説明

集合住宅用の屋外分電盤

【課題】世帯毎の漏電遮断器を複数備えている集合住宅用の屋外分電盤において、各世帯の居住者によって自己の分岐漏電遮断器の復旧作業を可能とさせる。
【解決手段】前方に開口している収容ボックス10と、この収容ボックス10に複数収容されている世帯毎の漏電遮断器2と、収容ボックス10の開口全体を開閉可能とする扉本体11と、この扉本体11を収容ボックス10に施錠可能とする本体施錠部12と、複数の漏電遮断器2それぞれと一対一の関係で扉本体11に開閉可能として取り付けられ個別に開状態とすることによって漏電遮断器2を個別に操作可能とする複数の小扉7と、小扉7毎に設けられ小扉7を施錠可能であり、漏電遮断器2が作動していない通常時は施錠した状態とし、漏電遮断器2が作動した時に対応する小扉の施錠を解除する個別施錠部8とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅用の屋外分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
一つの建物内に複数の世帯が入居している集合住宅では、各世帯において電気が安全に使用されるために、世帯毎の漏電遮断器(漏電ブレーカ)を備えた屋外分電盤が、建物の共用設備部の外壁などに設置されている。この屋外分電盤は、一般的に、世帯毎の漏電遮断器の他に、これら漏電遮断器の一次側に設置されている集合住宅全体用の漏電遮断器を備えている。
【0003】
集合住宅全体用の漏電遮断器は、集合住宅全体における過負荷又は短絡などの要因により二次側の回路に異常な電流が流れた場合に、一次側からの電力供給を遮断する主幹漏電遮断器である。そして、世帯毎の漏電遮断器は、各世帯における過負荷又は短絡などの要因により二次側の回路に異常な電流が流れた場合に、一次側(主幹漏電遮断器)からの電力供給を遮断する分岐漏電遮断器である。
【0004】
そして、従来の集合住宅用の屋外分電盤では、主幹漏電遮断器と、この主幹漏電遮断器の二次側に接続されている複数の分岐漏電遮断器とが、一つのボックス内に収容されており、このボックスには一つの扉が設けられている(例えば、特許文献1参照)。この扉には、集合住宅の管理者などによって管理されている鍵が設けられており、通常は施錠されている。したがって、主幹漏電遮断器のみならず、分岐漏電遮断器を操作する場合であっても、鍵を開錠して扉を開ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−271111号公報(図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、集合住宅用の屋外分電盤の扉には、集合住宅の管理者などによって管理されている鍵が設けられており、通常では施錠されていることから、仮に、分岐漏電遮断器の二次側で異常が発生し、この分岐漏電遮断器が作動して電力供給が遮断された場合に、この異常が発生した世帯の居住者が、屋外分電盤内に設置されている自己の分岐漏電遮断器の復旧作業を行おうとしても、それは不可能である。このため、分岐漏電遮断器が作動した場合、管理者によって屋外分電盤の扉の鍵を開錠してもらう必要があり、復旧が遅れてしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、世帯毎の漏電遮断器を複数備えている集合住宅用の屋外分電盤において、各世帯の居住者によって自己の分岐漏電遮断器の復旧作業を行うことが可能となる集合住宅用の屋外分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の集合住宅用の屋外分電盤は、前方に開口している収容ボックスと、前記収容ボックスに複数収容されている世帯毎の漏電遮断器と、前記収容ボックスの開口全体を開閉可能として当該収容ボックスに取り付けられている扉本体と、前記扉本体を前記収容ボックスに施錠可能とする本体施錠部と、複数の前記漏電遮断器それぞれと一対一の関係で前記扉本体に開閉可能として取り付けられ、当該扉本体を閉じた状態で、個別に開状態とすることによって前記漏電遮断器を個別に操作可能とする複数の小扉と、前記小扉毎に設けられ当該小扉を施錠可能であり、前記漏電遮断器が作動していない通常時は、対応する前記小扉を施錠した状態とし、前記漏電遮断器が作動した時に、対応する前記小扉の施錠を解除する個別施錠部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
例えば、集合住宅に含まれる特定の世帯で過電流などの異常が発生し、この集合住宅用の屋外分電盤において、その世帯用の漏電遮断器が作動して電力供給が遮断された場合、本発明によれば、扉本体が閉じた状態でかつ本体施錠部が施錠状態であっても、自己の漏電遮断器に対応する小扉の個別施錠部の施錠が解除されることによって、当該小扉を開けることができる。これにより、その世帯の居住者が、自己の漏電遮断器の復旧作業を行うことができる。つまり、その世帯の居住者によって、自己の漏電遮断器の復旧作業を行うために、屋外分電盤の全体の扉本体を開く必要がない。
【0010】
また、前記個別施錠部は、前記小扉に対応する前記漏電遮断器が作動すると、当該小扉の施錠を自動的に解除する電磁ロックであるのが好ましい。
この場合、漏電遮断器が作動して電力供給が遮断されると、自動的に個別施錠部による小扉の施錠が解除される。このため、小扉の施錠を解除する操作を行わなくても、小扉を開けることができ、漏電遮断器の復旧操作を容易に行うことが可能となる。
【0011】
また、電磁ロックからなる個別施錠部を備えている前記屋外分電盤は、前記世帯毎の漏電遮断器の一次側と接続されている集合住宅全体用の漏電遮断器と、前記集合住宅全体用の漏電遮断器が作動すると、全ての前記小扉を施錠した状態とする一括施錠部とを更に備えているのが好ましい。
集合住宅全体で異常が発生し、集合住宅用の漏電遮断器が作動して全体が停電した場合、世帯毎の漏電遮断器についても電流が流れないことから小扉毎の前記電磁ロックが解除され、全ての小扉を開けることが可能な状態となってしまうが、前記一括施錠部により全ての小扉を施錠状態とすることができる。この場合、集合住宅の管理者が屋外分電盤の復旧作業を行うことができる。
【0012】
また、前記屋外分電盤は、前記小扉毎に設けられ前記扉本体に対して当該小扉を施錠可能であって、前記小扉に対応する世帯毎の前記漏電遮断器の一次側から二次側への電力供給が不要である不使用状態で、当該小扉を施錠状態に保つ機械式施錠部を、更に備えているのが好ましい。
一般的に、集合住宅のうちのある世帯が転居して空室になると、その世帯に対応する漏電遮断器では一次側から二次側への電力供給が不要であるため、電力供給を遮断した状態としておく。この状態では、前記個別施錠部の施錠が解除されてしまい、小扉を開けることができる状態となるが、前記機械式施錠部によってその小扉を施錠状態に保つことができるので、空室となっている期間に、転居した世帯の漏電遮断器用の小扉が開けられるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の集合住宅用の屋外分電盤によれば、扉本体が閉状態でかつ本体施錠部が施錠状態であっても、個別施錠部が開錠されることによって、小扉を開けることができるので、各世帯の居住者が、自己の漏電遮断器を復旧させる作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の屋外分電盤の概略構成を示す説明図である。
【図2】扉本体を閉じた状態にある屋外分電盤の説明図である。
【図3】扉本体は閉じた状態であり、一つの小扉が開いた状態を示している。
【図4】屋外分電盤を説明する図であり、閉状態にある扉本体を記載せず、小扉のみを二点鎖線によって記載したイメージ図である。
【図5】屋外分電盤を説明する図であり、閉状態にある扉本体を記載せず、小扉のみを二点鎖線によって記載したイメージ図である。
【図6】集合住宅に含まれる一つの世帯において停電が発生した時の屋外分電盤の復旧方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の屋外分電盤の概略構成を示す説明図である。この屋外分電盤1は、一つの建物内に複数の世帯(電力需要者)が入居している集合住宅用の分電盤であり、例えば、建物の廊下などの共用設備部の外壁に設置されている。屋外分電盤1は、各世帯において電気が安全に使用されるために、漏電遮断器(漏電ブレーカ)2を複数備えている。漏電遮断器2は世帯毎に用意されており、複数の漏電遮断器2が一つの収容ボックス10内に収容されている。なお、図1では、屋外分電盤1は、4台の漏電遮断器2を備えている。つまり、世帯数が4である集合住宅を意味する。なお、世帯数は当然これ以外であってもよい。
【0016】
収容ボックス10は前方に開口しており、この開口全体を開閉可能として扉本体11が収容ボックス10に取り付けられている。扉本体11はヒンジ4によって収容ボックス10の一部に取り付けられている。なお、図1は、扉本体11が開いた状態を示している。
以上より、この屋外分電盤1は、収容ボックス10と、この収容ボックス10に複数収容されている世帯毎の漏電遮断器2と、開口全体を開閉可能として収容ボックス10に取り付けられている単一の扉本体11とを備えている。
また、本実施形態に係る屋外分電盤1の収容ボックス10内には、複数の世帯毎の漏電遮断器2それぞれの一次側に接続されている集合住宅全体用の漏電遮断器3が設けられている。
【0017】
集合住宅全体用の漏電遮断器3は、集合住宅全体における過負荷又は短絡などの要因により漏電遮断器3の二次側の回路に異常な電流が流れた場合に、一次側からの電力供給を遮断する「主幹漏電遮断器」である。
世帯毎の漏電遮断器2は、各世帯における過負荷又は短絡などの要因により漏電遮断器2の二次側の回路に異常な電流が流れた場合に、一次側(主幹漏電遮断器3)からの電力供給を遮断する「分岐漏電遮断器」である。
【0018】
図1に示すように、主幹漏電遮断器3は、低圧配電線路の単層三線式であり、主幹漏電遮断器3の二次側に、第1の電圧線51、第2の電圧線52及びアース線53が接続されており、これらの線は複数カ所で分岐しており、4つの分岐漏電遮断器2それぞれの一次側、及び、後述する電磁石の機能を有する駆動部21と接続されている。
【0019】
また、屋外分電盤1は、扉本体11を収容ボックス10に施錠可能とする本体施錠部12を備えている。本実施形態の本体施錠部12は、鍵と、鍵が挿入される鍵穴を有するシリンダとを有する機械的なロック装置であり、集合住宅の管理者が鍵を鍵穴に挿入して操作することで、収容ボックス10に対して扉本体11を閉じた状態で拘束したり、扉本体11を開くことができる状態にしたりする。この本体施錠部12は、管理者によって管理され、各世帯の居住者は扱うことができない。
【0020】
図2は、扉本体11を閉じた状態にある屋外分電盤1の説明図である。図1と図2とにおいて、この屋外分電盤1は、更に、複数の小扉7を備えており、これら小扉7それぞれは、ヒンジ13によって扉本体11に開閉可能として取り付けられている。なお、図1に示すように、小扉7の裏面には、後述する個別施錠部8(図4参照)の被吸着部8bが取り付けられている。収容ボックス10、扉本体11及び小扉7は、例えば鋼製からなる。
【0021】
図3は、扉本体11は閉じた状態であり、一つの小扉7が開いた状態を示している。図2と図3とに示すように、上から順番に、第1の分岐漏電遮断器2−1に(閉じた状態で)対向する一つの小扉7−1が設けられており、第2の分岐漏電遮断器2−2に対向する一つの小扉7−2が設けられており、第3の分岐漏電遮断器2−3に対向する一つの小扉7−3が設けられており、第4の分岐漏電遮断器2−4に対向する一つの小扉7−4が設けられている。つまり、小扉7の数と分岐漏電遮断器2の数とは同数である。
【0022】
以上より、小扉7は、4台の分岐漏電遮断器2それぞれと一対一の関係で、開閉可能として扉本体11に取り付けられており、図2と図3とに示すように、扉本体11を閉じた状態で、個別に小扉7を開状態とすることによって、開状態とした小扉7に対応する分岐漏電遮断器2を前方に臨ませることができ、この小扉7に対応する分岐漏電遮断器2を、個別に操作可能とする。
【0023】
さらに、屋外分電盤1は、小扉7毎に設けられている個別施錠部8を備えている。扉本体11が閉じた状態で、個別施錠部8は、収容ボックス10(扉本体11)に対して小扉7を施錠可能である。この個別施錠部8は、分岐漏電遮断器2が作動していない通常時、対応する小扉7を施錠し、この小扉7が開かないように固定した状態にあり、分岐漏電遮断器2が作動した異常時には、分岐漏電遮断器2を操作するために対応する小扉7の施錠を解除し(つまり、開錠し)、小扉7を開閉自在とする。なお、「通常時」とは、分岐漏電遮断器2が作動しておらず、その一次側から二次側へと電力供給が行われている状態を意味する。「異常時」とは、過負荷又は短絡などの要因により分岐漏電遮断器2の二次側の回路に異常な電流が流れた場合に、分岐漏電遮断器2が作動して、一次側からの電力供給が遮断された状態を意味する。
【0024】
図4及び図5は、屋外分電盤1を説明する図である。なお、これらの図では、個別施錠部8の説明を容易とするために、閉状態にある扉本体11を記載しておらず、小扉7を二点鎖線によって記載している。
本実施形態の個別施錠部8は、電磁ロックからなる。電磁ロックは、電磁石部8aと、被吸着部8bとを備えている。電磁石部8aは、分岐漏電遮断器2と共に収容ボックス10に取り付けられており、分岐漏電遮断器2において電力供給がされている状態で通電すると、電磁石としての吸着機能を有するが、電力供給が遮断されると、電流が流れず吸着機能を喪失する。被吸着部8bは、強磁性体からなり、小扉7に固定されている。したがって、電磁石部8aに電流が流れている状態で、電磁石部8aは被吸着部8bを吸着固定し、小扉7を拘束する。これに対して、電磁石部8aに電流が流れていない状態では、電磁石部8aによる被吸着部8bの吸着は解除され、小扉7の拘束が解かれ、開閉自在となる。
【0025】
以上の電磁ロックからなる個別施錠部8によれば、当該個別施錠部8が施錠を行う対象とする小扉7に対応する分岐漏電遮断器2において、その一次側から二次側への電力供給が行われている状態では施錠状態が維持され、この分岐漏電遮断器2が作動してその一次側から二次側への電力供給が遮断されると、施錠を自動的に解除することができる。
【0026】
また、本実施形態の屋外分電盤1は、更に、扉本体11が閉状態で、4つの全ての小扉7を一括して施錠状態とする一括施錠部20を備えている。図4と図5とにおいて、本実施形態に係る一括施錠部20は、主幹漏電遮断器3の二次側に接続されている電磁石の機能を有する駆動部21と、この駆動部21の電磁石としての機能が停止されると自重によって動作する従動部22と、この従動部22の動作に連動するリンク部材23とを有している。
【0027】
つまり、図4に示すように、主幹漏電遮断器3において電力が供給された状態にあって、駆動部21に電流が流れている状態では、この駆動部21は、強磁性体から成る部分22aを有する従動部22を吸着した状態に保ち、この従動部22に連結されているリンク部材23は各小扉7と係合しない位置に維持され、各小扉7を開錠した状態にある。
これに対して、図5に示すように、主幹漏電遮断器3において電力が遮断され、駆動部21に電流が流れていない状態になると、吸着が停止される。この場合、従動部22は、その自重によって位置変化し(本実施形態では回転し)、この従動部22に連結されているリンク部材23も変位して、リンク部材23の係合部23aが、各小扉7に係合した位置に維持され、各小扉7を施錠状態とする。
【0028】
本実施形態では、駆動部21、従動部22及びリンク部材23からなる一組が、二組設けられており、二組は同じ動作を行うことができ、さらに、各組では、リンク部材23が枝分かれしていることによって、二つの小扉7を同時に施錠状態とすることができる。
以上のように、この一括施錠部20によれば、主幹漏電遮断器3が作動してその一次側から二次側への電力供給が遮断されると、全ての小扉7を施錠状態とすることができる。
【0029】
以上の構成を備えた集合住宅用の屋外分電盤1の動作を説明する。図6は、集合住宅に含まれる一つの世帯において停電が発生した際の屋外分電盤1の復旧方法を説明するフロー図である。なお、扉本体11は、閉じた状態にあり、本体施錠部12によって施錠された状態にある。
【0030】
前記世帯において停電が発生したとする(図6のステップS1)。ここで、集合住宅全体の停電であるか世帯毎の停電であるかに応じて、屋外分電盤1の動作が異なる。すなわち、集合住宅全体の停電である場合は、主幹漏電遮断器3(図5参照)が作動しており、二次側への電力供給が遮断されている(ステップS2でYes)。この場合、前記一括施錠部20の機能によって、全ての小扉7が施錠状態となる(ステップS20)。そして、この場合、集合住宅の管理人が、屋外分電盤1の本体施錠部12を開錠し、扉本体11を開き、主幹漏電遮断器3を復旧させる(ステップS21)。
【0031】
これに対して、集合住宅全体の停電ではない場合(ステップS2でNo)、前記世帯のみにおける停電となる。この場合、屋外分電盤1では、分岐漏電遮断器2が作動しており、二次側への電力供給が遮断されている(ステップS3)。すると、この分岐漏電遮断器2に対応する小扉7では、この小扉7を施錠状態としていた個別施錠部(電磁ロック)8の状態が切り替わって、当該小扉7の施錠が解除される(ステップS4)。
【0032】
これにより、前記世帯の居住者は、自己の分岐漏電遮断器2の小扉7開けて(図3参照)、この分岐漏電遮断器2の復旧作業を行うことができる(ステップS5)。なお、この際、他の小扉7は施錠状態のままである。
復旧作業を終えると、この分岐漏電遮断器2では、一次側から二次側への電力供給が再開され、個別施錠部8は、開錠状態から施錠状態へと復帰し、小扉7は閉ざされた状態に戻る(ステップS6)。なお、この個別施錠部8は、タイマー機能を有しており、ステップS6では、分岐漏電遮断器2において電力供給が再開されてから所定時間経過後に(例えば1分後に)、施錠状態へと復帰させる。
【0033】
以上のように、集合住宅に含まれる特定の世帯で過電流などの異常が発生し、屋外分電盤1において、分岐漏電遮断器3が作動して電力供給が遮断された場合、本実施形態に係る屋外分電盤1によれば、扉本体11が閉状態でかつ本体施錠部12が施錠状態であっても、個別施錠部8が開錠されることによって、小扉7を開けることができる。これにより、その世帯の居住者が、自己の分岐漏電遮断器2を復旧させる作業を行うことができる。つまり、その世帯の居住者によって、自己の漏電遮断器2の復旧作業を行うために、屋外分電盤1の全体の扉本体11を開く必要がない。また、その世帯の居住者によって復旧作業を行うことができる分岐漏電遮断器2は、自己の遮断器のみであり、他の遮断器を操作することは不可能とすることができる。
【0034】
また、小扉7は、扉本体11に取り付けられているので、本体施錠部12の施錠を解除して扉本体11を開けば、小扉7をすべて開いた状態と同じになり、収容ボックス10内の全体を保守管理することができる。
さらに、本実施形態の個別施錠部8は電磁ロックからなるため、分岐漏電遮断器2が作動して電力供給が遮断されると、自動的に小扉7の施錠が解除される。このため、小扉7の施錠を解除する操作を行わなくても、小扉7を開けることができ、分岐漏電遮断器2の復旧操作を容易に行うことが可能となる。
【0035】
また、集合住宅全体で異常が発生し、主幹漏電遮断器3が作動して全体が停電した場合(図6のステップ2でYesの場合)、分岐漏電遮断器2についても電流が流れないことから小扉7毎の個別施錠部8(電磁ロック)が解除され、全ての小扉7を開けることが可能な状態となってしまうが、本実施形態に係る屋外分電盤1によれば、一括施錠部20によって全ての小扉7を施錠状態とすることができる。この場合、集合住宅全体の管理者が屋外分電盤1の復旧作業を行うことができる。
【0036】
また、本実施形態の屋外分電盤1は、更に、小扉7毎に設けられている機械式施錠部30を備えている(図2参照)。本実施形態の機械式施錠部30は、小扉7の前面から操作するダイヤル式の施錠部である。各機械式施錠部30は、予め定められた暗唱番号が設定されており、その暗唱番号が入力されると、小扉7の開閉を拘束する施錠状態から、開閉自在となる開錠状態へと切り換えられる。以上より、機械式施錠部30は、閉状態にある扉本体11に対して小扉7を施錠可能であって、施錠状態で小扉7を閉じた状態に保つことができ、開錠状態で小扉7は開閉自在となる。なお、この機械式施錠部30は、分岐漏電遮断器2において電力供給がされている通常時では開錠状態とするが、それ以外では、施錠状態とする。
【0037】
この機械式施錠部30の機能について説明する。一般的に、集合住宅のうちのある世帯が転居して空室になった場合、その世帯に対応する分岐漏電遮断器2では一次側から二次側への電力供給を遮断した状態としておく。この状態では、個別施錠部8の施錠が解除されてしまい、小扉7を開けることができる状態となる。しかし、機械式施錠部30によれば、居住者が住んでいる間は小扉7を開錠状態とするが、小扉7に対応する分岐漏電遮断器2の使用が不要になると(つまり、転居して空室になり不使用状態になると)、小扉7を施錠状態に保つことができる。この結果、空室となっている期間に、転居した世帯の分岐漏電遮断器2用の小扉7が開けられるのを防止することができる。
【0038】
本発明の集合住宅用の屋外分電盤は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、上記の実施形態では、個別施錠部8を電磁ロックとした場合を説明したが、これ以外として、個別施錠部8を上記機械式施錠部30と同様の構成としてもよい。また、本発明の屋外分電盤1が設置される集合住宅の住宅には、店舗や会社なども含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1:屋外分電盤 2:分岐漏電遮断器(世帯毎の漏電遮断器) 3:主幹漏電遮断器(集合住宅全体用の漏電遮断器) 7:小扉 8:個別施錠部 10:収容ボックス 11:扉本体 12:本体施錠部 20:一括施錠部 30:機械式施錠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口している収容ボックスと、
前記収容ボックスに複数収容されている世帯毎の漏電遮断器と、
前記収容ボックスの開口全体を開閉可能として当該収容ボックスに取り付けられている扉本体と、
前記扉本体を前記収容ボックスに施錠可能とする本体施錠部と、
複数の前記漏電遮断器それぞれと一対一の関係で前記扉本体に開閉可能として取り付けられ、当該扉本体を閉じた状態で、個別に開状態とすることによって前記漏電遮断器を個別に操作可能とする複数の小扉と、
前記小扉毎に設けられ当該小扉を施錠可能であり、前記漏電遮断器が作動していない通常時は、対応する前記小扉を施錠した状態とし、前記漏電遮断器が作動した時に、対応する前記小扉の施錠を解除する個別施錠部と、
を備えていることを特徴とする集合住宅用の屋外分電盤。
【請求項2】
前記個別施錠部は、前記小扉に対応する前記漏電遮断器が作動すると、当該小扉の施錠を自動的に解除する電磁ロックである請求項1に記載の集合住宅用の屋外分電盤。
【請求項3】
前記世帯毎の漏電遮断器の一次側と接続されている集合住宅全体用の漏電遮断器と、
前記集合住宅全体用の漏電遮断器が作動すると、全ての前記小扉を施錠した状態とする一括施錠部と、
を更に備えている請求項2に記載の集合住宅用の屋外分電盤。
【請求項4】
前記小扉毎に設けられ前記扉本体に対して当該小扉を施錠可能であって、前記小扉に対応する世帯毎の前記漏電遮断器の一次側から二次側への電力供給が不要である不使用状態で、当該小扉を施錠状態に保つ機械式施錠部を、更に備えている請求項2又は3に記載の集合住宅用の屋外分電盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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