説明

雲台装置

【目的】 手動操作で作動台を移動させた後においても回動位置を正確に認識することができる雲台装置を提供する。
【構成】 作動台の基準回動位置を検出する第1のホトインタラプタがオンしていないときは、前記基準回動位置からの偏位方向を検出する第2のホトインタラプタがオンしているか否かを判断する(S1→S4)。そして、第2のホトインタラプタがオンしているときはステッピングモータを右方向に(S5)、またオンしていないときは左方向に(S6)回転させる。このとき作動台と回転機構との連結が解除されて回転機構のみが回動し、作動台の位置は基準回動位置に復帰する。そしてこの後第1のホトインタラプタがオンし、指定した方向に作動台を移動させる(S2→S3)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は雲台装置に関し、より詳しくはヒデオカメラ等の撮像装置を固定する雲台装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、画像入力装置においては、ヒデオカメラ等の撮像装置を雲台装置に固定し、該雲台装置を介して前記撮像装置を上下左右に回動自在に移動させることにより、自由自在に被写体を取り込み所望の画像を得ている。
【0003】図8は雲台装置の一例を示す要部断面図であって、該雲台装置は、作動台101を支持する基台102の内部に回転機構103が収納されている。該回転機構103においては、ステッピングモータ104の駆動により該ステッピングモータ104の回転軸に嵌合されているウォームギア105、さらには該ウォームギア105と噛合するハスバ歯車106に回転力が伝達される。そして、該ハスバ歯車106と一体的に形成された回動軸107が回転し、該回動軸107に固着された作動台101が水平方向に回転する。
【0004】このようにウォームギア105とハスバ歯車106を使用した回転機構103は、省スペースで大きな減速率が得られるため一般的によく使用されている。
【0005】また、上記雲台装置は、通常、位置記憶手段を具備している。すなわち、ステッピングモータ104により回動される作動台101の回動位置を記憶して管理することにより、その後は前記管理情報に基づいて1回のボタン操作で作動台101を所望方向に向けている。
【0006】しかしながら、上記雲台装置においては、作動台101を手動で回動させることができないため、雲台装置を手で直接触れることができる至近距離においてもパソコン等の制御装置を使用して回動させる必要があり、却って不便な場合があるという欠点があった。
【0007】そこで、図9に示すように、回動軸108とハスバ歯車109とを分離し、作動台101を手動で回動可能としたものが提案されている。
【0008】すなわち、該雲台装置は、ハスバ歯車109と回動軸108とが一体的に回転可能となるように嵌合されると共に回動軸108の外周適所に形成された凹溝に止め輪110が固着され、該止め輪110とハスバ歯車109との間にバネ111が着座されている。
【0009】上記雲台装置においては、ハスバ歯車109はバネ111の有する弾発付勢力により矢印X方向に押圧されて回転軸108に圧接状態とされる。そして、ステッピングモータ104の駆動時はその回転力が作動台101に伝達され、一方ステッピングモータ104の非駆動時はバネ111の弾発付勢力に抗する外力を作動台101に与えることにより、該作動台101を容易に手動で回動させることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記図9R>9に示す従来の雲台装置においては、手動で作動台101を回動させた場合、ステッピングモータ104を介して駆動させたときに記憶されている管理情報としての基準回動位置がずれてしまい、作動台101を所望の回動位置に設定できなくなるという問題点があった。すなわち、例えば、位置記憶手段を使用して回動位置を設定した後に手動操作して作動台101を移動させ、その後再び位置記憶手段を使用して前記回動位置に復帰させようとした場合には手動操作の回動分だけ回動位置がずれるという問題点があった。
【0011】本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであって、手動操作で作動台を移動させた後においても回動位置を正確に認識することができる雲台装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明は、手動にて回動可能とされた作動台と、該作動台に連結され駆動手段を有して前記作動台を駆動する回動機構とを備えた雲台装置において、前記回動機構と前記作動台との連結を解除する連結解除手段と、前記作動台の基準回動位置を検出する第1の検出手段と、前記作動台の前記基準回動位置からの偏位方向を検出する第2の検出手段とを備え、前記第2の検出手段により前記偏位方向が検出されたときは前記作動台の位置を前記基準回動位置に復帰させる復帰手段と、該復帰手段により前記作動台の位置が前記基準回動位置に復帰してから前記作動台を所定位置に移動させる移動手段とを有していることを特徴としている。
【0013】また、前記作動台の回動位置を記憶する位置記憶手段を有していることを特徴としている。
【0014】さらに、前記作動台は水平方向及び/又は垂直方向に回動可能とされていることを特徴としている。
【0015】
【作用】上記構成によれば、第1の検出手段で手動操作時の基準回動位置が検出され、第2の検出手段で基準回動位置からの偏位方向が検出される。そして、作動台の位置が基準回動位置から偏位しているときは基準回動位置に作動台が復帰した後、所定位置に移動する。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳説する。
【0017】図1は本発明に係る雲台装置の一実施例を示す斜視図であって、該雲台装置は、回転機構1が内有された基台2と、該基台2の上部に設けられてビデオカメラ等の撮像装置(不図示)を載設する作動台3とからなる。
【0018】前記作動台3は、上面4が平面形状に形成されると共に該上面4の適所には円形の鍔部5を有する固定ネジ6が設けられている。そして、鍔部5を回転させることにより撮像装置の下部に形成されている雌ねじ部に固定ネジ6を螺着し、該撮像装置を作動台3上に載設している。
【0019】しかして、前記回転機構1は、作動台3を水平方向(矢印Aで示す)に回動させることにより、前記作動台3に固定された撮像装置を回動させることができる。
【0020】以下、回転機構1について詳述する。
【0021】図2は雲台装置の内部断面図であり、図3はその要部断面図である。
【0022】該回転機構1は、基台2に固着されたステッピングモータ7と、該ステッピングモータ7の回転軸(不図示)に嵌合されると共に軸受8により軸支されるウォームギア9と、該ウォームギア9に噛合されると共に下面に球形の2個の突起部10が形成されたハスバ歯車11とを有している。
【0023】また、作動台3は、鍔部12を有する回動軸13が作動台本体50に固着されている。該回動軸13は、前記ハスバ歯車11と嵌合されて該ハスバ歯車11と一体的に回動する。また、回動軸13の下端には、フェルトやゴム等の高摩擦係数を有する弾性部材14を介してスイッチ押板15が連接されている。
【0024】また、回動軸13の外周適所には凹溝16が形成されて該凹溝16に止め輪17が固着されると共に、ハスバ歯車11に形成された凹所18の下部との間にバネ19が着座され、該バネ19によりハスバ歯車11を矢印B方向に押圧している。また、回動軸13の鍔部12の上面には2個の凹部20が形成され、ハスバ歯車11の突起部10と係合可能とされている。そして、上記バネ19は、ハスバ歯車11が回動軸13に対して回動可能となる作動力F1と、上記ハスバ歯車11の突起部10が回動軸13の凹部20と係合して該凹部20と前記突起部10とが互いに略面接触状態にある場合における回動軸13と基台2との間に生じる摩擦力(弾性部材14による摩擦力)F2との間に数式(1)の関係が成立するようにバネ定数が設定されている。
【0025】F1>F2 …(1)
また、回動軸13には略偏平形状の円盤部材21が外嵌されて回動軸13と一体的に回動可能とされると共に、該円盤部材21の外周近傍であってハスバ歯車11の上面には透過型の第1及び第2のホトインタラプタ22、23(第1及び第2の検出手段)が配設されている。そして、第1のホトインタラプタ22は手動操作をするときの基準回動位置を検出し、第2のホトインタラプタ23は前記基準回動位置からの偏位方向を検出する。24は左右一対のリミットスイッチであって、基台2に固着され、スイッチ押板15の押下により回動する作動台3の回動限界を検出する。
【0026】図4は円盤部材21と第1及び第2のホトインタラプタ22、23との関係を示す図である。
【0027】円盤部材21は、光を透過しない黒色部21aと、基準回動位置を検出するために透明とされた第1の透明部21bと、基準回動位置からの偏位方向を検出するために透明とされた第2の透明部21cとが形成されている。
【0028】しかして、円盤部材21が手動操作の基準回動位置にあるときは、図4(a)に示すように、第1のホトインタラプタ22が第1の透明部21bを検出し、すなわち第1のホトインタラプタ22がオンしてその検出信号を出力する。また、図4(b)に示すように、円盤部材21が第1のホトインタラプタ22に対して手動により左方向に偏位したときは、第1のホトインタラプタ22は第1の透明部21bを検出しなくなり、第2のホトインタラプタ23が第2の透明部21cを検出する。すなわち、第1のホトインタラプタ22がオフし第2のホトインタラプタ23がオンする。さらに、図4R>4(c)に示すように、円盤部材21が第1のホトインタラプタ22に対して手動により右方向に偏位したときは、第1のホトインタラプタ22及び第2のホトインタラプタ23が、夫々第1の透明部21b及び第2の透明部21cを検出しなくなり、したがって第1及び第2のホトインタラプタ22、23は共にオフする。
【0029】表1は円盤部材21の回動状態に応じて第1及び第2のホトインタラプタ22、23の作動状態を示している。
【0030】
【表1】


これにより、手動操作での基準回動位置に対する偏位方向を検出することができる。
【0031】図5は位置記憶手段を有する本雲台装置の制御系を示すブロック図である。
【0032】すなわち、雲台装置を駆動すべく電源が投入されるとCPU25はカウンタ26をリセットした後、第1及び第2のホトインタラプタ22、23の状態を後述する手法で認識し、その認識状態に基づきモータドライバ27を介してステッピングモータ7を駆動させる。そして、ステッピングモータ7を駆動させる毎にCPU25は右回転のときはカウンタ26を「1」だけインクリメントし、左回転のときはカウンタ26を「1」だけデクリメントしてゆく。そして、CPU25は所定の回転位置におけるカウンタ26のカウント数をメモリ28に記憶する。これにより、メモリ28の記憶情報に基づいて作動台3を記憶した所定位置に移動させる。
【0033】図6は回転機構の制御動作を示すフローチャートであって、本プログラムはCPU25で実行される。
【0034】ステップS1で操作者が雲台装置に駆動命令を発し、ステップS2では第1のホトインタラプタ22がオンしているか否かを判断する。そして、第1のホトインタラプタ22がオンしているときは、表1から明らかなように、円盤部材21が基準回動位置にある場合であり、ステップS3に進み、モータドライバ27を介して指令した方向にステッピングモータ7を駆動させ処理を終了する。このとき、回動軸13の凹部20とハスバ歯車11の突起部10とが係合しており、上述した作動力F1と摩擦力F2との関係について数式(1)が成立するため、ステッピングモータ7の回転力がハスバ歯車11を介して回動軸13に伝達され、作動台3は操作者が指定した位置に移動する。
【0035】また、ステップS2の答が否定(No)、すなわち円盤部材21が基準回動位置にないときはステップS4に進み、第2のホトインタラプタ23がオンしているか否かを判断する。そして、第2のホトインタラプタ23がオンしているときは、表1から明らかなように、円盤部材21が左方向に偏位している場合であり、ステップS5に進みモータドライバ27を介してステッピングモータ7を右方向、すなわち円盤部材21を基準回動位置方向に回転させてステップS2に戻る。すなわち、この場合円盤部材21は基準回動位置にないため、図7に示すように、ハスバ歯車11の突起部10が回動軸13の鍔部12の凹部20から離脱している。すなわち、ハスバ歯車11の突起部10はバネ19による押圧力により回動軸13の鍔部12上面に圧接しており、したがって上記突起部10と上記凹部20とは略点接触状態となって摩擦力が低下する。すなわち、この場合、作動力F1と回動軸13と基台2との間に生じる摩擦力F3との間には数式(2)の関係が成立する。
【0036】F1<F3 …(2)
したがってこの場合はステッピングモータ7の回転力は回動軸13に伝達されず、ハスバ歯車11のみが回動する。
【0037】そして、再びステップS2以降の処理を繰り返し、円盤部材21が基準回動位置になるまでステッピングモータ7は右方向に回動する。
【0038】次いで、円盤部材21が基準回動位置に復帰すると第1のホトインタラプタ22がオンしてステップS2の答が肯定(Yes)となり、ステップS3で指定した方向にステッピングモータ7を駆動させて作動台3を所望位置に移動させ処理を終了する。
【0039】また、ステップS4の答が否定(No)、すなわち第1及び第2のホトインタラプタ22、23が共にオフしているときは、表1から明らかなように、円盤部材21が右方向に偏位している場合であり、ステップS6に進みモータドライバ27を介してステッピングモータ7を左方向、すなわち円盤部材21を基準回動位置方向に回転させてステップS2に戻る。すなわち、この場合も円盤部材21は基準回動位置にないため、上述と同様、前記突起部10が前記凹部20から離脱しており、ステッピングモータ7の回転力は回動軸13に伝達されず、ハスバ歯車11のみが回動する。
【0040】そして、再びステップS2以降の処理を繰り返し、円盤部材21が基準回動位置になるまでステッピングモータ7は左方向に回動する。
【0041】次いで、円盤部材21が基準回動位置に復帰すると第1のホトインタラプタ22がオンしてステップS2の答が肯定(Yes)となり、ステップS3で指定した方向にステッピングモータ7を駆動させて作動台3を所望位置に移動させて処理を終了する。
【0042】これにより作動台3を手動操作して回動させた後に雲台装置をステッピングモータ7を介して駆動させた場合においても回動位置を正確に認識することができ、雲台装置に載設される撮像装置等の積載物を容易に所望方向に設置することができる。
【0043】尚、本発明は上記実施例に限定されることはない。上記雲台装置は水平方向のみに回動する場合について述べたが、水平方向及び垂直方向に回動する場合についても同様に適用できるのはいうまでもない。
【0044】
【発明の効果】以上詳述したように本発明に係る雲台装置によれば、作動台を手動操作して回動させた後に駆動手段を介して雲台装置を駆動させた場合においても回動位置を正確に認識することができ、雲台装置に載設される撮像装置等の積載物を容易に所望方向に設置することができる。特に、位置記憶手段を使用して回動位置を設定した後に手動操作をして作動台を移動させても作動台を基準回動位置に正確に復帰させた後、指定された方向に作動台を移動させることができるので、撮像装置等の向きを容易且つ正確に所望方向に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る雲台装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】上記雲台装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】円盤部材と第1及び第2のホトインタラプタとの関係を説明する図である。
【図5】上記雲台装置の制御系を示すブロック図である。
【図6】上記雲台装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】ハスバ歯車と回動軸との間の連結状態が離脱したときの状態を示す雲台装置の要部拡大図である。
【図8】従前の雲台装置の内部構造を示す断面図である。
【図9】従来の雲台装置の内部構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 回転機構
3 作動台
7 ステッピングモータ(駆動手段)
10 突起部(連結解除手段)
21 凹部(連結解除手段)
22 第1のホトインタラプタ(第1の検出手段)
23 第2のホトインタラプタ(第2の検出手段)
25 CPU(復帰手段、移動手段)
28 メモリ(位置記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 手動にて回動可能とされた作動台と、該作動台に連結され駆動手段を有して前記作動台を駆動する回動機構とを備えた雲台装置において、前記回動機構と前記作動台との連結を解除する連結解除手段と、前記作動台の基準回動位置を検出する第1の検出手段と、前記作動台の前記基準回動位置からの偏位方向を検出する第2の検出手段とを備え、前記第2の検出手段により前記偏位方向が検出されたときは前記作動台の位置を前記基準回動位置に復帰させる復帰手段と、該復帰手段により前記作動台の位置が前記基準回動位置に復帰してから前記作動台を所定位置に移動させる移動手段とを有していることを特徴とする雲台装置。
【請求項2】 前記作動台の回動位置を記憶する位置記憶手段を有していることを特徴とする請求項1記載の雲台装置。
【請求項3】 前記作動台は水平方向に回動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の雲台装置。
【請求項4】 前記作動台は垂直方向に回動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の雲台装置。
【請求項5】 前記作動台は水平方向及び垂直方向に回動可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の雲台装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate