説明

集積機構および羽根車

【課題】媒体と羽根車の間に発生する静電気を除去し、良好な媒体の集積を可能にする集積機構および羽根車を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の集積機構は、可撓性を有する複数の羽根部を有する回転可能な羽根車9により紙幣Pを叩いて集積する集積機構であって、羽根車9に表面をメッキして導電性を持たせるとともに、羽根車9を接地し、羽根車9と紙幣Pとの接触による静電気を除去するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置等に設けられ、媒体を集積部に集積する集積機構に関し、また集積機構に具備される羽根車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、媒体を集積する集積機構は、媒体処理装置等における媒体の集積部の近傍に設けられる。例えば、紙幣処理装置の場合、紙幣は2本のベルトで挟持された状態で集積部まで搬送され、集積部の手前に設けられた集積機構により集積部に集積されるようになっている。集積機構には羽根車が設けられており、羽根車は下側搬送ベルトのプーリと同軸上に設けられ、搬送ベルトと同期回転する。
【0003】
羽根車が回転することにより、搬送系を抜けて集積部の上方に放出された紙幣の後端部が羽根車の羽根部により上方から叩かれ、これにより紙幣は集積部に叩き落される。これにより次に搬送されてくる紙幣の先端部がその前の紙幣の後端部に突き当たることを防止し、以って良好な集積を可能にしている。
【0004】
また集積機構には、集積される紙幣に直進性を与えるために、下側搬送ベルトのプーリの両側に、該プーリよりも大径のローラ等の回転体が設けられており、この回転体により、上下の搬送ベルトで搬送されてくる紙幣が集積部上に進入するときの紙幣の両端部を押し上げ、紙幣を波形に強制的に変形させる。紙幣を波形に変形すると、紙幣の見かけ上の剛性が高くなるので、水平状態で放出されるようになる。これにより使い古された紙幣でも、紙幣先頭部が垂れ下がって既に集積されている紙幣と衝突するのを防止することができ、集積状態が悪くなることを防いでいる。
【0005】
プーリの両側に設けられる回転体は、紙幣を波形にするのに充分な変形力を与えることができるような弾性力を持った可撓性材料で作られた羽根車でもよい。弾性力を持った可撓性材料としては、ゴム材やポリイミドなどが使用されている。また紙幣を強制的に波形に変形させる部材として、上記回転体の代わりに、例えば、ガイド部材でもよい。集積部の上部に、側部ガイド部材と中央ガイド部材を設け、強制的に紙幣をU字状に湾曲するようにしたものが、例えば、特開2000−302312号公報に開示されている。
【0006】
また、紙幣が搬送の途中でガイド部材と擦れた際に発生したり、搬送系から放出される際に搬送ベルトとの剥離放電により紙幣に発生したりする静電気を除去するために、紙幣の放出部に除電ブラシ等が搬送ベルトや羽根車に干渉しないように設けたものがある。紙幣が静電気を帯びると、例えば集積部の天井に張り付いて、後続紙幣と衝突することがある。除電ブラシ等を設けることにより、後続紙幣とのとの衝突を防止している。
【特許文献1】特開2000−302312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の集積機構においては、除電ブラシは搬送ベルトや羽根車と干渉しない位置にしか設けられないので、紙幣に対する静電気の除去が充分ではない場合が発生する。また、羽根車は弾性力で紙幣を波形に変形させられるようにゴムで作られている。また羽根車の外形は搬送ベルトのプーリよりも大径のため羽根車とプーリが同軸上で同期回転する場合には、羽根車の外周速度がプーリによる搬送速度よりも速くなり、羽根車は常に紙幣の下面を擦りながら回転する。このとき紙幣と羽根車との間に新たに静電気が発生し、紙幣の良好な集積を妨げる要因となっている。
【0008】
そこで本発明は、媒体と羽根車の間に発生する静電気を除去し、良好な媒体の集積を可能にする集積機構および羽根車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明による集積機構は、可撓性を有する複数の羽根部を有する回転可能な羽根車により媒体を叩いて集積する集積機構であって、 前記羽根車に導電性を持たせるとともに、該羽根車を接地したことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明による羽根車は、可撓性を有する複数の羽根部を具備し、回転することにより羽根部が媒体を下方に叩く羽根車であって、導電性を持たせ、接地したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の集積機構によれば、羽根車に導電性を持たせて接地したので、媒体と羽根車の間に発生する静電気を除去又は軽減でき、媒体の集積を良好に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明の実施の形態の集積機構を示す正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は実施の形態の羽根車を示す斜視図である。まず集積機構について説明する。
【0013】
図1、図2において、実施の形態の集積機構1には、上部シャフト2と下部シャフト3が配設され、上部シャフト2には2個のプーリ4が固定され、下部シャフト3にも2個のプーリ5が固定されている。プーリ4には上部搬送ベルト6が巻き掛けられ、プーリ5には下部搬送ベルト7が巻き掛けられている。本実施の形態の集積機構1は、搬送系の端部を構成し、媒体である紙幣Pを集積部8に集積する。
【0014】
プーリ5の両側において羽根車9が下部シャフト3に固定されている。羽根車9は、図3に示すように、羽根車9を下部シャフト3に固定するためのボス部9aと、ボス部9aの外周面に複数取付けられている羽根部9bとから構成され、ボス部9aと羽根部9bはゴム材により一体形成されている。羽根部9bは、集積部8に集積される紙幣Pの後端部を叩くための充分な長さと質量および可撓性、さらに紙幣Pを波形に変形させるだけの弾力性を有している。羽根車9は、その表面全体がメッキを施され、導電性を持たせてある。羽根車9を下部シャフト3に固定した状態では、羽根車9と下部シャフト3は導通状態となる。
【0015】
上部シャフト2に固定されたプーリ4の両側には上部搬送ガイド10a、10b、10cが配設されている。上部搬送ガイド10a、10b、10cは紙幣Pを安定して集積部8まで搬送するガイドをする。上部搬送ガイド10a、10b、10cの放出口側には、それぞれ除電ブラシ11a、11b、11cが取付けられており、上部搬送ガイド10a、10b、10cの下方を通過する紙幣Pの静電気を除電する。
【0016】
下部シャフト3には下部搬送ガイド12a、12b、12cが配設され、各下部搬送ガイド12a、12b、12cは、それぞれ上部搬送ガイド10a、10b、10cにほぼ対向して設けられている。下部シャフト3の両端部には電極13が取付けられ、電極13は接地されている。
【0017】
次に本実施の形態の動作を説明する。図2において、紙幣Pは、図示しない搬送系上位から上部搬送ベルト6と下部搬送ベルト7の間に受け渡される。これらの搬送ベルト6、7は、図示しないアクチュエータにより上部シャフト2および下部シャフト3が回転することにより作動し、紙幣Pを矢印B方向に搬送する。紙幣Pの先頭部が羽根車9の上を通過すると、紙幣Pは、図1に示すように、羽根車9に下面から持ち上げられて波形に変形する。
【0018】
羽根車9の羽根部9bと紙幣Pとの接触により静電気が発生する惧れがあるが、発生した静電気は、羽根車9の表面が導電性になっているので、羽根車9から下部シャフト3および電極13を介してアースに落とされる。また紙幣Pの除電ブラシ11a、11b、11cに対向する部分の静電気は、これらの除電ブラシ11a、11b、11cにより除去される。即ち、紙幣Pの上下搬送ベルト6、7に接している部分以外の部分は、静電気が除去され、紙幣Pが放出される際の静電気の影響が極めて小さいものとなる。
【0019】
紙幣Pが、図4に示すように、上下の搬送ベルト6、7から離れ、集積部8の上方に放出された状態になったとき、紙幣Pの後端部が羽根車9の羽根部9bで下方に叩き落され、集積部8内に集積される。このときにおいても、紙幣Pと羽根車9が接触した部分の静電気は、羽根車9の表面から下部シャフト3および電極13を介してアースに落とされる。なお図4は実施の形態の集積機構の動作を示す側面図である。
【0020】
以上のように本実施の形態に拠れば、羽根車9に導電性を持たせることにより、除電ブラシを取付けることのできない部分の静電気を除去または軽減することが可能になり、静電気により紙幣Pが集積部の天井に張り付いて後続紙幣と衝突するということがなくなり、安定した集積動作をおこなうことができる。
【0021】
上記実施の形態では、羽根車9に導電性を持たせるために表面にメッキを施すようにしたが、羽根車自体を導電性材料で作るようにしてもよいし、また図5に示すように、ゴム材で作られた羽根車20の中に導電性の芯材21を埋め込み、芯材21が紙幣Pと接触可能なように、羽根部20bの先端部において芯材21を露出させるようにしてもよい。この場合、羽根車20のボス部20aの内側(下部シャフト3に接触する位置)に導電性部材22を配置し、埋め込んだ芯材21と導通可能とする。なお図5は羽根車の変形例を示す説明図である。
【0022】
また上記実施の形態の羽根車は、ボス部と羽根部とを一体に形成したが、ボス部と羽根部を別部品で形成してもよい。さらにボス部を設けずに、複数の羽根を直接下部シャフト3に取付けるようにしてもよい。
【0023】
上記実施の形態では、羽根車9は紙幣Pの後端部を叩き落す機能のほかに、紙幣Pを波形にする機能を持つものとして説明したが、これに限らず、例えば、羽根車は紙幣Pの後端部を叩き落す機能を持つだけにし、紙幣Pを変形させる手段として別にローラのような回転体を設けるようにしてもよい。この場合、羽根車と回転体の両方に導電性を持たせ、接地することが好ましい。
【0024】
また上記実施の形態では、羽根車9が固定されている下部シャフト3を介して接地する例を示したが、図6に示すように、回転する羽根車9の1枚以上の羽根部9bが常に接触する位置に板金25を設け、この板金25を介して接地するようにしてもよい。なお図6は集積機構の変形例を示す説明図である。
【0025】
上記実施の形態では、紙幣入出金装置の集積機構を例にして説明したが、他の集積機構として、例えば、プリンタなどの用紙排出部における集積機構にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の集積機構を示す正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施の形態の羽根車を示す斜視図である。
【図4】実施の形態の集積機構の動作を示す側面図である。
【図5】羽根車の変形例を示す説明図である。
【図6】集積機構の変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 集積機構
3 下部シャフト
8 集積部
9 羽根車
11a、11b、11c 除電ブラシ
13 電極
P 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する複数の羽根部を有する回転可能な羽根車により媒体を叩いて集積する集積機構において、
前記羽根車に導電性を持たせるとともに、該羽根車を接地したことを特徴とする集積機構。
【請求項2】
前記羽根車は、該羽根車が嵌合するシャフトを介して接地される請求項1記載の集積機構。
【請求項3】
前記羽根車は、前記羽根部の先端部が接触する板金部材を介して接地される請求項1記載の集積機構。
【請求項4】
可撓性を有する複数の羽根部を具備し、回転することにより羽根部が媒体を下方に叩く羽根車において、
導電性を持たせ、接地したことを特徴とする羽根車。
【請求項5】
表面に導電性材料を塗布することにより導電性を持たせた請求項4記載の羽根車。
【請求項6】
導電性芯材を内部に埋め込むことにより導電性を持たせ、該導電性芯材を媒体に接触可能にした請求項4記載の羽根車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−23819(P2009−23819A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190828(P2007−190828)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】