説明

難燃性樹脂組成物およびその成形体

【目的】 柔軟性およびカレンダ加工性に優れる低ハロゲン含有の難燃性樹脂組成物を提供する。
【構成】 (A)剪断速度101 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η1 と剪断速度102 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η2 との比(η1 /η2 )が3.5〜8であるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体 70〜98.5重量%、(B)有機臭素系難燃剤 1〜20重量%および(C)酸化アンチモン 0.5〜10重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%である]からなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に建築物、構築物、電気・電子部品などに好適に用いられる、柔軟性およびカレンダ加工性に優れる低ハロゲン含有の難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】塩化ビニル樹脂(PVC)は耐水、耐酸、耐溶剤性に優れ、かつ難燃性も良好であり多方面に使用されているが、カレンダ加工して得られるシート、フィルム、レザーなどは工業用、農業用分野に大量に消費されている。近年、これらの樹脂中に含まれるハロゲンが燃焼時に有毒ガスになることから、廃棄物処理あるいは火災時の安全性の面で問題が提起されている。このような社会的背景から、ハロゲンを可能な限り削減する方策が種々検討されている。例えば、PVCの代替えとしては、ポリオレフィン系樹脂を用いて、ノンハロゲン系難燃剤(例えば金属水酸化物、金属酸化物、リン系難燃剤など)を添加した難燃性樹脂が提案されている(特開昭63-20348号公報、特開昭63-61055号公報、特開昭63-128038 号公報、特開昭63-154760 号公報、特開平 3-20342号公報など)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法で得られる難燃性樹脂はいずれも柔軟性に劣り、カレンダ加工性が困難であるという問題があった。本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、柔軟性およびカレンダ加工性に優れる低ハロゲン含有の難燃性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の物性を有するプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体により上記目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は(A)剪断速度101 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η1 と剪断速度102 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η2 との比(η1 /η2 )が3.5〜8であるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体 70〜98.5重量%、(B)有機臭素系難燃剤 1〜20重量%および(C)酸化アンチモン 0.5〜10重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%である]からなる難燃性樹脂組成物を提供するものである。以下、本発明を具体的に説明する。
【0005】本発明におけるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体(以下、「BPP」という)は、ポリプロピレンブロックと、プロピレンとエチレンまたは炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体ブロックからなるブロック共重合体である。該α−オレフィンとしては、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−ジメチル−1−ペンテン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0006】本発明のBPPは、剪断速度101 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η1 と剪断速度102 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η2 との比(η1 /η2 )が3.5〜8であることが必要である。なお、スリットダイ法とは、温度170℃において幅20mm、高さ1.5mm、長さ60mmのスリットダイを用いて溶融粘度を測定する方法である。この方法については、C.D.Han;Rheology in Polymer Processing,Academic,New York(1976)および J.L.White;Principles of Polymer Engineering Rheology,John Wiley,New York(1990) に詳しい記載がある。
【0007】具体的には、市販のスリットダイを有する粘度計(東洋精機製作所製ラボプラストミルD20−20型)を用いて測定することができる。溶融粘度比(η1 /η2 )は4.0〜7.5が好ましく、とりわけ4.5〜7.0が好適である。溶融粘度比が3.5未満ではカレンダ加工時にロール付着が起こるのみならず剛性が低下する。一方、8を超えると柔軟性に劣りカレンダ加工が困難となるので好ましくない。また、本発明のBPPについては、共重合ゴムブロックが共重合体全体に占める割合は、一般に30〜70重量%であり、35〜68重量%が好ましく、とりわけ40〜65重量%が好適である。
【0008】さらに、カレンダ加工性に優れるBPPとしては、下記(a)および(b)の物性を有するものが好ましい。すなわち、(a)温度25℃におけるパラキシレン不溶分が25〜65重量%の範囲にあること、および(b)温度25℃におけるパラキシレン可溶分は、(i) 2サイトモデルによる平均プロピレン含量(FP)が20〜80モル%、 (ii) 2サイトモデルにおいてプロピレンを優先的に重合する活性点で生成する共重合体(PH )のプロピレン含量(PP )が65〜90モル%および(iii) PH が共重合体中に占める割合(Pf1)が0.40〜0.90の範囲である。
(a)パラキシレン不溶分とは、BPPを温度130℃でパラキシレンに約1重量%溶解した後、25℃まで冷却したときの不溶分であり、本発明のBPPは25〜65重量%が好ましく、特に30〜60重量%が好適である。また、(b)パラキシレン可溶分は上記操作により溶解した成分であり、2サイトモデルにより求められる性状が上記範囲にあることが好ましい。
【0009】ここで、プロピレン−α−オレフィンの2サイトモデルについて、プロピレン−エチレン共重合体を例にとり説明する。プロピレン−エチレン共重合体の同位体炭素による核磁気共鳴(13C−NMR)スペクトルの例を図1に示す。該スペクトルは連鎖分布(エチレンとプロピレンの並び方)の違いで(1) 〜(10)に示す10個のピークが現れる。この連鎖の名称は、Carman,C,J,et al;Macromolecules,Vol.10,p536-544(1977) に記載があり、その名称を図2に示す。このような連鎖は、共重合の反応機構を仮定すると反応確率(P)として表すことができ、全体のピーク強度を1にしたときの各(1) 〜(10)のピークの相対強度はPをパラメーターとしたベルヌーイ統計による確率方程式として表すことができる。
【0010】例えば、(1) Sααの場合、プロピレン単位を記号p,エチレン単位を記号eとすると、これをとりうる連鎖は[pppp]、[pppe]、[eppe]の3通りであり、これらをそれぞれ反応確率(P)で表し、足し合わせる。残りの(2) 〜(10)のピークについても同様な方法で式を立て、これら10個の式と実際に測定したピーク強度が最も近くなるようにPを最適化することにより求めることができる。
【0011】2サイトモデルは、この反応機構を仮定するモデルであり、H.N.CHENG;Jounalof Applied Polymer Sience,Vol.35 p1639-1650(1988)に記載がある。すなわち、触媒を用いてプロピレンとエチレンを共重合するモデルにおいて、プロピレンを優先的に重合する活性点で生成する共重合体(PH )のプロピレン含量(PP)とエチレンを優先的に重合する活性点で生成する共重合体のプロピレン含量(P'P)の2つを仮定し、さらにPH が共重合体中に占める割合(Pf1)をパラメーターとすると、次の表1に示す確率方程式が得られる。
【0012】
【表1】


【0013】そこで、先に述べた13C−NMRスペクトルの相対強度と、表1に示す確率方程式が一致するようにPP 、P'PおよびPf1の3個のパラメーターを最適化することにより求められる。
【0014】本発明のBPPにおけるパラキシレン可溶分の(i) 平均プロピレン含量(FP)は、上記3個のパラメーターを用いて次式で求められる。
FP=PP ×Pf1+P'P×(1−Pf1) (モル%)
上記式で求められるFPは20〜80モル%が好ましく、さらに好ましくは30〜70モル%である。
【0015】また、上記のパラメーターのうち(ii)PP は65〜90モル%が好ましく、とりわけ70〜85モル%が好適である。さらに、(iii) Pf1は0.40〜0.90が好ましく、とりわけ0.48〜0.82が好適である。
【0016】本発明のBPPの重合は、ヘキサン、ヘプタン、灯油などの不活性炭化水素またはプロピレンなどの液化α−オレフィン溶媒の存在下で行うスラリー法、無溶媒下の気相重合法などにより、温度条件としては室温〜130℃、好ましくは50〜90℃、圧力2〜50kg/cm2 の条件で行われる。重合工程における反応器は、当該技術分野で通常用いられるものが適宜使用でき、例えば攪拌槽型反応器、流動床型反応器、循環式反応器を用いて連続式、半回分式、回分式のいずれの方法でもよい。
【0017】具体的には公知の多段重合法を用いて得られる。すなわち、第1段反応でプロピレンおよび/またはプロピレン−α−オレフィン共重合体を重合した後、第2段反応でプロピレンとα−オレフィンとの共重合を行う方法であり、例えば特開平3-97747 号公報、特開平3-205439号公報、特開平4-153203号公報、特開平4-261423号公報および特開平5-93024 号公報などに記載されている。
【0018】本発明における(B)有機臭素系難燃剤は、分子中に臭素原子を有する有機化合物であり、樹脂分野において難燃剤として広く使用されているものである。代表的なものとしては、デカブロムジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ビストリブロモフェノキシエタン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、臭素化ポリスチレン、TBAポリカーボネートオリゴマー、ヘキサブロモベンゼン、1,2−ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でもエチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)イソシアヌレートが好ましい。
【0019】また、本発明における(C)酸化アンチモンは当該技術分野において難燃化助剤として広く用いられているものであり、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンが代表例として挙げられる。該酸化アンチモンの平均粒径は通常0.3〜150μmである。
【0020】本発明の樹脂組成物中に占める(A)成分の組成割合は70〜98.5重量%であり、75〜97重量%が好ましく、とりわけ80〜95重量%が好適である。組成割合が70重量%未満ではカレンダ加工性が低下する。一方、98.5重量%を超えると難燃性に劣る。
【0021】また、(B)成分の組成割合は1〜20重量%であり、2〜18重量%が好ましく、特に3〜16重量%が好ましい。組成割合が1重量%未満では難燃性が低下する。一方、20重量%を超えると臭素による腐食や変色が問題となるので好ましくない。
【0022】(C)成分の組成割合は0.5〜10重量%であり、1〜9重量%が好ましく、特に2〜8重量%が好ましい。組成割合が0.5重量%未満では難燃性が低下する。一方、10重量%を超えると柔軟性が失われ加工性が低下する。本発明の組成物中に占める臭素含有量としては0.5〜10重量%の範囲内であることが好ましい。このように低い臭素含有量であっても、本発明の組成物は十分な難燃性を発揮する。
【0023】さらに、本発明の組成物には公知の難燃剤、例えば無水テトラクロロフタル酸、塩素化パラフィン、塩素化ビスフェノールA、臭素化ビスフェノールS、塩素化ジフェニール、臭素化ジフェニール、塩素化ナフタリル、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジブロモブチル)ホスフェートなどを併用してもよい。この場合の配合割合は通常0.5〜10重量%の範囲である。
【0024】また、本発明の組成物には、当業者に慣用されている添加剤、例えば酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、顔料、可塑剤、柔軟剤、充填剤などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合してもよい。
【0025】本発明の組成物は、公知の混合方法、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサーなどを用いて各成分を混合し、さらにニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機などを用いて溶融混合して得られる。溶融混合時の温度は、通常170〜280℃であり、好ましくは190〜260℃で行うとよい。得られた組成物は、公知の溶融成形法および圧縮成形法により、フィルム、シート、チューブ、ボトルなどに成形し単体での使用あるいは他の材料を積層して積層体としても使用することができる。
【0026】積層体としては、繊維状基布の片面あるいは両面に積層して用いることができる。繊維状基布としては天然繊維(木綿、麻など)、再生繊維(ビスコースレーヨン、キュプラなど)、半合成繊維(ジ−またはトリ−アセテート繊維など)、合成繊維(ナイロン−6繊維、ナイロン−66繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)を挙げることができる。これら基布の繊維は、短繊維紡績糸条、長繊維紡績糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものでもよい。また、これらの基布は織物、編物、不織布あるいはこれらの混合布のいずれであってもよい。これらの中でも、縫製部分の強度、耐屈曲性を考慮すると織物または編物がよい。繊維の形態は、長繊維(フィラメント)形状で、平織布が好ましい。これらの基布については特に限定するものはなく、得られる積層体の機械的強度を高めるのに有用である。積層方法については公知の方法を用いることができる。すなわち、プレス成形機を用いて積層する方法、カレンダ加工機を用いてロールで積層する方法、押出ラミネーターを用いて基布上に積層する方法などが挙げられる。
【0027】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。なお、各物性の測定方法を以下に示す。
(1)カレンダ加工性カレンダ加工においてロール面への粘着状況を目視により観察し、次の4段階で評価した。
・・・・ まったくない○ ・・・・ わずかにある△ ・・・・ かなりの量がある× ・・・・ 量が多い(2)シートの外観カレンダ加工で得られたシート表面を目視により次の4段階で評価した。
・・・・ 非常に平滑○ ・・・・ 十分に平滑△ ・・・・ 一部に平滑でない部分がある× ・・・・ トゲ状の突起がある
【0028】(3)防汚性試験次の物質からなる汚れ判定用組成物に積層シートを室温で7日間浸漬した後取り出し、目視により汚れを判定した。
汚れ判定用組成物;
カーボンブラック 1.75重量%シリカ 17.0 〃畑 土 38.0 〃鉱物油 8.75 〃セメント粉末 17.0 〃第二酸化鉄 0.5 〃水、界面活性剤その他 17.0 〃汚れは次の4段階で評価した。
・・・・ ほとんど汚れがない○ ・・・・ 少し汚れがある△ ・・・・ 汚れが目立つ× ・・・・ 汚れが著しい
【0029】(4)難燃性JIS A1322に準拠し、残炎、残じん、炭化長および炭化面積を測定した。
(5)縫製試験縫製部について目視によりその状態を次の4段階で評価した。
・・・・ 破損箇所なし○ ・・・・ 極く一部に小さい破損がある△ ・・・・ 破断部が多少あるがかろうじて縫製されている× ・・・・ 破断部が多く縫製できないまた、縫製部についてJIS L1096に準拠し引張試験を行い縫製強度を測定した。
【0030】(6)パラキシレン可溶分の2サイトモデルによる解析パラキシレン可溶分について、下記に示す装置および測定条件で13C−NMRスペクトルの測定を行い、それぞれのシグナルは A.Zambelli et al;Macromolecules,13,p267(1980)に記載された方法にしたがって帰属した。
測定器 日本電子社製 JNM−GSX400測定モード :プロトンデカップリング法パルス幅 :8.0μsパルス繰返時間 :5.0s積算回数 :20000回溶 媒 :1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼンの混合溶媒(75/25容量%)
内部循環 :ヘキサメチルジシロキサン試料濃度 :300mg/3.0ml溶媒測定温度 :120℃次に、2サイトモデルの解析を行い、FP、PP およびPf1を求めた。
【0031】また、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体としてポリプロピレンブロックとエチレン−プロピレン共重合体ブロックからなるブロック共重合体を用いた。その種類および性状(溶融粘度比、共重合体ブロックの割合、パラキシレン不溶分、およびパラキシレン可溶分のFP、PPf1)を表2に示す。
【0032】
【表2】


【0033】有機臭素系難燃剤として、エチレンビスペンタブロモジフェニル(アルベマール浅野社製、商品名「Saytex8010」)(以下「Br1」という)、トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)イソシアヌレート(第一工業製薬社製、商品名「SR245」)(以下「Br2」という)およびエチレンビステトラブロモフタルイミド(アルベマール浅野社製、商品名「SaytexBT−93」)(以下「Br3」という)を用いた。酸化アンチモンとして三酸化アンチモン(日本鉱業社製)を用いた。
【0034】実施例1〜11、比較例1〜4表3に種類および配合量が示されているBPP、有機臭素系難燃剤および酸化アンチモンならびに添加剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] 0.3重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト 0.2重量部、エルカ酸アミド 0.1重量部、ステアリン酸カルシウム 0.05重量部、シリカ 0.2重量部、塩素化パラフィン 2.5重量部、ジ−n−オクチルスズマレート 0.2重量部を配合し、川田製作所社製スーパーミキサー(SMV20型)を用いて混合し、ナカタニ機械社製二軸押出機(AS30型)を用いてペレット化した。得られた各ペレットを6インチ径ロール成形機(小平製作所製R-2-2-FF型)を用いて温度170〜175℃の条件でシートを作製しカレンダ加工性および外観を評価した。さらに、上記ロール成形機を用いて各ペレットを750デニールのポリエステル基布の両面に積層し、厚さ0.3mmの積層シートを作製した。得られた各シートについて防汚性および難燃性を測定した。
【0035】また、上記積層シートを工業用ミシン(シンガー122W−115)を用いて縫糸としてノーメックスマルチフィラメント糸条500d/2fを使用し、本縫、直線2本縫により運針数(ピッチ/10cm)15、25および50の場合について縫製した。縫製部についてその状態および縫製強度を測定した。以上の結果を表4に示す。
【0036】
【表3】


【0037】
【表4】


【0038】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物は、柔軟性およびカレンダ加工性に優れ、かつ低ハロゲン含有であるので建築物、構築物、電気・電子部品分野などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】エチレン−プロピレン共重合体の同位体炭素による核磁気共鳴スペクトルの例である。
【図2】ポリオレフィンにおける連鎖分布由来の各炭素の名称を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)剪断速度101 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η1 と剪断速度102 sec-1 におけるスリットダイ法による溶融粘度η2 との比(η1 /η2 )が3.5〜8であるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体 70〜98.5重量%、(B)有機臭素系難燃剤 1〜20重量%および(C)酸化アンチモン 0.5〜10重量%[ただし、(A)+(B)+(C)=100重量%である]からなる難燃性樹脂組成物。
【請求項2】 臭素含有量が0.5〜10重量%である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】 (A)成分がポリプロピレンブロックと、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体ブロックからなり、かつ該共重合体ブロックが共重合体全体に占める割合が30〜70重量%である請求項1〜2のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】 (A)成分が下記(a)および(b)の物性を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
(a)温度25℃におけるパラキシレン不溶分 25〜65重量%(b)温度25℃におけるパラキシレン可溶分は、(i) 2サイトモデルによる平均プロピレン含量(FP)が20〜80モル%、 (ii) 2サイトモデルにおいてプロピレンを優先的に重合する活性点で生成する共重合体(PH )のプロピレン含量(PP )が65〜90モル%および(iii) PH が共重合体中に占める割合(Pf1)が0.40〜0.90であること
【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を繊維状基布の少なくとも片面に被覆してなる積層体。
【請求項6】 請求項5記載の積層体を加工して得られる難燃性シート。

【図1】
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【図2】
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