説明

難燃性の熱可塑性組成物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は熱可塑性組成物に係る。特に、本発明は、予想外に改良された難燃特性を熱可塑性組成物に付与するシリコ―ンベ―スの添加剤を含有する熱可塑性組成物に係る。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム三水和物(水酸化アルミニウム、ATH)はプラスチック産業界で熱可塑性の樹脂およびエラストマ―組成物の難燃性充填材として広く使われている。熱可塑性樹脂およびエラストマ―のATHを充填したコポリマ―は経済的ではあるが、良好な耐火性と良好な物理的性質を欠いている。
【0003】アルミニウム三水和物を含有する熱可塑性組成物の難燃性を高めるために過去においてさまざまな努力がなされて来ている。たとえば、フライ(Frye)の米国特許第4,387,176号、アシュビ―(Ashby)の同第4,496,680号、およびフライ(Frye)らの同第4,536,529号を参照されたい。
【0004】フライ(Frye)の米国特許第4,387,176号には、熱可塑性ポリマ―、シリコ―ン流体またはガム、第IIA 族金属有機塩、シリコ―ン樹脂、および任意成分としてのアルミニウム三水和物からなる難燃性の熱可塑性組成物が開示されている。この難燃性組成物はハロゲンを添加した場合に最も有効である。
【0005】このフライ(Frye)の発明の基礎となった発見は、「ある種の金属石鹸(たとえば、ステアリン酸マグネシウム)を正しい割合で、ある種のシリコ―ン樹脂(たとえばポリトリオルガノシリルシリケ―ト)とポリジオルガノシロキサンポリマ―との混合物と組合せることによって、効率的な難燃性プラスチックを得ることができる」ということである[フライ(Frye)、第2欄第4〜8行参照]。フライ(Frye)の特許には、彼の発明が、「いくつかの点で、特にポリオルガノシロキサンシリコ―ンとシリコ―ン樹脂の組合せを利用することによって従来技術では教示されていない相乗的な難燃効果が達成されるという点において、従来技術と異なっている。」と述べられている。
【0006】アシュビ―(Ashby)の米国特許第4,496,680号には、ジフェニルシランジオ―ル、低分子量のフェニル置換シロキサンジオ―ルまたはこれらの混合物と、第IIA 族金属のカルボン酸塩と、アルミニウム三水和物と、有機ハロゲン化物と、任意成分としての、上記フライ(Frye)の米国特許第4,387,176号に開示されているようなシリコ―ン樹脂とからなる添加剤組成物と組合せたときに実質的に難燃性になるナイロン組成物が開示されている。
【0007】フライ(Frye)らの米国特許第4,536,529号には、熱可塑性ポリマ―、シリコ―ン流体、金属石鹸前駆体、シリコ―ン樹脂、および任意成分としてのアルミナ三水和物を含有する難燃性組成物が開示されている。
【0008】フライ(Frye)らの発明は、ある種の金属石鹸前駆体(たとえば、ステアリン酸マグネシウムの前駆体であるステアリン酸と反応性マグネシウム化合物)、ある種のシリコ―ン流体およびシリコ―ン樹脂を配合中に正しい割合で混合し、この混合物を熱可塑性樹脂に添加することによって、効率的な難燃性の熱可塑性樹脂を作成することができるという発見に基づいている[フライ(Frye)ら、第1欄、第46〜55行]。このフライ(Frye)らの添加剤によれば、機械的性質の低下が従来の難燃剤よりも少なくなり、しかも耐衝撃性、光沢および加工性が改善される。
【0009】別の特許、すなわちロブグレン(Lovgren)らの米国特許第4,487,858号では、アルミニウム三水和物、タルクおよび架橋剤を含有するプロピレン/ポリジメチルシロキサン/MQ樹脂ブレンドに対して特許が請求されているが、その第6欄、第35〜41行には、このブレンドがさらに「前記熱可塑性樹脂/シリコ―ン流体ブレンドの難燃性を増強する第IIA 族金属有機化合物または塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなど)」を含んでいてもよいことが教示されている。
【0010】以上論じた特許はすべて、熱可塑性組成物の難燃性を改良するには、シリコ―ン流体およびシリコ―ン樹脂に加えて第IIA 族金属有機塩の存在が必要であることを教示している。第IIA 族金属有機塩が存在すると、その熱可塑性組成物の溶融流動(メルトフロ―)特性が増大する。しかしながら、たとえばシ―ト押出などのようなある種の応用では、溶融流動特性が低めの熱可塑性組成物を使用するのが望ましい。
【0011】
【発明の目的】したがって、本発明のひとつの目的は、改良された難燃性と低下したメルトフロ―を有する、ATHを充填した熱可塑性組成物を提供することである。
【0012】本発明の他の目的は、改良された難燃性、低下したメルトフロ―および良好または許容し得る物理的性質を有する、ATHを充填した熱可塑性組成物を提供することである。
【0013】これらの目的は本発明によって達成される。
【0014】
【発明の概要】本発明は、熱可塑性樹脂に、上で述べた特許に教示されているシリコ―ン流体とシリコ―ン樹脂を特定の量で添加することによって、第IIA族金属のカルボン酸塩を使用することなく、熱可塑性組成物の難燃性とある種の物理的性質を改良することができるという発見に基づいている。
【0015】ひとつの局面において本発明は、本質的に次の成分から成り、改良された難燃特性を有する熱可塑性組成物を提供する。
A.約30〜約60重量部の熱可塑性樹脂、B.約40〜約70重量部のアルミニウム三水和物[ただし、(A)と(B)の合計が100部である]、C.シリコ―ンオイル、およびD.成分Cのシリコ―ンに可溶なシリコ―ン樹脂[ただし、(C)と(D)の比は約2:1から約2.5:1までであり、(C)と(D)の合計は(A)+(B)の100部当たり約4〜約12部である]。
【0016】もうひとつの局面において本発明は、本質的に上記組成物の成分AとBから成る熱可塑性組成物の難燃性を改良する方法に係り、この方法は、基本的に、前記熱可塑性組成物に成分CとDを上記量で添加するステップから成る。
【0017】本発明はさらに、本発明の熱可塑性組成物で被覆された基体からなる製品にも関する。
【0018】本発明の組成物は、改良された難燃性に加えて、改良された低温衝撃強さと滴下防止特性および低下したメルトフロ―ももっている。
【0019】本発明の組成物は、建設産業、建築産業、ならびに導線絶縁およびケ―ブル絶縁産業で有用である。
【0020】
【発明の詳細】すでに述べたように、本発明の基礎となった発見は、ATHを充填した熱可塑性組成物に所定量のシリコ―ンオイルとシリコ―ン樹脂を添加することによって、第IIA 族金属のカルボン酸塩を使用することなく、前記熱可塑性組成物の難燃性を改良することができるということである。
【0021】本発明は、改良された難燃性を有しており、本質的に(A)熱可塑性ポリマ―、(B)アルミニウム三水和物、および特定の量の(C)シリコ―ンオイルと(D)シリコ―ン樹脂から成る熱可塑性組成物に関する。
【0022】本発明の組成物の成分(A)として適した熱可塑性ポリマ―としては、たとえば、ポリエチレン[たとえば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)]、ポリプロピレン、ポリブチレンなど、およびこれらのコポリマ―などのようなポリオレフィン、ポリスチレン、レキサン(LexanR )ブランドなどのようなポリカ―ボネ―トおよびバロックス(ValoxR )樹脂などのような熱可塑性ポリエステル[いずれもゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)製]、ならびに、ポリアミド[たとえば、ナイロン(Nylon)66、ナイロン(Nylon)12など]、ポリカプロラクタム、アイオノマ―、ポリウレタン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンのコポリマ―およびタ―ポリマ―、アクリルポリマ―、アセタ―ル樹脂、エチレン‐酢酸ビニル、ポリメチルペンテン、可撓性ポリビニルクロライド、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド‐ポリスチレンブレンドまたはコポリマ―[たとえばゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)製ノリル(NorylR )ポリマ―など]、モンサント(Monsanto)のサントプレン(Santoprene)やユニロ―ヤル(Uniroyal)TPR熱可塑性ポリエステルなどのような他のポリマ―がある。本発明で使用するのに適した熱可塑性ポリマ―は本明細書中で「熱可塑性樹脂」と総称することもある。当業者は、エンジニアリングプラスチックを始めとする広範囲の各種熱可塑性配合物に本発明の難燃性組成物を適合させて最適化することができるであろう。上記のリストはすべてを挙げたのではなく、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0023】本発明の組成物は、熱可塑性ポリマ―すなわち成分(A)を、約30〜約60重量部、好ましくは約30〜約40重量部、最も好ましくは約40重量部含有する。
【0024】本発明の組成物の成分(B)はアルミニウム三水和物であり、これは燃焼過程の熱にさらされたときに脱水されることによって、熱可塑性組成物に難燃性を付与する。
【0025】一般に、このアルミニウム三水和物は、約40〜約70重量部の範囲、好ましくは約60〜約70重量部の範囲、最も好ましくは約60重量部の量で、本発明の組成物中に存在できる。
【0026】本発明の組成物中の成分(A)と(B)の合計は100部である。
【0027】本発明の組成物の成分(C)はシリコ―ンオイルである。本明細書中で使用する「シリコ―ンオイル」という用語は、本発明の組成物中に有利に利用することができる広範囲のポリシロキサン材料に対する一般的な用語である。本発明を詳しく説明するために、「シリコ―ンオイル」という表現は、マクロ―リ―(MacLaury)らの米国特許第4,273,691号(引用により本明細書に含まれているものとする)に記載されている有効なシリコ―ン材料を含めた意味と解されたい。一般に、有効なシリコ―ン材料は以下のようなシリコ―ン流体またはガムである。すなわち、典型的にはR3 SiO0.5 、R2 SiO、R1 SiO1.5 、R1 2 SiO0.5 、RR1 SiO、(R1 2 SiO、RSiO1.5 、およびSiO2 の単位ならびにこれらの組合せより成る群の中から選択されたシロキシ単位が化学結合したオルガノポリシロキサンである。ただし、各Rはそれぞれ独立して飽和または不飽和で一価の炭化水素基を表わし、R1 はRのような基であるか、または水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリ―ル基、ビニル基もしくはアリル基などより成る群の中から選択される基を表わす。また、前記オルガノポリシロキサンは25℃で約600〜300,000,000センチポイズの粘度を有している。好ましいシリコ―ン材料は25℃で約90,000〜150,000センチポイズの粘度を有するポリジメチルシロキサンである。このような有効なシリコ―ン材料はシリコ―ンまたはシリコ―ンオイルと総称され、シリコ―ン樹脂といわれる一群の材料とは区別されるべきである。そのようなシリコ―ンオイルはさまざまなブランドおよびグレ―ドのものが容易に入手できる。
【0028】成分(D)はシリコ―ン樹脂であり、これは上記シリコ―ンオイル(すなわち、流体またはガム)に可溶であり、本発明の組成物に改良された難燃性を付与するのに有効なものである。好ましいシリコ―ン樹脂の中にはMQシリコ―ン樹脂がある。「MQシリコ―ン樹脂」という表現は、このような樹脂の典型的なものが主として式R3 SiO0.5 の単官能性のM単位と平均式SiO2 の四官能性のQ単位とから構成され、特定のM/Q単位比を有するという事実を指している。本発明で使用するのに特に有効なシリコ―ン樹脂はQ単位1個に対して約0.3〜4.0個のM単位という比を有することができるポリトリメチルシリルシリケ―トである。特に有効な配合は、好ましくは、Q単位1個当たり約0.6〜2個のM単位という比をもつかもしれない。市販されているMQシリコ―ン樹脂の例はゼネラル・エレクトリック(General Electric)のSR545(トルエン中MQ樹脂固形分60%)である。そのようなMQ樹脂溶液を利用する際の好ましい方法は、これをシリコ―ンオイル成分と混合した後に溶媒を除去することである。この溶媒は周知の方法、たとえば適度な温度での蒸溜によって除くことができる。
【0029】成分(C)と(D)は、約2:1〜約2.5:1、好ましくは約2.3:1の割合で本発明の組成物中に存在する。本発明の組成物中の成分(C)と(D)の合計は、(A)+(B)の100部当たり、約4〜約12部、好ましくは約5〜約10部、最も好ましくは約5〜約7部の範囲である。
【0030】成分(C)と(D)が上記の割合と量の範囲内で本発明の組成物中に存在することは特に重要である。上記パラメ―タ―を外れる割合と量では難燃性その他の性質が劣る。
【0031】他のシリコ―ンオイル可溶性形態の固体シリコ―ン樹脂も本発明の難燃性組成物中に使用するのに有効であると考えられる。実際、MTシリコ―ン樹脂およびTQシリコ―ン樹脂(このTは三官能性のRSiO1.5 単位を示す)、また上記樹脂との混合物およびコポリマ―も有効であろう。これらのシリコ―ン樹脂はよく知られた材料であり容易に入手できる。適しているかどうかの基準は、そのように有効なシリコ―ン樹脂状材料がシリコ―ンオイルベ―スに可溶または分散可能であるかどうかである。
【0032】さらに、上記熱可塑性組成物は(ほぼD官能性の)シリコ―ンオイルと(M、D、TまたはQ官能性の)シリコ―ン樹脂を混合すべき別々の成分として規定しているが、本発明はそのような材料の反応生成物で難燃性添加剤として同様に有効であり得るものも包含することに注意すべきである。また、別々のシリコ―ンオイル成分とシリコ―ン樹脂成分の代わりに、必要なM、D、TまたはQ官能性を含んでいるコポリマ―を使用してもよいことも予想される。
【0033】本発明の組成物は、さらにタルク、クレ―、炭酸カルシウム、ヒュ―ムドシリカ、ウォラストナイトなどのような各種充填材を含有していてもよい。他の適切な充填材も当業者には自明であろう。
【0034】本発明の実施の際、難燃性組成物は、慣用の溶融配合用装置のいずれか、たとえばバンバリ―ミキサ―、二軸式エクストル―ダ―、または二ロ―ルゴムミルなどを用いて熱可塑性ポリマ―をシリコ―ンオイルおよびシリコ―ン樹脂と一緒に混合することによって作成することができる。二軸式エクストル―ダ―が、生成物を得るのに最も再現性が良いと期待される。適切な配合技術の例はロブグレン(Lovgren)らの米国特許第4,487,858号(引用により本明細書中に含まれているものとする)に記載されている。
【0035】個々の成分の添加順序に特に重要な意味があるとは思われない。しかし、当業者は余分な実験をするまでもなく本発明の難燃性組成物を最適化することが可能である。シリコ―ン樹脂とシリコ―ンポリマ―は、エクストル―ダ―内で熱可塑性樹脂/ATH組成物と配合する前に、予備的に混合して均質な混合物を形成するのが好ましい。
【0036】熱可塑性樹脂とアルミニウム三水和物もまた、これにシリコ―ンブレンドを添加する前に予備的に配合するのが典型的である。熱可塑性樹脂/ATH組成物、シリコ―ン樹脂およびシリコ―ンオイルは通常、約100〜200℃の範囲内の温度で配合する。好ましい配合温度は約120〜160℃の範囲内である。
【0037】本発明の難燃性組成物は導電体上に押出すことができ、特別な場合には過酸化物硬化剤が存在しているかどうかによって架橋することができる。もちろん、本発明の難燃性組成物を使用して大きな利点が得られる他の用途もたくさんある。本発明の組成物は、導線やケ―ブルの押出被覆、ならびに各種建設用材としてのシ―ト状押出製品などのような最終目的製品への加工が容易である。
【0038】
【実施例の記載】本発明の実施の態様を当業者がより良く理解できるように、限定ではなく例示の意味で以下の実施例を挙げる。
【0039】実 験 以下の実施例と表および添付の図面中で、「SFR100」とは、約120,000の粘度を有するシラノ―ルで末端が停止したポリジメチルシロキサン54重量部とMQ樹脂がトルエンまたはキシレンに溶けた60%溶液46重量部を含有するブレンドを意味する。「LDPE」は、ユニオン・カ―バイド社(Union Carbide Company)により「DPDA−1682」という商標で製造されているエチレン‐アクリル酸エチルコポリマ―から成る低密度のポリエチレンを意味し、「phr」は100部当たりの部を意味する。
【0040】当業者には分かるように、熱可塑性樹脂の相対的難燃性を試験・比較するにはいくつかの方法がある。最もよく知られているものの中には限界酸素指数ならびに水平および垂直燃焼試験がある。
【0041】米国保険業者研究所規格(Underwriters' Labaratories Bulletin)UL−94には、「材料を格付けするための燃焼試験(Burning Test for Classifying Materials)」が記載されている(以下、「UL−94」とよぶ)。この試験手順によると、材料は5個の試験片の試験結果に基づいてY−0、V−I、V−IIに分けられる。試験結果は以下の基準に従って評価する。
V−0:着火用の炎を除いた後の平均燃焼および/またはグロ―時間が5秒を越えてはならず、どの試験片も脱脂綿を発火させたりまたは10秒より長く燃焼させたりする火炎粒子を滴下させることはない。
V−I:着火用の炎を除いた後の平均燃焼および/またはグロ―時間が25秒を越えてはならず、どの試験片も脱脂綿を発火させたりまたは30秒より長く燃焼させたりする火炎粒子を滴下させることはない。
V−I:着火用の炎を除いた後の平均燃焼および/またはグロ―時間が25秒を越えてはならず(どの試験片も30秒より長く燃焼してはならない)、脱脂綿を発火させる火炎粒子が試験片から滴下する。
【0042】以下の実施例に関して行なった垂直燃焼試験は、ほぼUL−94に記載の試験手順に従うものである。
【0043】実施例1は、本発明の範囲内の組成物の製造を例示する。
実施例1 熱可塑性樹脂[たとえば、エチレン‐アクリル酸エチルをベ―スとする低密度ポリエチレン(すなわちLDPE)、ユニオン・カ―バイド社(UnionCarbide Company)により「DPDA−6182」という商品名で製造されている]とアルミニウム三水和物との混合物をLDPE:ATH=40:60として製造し、バンバリ―(Banbury)配合機で配合した。混合物を160℃で5分間加熱して溶融させた。次に、40:60のLDPE:ATH組成物100部に対して5phrのシリコ―ン流体を導入し、得られた混合物を5分間配合した。全サイクル時間10分の後材料を取出して小片にし、その後これを研磨して小さいペレットの射出成形用ASTM試験片とした。
実施例2〜9 実施例1に記載した一般手順を使用して、下記表1に示す組成を有するサンプルを8個製造した。ステアリン酸マグネシウムと混合した場合と混合しない場合のSFR100が、ベ―スレジン(すなわち、低密度ポリエチレン(LDPE)が40部とアルミニウム三水和物が60部)の可燃性を始めとする各種特性に及ぼす効果を決定した。使用したSFR100の濃度は5〜15%の範囲であった。SFR100とステアリン酸マグネシウム(使用した場合)との比は、すでに述べたフライ(Frye)の米国特許第4,387,176号の場合と同様に2:1に保った。
【0044】
【表1】
表 1 実施例 LDPE ATH SRF100 ステアリン酸マグネシウム 番 号 phr phr 2 100 − −− − 3 40 60 −− − 4 40 60 5 − 5 40 60 5 2.5 6 40 60 10 − 7 40 60 10 5.0 8 40 60 15 − 9 40 60 15 7.5 表2に、実施例2〜9で製造したブレンドの物理的性質を挙げる。表2中で、「MFI」はメルトフロ―インデックスを、「LOI」は限界酸素指数を、「UL94」はすでに記載した試験をそれぞれ意味する。
【0045】
【表2】
表 2 MFI 破断時 引張り アイゾッド 実施例 (c) LOI UL94 引張強 係数 伸び 曲げ率 −20℃ -50℃ 番 号 g/10分 さ psi psi psi ft.lb/in 2 12.32 -- -- 1600 4260 29 5707 5.27 0.88 3 1.72 24.5 -- 2080 20500 71 101998 7.81 3.52 4 0.31 28.5 23.2 1625 18060 46 43330 8.94 7.61 5 4.48 28.7 30.3 633 17720 56 40720 10.43 8.8 6 0.3 28.0 14.3 1243 13855 39 81939 5.51 5 7 5.94 27.8 23.8 329 11173 65 98770 8.8 7.28 8 0.4 27.8 19.8 770 7874 36 181080 6.25 5.62 9 9.94 27.8 16.5 230 8060 40 32923 6.41 5 実施例10〜20 SFR100およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが純粋な(すなわちATHを含まない)プロピレンのメルトフロ―特性に及ぼす効果を証明するために、表3に示す組成を有する11個の組成物を製造した。
【0046】
【表3】
表 3 実施 組 成 (%) メルトインデックス 例 ステアリン酸 (a) 番号 ポリプロピレン SFR100 マグネシウム (グラム/分) 10 100.0 −− −− 7.0 11 97.5 2.5 −− 11.83 12 96.25 2.5 1.25 10.62 13 95.0 5.0 −− 12.0 14 92.5 5.0 2.5 13.14 15 92.5 7.5 −− 14.0 16 88.75 7.5 3.75 16.21 17 90.0 10.0 −− 14.75 18 85.0 10.0 5.0 21.6 19 80.0 20.0 −− 20.36 20 70.0 30.0 −− 52.5 (a) メルトインデックス=下記寸法のキャピラリ―ダイを用いて、230℃、 44psi (2.164kgs の負荷)での流速: ダイ内径=0.0825″ ダイ長=0.315″上記表1および2ならびに図1〜9から分かるように、「40LDPE/60ATH」樹脂(本明細書中では「LDPE/ATH樹脂」ともいう)/SFR100ブレンドの物理的性質はいくつかのユニ―クな傾向を示す。これについて以下に述べる。
【0047】このブレンドの可燃性は独特である。ATH−LDPE樹脂自身は図2、3および4に示されているように難燃性がよくない。アルミニウム三水和物を60%加えてもポリエチレンの難燃性は改良されない。しかし、SFR100またはシリコ―ン/ステアリン酸マグネシウムを各種濃度で添加すると、限界酸素指数と消火時間(UL94試験)が改良される。酸素指数はステアリン酸マグネシウムの添加とは無関係のようにみえる(図2)が、消火時間はステアリン酸マグネシウムの濃度が低いと低下するようである(すなわち、5%未満、図3)。
【0048】すなわち、表1および2ならびに図1〜8に示したデ―タが示唆していることは、一般に、第IIA 族金属塩は、アルミニウム三水和物および臨界的な量のSFR100を含有するポリエチレンの充填材高含量のコポリマ―に対して改良された難燃性を付与するには不必要であるということである。
【0049】表2と図5〜8は、SFR100およびシリコ―ン/ステアリン酸マグネシウムがLDPE/ATH樹脂の各種物理的性質に及ぼす影響を示している。低温衝撃強さはSFR100を単独で含むサンプルで目立っている。引張伸びと引張り係数はステアリン酸マグネシウムをさらに追加しても影響されないようである(図7R>7と8)。
【0050】全体として、上記表と図に示した証拠によって示唆されていることは、ATHを充填した熱可塑性組成物の場合、特定量のSFR100が単独で、すなわちステアリン酸マグネシウムを伴わないで存在すると、その熱可塑性組成物の難燃性と検討した特性のうちの多くが改良されるということである。
【0051】上記教示に照らして本発明の修正と変形が可能である。したがって、上記した本発明の特定具体例において添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の充分に意図された範囲内に入る変更をなし得るものと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリコ―ンオイルとシリコ―ン樹脂の組合せ(すなわち、「シリコ―ン(Silicone)」およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが、40部エチレン‐アクリル酸エチル/60部アルミニウム三水和物コポリマ―(「40EEA/60ATH」)のメルトフロ―インデックスに及ぼす効果を示すグラフである。
【図2】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの限界酸素指数に及ぼす効果を示すグラフである。
【図3】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの可燃性に及ぼす効果を示すグラフである。
【図4】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの−20℃における衝撃強さに及ぼす効果を示すグラフである。
【図5】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの−50℃における衝撃強さに及ぼす効果を示すグラフである。
【図6】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの引張強さに及ぼす効果を示すグラフである。
【図7】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの引張り係数に及ぼす効果を示すグラフである。
【図8】シリコ―ン(Silicone)およびシリコ―ン(Silicone)/ステアリン酸マグネシウムが40EEA/60ATHの引張伸びに及ぼす効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】A.約30〜約60重量部の熱可塑性樹脂、B.約40〜約70重量部のアルミニウム三水和物[ただし、(A)と(B)の合計が100重量部である]、C.シリコ―ンオイル、およびD.成分Cのシリコ―ンに可溶なシリコ―ン樹脂[ただし、(C)と(D)の比は約2:1から約2.5:1までであり、(C)と(D)の合計は(A)+(B)の100重量部当たり約4〜約12重量部である]から成る難燃性組成物。
【請求項2】 成分(C)と(D)の合計が(A)+(B)の100部当たり約5〜約10部である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】 成分(C)と(D)の合計が(A)+(B)の100部当たり約5〜約7部である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】 成分(C)対成分(D)の比が約2.3:1である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】 前記シリコ―ン樹脂が、平均式R3 SiO0.5の単官能性M単位と平均式SiO2 の四官能性Q単位とからなり、Q単位1個当たり平均して約0.3〜4.0個のM単位を有するMQシリコ―ン樹脂である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカ―ボネ―ト、ポリスチレン、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレンタ―ポリマ―、ポリフェニレンオキサイド‐ポリスチレンブレンド、アクリルポリマ―、ポリウレタンおよびポリアミドより成る群の中から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】 シリコ―ンオイルが、R3 SiO0.5 、R2 SiO、RSiO1.5 、R1 2 SiO0.5 、RR1 SiO、(R1 2 SiO、R1 SiO1.5 、およびSiO2 の単位ならびにこれらの組合せより成る群の中から選択されたシロキシ単位が化学結合したオルガノポリシロキサンであり、ただし、各Rはそれぞれ独立して飽和または不飽和で一価の炭化水素基を表わし、R1 はそれぞれ独立して飽和もしくは不飽和で一価の炭化水素基、または水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリ―ル基、ビニル基もしくはアリル基より成る群の中から選択される基を表わし、前記オルガノポリシロキサンは25℃で約600〜300,000,000センチポイズの粘度を有している、請求項1記載の組成物。
【請求項8】 シリコ―ンオイルが、25℃で90,000〜150,000センチポイズの粘度を有する本質的に直鎖状のポリジメチルシロキサンコポリマ―である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】 熱可塑性樹脂が約30〜約40重量部の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】 熱可塑性樹脂が約40重量部の量で存在する、請求項9記載の組成物。
【請求項11】 アルミニウム三水和物が約60〜約70重量部の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項12】 アルミニウム三水和物が約60重量部の量で存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】A.約40重量部の熱可塑性樹脂、B.約60重量部のアルミニウム三水和物、C.シリコ―ンオイル、およびD.成分Cのシリコ―ンに可溶なシリコ―ン樹脂[ただし、(C)と(D)の比は約2.3:1であり、(C)と(D)の合計は(A)+(B)の100重量部当たり約5〜約7重量部である]から成る、改良された難燃特性を有する熱可塑性組成物。
【請求項14】 (A)約30〜約60重量%の熱可塑性樹脂および(B)約40〜約70重量%のアルミニウム三水和物から成る熱可塑性組成物の難燃性を改良する方法であって、熱可塑性組成物を、(C)シリコ―ンオイル、および(D)成分Cのシリコ―ンに可溶なシリコ―ン樹脂[ただし、(C)と(D)の比は約2:1から約2.5:1までであり、(C)と(D)の合計は(A)+(B)の100重量部当たり約4〜約12重量部である]と混合するステップから成る方法。
【請求項15】 請求項1記載の難燃性組成物で被覆された基体からなる製品。
【請求項16】 基体が導電体である、請求項15記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公告番号】特公平7−78171
【公告日】平成7年(1995)8月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−177791
【出願日】平成3年(1991)6月24日
【公開番号】特開平4−226159
【公開日】平成4年(1992)8月14日
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY