説明

難燃性ゴム

【課題】加工性が良好であって、難燃性、低有毒ガス性、低発煙性に優れ、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)が改善されており、しかも加硫後の機械強度および圧縮永久歪みに遜色なく、したがってへたりの小さな防振ゴムを提供する。
【解決手段】ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、金属水和物70〜100重量部、赤燐2〜10重量部、ならびに、前記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤0.5〜2重量部含むことを特徴とする難燃性ゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や構築物、船舶、車両等に使用する防振ゴム用の難燃性ゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物や構築物、船舶、車両等に使用する防振ゴムにおけるゴム材料には、難燃性が求められており、かかる難燃性達成のために、公知の難燃剤であるリン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤が添加されている。特にハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンを併用すると優れた難燃効果が得られることが一般的に知られている。
【0003】
しかし、近年、これらの防振ゴムには、より高度の難燃性、燃焼時の発煙性が低いこと(低発煙性)、燃焼時の有毒ガスの発生をより低減させることが求められているが、ハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモンを併用する技術では、かかる要請に十分に対応することができない。
【0004】
ハロゲン含有率を大きく低減させた加硫ゴムとしては、非ハロゲン系ゴム材料にリン系難燃剤とメラミン化合物を添加したOA機器用ゴム部品に適した難燃性ゴムは公知である(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されている難燃性ゴムは、UL94規格によるV1に合格するものである。
【0005】
しかし、建築物や構築物、船舶、車両等に使用する防振ゴムにおけるゴム材料に求められる難燃性はUL94規格によるV0レベルのものもあり、特許文献1に記載の技術では達成できないものである。
【0006】
難燃性を高めるためには難燃剤の添加量を多くすることが容易に考えられるが、難燃剤を多く添加すると加硫ゴムの機械的強度が低下する。また難燃剤を多く添加した加硫ゴムは、圧縮永久歪みが大きくなっていわゆる「へたり」が大きくなる、振動疲労寿命が短くなる、望ましい圧縮特性ないしばね特性が得られない、加工性が低下する等の問題を生じる。
【0007】
さらに、火災等の災害時においては、発生する発煙の量だけでなく、発生する煙により視界不良になるまでの時間が避難のしやすさや生存率に大きな影響を及ぼすことがわかってきた。そのため、難燃性ゴムにも、低発煙性として、発生する発煙の量の抑制とともに、発生する煙により視界不良になるまでの時間が長くなる特性を備えることが有効であると推測される。
【0008】
【特許文献1】特開2002−212343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来の難燃性ゴムにおける問題点を解消すべく、加工性が良好であって、難燃性、低有毒ガス性、低発煙性に優れ、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)が改善されており、しかも加硫後の機械強度および圧縮永久歪みに遜色なく、したがってへたりの小さな防振ゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、特にゴムの組成と配合比率について鋭意研究した結果、以下に示す難燃性ゴムにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の難燃性ゴムは、ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、金属水和物70〜100重量部、赤燐2〜10重量部、ならびに、前記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤0.5〜2重量部含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によると、実施例の結果が示すように、かかる構成の加硫ゴムは、加工性が良好であって加硫後の機械的強度が強く、しかも難燃性がUL94規格V0を満足するものであり、有毒ガスの発生、特にゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)が改善されており、圧縮永久歪みも小さく、したがってへたりの小さな防振ゴムに適した難燃性ゴムとなる。
【0013】
上記難燃性ゴムにおいては、ベースポリマーとしてポリクロロプレンゴム(CR)が用いられるが、ポリクロロプレンゴムのムーニー粘度が60以下(ML1+4(100℃))であることが好ましい。かかるポリクロロプレンゴムをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと充填剤や難燃剤などとの相溶性、分散性、加工性などが良好となる。
【0014】
本発明においては、上記ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、上記金属水和物が70〜100重量部、および赤燐が2〜10重量部添加されることを特徴とする。上記金属水和物の添加量が70重量部未満の場合には、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)の十分な改善効果が得られない場合があり、100重量部を超えると機械的強度や圧縮永久歪みが低下する場合がある。また、赤燐の添加量が2重量部未満では、Ds−Max到達時間の十分な改善効果が得られない場合があり、一方、赤燐の添加量は多くなるほど難燃性は向上するが、10重量部を超えて添加すると、機械的強度などにはマイナスの影響がでる場合がある。
【0015】
本発明における金属水和物とは、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属の水和物をいう。
【0016】
また、本発明においては、上記金属水和物が水酸化マグネシウムを含むものであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明においては、上記金属水和物が水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムを1/1(重量比)で含むものであることが好ましい。
【0018】
また、上記難燃性ゴムにおいては、上記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤が0.5〜2重量部含まれる。シランカップリング剤の添加により、難燃性を維持したまま加硫ゴムの機械的強度を向上させることができる。シランカップリング剤の添加量が0.5重量部未満であると、シランカップリング剤添加の効果が十分に得られず、添加量が2重量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度上昇などにより加工性が低下する。
【0019】
さらに、上記難燃性ゴムにおいては、上記ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、カーボンブラックが10〜40重量部含まれることが好ましい。
【0020】
また、本発明の難燃性ゴムにおいては、圧縮永久歪みが20%以下であることが好ましい。圧縮永久歪みが20%を超えるといわゆる「へたり」が大きくなり、防振ゴムとしての性能が低下する。圧縮永久歪みは小さい方がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の難燃性ゴムは、ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、金属水和物70〜100重量部、赤燐2〜10重量部、ならびに、前記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤0.5〜2重量部含むことを特徴とする。
【0023】
本発明においては、難燃性ゴムのベースポリマー(原料ゴム)であるポリクロロプレンゴム(CR)は公知のポリクロロプレンゴムを限定なく使用することができる。
【0024】
ポリクロロプレンゴムとしては、たとえば、市販品としてはスカイプレンTSR−51,スカイプレンTSR−41、スカイプレンTSR−B−5A、スカイプレンTSR−42、スカイプレンTSR−44等があり、これらを適宜選択して使用することができる。これらのポリクロロプレンゴムは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
また、上記ポリクロロプレンゴムのゴム自体のムーニー粘度が60以下(ML1+4(100℃))であることが好ましく、55〜45(ML1+4(100℃))であることがより好ましい。かかるポリクロロプレンゴムをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと充填剤や難燃剤などとの相溶性、分散性、加工性などが良好となる。
【0026】
本発明においては、上記ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、上記金属水和物が70〜100重量部、および赤燐が2〜10重量部添加されることを特徴とするが、上記金属水和物が70〜95部、および赤燐が2〜8重量部添加されることが好ましく、上記金属水和物が75〜90重量部、および赤燐が2〜6重量部添加されることがより好ましい。上記金属水和物の添加量が70重量部未満の場合には、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)の十分な改善効果が得られない場合があり、100重量部を超えると機械的強度や圧縮永久歪みが低下する場合がある。また、赤燐の添加量が2重量部未満では、Ds−Max到達時間の十分な改善効果が得られない場合があり、一方、赤燐の添加量は多くなるほど難燃性は向上するが、10重量部を超えて添加すると、機械的強度などにはマイナスの影響がでる場合がある。
【0027】
本発明の難燃性ゴムに使用する金属水和物は、市販の化合物を適宜使用することができる。本発明における金属水和物とは、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属の水和物をいい、具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、塩基性炭酸マグネシウム(Mg(CO)(OH)・4HO)などをあげることができる。なかでも水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムが好ましい。
【0028】
また、本発明においては、上記金属水和物が水酸化マグネシウム70〜100重量部含むものであることが好ましく、70〜95重量部含むものであることがより好ましく、75〜90重量部含むものであることがさらに好ましい。
【0029】
さらに、本発明においては、上記金属水和物が水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムを1/1(重量比)で含むものであることが好ましい。
【0030】
また、本発明の難燃性ゴムに使用する赤燐は、市販の化合物を適宜使用することができる。赤燐は、単独品を使用してもよく、他の化合物、たとえば水酸化アルミニウムと混合した赤燐化合物として添加してもよい。かかる赤燐化合物としては、赤燐含有率が43重量%のノーバクエルST−100(燐化学工業社製)等が市販されている。
【0031】
本発明に用いられるカーボンブラックとしては、公知のカーボンブラックを適宜使用することができるが、なかでも、CTAB比表面積が75以上(HAFクラス以上)のカーボンブラックを使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
本発明においては、上記ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、カーボンブラックが10〜40重量部含まれることが好ましく、10〜30重量部含まれることがより好ましく、10〜20重量部含まれることがさらに好ましい。10重量部未満であると、カーボンブラック添加の効果が十分に得られず、添加量が40重量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度上昇などにより加工性が低下する。
【0033】
本発明に用いられるシランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を適宜使用することができるが、なかでも、ビニル基、アクリロイル基ないしメタクリロイル基、モノ−、ジ−ないしポリ−サルファイド基、メルカプト基を有するシランカップリング剤の使用が好ましい。かかるシランカップリング剤としては、A−189等(日本ユニカー社製)、Si−69(デグサジャパン社製)等が市販されており、使用可能である。これらのシランカップリング剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
本発明においては、上記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤が0.5〜2重量部含まれるが、0.5〜1重量部含まれることが好ましい。シランカップリング剤の添加により、難燃性を維持したまま加硫ゴムの機械的強度を向上させることができる。シランカップリング剤の添加量が0.5重量部未満であると、シランカップリング剤添加の効果が十分に得られず、添加量が2重量部を超えると、未加硫ゴム組成物の粘度上昇などにより加工性が低下する。
【0035】
また、未加硫ゴム組成物のムーニー粘度が70以下(ML1+4(125℃))であることが好ましく、60〜40(ML1+4(125℃))であることがより好ましい。
【0036】
本発明の難燃性ゴムには、公知の加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、補強剤、老化防止剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、プロセスオイルないし可塑剤、粘着付与剤、加工助剤等から必要な成分を選択して添加することができる。
【0037】
補強剤としては、上記カーボンブラックの他、シリカ、ウォラストナイト等のウィスカー等を使用することができる。
【0038】
その他の充填剤としては、たとえば、クレー、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等を使用することができる。
【0039】
加工助剤としては酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、高融点ワツクス、低分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール、オクタデシルアミン等の滑剤があげられる。加工助剤の配合割合はゴム100重量部に対して1〜50重量部とするのが好ましい。
【0040】
可塑剤としては、難燃性に寄与する可塑剤を添加することが好ましい。かかる難燃性可塑剤としては、たとえば、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的にはトリス(2−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学製社製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学社製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP,大八化学社製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。これらのなかでも、難燃性向上の観点より、リン酸のハロゲン化アルキルエステルの使用がより好ましい。
【0041】
本発明の難燃性ゴムは、上記成分を通常の加工方法によって、所定の形状に成形することができる。具体的には、加硫剤と加硫促進剤を除く成分をバンバリーミキサーにより混練してマスターバッチを製造し、上記マスターバッチを冷却した後にニーダー、混練ロールなどを使用して加硫剤と加硫促進剤とを混練して未加硫ゴム組成物とする。未加硫ゴム組成物を所定形状にて加熱加硫することにより、加硫難燃性ゴムが得られる。
【0042】
防振ゴムは、その構造は特に限定されないが、一般的には2個の取付け金具の間に加硫された防振ゴム材が介設された構造を有するものが多い。このような防振ゴムは金具と未加硫ゴム組成物を金型内に収容して加圧、加熱するプレス法、金具を配設した後に閉鎖した金型内に未加硫ゴム組成物を注入、硬化させるトランスファー成形ないし射出成形法により製造される。
【0043】
本発明の難燃性ゴムは、上記の構成を有することにより、加工性が良好であって、難燃性、低有毒ガス性、低発煙性に優れ、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)が改善されており、しかも加硫後の機械強度および圧縮永久歪みに遜色なく、したがってへたりの小さな防振ゴムに適したものとなる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性等の評価方法についても説明する。
【0045】
〔実施例1〕
スカイプレンTSR−41(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックT−NS(窒素吸着比表面積71m2 /g;昭和キャボット社製)15重量部、水酸化マグネシウム(キスマ;協和化学工業社製)40重量部、水酸化アルミニウム(ハイジライト;昭和電工社製)40重量部、赤燐化合物ノーバクエル(燐含有率43重量%;燐化学工業社製)10重量部(赤燐量として4.3重量部)、難燃性可塑剤(トリクレジルフォスフェート(TCP);大八化学工業社製)5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸3重量部、シランカップリング剤(Si69;デグサジャパン社製)0.8重量部(金属水和物添加量の1重量%)をバンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0046】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0047】
〔比較例1〕
スカイプレンTSR−51(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックSRF(窒素吸着比表面積27m/g;東海カーボン社製)70重量部、FTカーボン(窒素吸着比表面積23m/g;新日化カーボン社製)20重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、シランカップリング剤(Si69;デグサジャパン社製)0.8重量部(金属水和物添加量の1重量%)を、金属水和物や赤燐化合物を添加することなく、バンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0048】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0049】
〔比較例2〕
スカイプレンTSR−41(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックT−NS(窒素吸着比表面積71m/g;昭和キャボット社製)38重量部、水酸化マグネシウム(キスマ;協和化学工業社製)20重量部、赤燐化合物ノーバクエル(燐含有率43重量%;燐化学工業社製)5重量部(赤燐量として2.15重量部)、難燃性可塑剤(トリクレジルフォスフェート(TCP);大八化学工業社製)5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、シランカップリング剤(Si69;デグサジャパン社製)0.2重量部(金属水和物添加量の1重量%)をバンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0050】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0051】
〔比較例3〕
スカイプレンTSR−41(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックT−NS(窒素吸着比表面積71m/g;昭和キャボット社製)38重量部、水酸化マグネシウム(キスマ;協和化学工業社製)30重量部、水酸化アルミニウム(ハイジライト;昭和電工社製)30重量部、赤燐化合物ノーバクエル(燐含有率43重量%;燐化学工業社製)5重量部(赤燐量として2.15重量部)、難燃性可塑剤(トリクレジルフォスフェート(TCP);大八化学工業社製)5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、シランカップリング剤(Si69;デグサジャパン社製)0.3重量部(金属水和物添加量の0.5重量%)をバンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0052】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0053】
〔比較例4〕
スカイプレンTSR−41(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックT−NS(窒素吸着比表面積71m/g;昭和キャボット社製)38重量部、水酸化マグネシウム(キスマ;協和化学工業社製)20重量部、難燃性可塑剤(トリクレジルフォスフェート(TCP);大八化学工業社製)5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸2重量部、シランカップリング剤(Si69;デグサジャパン社製)0.2重量部(金属水和物添加量の1重量%)をバンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0054】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0055】
〔比較例5〕
スカイプレンTSR−41(東ソー社製)100重量部に対してカーボンブラックT−NS(窒素吸着比表面積71m/g;昭和キャボット社製)15重量部、水酸化マグネシウム(キスマ;協和化学工業社製)40重量部、水酸化アルミニウム(ハイジライト;昭和電工社製)40重量部、赤燐化合物ノーバクエル(燐含有率43重量%;燐化学工業社製)10重量部(赤燐量として4.3重量部)、難燃性可塑剤(トリクレジルフォスフェート(TCP);大八化学工業社製)5重量部、酸化亜鉛5重量部、ステアリン酸3重量部をバンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作製した。
【0056】
マスターバッチの冷却後に混練ロールを使用してイオウ0.5重量部、加硫促進剤2重量部を混練し、未加硫ゴム組成物とした。
【0057】
<評価>
上記の実施例、比較例の未加硫ゴム組成物を加圧加熱して加硫ゴムとし、以下の評価を行った。
【0058】
〔加工性〕
ムーニー粘度を測定し、ML1+4(125℃)を求め、未加硫ゴム組成物をロール混練してシート状にした場合の滑らかさも併せて評価した。なお、上記ムーニー粘度が75であることが加工性の観点では好適であり、60〜40であることがより好ましい。
【0059】
〔難燃性〕
UL94規格に準拠して垂直方向での難燃性を評価した。
【0060】
〔発煙性〕
ASTM E662に準拠して比光学密度Dsを測定した。この値は、小さいほど発煙が少なく、発煙性に優れていることを示す。
【0061】
また、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)(秒)を測定した。この値は、大きいほど煙が充満するまでの時間が遅いと評価される。
【0062】
〔加硫ゴムの物理特性〕
(硬度)
JIS K 6253に準拠して評価を行った。
【0063】
(引張り特性(引張り強さ、伸び))
JIS K 6251に準拠して評価を行った。
【0064】
(圧縮永久歪み)
JIS K 6262に準拠して70℃、22時間の評価を行った。なお、圧縮永久歪みが20以下であることが本発明の用途としては好適である。
【0065】
〔耐久性〕
デマッチャ疲労試験機(JIS K 6260)を使用し、JIS4号ダンベルを使用して作成したサンプルについて、40℃にて伸長率0%〜100%の繰り返し伸長を行い、サンプルが破断するまでの回数を測定した。評価に使用したサンプル数は10個であり、破断回数をワイブル確率紙にプロットして疲労寿命を求めた。
【0066】
【表1】

【0067】
この表1の結果より、本発明の難燃ゴム(実施例1〜4)は、いずれも未加硫状態のゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(125℃)が50以下と低く、混練ロールにて得たシート表面も滑らかであり、加工性が良好であった。また加硫ゴムは、難燃性においてはUL−94規格V−0をクリアするものであり、従来配合(比較例1:一般的な防振ゴム向けCR配合、比較例2:従来の難燃化した防振ゴム向けCR配合)と比べてゴム燃焼時の煙濃度が198と少なく良好であり、さらに、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)は689秒と大きく改善されていることがわかる。また、機械強度等の物性、圧縮永久歪み、および耐久性についても本発明の用途向けに満足できるレベルを維持していることがわかる。
【0068】
これに対して、比較例1は従来の一般的な防振ゴム向けCR配合のため、物性等は良好であるが、非難燃性のため、UL94は不合格であった。また、金属水和物20重量部、赤燐2重量部、難燃可塑剤5重量部を配合して難燃化した比較例2の難燃CR配合では、難燃性はUL94規格のV−0をクリアし、加硫ゴム物性、圧縮永久歪み、耐久性は満足するものではあったが、発煙性では改善が認められず、特にDs−Max到達時間は一般CR配合に劣る結果となった。さらに、金属水和物を60重量部含む比較例3では、難燃性はUL94規格のV−0をクリアし、加硫ゴム物性、圧縮永久歪み、耐久性、および煙濃度は満足するものではあったが、Ds−Max到達時間は一般CR配合に劣る結果となった。一方、赤燐を配合しなかった比較例4では、難燃性がUL94規格のV−1をクリアする程度に低下してしまった。また、シランカップリング剤を配合しなかった比較例5では、引張強さが低く、低物性なものであった。したがって、比較例ではいずれも、加工性、難燃性、低有毒ガス性、低発煙性(Ds−Max到達時間の改善)、物理特性、ならびに耐久性を高いレベルで並立させることができない結果となり、防振ゴムに適した難燃性ゴムには適さないことが明らかとなった。
【0069】
以上より、本発明の構成を用いることにより、加工性が良好であって、難燃性、低有毒ガス性、低発煙性に優れ、ゴム燃焼時の煙濃度が最大値に到達するまでの時間(Ds−Max到達時間)が改善されており、しかも加硫後の機械強度および圧縮永久歪みに遜色なく、したがってへたりの小さな防振ゴムに適した難燃性ゴムが得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の難燃性ゴムは、建築物や構築物においてコンクリートや金属材料で形成された躯体と天井材、床材、壁材などの部材の間、船舶において乗員、乗客の居室と船体との間、車両においてシャーシーと車体等の防振ゴムとして使用することが好適であり、特に船舶、車両、大型建機の防振ゴム、特に地下鉄車両用防振ゴムとして使用することが好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、金属水和物70〜100重量部、赤燐2〜10重量部、ならびに、前記金属水和物100重量部に対して、シランカップリング剤0.5〜2重量部含むことを特徴とする難燃性ゴム。
【請求項2】
ポリクロロプレンゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜40重量部含む請求項1に記載の難燃性ゴム。
【請求項3】
前記ポリクロロプレンゴムのムーニー粘度が60以下(ML1+4(100℃))である請求項1〜2のいずれかに記載の難燃性ゴム。
【請求項4】
前記金属水和物が水酸化マグネシウムを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性ゴム。
【請求項5】
前記金属水和物が水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムを1/1(重量比)で含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ゴム。
【請求項6】
圧縮永久歪みが20%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ゴム。

【公開番号】特開2007−23102(P2007−23102A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204541(P2005−204541)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】