説明

難燃ポリアミド組成物

本発明はポリアミドポリマー、ポリアミドプレポリマー、含ハロゲン難燃剤、および低鉛含量の含アンチモン相乗剤を含む難燃ポリアミド組成物に関するものである。本発明の組成物は驚異的に改良された機械的性質を示す。本発明はまた、難燃ポリアミド組成物の製造方法、難燃ポリアミド組成物を成形品作製に使用すること、および難燃ポリアミド組成物から得られる成形品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
そのような組成物は、欧州特許出願公開第0957131号明細書から知られている。欧州特許出願公開第0957131号明細書には、ポリアミドポリマーおよびポリアミドプレポリマーを含み、その中でポリアミドプレポリマーの溶液粘度η−relが1.01〜1.30(m‐クレゾール中0.5質量%溶液で測定)であるポリアミド組成物が記載されている。プレポリマーはポリアミド組成物の流動特性および表面特性を改良するために使用される。これらのポリアミドプレポリマー含有組成物は、一般にポリアミドプレポリマーを含有しない組成物に比較して破断伸度が減少しており、ポリアミドプレポリマーの伸度低減効果はプレポリマー含量が高くなるほど強くなる。欧州特許出願公開第0957131号明細書記載の組成物は充填剤を含んでいてもよく、その充填剤は含ハロゲン物質のような難燃剤であってもよい。含ハロゲン難燃剤は難燃ポリアミドで広く使われており、一般に含アンチモン相乗剤のような相乗剤(synergist)と組み合わせて使われる(A.El Sayed in Becker/Braun Kunststoff Handbuch 3/4 Polyamide、Hanser Verlag、Munchen、ISBN 3−446−16486−3、(1998)94〜95頁)。含ハロゲン難燃剤に基づく難燃ポリアミド組成物の欠点は、引張強度および破断伸度のような機械的性質が含アンチモン相乗剤によって低下することである。伸度の低下は、組成物がポリアミドプレポリマーも含んでいると大きくなり、そしてプレポリマー含量がさらに高くなると引張強度も低下する。機械的性質は、電気および電子部品のような難燃ポリアミド組成物が使用される多くの応用において重要である。そのような機械的性質の劣った難燃ポリアミド組成物では、もし対策が何もなければ、これらの応用が危ぶまれる。
【0002】
それ故、本発明の目的は、含アンチモン相乗剤を含む既知の組成物よりも伸度および引張強度の低下が小さくて、ポリアミドポリマー、ポリアミドプレポリマーおよび含ハロゲン難燃剤に加えて含アンチモン相乗剤を含む難燃ポリアミド組成物を提供することである。
【0003】
その目的は、鉛含量250ppm未満の含アンチモン相乗剤を含む組成物によって達成された。鉛含量250ppm未満の含アンチモン相乗剤を含む、本発明の組成物は、標準グレードの含アンチモン相乗剤を含む既知の組成物よりも良好な伸度特性を示す。さらなる利点は、本発明の組成物がより高い引張強度およびノッチ付きアイゾッド衝撃強度をもつことである。
【0004】
本発明の文中では、ポリアミド組成物とは、構成成分全体を混合した形態で含む組成物のことであり、そしてこの組成物は成形品を作製するための成形工程において使用することができる。ポリアミド組成物は種々な形態をとることができ、例を挙げれば、ドライブレンド(dry blend)、(例えば、モールド成形品を作るのに適した装置中における)溶融液、押出しストランド(extruded strands)、および細断したか粒(chopped granules)であるが、これらに限定されるものではない。組成物は、例えば、構成成分の乾式混合(dry blending)または溶融混合によってつくることができる。組成物は、成形品を作製するために適した装置に、各構成成分を別々に、または構成成分を配合して加えることによってもつくることができる。
【0005】
本発明の文中では、含アンチモン相乗剤中の鉛含量に対するppm値は、常に含アンチモン相乗剤の重量に対する鉛重量含量を指す。
【0006】
本発明の文中では、ポリアミドポリマーとは、少なくとも10,000g/mol、好ましくは少なくとも15,000g/mol、さらに好ましくは少なくとも20,000g/molの重量平均分子量をもつ高分子量ポリアミドのことである。
【0007】
本発明において、ポリアミドプレポリマーとは、最大で7500の重量平均分子量をもつ低分子量ポリアミドのことである。その重量平均分子量は高分子量ポリマーの「相互間絡み合い分子量」(molecular weight between entanglements)よりも低いことが好ましい。ポリアミドプレポリマーの重量平均分子量もまた、好ましくは最大でも5,000g/molであり、さらに好ましくは最大でも4,000g/molであり、さらに一層好ましくは最大でも3,000g/molである。ポリアミドプレポリマーの分子量は、例えばガラス転移点が下がる危険をさけるために、低過ぎてもいけない。重量平均分子量は約1,000 g/molより大きいことが好ましい。
【0008】
ポリアミドポリマーおよびポリアミドプレポリマーの両者に適したポリアミドは、溶融加工可能な結晶性、半結晶性および非晶性ポリアミド、ならびにそれらの混合物を含む当業者に知られたすべてのポリアミドである。
【0009】
本発明における適当なポリアミドの例は、脂肪族ポリアミドで、例えば、PA−6、PA−11、PA−12、PA−4,6、PA−4,8、PA−4,10、PA−4,12、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−共重合ポリアミド、PA−6/12−共重合ポリアミド、PA−6/11−共重合ポリアミド、PA−6,6/11−共重合ポリアミド、PA−6,6/12−共重合ポリアミド、PA−6/6,10−共重合ポリアミド、PA−6,6/6,10−共重合ポリアミド、PA−4,6/6−共重合ポリアミド、PA−6/6,6/6,10−3元共重合ポリアミド、ならびに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとの共重合ポリアミド、芳香族ポリアミドで、例えば、PA−6,I、PA−6,I/6,6−共重合ポリアミド、PA−6,T、PA−6,T/6−共重合ポリアミド、PA−6,T/6,6−共重合ポリアミド,PA−6,I/6,T−共重合ポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−共重合ポリアミド、PA−6,T/2−MPMDT−共重合ポリアミド(2−MPMD:2−メチルペンタメチレンジアミン)、PA−9,T、PA−9T/2−MOMDT (2−MOMD:2−メチルー1,8−オクタメチレンジアミン)、テレフタル酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られる共重合ポリアミド、イソフタル酸、ラウリンラクタムおよび3,5−ジメチル−4,4−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンから得られる共重合ポリアミド、イソフタル酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られる共重合ポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られる共重合ポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸および/またはテレフタル酸ならびにイソホロンジアミンから得られる共重合ポリアミド、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および/または他の芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸、場合によってアルキル置換ヘキサメチレンジアミンおよびアルキル置換4,4−ジアミノジシクロヘキシルアミンから得られる共重合ポリアミドであり、上記のポリアミドの共重合ポリアミドおよび混合物もまた同様である。
【0010】
好ましくは、ポリアミドは、PA−6、PA−6,6、PA−6,10、PA−4,6、PA−11、PA−12、PA−12,12、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,T/6,6−共重合ポリアミド、PA−6,T/6−共重合ポリアミド、PA−6/6,6共重合ポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−共重合ポリアミド、PA−6,T/2−MPMDT−共重合ポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMDT−共重合ポリアミド、PA−4,6/6−共重合ポリアミドおよび上記のポリアミドの共重合ポリアミドおよび混合物を含む群から選択される。さらに好ましくは、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,6、PA−6,6/6T,PA−6,6/6,T/6,I−共重合ポリアミド、PA−6,T/2−MPMDT−共重合ポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMDT−共重合ポリアミドまたはPA−4,6、またはこれらの混合物もしくは共重合ポリアミドが本発明のポリアミドとして選択される。
【0011】
本発明のポリアミド組成物は、1種類のポリアミドポリマーまたは同種もしくは別種のポリアミドの2種類以上のポリアミドポリマーを含むことができ、そしてまたポリアミドプレポリマーはポリアミドポリマーと同種のポリアミドであってもよく、または別種のポリアミドであってもよい。
【0012】
本発明の組成物中のポリアミドポリマーは、修飾された末端基、例えば、モノカルボン酸で修飾されたアミン末端基および/または単官能性アミンで修飾されたカルボン酸末端基を、場合によって含むことがある。高分子量ポリアミドポリマー中の修飾された末端基は、上記組成物の溶融混合による作製中または成形工程中の組成物の溶融安定性の改良に応用される利点がある。
【0013】
ポリアミドプレポリマーは、溶融温度が少なくとも260℃が好ましく、より好ましくは少なくとも270℃、さらに好ましくは少なくとも280℃である。溶融温度が高いポリアミドプレポリマーの利点は、とくに大量に使用されるときに、ポリアミド組成物の高温の機械的性質がよく保たれ、改良されることさえあることである。
【0014】
本発明の方法においてポリアミドプレポリマーに際立って適しているポリアミドはポリアミド−4,6である。ポリアミド−4,6プレポリマーの溶融温度は約290℃である。ポリアミド−4,6プレポリマーの利点は工業規模で製造可能なことであり、広範囲の高温エンジニアリングポリアミドと配合できることである。
【0015】
本出願の文中において、「PA−4,6」とは少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%のテトラメチレンアジパミド単位から構成されるポリアミドのことである。PA−4,6は、テトラメチレンジアミンとアジピン酸またはそれらの付加体を、場合によって他のポリアミド形成性モノマー、例えばε−カプロラクタム、別種のジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンまたは別種のカルボン酸、例えばイソフタル酸もしくはシクロヘキサンジカルボン酸の存在下で重縮合させることによって製造することができる。
【0016】
本発明の組成物中のポリアミドプレポリマーは、同様に修飾された末端基、例えば、単官能性カルボン酸で修飾されたアミン末端基および/または単官能性アミンで修飾されたカルボン酸末端基を場合によって含んでいてよい。単官能性カルボン酸および/または単官能性アミンは、ポリアミドプレポリマーの分子量を調節する連鎖停止剤として、ポリアミドプレポリマー製造中に応用できる利点がある。ポリアミドプレポリマーは、末端基総数に対して、好ましくは最大で50%、より好ましくは40%未満、さらに好ましくは最大で30%、最も好ましくは最大で25%の修飾された末端基を含有する。本発明の方法において、修飾された末端基の百分率が低いポリアミドプレポリマーの利点は、その結果得られる組成物の機械的性質がさらに改良されることである。
【0017】
本発明の組成物において、ポリアミドプレポリマーは、一般には、ポリアミドの全重量に対して0.5〜30重量%の量で存在する。もっと多くの量のプレポリマーを使うことはできる。しかし、量が多すぎると機械的性質に悪影響が出ることがある。当業者は組成物の所望の性質によって、与えられた範囲内またはそれを越すプレポリマー量を選択することができる。好ましくは、ポリアミドの全量に対して1〜25重量%のプレポリマー量が選択される。
【0018】
ポリアミドプレポリマーの量は、少なければ少ないほど機械的性質が良くなるので、ポリアミド全量に対して最大で20重量%であるのがより好ましく、さらに最大で15重量%であるのが一層好ましい。
【0019】
ポリアミドプレポリマーの量が多ければ多いほど流動が良くなるので、ポリアミド全量に対して少なくとも2重量%あることもさらに好ましく、少なくとも7重量%あることがさらに一層好ましく、あるいは12重量%あるのがなお一層よい。
【0020】
ポリアミドプレポリマーの量を上げると、含アンチモン相乗剤の量を上げることと組み合わせて利用する際に一層有利になる。含アンチモン相乗剤の含量を上げると、一般にポリアミド組成物の流動性が低下する。これら上記の成分を増量して含む組成物は、良好な機械的性質および外観を保持して、良好な流動性と向上した難燃性の有利な性質を併せもつのである。
【0021】
本発明の組成物に使用できる適当な含ハロゲン難燃剤は、例えば、臭素化ポリスチレン例えばPyrochek(登録商標)68PBおよびSaytex(登録商標)HP7010、両者はAlbemarle(米国)より入手;臭素化ポリフェニレンエーテル、例えばGreat Lakes(米国)のPO64P(登録商標)、ポリジブロモスチレン、例えばGreat LakesのPDBS80(登録商標)、ポリトリブロモスチレン、ポリペンタブロモスチレン、ポリジクロロスチレン、ポリトリクロロスチレン、ポリペンタクロロスチレン、ポリトリブロモ−アルファ−メチルスチレン、ポリジブロモ−p−フェニレンオキシド、ポリトリブロモ−p−フェニレンオキシド、ポリジクロロ−p−フェニレンオキシド、ポリブロモ−p−フェニレンオキシド、ポリブロモ−o−フェニレンオキシド、アクリル酸ペンタブロモベンジル、例えばAmeriBrom(米国)のFR1025(登録商標)、エチレンビス−テトラブロモ−フタルイミド、例えばAlbemarle(米国)のSaytex BT−93W、ポリブロモビフェニル、DeChlorane(登録商標)(Occidental Chemical Corporation、米国)のような臭素化フェノキシ−および塩素−含有難燃剤およびAlbemarle(米国)のSaytex(登録商標)8010のような他の臭素化化合物である。
【0022】
好ましくは、含ハロゲン難燃剤は臭素を含むポリスチレンである。さらに好ましくは、臭素を含むポリスチレンはポリブロモスチレンであり、さらに一層好ましくは、ポリブロモスチレンの重量に対して臭素含有率が少なくとも59重量%のポリブロモスチレンである。ポリブロモスチレンの重量に対して臭素含有率が59重量%を超えるポリブロモスチレンの利点は、組成物が含む難燃剤を減量して、難燃性を保持し、改良された機械的性質をもち得ることである。
【0023】
本発明の組成物で使用できる適当な含アンチモン相乗剤は、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酒石酸アンチモン、アンチモン酸ナトリウムおよびアンチモン酸カリウムおよび同様なアンチモン化合物で、これらの相乗剤の鉛含量250ppm未満であることが条件である。好ましくは、含アンチモン相乗剤は、鉛含量が各々250ppm未満である三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムおよびアンチモン酸カリウムからなる群から選択される。
【0024】
同様に相乗剤の鉛含量は150ppm未満であることが好ましく、100ppm未満であることがさらに好ましい。鉛含量を下げることの利点は、組成物から作られた成形品の引張強度および耐衝撃性が良くなることである。
【0025】
本発明の難燃ポリアミド組成物においては、含ハロゲン難燃剤は、一般にポリアミド総量100重量部に対して、1重量部と100重量部の間の量で使用される。
【0026】
好ましくは、含ハロゲン難燃剤の量は、ポリアミド総量100重量部に対して、少なくとも10重量部、さらに好ましくは少なくとも20重量部、最も好ましくは少なくとも30重量部である。含ハロゲン難燃剤量の最小値を高くすることは、組成物に適用して難燃性能を高めるのに有利である。
【0027】
同様に好ましくは、含ハロゲン難燃剤の量は、ポリアミド総量100重量部に対して最大で90重量部、さらに好ましくは最大で85重量部、最も好ましくは最大で80重量部である。含ハロゲン難燃剤量の最大値を低くすることは、組成物に適用して靭性と耐衝撃性を高めるのに有利である。最適量は、原則として、ポリアミド組成物配合の当業者によって系統的研究を通じて実験的に決められる。
【0028】
含アンチモン相乗剤は、一般にポリアミド総量100重量部に対して、0.5重量部と50重量部(pbw)の間の量で使用される。
【0029】
含アンチモン相乗剤は、含ハロゲン難燃剤に対して、好ましくは0.1:1〜1:1、さらに好ましくは0.2:1〜0.6:1の重量比に相当する量で使用される。また、さらに好ましくは、含アンチモン相乗剤の量は、ポリアミド総量100重量部に対して、最大で40pbw、さらに一層好ましくは30pbw、なお一層好ましくは最大で20pbwである。ポリアミド総量に対する含アンチモン相乗剤量を下げることの利点は、組成物の引張強度、破断伸度、靭性および衝撃強さが向上することである。
【0030】
本発明の組成物において、他の難燃剤も含ハロゲン難燃剤および含アンチモン相乗剤の系と組み合わせて使用できる。
【0031】
上記の系と組み合わせて使用できる適当な他の難燃剤は、例えば、グアナミンをベースにした化合物、メラミンをベースにした化合物およびn−アルカンラクタム置換ポリマーのような含窒素化合物;ポリリン酸アンモニウムおよびメラミンをベースにしたリン化合物のような窒素とリンを含む化合物;ならびに赤リン、フォスファゼンをベースにした化合物、および有機リン化合物のような含リン化合物である。
【0032】
本発明の組成物は、n−アルカンラクタム置換ポリマーを含むことが望ましい。含ハロゲン難燃剤と含アンチモン相乗剤の系と共にn−アルカンラクタム置換ポリマーを含む本発明の組成物の利点は、難燃性に悪影響を及ぼさずに相乗剤量を減らせることである。本発明の組成物に付け加わる利点として、とくにガラス繊維をも含む本発明の組成物において、UL−94試験(Underwriters Laboratories)によるドリッピング(dripping)が大きく減少することが見出された。難燃組成物に関して課せられる要求の厳しさが増しているので、ドリッピングを最小限に、好ましくは皆無にすることが最も望ましい。もう1つの利点は、例えば高温で組成物を加工する間に起こることがある組成物の変色を、例えば相乗剤量を減らすことによって、減じ得ることである。
【0033】
好ましくは、n−アルカンラクタム置換ポリマーはポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0034】
本発明の組成物は、場合によって、難燃性を向上させる他の物質、例えばポリフェニレンエーテルおよびポリカーボネートのような炭素形成物質ならびにドリッピング挙動を緩和する物質例えばポリテトラフルオロエチレンのようなフルオロポリマーも含むことができる。
【0035】
本発明の組成物は、当業者に知られていてポリマー組成物に通常使用されている添加剤を、それらが本発明から本質的にはずれないならば、とくに、顔料、加工助剤例えば離型剤、結晶化促進剤、成核剤(nucleating agents)、軟化剤、UVおよび熱安定剤、耐衝撃性改良剤等々も含むことができる。とくに本発明の組成物は、無機充填材即ち強化剤(reinforcing agent)を含む。強化剤として使用するに適しているのは、当業者に知られている充填剤のようなすべての繊維および板であり、例えば、ガラス繊維、金属繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ガラスビーズ、ケイ酸アルミニウム、石綿、雲母、粘土、焼成クレーおよび滑石などである。ガラス繊維を選択するのが望ましい。
【0036】
一般に本発明の組成物は、
a)70〜99pbwのポリアミドポリマー、
b)30〜1pbwの、但し(a+b)の和が100pbwになる量のポリアミドプレポリマー、
c)1〜100pbwの含ハロゲン難燃剤、
d)0.5〜50pbwの含アンチモン相乗剤、
e)0〜200pbwの強化剤、および
f)0〜100pbwの少なくとも1つの他の添加剤
より構成される。
【0037】
本発明はまた、難燃ポリアミド組成物の製造方法にも関するものである。本発明の方法は、重量平均分子量が少なくとも10,000g/molのポリアミドポリマー、重量平均分子量が最大でも7,500g/molのポリアミドプレポリマー、および含ハロゲン難燃剤を含むポリアミド組成物と含アンチモン化合物に対する鉛含量250ppm未満の含アンチモン相乗剤とを溶融混合することを含む。
【0038】
本発明方法の好ましい実施形態は、本発明のポリアミド組成物の上記の好ましい実施形態に直接関係している。
【0039】
本発明の方法は、溶融混合装置中で実施することができ、溶融混合によりポリマー組成物を製造する当業者に知られたどのような溶融混合装置も本発明の方法に使用できる。適当な溶融混合装置は、例えば、混練機、バンバリーミキサー、一軸押出機および二軸押出機である。押出機の入り口か溶融部のいずれかにすべての所望の成分を供給する手段を備えた押出機を使用することが好ましい。
【0040】
本発明の方法において、組成物を製造するための構成成分は溶融混合装置に供給され、その装置内で溶融混合される。構成成分はドライブレンドとして知られる粉末混合物または粒状混合物として同時に供給するか、あるいは別々に供給してもよい。ポリアミドポリマーとポリアミドプレポリマーも別々に供給してもよい。
【0041】
溶融混合は通常ポリアミドポリマーの溶融温度より高い加工温度で行い、ポリマー溶融液をつくる。
【0042】
好ましい実施形態において、ポリアミドポリマーは少なくとも260℃の溶融温度をもつと定義される高温エンジニアリングポリアミドである。溶融温度が少なくとも270℃であればさらに好ましく、少なくとも280℃であればさらに一層好ましく、そして少なくとも290℃であれば最も好ましい。ポリアミドポリマーの溶融温度が高ければ高いほど、溶融混合工程におけるポリアミドプレポリマー添加の効果は顕著になる。
【0043】
同様に、ポリアミドプレポリマーの溶融温度は、好ましくは最高でもポリアミドポリマーの溶融温度より20℃高く、さらに好ましくは最高でも10℃高く、そしてさらに一層好ましくは最高でもポリアミドポリマーの溶融温度と等しい。ポリアミドポリマーの溶融温度をあまり大きく超えないか、またはもっと良いのはポリアミドポリマーの溶融温度を全然超えない溶融温度をもつポリアミドプレポリマーの利点は、溶融混合工程に必要な加工温度を、ポリアミドプレポリマー無添加の工程に比較して同じに保つかまたは下げることさえできることである。
【0044】
本発明の方法はとくにガラス繊維強化剤を含む難燃ポリアミド組成物を製造するために応用すると有利である。含アンチモン相乗剤を含むガラス繊維難燃ポリアミド組成物の製造は、強化していない組成物よりも一般に機械的性質の劣化が起こりやすい。本発明の方法で、組成物の機械的性質に対する相乗剤の負の効果の実質的な減少を示す難燃強化ポリアミド組成物が製造できる。
【0045】
本発明はまた、本発明の難燃ポリアミド組成物の成形品作製への使用および上記組成物の溶融加工によって得られる成形品に関するものである。本発明の成形品は本発明の組成物の利点を有する。
【0046】
本発明の成形品を作製する適当なプロセスは、例えば射出成形、吹込み成形および引抜き成形のような溶融加工である。本発明の成形品には例えば、フィルム、繊維、シート、自動車用途の部品、または電気もしくは電子工学用途向けの部品が挙げられる。そのような部品の例には、例えばコネクターおよびスイッチが含まれる。
【実施例】
【0047】
本発明を次の実施例および比較実験を示してさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
材料
PA−A ポリアミド−4,6ポリマー:Stanyl(登録商標)KS200:
Mw=36000、粘度数(ギ酸)=160;Tmelt=295℃;
(入手先DSM、オランダ)
PA−B ポリアミド−6ポリマー:Akulon K122、相対溶液粘度
(ギ酸)=2.25(入手先DSM、オランダ)
PO−A ポリアミド−4,6−オリゴマー:M=2,000、Tmelt
=288℃(入手先DSM、オランダ)
AC540A 潤滑剤(入手先ALLIED、米国)
ガラス繊維 ポリアミド組成物用標準ガラス繊維;平均繊維径 10μm
PDBS−80 ポリジブロモスチレン(入手先Great Lakes);Br
含量59重量%
AT−A 三酸化アンチモンBluestar RG(入手先Campine、
ベルギー) 鉛含量450ppm
AT−B 三酸化アンチモンWhite Star CD(入手先Campi
ne、ベルギー) 鉛含量40ppm
AT−C 三酸化アンチモンWhite Star CS(入手先Campi
ne、ベルギー) 鉛含量70ppm
物理的性質の測定
粘度数:ISO 307に従ってギ酸中で測定した。
相対粘度:1質量%ギ酸溶液中で測定した。
分子量:標準GPC法により測定した。
融点:示差走査熱量計(DSC)により測定した。(2回目の測定(2nd run)、10℃/min.)
引張強度:ISO 527に従って23℃および5mm/min.で測定した。
破断伸度:ISO 527に従って23℃および5mm/min.で測定した。
ノッチ付きアイゾッド:ISO180/1Aに従って23℃で測定した。
難燃性:Underwriters Laboratories試験法UL94に従って、23℃、相対湿度50%で48時間、70℃で168時間、それぞれ状態調節して、0.8mmの試験片を用いて測定した。
鉛含量:蛍光X線(XRF)によって測定した。
スパイラルフロー長さ:寸法280×15×1mmのスパイラルキャビティで、溶融液温度315℃、有効射出圧80、90および100MPaで測定した。
実施例I〜IIおよび比較実験A〜B
【0048】
表I中に記した組成をもつ、実施例I〜IIおよび比較実験A〜Bのポリアミド組成物は、Werner & Pfleiderer ZSK−25 二軸押出機を用いて温度分布を300℃で均一にして、構成成分を溶融混合することによって作製した。成分はホッパーにより供給し、ガラス繊維は側面から添加した。押出量は20kg/h、スクリュー回転速度は275rpmとした。溶融ポリマーは押出機の出口で脱気した。溶融液はストランド状に押し出し、冷却してか粒状に細断した。
【0049】
か粒を射出成形して、ISO 527/IA多用途試験片に準じた試験片および厚さ0.8mmのUL94試験片にした。これらの試験片を組成物の難燃性および機械的性質を測定するために使用した。すべての製品はUL94試験におけるV0等級の条件を満たした。機械的測定の結果は表Iに記載した。
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドポリマー、ポリアミドプレポリマーおよび含ハロゲン難燃剤を含む難燃ポリアミド組成物であって、鉛含量250ppm未満の含アンチモン相乗剤を含むことを特徴とする難燃ポリアミド組成物。
【請求項2】
ポリアミドポリマーの重量平均分子量が少なくとも10,000g/molであり、ポリアミドプレポリマーの重量平均分子量が最大でも7,500g/molである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリアミドプレポリマーの溶融温度がポリアミドポリマーの溶融温度よりも少なくとも20℃低い請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリアミドプレポリマーが、ポリアミドの全重量に対して0.5〜30重量%の量で存在する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
含アンチモン相乗剤が、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムおよびアンチモン酸カリウムからなる群から選択される請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
含アンチモン相乗剤の鉛含量が酸化アンチモン含有相乗剤に対して150ppm未満である請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
含ハロゲン難燃剤が含臭素ポリスチレンである請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
a)70〜99pbwのポリアミドポリマー、
b)30〜1pbwの、但し(a+b)の和が100になる量のポリアミドプレポリマー、
c)1〜100pbwの含ハロゲン難燃剤、
d)0.5〜50pbwの含アンチモン相乗剤、
e)0〜200pbwの強化剤、および
f)0〜100pbwの少なくとも1つの他の添加剤
を含む請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
重量平均分子量が少なくとも10,000g/molのポリアミドポリマー、重量平均分子量が最大でも7,500g/molのポリアミドプレポリマー、および含ハロゲン難燃剤を含むポリアミド組成物と含アンチモン相乗剤に対する鉛含量250ppm未満の含アンチモン相乗剤とを溶融混合することを含む請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
ポリアミドポリマーが溶融温度が少なくとも260℃のポリアミドである請求項11に記載の方法。
【請求項11】
ポリアミドプレポリマーの溶融温度が、最も高くてもポリアミドポリマーの溶融温度より20℃高い温度である請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ポリアミド組成物が強化剤を含む請求項9〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の難燃ポリアミド組成物の成形品作製への使用。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の難燃ポリアミド組成物の溶融加工により得られる成形品。

【公表番号】特表2007−501322(P2007−501322A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532132(P2006−532132)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000370
【国際公開番号】WO2004/111127
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】