難燃性添加物
【課題】温水が付いた場合においても、ぬめりが出ない、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を疎水性化合物で表面処理してなる難燃性添加物を提供する。
【解決手段】窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
【解決手段】窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、疎水性化合物で表面処理してなる、ハロゲン系ガスを発生せず、高い難燃性を発揮し、更に温水が付いた場合においても、ぬめりが出ない難燃性添加物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂、エラストマーやコーティング剤に難燃性を付与する目的で種々の難燃性添加剤が使用されてきた。しかし、近年、難燃技術の主流であったハロゲン含有化合物を単独、もしくは酸化アンチモン等のアンチモン化合物と組み合わせて難燃剤とし、それを樹脂やエマルジョンに配合した難燃剤組成物は、火災時にハロゲン系ガスや一酸化炭素を発生することが問題となっている。また、金属水酸化物は火災時に発生する有害ガス量が少ないが、難燃性を発現するために大量に配合する必要があり、そのため、加工性、機械的強度が損なわれるといった問題点がある。
【0003】
一方、リン化合物が有力な選択肢として期待され、実際広く用いられている。各種リン化合物の中で、リン酸エステルは添加した樹脂表面へのブリードアウトが見られること、生物に対し生理活性がある可能性が危惧されていること等の問題が懸念されている。赤燐は難燃性が非常に高いが、樹脂が赤色となることやリン酸の溶出が指摘されている。このような中、リン酸メラミンやポリリン酸メラミンは高い難燃性を有している上、無機化合物であることから生物に対し安全性が高く、赤燐よりもリン酸の溶出が少ないという長所を有している。
リン酸メラミンやポリリン酸メラミンの使用用途としては、自動車のシートの織物用難燃剤(バッキング剤)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、リン酸メラミンやポリリン酸メラミンは、シート織物が高温多湿の条件下におかれた場合や水や温水をシート織物上にこぼした場合、表面にぬめりを生じる。また織物に処理する場合、ポリリン酸メラミンをアクリル樹脂と共にエマルジョン化した後、織物繊維の裏地にコーティングし、ウレタン製のシート基盤に貼り合わせるが、ぬめりによりシートから織物がずれて貼り合わされてしまう場合がある。
【0005】
この解決方法として、リン酸メラミンやポリリン酸メラミン粉体表面を被覆等処理することによる提案がなされている(特許文献1、2:特開2000−63842号公報、特表2001−503075号公報)。いずれの方法も、製法が困難で粒子同士の凝集が起こってしまったり、耐水性が依然不十分であったり、各種樹脂への分散性が低下するといった問題点を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−63842号公報
【特許文献2】特表2001−503075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、温水が付いた場合においても、ぬめりが出ない、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を疎水性化合物で表面処理してなる難燃性添加物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物表面を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上、好ましくは一般式(1)で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンと一般式(2)で示されるシランカップリング剤とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたもので処理することにより、得られる難燃性添加物の温水によるぬめりをなくすことが可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示す難燃性添加物を提供する。
〔1〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
〔2〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物が、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕記載の難燃性添加物。
〔3〕 疎水性化合物が、下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物である〔1〕又は〔2〕記載の難燃性添加物。
〔4〕 疎水性化合物が、〔3〕記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部、及びシランカップリング剤0.5〜49質量部と共に、更に下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものである〔1〕又は〔2〕記載の難燃性添加物。
〔5〕 疎水性化合物が、更に無機酸化物微粒子を〔3〕記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部含有する〔3〕又は〔4〕記載の難燃性添加物。
〔6〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物を有機溶剤の存在下で撹拌し、有機溶剤を留去して得られる〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の難燃性添加物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を疎水性化合物で表面処理してなる難燃性添加物は、ハロゲン系ガスを発生せず、高い難燃性を発揮し、更に温水が付いた場合においても、ぬめりが出ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の難燃性添加物は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物表面が、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で処理されてなるものである。
【0012】
本発明における窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物は、小粒径のほうが分散性に優れ、平均粒径がレーザー散乱式粒度分布測定装置による測定法で25μm以下が好ましく、より好ましくは18μm以下である。しかし、小粒径になるほど価格が高くなるため、価格を考慮した使用に適する平均粒径は2〜25μm、特に2〜18μmである。
【0013】
本発明における窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物としては、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を用いることができる。また、市販品を使用することもでき、該市販品としては、PHOSMEL−100(商品名、日産化学工業社製)、PHOSMEL−200(商品名、日産化学工業社製)、MPP−B(商品名、三和ケミカル社製)、BUDIT3141(商品名、BUDENHEIM社製)、プラネロンNP(商品名、三井化学ファイン社製)、MELAPUR200(Ciba社製)を挙げることができる。
【0014】
疎水性化合物としては、有機ケイ素化合物からなるものであり、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴムなどを挙げることができる。
【0015】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等が例示できる。
シリコーンレジンとしては、トリメチルシロキシケイ酸等が例示できる。
シリコーンゴムとしては、ジメチルポリシロキサン等が例示できる。
【0016】
かかる撥水性を付与する疎水性化合物としては、上述した疎水性化合物の中でも、有機ケイ素化合物とアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解物とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものを含むシリコーン系撥水処理剤を用いることが好ましく、特に次に挙げるシリコーン化合物(下記〔I〕又は〔II〕の共加水分解縮合物)を含むシリコーン系撥水処理剤が被覆性、撥水性に優れている。
【0017】
〔I〕(i)下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
(ii)シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシランン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部と
を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物。
【0018】
〔II〕上記(i)成分100質量部及び(ii)成分0.5〜49質量部と、
(iii)下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部と
を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物。
【0019】
また、上記〔I〕又は〔II〕の共加水分解縮合物に、
(iv)無機酸化物微粒子0.1〜10質量部
を配合してもよい。
【0020】
以下、各成分(i)〜(iv)について説明する。
(i)成分は、下記一般式(1)で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンである。
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
【0021】
上記式(1)中のR1は、炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0022】
このような式(1)の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、CH3Si(OCH(CH3)2)3、CH3CH2Si(OCH3)3、CH3CH2Si(OC2H5)3、CH3CH2Si(OCH(CH3)2)3、C3H7Si(OCH3)3、C3H7Si(OC2H5)3、C3H7Si(OCH(CH3)2)3、C4H9Si(OCH3)3、C4H9Si(OC2H5)3、C4H9Si(OCH(CH3)2)3、C5H11Si(OCH3)3、C5H11Si(OC2H5)3、C5H11Si(OCH(CH3)2)3、C6H13Si(OCH3)3、C6H13Si(OC2H5)3、C6H13Si(OCH(CH3)2)3
本発明においては、上記の各種シランを単独で使用しても2種以上の混合物を使用してもよいし、1種又は2種以上の各種シランの部分加水分解縮合物を使用してもよい。
【0023】
好ましくは、1種又は2種以上の上記の各種シランを部分加水分解縮合したアルコキシ基含有シロキサンを用いる。この部分加水分解縮合物のケイ素原子数は2〜10、特に2〜4であることが好ましい。更に、水中で炭素原子数1〜6のアルキルトリアルコキシシランとメタノール又はエタノールとの反応により得られるものでもよい。この場合は、このシロキサンオリゴマーのケイ素原子数は2〜6、特に2〜4であることが好ましい。上記シロキサンオリゴマーとしては、特に[CH3(OR2)2Si]2O(但し、R2は上記と同様)で表されるシロキサンダイマーが好ましい。この場合、シロキサントリマーやシロキサンテトラマーを含んでいてもよい。
【0024】
また、(i)成分は、毛細管式粘度計による粘度測定法において25℃で300mm2/s以下の粘度を有しているものが好ましく、特に1〜100mm2/sの粘度を有するものが好適である。
【0025】
次に、(ii)成分は、下記一般式(2)で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物から選ばれるシランカップリング剤である。
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは3の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
【0026】
上記式(2)中のR3、R4のアルキル基又はアミノアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。R5としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が挙げられる。R6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0027】
このような上記式(2)のアミノ基含有アルコキシシランの具体例としては、H2N(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)2Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2等が挙げられ、これらの部分加水分解縮合物を用いることもでき、1種又は2種以上を使用する。
【0028】
これらの中で、特に、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等やこれらの部分加水分解縮合物が好適に用いられる。
【0029】
また、(iii)成分は、下記一般式(3)で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物である。
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
【0030】
上記式(3)中のR1、R2は、上記式(1)のR1、R2と同様のものが例示できる。
また、Yはハロゲン原子を含んでもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の有機基(好ましくはアルキレン基又は−(CH2)a(CF2)b(CH2)c−(aは1〜6、bは1〜10、cは1〜6で示されるフッ素原子含有アルキレン基))、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、R7は炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。Rは炭素原子数1〜6、特に2〜3の2価炭化水素基であり、特にメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が好ましい。
mは1〜30、特に5〜20の整数である。kは1,2又は3、好ましくは2又は3であり、特に撥水性を高めるにはk=3が好ましい。
【0031】
これらを満たすビス(アルコキシシリル)基含有化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
(CH3O)3SiCH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C8F16CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C10F20CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C8F16CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C10F20CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)2OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)4OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)6OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)8OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)10OSi(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)5Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)7Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)9Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3
【0032】
これらの中でも、好ましくは、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)6OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)8OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)10OSi(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)5Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)7Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)9Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3
等が挙げられ、1種又は2種以上が使用される。また、これらの部分加水分解縮合物も好適に用いられる。
【0033】
(iv)成分は、無機酸化物微粒子であり、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム等が挙げられる。その平均粒径がレーザー散乱式粒度分布測定装置による測定法で1〜200nmのものが好ましく、特に好ましくは5〜100nmのものである。これが200nmを超えると基材が白くなったり、撥水性能が悪くなったりする場合がある。また1nm未満になると処理剤の安定性が悪化する場合がある。その粒子形状は特に限定はないが、球状であることが好ましい。これら無機酸化物微粒子を使用する場合、水又は溶剤等に分散させたものを使用するのが好ましい。
【0034】
特にコストの面、使用しやすさの面から、コロイダルシリカが特に好ましい。コロイダルシリカは、水又はメタノール、エタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコールにシリカ微粒子を分散させたもの、即ち、微粒子状のシリカ粒子を水又はアルコール溶媒中でコロイド状分散液としたものであり、例えば、スノーテックスO、スノーテックスO−40、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスOL、スノーテックスOUP、メタノールシリカゾル、IPA−ST(以上、日産化学工業(株)製)等が挙げられ、1種又は2種以上を使用する。
【0035】
上記(i)及び(ii)成分のみでシリコーン系撥水処理剤とする場合の使用割合は、(i)成分100質量部に対して(ii)成分0.5〜49質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。(ii)成分が0.5質量部未満であるとシリコーン系撥水処理剤自体の安定性が悪くなる場合がある。また、(ii)成分が49質量部を超えると撥水性が悪くなったり、(A)成分に処理したときに黄変が激しくなったりする場合がある。
モル換算としては、(i)成分のSi原子1モルに対し(ii)成分のSi原子が0.01〜0.3モル、特に0.05〜0.2モルとなるように用いることが好ましい。
【0036】
上記(i)、(ii)成分と(iii)及び/又は(iv)成分でのシリコーン系撥水処理剤とする場合の(ii)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して(ii)成分0.5〜49質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。(ii)成分が0.5質量部未満であるとシリコーン系撥水処理剤自体の安定性が悪くなる場合がある。また、(ii)成分が49質量部を超えると撥水性が悪くなったり、(A)成分に処理したときに黄変が激しくなったりする場合がある。
【0037】
(iii)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。(iii)成分が0.1質量部未満であると撥水性効果の発現が弱くなる場合がある。また、(iii)成分が20質量部を超えるとコスト的に不利になったりする。
【0038】
また、(iv)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。(iv)成分が0.1質量部未満であると撥水性効果の発現が弱くなる場合がある。また、(iv)成分が10質量部を超えるとコスト的に不利になったり、シリコーン系撥水処理剤の安定性が悪くなったりする場合がある。
なお、(iv)成分は、上記(i)、(ii)成分又は(i)〜(iii)成分と共に共加水分解縮合時に配合して共加水分解縮合を行ってもよいし、上記(i)、(ii)成分又は(i)〜(iii)成分の共加水分解縮合物に配合してもよい。
【0039】
これら(i)成分と(ii)成分によるシリコーン系撥水処理剤、あるいは(i)、(ii)成分と、(iii)及び/又は(iv)成分を用いてシリコーン系撥水処理剤を製造するには、有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解、縮合させればよい。
この場合、最初に(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させる)を有機酸あるいは無機酸の存在下で加水分解し、この加水分解物と(ii)成分を混合し、有機酸あるいは無機酸の存在下、更に加水分解、縮合させることが好ましい。
【0040】
まず、(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させる)を加水分解する際に使用される有機酸及び無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸及びマレイン酸等から選ばれる少なくとも1種の酸が用いられるが、特に好適なものは酢酸、プロピオン酸である。この酸の使用量は、(i)成分100質量部に対して2〜40質量部、特に3〜15質量部が好適である。
【0041】
加水分解の際は適度に溶剤で希釈した状態で行うのが好ましい。溶剤としては、アルコール系溶剤が好適であり、特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、第三ブチルアルコールが好適である。この溶剤の使用量は、(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させた総量)100質量部に対して50〜300質量部、特に70〜200質量部が好ましい。溶剤の使用量が50質量部より少ないと、縮合が進んでしまう場合があり、また、300質量部を超えると、加水分解に時間がかかるおそれがある。
【0042】
また、(i)成分(及び(iii)及び/又は(iv)成分)を加水分解させるために加える水量は、(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の合計1モルに対し0.5〜4モル量、特に1〜3モル量が好適である。加える水量が0.5モル量より少ないとアルコキシ基が多く残存してしまう場合があり、4モル量を超えると縮合が進行しすぎる場合がある。また、(iv)成分として、水中に分散しているコロイダルシリカを用いる場合、その水を加水分解に用いる水としてもよい。
【0043】
(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分を加水分解させる際の反応条件は、反応温度10〜40℃、特に20〜30℃がよく、反応時間は1〜3時間で加水分解反応させるのがよい。
【0044】
上記で得られた(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解物と(ii)成分とを反応させる。好ましくは上記(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解物中に(ii)成分を混合し、有機酸あるいは無機酸の存在下、更に加水分解、縮合させる。
【0045】
また、この加水分解、縮合の際も適度に溶剤で希釈した状態で行うのが好ましい。溶剤としては、上述した上記(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解時に使用したものと同様のものでよい。
なお、この反応の反応条件は、反応温度60〜100℃、特に64〜90℃が好ましく、反応時間1〜3時間、特に1.5〜2.5時間が好ましい。
【0046】
反応終了後は、溶剤の沸点以上まで温度を上げ、アルコール溶剤等の溶剤を留去させる。この場合、系内の全アルコール(反応溶剤としてのアルコール、副生成物としてのアルコール)等の溶剤の含有量を30質量%以下、特に10質量%以下となるように留去させることが好ましい。
【0047】
本発明において、疎水性化合物は、単に窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と混合するだけでも撥水性は得られるが、より好ましくは窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物の表面を被覆することが好ましい。表面被覆方法としては、相分離法、液中乾燥法、融解分散冷却法、スプレードライング法、液中硬化法等の公知の方法により処理することで得ることができる。好ましくは揮発性の溶媒に溶解した疎水性化合物(シリコーン系撥水処理剤)を、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と混合した後、加熱しながら脱溶剤する方法が好ましい。
【0048】
なお、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物との使用割合は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物、疎水性化合物の合計量を100質量%とした場合、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物成分80〜99.8質量%、特に90〜97質量%、疎水性化合物0.2〜20質量%、特に3〜10質量%であることが好ましい。疎水性化合物が少なすぎると、耐水性、撥水性が弱くなる場合があり、疎水性化合物が多すぎると、コスト的に不利になる。
【0049】
上記表面被覆時に疎水性化合物を溶解する溶媒は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を分散させるために用いられる液体であり、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と反応性のないものが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、ブタノール、酢酸エチル、1−プロパノール、2−プロパノール等を挙げることができる。
【0050】
このようにして得られた本発明の難燃性添加物は、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、エラストマー、更にコーティング剤、シーラント等に添加、配合して難燃性組成物とし、該組成物に難燃性を付与することができるが、該組成物がエマルション型コーティング剤の場合、エマルション固形分に対し上記難燃性添加物を25〜400質量%、特に40〜250質量%含有することが好ましく、また、樹脂又はエラストマーをベースポリマーとする難燃性組成物の場合、上記難燃性添加物をベースポリマーの0.1〜30質量%、特に5〜20質量%含有することが好ましい。
【0051】
難燃性組成物には、更にリン含有化合物や窒素含有化合物を併用して加えたり、多価アルコールを加えてもかまわない。また、金属水酸化物等の一般に知られている難燃剤を併用してもかまわない。
【0052】
多価アルコール類は、複数個のヒドロキシル基が結合している非環式又は環式化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンチトール類(アドニトール、アラビトール等)、へキシトール類(ズルシトール、イノシトール等)、及びサッカリド類(アミロース、キシラン等)、並びにこれらの誘導体(N−メチルグルカミン等)等がある。
【0053】
本発明の難燃性組成物には、その特性を阻害しない範囲で、その目的に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、中和剤、酸トラップ剤、酸化防止剤、安定剤、光安定剤、相溶化剤、他種のノンハロゲン難燃剤、滑剤、充填剤、接着助剤、防錆剤等を挙げることができる。
【0054】
本発明において使用可能な中和剤、酸トラップ剤としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0055】
本発明において使用可能な酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス(メチレン)−3−(ドデシルチオプロピオネート)メタン等が挙げられる。
【0056】
本発明において使用可能な安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤、ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤、エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物、ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等のポリオール、ハイドロタルサイト類やゼオライト類等を挙げることができる。
【0057】
本発明において使用可能な光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0058】
難燃性組成物の使用方法は、常法を採用し得るが、例えば、難燃性組成物を繊維に処理し、難燃性を発現する場合は、該組成物(例えば、本発明の難燃性添加物を分散させた上記エマルション型コーティング剤)に繊維を浸した後、乾燥させ、繊維の表面に難燃性組成物をコーティングすることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を合成例及び実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、下記の例で粘度は毛細管式粘度計により測定した25℃における値を示し、重量平均分子量はGPC測定装置により測定したポリスチレン換算値を示す。また、下記実施例において、平均粒径はレーザー散乱式粒度分布測定装置により測定した値を示す。
【0060】
[合成例1]
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、粘度71mm2/sの薄黄色透明溶液81gを得た(重量平均分子量1,100)。このものの系内のメタノール残存量は5質量%であった(シリコーン系撥水処理剤1)。
【0061】
[合成例2]
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、1,6−ジトリメトキシシリルヘキサン((CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3)4.3g及び疎水性シリカ(平均粒径約12nm)2.6gを混合後、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、粘度71mm2/sの薄黄色透明溶液81gを得た(重量平均分子量1,200)。このものの系内のメタノール残存量は5質量%であった(シリコーン系撥水処理剤2)。
【0062】
[実施例1]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)90質量部に対し、合成例1で製造したシリコーン系撥水処理剤1を10質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0063】
[実施例2]
ポリリン酸メラミン,ポリリン酸メラム,ポリリン酸メレム複塩(P含有率11質量%、平均粒径2.5μm、メラミン50質量%、メラム40質量%、メレム10質量%の混合物)を用いる以外は実施例1と同様にして処理を行い、平均粒径4μmのシリコーン処理ポリリン酸メラミン,ポリリン酸メラム,ポリリン酸メレム複塩を得た。
【0064】
[実施例3]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)95質量部に対し、合成例1で製造したシリコーン系撥水処理剤1を5質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0065】
[実施例4]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)90質量部に対し、合成例2で製造したシリコーン系撥水処理剤2を10質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0066】
[比較例1]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)を処理せずにそのまま用いた。
【0067】
測定方法及び判定基準は、以下の通りである。
1.ぬめり感
上記実施例と比較例で得られた難燃性添加剤及びリン酸メラミンを25℃の水と60℃の温水に20質量%分散させ、10人の指につけた場合のぬめり感を評価した。
【0068】
2.溶出率
上記実施例と比較例で得られた難燃性添加剤及びリン酸メラミンを60℃の温水に1質量%分散させてろ過し、そのろ液よりリン酸の溶出率を求めた。
【0069】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、疎水性化合物で表面処理してなる、ハロゲン系ガスを発生せず、高い難燃性を発揮し、更に温水が付いた場合においても、ぬめりが出ない難燃性添加物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂、エラストマーやコーティング剤に難燃性を付与する目的で種々の難燃性添加剤が使用されてきた。しかし、近年、難燃技術の主流であったハロゲン含有化合物を単独、もしくは酸化アンチモン等のアンチモン化合物と組み合わせて難燃剤とし、それを樹脂やエマルジョンに配合した難燃剤組成物は、火災時にハロゲン系ガスや一酸化炭素を発生することが問題となっている。また、金属水酸化物は火災時に発生する有害ガス量が少ないが、難燃性を発現するために大量に配合する必要があり、そのため、加工性、機械的強度が損なわれるといった問題点がある。
【0003】
一方、リン化合物が有力な選択肢として期待され、実際広く用いられている。各種リン化合物の中で、リン酸エステルは添加した樹脂表面へのブリードアウトが見られること、生物に対し生理活性がある可能性が危惧されていること等の問題が懸念されている。赤燐は難燃性が非常に高いが、樹脂が赤色となることやリン酸の溶出が指摘されている。このような中、リン酸メラミンやポリリン酸メラミンは高い難燃性を有している上、無機化合物であることから生物に対し安全性が高く、赤燐よりもリン酸の溶出が少ないという長所を有している。
リン酸メラミンやポリリン酸メラミンの使用用途としては、自動車のシートの織物用難燃剤(バッキング剤)が挙げられる。
【0004】
しかしながら、リン酸メラミンやポリリン酸メラミンは、シート織物が高温多湿の条件下におかれた場合や水や温水をシート織物上にこぼした場合、表面にぬめりを生じる。また織物に処理する場合、ポリリン酸メラミンをアクリル樹脂と共にエマルジョン化した後、織物繊維の裏地にコーティングし、ウレタン製のシート基盤に貼り合わせるが、ぬめりによりシートから織物がずれて貼り合わされてしまう場合がある。
【0005】
この解決方法として、リン酸メラミンやポリリン酸メラミン粉体表面を被覆等処理することによる提案がなされている(特許文献1、2:特開2000−63842号公報、特表2001−503075号公報)。いずれの方法も、製法が困難で粒子同士の凝集が起こってしまったり、耐水性が依然不十分であったり、各種樹脂への分散性が低下するといった問題点を有している。
【0006】
【特許文献1】特開2000−63842号公報
【特許文献2】特表2001−503075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、温水が付いた場合においても、ぬめりが出ない、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を疎水性化合物で表面処理してなる難燃性添加物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物表面を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上、好ましくは一般式(1)で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンと一般式(2)で示されるシランカップリング剤とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたもので処理することにより、得られる難燃性添加物の温水によるぬめりをなくすことが可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記に示す難燃性添加物を提供する。
〔1〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
〔2〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物が、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムから選ばれる1種又は2種以上である〔1〕記載の難燃性添加物。
〔3〕 疎水性化合物が、下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物である〔1〕又は〔2〕記載の難燃性添加物。
〔4〕 疎水性化合物が、〔3〕記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部、及びシランカップリング剤0.5〜49質量部と共に、更に下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものである〔1〕又は〔2〕記載の難燃性添加物。
〔5〕 疎水性化合物が、更に無機酸化物微粒子を〔3〕記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部含有する〔3〕又は〔4〕記載の難燃性添加物。
〔6〕 窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物を有機溶剤の存在下で撹拌し、有機溶剤を留去して得られる〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の難燃性添加物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を疎水性化合物で表面処理してなる難燃性添加物は、ハロゲン系ガスを発生せず、高い難燃性を発揮し、更に温水が付いた場合においても、ぬめりが出ないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の難燃性添加物は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物表面が、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で処理されてなるものである。
【0012】
本発明における窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物は、小粒径のほうが分散性に優れ、平均粒径がレーザー散乱式粒度分布測定装置による測定法で25μm以下が好ましく、より好ましくは18μm以下である。しかし、小粒径になるほど価格が高くなるため、価格を考慮した使用に適する平均粒径は2〜25μm、特に2〜18μmである。
【0013】
本発明における窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物としては、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を用いることができる。また、市販品を使用することもでき、該市販品としては、PHOSMEL−100(商品名、日産化学工業社製)、PHOSMEL−200(商品名、日産化学工業社製)、MPP−B(商品名、三和ケミカル社製)、BUDIT3141(商品名、BUDENHEIM社製)、プラネロンNP(商品名、三井化学ファイン社製)、MELAPUR200(Ciba社製)を挙げることができる。
【0014】
疎水性化合物としては、有機ケイ素化合物からなるものであり、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーンゴムなどを挙げることができる。
【0015】
シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル等が例示できる。
シリコーンレジンとしては、トリメチルシロキシケイ酸等が例示できる。
シリコーンゴムとしては、ジメチルポリシロキサン等が例示できる。
【0016】
かかる撥水性を付与する疎水性化合物としては、上述した疎水性化合物の中でも、有機ケイ素化合物とアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解物とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものを含むシリコーン系撥水処理剤を用いることが好ましく、特に次に挙げるシリコーン化合物(下記〔I〕又は〔II〕の共加水分解縮合物)を含むシリコーン系撥水処理剤が被覆性、撥水性に優れている。
【0017】
〔I〕(i)下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
(ii)シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシランン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部と
を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物。
【0018】
〔II〕上記(i)成分100質量部及び(ii)成分0.5〜49質量部と、
(iii)下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部と
を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物。
【0019】
また、上記〔I〕又は〔II〕の共加水分解縮合物に、
(iv)無機酸化物微粒子0.1〜10質量部
を配合してもよい。
【0020】
以下、各成分(i)〜(iv)について説明する。
(i)成分は、下記一般式(1)で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサンである。
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
【0021】
上記式(1)中のR1は、炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0022】
このような式(1)の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
CH3Si(OCH3)3、CH3Si(OC2H5)3、CH3Si(OCH(CH3)2)3、CH3CH2Si(OCH3)3、CH3CH2Si(OC2H5)3、CH3CH2Si(OCH(CH3)2)3、C3H7Si(OCH3)3、C3H7Si(OC2H5)3、C3H7Si(OCH(CH3)2)3、C4H9Si(OCH3)3、C4H9Si(OC2H5)3、C4H9Si(OCH(CH3)2)3、C5H11Si(OCH3)3、C5H11Si(OC2H5)3、C5H11Si(OCH(CH3)2)3、C6H13Si(OCH3)3、C6H13Si(OC2H5)3、C6H13Si(OCH(CH3)2)3
本発明においては、上記の各種シランを単独で使用しても2種以上の混合物を使用してもよいし、1種又は2種以上の各種シランの部分加水分解縮合物を使用してもよい。
【0023】
好ましくは、1種又は2種以上の上記の各種シランを部分加水分解縮合したアルコキシ基含有シロキサンを用いる。この部分加水分解縮合物のケイ素原子数は2〜10、特に2〜4であることが好ましい。更に、水中で炭素原子数1〜6のアルキルトリアルコキシシランとメタノール又はエタノールとの反応により得られるものでもよい。この場合は、このシロキサンオリゴマーのケイ素原子数は2〜6、特に2〜4であることが好ましい。上記シロキサンオリゴマーとしては、特に[CH3(OR2)2Si]2O(但し、R2は上記と同様)で表されるシロキサンダイマーが好ましい。この場合、シロキサントリマーやシロキサンテトラマーを含んでいてもよい。
【0024】
また、(i)成分は、毛細管式粘度計による粘度測定法において25℃で300mm2/s以下の粘度を有しているものが好ましく、特に1〜100mm2/sの粘度を有するものが好適である。
【0025】
次に、(ii)成分は、下記一般式(2)で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物から選ばれるシランカップリング剤である。
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8、より好ましくは3の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
【0026】
上記式(2)中のR3、R4のアルキル基又はアミノアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。R5としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が挙げられる。R6としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0027】
このような上記式(2)のアミノ基含有アルコキシシランの具体例としては、H2N(CH2)2Si(OCH3)3、H2N(CH2)2Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)5Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、H2N(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH3)3、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3Si(OCH2CH3)3、H2N(CH2)2SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)5SiCH3(OCH2CH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、H2N(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、CH3NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH3)2、C4H9NH(CH2)2NH(CH2)3SiCH3(OCH2CH3)2等が挙げられ、これらの部分加水分解縮合物を用いることもでき、1種又は2種以上を使用する。
【0028】
これらの中で、特に、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン等やこれらの部分加水分解縮合物が好適に用いられる。
【0029】
また、(iii)成分は、下記一般式(3)で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物である。
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、R7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
【0030】
上記式(3)中のR1、R2は、上記式(1)のR1、R2と同様のものが例示できる。
また、Yはハロゲン原子を含んでもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の有機基(好ましくはアルキレン基又は−(CH2)a(CF2)b(CH2)c−(aは1〜6、bは1〜10、cは1〜6で示されるフッ素原子含有アルキレン基))、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、R7は炭素原子数1〜6、好ましくは1〜3のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられ、特にメチル基が好ましい。Rは炭素原子数1〜6、特に2〜3の2価炭化水素基であり、特にメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基が好ましい。
mは1〜30、特に5〜20の整数である。kは1,2又は3、好ましくは2又は3であり、特に撥水性を高めるにはk=3が好ましい。
【0031】
これらを満たすビス(アルコキシシリル)基含有化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
(CH3O)3SiCH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C8F16CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C10F20CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C8F16CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C10F20CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)2OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)4OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)6OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)8OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)10OSi(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)5Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)7Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)9Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3
【0032】
これらの中でも、好ましくは、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH3)2、
(CH3O)3SiCH2CH2C4F8CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2C6F12CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)6OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)8OSi(OCH3)3、
(CH3O)3Si(OSi(CH3)2)10OSi(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)5Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)7Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3、
(CH3O)3SiCH2CH2(Si(CH3)2O)9Si(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3
等が挙げられ、1種又は2種以上が使用される。また、これらの部分加水分解縮合物も好適に用いられる。
【0033】
(iv)成分は、無機酸化物微粒子であり、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム等が挙げられる。その平均粒径がレーザー散乱式粒度分布測定装置による測定法で1〜200nmのものが好ましく、特に好ましくは5〜100nmのものである。これが200nmを超えると基材が白くなったり、撥水性能が悪くなったりする場合がある。また1nm未満になると処理剤の安定性が悪化する場合がある。その粒子形状は特に限定はないが、球状であることが好ましい。これら無機酸化物微粒子を使用する場合、水又は溶剤等に分散させたものを使用するのが好ましい。
【0034】
特にコストの面、使用しやすさの面から、コロイダルシリカが特に好ましい。コロイダルシリカは、水又はメタノール、エタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコールにシリカ微粒子を分散させたもの、即ち、微粒子状のシリカ粒子を水又はアルコール溶媒中でコロイド状分散液としたものであり、例えば、スノーテックスO、スノーテックスO−40、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスOL、スノーテックスOUP、メタノールシリカゾル、IPA−ST(以上、日産化学工業(株)製)等が挙げられ、1種又は2種以上を使用する。
【0035】
上記(i)及び(ii)成分のみでシリコーン系撥水処理剤とする場合の使用割合は、(i)成分100質量部に対して(ii)成分0.5〜49質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。(ii)成分が0.5質量部未満であるとシリコーン系撥水処理剤自体の安定性が悪くなる場合がある。また、(ii)成分が49質量部を超えると撥水性が悪くなったり、(A)成分に処理したときに黄変が激しくなったりする場合がある。
モル換算としては、(i)成分のSi原子1モルに対し(ii)成分のSi原子が0.01〜0.3モル、特に0.05〜0.2モルとなるように用いることが好ましい。
【0036】
上記(i)、(ii)成分と(iii)及び/又は(iv)成分でのシリコーン系撥水処理剤とする場合の(ii)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して(ii)成分0.5〜49質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部である。(ii)成分が0.5質量部未満であるとシリコーン系撥水処理剤自体の安定性が悪くなる場合がある。また、(ii)成分が49質量部を超えると撥水性が悪くなったり、(A)成分に処理したときに黄変が激しくなったりする場合がある。
【0037】
(iii)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。(iii)成分が0.1質量部未満であると撥水性効果の発現が弱くなる場合がある。また、(iii)成分が20質量部を超えるとコスト的に不利になったりする。
【0038】
また、(iv)成分の使用割合は、(i)成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。(iv)成分が0.1質量部未満であると撥水性効果の発現が弱くなる場合がある。また、(iv)成分が10質量部を超えるとコスト的に不利になったり、シリコーン系撥水処理剤の安定性が悪くなったりする場合がある。
なお、(iv)成分は、上記(i)、(ii)成分又は(i)〜(iii)成分と共に共加水分解縮合時に配合して共加水分解縮合を行ってもよいし、上記(i)、(ii)成分又は(i)〜(iii)成分の共加水分解縮合物に配合してもよい。
【0039】
これら(i)成分と(ii)成分によるシリコーン系撥水処理剤、あるいは(i)、(ii)成分と、(iii)及び/又は(iv)成分を用いてシリコーン系撥水処理剤を製造するには、有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解、縮合させればよい。
この場合、最初に(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させる)を有機酸あるいは無機酸の存在下で加水分解し、この加水分解物と(ii)成分を混合し、有機酸あるいは無機酸の存在下、更に加水分解、縮合させることが好ましい。
【0040】
まず、(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させる)を加水分解する際に使用される有機酸及び無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸及びマレイン酸等から選ばれる少なくとも1種の酸が用いられるが、特に好適なものは酢酸、プロピオン酸である。この酸の使用量は、(i)成分100質量部に対して2〜40質量部、特に3〜15質量部が好適である。
【0041】
加水分解の際は適度に溶剤で希釈した状態で行うのが好ましい。溶剤としては、アルコール系溶剤が好適であり、特にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、第三ブチルアルコールが好適である。この溶剤の使用量は、(i)成分((iii)及び/又は(iv)成分を加える場合は、この(i)成分と混合させた総量)100質量部に対して50〜300質量部、特に70〜200質量部が好ましい。溶剤の使用量が50質量部より少ないと、縮合が進んでしまう場合があり、また、300質量部を超えると、加水分解に時間がかかるおそれがある。
【0042】
また、(i)成分(及び(iii)及び/又は(iv)成分)を加水分解させるために加える水量は、(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の合計1モルに対し0.5〜4モル量、特に1〜3モル量が好適である。加える水量が0.5モル量より少ないとアルコキシ基が多く残存してしまう場合があり、4モル量を超えると縮合が進行しすぎる場合がある。また、(iv)成分として、水中に分散しているコロイダルシリカを用いる場合、その水を加水分解に用いる水としてもよい。
【0043】
(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分を加水分解させる際の反応条件は、反応温度10〜40℃、特に20〜30℃がよく、反応時間は1〜3時間で加水分解反応させるのがよい。
【0044】
上記で得られた(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解物と(ii)成分とを反応させる。好ましくは上記(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解物中に(ii)成分を混合し、有機酸あるいは無機酸の存在下、更に加水分解、縮合させる。
【0045】
また、この加水分解、縮合の際も適度に溶剤で希釈した状態で行うのが好ましい。溶剤としては、上述した上記(i)成分あるいは(i)、(iii)及び/又は(iv)成分の加水分解時に使用したものと同様のものでよい。
なお、この反応の反応条件は、反応温度60〜100℃、特に64〜90℃が好ましく、反応時間1〜3時間、特に1.5〜2.5時間が好ましい。
【0046】
反応終了後は、溶剤の沸点以上まで温度を上げ、アルコール溶剤等の溶剤を留去させる。この場合、系内の全アルコール(反応溶剤としてのアルコール、副生成物としてのアルコール)等の溶剤の含有量を30質量%以下、特に10質量%以下となるように留去させることが好ましい。
【0047】
本発明において、疎水性化合物は、単に窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と混合するだけでも撥水性は得られるが、より好ましくは窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物の表面を被覆することが好ましい。表面被覆方法としては、相分離法、液中乾燥法、融解分散冷却法、スプレードライング法、液中硬化法等の公知の方法により処理することで得ることができる。好ましくは揮発性の溶媒に溶解した疎水性化合物(シリコーン系撥水処理剤)を、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と混合した後、加熱しながら脱溶剤する方法が好ましい。
【0048】
なお、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物との使用割合は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物、疎水性化合物の合計量を100質量%とした場合、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物成分80〜99.8質量%、特に90〜97質量%、疎水性化合物0.2〜20質量%、特に3〜10質量%であることが好ましい。疎水性化合物が少なすぎると、耐水性、撥水性が弱くなる場合があり、疎水性化合物が多すぎると、コスト的に不利になる。
【0049】
上記表面被覆時に疎水性化合物を溶解する溶媒は、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を分散させるために用いられる液体であり、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、窒素を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と反応性のないものが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、トルエン、アセトン、テトラヒドロフラン、ブタノール、酢酸エチル、1−プロパノール、2−プロパノール等を挙げることができる。
【0050】
このようにして得られた本発明の難燃性添加物は、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)、エラストマー、更にコーティング剤、シーラント等に添加、配合して難燃性組成物とし、該組成物に難燃性を付与することができるが、該組成物がエマルション型コーティング剤の場合、エマルション固形分に対し上記難燃性添加物を25〜400質量%、特に40〜250質量%含有することが好ましく、また、樹脂又はエラストマーをベースポリマーとする難燃性組成物の場合、上記難燃性添加物をベースポリマーの0.1〜30質量%、特に5〜20質量%含有することが好ましい。
【0051】
難燃性組成物には、更にリン含有化合物や窒素含有化合物を併用して加えたり、多価アルコールを加えてもかまわない。また、金属水酸化物等の一般に知られている難燃剤を併用してもかまわない。
【0052】
多価アルコール類は、複数個のヒドロキシル基が結合している非環式又は環式化合物であり、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンチトール類(アドニトール、アラビトール等)、へキシトール類(ズルシトール、イノシトール等)、及びサッカリド類(アミロース、キシラン等)、並びにこれらの誘導体(N−メチルグルカミン等)等がある。
【0053】
本発明の難燃性組成物には、その特性を阻害しない範囲で、その目的に応じて添加剤を配合することができる。添加剤としては、中和剤、酸トラップ剤、酸化防止剤、安定剤、光安定剤、相溶化剤、他種のノンハロゲン難燃剤、滑剤、充填剤、接着助剤、防錆剤等を挙げることができる。
【0054】
本発明において使用可能な中和剤、酸トラップ剤としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、イオン交換樹脂等を挙げることができる。
【0055】
本発明において使用可能な酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4−チオビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4−メチレンビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2,5,7,8−テトラメチル−2(4,8,12−トリメチルデシル)クロマン−2−オール、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジペンチルフェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス(メチレン)−3−(ドデシルチオプロピオネート)メタン等が挙げられる。
【0056】
本発明において使用可能な安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の各種金属せっけん系安定剤、ラウレート系、マレート系やメルカプト系各種有機錫系安定剤、ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の各種鉛系安定剤、エポキシ化植物油等のエポキシ化合物、アルキルアリルホスファイト、トリアルキルホスファイト等のホスファイト化合物、ジベンゾイルメタン、デヒドロ酢酸等のβ−ジケトン化合物、ソルビトール、マンニトール、ペンタエリスリトール等のポリオール、ハイドロタルサイト類やゼオライト類等を挙げることができる。
【0057】
本発明において使用可能な光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0058】
難燃性組成物の使用方法は、常法を採用し得るが、例えば、難燃性組成物を繊維に処理し、難燃性を発現する場合は、該組成物(例えば、本発明の難燃性添加物を分散させた上記エマルション型コーティング剤)に繊維を浸した後、乾燥させ、繊維の表面に難燃性組成物をコーティングすることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を合成例及び実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、下記の例で粘度は毛細管式粘度計により測定した25℃における値を示し、重量平均分子量はGPC測定装置により測定したポリスチレン換算値を示す。また、下記実施例において、平均粒径はレーザー散乱式粒度分布測定装置により測定した値を示す。
【0060】
[合成例1]
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、粘度71mm2/sの薄黄色透明溶液81gを得た(重量平均分子量1,100)。このものの系内のメタノール残存量は5質量%であった(シリコーン系撥水処理剤1)。
【0061】
[合成例2]
冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた500mlの四つ口フラスコにメチルトリメトキシシランのオリゴマー85g(ダイマー換算で0.37モル)、1,6−ジトリメトキシシリルヘキサン((CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3)4.3g及び疎水性シリカ(平均粒径約12nm)2.6gを混合後、メタノール154g及び酢酸5.1gを入れ、撹拌しているところに水6.8g(0.37モル)を投入し、25℃で2時間撹拌した。そこに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン17.7g(0.08モル)を滴下した。その後、メタノールの還流温度まで加熱して1時間反応後、エステルアダプターにて、内温が110℃になるまでメタノールを留去し、粘度71mm2/sの薄黄色透明溶液81gを得た(重量平均分子量1,200)。このものの系内のメタノール残存量は5質量%であった(シリコーン系撥水処理剤2)。
【0062】
[実施例1]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)90質量部に対し、合成例1で製造したシリコーン系撥水処理剤1を10質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0063】
[実施例2]
ポリリン酸メラミン,ポリリン酸メラム,ポリリン酸メレム複塩(P含有率11質量%、平均粒径2.5μm、メラミン50質量%、メラム40質量%、メレム10質量%の混合物)を用いる以外は実施例1と同様にして処理を行い、平均粒径4μmのシリコーン処理ポリリン酸メラミン,ポリリン酸メラム,ポリリン酸メレム複塩を得た。
【0064】
[実施例3]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)95質量部に対し、合成例1で製造したシリコーン系撥水処理剤1を5質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0065】
[実施例4]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)90質量部に対し、合成例2で製造したシリコーン系撥水処理剤2を10質量部、エタノール100質量部と共に30分撹拌した後、減圧下でエタノールを留去し、平均粒径12μmのシリコーン処理リン酸メラミンを得た。
【0066】
[比較例1]
リン酸メラミン(N含有率35質量%、平均粒径10μm)を処理せずにそのまま用いた。
【0067】
測定方法及び判定基準は、以下の通りである。
1.ぬめり感
上記実施例と比較例で得られた難燃性添加剤及びリン酸メラミンを25℃の水と60℃の温水に20質量%分散させ、10人の指につけた場合のぬめり感を評価した。
【0068】
2.溶出率
上記実施例と比較例で得られた難燃性添加剤及びリン酸メラミンを60℃の温水に1質量%分散させてろ過し、そのろ液よりリン酸の溶出率を求めた。
【0069】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
【請求項2】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物が、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の難燃性添加物。
【請求項3】
疎水性化合物が、下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物である請求項1又は2記載の難燃性添加物。
【請求項4】
疎水性化合物が、請求項3記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部、及びシランカップリング剤0.5〜49質量部と共に、更に下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものである請求項1又は2記載の難燃性添加物。
【請求項5】
疎水性化合物が、更に無機酸化物微粒子を請求項3記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部含有する請求項3又は4記載の難燃性添加物。
【請求項6】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物を有機溶剤の存在下で撹拌し、有機溶剤を留去して得られる請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性添加物。
【請求項1】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物を、有機ケイ素化合物からなる疎水性化合物の1種又は2種以上で表面処理してなることを特徴とする難燃性添加物。
【請求項2】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物が、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の難燃性添加物。
【請求項3】
疎水性化合物が、下記一般式(1)
(R1)a(OR2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基、R2は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、aは0.75〜1.5、bは0.2〜3で、かつ0.9<a+b≦4を満足する正数である。)
で示されるオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部と、
シランカップリング剤として、下記一般式(2)
R3R4NR5−SiR6n(OR2)3-n (2)
(式中、R2は上記と同様であり、R3、R4はそれぞれ互いに同一又は異種の水素原子、炭素原子数1〜15のアルキル基又はアミノアルキル基、R5は炭素原子数1〜18の2価炭化水素基、R6は炭素原子数1〜4のアルキル基である。nは0又は1である。)
で示されるアミノ基含有アルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物0.5〜49質量部とを有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させた共加水分解縮合物である請求項1又は2記載の難燃性添加物。
【請求項4】
疎水性化合物が、請求項3記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部、及びシランカップリング剤0.5〜49質量部と共に、更に下記一般式(3)
(R1)k(OR2)3-kSi−Y−Si(R1)k(OR2)3-k (3)
(式中、R1及びR2は上記と同様であり、Yは2価の有機基、−(OSi(R7)2)mO−基又は−R−(SiR72O)m−SiR72−R−基であり、ここでR7は炭素原子数1〜6のアルキル基、Rは炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、mは1〜30の整数である。また、kは1,2又は3である。)
で示されるビス(アルコキシシリル)基含有化合物又はその部分加水分解縮合物0.1〜20質量部を有機酸又は無機酸の存在下で共加水分解縮合させたものである請求項1又は2記載の難燃性添加物。
【請求項5】
疎水性化合物が、更に無機酸化物微粒子を請求項3記載のオルガノシラン又はオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部含有する請求項3又は4記載の難燃性添加物。
【請求項6】
窒素原子を含む複素環化合物とリン酸からなる化合物と、疎水性化合物を有機溶剤の存在下で撹拌し、有機溶剤を留去して得られる請求項1〜5のいずれか1項記載の難燃性添加物。
【公開番号】特開2009−197123(P2009−197123A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39750(P2008−39750)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000226666)日信化学工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
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