説明

電動ゴルフカート

【課題】 簡易且つ正確なバッテリの寿命管理が可能な電動ゴルフカートを提供する。
【解決手段】 使用単位あたりのバッテリの放電量を複数回の使用単位のそれぞれについて算出する1使用サイクル放電量演算部20dと、1使用サイクル放電量演算部20dにより算出される各回の使用単位の放電量に関する統計量に基づき、基準放電量を算出するとともに、算出される基準放電量に基づき、前記バッテリの寿命に係る充電回数を取得するバッテリ寿命演算部20eと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ゴルフカートに関し、特に駆動バッテリの寿命管理に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場では、プレーヤの移動にゴルフカートが用いられることが多い。電動ゴルフカートにはバッテリ及びモータが搭載されており、バッテリから供給される電力により回転するモータが動力源として用いられている。このような電動ゴルフカートは、エンジンを動力源とするものに比して、走行音が小さいという優れた特徴を有している。バッテリは例えば鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池、リチウムイオン電池などであり、いずれにしても有限の寿命が存在する。このため、バッテリの寿命到来を事前に検知して、電動ゴルフカートの管理者に報知することが望ましい。この点、下記特許文献1には、電気自動車で用いられるバッテリの寿命判定技術が開示されている。この技術によると、バッテリの充放電サイクルのそれぞれについて固有劣化値が決定され、これらの固有劣化値を合計することにより、バッテリの劣化が得られる。
【特許文献1】特開2004−264303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術によると固有劣化値の合計値がバッテリの劣化と見なされるので、個々の固有劣化値に誤差が含まれると、それが蓄積して大きな誤差に繋がるという問題がある。
【0004】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易且つ正確なバッテリの寿命管理が可能な電動ゴルフカートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る電動ゴルフカートは、使用単位あたりのバッテリの放電量を複数回の使用単位のそれぞれについて算出する放電量算出手段と、前記放電量算出手段により算出される各回の使用単位の放電量に関する統計量に基づき、基準放電量を算出する基準放電量算出手段と、前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量に基づき、前記バッテリの寿命に係る充電回数を取得する寿命充電回数取得手段と、を含むことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様に係る電動ゴルフカートにおいては、前記使用単位は、前記バッテリが充電されてから次に充電されるまでの期間である。また、本発明の他の態様に係る電動ゴルフカートは、前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量と、前記バッテリの寿命となる充電回数と、の関係を示すデータを記憶するデータ記憶手段を更に含み、前記寿命充電回数取得手段は、前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量を前記データ記憶手段に記憶されるデータに照査することにより、当該電動ゴルフカートに搭載される前記バッテリの寿命に係る充電回数を取得する。
【0007】
また、本発明の更に他の態様に係る電動ゴルフカートは、前記バッテリの充電回数を計数する充電回数計数手段と、前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、に基づく通知を、ユーザに対して行う通知手段と、をさらに含む。
【0008】
この態様では、前記通知手段は、当該電動ゴルフカートの操作手段に対して所定の操作が行われた場合に、前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、の比較結果に応じた通知を、ユーザに対して行ってよい。また、前記通知手段は、当該電動ゴルフカートの操作手段に対して所定の操作が行われた場合に、前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、の比に応じた通知を、ユーザに対して行ってよい。前記通知手段は、前記バッテリの残容量の表示器と用いてユーザに通知を行うようにしてよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る電動ゴルフカートの側面図である。同図に示すように、この電動ゴルフカート10は、左右それぞれ一対の前輪12及び後輪14を備える4輪車両であり、二人用の前部シート22と三人用の後部シート24とを備えている。後輪14はモータ16により正逆に回転駆動されるようになっており、このモータ16の駆動電力は後部シート24の下方に収容された駆動バッテリ18から供給される。駆動バッテリ18は、例えば直列接続された複数個の鉛蓄電池である。また、後部シート24の後方にはマイコンを中心に構成されたコントローラ20が収容されており、このコントローラ20により電動ゴルフカート10の各種装備が制御される。
【0011】
前輪12の向きは、前部シート22の前方に配置されたステアリングハンドル26により操作できるようになっている。また、モータ16の回転速度は、ステアリングハンドル26の下方に配置された不図示のアクセルペダルにより操作される。走行中にアクセルペダルの踏角が0に戻されると、前輪12及び後輪14にディスクブレーキが掛けられるとともに、後輪14に対してはモータ16による回生ブレーキも掛けられる。車速が十分に低くなると、モータ16は後輪14に対してパーキングブレーキとして電磁ブレーキを掛ける。また、アクセルペダルの横に配置されたブレーキペダル28が踏まれたときも、前輪12及び後輪14に対してディスクブレーキが掛けられる。さらに前部シート22の下方に配置されたレバー29によりモータ16の回転方向が正逆に切り替えられる。前部シート22の前方には操作パネル30が設けられており、この操作パネル30内には後述する残量LED30a及び異常LED30bが収容されており、その近傍にはブザー30cが取り付けられている。
【0012】
図2は、電動ゴルフカート10における駆動バッテリ18の寿命管理に関わる制御ブロック図である。同図に示すように、コントローラ20には充放電量積算部20a、モータ制御部20b、充電サイクル演算部20c、1使用サイクル放電量演算部20d、バッテリ寿命演算部20e、残量演算部20fが設けられている。残量演算部20fには寿命表示判定部20g及びバッテリ残量不足異常判定部20hが含まれる。これらの制御要素は、例えば、マイコンを中心に構成されたコントローラ20により、その内蔵プログラムが実行されることにより実現される。
【0013】
モータ制御部20bは、駆動バッテリ18から供給される電力によりモータ16を回転駆動する。このとき、駆動バッテリ18の電圧及び電流は充放電量積算部20aにより監視されており、該充放電量積算部20aは、駆動バッテリ18の放電量を積算する。放電量の積算値としては、駆動バッテリ18からモータ16に供給される放電量のみを積算した値を採用してもよいし、駆動バッテリ18からモータ16に供給される放電量を正値とし、逆に回生ブレーキ時にモータ16から駆動バッテリ18に供給される充電量を負値とし、これらを符号付きで積算した値を採用してもよい。1使用サイクル放電量演算部20dは、充放電量積算部20aにより演算される放電量を用いて、1使用サイクルあたりの放電量を取得し、これを所定の使用サイクル分(ここでは例えば50回とする。)だけ記憶する。具体的には、1使用サイクル放電量演算部20dは、電動ゴルフカート10に充電プラグが接続されて、駆動バッテリ18に充電電圧が加わったことを検知する。そして、駆動バッテリ18が満充電とされてから次に充電開始されるまでの期間(この期間を「1使用サイクル」という。)の駆動バッテリ18の放電量の積算値を充放電量積算部20aから取得し、これを記憶する。一方、充電サイクル演算部20cは、駆動バッテリ18の充電回数を計数する。
【0014】
バッテリ寿命演算部20eは、1使用サイクル放電量演算部20dに記憶される所定の使用サイクル分の放電量を足し合わせ、それを充電サイクル演算部20cで計数された充電回数(ここでは50回)で除し、1使用サイクルあたりの平均放電量を算出する。ここでは、この平均放電量を基準放電量と呼ぶ。なお、1使用サイクル放電量演算部20dは、記憶された所定使用サイクル分の放電量のうち最大量を基準放電量としたり、最大量と最小量との中間値を基準放電量としたりするなど、他の統計量を基準放電量としてもよい。バッテリ寿命演算部20eは、こうして算出される基準放電量に基づき、駆動バッテリ18が寿命を迎える充電回数(寿命充電サイクル)を決定する。具体的には、バッテリ寿命演算部20eは、図3に示すように、基準放電量(Ah)と寿命充電サイクル(回)との関係を示すテーブルを記憶しており、上記のようにして算出される基準放電量に対応する寿命充電サイクルを該テーブルから取得する。
【0015】
残量演算部20fは、充放電量積算部20aにより積算される駆動バッテリ18の放電量に従って、駆動バッテリ18の残容量を判断する。そして、この判断に従って残容量の表示器である残量LED30aを点灯させる。具体的には、残量LED30aは所定個数のLEDから構成されており、残容量が減るに従って点灯数を減らす。寿命表示判定部20gは、バッテリ寿命演算部20eから通知される寿命充電サイクルと、充電サイクル演算部20cから通知される、駆動バッテリ18の使用を開始してから現在までの充電サイクル(通算充電サイクル)と、に従って、残量LED30aを用いた残り寿命表示を行う。この表示は、操作パネル30に配置された各種ボタンやブレーキペダル28が特定の手順にて操作されたときのみ行われるようにしてよい。残り寿命表示は、例えば寿命充電サイクルと通算充電サイクルとの比に応じた個数のLEDを点灯させることにより行う。また、寿命表示判定部20gは、寿命充電サイクルよりも通算充電サイクルが大きくなると、寿命警告を残量LED30aを用いて行う。例えば、電動ゴルフカート10の電源をオンしたときに残量LED30aを点滅させることにより、寿命到来を通知する。バッテリ残量不足異常判定部20hは、駆動バッテリ18が異常電圧を示したとき、異常LED30bを点灯させたり、ブザー30cを鳴動させたりする。
【0016】
図4は、コントローラ20における寿命充電サイクルを決定する処理を示すフロー図である。この処理は、未使用の駆動バッテリ18が電動ゴルフカート10に搭載され、コントローラ20に初期化動作が指示された場合に実行される。まず、1使用サイクル放電量演算部20dは、駆動バッテリ18の充電完了を検知する(S101)。例えば駆動バッテリ18を流れる充電電流が微弱になったこと、或いは駆動バッテリ18の電圧が所定電圧にまで上がったことにより、充電完了を判断する。そして、変数である充電完了回数を1だけインクリメントする(S102)。さらに、充放電量積算部20aに記憶されている積算された放電量を0に初期化する(S103)。そして、次に駆動バッテリ18の充電が開始されるまで(S105)、充放電量積算部20aは駆動バッテリ18の走行中の放電量を積算する(S104)。その後、駆動バッテリ18の充電が開始されると(S105)、1使用サイクル放電量演算部20dは、変数である充電開始回数を1だけインクリメントする(S106)。さらに、充放電量積算部20aで積算されている放電量を取得し、これを記憶する。さらに、変数である保存データ数を1だけインクリメントする(S107)。保存データ数が50に達するまでは(S108)、S109乃至S111の処理をスキップし、駆動バッテリ18の充電を開始する(S112)。一方、保存データ数が50に達していれば、バッテリ寿命演算部20eが1使用サイクル放電量演算部20dに記憶されている50個の放電量の平均値を算出し、基準放電量を取得する(S109)。そして、この基準放電量を図3に示されるテーブルに照査して、寿命充電サイクルを取得する(S110)。そして、1使用サイクル放電量演算部20dに記憶される保存データ数を0にクリアする(S111)。
【0017】
図5は、残量LED30aにより寿命表示を行う処理を示すフロー図である。同図に示す処理は電動ゴルフカート10の図示しない電源ボタンがオンされたときに実行されるものである。まず、電源がオンされると(S201)、寿命表示判定部20gは、充電サイクルを演算する(S202)。充電サイクルは、図4のS102で更新される充電完了回数と、同図のS106で更新される充電開始回数の平均値である。なお、充電完了回数そのものを充電サイクルとしてもよいし、充電開始回数そのものを充電サイクルとしてもよい。次に、S202で算出される充電サイクルが、図4のS110で算出される寿命充電サイクルよりも大きいか否かを判断する(S203)。そして、大きければ寿命表示を実施する(S204)。具体的には、残量LED30aに含まれる全部のLEDを所定時間だけ点滅させる。一方、充電サイクルが寿命充電サイクル以下であれば、S204の処理をスキップし、残量演算部20fが残量LED30aを用いて駆動バッテリ18の残量表示を行う(S205)。その後、操作パネル30に配置された各種ボタンやブレーキペダル28が特定の手順にて操作されたか否かを監視し(S206)、そのような操作が行われると、S202で算出される充電サイクルと、図4のS110で算出される寿命充電サイクルとの比に応じた個数だけ、残量LED30aに含まれるLEDを所定時間だけ点灯させ(S207)、再びS205に戻る。
【0018】
以上説明した電動ゴルフカート10によると、初期の50回分の使用サイクルでの放電量の実績に基づき、当該電動ゴルフカート10に搭載された駆動バッテリ18の寿命充電サイクルを適切に決定することができる。電動ゴルフカート10は、1つのゴルフコースを1日決まった回数(通常は1回)だけ走行し、その後、翌日に備えて充電されるという、決まったパターンの使われ方をしており、各使用サイクルにおける放電量は、ゴルフコースの起伏などによって決まる、概ね一定量である。また、駆動バッテリ18の寿命は各使用サイクルにおける放電量に大きく依存する。そこで、本実施形態では、所定数の使用サイクルでの放電量から基準放電量を算出し、そこから寿命充電サイクルを決定している。そして、充電サイクル(使用サイクル)と寿命充電サイクルとの比較により、寿命表示を行っている。こうすることで、電動ゴルフカート10の駆動バッテリ18の寿命を簡易且つ正確に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る電動ゴルフカートの側面図である。
【図2】寿命管理に関わる制御ブロック図である。
【図3】寿命管理のためのテーブルを示す図である。
【図4】寿命充電サイクルを決定する処理を示すフロー図である。
【図5】寿命表示を行う処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0020】
10 電動ゴルフカート、12 前輪、14 後輪、16 モータ、18 駆動バッテリ、20 コントローラ、22 前部シート、24 後部シート、26 ステアリングハンドル、28 アクセルペダル、29 レバー、30 操作パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用単位あたりのバッテリの放電量を複数回の使用単位のそれぞれについて算出する放電量算出手段と、
前記放電量算出手段により算出される各回の使用単位の放電量に関する統計量に基づき、基準放電量を算出する基準放電量算出手段と、
前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量に基づき、前記バッテリの寿命に係る充電回数を取得する寿命充電回数取得手段と、
を含むことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項2】
請求項1に記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記使用単位は、前記バッテリが充電されてから次に充電されるまでの期間である、
ことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量と、前記バッテリの寿命となる充電回数と、の関係を示すデータを記憶するデータ記憶手段を更に含み、
前記寿命充電回数取得手段は、前記基準放電量算出手段により算出される基準放電量を前記データ記憶手段に記憶されるデータに照査することにより、当該電動ゴルフカートに搭載される前記バッテリの寿命に係る充電回数を取得する、
ことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記バッテリの充電回数を計数する充電回数計数手段と、
前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、に基づく通知を、ユーザに対して行う通知手段と、
をさらに含むことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項5】
請求項4に記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記通知手段は、当該電動ゴルフカートの操作手段に対して所定の操作が行われた場合に、前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、の比較結果に応じた通知を、ユーザに対して行う、
ことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記通知手段は、当該電動ゴルフカートの操作手段に対して所定の操作が行われた場合に、前記充電回数計数手段により計数される充電回数と、前記寿命充電回数取得手段により取得される充電回数と、の比に応じた通知を、ユーザに対して行う、
ことを特徴とする電動ゴルフカート。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の電動ゴルフカートにおいて、
前記通知手段は、前記バッテリの残容量の表示器と用いてユーザに通知を行う、
ことを特徴とする電動ゴルフカート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−125110(P2010−125110A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303708(P2008−303708)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)