説明

電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス

【課題】磁針の指示誤差を低減させることができる電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスを提供する。
【解決手段】磁針を備えた磁石盤と、磁石盤に対して鉛直軸周りに方位角及び水平軸周りに高低角を可変に回動可能に連結される視準装置と、視準装置と一体的に設けられたレーザ距離計と、レーザ距離計への電力を供給するバッテリーを収納するバッテリーボックス22と、を備え、バッテリーボックス22は、レーザ距離計に対して固定されたボックス本体222と、バッテリーの出し入れを可能にするべくボックス本体222に対して可動となったカバー224とから構成され、ボックス本体222内及びカバー224内には、それぞれ第1磁気遮蔽材30及び第2磁気遮蔽材32が設けられ、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、互いの境界部分においてオーバラップされて、バッテリーを包囲する仮想直方体の対向する1組の側面と下面と上面とを覆うようにして磁気回路を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力によって作動する電力駆動機能装置を搭載した電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスとしては、測距機能を持つ距離計を備えた測量用磁気コンパスが知られている。
【0003】
この測量用磁気コンパスでは磁北を基準とした目標に対する方位を磁針によって得ると共に、距離計によって目標までの距離を得ることができる。この測量用磁気コンパスを任意の地点まで運んで設置することで、例えばトラバース測量等を行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスにおいては、電力駆動機能装置を搭載していない測量用磁気コンパスと比較して、磁針の指示に誤差が発生しやすく高精度の測量には問題があることが判明した。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、磁針の指示誤差を低減させることができる電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、この測量用磁気コンパスの誤差の主な原因が、機能装置を駆動するための電力源であるバッテリーによって磁界が乱れることにあることを突き止めた。特にバッテリーとして用いられる電池自体の外ケースは磁性体で形成されているために、磁化を帯びやすいことが大きな要因と考えられる。この対策として、電池に対して消磁を行うことも考えられるが、使用により再び磁化されるために、あまり効果がない。
【0007】
さらには、発明者らの研究によれば、電池の磁化感受率は、製造メーカによってばらつきがあり、且つ同じ製造メーカの製品であっても個体差が大きいことが判明した。そのため、使う電池によって且つその電池の置き方によっても発生する誤差にばらつきがでることが分かった。
【0008】
さらには、測量用コンパスにおいては、バッテリーと磁気コンパスとの角度が可変になり得ることも誤差のばらつきを発生させる要因となり得る。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電力によって作動する電力駆動機能装置を搭載する電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスであって、
磁針を備えた磁石盤と、
磁石盤に対して鉛直軸周りに方位角及び水平軸周りに高低角を可変に回動可能に連結される視準装置と、
視準装置と一体的に設けられた電力駆動機能装置と、
電力駆動機能装置への電力を供給するバッテリーを収納するバッテリーボックスと、を備え、
バッテリーボックスは、前記電力駆動機能装置に対して固定されたボックス本体と、バッテリーの出し入れを可能にするべくボックス本体に対して可動となったカバーとから構成され、
ボックス本体内及びカバー内には、それぞれ第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材が設けられ、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、互いの境界部分においてオーバラップされて、バッテリーを包囲する仮想直方体の対向する1組の側面と下面と上面とを覆うようにして磁気回路を構成することを特徴とする。
【0010】
また、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、バッテリーの前記仮想直方体の対向する別組の側面は覆わないことを特徴とする。
【0011】
また、前記1組の側面は、前記別組の側面に比べて面積が大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材によって構成される磁気回路によって、バッテリーの磁場を閉じ込めるために、磁石盤の磁針による指示誤差を低減させることができる。
【0013】
第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、バッテリーの対向する1組の側面と下面と上面とを覆うように磁気回路を構成すれば、指示誤差の低減効果が得られ、バッテリーを全て覆う必要はないために、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材の使用量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスを三脚に取付けた状態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスの背面から見た全体斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスのバッテリーボックスのバッテリー本体の平面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って見た断面図である。
【図5】図3の5−5線に沿って見た断面図である。
【図6】バッテリーと磁気遮蔽材との関係を表す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスの全体構成を示す斜視図である。
【0017】
図示したように、本発明の電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス10(以下、単に「測量用磁気コンパス10」とも言う)は、大別して、基台部12と、磁石盤支持部14と、支柱16と、視準装置18と、電力駆動機能装置としてのレーザ距離計20と、バッテリーボックス22と、を備えている。
【0018】
基台部12は、測定点に設置された三脚Tの上部に着脱可能に取付けることができるようになっており、基台部12の上部には磁石盤支持部14が連結される。
【0019】
磁石盤支持部14は、軸受を介して基台部12に対して枢動可能に且つ磁石盤支持部14の中心部を通過する鉛直軸の周りに回動可能に連結される。磁石盤支持部14は、円筒状の支持本体141を有しており、支持本体141の内側には、磁針143を備えた磁石盤142が配設される。また、磁石盤支持部14の鉛直軸V周りの回動を固定するための固定つまみ145と、固定つまみ145によって回動を固定した上でさらに微動回動させるときの調整つまみ146が設けられる。
【0020】
磁石盤支持部14の支持本体141には、フォーク状の支柱16の両端161、161が連結されている。支柱16の中央部162は磁石盤支持部14から上方に向かって突出しており、中央部162には該中央部162を貫通する水平軸Hの周りに回動可能に視準装置18が連結され、視準装置18を回動させるための調整つまみ165が設けられる。水平軸Hは、前記鉛直軸Vと交差するようになっている。また、中央部162の下方には高低角指標163が設けられる。
【0021】
視準装置18は、目標に視準を合わせるための望遠鏡181及び接眼合焦レンズ182を有する。また、望遠鏡ケース183には高低角分度184が取付けられ、高低角指標163によって高低角の読取が可能となっている。
【0022】
レーザ距離計20は、視準装置18に近接して平行に設けられ、レーザ距離計20の距離計ケース201は、望遠鏡ケース183に対して一体的に固定されている。従って、レーザ距離計20は視準装置18と一体に可動する。距離計ケース201内にはレーザ発振機と制御基板等の部品が内蔵される。
【0023】
バッテリーボックス22は、図3〜図5に示したように、ボックス本体222と、カバー224と、を備える。ボックス本体222は、レーザ距離計20の距離計ケース201と一体に構成されることができる。カバー224は、バッテリーの出し入れを可能とするべく、ボックス本体222に対して可動になっている。この例では、カバー224は、ボックス本体222に対して着脱可能となっており、距離計ケース201に対してネジ225によって固定されることで、ボックス本体222に対して固定されるようになっている。バッテリーボックス22はバッテリーの質量を考慮して、前記水平軸Hの真上に配置されると好ましい。
【0024】
この例では、ボックス本体222内に2本の乾電池C、Cが極性を逆にして並んで収納される。このため、ボックス本体222内にバッテリーガイド226が配置されており、バッテリーガイド226に形成された仕切り226aによって各乾電池Cに対応した区画226b、226bが形成される。バッテリーガイド226の底面には、一方の区画226bに対応して一方の乾電池Cのマイナス端子に接触するためのコイルスプリング228及び端子230が固定され、他方の区画226bに対応して他方の乾電池Cのプラス端子に接触するためのリーフスプリング232が固定されている。リーフスプリング232及び端子230はバッテリーガイド226を挿通してリード線231に接続されており、リード線231を介してレーザ距離計20の部品への電力供給がなされるようになっている。
【0025】
また、カバー224内には、端子サポート234及びリーフスプリング236が固定される。リーフスプリング236は、一端が一方の乾電池Cのプラス端子に接触し、他端が他方の乾電池Cのマイナス端子に接触するようになっている。
【0026】
さらに、ボックス本体222及びカバー224内には、それぞれ第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32が設けられる。第1磁気遮蔽材30及び第2磁気遮蔽材32は、例えばパーマロイといった高い透磁率を持つ材料からなる薄板を緩やかに屈曲させて構成され、乾電池Cを包囲するようになっている。
【0027】
図6に概略して示したように、2本の乾電池C,Cを並べて収納したときにバッテリー全体を包囲する仮想直方体40を考えると、第1磁気遮蔽材30は、その下面40bと対向する1組の側面40c、40dの一部を覆うようにしてボックス本体222内に配設される。第2磁気遮蔽材32は、仮想直方体40に対して、その上面40aと前記対向する1組の側面40c、40dの一部を覆うようにしてカバー224内に配設される。
【0028】
この場合の仮想直方体40においては、2本の乾電池が並んだ方向の1組の側面40c、40dの面積が、それに直交する別の組の側面40e、40fの面積の2倍となる。第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32が覆う1組の対向する側面は、仮想直方体の2組の対向する側面のうち、大きい面積の方の側面40c、40dとすると好ましく、小さい面積の方の側面40e、40fについては、第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32で覆う必要はない。また、好ましくは、第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32の幅は、覆うべき側面40c、40dの幅に一致させるか、覆うべき側面の幅よりも若干大きい幅にするとよい。
【0029】
カバー224が、ボックス本体222に取付けられたときに、第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32の互いの境界部分において、一方の磁気遮蔽材が他方の磁気遮蔽材に対して接触する必要はないが、互いに対向する程度にオーバラップされており、これによって、磁気結合を確立することができるようになっている。こうして、第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32とによって、閉じた磁気回路が構成される。
【0030】
さらに、第1磁気遮蔽材30及び第2磁気遮蔽材32と、乾電池の外ケースまたは端子との接触を防ぐべく、複数の絶縁テープ34が第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32の適宜個所に貼付される。
【0031】
以上のように構成される測量用磁気コンパス10においては、測定点において、基台部12を調節することによって磁石盤支持部14を水平に配置した後、視準装置18によって目標に視準させるべく、磁石盤支持部14を基台部12に対して鉛直軸V周りに回動し、且つ、視準装置18を水平軸H周りに回動する。こうして、視準装置18を目標に合わせたときの磁針の指示を読み取ることで、磁北を基準とした目標の方位を測定することができる。また、レーザ距離計20を作動させることで、目標までの距離を測定することができる。
【0032】
第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32とで磁気回路を構成することで、乾電池による磁場を囲い込み、磁針の指示誤差を低減させることができる。そして、乾電池の種類、製造メーカによらずに、乾電池の置き方、または磁石盤支持部14の回動によらずに、一律1°未満の指示誤差に抑えることができる。
【0033】
仮想直方体40の小さい面積の方の側面40e、40fについては、第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32で覆う必要はないために、使用する第1磁気遮蔽材30と第2磁気遮蔽材32の量を節約することができ、製造コストを低減することができる。
【0034】
ところで、任意には、この測量用磁気コンパス10において2つの目標間の挟角を測定する機能を持つ水平分度機能を持たせることができる。この水平分度機能を備える場合には、磁石盤支持部14において、支持本体141とは別に、水平分度150aが付されて支持本体141に対して相対回動する水平分度盤150を設ける(図2)。水平分度盤150は、基台部12と磁石盤支持部14との間に設けられた軸受に対して鉛直軸周りで回動しないように弾性体によって常時付勢されており、従って、常時は、水平分度盤150は基台部12に対して相対回動せず、支持本体141は水平分度盤150に対して相対回動可能となっている。一方、レバー152を操作すると、支持本体141に内蔵されたストッパーが水平分度盤150に向かって移動するので、支持本体141を回動して支持本体141と水平分度盤150との相対的回動位置を基準位置(リセット位置)にすると、ストッパーが水平分度盤150と係合し、水平分度盤150は弾性体に抗して支持本体141と共に一体回動可能となる。
【0035】
よって、水平分度機能を使用する場合には、レバー152を操作して、支持本体141と水平分度盤150とを基準位置(リセット位置)に合わせた後、両者を一体に回動して、視準装置18で目標を視準し、その後、レバー152を元に戻して、支持本体141を水平分度盤150に対して回動して次の目標に視準し、基準位置(リセット位置)からの回動角度を水平分度150aで読取ることで、2つの目標間の挟角を求めることができる。
【0036】
このような水平分度機能を持つ場合には、磁針による角度測定と、水平分度による角度測定との両方の測定が出来るので、両方の測定結果を、周囲環境による磁場の影響の少ない所で比較することで、磁針の誤差を簡単に評価することができるようになる。そして、この評価により、磁針の指示誤差が所望の範囲であることを確認することで、正確な測定を行うことができる。
【0037】
尚、以上の例ではバッテリーとして2つの乾電池を用いていたが、この例に限らずに、1つの乾電池または他の形状の電池、畜電池を使用する場合であっても同様に適用することが可能である。
【0038】
また、以上の例では、搭載する電力駆動機能装置として測距機能を持つレーザ距離計20を例にとったが、これに限るものではなく、例えば測位機能を持つGPS受信機といった他の電力駆動機能装置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス
142 磁石盤
143 磁針
18 視準装置
20 レーザ距離計(電力駆動機能装置)
22 バッテリーボックス
222 ボックス本体
224 カバー
30 第1磁気遮蔽材
32 第2磁気遮蔽材
40 仮想直方体
40a 上面
40b 下面
40c、40d 側面
40e、40f 側面
V 鉛直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力によって作動する電力駆動機能装置を搭載する電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパスであって、
磁針を備えた磁石盤と、
磁石盤に対して鉛直軸周りに方位角及び水平軸周りに高低角を可変に回動可能に連結される視準装置と、
視準装置と一体的に設けられた電力駆動機能装置と、
電力駆動機能装置への電力を供給するバッテリーを収納するバッテリーボックスと、を備え、
バッテリーボックスは、前記電力駆動機能装置に対して固定されたボックス本体と、バッテリーの出し入れを可能にするべくボックス本体に対して可動となったカバーとから構成され、
ボックス本体内及びカバー内には、それぞれ第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材が設けられ、第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、互いの境界部分においてオーバラップされて、バッテリーを包囲する仮想直方体の対向する1組の側面と下面と上面とを覆うようにして磁気回路を構成することを特徴とする電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス。
【請求項2】
第1磁気遮蔽材及び第2磁気遮蔽材は、バッテリーの前記仮想直方体の対向する別組の側面は覆わないことを特徴とする請求項1記載の電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス。
【請求項3】
前記1組の側面は、前記別組の側面に比べて面積が大きいことを特徴とする請求項2記載の電力駆動機能装置付き測量用磁気コンパス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215430(P2012−215430A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79739(P2011−79739)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(592168511)有限会社牛方商会 (5)