直径が小さく、深く載置された状態であっても、載置された卵の底面と、上記突出用部材T1との距離は依然として隔たりがある。一方、上側のバー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tは、集卵用上下送り装置12の案内用スプロケット12a上に到達している状態である。それは、即ち、バー型卵受け部Aと卵転出用組立体Tの動作の基礎とするチェーンCの構成部材C1が、案内用スプロケット12a上にあり、案内用スプロケット12aの直径に依存した軌道に沿って角度が付けられている。この角度の違いによって、卵転出用組立体Tの上記突出用部材T1が、バー型卵受け部Aに載置された卵の底面が位置する空間部Kまで到達する。その結果として、比較的小さなサイズの卵の場合には、その卵の底部と上記突出用部材T1とが接触する(同図におけるS位置)この接触は、上記軌道の変化に従って、徐々に接触するので、卵に対する衝撃は極めて少ないことが特徴として挙げられる。
【0016】
図6は、卵転出用組立体Tを設けていない従来の状態を示しており、卵のサイズが比較的小さい場合で、なおかつ載置用棒A1’およびA3の一方若しくは両方に粘着性の汚れが付着した場合において、卵が載置用棒に付着して、卵が載置用棒から離れないトラブルを起こしている状態を示している。なお、卵転出機構を点線として表し、実線が従来技術の構成とした説明用側面図である。
【0017】
上記の一実施例において説明した、卵載置手段は、上述のような2本の載置用棒によって構成されるタイプのみならず、載置された卵の下方において空間部が形成されるような卵載置手段であれば、特にその載置形状は限定する必要は無い。
さらに、実施例において、スプロケット12aの直径が、無端コンベアCの向きを特定しているが、無端コンベアCの向き(走行の軌道)が決定できれば、どのような機構であっても構わず、例えば、小さなスプロケットを軌道に沿って並べるような構成とすることも可能である。
また、卵転出用突出部Tが空間部Kに達して、卵の底部を押すタイミングは、必ずしも転出時の一回とする必要はなく、転出前の搬送途中で、卵が転出しない程度に底部を押すことも可能である。そうすることにより、卵載置手段A上に卵が粘着することを未然に防ぐことができ、そうすることで、転出時にふたたび卵転出用突出部Tによって卵の底部を押すことにより完全な転出を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る集卵機の卵転出機構を備えた集卵装置システムの概略側面図。
【図2】図1のQ−Q’−R−R’で囲われた部分拡大図。
【図3】卵転出機構の各部品を示す分解斜視図。
【図4】組み立てられた卵転出機構の斜視図。
【図5】上記図4の動作を説明するために機構部分を断面とした説明図。
【図6】卵転出機構を点線として表し、実線が従来技術の構成とした説明用側面図。
【符号の説明】
【0019】
A…バー型卵受け部、卵載置手段
T…卵転出用突出部
1…養鶏用多段家禽ケージ
2…ケージ室
3…ケージ列
4…集卵コンベア
5…コントロールコンベア
7…集中集卵コンベア
11…無端コンベア
12…集卵用上下送り装置
12a、12b…案内用スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養鶏用多段家禽ケージ(1)に設けられたケージの各ケージで産卵される卵を回収しケージの長手水平方向の一端側へ回収および搬送する集卵コンベア(4)と、養鶏用多段家禽ケージ(1)の一端側に設けられ、上下方向に卵を移送し予め設定した位置で、集卵コンベアで回収した卵を排出する集卵用上下送り装置(12)において、上記集卵用上下送り装置(12)が、前記卵を載置し且つ任意の位置で卵を排出可能とする卵載置手段(A)と、該卵載置手段(A)が、その卵載置位置の直下に前記卵の底面に対して接触可能な空間部(K)を備え、且つ、該卵載置手段(A)が、回収した卵を任意の位置まで搬送する力を伝達する無端コンベア(C)と連結し、且つ、無端コンベア(C)の移送方向の変化に応じて、該卵載置手段(A)に対して相対距離が変化するように構成した、卵転出用突出部(T)を該卵載置手段(A)下流側に隣接して設け、該相対距離が最小になったときに、前記卵転出用突出部(T)の端部が前記空間部に達するようにしたことを特徴とする集卵機の卵転出機構。
【請求項2】
前記卵を排出する位置において、卵転出用突出部(T)の端部が前記空間部(K)に達するようにした、請求項1に記載の集卵機の卵転出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−191849(P2006−191849A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6255(P2005−6255)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390030661)東洋システム株式会社 (22)
【Fターム(参考)】