説明

難燃性タバコ刻の製造方法

【課題】軽い喫味を呈しながら、十分な堅牢性を有する難燃性タバコ刻の製造方法を提供すること。
【解決手段】原料タバコ刻を揉捻処理に供した後、再乾処理もしくは精揉処理または水乾処理に供することを特徴とする難燃性タバコ刻の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性であることにより軽い喫味を呈するタバコ刻の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽い(マイルドな)喫味を呈するシガレットを好む傾向が強まっている。軽い喫味を呈するシガレットは、主に、膨化させたタバコ刻を用いて製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、液体二酸化炭素にタバコ材料を浸漬してタバコ材料に液体二酸化炭素を含浸させ、含浸した液体二酸化炭素を固体二酸化炭素に変換させた後、高温下で固体二酸化炭素を蒸発させてタバコ組織を膨化させる方法が開示されている。また、特許文献2には、二酸化炭素をガス状でタバコ材料に含浸させた後、これを急速加熱することによってタバコ材料を膨化させる方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、このような手法を用いる膨化タバコ刻は、コスト高となり、また柔らかいため堅牢性に劣り、シガレットに巻き上げる際に支障をきたすおそれがある。
【特許文献1】特公昭56−50830号公報
【特許文献2】特公昭56−50952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、軽い喫味を呈しながら、十分な堅牢性を有する難燃性タバコ刻の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、軽い喫味を呈するタバコ刻について鋭意検討する中で、タバコ刻を難燃性とすることにより、喫味が緩和されることに着目した。難燃性であれば、燃焼量が低減し、結果喫味が軽いものとなる。さらに研究を進めた結果、通常のタバコ刻をより高密度化するか、厚さをより厚くすることにより難燃化が図られると同時に堅牢性も十分なタバコ刻が得られることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づく。
【0007】
すなわち、本発明によると、原料タバコ刻を揉捻処理に供した後、再乾処理もしくは精揉処理または水乾処理に供することを特徴とする難燃性タバコ刻の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性であることにより軽い喫味を呈するとともに堅牢性に優れたタバコ刻を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、タバコ刻をより高密度化するか、厚さをより厚くするために、製茶で用いられている技術を利用する。すなわち、原料タバコ刻を、揉捻処理した後、再乾処理もしくは精揉処理または水乾処理に供する。
【0010】
原料タバコ刻は、常法に従い、ラミナタバコを状態調整(コンディショニング)により、水分を18重量%(湿基準)に調整し、蔵置し、水蒸気により水分を18%〜20重量%(湿基準)に調湿した後、裁刻することによって得られる。このようにして得られる原料タバコ刻は、0.1〜0.2mm程度の厚さと、0.8mm〜1mmの幅を有する。また、原料タバコ刻は、通常、0.40〜1.0g/cm3の密度を有する。
【0011】
本発明では、上記のように裁刻して得られる0.2mm程度の厚さと、0.8mm〜1mmの幅を有するタバコ刻(原料タバコ刻)を所定の処理に供するが、その前にまず、原料タバコ刻を水蒸気で加湿することが好ましい。この加湿は、原料タバコ刻の水分が22〜26重量%(湿基準)となるように行うことが好ましい。
【0012】
次に加湿した原料タバコ刻を揉捻処理に供する。揉捻処理は、製茶の分野で周知のものであり、揉捻機を用いて行われる。揉捻機は、基本的に、揉盤と、揉盤上を回動可能に設けられた揉捻鉢と、揉圧盤とを備え、揉圧盤に揉圧を印加するものである。そのような揉捻機は、例えば、特開平11−346655号公報、特開2001−29013号公報、特開2001−45972号公報、特開2001−231449号公報、特開2002−119208号公報等多数の特許文献に開示されており、また市販もされている。本発明では、この製茶用の揉捻機をそのまま使用することができる。すなわち、上記加湿した原料タバコ刻を鉢体に入れ、揉盤に受け、揉圧盤を設置して揉圧を印加する。揉捻処理では、製茶での揉捻処理と同様、原料タバコ刻を加熱しない。
【0013】
次に、揉捻処理した原料タバコ刻を再乾処理もしくは精揉処理または水乾処理に供する。
【0014】
再乾処理もしくは精揉処理は、製茶の分野で周知の技術であり、再乾機もしくは精揉機を用いて行われる。再乾機は、熱風による回転乾燥機の一種であり、精揉機は、揉捻処理した原料タバコ刻を伸直な形状に整形しつつ乾燥させるものである。再乾処理もしくは精揉処理により原料タバコ刻の厚さは有意に変化しないものの、タバコ刻の密度が大きくなる。再乾処理もしくは精揉処理により得られるタバコ刻は、密度が0.9〜1.5g/cm3まで増加し得る。再乾処理もしくは精揉処理は、60〜100℃の温度で行うことができる。処理時間は、20〜60分程度である。
【0015】
水乾処理は、回転乾燥機の一種であり、揉捻処理した原料タバコ刻同士を互いに絡ませ合わせ、球状に整形するものである。水乾処理により原料タバコ刻の密度は、有意に変化しないものの、タバコ刻の厚さが増大する。水乾処理により得られるタバコ刻は、厚さが0.5mm〜8mmまで増加し得る。ここで、タバコ刻の厚さは、各試料の裁刻されていない面と面との間の長さである。水乾処理は、100〜250℃の温度で行うことができる。処理時間は、20〜60分程度である。
【0016】
上に述べたように、本発明により原料タバコ刻を揉捻処理する前に、原料タバコを加湿することが好ましいが、揉捻処理後に再乾処理または精揉処理を行う場合には、原料タバコを加湿した後、グリセリンを添加することが好ましい。グリセリンを添加することにより再乾処理または精揉処理がより一層円滑に行われ、密度の増大が図られる。グリセリンは、0.1〜20.0重量%(湿基準)の割合で原料タバコ刻に含まれるように添加することが好ましい。また、揉捻処理後に水乾処理を行う場合には、原料タバコを加湿した後、グリセリンを添加するとともにさらに水を添加することが好ましい。グリセリンと水を添加することにより、水乾処理がより一層円滑に行われ、球状整形による厚さの増大が図られる。グリセリンおよび追加の水は、それぞれ、0.1〜20重量%(湿基準)および0.1〜20重量%(湿基準)の割合で原料タバコ刻に含まれるように添加することが好ましい。
【0017】
本発明の方法により得られるタバコ刻は、密度が増大し、あるいは厚さが増加しているので、タバコ刻の体積当たりの表面積が減少し、それによりシガレット吸煙時のタバコ刻の燃焼量が減少し、すなわち元の原料タバコ刻よりも難燃性となる。難燃性であるから、喫味も軽くなり、併せてCOの発生量も減少する。しかも、本発明により得られるタバコ刻は、密度または厚さが増大しているので、シガレット巻き上げも支障なく行うことができる。
【実施例】
【0018】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0019】
なお、以下の実施例で用いた揉捻機、精揉機、再乾機および水乾機は、それぞれ(株)寺田製作所製のものであり、揉捻機は、型式EJ−200型であり、精揉機は、型式EH−2000型であり、再乾機は、型式EC−2000型であり、水乾機は、型式IR−10相当型であった。また、タバコ刻の密度は、水銀法見かけ密度測定器を用いて各試料について3点測定し、平均した。タバコ刻の厚さは、マイクロメータを用いて各試料について10点測定し、平均した。
【0020】
実施例1
原料タバコ刻(厚さ:0.14mm、密度:0.8g/cm3)500gを水分が23重量%(湿基準)となるまで、恒温恒湿槽で蔵置した後、グリセリンを10重量%(湿基準)となるように添加した後、揉捻機に入れ、50分間揉捻処理した。この揉捻処理した原料タバコ刻を温度65℃に設定した再乾機に入れ、25分間再乾処理して、所望のタバコ刻(処理タバコ刻A)を得た。
【0021】
実施例2
実施例1で用いた原料タバコ刻に水およびグリセリンをそれぞれ10重量%(湿基準)となるように添加した後、揉捻機に入れ、50分間揉捻処理した。この揉捻処理した原料タバコ刻を温度150℃に設定した水乾機で20分間水乾処理して、所望のタバコ刻(処理タバコ刻B)を得た。
【0022】
実施例3
再乾処理の代わりに、90℃に設定した精揉機による30分間の精揉処理を行った以外は、実施例1の手法を繰り返し、所望のタバコ刻(処理タバコ刻C)を得た。
【0023】
実施例1〜3で得た処理タバコ刻と未処理の原料タバコ刻(対照タバコ刻)の密度および厚さをそれぞれ表1および表2に示す。なお、表1には、処理タバコ刻の密度を対照タバコ刻の密度で除した値を密度変化として示し、表2には、処理タバコ刻の厚さを対照タバコ刻の厚さで除した値を厚さ変化として示してある。
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表1および表2に示すように、処理タバコ刻AおよびCは、対照タバコ刻に対し、密度がおよそ20%増加したが、厚さはほとんど変わらなかった。揉捻処理後の再乾処理により、厚さは変化しないものの、タバコ刻に存在する細孔が埋まり、タバコ刻の密度が大きくなるものと考えられる。他方、処理タバコ刻Bは、対照タバコ刻に対する密度増加はほとんど認められなかったが、厚さが大幅に増大している。揉捻処理後の水乾処理により、タバコ刻の細孔は埋まらないものの、タバコ刻同士が絡み合い、球状に整形されるため、見かけの厚さが増大したものと考えられる。
【0026】
実施例4
実施例1〜2で得た処理タバコ刻および対照タバコ刻を用い、小型タバコ巻き上げ機(RIZLA UK社製)により、長さ59mm、巻周25mmのシガレットを作製した。
【0027】
各シガレットをボルグワルド社製喫煙器にセットし、点火後先端から15mmまで自然燃焼させたところで、喫煙容量35mLで1回吸煙(パフ)した。この吸煙により発生した主流煙をテフロン(登録商標)製のガスパックに捕集し、Aglient社製ガスクロマトグラフMicroGC(M200H)により、カラムとして分子ふるいカラム(Agilent MolSieve 5A 10M)を用いて酸素ガスの定量分析を行った。この定量分析は、各タバコ刻について3回行い、平均値を算出した。図1に、各シガレットの1回の吸煙当たりの酸素消費量を示す。この結果から、処理タバコ刻Aおよび処理タバコ刻Bを用いたシガレットは、対照タバコ刻を用いたシガレットに対し、酸素消費量がそれぞれ20%および50%減少したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】シガレットの1回の吸煙で消費される酸素量を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料タバコ刻を揉捻処理に供した後、再乾処理もしくは精揉処理または水乾処理に供することを特徴とする難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項2】
前記揉捻処理前に、前記タバコ刻にグリセリンを添加することを特徴とする請求項1に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項3】
前記揉捻処理後、前記原料タバコ刻を再乾処理または精揉処理に供することを特徴とする請求項2に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項4】
前記難燃性タバコ刻が、0.9〜1.5g/cm3の密度を有することを特徴とする請求項3に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項5】
前記揉捻処理前に、前記タバコ刻に水およびグリセリンを添加することを特徴とする請求項1に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項6】
前記揉捻処理後、前記原料タバコ刻を水乾処理に供することを特徴とする請求項4に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。
【請求項7】
前記難燃性タバコ刻が、0.5〜8mmの厚さを有することを特徴とする請求項6に記載の難燃性タバコ刻の製造方法。

【図1】
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