説明

集塵装置

【課題】集塵電極をなす板状部材のスリットの内周縁の形状を工夫することで、板状部材をスリットに嵌合したときの傾きを抑制しつつ、スリットを形成するためのプレス金型の打ち抜き部分の強度を十分に確保できるようにする。
【解決手段】第1及び第2の板状部材(41,42)を嵌合するためのスリット(43)の内周縁に、そのスリット幅を縮小するようにスリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気的な誘引力を利用して空気等に含まれる塵埃を捕集する電気式の集塵装置が知られている。例えば、特許文献1には、矩形断面の通気孔が多数形成された格子状の集塵電極と、集塵電極の通気孔へ1つずつ挿入される突起部が形成された対向電極とを備える集塵装置が開示されている。
【0003】
この集塵装置において、対向電極の突起部は、その断面形状が矩形状となっており、その側面が通気孔の内壁面と向かい合っている。集塵電極と対向電極の間に電位差を付与すると、通気孔の内壁面と突起部の表面との間の空間に電界が形成される。そのため、通気孔を流れる気体中の粒子は、通気孔の内壁面に引き寄せられて捕捉される。
【0004】
前記集塵電極は、複数のスリットが形成された金属製の板状部材のスリット同士を対応させて嵌合させることで格子状に構成されている。このようなスリットは、プレス加工により板状部材を打ち抜いて形成するのが一般的である。ここで、スリット幅に遊びを持たせすぎると、スリットに嵌合させた板状部材が電圧を印加したときに傾いて電極間隔が変化してしまい、十分な集塵性能を得られないおそれがある。そのため、スリットの幅は、嵌合させる板状部材の板厚と略同一の幅に設定して板状部材の傾きを抑制することが好ましい。
【特許文献1】登録実用新案第3033859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の集塵装置の集塵電極では、プレス加工によって幅の狭いスリットを形成しようとすると、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを薄くする必要があるため、プレス金型の打ち抜き部分の強度が不足して折れやすくなり、集塵電極の量産化が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、集塵電極をなす板状部材のスリットの内周縁の形状を工夫することで、板状部材をスリットに嵌合したときの傾きを抑制しつつ、スリットを形成するためのプレス金型の打ち抜き部分の強度を十分に確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、スリットの内周縁に、スリット幅を縮小するようにスリット内方に突出する突出部を形成するようにした。
【0008】
具体的に、本発明は、空気中の塵埃を帯電させて捕集する集塵装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(41)と、該第1の板状部材(41)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(42)とが組み合わされて構成された集塵電極(40)を備え、
前記第1及び第2の板状部材(41,42)の少なくとも一方には、長手方向に間隔をあけて複数のスリット(43)が形成され、該スリット(43)に他方の板状部材(42,41)を嵌合させることで前記集塵電極(40)が構成され、
前記スリット(43)の内周縁には、そのスリット幅を縮小するように該スリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、
前記集塵電極(40)は、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記スリット(43)は、前記第1及び第2の板状部材(41,42)の両方に形成され、
前記集塵電極(40)は、前記第1及び第2の板状部材(41,42)のスリット(43)同士を対応させて嵌合させることで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記第1及び第2の板状部材(41,42)は、それぞれ金属製の板材で構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
第5の発明は、第1乃至第4の発明のうち何れか1つにおいて、
空気が流れる複数の通風孔(56)が形成された格子状の基台部(51)と、該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に突出して延びる突起部(52)とを有し、該突起部(52)が前記集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通されるように該集塵電極(40)に対向して配設された対向電極(50)を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、第1及び第2の板状部材(41,42)を嵌合するためのスリット(43)の内周縁に、そのスリット幅を縮小するようにスリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されているから、スリット(43)に嵌合された第1及び第2の板状部材(41,42)がガタついたり傾くことを抑制できるとともに、スリット(43)のプレス加工を容易に行うことができる。
【0015】
具体的に、スリット(43)のスリット幅を第1及び第2の板状部材(41,42)の板厚と略同一の幅に設定してプレス加工する場合には、スリット幅が狭すぎるためにプレス金型の打ち抜き部分の厚みを薄くしなければならず、強度が不足して折れやすくなり、第1及び第2の板状部材(41,42)の量産化が困難であるという問題があった。
【0016】
これに対して、本発明では、スリット(43)の内周縁に突出部(43a)を設け、この突出部(43a)により設定されるスリット幅を第1及び第2の板状部材(41,42)と略同一の幅にして、電圧を印加したときに第1及び第2の板状部材(41,42)が傾くことなく嵌合するのに必要なスリット幅を突出部(43a)で設定する一方、スリット(43)の内周縁のうち、第1及び第2の板状部材(41,42)の嵌合に寄与しない部分については幅広く設定するようにしている。その結果、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを厚くして十分な強度を確保できて折れにくくなるため、第1及び第2の板状部材(41,42)の量産化を図る上で有利となる。
【0017】
第2の発明によれば、集塵電極(40)を、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に形成したから、集塵面積が拡大できるとともに、限られた設置スペースに配置できる電極本数を多くすることができ、集塵電極(40)の集積率を向上できる。その結果、集塵装置の集塵効率の向上やコンパクト化を図ることができる。
【0018】
第3の発明によれば、第1及び第2の板状部材(41,42)のスリット(43)同士を対応させて嵌合させることで集塵電極(40)を構成したから、第1及び第2の板状部材(41,42)同士を確実に嵌合させることができ、電圧を印加したときに第1及び第2の板状部材(41,42)が傾くことを抑制することができる。
【0019】
第4の発明によれば、第1及び第2の板状部材(41,42)をそれぞれ金属製の板材で構成したから、第1及び第2の板状部材(41,42)を薄型化しても十分な強度を確保でき、集塵装置のコンパクト化を図ることができる。
【0020】
第5の発明によれば、対向電極(50)の突起部(52)を集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通させ、対向電極(50)と集塵電極(40)とが対向するように配設したから、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面と対向電極(50)の突起部(52)の側周面との間で空気中の塵埃を捕集するための電界が形成される。その結果、集塵装置のコンパクト化を図りつつ、集塵効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る集塵装置を備えた空気清浄機の概略構成を示す斜視図、図2は側面図である。図1及び図2に示すように、空気清浄機(10)は、ケーシング(20)を備えている。このケーシング(20)は、例えば矩形体状の横長の容器で形成されている。ケーシング(20)には、前面に空気の吸込口(21)が形成され、背面に空気の吹出口(22)が形成されている。また、ケーシング(20)内部には、吸込口(21)から吹出口(22)に向かう空気通路(23)が形成されている。
【0023】
そして、前記空気通路(23)には、吸込口(21)から吹出口(22)に向かって順に、プレフィルタ(11)、荷電装置(12)、集塵装置(30)、触媒フィルタ(13)、及び送風ファン(14)が配置されている。
【0024】
前記プレフィルタ(11)は、吸込口(21)からケーシング(20)内に吸込まれた空気に含まれる比較的大きな塵埃を捕集するためのフィルタを構成している。
【0025】
前記荷電装置(12)は、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃を帯電させるイオン化部を構成している。この荷電装置(12)は、図示しないが、例えば、複数のイオン化線と複数の対向電極とを備え、イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加されるように構成されている。このイオン化線は、荷電装置(12)の上端から下端に亘って設けられ、対向電極はイオン化線の間に配置されている。
【0026】
前記集塵装置(30)は、荷電装置(12)で帯電した塵埃を捕集するものである。この集塵装置(30)には、アース電極としての集塵電極(40)と、集塵電極(40)よりも高電位となる陽電極としての対向電極(50)とが設けられている。集塵電極(40)と対向電極(50)との間には直流電圧が印加される。これにより、集塵電極(40)と対向電極(50)との間には、集塵電極(40)に塵埃を誘引するための電界が形成される。なお、集塵装置(30)の詳細構造については後述する。
【0027】
前記触媒フィルタ(13)は、図示しないが、例えばハニカム構造の基材の表面に触媒が担持されて構成されている。この触媒は、例えばマンガン系触媒や貴金属触媒等が適用され、集塵装置(30)を通過して塵埃が除去された空気中の有害成分や臭気成分を分解する。
【0028】
前記送風ファン(14)は、ケーシング(20)内の空気通路(23)において最下流側に配置され、室内空気をケーシング(20)内に吸い込み、清浄化された空気を室内に吹き出すためのものである。
【0029】
<集塵装置の詳細構造>
図3は集塵装置の構成を示す斜視図、図4は集塵装置の集塵電極の構成を示す斜視図、図5はスリットの形状を示す正面図である。図3〜図5に示すように、この集塵装置(30)は、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に形成された集塵電極(40)と、集塵電極(40)の通風孔(46)に突起部(52)が挿通されるように集塵電極(40)に対向して配設された対向電極(50)とを備えている。
【0030】
前記集塵電極(40)は、互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(41)と、第1の板状部材(41)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(42)とが組み合わされて構成されている。第1及び第2の板状部材(41,42)は、金属製の板材で構成されている。また、第1の板状部材(41)の下縁部には、幅方向に間隔をあけて突出片(44)が設けられている。
【0031】
図4に示すように、第1の板状部材(41)の上縁部には長手方向に間隔をあけて複数のスリット(43)が形成されている。また、第2の板状部材(42)の下縁部にも同様に、長手方向に間隔をあけて複数のスリット(43)が形成されている。このスリット(43)の深さは、それぞれ第1及び第2の板状部材(41,42)の高さ方向の長さの略半分の長さに設定されており、第1及び第2の板状部材(41,42)のスリット(43)同士を対応させて嵌合させたときに、第1及び第2の板状部材(41,42)の上縁が略同一平面上に位置するようにしている。
【0032】
図5に示すように、前記スリット(43)の内周縁には、そのスリット幅を縮小するようにスリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されている。具体的に、この突出部(43a)は、スリット(43)の内周縁の左右両側縁からスリット(43)内方に向かって突出先端部同士が対向するように突出し、この相対向する突出部(43a)の組がスリット(43)の深さ方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0033】
ここで、前記突出部(43a)の突出先端部は三角形状に形成されており、相対向する突出先端部の間隔が第2の板状部材(42)の板厚と略同一の幅に設定されている。これにより、スリット(43)に第2の板状部材(42)を嵌合させると、左右両側縁の突出部(43a)の突出先端部によって第2の板状部材(42)が挟持され、第2の板状部材(42)が傾くことを抑制できるようになっている。
【0034】
なお、図5では、第1の板状部材(41)に形成されたスリット(43)の形状について説明しているが、第2の板状部材(42)にも同様にスリット(43)が形成されているものとする。
【0035】
このように、第1及び第2の板状部材(41,42)を嵌合するためのスリット(43)の内周縁に、そのスリット幅を縮小するようにスリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されているから、スリット(43)に嵌合された第1及び第2の板状部材(41,42)がガタついたり傾くことを抑制できるとともに、スリット(43)のプレス加工を容易に行うことができる。
【0036】
具体的に、スリット(43)のスリット幅を第1及び第2の板状部材(41,42)の板厚と略同一の幅に設定してプレス加工する場合には、スリット幅が狭すぎるためにプレス金型の打ち抜き部分の厚みを薄くしなければならず、強度が不足して折れやすくなり、第1及び第2の板状部材(41,42)の量産化が困難であるという問題があった。
【0037】
これに対して、本発明では、スリット(43)の内周縁に突出部(43a)を設け、この突出部(43a)により設定されるスリット幅を第1及び第2の板状部材(41,42)と略同一の幅にして、電圧を印加したときに第1及び第2の板状部材(41,42)が傾くことなく嵌合するのに必要なスリット幅を突出部(43a)で設定する一方、スリット(43)の内周縁のうち、第1及び第2の板状部材(41,42)の嵌合に寄与しない部分については幅広く設定するようにしている。その結果、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを厚くして十分な強度を確保できて折れにくくなるため、第1及び第2の板状部材(41,42)の量産化を図る上で有利となる。
【0038】
なお、前記スリット(43)の内周縁に形成する突出部(43a)は、図5に示す形状に限定するものではなく、例えば、図6に示すように、左右両側縁からスリット(43)内方に突出する突出部(43a)を相対向させるのではなく、スリット(43)の深さ方向にジグザグ状に配置した構成であってもよい。
【0039】
さらに、突出部(43a)の突出先端部を三角形状に形成してその先端の縁部分で第2の板状部材(42)を挟持するのではなく、例えば、図7に示すように、突出部(43a)の突出先端部を平面形状に形成してその先端の平面部分で第2の板状部材(42)を挟持するようにしてもよい。
【0040】
前記対向電極(50)は、空気が流れる複数の通風孔(56)が形成された格子状の基台部(51)と、基台部(51)から通風孔(46)の軸方向に突出して延びる突起部(52)とを有している。この対向電極(50)は、導電性の樹脂材で構成され、基台部(51)及び突起部(52)は一体成形されている。
【0041】
前記基台部(51)の通風孔(56)は、ケーシング(20)の上下方向に延びる縦仕切部(54)と、ケーシング(20)の幅方向に延びる横仕切部(55)とにより区画されている。そして、縦仕切部(54)と横仕切部(55)とは、縦横方向に直交するように配列されている。
【0042】
前記突起部(52)は、横仕切部(55)と一体的に連続して横仕切部(55)から軸方向に突出して延びている。すなわち、突起部(52)は、横仕切部(55)と略同じ厚さの平板状の突出片に形成され、対向する集塵電極(40)の通風孔(46)の内部まで延びている。
【0043】
前記縦仕切部(54)は、集塵電極(40)と対向電極(50)の基台部(51)とを固定した組立状態において、同一平面上に位置するように形成されている。
【0044】
図8は、集塵装置の一部を拡大して示す縦断面図である。図8に示すように、前記集塵電極(40)と対向電極(50)とは、互いに対向した状態で集塵電極(40)が空気通路(23)の上流側となるように配設されている。具体的に、集塵電極(40)の通風孔(46)の内部には対向電極(50)の突起部(52)が挿通され、対向電極(50)の通風孔(56)には集塵電極(40)の突出片(44)が挿通されている。これにより、集塵電極(40)及び対向電極(50)が、空気通路(23)の横断面において電界を放射状に形成するように構成されている。
【0045】
前記基台部(51)には、通風孔(56)の内壁(横仕切部(55)及び縦仕切部(54))にそれぞれ抜き勾配が形成される。すなわち、横仕切部(55)の上下の表面には、突起部(52)と反対側(空気流れの上流側)に向かうに連れて横仕切部(55)の厚みを小さくさせるような傾斜面(55a)が形成されている。同様に、縦仕切部(54)の左右の表面にも、上流側に向かうに連れて縦仕切部(54)の厚みを小さくさせるような傾斜面(図示せず)が形成されている。
【0046】
また、前記突起部(52)の上下の表面には、突起部(52)の突出側(空気流れの下流側)に向かうに連れて突起部(52)の厚みを小さくさせるような傾斜面(52a)が形成されている。同様に、突起部(52)の左右の表面にも、下流側に向かうに連れて突起部(52)の幅を小さくさせるような傾斜面(図示せず)が形成されている。
【0047】
−運転動作−
次に、前記空気清浄機(10)の運転動作について説明する。空気清浄機(10)の運転時には、送風ファン(14)が運転状態となる。また、荷電装置(12)では、イオン化線と対向電極との間に直流電圧が印加され、集塵装置(30)では、集塵電極(40)と対向電極(50)との間に直流電圧が印加される。
【0048】
図1及び図2に示すように、送風ファン(14)を駆動すると、室内空気がケーシング(20)の空気通路(23)に吸引されて空気通路(23)を流れることになる。空気通路(23)を流れる空気は、まず、プレフィルタ(11)を通過する。プレフィルタ(11)では、室内空気中に含まれる比較的大きな塵埃が捕集される。
【0049】
前記プレフィルタ(11)を通過した空気は荷電装置(12)を流れる。この荷電装置(12)では、プレフィルタ(11)を通過した比較的小さな塵埃が帯電され、例えば塵埃が正極に帯電し、この帯電した塵埃が下流側に流れることになる。
【0050】
そして、前記荷電装置(12)で帯電した塵埃は集塵装置(30)を流れる。図8に示すように、集塵装置(30)に流入した空気は、まず、集塵電極(40)の通風孔(46)内を流れる。通風孔(46)では、空気が対向電極(50)の突起部(52)の周囲を流れる。ここで、対向電極(50)の突起部(52)と集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面との間には電界が形成されており、集塵電極(40)はアース電極となっている。従って、正極に帯電した塵埃は、集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面に誘引される。その結果、集塵電極(40)の通風孔(46)を空気が流通する間に、空気中の塵埃が集塵電極(40)の通風孔(46)の内壁面に付着して捕集される。
【0051】
また、前記集塵電極(40)の通風孔(46)を通過した空気は、対向電極(50)の基台部(51)の通風孔(56)内を流れる。通風孔(56)では、空気が集塵電極(40)の突出片(44)の周囲を流れる。ここで、対向電極(50)の基台部(51)と集塵電極(40)の突出片(44)との間には電界が形成されているので、未だ空気中に残存している塵埃が、集塵電極(40)の突出片(44)の表面に付着して捕集される。
【0052】
前記集塵装置(30)で塵埃が除去された空気は、触媒フィルタ(13)を流れる。触媒フィルタ(13)では、空気中の有害物質や臭気物質が分解除去される。このようにして清浄化された空気は、送風ファン(14)を通過後に吹出口(22)より室内へ供給される。このような動作が連続して行われることで、室内空間の清浄度が向上する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る集塵装置(30)によれば、第1及び第2の板状部材(41,42)を嵌合するためのスリット(43)の内周縁に、そのスリット幅を縮小するようにスリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されているから、スリット(43)に嵌合された第1及び第2の板状部材(41,42)がガタついたり傾くことを抑制できるとともに、スリット(43)のプレス加工を容易に行うことができる。
【0054】
具体的に、スリット(43)の内周縁に突出部(43a)を設け、この突出部(43a)により設定されるスリット幅を第1及び第2の板状部材(41,42)と略同一の幅にして、電圧を印加したときに第1及び第2の板状部材(41,42)が傾くことなく嵌合するのに必要なスリット幅を突出部(43a)で設定する一方、スリット(43)の内周縁のうち、第1及び第2の板状部材(41,42)の嵌合に寄与しない部分については幅広く設定するようにしている。その結果、プレス金型の打ち抜き部分の厚みを厚くして十分な強度を確保できて折れにくくなるため、第1及び第2の板状部材(41,42)の量産化を図る上で有利となる。
【0055】
なお、本実施形態では、集塵装置(30)を備えた空気清浄機(10)について説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、空気調和装置に搭載されるものであってもよい。さらに、荷電装置(12)や集塵装置(30)のみを有するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明は、集塵電極をなす板状部材のスリットの内周縁の形状を工夫することで、板状部材をスリットに嵌合したときの傾きを抑制しつつ、スリットを形成するためのプレス金型の打ち抜き部分の強度を十分に確保できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る集塵装置を備えた空気清浄機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】空気清浄機の概略構成を示す側面図である。
【図3】集塵装置の構成を示す斜視図である。
【図4】集塵装置の集塵電極の構成を示す斜視図である。
【図5】スリットの形状を示す正面図である。
【図6】スリットの他の形状を示す正面図である。
【図7】スリットの他の形状を示す正面図である。
【図8】集塵装置の一部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
30 集塵装置
40 集塵電極
41 第1の板状部材
42 第2の板状部材
43 スリット
43a 突出部
46 通風孔
50 対向電極
51 基台部
52 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の塵埃を帯電させて捕集する集塵装置であって、
互いに間隔をあけて配設された複数枚の第1の板状部材(41)と、該第1の板状部材(41)の配設方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配設された複数枚の第2の板状部材(42)とが組み合わされて構成された集塵電極(40)を備え、
前記第1及び第2の板状部材(41,42)の少なくとも一方には、長手方向に間隔をあけて複数のスリット(43)が形成され、該スリット(43)に他方の板状部材(42,41)を嵌合させることで前記集塵電極(40)が構成され、
前記スリット(43)の内周縁には、そのスリット幅を縮小するように該スリット(43)内方に突出した複数の突出部(43a)が形成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記集塵電極(40)は、空気が流れる複数の通風孔(46)を有する格子状に形成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記スリット(43)は、前記第1及び第2の板状部材(41,42)の両方に形成され、
前記集塵電極(40)は、前記第1及び第2の板状部材(41,42)のスリット(43)同士を対応させて嵌合させることで構成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記第1及び第2の板状部材(41,42)は、それぞれ金属製の板材で構成されていることを特徴とする集塵装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項において、
空気が流れる複数の通風孔(56)が形成された格子状の基台部(51)と、該基台部(51)から通風孔(56)の軸方向に突出して延びる突起部(52)とを有し、該突起部(52)が前記集塵電極(40)の通風孔(46)に挿通されるように該集塵電極(40)に対向して配設された対向電極(50)を備えたことを特徴とする集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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