説明

雑草抑制体及びその生産方法

【課題】容易に分解され環境に悪影響を与えることのない雑草抑制体を提供すること。
【解決手段】土104の上に蒔くことによって、雑草の育成を抑制する雑草抑制体100であって、そば殻と、このそば殻に繁殖された麹菌と、を有し、この麹菌によりそば殻同士の隙間を埋めるようにされていることを特徴とする雑草抑制体100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土の上に蒔くことにより雑草の育成を抑制する雑草抑制体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の雑草抑制体としては、例えば、特開平6−296449号公報に記載された除草土があった。
【0003】
特開平6−296449号公報に記載された除草土は、木材系有機物を粉砕又は造粒して粒度調整したものの表面をシリコンコーティングすることで形成されており、このような除草土を土の上に蒔くことにより、木材系有機物の表面を覆っているシリコンが水をはじき、雑草の育成を可能にする水分を保持することができないようにすることで、雑草の育成を抑制するようにされていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−296449号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平6−296449号公報に記載された除草土では、土の中に入り込んだ場合にこれを回収することは困難であり、容易に分解されないため長期間土中に留まり、環境を汚染する要因にもなる。
【0006】
そこで、本発明は、容易に分解され環境に悪影響を与えることのない雑草抑制体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、本発明は、土の上に蒔くことによって、雑草の育成を抑制する雑草抑制体であって、有機物片と、前記有機物片に繁殖された菌類と、を有し、前記菌類は、菌糸により前記有機物片同士の隙間を埋めるものであることを特徴とする雑草抑制体を提供する。
【0008】
本発明に係る有機物片は、例えば、そば殻、もみ殻、ピーナッツ殻等の植物の殻や木くず等がある。
【0009】
これらの有機物片を使用することにより、土中で容易に分解され、環境を悪化させることがなくなる。
【0010】
菌類については、菌糸により有機物片同士の隙間を埋めるようなものであればよく、たとえは、糸状菌や放線菌がある。
【0011】
糸状菌は、糸状の菌糸をもつ菌類であり、土の上に蒔く必要上、人体に何らかの害悪を及ぼすものを使用することはできず、例えば、麹菌、クモノスカビ又はケカビの内、少なくとも何れか一つ以上を使用すればよい。
【0012】
また、放線菌は、菌糸を放射状に延ばす菌類である。
【0013】
このように、有機物片に菌糸を延ばす菌類を繁殖させることで有機物片同士の隙間を菌糸が埋め、雑草に日光が届くことを防止するようになる。
【0014】
そして、このように有機物片を菌糸により結合した雑草抑制体は、土の表面を覆うことになり、雑草が上方に延びてくるのを妨害するほか、日光を遮り雑草の光合成を阻害することで、雑草の育成を抑制する。
【0015】
また、菌糸により有機物片が結合されているので、風が吹いたときでも、この雑草抑制体が吹き飛んでしまうことを防止することができる。
【0016】
また、本発明は、有機物片に菌類を散布する第一の工程と、前記有機物片に水を加えて攪拌する第二の工程と、前記有機物片に菌類を繁殖させる第三の工程と、によることを特徴とする雑草抑制体の製造方法を提供する。
【0017】
これは上述の雑草抑制体を製造するための好適な製造方法を提供するものであり、他の方法により雑草抑制体を製造することは可能である。
【0018】
第一の工程では、有機物片に菌類を散布する。
【0019】
有機物片は、上述のように、そば殻、もみ殻、又は木くずの内、少なくとも何れか一つ以上を使用すればよく、また、菌類についても、上述のように、糸状菌又は放線菌の内、少なくとも何れか一つ以上を使用すればよく、糸状菌としては、麹菌、クモノスカビ又はケカビを使用すればよい。
【0020】
第二の工程では、第一の工程で菌類を散布した有機物片に水を加えて攪拌する。
【0021】
どの程度の水を加えるかは、どの菌類を使用するかにより適時選択すればよいが、例えば、菌類として麹菌を使用する場合には、有機物片に対して、水が35〜40重量%程度となるようにするのが好適である。
【0022】
なお、攪拌するのは、水分を有機物片の全体に行き渡らせるためである。
【0023】
第三の工程では、菌類が散布され、水分が与えられた有機物片に菌類を繁殖させる。
【0024】
菌類の繁殖方法については、使用する菌類の種類に応じて適時選択すればよい。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態に係る雑草抑制体100は、図1に表されているように、そば殻101に麹菌102を繁殖させることにより形成されている。
【0026】
そばの実は、硬い表皮で覆われており、脱穀後の表皮がそば殻101となるため、無機物とは異なり土中で分解される。
【0027】
また、麹菌102を使用したのは、麹菌102は、酒、醤油、味噌等の醸造の際に使用されるものであるため、人体に害悪を及ぼさないからである。
【0028】
本実施形態に係る雑草抑制体100は、以下のように製造される。
【0029】
洗浄したそば殻101に麹菌102を散布する。
【0030】
麹菌は米糠に混合して培養させたものを使用した。
【0031】
ここで、麹菌102が活発に活動することができるように、白砂糖、黒砂糖、米糠、おから、しょう油、酢、菜種油かす等を加えておくことが望ましい。
【0032】
麹菌102を散布したそば殻101に水を加えて攪拌する。
【0033】
水は、そば殻に対して、40重量%程度の量を加え、全体に行き渡るように攪拌する。
【0034】
このように、麹菌102を散布し、水を加えられ、攪拌されたそば殻を、菜種油かすを2〜3cm敷き詰めた上に0.3〜2m程堆積させる。
【0035】
ここで、菜種油かすを敷き詰めるのは、堆積したそば殻の最下層に水分が溜り、腐敗の原因になるのを防止するためである。
【0036】
堆積させたそば殻の表面をコモやムシロで覆って、直射日光をさけ、気温20℃〜80℃、湿度30%以上の雰囲気下で、4時間以上放置する。
【0037】
ここで、気温20℃〜80℃、湿度30%以上に保つのは、麹菌102の繁殖しやすい温度と湿度にするためであるが、気温35℃〜50℃、湿度40%とするのが最も好適である。
【0038】
麹菌102以外の菌類を使用する場合には、使用する菌類の種類によって好適な条件を適時選択する必要がある。
【0039】
また、4時間以上放置するのも麹菌102の繁殖に必要な時間を確保したものであり、8時間程度放置しておくのが最も好適である。
【0040】
なお、他の種類の菌類を使用する場合には、菌類の種類に合わせて適時放置時間を調節する必要がある。
【0041】
以上のように、そば殻101に麹菌102を繁殖させると、麹菌102の菌糸によりそば殻101同士の隙間を埋めるようになる。
【0042】
このようにして形成された雑草抑制体100は、図2に表されているように、例えば、木103の根本103aの周囲の土104の上に、10mm程度堆積するように蒔く。
【0043】
なお、土の上に雑草抑制体100を散布する前、又は、散布した後に水を散布することで、麹菌の活動が活発になり好適である。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る雑草抑制体100を土104の上に蒔いたので、土104をこの雑草抑制体100が覆い、雑草が上方に延びてくることを阻害すると共に、日光を遮り、雑草が光合成をすることができないようにしているため、雑草の育成を抑制することができる。
【0045】
なお、本実施形態に係る雑草抑制体100は、通気性及び通水性を有するため、木103の根腐れを防止することができる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように本発明の構成したので、土の上に蒔かれた後でも容易に分解され、環境に悪影響を与えることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る雑草抑制体100の概略図。
【図2】雑草抑制体100の使用例を表す概略図。
【符号の説明】
100 雑草抑制体
101 そば殻
102 麹菌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土の上に蒔くことによって、雑草の育成を抑制する雑草抑制体であって、
有機物片と、前記有機物片に繁殖された菌類と、を有し、
前記菌類は、菌糸により前記有機物片同士の隙間を埋めるものであることを特徴とする雑草抑制体。
【請求項2】
前記菌類は、糸状菌又は放線菌の内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の雑草抑制体。
【請求項3】
前記有機物片は、そば殻、もみ殻又は木くずの内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の雑草抑制体。
【請求項4】
前記糸状菌は、麹菌、クモノスカビ又はケカビの内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の雑草抑制体。
【請求項5】
有機物片に菌類を散布する第一の工程と、
前記有機物片に水を加えて攪拌する第二の工程と、
前記有機物片に菌類を繁殖させる第三の工程と、によることを特徴とする雑草抑制体の製造方法。
【請求項6】
前記菌類は、糸状菌又は放線菌の内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項5に記載の雑草抑制体の製造方法。
【請求項7】
前記有機物片は、そば殻、もみ殻、ピーナッツ殻又は木くずの内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の雑草抑制体の製造方法。
【請求項8】
前記糸状菌は、麹菌、クモノスカビ又はケカビの内、少なくとも何れか一つ以上のものであることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載の雑草抑制体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2004−166516(P2004−166516A)
【公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−333098(P2002−333098)
【出願日】平成14年11月18日(2002.11.18)
【出願人】(502417472)
【Fターム(参考)】