説明

難燃性樹脂組成物

【課題】 従来、絶縁電線の被覆材や電気・電子機器の部材等用の難燃性樹脂組成物は、多量の水酸化マグネシウム等が添加されることから成形性に劣り、成形品は引張特性の低下、引っ掻き時の表面の白化、耐衝撃性の低下という欠点を有していたため、引張特性および耐衝撃性に優れ、かつ引っ掻き時に表面の白化のない難燃性成形品を与える、難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 酸変性ポリオレフィン(a)のグアニジン塩(A)からなることを特徴とする難燃剤;該難燃剤を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる難燃性樹脂組成物;並びに、該組成物を成形してなる成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、機械特性に優れ、かつ難燃性に優れる成形品を与える難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内外で使用される成形品のうち、絶縁電線の被覆材料としては、難燃性のポリエチレンやポリ塩化ビニル樹脂等が使用されているが、特に環境問題等からハロゲンフリー化が求められている。このためハロゲンフリーの被覆材料用の難燃性樹脂組成物として、エチレン単独重合体、エチレン単独重合体とプロピレン単独重合体の混合物、エチレン系共重合体やエチレン・プロピレンゴム等のゴム系材料に、多量の水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等を配合したものや、変性ポリプロピレンに多量のスルファミン酸グアニジンを配合したものが用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
一方、電気・電子機器の部材および筐体に使用される難燃性成形材料としては、従来から耐衝撃性、剛性、成形性が重視されることから、ポリカーボネート樹脂、ハイインパクトポリスチレンのアロイ系材料あるいはポリブチレンテレフタレート等にスルホン酸ホスホニウム塩、リン酸エステル等で難燃性付与されたものが使用されてきた(例えば、特許文献3参照)。さらに、ノートパソコンや携帯電話等の一般家庭への普及に伴って、これらの性能に加えて軽量性が求められており、軽量性に優れるポリオレフィンに、水酸化マグネシウムを配合する方法等が提案されている(例えば、特許文献4)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−252388号公報
【特許文献2】特開2004−352934号公報
【特許文献3】特開2005−298562号公報
【特許文献4】特開2004−182945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記多量のスルファミン酸グアニジン、水酸化マグネシウム等を添加する従来技術では、樹脂組成物の成形性に劣り、被覆材料が硬すぎたり伸びが不十分といった引張特性の低下、引っ掻き時の表面の白化、さらに成形材料の耐衝撃性の低下という欠点があり、また、スルホン酸ホスホニウム塩、リン酸エステル等による難燃性付与では、難燃性と耐衝撃性の両立の点でまだ不十分という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、酸変性ポリオレフィン(A0)のグアニジン化合物の塩(A)からなることを特徴とする難燃剤;該(A)を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる難燃性樹脂組成物;該組成物を成形してなる成形品;並びに、該成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の難燃剤を熱可塑性樹脂に含有させてなる難燃剤樹脂組成物、および該組成物を成形してなる成形品(被覆材料および成形材料)は、下記の効果を奏する。
(1)該組成物は成形性に優れる。
(2)被覆材料は、難燃性に優れ、かつ引っ掻き時の表面の白化がなく、引張特性に優れる。
(3)成形材料は、難燃性に優れ、かつ耐衝撃性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の難燃剤は、酸変性ポリオレフィン(A0)のグアニジン化合物の塩(A)からなる。
(A0)を構成するポリオレフィン(a)には、オレフィンの1種または2種以上の(共)重合体や、オレフィンの1種以上と他の単量体の1種以上との共重合体等の重合法によるもの、および重合法による高分子量ポリオレフィン(好ましくはMn50,000〜150,000)を減成してなるものが含まれる。以下において、%および比は、別に規定しない限り、それぞれ重量%および重量比を表す。
【0008】
上記オレフィンには、炭素数(以下、Cと略記)2〜30(好ましくは2〜12、さらに好ましくは2〜4)のアルケン、例えばエチレン、プロピレン、1−、2−およびイソブテン、並びにC5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1,1−デセン、1−ドデセン等);他の単量体には、オレフィンと共重合性の不飽和単量体、例えばスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸およびそれらのアルキル(C1〜30)エステルが含まれる。
【0009】
該重合法による(a)の具体例には、エチレン系重合体、例えば高密度、中密度および低密度ポリエチレン、およびエチレンとC4〜30の不飽和単量体[ブテン(1−ブテン等)、C5〜30のα−オレフィン(1−ヘキセン、1−ドデセン等)、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸等]との共重合体[共重合比(重量比、以下同じ。)30/70〜99/1、好ましくは50/50〜95/5]等;プロピレン系重合体、例えばポリプロピレン、プロピレンとC4〜30の不飽和単量体(同上)との共重合体(共重合比、同上);エチレン/プロピレン共重合体(共重合比0.5/99.5〜30/70、好ましくは2/98〜20/80);C4以上のオレフィンの重合体、例えばポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等が含まれる。
【0010】
また、減成法による(a)には、上記重合法と同様の重合体で高分子量(好ましくはMn50,000〜150,000)のものを機械的、熱的または化学的に減成したものが含まれ、これらのうち熱減成されたポリオレフィンとしては、高分子量ポリオレフィンを不活性ガス中で加熱する(通常300〜450℃で0.5〜10時間)ことにより熱減成されたもの(例えば特開平3−62804号公報記載のもの)が挙げられる。
上記重合法および減成法によるポリオレフィンのうち、変性の容易さと分散性能の観点から、好ましいのは減成されたポリオレフィン、とくに熱減成されたポリオレフィンである。
【0011】
(a)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、熱可塑性樹脂との相溶性および後述するクレーの分散性の観点から好ましくは500〜100,000、さらに好ましくは1,000〜50,000である。
【0012】
(a)中の二重結合量は、変性の容易さの観点、および熱可塑性樹脂との相溶性の観点から好ましくは炭素1,000個当たり0.2〜10個、さらに好ましくは0.5〜5個である。ここにおいて、二重結合量は1H−NMR(核磁気共鳴)分光法から得られるスペクトル中の4.5〜6.0ppm間における二重結合由来のピークと、0.5〜2.0ppm間における飽和炭化水素基由来のピークの各積分値の比率から算出できる。
【0013】
本発明における酸変性ポリオレフィン(A0)は、上記ポリオレフィン(a)と不飽和(ポリ)カルボン酸またはその誘導体(b)を反応させ、誘導体の場合はさらに加水分解することにより製造できる。
【0014】
(b)のうち、不飽和ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸[例えば脂肪族(C4〜24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびメサコン酸)、および脂環式(C8〜24、例えばシクロヘキセンジカルボン酸およびシクロヘプテンジカルボン酸)];3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸[例えば脂肪族ポリカルボン酸(C5〜24、例えばアコニット酸)];およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0015】
(b)のうち、不飽和ポリカルボン酸の誘導体としては、例えば上記不飽和ポリカルボン酸の無水物[C4〜24、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸および無水アコニット酸]、アルキル(C1〜18)エステル[C5〜60、例えばマレイン酸モノ−およびジメチルエステル、フマル酸モノ−およびジエチルエステル、イタコン酸モノ−およびジ−t−ブチルエステル、メサコン酸モノデシルエステルおよびシクロヘプテンジカルボン酸ジドデシルエステル]、アミド[C4〜60、例えばマレイン酸モノアミド、マレイン酸モノメチルアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸ジメチルアミド、フマル酸モノエチルアミド、イタコン酸ジ−t−ブチルアミド、メサコン酸モノデシルアミドおよびシクロヘプテンジカルボン酸ジドデシルアミド]、イミド[C4〜24、例えばマレイン酸イミド、イタコン酸イミド、シトラコン酸イミドおよびシクロヘプテンジカルボン酸イミド]、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
(a)と(b)との反応における(b)の使用量は、(a)の重量に基づいて通常1〜50%、難燃性および成形品の樹脂物性の観点から好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜20%である。
【0017】
(A0)の具体的な製造方法には、下記のものが含まれる。
[1](a)および(b)を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒[C3〜18、例えば炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエンおよびキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えばジ−、トリ−およびテトラクロロエタンおよびジクロロブタン)、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンおよびジ−t−ブチルケトン)およびエーテル(例えばエチル−n−プロピルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテルおよびジオキサン)]に懸濁あるいは溶解させ、必要により後述の連鎖移動剤(t)または重合禁止剤(f)を加え、これに必要によりラジカル開始剤(c)[もしくは(c)を適当な有機溶媒(上記に同じ)に溶解させた溶液]を加えて加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法);
[2](a)、(b)および必要により(c)、(t)、(f)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダなどを用いて溶融混練する方法(溶融混練法)。
【0018】
(a)と(b)との反応性の観点から好ましいのは[1]の方法、さらに好ましいのは溶融法および溶液法である。
【0019】
溶融法での反応温度は、(a)が溶融する温度であればよく、(a)と(b)との反応性および酸変性ポリオレフィン(A0)の分解温度の観点から好ましくは120〜260℃、さらに好ましくは130〜240℃である。
【0020】
溶液法での反応温度は、(a)が溶媒に溶解する温度であればよく、(a)と(b)との反応性、および(A0)の分解温度および工業的観点から好ましくは50〜220℃、さらに好ましくは110〜210℃、特に好ましくは120〜180℃である。
【0021】
(a)と(b)とは、ラジカル開始剤(c)の存在下または非存在下のいずれにおいても反応させることができるが、(a)と(b)との反応性の観点から(c)の存在下で行わせるのが好ましい。
ラジカル開始剤(c)としては、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等)および過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)[ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等]および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート等]〕が挙げられる。
これらのうち、ポリオレフィンと(b)との反応性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのは単官能過酸化物、とくに好ましいのはジ−t−ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシドおよびジクミルパーオキシドである。
【0022】
(c)の使用量は、(b)の重量に基づいて、(a)と(b)の反応率の観点から好ましい下限は0.001%、さらに好ましくは0.01%、特に好ましくは0.1%、工業的観点および(A)と後述する熱可塑性樹脂(B)との相溶性の観点から好ましい上限は100%、さらに好ましくは50%、特に好ましくは30%である。
【0023】
連鎖移動剤(t)としては、下記のものが挙げられる。
(1)炭化水素
C6〜24、例えば芳香族炭化水素(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン等)および不飽和脂肪族炭化水素(1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等);
(2)ハロゲン化炭化水素
C1〜24、例えばジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモメタン、トリブロモメタン、四臭化炭素、塩化ベンジルおよび臭化ベンジル;
(3)アルコール
C1〜24、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−および2−ブタノールおよびアリルアルコール);
【0024】
(4)チオール
(4−1)1価チオール
脂肪族チオール[C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、1−および2−ブタンチオール、1−および2−ペンチルチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン)、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、システインおよび2−メルカプトエチルアミン]、脂環式チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオールおよびシクロヘキサンチオール)および芳香(脂肪)族チオール(C6〜12、例えばベンゼンチオールおよびベンジルメルカプタンおよびチオサリチル酸);
(4−2)多価チオール
ジチオール[脂肪族(C2〜40)ジチオール(例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール等)、脂環式(C5〜20)ジチオール(例えばシクロペンタンジチオールおよびシクロヘキサンジチオール)および芳香族(C6〜16)ジチオール(例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)等]、トリチオール(C3〜20、例えばチオグリセリン)等;
【0025】
(5)ケトン
C3〜24、例えばアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、エチルプロピルケトンおよびエチルブチルケトン;
(6)アルデヒド
C2〜18、例えば2−メチル−2−プロピルアルデヒド、1−および2−ブチルアルデヒド、1−ペンチルアルデヒド、1−ヘキシルアルデヒドおよび1−オクチルアルデヒド;
(7)フェノール
C6〜36、例えばフェノール、m−クレゾール、p−クレゾールおよびo−クレゾール;
(8)キノン
C6〜24、例えばヒドロキノン;
(9)アミン
C3〜24、例えばジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−1−ブチルアミンおよびジフェニルアミン;
(10)ジスルフィド
C2〜24、例えばジエチルジスルフィド、ジ−1−プロピルジスルフィド、ジ−2−メチル−2−プロピルジスルフィド、ジ−1−ブチルジスルフィド、エチル−1−プロピルジスルフィドおよびジ−1−オクチルジスルフィド。
【0026】
これらのうち、後述する成形品の引張特性の観点から好ましいのは炭化水素、ハロゲン化炭化水素、さらに好ましいのは炭化水素、とくに好ましいのは不飽和脂肪族炭化水素である。
(t)の使用量は、(b)の重量に基づいて通常300%以下、(A)と熱可塑性樹脂との相溶性および成形品の引張特性の観点から好ましくは0〜200%である。
【0027】
上記重合禁止剤(f)としては、無機(化合)物[酸素、硫黄、金属塩(例えば塩化第二鉄)等]および有機化合物〔カテコール(C6〜36、例えば2−メチル−2−プロピルカテコール)、キノン(C6〜24、例えばp−ベンゾキノンおよびデュロキノン)、ヒドラジン(C2〜36、例えば1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジン)、フェルダジン(C5〜36、例えば1,3,5−トリフェニルフェルダジン)、ニトロ化合物(C3〜24、例えばニトロベンゼン)および安定ラジカル[C5〜36、例えば1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(DPPH)、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)および1,3,5−トリフェニルフェルダジル]等〕が挙げられる。
(f)の使用量は、(a)と(b)の合計重量に基づいて通常50%以下、(a)と(b)との反応性および成形品の引張特性の観点から好ましくは0〜0.5%である。
【0028】
(A0)の、Mnは、成形品の樹脂物性および難燃性の観点から好ましくは500〜120,000、さらに好ましくは1,000〜60,000;酸価は、後述の成形品の難燃性および(A)と熱可塑性樹脂との相溶性の観点から好ましくは5〜300、さらに好ましくは10〜150;軟化点は、成形品の難燃性および成形性の観点から好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜170℃である。
【0029】
本発明における酸変性ポリオレフィン(A0)のグアニジン化合物の塩(A)は、(A0)をグアニジン化合物(d)で中和することにより得られる。
(d)には、例えばグアニジン、アルキル(C1〜20)グアニジン(1−および2−N−メチルグアニジン、1−および2−N−エチルグアニジン等)、ポリ(2〜5)アルキル(C1〜20)グアニジン(1,2−および1,3−N−ジメチルグアニジン、1,1,3,3,−N−テトラメチルグアニジン等)、ビグアニド化合物(ビグアニド、N−メチルビグアニド、N−ベンゾイルビグアニド、シアノビグアニド等)、およびこれらのアセチル、プロピオニルおよびベンジル化物;グアニルアルキル(C1〜20)ウレタン(グアニルメチルウレタン、グアニルエチルウレタン等);グアニル−O−アルキル(C1〜20)イソ尿素(グアニル−O−メチルイソ尿素、グアニル−O−エチルイソ尿素等);カルバモイルグアニル−O−アルキル(C1〜20)イソ尿素(カルバモイルグアニル−O−メチルイソ尿素、カルバモイルグアニル−O−エチルイソ尿素等;その他のグアニジン誘導体[ジシアンジアミド、ジシアノグアニジン、グアニル(チオ)尿素、シアノグアニル(チオ)尿素、グアノリン、アミノグアニジン等];およびこれらの無機酸(塩酸、塩素酸、過塩素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、硼酸、スルファミン酸等)塩および有機酸(C1〜20、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フェノール)塩等が含まれる。
(A0)の中和のしやすさの観点から好ましいのはグアニジン、アルキルグアニジンおよびそれらの無機酸塩および有機酸塩、さらに好ましいのはグアニジンおよびグアニジンの炭酸塩、硼酸塩、蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、フェノール塩である。
【0030】
(d)の使用量は、(A0)の(d)による中和度が難燃性および成形品の耐衝撃性の観点から好ましくは10〜100当量%、さらに好ましくは40〜100当量%となる量である。
【0031】
(A)の具体的な製造方法には、[1](A0)および(d)を加熱溶融、あるいは適当な有機溶媒[前記に同じ]に懸濁あるいは溶解させ、加熱撹拌する方法(溶融法、懸濁法および溶液法);
[2](A0)および(d)を予め混合し、押出機、バンバリーミキサーまたはニーダなどを用いて溶融混練する方法(溶融混練法)、が含まれる。
これらのうち、(A0)の中和度の観点から好ましいのは[1]の方法である。
【0032】
(A)のMnは、成形品の樹脂物性および難燃性の観点から好ましくは500〜150,000、さらに好ましくは1,000〜80,000である。
【0033】
本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の難燃剤を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる。
(B)としては、ポリオレフィン樹脂(B1)、ポリエステル樹脂(B2)、ポリアミド樹脂(B3)、ビニル樹脂(B4)[但し(B1)を除く]、ポリエーテル樹脂(B5)およびポリカーボネート樹脂(B6)などが挙げられる。(B)のMnは通常45,000〜500,000、好ましくは50,000〜400,000である。
これらのうち、難燃性および工業上の観点から好ましいのは(B1)、(B2)、(B3)、(B4)、さらに好ましいのは(B1)および(B4)である。
【0034】
ポリオレフィン樹脂(B1)としては、エチレン、プロピレンおよびC4〜12のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合させてなるポリオレフィン樹脂が挙げられる。
C4〜12のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンおよび1−ドデセン等が挙げられる。
【0035】
ポリエステル樹脂(B2)としては、ポリアルキレン(C2〜24)テレフタレート[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等]、ポリアルキレン(C2〜48)イソフタレート[ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート等]、ポリ−p−フェニレンエステル[ポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペート、ポリ−p−フェニレンテレフタレート等]が挙げられる。
【0036】
ポリアミド樹脂(B3)としては、ポリカプラミド(6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(6,6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10−ナイロン)、ポリウンデカンアミド(11−ナイロン)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(7−ナイロン)およびポリ−ω−アミノノナン酸(9−ナイロン)等が挙げられる。
【0037】
(B1)を除くビニル樹脂(B4)としては、ポリハロゲン化ビニル[例えばポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニルおよびポリヨウ化ビニル]、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂[例えばポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂]、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[例えばポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸−n−およびi−プロピルおよびポリ(メタ)アクリル酸−n−、i−、sec−およびt−ブチル]が挙げられる。
【0038】
ポリエーテル樹脂(B5)としては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレンおよびポリ−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
ポリオキシフェニレンの具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−、ジエチル−、ジプロピル−、ジメトキシ−、ジクロロメチル−、ジブロモ−、ジフェニル−、ジクロロ−およびジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル 、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、およびこれらのポリオキシフェニレンに芳香族炭化水素ビニルモノマー[ジビニルベンゼン、o−、m−もしくはp−アルキル(C1〜10)スチレン(ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、2−エチルヘキシルビニルベンゼン、デシルビニルベンゼン等)、α−アルキル(C1〜10)スチレン(α−メチル、−エチル、−ブチルおよび−デシルスチレン等)等]をグラフトしたものも含まれる。
ポリカーボネート樹脂(B6)としては、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイ等が挙げられる。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物における(A)の含有量は、(B)の重量に基づいて難燃性および成形品の耐衝撃性の観点から好ましくは0.1〜50%、さらに好ましくは1〜30%である。
【0040】
本発明の難燃性樹脂組成物は、必要によりさらに層状構造を有するクレー(C)を含有させることができる。
【0041】
(C)としては、有機化剤で有機化されていても、有機化されていなくてもよく、(C)としては、例えばモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、およびそれらの有機化物が挙げられる。
これらのうち難燃性の観点から好ましいのはモンモリロナイトおよびサポナイト、さらに好ましいのはモンモリロナイトである。
ここにおいて、有機化とは、クレーの層間に有機カチオンを挿入し、層間に存在するNaイオン等を置換して層間距離を拡げ、さらにクレーの周囲を有機物で取り囲むことにより、樹脂中へのクレーの分散を容易にすることを意味し、該有機化に用いられる有機物を有機化剤と称する。
【0042】
上記有機化剤としては、アミン〔例えば脂肪族[C2〜18、例えばモノアミン(オクチルアミン、ドデシルアミンおよびステアリルアミン等)およびジアミン(エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)]、脂環含有[C6〜40、例えばモノアミン(シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン等)およびジアミン(1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)等)]および芳香(脂肪)族[C6〜30、例えばモノアミン(アニリン、p−トルイジン等)およびジアミン(1,3−フェニレンジアミン、2,3−ジアミノトルエン等)]〕と酸〔無機酸[例えば塩酸、硫酸、リン酸および硝酸]および有機酸[スルホン酸(C1〜18、例えばメタンスルホン酸、ヘキシルスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸)、カルボン酸(C1〜18、例えばギ酸、ラウリン酸およびステアリン酸)等]〕との塩、第4級アルキルアンモニウム塩(C4〜C72、例えばオクチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウム・メチル硫酸塩)等が挙げられる。
【0043】
(C)の含有量は、(B)の重量に基づいて難燃性および成形品の耐衝撃性の観点から好ましくは0.01〜30%、さらに好ましくは1〜25%である。
【0044】
本発明の難燃性樹脂組成物における(A)と(C)の重量比[(A)/(C)]は、難燃性およびクレーの分散性の観点から好ましくは99.97/0.03〜10/90、さらに好ましくは90/10〜20/80である。
【0045】
本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに着色剤、補強剤、艶消剤、帯電防止剤、分散剤、その他の難燃剤、発泡剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(D)を含有させることができる。
【0046】
着色剤(D1)としては、顔料、例えば白色顔料(酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、黒色顔料(カーボンブラック、鉄黒、アニリンブラック等)、黄色顔料(黄鉛、カドミイエロー、酸化鉄イエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、オイルイエロー2G等)、橙色顔料(赤口黄鉛、クロムバーミリオン、カドミオレンジ、ピラゾロンオレンジ等)、赤色顔料(ベンガラ、カドミレッド、パーマネントレッド、レーキレッドC、カーミン6B、ピグメントスカーレット3B、パーマネントレッドF5R、キナクリドンレッド、チオインジゴマルーン等)、紫色顔料(コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット等)、青色染顔料(群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー等)、緑色顔料(フタロシアニングリーン、クロムグリーン等)、金属粉末顔料(アルミ粉、ブロンズ粉、パールエッセンス等)等;
【0047】
補強剤(D2)としては、金属(アルミニウム粉、銅粉、金属繊維等)、金属酸化物(アルミナ、ケイ灰石、シリカ、タルク、マイカ、焼成カオリン等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属塩(炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム等)、繊維[無機繊維(炭素繊維、繊維素、α−繊維素、ガラス繊維、アスベスト等)、有機繊維(コットン、ジュート、ナイロン、アクリルおよびレーヨン繊維等)等]、マイクロバルーン(ガラス、シラス、フェノール樹脂等)、炭素類(カーボンブラック、石墨、石炭粉等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、有機粉(木粉等)等;
【0048】
艶消剤(D3)としては、粉体、粒状、不定形状、マイクロバルーン状、繊維状、ウィスカ状または微粒子状の、無機および有機の艶消剤、例えば粉体、粒状または不定形状のもの(炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸、ケイ酸塩、アスベスト、マイカ等)、マイクロバルーン状のもの(ガラス、フェノール樹脂バルーン等)、繊維状のもの(ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等)、ウィスカ状のもの(セラミックウィスカ、チタンウィスカ等)、および微粒子状のもの(プラスチック微粒子、例えばポリエチレンおよび/またはポリプロピレン等のポリオレフィン微粒子等)等;
【0049】
帯電防止剤(D4)としては、下記、および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤:
アルキレンオキシド(以下AOと略記)付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)および高級脂肪酸(C8〜24、例えばオクチル酸、ドデカン酸)等:例えばアルキルもしくはアルケニル(ドデシル、ステアリル、オレイル等)アルコールおよびアミン、およびアルカンもしくはアルケン酸(ラウリン、ステアリンおよびオレイン酸等)]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体〔AO[C2〜4、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド(以下それぞれEO、PO、BOと略記)およびこれらの2種以上の併用、とくに好ましいのはEO](1〜500モルまたはそれ以上)付加物(分子量174以上かつMn30,000以下)、およびポリアルキレングリコール(以下PAGと略記)[例えばポリエチレングリコール(以下PEGと略記);分子量150以上かつMn6,000以下]の高級脂肪酸モノ−およびジ−エステル〕;多価アルコール、例えばC2〜20、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールおよびソルビタン]の高級脂肪酸(上記)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量320〜Mn30,000;例えばツイーン型ノニオニックス);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量330以上かつMn30,000以下);多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(同上;分子量180以上かつMn30,000以下);およびポリオキシプロピレンポリオール〔多価アルコール(上記)およびポリアミン[C2〜12、例えば脂肪族、脂環式、芳香族および複素環ポリアミン(エチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペラジン等)]のポリオキシプロピレン誘導体[例えばポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)およびエチレンジアミンのPO付加物:Mn500〜5,000)〕のポリオキシエチレン誘導体(Mn1,000〜30,000)[プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス]〕;多価アルコール(C3〜60)型ノニオニックス、例えば多価アルコール(上記)の高級脂肪酸(上記)エステル、多価アルコール(上記)アルキル(C3〜60)エーテル、および高級脂肪酸(上記)アルカノールアミド;並びに、アミンオキシド型ノニオニックス、例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18:ドデシル、ステアリル、オレイル、2−ヒドロキシドデシル等)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3:メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル等)アミンオキシド。
【0050】
(2)カチオン性界面活性剤:
第4級アンモニウム塩型カチオニックス、例えばテトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)、例えばアルキル(C8〜18:ラウリル、ステアリル等)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18:デシル、オクチル等)ジメチルアンモニウム塩;トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)、例えばラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩、例えばセチルピリジニウム塩;(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4、重合度1〜100またはそれ以上)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)、例えばポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩;およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩、例えばステアラミドエチルジエチルメチルアンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミン(C12〜60:ラウリル、ステアリルおよびセチルアミン、硬化牛脂アミン、ロジンアミン等)、脂肪族アミン(上記)のポリオキシアルキレン誘導体(上記;EO付加物等)、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)]の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2〜22:酢酸、プロピオン、ラウリン、オレイン、コハク、アジピンおよびアゼライン酸、安息香酸等)塩。
【0051】
(3)アニオン性界面活性剤:
カルボン酸(塩)、例えば高級脂肪酸(上記)、エーテルカルボン酸[高級アルコール(上記)またはそのAO付加物、例えばEO(1〜10モル)付加物のカルボキシメチル化物]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールまたはそのAO付加物の硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート、硫酸化油(天然の不飽和油脂または不飽和のロウをそのまま硫酸化して中和した塩)、硫酸化脂肪酸エステル(不飽和脂肪酸の低級アルコールエステルを硫酸化して中和した塩)および硫酸化オレフィン(C12〜18のオレフィンを硫酸化して中和した塩);スルホン酸塩、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸塩およびN−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等);並びにリン酸エステル塩、例えば上記の高級アルコールもしくはそのAO付加物またはアルキル(C4〜60)フェノールのAO付加物(同上)のリン酸エステル塩(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート)。
【0052】
4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアミノ酸型アンフォテリックス、例えばアルキル(C8〜18)アミノプロピオン酸(塩)、およびベタイン型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)ベタイン(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等);硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上)アミンの硫酸エステル(塩)、およびヒドロキシアルキル(C2〜4:ヒドロキシエチル等)イミダゾリン硫酸エステル(塩);スルホン酸(塩)型アンフォテリックス、例えばアルキル(同上:ペンタデシル等)スルフォタウリン、およびイミダゾリンスルホン酸(塩);並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス、例えばグリセリン高級脂肪酸(上記)エステルのリン酸エステル(塩)。
【0053】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
塩を構成するアミンには、C1〜20のアミン、例えばヒドロキシルアミン、3級アミノ基含有ジオールおよび1級モノアミン、2級モノアミン、並びにそれらのアルキル化(C1〜4)および/またはヒドロキシアルキル化(C2〜4)物(AO付加物):例えばモノ−、ジ−およびトリ−(ヒドロキシ)アルキル(アミン)(モノ−、ジ−およびトリ−エタノールアミンおよびエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−ヒドロキシエチルモルホリン等)が含まれる。4級アンモニウム塩には、これらのアミンの4級化物[米国特許第4,271,217号明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネート)による4級化物]が含まれる。
【0054】
分散剤(D5)としては、Mn1,000〜40,000のポリマー、例えばビニル樹脂{例えばポリオレフィン〔例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/ブテン共重合体[共重合比(重量比)1〜99/99〜1]、プロピレン/ブテン共重合体[共重合比(重量比)1〜99/99〜1]およびエチレン/プロピレン/ブテン共重合体[共重合比(重量比)1〜98/1〜98/1〜98]、変性ポリオレフィン[例えば無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)、酸化ポリプロピレン(上記酸化ポリエチレンにおいてポリエチレンをポリプロピレンに代えて同様にして得られるもの)、エポキシ変性ポリエチレン(エポキシ当量100〜20,000)、エポキシ変性ポリプロピレン(エポキシ当量100〜20,000)、ヒドロキシル変性エチレン/ブテン共重合体(共重合重量比1〜99/99〜1)およびヒドロキシル変性プロピレン/ブテン共重合体(共重合重量比1〜99/99〜1)〕および上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔例えばポリハロゲン化ビニル[例えばポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリフッ化ビニルおよびポリヨウ化ビニル]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[例えばポリ(メタ)アクリル酸−メチル、−エチル、−n−およびi−プロピルおよび−n−およびt−ブチル]およびスチレン樹脂[例えばポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂およびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂]〕};
【0055】
ポリエステル〔例えばポリアルキレン(C2〜24)テレフタレート[例えばポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)]、ポリアルキレン(C2〜24)イソフタレート[例えばポリエチレンイソフタレートおよびポリブチレンイソフタレート]およびポリ−p−フェニレンエステル[例えばポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペートおよびポリ−p−フェニレンテレフタレート]〕;ポリアミド[例えばポリカプラミド(6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジポアミド(6,6−ナイロン)、ポリヘキサメチレンセバカミド(6,10−ナイロン)、ポリウンデカンアミド(11−ナイロン)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(7−ナイロン)およびポリ−ω−アミノノナン酸(9−ナイロン)];ポリエーテル[例えばポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレンおよびポリ−1,3−ジオキソラン];ポリカーボネート[前記(B5)で例示したもののうちMn1,000〜40,000のもの];ポリフェニレン樹脂[前記(B6)で例示したもののうちMn1,000〜40,000のもの];およびこれらのブロック共重合体等;
【0056】
その他の難燃剤(D6)としては、本発明の(A)からなる難燃剤以外の難燃剤、例えば有機難燃剤〔リン含有化合物[リン酸エステル(トリクレジルホスフェート等)等]、ハロゲン含有化合物[臭素含有化合物(テトラブロモビスフェノ−ルA、デカブロモビフェニルエーテル等)、塩素含有化合物(塩素化パラフィン、無水ヘット酸等)等]等〕、無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム等〕等;
【0057】
発泡剤(D7)としては、無機発泡剤(例えば窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、水、炭酸アンモニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸ソーダ、亜硝酸ソーダ、塩化アンモニウムおよびニトロユリア)および有機発泡剤[ニトロソ化合物(例えばジニトロソペンタメチレンテトラミンおよびN,N’ジメチルN,N’ジニトロソテレフタールアミド)、スルホヒドラジド化合物(例えばベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p−p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、3−3’ジスルホンヒドラジドジフェニルスルホンおよびトルエンジスルホニルヒドラジド)、スルホヒドラゾン化合物(p−トルエンスルホニルヒドラゾン)、アジド化合物(例えばp−トルエンスルホニルアジド)、アゾ化合物(例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウムおよびジエチルアゾジカルボキシレート)]等;
【0058】
酸化防止剤(D8)としては、ヒンダードフェノール系〔p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、2,6−ビス(1−メチルヘプタデシル)−p−クレゾール、ブチル化クレゾール、スチレン化クレゾール、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシルフェノール)、2(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、オクタデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシシナメート、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピルガレート、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(6−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェノール、1,6−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよびテトラキス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等〕;
【0059】
含イオウ系〔N,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ジステアリルチオジプロピオネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)等〕;および
【0060】
含リン系〔2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ホスファイトエステル樹脂、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等〕等;
【0061】
紫外線吸収剤(D9)としては、サリチレート系[フェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート等];
ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン(トリヒドレート)、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロー2−ヒドロキシベンゾフェノン等];および
ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等、が挙げられる。
【0062】
上記(D1)〜(D9)の(D)全体の含有量は、本発明の難燃性樹脂組成物の全重量に基づいて、通常40%以下、(D)の効果発現および成形品の耐衝撃性の観点から好ましくは0.01〜30%である。
本発明の難燃性樹脂組成物の全重量に基づく(D1)〜(D9)の各含有量は、(D2)は通常35%以下、好ましくは5〜30%;(D3)、(D6)はそれぞれ通常20%以下、好ましくは3〜15%;(D4)は通常10%以下、好ましくは0.01〜7%;(D1)、(D5)、(D7)はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.01〜3%;(D8)、(D9)はそれぞれ通常2%以下、好ましくは0.01〜1%である。
【0063】
上記(D1)〜(D9)、および後述の発泡成形で用いられる添加剤(発泡剤)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0064】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法には、(1)(A)と(B)および必要により(C)、(D)をそれぞれ全量溶融混合する方法、(2)(A)と(B)の一部および必要により(C)、(D)を溶融混合して、マスターバッチを作成した後、残りの(B)を加えて溶融混合する方法[(2)はマスターバッチ法と呼ばれる]が含まれる。これらの方法のうち、難燃性の観点から好ましいのは(2)の方法である。
【0065】
溶融温度は(A)および(B)の溶融温度および分解温度の観点から好ましくは50〜300℃、さらに好ましくは100〜280℃である。
溶融混合装置としては、例えばバッチ混練機〔例えばバンバリーミキサー[商品名、Farrel(株)製]およびニーダー〕、連続混練機〔例えばFCM[商品名、Farrel(株)製]、LCM[商品名、(株)神戸製鋼所製]およびCIM[商品名、(株)日本製鋼所製]〕、単軸押出機および二軸押出機が挙げられる。
【0066】
本発明の成形品は、上記難燃性樹脂組成物を成形して得られる。成形方法としては、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、積層成形、カレンダー成形および発泡成形が挙げられる。
発泡成形の際に用いられる発泡剤としては、前記発泡剤(D7)が挙げられる。
【0067】
本発明の成形品は、塗装および/または印刷を施して成形物品とすることができる。該成形品を塗装する方法としては、例えばスプレー塗装(エアスプレー、エアレススプレーおよび静電スプレー塗装等)、浸漬塗装、ローラー塗装および刷毛塗りが挙げられる。
塗料としては、例えばポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料およびアクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチックの塗装に一般に用いられる塗料が挙げられる。塗装膜厚(乾燥後膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが通常10〜50μmである。
また、該成形品に印刷する方法としては、一般的にプラスチックの印刷に用いられる印刷法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチックの印刷に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【0068】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部。%は重量%を表す。
【0069】
製造例1
プロピレン/エチレン共重合体である高分子量ポリオレフィンを熱減成(窒素ガス通気下、常圧、360℃×80分にて実施)して得られた低分子量ポリオレフィン(プロピレン98モル%、エチレン2モル%、Mn4,500)80部を冷却管付き三ツ口フラスコに入れ、窒素置換した後、窒素通気下に180℃まで加熱昇温して溶融させた。
ここに無水マレイン酸10部を加え、均一に混合した後、ジクミルパーオキサイド0.5部をキシレン10部に溶解した溶液を滴下し、180℃で3時間撹拌を続けた。その後、減圧下でキシレンを留去し、酸価57、Mn5,000の酸変性ポリオレフィン(A01)を得た。
【0070】
実施例1
(A01)85部、キシレン90部、炭酸グアニジン15部を入れ、還流温度(145℃)で4時間撹拌を続けた。その後、180℃減圧下でキシレンおよび発生した水を留去して酸変性ポリオレフィンのグアニジン塩(A1)からなる難燃剤を得た。(A1)は、中和度98当量%、Mn5,500であった。
【0071】
実施例2
実施例1において、炭酸グアニジン15部を7部に変えたこと以外は実施例1と同様に行い、酸変性ポリオレフィンのグアニジン塩(A2)からなる難燃剤を得た。(A2)は、中和度45当量%、Mn5,200であった。
【0072】
比較例1
実施例1において、炭酸グアニジン15部に代えてスルファミン酸グアニジン15部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、酸変性ポリオレフィン(A01)とスルファミン酸グアニジンの混合物(比A1)からなる難燃剤を得た。
【0073】
比較例2
実施例1において、炭酸グアニジン15部に代えて水酸化マグネシウム15部を用いたこと以外は実施例1と同様に行い、酸変性ポリオレフィンの水酸化マグネシウム塩と水酸化マグネシウムの混合物(比A2)からなる難燃剤を得た。該酸変性ポリオレフィンの水酸化マグネシウム塩は、中和度100当量%、Mn5,200であった。
【0074】
実施例3、4、比較例3、4
市販のポリプロピレン[商品名「チッソポリプロK1011」、チッソ(株)製、以下同じ。]100部と、(A1)、(A2)、(比A1)、(比A2)の各15部をそれぞれヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、210℃、100rpm、滞留時間10分の条件で溶融混練して4種のポリオレフィン樹脂組成物(難燃性樹脂組成物)を得た。各組成物について射出成形機[PS40E5ASE、日精樹脂工業(株)製]を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃で成形して所定の試験片を作成した。
【0075】
実施例5、6、比較例5、6
市販のポリプロピレン100部と、有機化クレー[商品名「Nanomer1.30T」、Nanocor(株)製、以下同じ。]3部と、(A1)、(A2)、(比A1)、(比A2)の各15部を実施例3、4、比較例3、4と同様に行い、試験片を作成した。
【0076】
実施例7、8、比較例7、8
実施例5、6、比較例5、6において、有機化クレーが10部である以外は実施例5、6、比較例5、6と同様に行い、試験片を作成した。
【0077】
上記の試験片または樹脂組成物について、以下の評価を行なった。結果を表1に示す。
<評価方法>
(1)衝撃強度(単位:kgf・cm/cm2
試験片(厚み3.2mm)について、ASTM D256(ノッチ付、厚み3.2mm)に基づき、Method Aにて測定した。
(2)引張伸び(単位:%)
JIS K7162記載の試験片について、JIS K7161に基づき測定した。
(3)引張強度(単位:MPa)
JIS K7162記載の試験片について、JIS K7161に基づき測定した。
(4)白化試験
試験片(厚み1.0mm)についてJIS K 5600に規定される鉛筆引っ掻き試験機(鉛筆硬度HB、荷重200g)を使用し評価した。評価基準は下記に従った。

○ 試験片表面に白化が認められない。
△ 〃 やや白化が認められる。
× 〃 明らかに白化が認められる。
(5)難燃性
UL94規格のV−0 に準拠して評価した。評価基準は下記に従った。

○ 30秒以内に自己消火
△ 30秒を超えて60秒以内に自己消火
× 上記以外
(6)成形性
JIS K6758に規定される試験方法に基づき、樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)を測定し、これを成形性の目安とした。成形性の評価基準は下記に従った。

○ 1g/10min 以上
× 1g/10min 未満
【0078】
【表1】

表1の結果から、実施例3〜8は比較例3〜8に比べて、組成物は成形性に優れ、成形品は機械特性および難燃性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の難燃剤を含有させてなる難燃性樹脂組成物は成形性に優れ、難燃性、機械物性等に優れる成形品を与えることから、幅広い分野における被覆材料(各種シート、建築内外装材用等)、成形材料(電気・電子機器部品、玩具部品、自動車部品用等)等として用いることができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン(A0)のグアニジン化合物の塩(A)からなることを特徴とする難燃剤。
【請求項2】
(A0)のグアニジン化合物による中和度が、10〜100当量%である請求項1記載の難燃剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の難燃剤を熱可塑性樹脂(B)に含有させてなる難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)の含有量が、(B)の重量に基づいて0.1〜50%である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
さらに、層状構造を有するクレー(C)を含有させてなる請求項3または4記載の組成物。
【請求項6】
(C)の含有量が、(B)の重量に基づいて0.01〜30%である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
(A)と(C)の重量比が、99.97/0.03〜10/90である請求項5または6記載の組成物。
【請求項8】
さらに、着色剤、補強剤、艶消剤、帯電防止剤、分散剤、その他の難燃剤、発泡剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(D)を含有させてなる請求項3〜7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか記載の組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
請求項9記載の成形品に塗装および/または印刷を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2007−321024(P2007−321024A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151300(P2006−151300)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】