説明

電力設備

【課題】ユーザの操作性およびメンテナンス性を向上させつつ、制御盤を筐体に効果的に収納した電力設備を提供する。
【解決手段】制御盤を筐体3に収納した電力設備は、筐体3前面を開閉する外扉31と、筐体3の内部に設けられ、外扉31を開放した状態で露呈する一または複数の内扉32と
を備え、内扉32の背面に第1素子である抵抗器46が配置され、筐体3の背面板30cに第2素子であるマグネットコンタクタ45が配置され、これらの素子は、内扉32を閉鎖した状態で隠蔽される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御盤を筐体に収納した電力設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力設備としては、下記特許文献1に示すように、制御盤を共通バスと、共通バスに接続される複数のボードにユニット化し、ユニット化された複数のボードを筐体内に収容した変電設備が知られている。
【0003】
また、筐体における電力設備の収容方法としては、下記特許文献2に示すように、素子などの電気品を取り付けた取付板の両端を、筐体内に設けられた支持枠に螺子止めして支持させた電気機器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−136519号公報
【特許文献2】特開2002―152918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来の電力設備では、制御盤のユニット化およびユニット化された部材の筐体への取り付けについては改善が為されてきたものの、筐体への制御盤の収納に関しては、ユーザの操作性やメンテナンス性を考慮したものとはなっていなかった。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、ユーザの操作性およびメンテナンス性を向上させつつ、制御盤を筐体に効果的に収納した電力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の電力設備は、制御盤を筐体に収納した電力設備であって、
前記筐体前面を開閉する外扉と、
前記筐体の内部に設けられ、前記外扉を開放した状態で露呈する一または複数の内扉と
を備え、
前記内扉の背面に前記制御盤を構成する第1素子が配置され、該内扉を閉鎖した状態で該第1素子が隠蔽されることを特徴とする。
【0008】
第1発明の電力設備によれば、筐体の外扉のほかに、外扉が開放された状態で露呈する内扉が筐体内に設けられている。そのため、筐体の内部を内扉によりさらに分割して区画することができ、制御盤を構成する素子を効率的に筐体の内部に収納することができる。
【0009】
さらに、内扉の背面に制御盤を構成する素子の一部を配置することで、内扉が閉鎖された状態では内扉により区画された空間領域内の素子が隠蔽される。そのため、点検やメンテナンス時以外には、露呈しないことが望ましい素子群を内扉の背面側に収納することができる。
【0010】
これにより、ユーザの通常使用時に不必要な素子が露出することを防止して電力設備の操作性および安全性を向上させることができると共に、メンテナンス時には、内扉を開放することで必要な点検やメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性も向上させることができる。
【0011】
このように第1発明の電力設備によれば、ユーザの操作性およびメンテナンス性を向上させつつ、制御盤を筐体に効果的に収納することができる。
【0012】
第2発明の電力設備は、第1発明において、
前記制御盤を構成する前記第1素子以外の第2素子が、前記筐体の背面板の前面に、前記内扉を閉鎖した状態で該第1素子と絶縁されるように配置されることを特徴とする。
【0013】
第2発明の電力設備によれば、内扉により区画された空間において、内扉の背面に配置された第1素子と、これと対向するように筐体の背面板の前面に配置された第2素子とが絶縁されるように配置される。
【0014】
これにより、第1素子および第2素子の空間的な広がり、すなわち、これらの素子が配置される板面からの凹凸を考慮して、内扉により区画された空間に効率的に収納することができる。
【0015】
ここで、第1素子および第2素子が絶縁されるように配置されるとは、素子同士が物理的に接触することを回避して配置されることのほか、必要な絶縁距離を空けて配置されることを意味する。
【0016】
第3発明の電力設備は、第1または第2発明において、
前記第1素子または前記第2素子の一部が視認可能な小窓が前記内扉に形成されていることを特徴とする。
【0017】
第3発明の電力設備によれば、内扉に小窓を形成することで、通常内扉により隠蔽されている素子の動作状態を視認可能とすることができる。これにより、通常使用時に不必要な素子が露出することを防止しつつ、ユーザは、その素子のメンテナンスの必要性等を小窓を介して認識することができ、電力設備の操作性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0018】
第4発明の電力設備は、第1〜第3発明において、
前記内扉は、支持部材を介して片支持され、
前記第1素子は、前記内扉の前記支持部側から配線されることを特徴とする。
【0019】
第4発明の電力設備によれば、内扉の背面に配置される第1素子は、内扉が開閉する関係で配線の取り回しが困難となる場合があるところ、内扉をヒンジ等の支持部材により片支持することで、支持部材側を固定端とすることができる。そして、固定端となる支持部材側から第1素子への配線を行うことで、配線へのストレス等を気にすることなく、メンテナンス時に内扉を開放させることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の電力設備の構成を示す全体構成図。
【図2】図1における内扉の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照して、本実施形態の電力設備について説明する。本実施形態の電力設備は、例えば、隣接して設置される変圧器1のタップ切替を行う制御盤2を筐体3に収納した電力設備である。
【0022】
筐体3は、底面板30aと、底面板30aから垂直に立ち上がった一対の側面板30b,30bと背面板30cと、天面板30dとを備える金属製の箱型の形状であって、その前面に開閉自在に取り付けられた外扉31と、外扉31を開放した状態で露呈する内扉32とを備える。
【0023】
外扉31は、筐体3の一方の側面板30bにヒンジ33を介して片支持されると共に、他方の側面板30bにハンドル34を介して係合するようになっている。
【0024】
内扉32は、一端(左端)側が筐体3の内部に垂直方向に設けられた支持部材35にヒンジ36を介して片支持されると共に、他端(右端)側が支持部材35に対向して設けられた支持部材37に螺子38により螺子止めされる。
【0025】
内扉32には、その板面上に凹部40と、小窓41とが設けられている。凹部40は、その底部が切り欠かれた切欠部43を備え、切欠部43を介して筐体3の背面板30cに設けられた素子44(例えばブレーカ44)が内扉32を介して操作可能に構成されている。小窓41は、内扉32の板面の一部を切り欠いて形成されており、小窓41を介して、背面板30cに設けられた素子45(例えばマグネットコンタクタ45、本発明の第2素子に相当する)の状態が視認可能に構成されている。
【0026】
図2に示すように、内扉32の背面には、内扉を閉鎖した状態で隠蔽されるように、抵抗器46(本発明の第1素子に相当する)等が取り付けられている。そして、図2に拡大して示すように、内扉32の背面に設けられた素子の配線は、内扉32が片支持される支持部材35側から配線されている。このように、内扉32の開閉の際に固定端となる支持部材35側から配線を行うことで、内扉32を開閉させても配線にストレス等が生じることもない。
【0027】
以上のように構成された電力設備によれば、内扉32により区画された空間領域に制御盤を構成する素子を配置することで、内扉32の背面および筐体の背面板30cの前面に効率的に配置することができる。
【0028】
さらに、内扉32により区画された空間領域に素子を配置することで、内扉32が閉鎖された状態では領域内の素子が隠蔽される。そのため、点検やメンテナンス時以外には、露呈しないことが望ましい素子群を内扉32の背面側に収納することができる。
【0029】
これにより、本実施形態の電力設備によれば、ユーザの通常使用時に不必要な素子が露出することを防止して電力設備の操作性および安全性を向上させることができると共に、メンテナンス時には、螺子38を外すことで内扉32を開放して必要な点検やメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性も向上させることができる。
【0030】
ここで、内扉32により区画される空間領域に配置される素子は、内扉32の背面に配置される抵抗器46と、筐体3の背面板30cの前面に配置されるブレーカ44およびマグネットコンタクタ45とが絶縁されるように配置される。
【0031】
すなわち、内扉32の背面に配置される抵抗器46と、筐体3の背面板30cの前面に配置されるブレーカ44およびマグネットコンタクタ45とが、物理的に接触することを回避して配置されるほか、必要に応じて適当な絶縁距離を空けて配置される。これにより、内扉32により区画される空間領域において、対向する素子をその凹凸を考慮して、効率的に収納することができる。
【0032】
さらに、内扉32に凹部40を形成してその底部に切欠部43を設けることで、内扉32を開放することなく、内扉32により区画される領域内に設けられたブレーカ44は操作可能となっている。
【0033】
また、内扉32に小窓41を形成することで、通常内扉32により隠蔽されているマグネットコンタクタ45の動作状態を視認可能として、通常使用時に不必要な素子が露出することを防止しつつ、ユーザは、その素子のメンテナンスの必要性等を小窓を介して認識することができ、電力設備の操作性およびメンテナンス性を向上させることができる。なお、マグネットコンタクタ45の代りに、抵抗器46等を視認可能に構成してもよい。
【0034】
以上、詳しく説明したように、本実施形態の電力設備によれば、ユーザの操作性およびメンテナンス性を向上させつつ、制御盤を筐体に効果的に収納することができる。
【0035】
なお、本実施形態では、内扉32が1枚の場合について説明したが、筐体3の内部に複数枚設けてもよい。例えば、筐体3の下部に固定されている制御パネルを内扉として構成し、操作性およびメンテナンス性を向上させるようにしてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、内扉32は、垂直方向に片支持される場合について説明したが、水平方向に片支持されてもよい。例えば、筐体3の底面板30aまたは天面板30dに片支持されてもよい。
【0037】
さらに、内扉32は、片支持以外の方法により支持されてもよい。例えば、筐体3の側面板30b,30bに背面から前面に向って設けられた一対の支持レールに内扉32が支持され、内扉32が前後方向に摺動可能に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…変圧器、2…制御盤、3…筐体、30a…底面板、30b…側面板、30c…背面板、30d…天面板、31…外扉、32…内扉、35…支持部材、36…ヒンジ、40…凹部、41…小窓、44…ブレーカ、45…マグネットコンタクタ(第2素子)、46…抵抗器(第1素子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御盤を筐体に収納した電力設備であって、
前記筐体前面を開閉する外扉と、
前記筐体の内部に設けられ、前記外扉を開放した状態で露呈する一または複数の内扉と
を備え、
前記内扉の背面に前記制御盤を構成する第1素子が配置され、該内扉を閉鎖した状態で該第1素子が隠蔽されることを特徴とする電力設備。
【請求項2】
請求項1記載の電力設備であって、
前記制御盤を構成する前記第1素子以外の第2素子が、前記筐体の背面板の前面に、前記内扉を閉鎖した状態で該第1素子と絶縁されるように配置されることを特徴とする電力設備。
【請求項3】
請求項1または2記載の電力設備であって、
前記第1素子または前記第2素子の一部が視認可能な小窓が前記内扉に形成されていることを特徴とする電力設備。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の電力設備であって、
前記内扉は、支持部材を介して片支持され、
前記第1素子は、前記内扉の前記支持部側から配線されることを特徴とする電力設備。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−17269(P2013−17269A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147046(P2011−147046)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000242127)北芝電機株式会社 (53)