説明

電動ステアリングロック装置

【課題】コストアップを招くことなく簡単な構成で防水性を高めることができる電動ステアリングロック装置を提供すること。
【解決手段】ステアリングホイールの回転を阻止するロック部材と、該ロック部材を移動させるための電動アクチュエータと、該電動アクチュエータに電力を供給するための外部電源との電気的接続手段である内部コネクタ18と、前記ステアリングシャフト50を回転可能に収納するステアリングコラム51に固定された状態で下方に向かって開口する開口部を有するケース3と該ケース3の前記開口部を閉塞するリッド4を備えたハウジング2と、を備えた電動ステアリングロック装置1において、前記ハウジング2のリッド4に、前記内部コネクタ18と前記外部電源に連なる外部コネクタ25との接続を可能とする貫通孔4bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置(ESL)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両には盗難防止の目的で駐車時にステアリングホイールの回動を電動でロックするための電動ステアリングロック装置を備えるものがある。この電動ステアリングロック装置は、例えばエンジン作動状態で運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作すると、これを検知して電動モータ等の電動アクチュエータを駆動し、該電動アクチュエータによってロック部材を移動させてこれをステアリングシャフトに係合させることによってステアリングホイールの回転をロックし、エンジン停止状態で運転者がエンジンスタートスイッチをON操作すると、これを検知して電動アクチュエータを駆動し、該電動アクチュエータによってロック部材を移動させて該ロック部材のステアリングシャフトへの係合を解除し、ステアリングホイールをアンロックしてステアリング操作を可能とするものである。
【0003】
ところで、斯かる電動ステアリングロック装置は、車両のステアリングコラムにボルト等によって固定されるハウジングを備えており、該ハウジングは、これがステアリングコラムに固定された状態で下方に向かって開口する開口部を有するケースと該ケースの前記開口部を閉塞するリッドを備えている。そして、このハウジングの内部には、ロック部材や電動アクチュエータ、電動アクチュエータを制御するための電気回路が配設された回路基板等が収容されている。又、電動ステアリング装置には、電動アクチュエータ及び回路基板に電力や制御信号を供給するための外部電源やコントローラとの電気的接続手段である内部コネクタが設けられている。
【0004】
斯かる電動ステアリングロック装置に関して特許文献1には、ハウジングのケースの側面(ロックボルトの進退方向に対して側方に位置する側面)に切欠部を形成し、この切欠部に内部コネクタをその端面がハウジングから突出しないよう配置することによって、内部コネクタの衝撃による破損を防ぐとともに、外部コネクタへの内部コネクタへの接続作業性を高める構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−096299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常、電動ステアリングロック装置は、設置スペース等の関係で車両のステアリングコラムの下側に固定されることが多い。特許文献1に記載された発明のように電動ステアリングロック装置をステアリングコラムの下側に配置するとともに、そのハウジングの側部に配置された内部コネクタに外部コネクタを接続する構成を採用する場合、電動ステアリングロック装置の側部から延びる外部コネクタのハーネスは、ステアリングコラムに設けられた結束バンドによって周囲の電気部品のハーネスと一緒に束ねられるため、該ハーネスがこれの上方に位置するステアリングコラムに向かって延びる。そして、このハーネスは、ステアリングコラムに沿って配索され、ステアリングコラムの近傍に配置された上位コントロールユニットや電源等に接続される。
【0007】
しかしながら、上述のようにハーネスが配索された場合、該ハーネスの結束バンドによる結束部分よりも電動ステアリングロック装置の内部コネクタ及びこれに接続された外部コネクタの方が下側に位置するため、例えば車内でこぼれた飲み物や結露等によって発生した水滴がハーネスを伝わって外部コネクタに達し、内部コネクタを介して電動ステアリングロック装置の内部に浸入してしまう可能性があった。このように水滴等が電動ステアリングロック装置の内部に浸入すると、ショート等が引き起こして電動ステアリングロック装置の故障の原因になるという問題が発生する。
【0008】
上記問題を解決するためには、高価な防水コネクタやパッキン等を使用すれば良いが、これらを使用するとコストアップを免れないという別の問題が発生する。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、コストアップを招くことなく簡単な構成で防水性を高めることができる電動ステアリングロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
車両のステアリングシャフトに係合することによって該ステアリングシャフトの回転を阻止するロック部材と、
該ロック部材を移動させるための駆動力を発生する電動アクチュエータと、
該電動アクチュエータに電力を供給するための外部電源との電気的接続手段である内部コネクタと、
前記ステアリングシャフトを回転可能に収納するステアリングコラムに固定された状態で下方に向かって開口する開口部を有するケースと該ケースの前記開口部を閉塞するリッドを備え、内部に少なくとも前記ロック部材と前記電動アクチュエータを収納して成るハウジングと、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ハウジングのリッドに、前記内部コネクタと前記外部電源に連なる外部コネクタとの接続を可能とする貫通孔を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、車両取付状態において、前記内部コネクタに接続された前記外部コネクタから下方へと導出するハーネスの一部に、上方に向かってU字状に湾曲する湾曲部を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ハウジング内に、前記電動アクチュエータを制御するための電気回路が配設された回路基板を前記ケースの開口部から挿入可能な収納部を形成し、
前記内部コネクタを、前記回路基板の前記リッドの貫通孔に対向する端部に一体的に固定したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3に何れかに記載の発明において、前記リッドの貫通孔を非切欠き孔としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、当該電動ステアリングロック装置をステアリングコラムに取り付けた状態において、ハウジングのケースの下端開口部を覆うリッドに貫通孔を形成し、この貫通孔を介して内部コネクタと外部コネクタとの接続が可能となるよう構成したため、内部コネクタと外部コネクタが電動ステアリングロック装置の下側に位置し、外部コネクタに連なるハーネスに沿って水滴等が外部コネクタへと移動しても、該外部コネクタの上方に位置する内部コネクタに水滴等が達することがなく、電動ステアリングロック装置に高い防水性を確保してショート等による該電動ステアリングロック装置の故障を防ぐことができる。又、ハウジングのリッドに貫通孔を形成したため、従来のようにケースに大きな切欠部を設ける必要がなく、切欠部によるケースの強度低下が防がれる。そして、このような効果は内部コネクタの配置を変更するだけの簡単な構成によって得られ、高価な防水コネクタ等を使用する必要がないため、電動ステアリングロック装置のコストアップを抑えることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、当該電動ステアリングロック装置の車両取付状態において、内部コネクタに接続された外部コネクタから下方へと導出するハーネスの一部に、上方に向かってU字状に湾曲する湾曲部を形成したため、自重によってハーネスに沿って湾曲部へと移動した水滴等が湾曲部よりも上方に位置する外部コネクタ及び内部コネクタに重力に抗して達することがなく、電動ステアリングロック装置に高い防水性が確保される。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、ハウジング内の収納部に収納された回路基板のリッドの貫通孔に対向する端部に内部コネクタを一体的に固定したため、回路基板をケースの開口部からケース内へと挿入して収納部に収納した後、ケースの開口部をリッドで覆うだけで内部コネクタとリッドの貫通孔とを対応させてリッドと内部コネクタを容易に組み付けることができ、これらの組付性が高められる。又、請求項1又は2記載の発明によって電動ステアリングロック装置に高い防水性が確保されるため、内部コネクタ(又は外部コネクタ)とリッドの貫通孔との間の隙間にパッキン等のシール部材を設ける必要がなく、部品点数を削減して構造の単純化とコストダウンを図ることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、リッドの貫通孔を非切欠き孔(閉じた孔)としたため、リッドに応力集中を招く切欠きが不要となり、リッドに高い強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電動ステアリングロック装置の取付状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る電動ステアリングロック装置の底面図である。
【図3】本発明に係る電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明に係る電動ステアリングロック装置の分解斜視図である。
【図6】本発明に係る電動ステアリングロック装置のケースを底面側から見た斜視図である。
【図7】本発明に係る電動ステアリングロック装置の回路基板のケースへの組付要領を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る電動ステアリングロック装置の取付状態を示す斜視図、図2は同電動ステアリングロック装置の底面図、図3は同電動ステアリングロック装置のロック状態を示す縦断面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は同電動ステアリングロック装置の分解斜視図、図6は同電動ステアリングロック装置のケースを底面側から見た斜視図、図7は同電動ステアリングロック装置の回路基板のケースへの組付要領を示す斜視図である。
【0021】
本発明に係る電動ステアリングロック装置1は、電動によって図1に示すステアリングシャフト(ステアリングホイール)50の回転をロック/アンロックするものであって、図1に示すように円筒状のステアリングコラム51に取り付けられている。尚、ステアリングコラム51には前記ステアリングシャフト50が回転可能に挿通しており、このステアリングシャフト50の上端には不図示のステアリングホイールが結着され、同ステアリングシャフト50の下端部は不図示のステアリングギヤボックスに連結されている。そして、運転者がステアリングホイールを回転操作すれば、その回転はステアリングシャフト50を経てステアリングギヤボックスに伝達され、該ステアリングギヤボックス内に設けられた不図示のラック軸が車幅方向に移動し、その移動が不図示のタイロッドを介して操舵輪である左右の前輪に伝達されて該前輪が転舵される。
【0022】
而して、電動ステアリングロック装置1は、前記ステアリングコラム51に取り付けられたハウジング2を備えており、このハウジング2は、図1〜図5に示すように、非磁性体である金属製(例えば、マグネシウム合金製)のケース3と該ケース3の下端開口部を閉塞する金属製のリッド4によって構成されている。
【0023】
上記ケース3は、矩形ボックス状に成形されており、その上部には円弧状の凹部3aが形成され、この凹部3aには図1に示すようにステアリングコラム51が嵌め込まれ、ハウジング2は、ステアリングコラム51を跨いで左右2本のボルト52(図1には一方のみ図示)によってケース3に結着される円弧状のブラケット53によってステアリングコラム51に固定されている。ここで、図5に示すように、ケース3の3つの側面の下部にはピン5が圧入される円孔状のピン孔3b(図5には1つのみ図示)が形成されている。
【0024】
他方、前記リッド4は矩形平板状に成形されており、その内面(上面)には、図5に示すように3つのブロック状のピン留め部4Aと、3つの円柱状のカバー押さえ部4Bと、有底筒状のギヤ保持筒部4Cと、矩形円弧面状のモータ押さえ部4D及び押圧部4Eが一体に立設されており、該押圧部4Eと前記ピン留め部4Aのうちの1つの各上端にはピン状の基板押さえ部4aがそれぞれ一体に形成されている。又、リッド4の前記モータ押さえ部4Dの横には、非切欠き孔(閉じた孔)である矩形の貫通孔4b(図2参照)が形成されている。
【0025】
ここで、3つの前記ピン留め部4Aは、ケース3の前記ピン孔3bの位置に対応する箇所に立設されており、これらには前記ピン5が圧入される円孔状のピン挿通孔4c(図5には1つのみ図示)が形成されている。
【0026】
而して、リッド4は、図3及び図4に示すように、ケース3の下端開口部を下方から覆うようにケース3の下端部内周に嵌め込まれ、ケース3の側部に形成された3つの前記ピン孔3b(図5参照)に挿通するピン5を該リッド4に立設された3つのピン留め部4Aにそれぞれ形成された各ピン挿通孔4cに圧入することによってケース3に固定される。
【0027】
ところで、ケース3には、図6に示すように、ロック部材収納部3A、基板収納部3B、モータ収納部3C及びモータ出力軸配設部3Dが形成されており、ロック部材収納部3Aと基板収納部3Bとは上下方向に延びる細長い連通部3Eによって互いに連通している。そして、前記基板収納部3Bを構成するケース3の相対向する内面には上下方向に延びるガイドブロック3Fが突設されており、各ガイドブロック3Fには、後述の回路基板15の端部を保持する基板保持溝3cが上下方向にそれぞれ形成されている。
【0028】
又、図6に示すように、ケース3に形成された矩形凹状の前記モータ収納部3Cには、電動アクチュエータである後述の電動モータ13の端面を受ける段状の受け面3dが形成されており、この受け面3dには、電動モータ13のスラスト方向の移動を規制する2つの三角リブ3eが一体に突設されている。
【0029】
更に、ケース3に形成された前記ロック部材収納部3A(図6参照)には、図3に示すようにロック部材6が収納されている。このロック部材6は、下端部外周に雄ネジ部7aが刻設された略円筒状の非磁性体である金属製のドライバ7と、該ドライバ7内に上下動可能に収容されたプレート状のロックボルト8とで構成されている。ここで、ロックボルト8には上下方向に長い長孔8aが形成されており、該ロックボルト8は長孔8aに横方向に挿通するピン9によってドライバ7に連結されている。尚、ピン9は、ドライバ7に横方向に貫設されたピン挿通孔7bに圧入によって挿通保持されている。
【0030】
そして、上記ロックボルト8は、ケース3に形成された矩形のロックボルト挿通孔3f内に上下動可能に嵌合しており、これとドライバ7間に縮装されたスプリング10によって常時上方(ロック方向)に付勢され、通常は図3に示すようにロックボルト8の長孔8aの下部がピン9に係合することによって該ロックボルト8はドライバ7と共に上下動する。
【0031】
又、図5に示すように、ドライバ7の上部外周の相対向する箇所には水平に延びるアーム7Aと矩形ブロック状の回り止め部7Bが一体に形成されており、アーム7Aは、ケース3に形成された前記連通部3E(図6参照)に上下動可能に収容され、その先端部には不図示の磁石が圧入によって収納されている。尚、ドライバ7の前記回り止め部7Bは、ケース3に形成された不図示の係合溝に係合してドライバ7の回転を阻止する機能を果たす。
【0032】
更に、ケース3に形成された前記ロック部材収納部3A(図6参照)には、図3に示すように円筒状のギヤ部材11が回転可能に収容されており、このギヤ部材11の下部外周はリッド4の内面(上面)に立設された前記ギヤ保持筒部4Cによって回転可能に保持されている。そして、このギヤ部材11の下部外周にはウォームギヤ11aが形成され、内周には雌ネジ部11bが形成されている。
【0033】
上記ギヤ部材11の内部には前記ドライバ7の下部が挿入されており、このドライバ7の下部外周に形成された前記雄ネジ部7aは、ギヤ部材11の内周に形成された前記雌ネジ部11bが噛合している。そして、リッド4のギヤ保持筒部4Cの中心部に立設された円柱状のスプリング受け4dとドライバ7との間にはスプリング12が縮装されており、ロック部材6(ドライバ7とロックボルト8)はスプリング12によって常時上方(ロック方向)に付勢されている。
【0034】
又、ケース3に形成された前記モータ収納部3C(図6参照)には図5に示す電動モータ13が横置き状態で収納されており、この電動モータ13の出力軸13aには小径のウォーム14が形成されている。電動モータ13は、前記ロック部材6を移動させるための駆動力を発生するものであって、その出力軸13aの端部はケース3に形成された前記モータ出力軸配設部3D(図6参照)内に配設され、この出力軸13aに形成された前記ウォーム14は、ギヤ部材11の外周に形成された前記ウォームギヤ11aに噛合している。ここで、ウォーム14とウォームギヤ11aは、電動モータ13の出力軸13aの回転力をロック部材6の進退力に変換する駆動機構を構成している。
【0035】
一方、図3及び図4に示すように、ケース3に形成された前記基板収納部3Bには、電気回路が配設された樹脂製の回路基板15が垂直に起立した状態で収納されており、この回路基板15は、ケース3の内面の相対向する箇所に設けられたガイドブロック3Fに形成された基板保持溝3c(図6参照)にその両端縁を差し込むことによって、その表面がロック部材6の作動方向と平行となるようにケース3に固定保持されている。
【0036】
ここで、図5に示すように、回路基板15の表面のロックとアンロック位置に対応する位置には、ドライバ7のアーム7A内に圧入保持された前記磁石(不図示)の磁力を検出可能な磁気検出素子である第1及び第2のホール素子16,17が設けられている。又、回路基板15の下端部(リッド4の貫通孔4bに対向する端部)には内部コネクタ18が一体的に固定されている。更に、図4及び図5に示すように、回路基板15の裏面の幅方向両端部には、上下方向に長い樹脂製の位置決め部材21が取り付けられている。尚、図5に示すように、内部コネクタ18には、前記電動モータ13に接続される上下2本のモータ給電端子20が水平方向に突設されている。
【0037】
ところで、本実施の形態では、ケース3に形成された前記ロック部材収納部3Aと前記基板収納部3Bとを連通させる連通部3Eは、ドライバ7のアーム7A内に圧入された不図示の磁石と基板収納部3Bに収納された前記基板15との対向空間を形成している。そして、ウォーム14とリッド4との間及びロック部材6と基板15との間には樹脂製のカバー22,23がそれぞれ配設されており、これらのカバー22,23はリッド4や基板15側へのグリースの飛散を防ぐ機能を果たす。
【0038】
次に、電動ステアリングロック装置1の組付要領について説明する。
【0039】
電動ステアリングロック装置1の組み付けは、図7に示すようにケース3の上下を逆にし、該ケース3の下端開口部が上方を向くようにしてなされ、先ず、該ケース3の内部にはロック部材6やギヤ部材11、カバー23等が収容される。
【0040】
次に、図7に示すように回路基板15に電動モータ13を組み付けた後、該回路基板15をその上端部を下にしてケース3の下端開口部からケース3内に挿入する。具体的には、回路基板15の左右両端縁をケース3の基板保持溝3c(図6参照)に嵌め込むと、回路基板15の裏面の左右に取り付けられた位置決め部材21がケース3の各基板保持溝3cに嵌合し、回路基板15をそのまま押し下げれば、該回路基板15が基板保持溝3cに沿ってケース3内の基板収納部3B(図6参照)に収納される。
【0041】
上述のように回路基板15をケース3内の基板収納部3Bに収納した後、カバー22とスプリング12をギヤ11の下端に配置し、最後にケース3の下端開口部をリッド4によって閉塞する。即ち、リッド4をケース3の下端開口部に嵌め込み、ケース3の下端側部に形成された3つのピン孔3bからピン5を挿入し、各ピン5をリッド4のピン留め部4Aに形成されたピン挿通孔4cに圧入すれば、リッド4が図1〜図4に示すようにケース3に取り付けられてケース3の下端開口部がリッド4によって閉塞され、電動ステアリングロック装置1の組み付けが完了する。尚、このとき、電動モータ13をモータ収納部3Cに収納することによって、三角リブ3eと電動モータ13の出力軸13aが突出する正面部とが当接することによって三角リブ3eが変形し、電動モータ13のスラスト方向のガタツキが防がれる。これにより、電動モータ13は、内部コネクタ18のモータ給電端子20に接続されるため、この電動モータ13のガタツキが防がれる。
【0042】
上述のようにリッド4がケース3に取り付けられてケース3の下端開口部がリッド4によって閉塞された状態では、ケース3内に収納された回路基板15の下端に一体的に固定された内部コネクタ18がリッド4に形成された貫通孔4bを貫通してその先端部が図1及び図3に示すようにリッド4の底面から下方に突出する。そして、この内部コネクタ18には、車体に搭載された不図示の電源(バッテリ)や上位コントロールユニット(以下、「ECU」と称する)から延びるハーネス24の端部に接続された外部コネクタ25が図1に示すように下方から差し込まれて接続され、回路基板15に設けられた第1及び第2のホール素子16,17(図5参照)がハーネス24を介してECUに電気的に接続されるとともに、電動モータ13には不図示の電源(バッテリ)からハーネス24及びモータ給電端子20(図5参照)を経て電力が供給される。
【0043】
ここで、図1に示すように、前記ハーネス24はステアリングコラム51に沿って配索されており、その一部はステアリングコラム51にネジ26で固定された結束バンド27によって支持されている。そして、ハーネス24の結束バンド27を通過して電動ステアリングロック装置1方向(車両後方)へと延びる端部にはU字状に湾曲する湾曲部24Aが形成されている。即ち、結束バンド27を通過して車両後方へと延びるハーネス24の端部は、ステアリングコラム51部分から一旦立ち下がった後、U字状に折り返されて立ち上がり、その先端が外部コネクタ25に接続されている。
【0044】
次に、以上のように構成された電動ステアリングロック装置1の動作(ロック/アンロック動作)を図3に基づいて説明する。
【0045】
不図示のエンジンが停止している状態では、図3に示すように、ロック部材6のロックボルト8は上限のロック位置にあって、その上端部がケース3のロックボルト挿通孔3fから凹部3aに突出して図1に示すステアリングシャフト50に係合して該ステアリングシャフト50の回転をロックしており、このロック状態においては不図示のステアリングホイールを回転操作することができず、これによって車両の盗難が防がれる。尚、このとき、ロック部材6のアーム7Aに収容された磁石は、回路基板15に設けられた上方の第1のホール素子16の近傍に位置している。
【0046】
上記状態から運転者が不図示のエンジンスタートスイッチをON操作すると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してアンロック信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1の回路基板15に設けられた制御部は、電動モータ13に給電してこれを起動する。
【0047】
上述のように電動モータ13が起動されると、その出力軸13aの回転はウォーム14とウォームギヤ11aによって減速されつつ方向が直角に変換されてギヤ部材11に伝達され、該ギヤ部材11が回転されるため、該ギヤ部材11の内周に刻設された雌ネジ部11bに螺合する雄ネジ部7aが形成されたドライバ7がスプリング12の付勢力に抗して下動する。このようにドライバ7が下動すると、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が一体に下動する。
【0048】
而して、上述のようにロックボルト8が下動して下限のアンロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3fの内部に退避するため、ロックボルト8のステアリングシャフト50への係合が解除され、ステアリングシャフト50のロックが解除されてアンロック状態となり、運転者によるステアリングホイールの回転操作が可能となる。
【0049】
又、ドライバ7のアーム7Aが下動すると、その先端部に収容された磁石が回路基板15の下方の第2のホール素子17に近づき、該第2のホール素子17によって磁石の磁力が検出される。これによってロックボルト8がアンロック位置に移動したことが検出され、回路基板15の制御部が電動モータ13の駆動を停止するとともに、車体側のECUにアンロック完了信号を送信するためにアンロック状態が維持され、車両の走行が可能となる。
【0050】
そして、車両が停止し、運転者がエンジンスタートスイッチをOFF操作してエンジンを切ると、ECUがこれを検知して電動ステアリングロック装置1に対してロック信号を送信する。すると、電動ステアリングロック装置1の回路基板15に設けられた制御部は、電動モータ13に通電して該電動モータ13の出力軸13aを逆転させる。
【0051】
上述のように電動モータ13の出力軸13aが逆転されると、その回転はウォーム14とウォームギヤ11aを経てギヤ部材11に伝達され、該ギヤ部材11が逆転されるためにドライバ7が上動し、該ドライバ7に一体に形成されたアーム7Aとピン9によってドライバ7に連結されたロックボルト8が上動する。
【0052】
而して、上述のようにロックボルト8が上動して図3に示すように上限のロック位置に達すると、該ロックボルト8の上端部がケース3のロックボルト挿通孔3fから凹部3aに突出するため、ロックボルト8がステアリングシャフト50に係合し、ステアリングシャフト50の回転がロックされてステアリングホイールの回転操作が不可能となる。尚、ロックボルト8のステアリングシャフト50の係合溝への係合が良好に行われない場合には、該ロックボルト8に形成された長孔8a内をピン9が相対移動することができる範囲でロックボルト8がスプリング10の付勢力に抗して下動するため、ロックボルト8に過大な負荷が作用することがない。
【0053】
又、ドライバ7のアーム7Aが上動すると、その先端部に収容された磁石が回路基板15の上方の第1のホール素子16に近づき、該第1のホール素子16によって磁石の磁力が検出される。これによってロックボルト8がロック位置に移動したことが検出され、回路基板15の制御部が電動モータ13の駆動を停止するとともに、車体側のECUにロック完了信号を送信するため、図3に示すロック状態が維持され、これによって車両の盗難が防がれる。
【0054】
以上のように、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、当該電動ステアリングロック装置1をステアリングコラム51に取り付けた状態において、ハウジング2のケース3の下端開口部を覆うリッド4に貫通孔4bを形成し、この貫通孔4bを介して内部コネクタ18と外部コネクタ25との接続が可能となるよう構成したため、内部コネクタ18と外部コネクタ25が電動ステアリングロック装置1の下側に位置し、外部コネクタ25に連なるハーネス24に沿って水滴等が外部コネクタ25へと移動しても、該外部コネクタ25の上方に位置する内部コネクタ18に水滴等が達することがなく、電動ステアリングロック装置1に高い防水性が確保されてショート等による該電動ステアリングロック装置1の故障が防がれる。特に、本実施の形態では、内部コネクタ18に接続された外部コネクタ25から下方へと導出するハーネス24の一部に、上方に向かってU字状に湾曲する湾曲部24Aを形成したため、自重によってハーネス24に沿って湾曲部24Aへと移動した水滴等が湾曲部24Aよりも上方に位置する外部コネクタ25及び内部コネクタ18に重力に抗して達することがなく、水滴等はハーネス24の湾曲部24Aから落下するために電動ステアリングロック装置1に高い防水性が確保される。
【0055】
又、本発明に係る電動ステアリングロック装置1においては、ハウジング2のリッド4に貫通孔4bを形成したため、従来のようにケース3に大きな切欠部を設ける必要がなく、切欠部によるケース3の強度低下が防がれる。
【0056】
而して、以上の効果は内部コネクタ18の配置を変更するだけの簡単な構成によって得られ、高価な防水コネクタ等を使用する必要がないため、電動ステアリングロック装置1のコストアップを抑えることができる。
【0057】
又、本実施の形態では、ハウジング2のケース3内に形成された基板収納部3Bに収納された回路基板15のリッド4の貫通孔4bに対向する端部に内部コネクタ18を一体的に固定したため、回路基板15をケース3の下端開口部からケース3内へと挿入してこれを基板収納部3Bに収納した後、ケース3の下端開口部をリッド4で覆うだけで内部コネクタ18とリッド4の貫通孔4bとを対応させてリッド4と内部コネクタ18を容易に組み付けることができ、これらの組付性が高められる。
【0058】
更に、前述のように本発明に係る電動ステアリングロック装置1に高い防水性が確保される結果、内部コネクタ18とリッド4の貫通孔4bとの間の隙間にパッキン等のシール部材を設ける必要がなく、部品点数を削減して構造の単純化とコストダウンを図ることができる。
【0059】
その他、本実施の形態では、リッド4の貫通孔4bを非切欠き孔(閉じた孔)としたため、リッド4に応力集中を招く切欠きが不要となり、リッド4に高い強度を確保することができるという効果も得られる。
【0060】
尚、以上の実施の形態では、内部コネクタ18の一部がリッド4の貫通孔4bを貫通して外部に露出するよう構成したが、内部コネクタ18がリッド4の貫通孔4bを貫通せず、外部コネクタ25がリッド4の貫通孔4bを貫通して内部コネクタ18に接続される構成や、内部コネクタ18がハウジング2の外部に配置され、該内部コネクタ18への連結部がリッド4の貫通孔4bを貫通する構成を採用しても良い。
【0061】
又、以上の実施の形態においては、ロック部材6を移動させるための電動アクチュエータとして電動モータ13を採用したが、これに限定されるものではなく、例えば電磁ソレノイドによってロック部材6を移動させるものを電動アクチュエータとして使用しても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 電動ステアリングロック装置
2 ハウジング
3 ケース
3A ケースのロック部材収納部
3B ケースの基板収納部
3C ケースのモータ収納部
3D ケースのモータ出力軸配設部
3E ケースの連通部
3F ケースのガイドブロック
3a ケースの凹部
3b ケースのピン孔
3c ケースの基板保持溝
3d ケースの受け面
3e ケースの三角リブ
3f ケースのロックボルト挿通孔
4 リッド
4A リッドのピン留め部
4B リッドのカバー押さえ部
4C リッドのギヤ保持筒部
4D リッドのモータ押さえ部
4E リッドの押圧部
4a リッドの基板押さえ部
4b リッドの貫通孔
4c リッドのピン挿通孔
4d リッドのスプリング受け
5 ピン
6 ロック部材
7 ドライバ
7A ドライバのアーム
7B ドライバの回り止め部
7a ドライバの雄ネジ部
7b ドライバのピン挿通孔
8 ロックボルト
8a ロックボルトの長孔
9 ピン
10 スプリング
11 ギヤ部材
11a ウォームギヤ
11b ギヤ部材の雌ネジ部
12 スプリング
13 電動モータ(電動アクチュエータ)
13a 電動モータの出力軸
14 ウォーム
15 回路基板
16,17 ホール素子
18 内部コネクタ
20 モータ給電端子
21 位置決め部材
22,23 カバー
24 ハーネス
24A ハーネスの湾曲部
25 外部コネクタ
26 ネジ
27 結束バンド
50 ステアリングシャフト
51 ステアリングコラム
52 ボルト
53 ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のステアリングシャフトに係合することによってステアリングホイールの回転を阻止するロック部材と、
該ロック部材を移動させるための駆動力を発生する電動アクチュエータと、
該電動アクチュエータに電力を供給するための外部電源との電気的接続手段である内部コネクタと、
前記ステアリングシャフトを回転可能に収納するステアリングコラムに固定された状態で下方に向かって開口する開口部を有するケースと該ケースの前記開口部を閉塞するリッドを備え、内部に少なくとも前記ロック部材と前記電動アクチュエータを収納して成るハウジングと、
を備えた電動ステアリングロック装置において、
前記ハウジングのリッドに、前記内部コネクタと前記外部電源に連なる外部コネクタとの接続を可能とする貫通孔を形成したことを特徴とする電動ステアリングロック装置。
【請求項2】
車両取付状態において、前記内部コネクタに接続された前記外部コネクタから下方へと導出するハーネスの一部に、上方に向かってU字状に湾曲する湾曲部を形成したことを特徴とする請求項1記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項3】
前記ハウジング内に、前記電動アクチュエータを制御するための電気回路が配設された回路基板を前記ケースの開口部から挿入可能な収納部を形成し、
前記内部コネクタを、前記回路基板の前記リッドの貫通孔に対向する端部に一体的に固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の電動ステアリングロック装置。
【請求項4】
前記リッドの貫通孔を非切欠き孔としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電動ステアリングロック装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6542(P2013−6542A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141320(P2011−141320)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)