説明

電動パワーステアリング装置

【課題】トルクセンサの検出動作に悪影響を与える導電性異物等の侵入を安価な構造で確実に防止することができる電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】ユニット係合部20bの車幅方向を向く側面に、ステアリングシャフトの軸方向に沿う第1係合溝33aを形成し、ユニット係合部20bの車両前後方向を向く側面に、車幅方向に延在する第2係合溝を形成する。第1係合溝33aにカバー板部28の切欠き部28aを形成している端板部35b,36bを嵌め込みながらカバーを車両前後方向にスライド移動することで、端板部が前記第1係合溝33a及び第2係合溝に嵌まり込んだ状態で、カバー板部が開口部を囲む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速ギヤボックス内の減速機構を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動パワーステアリング装置として、例えばラック軸が摺動自在に収容あるいは装着されるラックケース又は減速ギヤボックスの一部に電動モータが収容され、この電動モータを駆動制御する制御基板が収容されるハウジングがラックケース又は減速ギヤボックスに形成され、ハウジングの開口に対向する底部に形成された取付けボスに前記開口から挿入された制御基板が当接されると、電動モータからハウジング内に突設されたモータ側接続端子に制御基板に設けられた基板接続端子が互いに接触して電気的に接続される電動パワーステアリング装置が提案されており、電動モータと制御基板との間に電気的接続線を介挿することなく直付けすることにより、電動モータと制御基板との間で配線長を最短として電気ノイズが乗ることを防止することができるとともに、配線抵抗を少なくして電気的損失を低減することができる。
【0003】
しかし、電動モータを制御する制御基板にはステアリングシャフトに伝達されるトルクを検出するトルクセンサのトルク検出値を入力する必要があり、このトルクセンサは、通常ラックケース又は減速ギヤボックスより離れたステアリングホイール側に設置されており、このトルクセンサと制御基板との間に長い接続ケーブルを設ける必要があり、この接続ケーブルに電気ノイズが乗るとともに、電気抵抗が大きくなることで電気的損失が大きくなる。
【0004】
そこで、減速ギヤボックスの外周に取付け面を形成し、この取付け面に制御基板を組込んだ制御ユニットを装着する構造とし、減速ギヤボックスに内装したトルクセンサに接続されている複数の外部接続端子を、トルクセンサを収納している位置と連通して取付け面で開口するように設けた開口部から外部に突出させ、取付け面に装着する制御ユニットの制御基板に設けた複数のスルーホールに挿通し、両者を半田付けすることで電気的に直接接続する構造とし、制御基板とトルクセンサとの間の接続距離を最短として両者間の電気ノイズ、電気的損失を防止する電動パワーステアリング装置も開発されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−023459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、制御ユニットが装着される減速ギヤボックスの取付け面に、トルクセンサを収納している位置と連通する開口部を設け、この開口部から制御基板に接続するトルクセンサの外部接続端子を突出させて制御基板のスルーホールに接続する構造とすると、減速ギヤボックスの取付け面と制御ユニットの装着面との間の隙間から導電性異物が侵入してトルクセンサの何れかの外部接続端子同士に接触し、トルクセンサが誤ったトルク検出値を出力して電動モータが誤った駆動制御を行なうおそれがある。
ここで、減速ギヤボックスの取付け面と制御ユニットの装着面との間に隙間が生じないように取付け面及び装着面を高精度の面に形成することは製造コストの面で困難である。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、ギヤボックス取付け面からトルクセンサの外部接続端子を外部に突出させて制御ユニットの制御基板に接続し、ギヤボックス取付け面及び制御ユニットとを対向させる構造としても、トルクセンサの検出動作に悪影響を与える導電性異物等の侵入を安価な構造で確実に防止することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1記載の電動パワーステアリング装置は、操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速ギヤボックス内の減速機構を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、前記電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを備え、前記減速ギヤボックスの外周から突出して形成したユニット係合部に、前記制御ユニットの前記制御基板を収容するカバーのカバー板部を近接させて該制御ユニットを装着するとともに、前記減速ギヤボックスに内装したトルクセンサに接続している複数の外部接続端子を前記ユニット係合部の上部に形成した開口部から突出させ、これら複数の外部接続端子の夫々を前記カバー板部に形成した切欠き部に通過させ、前記制御基板に設けた複数の基板側端子に電気的に直接接続してなる電動パワーステアリング装置において、前記ユニット係合部の車幅方向を向く側面に、前記ステアリングシャフトの軸方向に沿う第1係合溝を形成し、前記ユニット係合部の車両前後方向を向く側面に、車幅方向に延在する第2係合溝を形成し、前記第1係合溝に前記カバー板部の前記切欠き部を形成している端板部を嵌め込みながら前記カバーを車両前後方向にスライド移動することで、前記端板部が前記第1係合溝及び第2係合溝に嵌まり込んだ状態で、前記カバー板部が前記開口部を囲むようにした。
【0009】
この発明によると、ユニット係合部の側面に形成した第1係合溝及び第2係合溝に、カバーの切欠き部を形成している端板部が嵌まり込んで係合し、カバー板部で開口部を囲っているので、減速ギヤボックスの外周側で発生した導電性異物の侵入が遮断される。また、大きな異物(例えばネジ、小石など)が開口部側に入り込もうとするのを防止することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記第1係合溝及び前記第2係合溝と前記端板部との一方に、互いが嵌め込み係合したときに、一方が他方に対して押圧する押圧手段を設けた。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の電動パワーステアリング装置において、前記押圧手段は、前記端板部の一部から突出し、前記第1係合溝及び前記第2係合溝の内壁を押圧しながら当接する突起部である。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載の電動パワーステアリング装置において、前記押圧手段は、前記第1係合溝及び前記第2係合溝の内壁の一部から突出し、前記端板部の端面を押圧しながら当接する突起部である。
これら請求項2から4の発明によると、減速ギヤボックスに装着されている電動モータから制御ユニットにモータ振動が伝達されても、押圧手段を介してカバーとユニット係合部とが係合しているので、カバーにビビリ音等の不快な音が発生するのが防止される。
【0012】
さらに、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置において、前記第2係合溝は、前記ユニット係合部の車両後方を向く側面に形成されており、前記カバーは車両後方から移動させて前記ユニット係合部に前記カバー板部を係合するようにした。
この発明によると、カバーを、取付けスペースが広い車両後方側からユニット係合部に係合させることができるので、制御ユニットの組付け性が良好となる。
【0013】
また、電動パワーステアリング装置のステアリングコラムは、車両後方に向けて上り傾斜を付けて配置されており、カバー板部に付着した水滴が、車両前方のユニット係合部20bに向けて流れていく場合があるが、本発明では、カバー板部の切欠き部を形成している端板部が、開口部が開口している位置より下方のユニット係合部の側面(第1係合溝及び第2係合溝の係合位置)で係合しており、端板部まで伝わった水滴が、側面の上部に上がって開口部に流れ込むことがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電動パワーステアリング装置によれば、ユニット係合部の側面に形成した第1係合溝及び第2係合溝に、カバーの切欠き部を形成している端板部が嵌まり込んで係合し、カバー板部で開口部を囲っているので、導電性異物や、大きな異物の侵入を安価な構造で確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置の一実施形態を右ハンドル車に適用した場合の右方向から示した斜視図である。
【図2】電動パワーステアリング装置を構成する減速ギヤボックスの要部を示す縦断面図である。
【図3】制御ユニットを装着する前の減速ギヤボックスを車幅方向から示した斜視図である。
【図4】減速ギヤボックスのユニット係合部を拡大して示した図である。
【図5】図4のA−A線矢視断面図である。
【図6】図4のB−B線矢視断面図である。
【図7】制御ユニットの分解斜視図である。
【図8】図7のC−C線矢視断面図である。
【図9】図7のD−D線矢視断面図である。
【図10】本発明に係る第1実施形態のカバー板部とユニット係合部との当接状態を車両後方から示した概略図である。
【図11】本発明に係る第1実施形態のカバー板部とユニット係合部との当接状態を車幅方向から示した概略図である。
【図12】本発明に係る第2実施形態のカバー板部に形成した開口部の形状を示す図である。
【図13】本発明に係る第3実施形態のユニット係合部の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という。)を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電動パワーステアリング装置を車両前方から示した斜視図である。
図1の符号1はコラム型の電動パワーステアリング装置であり、ステアリングホイール(図示せず)に連結されたステアリングシャフト2を回転自在に内装するステアリングコラム3に、減速ギヤボックス4が連結され、この減速ギヤボックス4に、軸方向がステアリングシャフト2の軸方向と直交する方向に延長された電動モータ5が配設されている。
【0017】
ステアリングコラム3は、内管3a及び外管3bの2重管構造となっている。そして、ステアリングコラム3の内管3a及び減速ギヤボックス4が、アッパ取付けブラケット6及びロア取付けブラケット7によって車体側に取付けられている。
ロア取付けブラケット7は、車体側部材に取付けられる取付け板部7aと、この取付け板部7aの下面から左右方向に所定間隔を保って平行に延長する一対の支持板部7bとで形成されている。そして、支持板部7bの下端が、減速ギヤボックス4の車体前方側に一体形成された支持部4bに枢軸7cを介して回動自在に連結されている。
【0018】
アッパ取付けブラケット6は、一対のフランジ6aと、これらフランジ6aの下端に固定されて左右(車幅)方向に離間している1対の支持板部6cと、これら一対の支持板部6cに形成されたステアリングコラム3の外管3bを支持するチルト機構6dとを備えている。フランジ6aにはスリット6a1が形成されており、このスリット6a1に離脱用カプセル6bが嵌め込まれている。この離脱用カプセル6bにはボルト貫通孔6b1が形成されており、離脱用カプセル6bの下方からボルト貫通孔6b1に貫通した固定ボルト(不図示)を車体側部材(不図示)にねじ込むことで、フランジ6aが車体側部材に取付けられている。
【0019】
そして、チルト機構6dのチルトレバー6gを回動させ、外管3bの支持状態を解除することにより、ステアリングコラム3をロア取付けブラケット7の枢軸7cを中心として上下にチルト位置調整可能とされている。
ステアリングシャフト2は、図2に示すように、上端がステアリングホイールに連結される入力軸2aと、この入力軸2aの下端でトーションバー2bを介して連結されたトーションバー2bを覆う出力軸2cとで構成されている。
【0020】
減速ギヤボックス4は、高熱伝導性を有する材料例えばアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金の何れか1つを例えばダイキャスト成型することにより形成されている。減速ギヤボックス4は、図2に示すように、電動モータ5の出力軸(不図示)に連接されたウォーム11を収納するウォーム収納部12と、このウォーム収納部12の下側にその中心軸と直交する中心軸を有しウォーム11に噛合するウォームホイール13を収納するウォームホイール収納部14と、このウォームホイール収納部14の車体後方側に一体に同軸的に連結されたトルクセンサ15を収納するトルクセンサ収納部16と、ウォーム収納部12の開放端面に形成された電動モータ5を取付けるモータ取付け部17と、トルクセンサ収納部16の車体後端に形成された筒状のコラム取付け部18と、ウォーム収納部12とウォームホイール収納部14の一部に跨がって形成された制御ユニット19を装着する制御ユニット装着部20とを備えている。そして、減速ギヤボックス4のコラム取付け部18に、ステアリングコラム3の車体前端部が外嵌されて連結されている。
【0021】
ここで、トルクセンサ15は、図2に示すように、ステアリングシャフト2の入力軸2a及び出力軸2c間の捩じれ状態を磁気的に検出してステアリングシャフト2に伝達された操舵トルクを一対の検出コイル15a,15bで検出するように構成され、これら一対の検出コイル15a,15bの巻き始め及び巻き終わりに夫々ステアリングコラム3の中心軸と直交する方向に平行に外部に突出する外部接続端子15c,15d及び15e,15fが接続され、これら外部接続端子15c〜15fの突出部が中央部でステアリングコラム3の中心軸と平行に折り曲げられてL字状に形成されている。
【0022】
電動モータ5は、図1に示すように、その取付けフランジ5bに近い位置における制御ユニット装着部20に装着された制御ユニット19に近接対向する位置に接続端子(不図示)が形成されている。そして、具体的には示さないが、接続端子の夫々は、底部中央にアーマチュア挿通孔を有する合成樹脂製のブラシ支持体内に互いに絶縁されて配設され、2組のブラシに個別に接続された円弧状の接続端子の互いに対向する一端に一体に形成されている。
【0023】
減速ギヤボックス4に形成された制御ユニット装着部20は、図3に示すように、ウォーム収納部12とその下側のウォームホイール収納部14の上部側とで形成した平坦取付け面20aと、トルクセンサ収納部16の外周上面から略直方体形状に突出して形成されたユニット係合部20bとを備えている。
ユニット係合部20bの左右方向の中央部には、トルクセンサ15を収納しているトルクセンサ収納部16の内部空間に連通する開口部20dが形成されており、この開口部20dを通過してトルクセンサ15の外部接続端子15c〜15fがユニット係合部20bの上方に突出して設けられている。
【0024】
また、モータ取付け部17の車両後端面にも、平坦取付け面20aと平行でこの平坦取付け面20aより車両後方側の位置に幅狭のフレーム取付け面20cが形成されている。
ここで、図4から図6で示すように、トルクセンサ収納部16の外周上面から略直方体形状に突出している制御ユニット装着部20のユニット係合部20bは、車幅方向を向く2つの側面に、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って一対の第1係合溝33aが形成されているとともに、車両後方を向く側面に、車幅方向に延在して一対の第1係合溝33aに連続する第2係合溝33bが形成されている。
【0025】
一方、制御ユニット装着部20に装着される制御ユニット19は、図7に示すように、放熱プレート21と、パワー基板22と、長方形枠状のフレーム23と、制御基板24と、カバー26とを備えている。
放熱プレート21は、制御ユニット装着部20の平坦取付け面20aに放熱グリースを介して直接固定される。パワー基板22は、電動モータ5を駆動制御する電界効果トランジスタ等のパワースイッチング素子で構成されるHブリッジ回路やこのHブリッジ回路のパワースイッチング素子を駆動するパルス幅変調回路等の集積回路22a,22bが実装される。
【0026】
制御基板24は、フレーム23の正面に取付けられ、トルクセンサ15の外部接続端子15c〜15fを直接挿通するスルーホール24a〜24dが穿設され、トルクセンサ15からのトルク検出値や図示しない車速センサからの車速検出値に基づいて操舵補助電流指令値を算出し、この操舵補助電流指令値と電動モータ5に出力するモータ電流の検出値とに基づいて電流フィードバック制御を行ってパワー基板22のパルス幅変調回路への電圧指令値を算出することにより、電動モータ5で発生させる操舵補助力を制御するマイクロコントロールユニット(MCU)やその周辺機器等のほか、コンデンサ、コイル、リレー等のディスクリート部品24eが実装される。
【0027】
フレーム23はパワー基板22を囲繞する部材であって、長方形枠状のフレーム本体23aと、このフレーム本体23aの左端に形成され、減速ギヤボックス4のフレーム取付け面に固定される取付け板部23bと、この取付け板部23b上に固定され電動モータ5の接続端子に電気的に接続する端子台23cと、フレーム本体23aの右端に固定された雌型コネクタ45とを備えている。雌型コネクタ45は、図示しないがバッテリに電源用雄型コネクタを介して接続される電源コネクタ45aと、車体の各部の制御機器とのデータの授受を行うCANなどのネットワークに接続する信号コネクタ45bとを備えている。パワー基板22及び制御基板24は、接続端子22cを介して接続されている。
【0028】
カバー26は、電磁波遮断、内部部品の保護が可能な金属製の部材であり、図7に示すように、制御基板24を覆う矩形状の第1板部27と、この第1板部27の長尺方向の縁部から直交して延在している第2及び第3板部28,29と、第1板部27の短尺方向の縁部から第2及び第3板部28,29と同一方向に延在している第4及び第5板部30,31と、第2板部28、第4及び第5板部30,31の端部からカバー外方に直交する方向に形成されているネジ挿通孔を有する複数の固定片32とを備えている。また、第4板部30には、雌型コネクタ45の外周を囲む切欠き30aが形成されている。
第2板部28の長手方向中央には、門形状に切り欠いた切欠き部28aが形成されている。
【0029】
図8及び図9は、前述した切欠き部28aの周縁形状を詳細に示したものであり、切欠き28aの周縁には、カバー26の外側に突出する段差部34が形成されている。
すなわち、図8に示すように、第2板部28の長手方向の両側から外側に突出している段差部34は、所定の傾斜角度を付けて外側に突出している傾斜板部35a、36aと、傾斜板部35a,36aの先端から第2板部28と平行に延在して切欠き部28aを形成する端板部35b,36bとで構成されている。
また、図9に示すように、第1板部27側から外側に突出している段差部34は、所定の傾斜角度を付けて外側に突出している傾斜板部37aと、傾斜板部37aの先端から第2板部28と平行に延在して切欠き部28aを形成する端板部37bとで構成されている。
【0030】
そして、制御ユニット19の放熱プレート21及びフレーム23を減速ギヤボックス4の制御ユニット装着部20に固定し、減速ギヤボックス4の制御ユニット装着部20の開口部20dから突出したトルクセンサ15の外部接続端子15c〜15f(図3参照)を制御ユニット19の制御基板24のスルーホール24a〜24d(図7参照)に直接挿通して半田付けする。その後、カバー26を車両後方側から車両前方に移動させながら、カバー26を制御ユニット装着部20に固定して制御ユニット19を装着する。また、フレーム23の取付け板部23bに固定されている端子台23cと、電動モータ5の接続端子とを電気的に接続する。なお、電気的に接続された端子台23c及び電動モータ5の接続端子は、図1の符号27で示す合成樹脂製の端子カバーで覆われている。
なお、本発明のカバー板部が第2板部28に対応し、本発明の端板部が端板部35a,36b,37bに対応している。
【0031】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
車体の図示しないイグニッションスイッチをオン状態としてパワー基板22及び制御基板24にバッテリから電力を供給すると、マイクロコントロールユニット(MCU)によって操舵補助制御処理が実行されて、トルクセンサ15及び図示しない車速センサの検出値に基づいて操舵補助電流指令値が算出される。この操舵補助電流指令値とモータ電流検出部で検出したモータ電流とに基づいて電流フィードバック処理を実行して、電圧指令値を算出する。この電圧指令値をパワー基板22のゲート駆動回路に供給してHブリッジ回路を制御することにより、電動モータ5にモータ駆動電流が流れて電動モータ5を正転又は逆転方向に必要とする操舵補助力を発生するように駆動する。
【0032】
このため、電動モータ5からステアリングホイールの操舵トルクに応じた操舵補助力が発生され、この操舵補助力がウォーム11及びウォームホイール13を介してステアリングシャフト2の出力に伝達されることにより、ステアリングホイールを軽い操舵力で操舵することができる。
ここで、制御ユニット19を装着する際は、前述したように制御ユニット19の他の部品(放熱プレート21、フレーム23、制御基板24など)を制御ユニット装着部20に装着した後に、カバー26を車両後方側から車両前方に移動させて制御ユニット装着部20に固定する。
【0033】
この際、カバー26(第2板部28)の車幅方向を向く切欠き28aの周縁に形成した端板部35b、36bが、減速ギヤボックス4のユニット係合部20bの車幅方向を向く2つの側面に形成した一対の第1係合溝33aに嵌まり込んで車両前方にスライド移動する(図10参照)。そして、端板部35b、36bの移動方向の先端が一対の第1係合溝33aの車両前方の終端に位置したときに、カバー26(第1板部37側)の切欠き28aの周縁に形成されて車両前方を向いている端板部37bが、ユニット係合部20bの車両後方を向く側面に形成した第2係合溝33bに嵌まり込む(図11参照)。
【0034】
開口部20dにはトルクセンサ15の外部接続端子15c〜15fが通過しており、減速ギヤボックス4の外周側で発生した導電性異物が外部接続端子15c〜15fを配置している開口部20d側に侵入しようとしても、カバー26の切欠き部28aの周縁に形成した端板部35b、36b,37bが、ユニット係合部20bの側面に形成した一対の第1係合溝33a、第2係合溝33bに嵌まり込みながら開口部20dを囲っているので、導電性異物の侵入が遮断される。
したがって、トルクセンサ15の複数の外部接続端子15c〜15fのいずれかの対同士に導電性異物が接触することがなく、トルクセンサ15は正常なトルク検出値を出力して電動モータ5の正常な駆動制御を行なうことができる。
【0035】
また、カバー26の切欠き部28a周縁の端板部35b、36b,37bが、ユニット係合部20bの一対の第1係合溝33a、第2係合溝33bに嵌まり込んで開口部20dを囲っていることから、大きな異物(例えばネジ、小石など)が開口部20d側に入り込もうとするのを防止することができる。
さらに、カバー26が、ユニット係合部20bの3方向(車幅方向の2方向及び車両後方側の1方向)に対して係合しているので、減速ギヤボックス4の制御ユニット装着部20に対するカバー26の位置ずれを防止することができる。
【0036】
また、カバー26を、取付けスペースが広い車両後方側からユニット係合部20bに係合させることができるので、制御ユニット19の組付け性も容易に行なうことができる。
また、電動パワーステアリング装置のステアリングコラム3は、車両後方に向けて上り傾斜を付けて配置されており、カバー26の下面(第2板部28)に付着した水滴が、車両前方のユニット係合部20bに向けて流れていく場合があるが、本実施形態では、カバー26の端板部35b、36b,37bが、開口部20dが開口している位置より下方のユニット係合部20bの側面(第1係合溝33a,第2係合溝33b)で係合しており、端板部35b、36b,37bまで伝わった水滴が、側面の上部に上がって開口部20dに流れ込むことがない。
【0037】
図12は、本発明に係る第2の実施形態を示すものである。
本実施形態は、カバー26(第2板部28)に形成した切欠き部28aの形状が、図7及び図8で示したものと異なっている。
本実施形態は、第2板部28の長手方向に形成した端板部35b,36b側の切欠き部28aの一部に突起部38a,38bが形成され、第1板部27側に形成した端板部37b側の切欠き部28aの一部に突起部38cが形成されている。
【0038】
一方、トルクセンサ収納部16の外周上面から略直方体形状に突出している制御ユニット装着部20のユニット係合部20bは、図4から図6で示した構造と同様に、車幅方向を向く2つの側面に、ステアリングシャフト2の軸方向に沿って一対の第1係合溝33aが形成され、車両後方を向く側面に、車幅方向に延在して一対の第1係合溝33aに連続する第2係合溝33bが形成されている。
【0039】
本実施形態においては、カバー26の切欠き28aを形成している端板部35b、36bが、ユニット係合部20bの車幅方向を向く一対の第1係合溝33aに嵌まり込み、カバー26の切欠き28aを形成して車両前方を向く端板部37bが、ユニット係合部20bの車両後方を向く第2係合溝33bに嵌まり込むと、端板部35b,36b側の突起部38a,38bが一対の第1係合溝33aの内壁を押圧し、端板部37b側の突起部38cが第2係合溝33bの内壁を押圧した状態でカバー26が制御ユニット装着部20に固定される。
【0040】
したがって、本実施形態は、カバー26の切欠き部28aと、ユニット係合部20aの一対の第1係合溝33a,第2係合溝33bとが係合する際のガタツキが防止されるので、減速ギヤボックス4に装着されている電動モータ5から制御ユニット19にモータ振動が伝達されても、カバー26にビビリ音等の不快な音が発生するのを防止することができる。
【0041】
さらに、図13は、本発明に係る第2の実施形態を示すものである。
本実施形態は、制御ユニット装着部20のユニット係合部20bの形状が、図4及び図6で示したものと異なっている。
本実施形態は、ユニット係合部20bの車幅方向を向く2つの側面に形成したステアリングシャフト2の軸方向に沿って延在する一対の第1係合溝33aの内壁の一部に突起部39aが形成され、車両後方を向く側面に形成され、車幅方向に延在して一対の第1係合溝33aに連続する第2係合溝33bの内壁の一部に突起部39bが形成されている。
【0042】
一方、カバー26(第2板部28)に形成した切欠き部28aの形状は、図7及び図8で示したものと同様である。
本実施形態においては、カバー26の切欠き28aを形成している端板部35b、36bが、ユニット係合部20bの車幅方向を向く一対の第1係合溝33aに嵌まり込み、カバー26の切欠き28aを形成して車両前方を向く端板部37bが、ユニット係合部20bの車両後方を向く第2係合溝33bに嵌まり込むと、一対の第1係合溝33aの内壁に形成した突起部39aが端板部35b,36bを押圧し、第2係合溝33bの内壁に形成した突起部39bが端板部35cを押圧した状態でカバー26が制御ユニット装着部20に固定される。
【0043】
したがって、本実施形態も、カバー26の切欠き部28aと、ユニット係合部20aの一対の第1係合溝33a,第2係合溝33bとが係合する際のガタツキが防止されるので、減速ギヤボックス4に装着されている電動モータ5から制御ユニット19にモータ振動が伝達されても、カバー26にビビリ音等の不快な音が発生するのを防止することができる。
なお、上述した実施形態においては、電動モータ5、制御ユニット19及び雌型コネクタ45がステアリングコラム3の中心軸と直交する線に沿って一直線に配置されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ステアリングコラム3の中心軸と交差する線に沿って一直線に配置するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、電動モータ5としてブラシモータを適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラシレスモータを適用するようにしてもよく、この場合には、接続端子5c,5dを各相の励磁コイルの給電側に接続すると共に、パワー基板23にブラシレスモータを駆動する例えば電界効果トランジスタ(FET)を有するインバータ回路及びインバータ回路の電界効果トランジスタのゲートをパルス幅変調信号で駆動するゲート駆動回路とを実装すればよい。
【0045】
さらに、上記実施形態においては、本発明を右ハンドル車に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、左ハンドル車に適用する場合には、減速ギヤボックス4、電動モータ5及び制御ユニット19の配置をステアリングコラム3の中心軸を通る垂直面を挟んで面対称に即ち制御ユニット19の右側に電動モータ5を配置し、制御ユニット19の雌型コネクタ45及び端子台24cを左側に配置すればよく、さらには電動モータ5を車両外側に、雌型コネクタ45及び端子台24cを車両内側に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…電動パワーステアリング装置、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…トーションバー、2c…出力軸、3…ステアリングコラム、3a…内管、3b…外管、4…減速ギヤボックス、4b…支持部、5…電動モータ、5b…フランジ、6…アッパ取付けブラケット、6a…フランジ、6a1…スリット、6b…離脱用カプセル、6b1…ボルト貫通孔、6c…支持板部、6d…チルト機構、6g…チルトレバー、7…ロア取付けブラケット、7a…取付け板部、7b…支持板部、7c…枢軸、11…ウォーム、12…ウォーム収納部、13…ウォームホイール、14…ウォームホイール収納部、15…トルクセンサ、15a,15b…検出コイル、15c〜15f…外部接続端子、16…トルクセンサ収納部、17…モータ取付け部、18…コラム取付け部、19…制御ユニット、20…制御ユニット装着部、20a…平坦取付け面、20b…ユニット係合部、20c…フレーム取付け面、20d…開口部、21…放熱プレート、22…パワー基板、22a,22b…集積回路、22c…接続端子、23…フレーム、23a…フレーム本体、23b…取付け板部、23c…端子台、24…制御基板、24a〜24d…スルーホール、24e…ディスクリート部品、26…カバー、27…第1板部、28…第2板部(カバー板部)、28a…切欠き部、29…第3板部、28a…切欠き部、30…第4板部、31…第5板部、32…固定片、33a…第1係合溝、33a…第2係合溝、34…段差部、35a,36a,37a…傾斜板部、35b,36b,37b…端板部、38a,38b,38c,39a,39b…突起部、45a…電源コネクタ、45b…信号コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵トルクが伝達されるステアリングシャフトに減速ギヤボックス内の減速機構を介して操舵補助力を伝達する電動モータと、前記電動モータを駆動制御する制御回路を実装した制御基板を含む制御ユニットとを備え、前記減速ギヤボックスの外周から突出して形成したユニット係合部に、前記制御ユニットの前記制御基板を収容するカバーのカバー板部を近接させて該制御ユニットを装着するとともに、前記減速ギヤボックスに内装したトルクセンサに接続している複数の外部接続端子を前記ユニット係合部の上部に形成した開口部から突出させ、これら複数の外部接続端子の夫々を前記カバー板部に形成した切欠き部に通過させ、前記制御基板に設けた複数の基板側端子に電気的に直接接続してなる電動パワーステアリング装置において、
前記ユニット係合部の車幅方向を向く側面に、前記ステアリングシャフトの軸方向に沿う第1係合溝を形成し、前記ユニット係合部の車両前後方向を向く側面に、車幅方向に延在する第2係合溝を形成し、
前記第1係合溝に前記カバー板部の前記切欠き部を形成している端板部を嵌め込みながら前記カバーを車両前後方向にスライド移動することで、前記端板部が前記第1係合溝及び第2係合溝に嵌まり込んだ状態で、前記カバー板部が前記開口部を囲むようにしたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】
前記第1係合溝及び前記第2係合溝と前記端板部との一方に、互いが嵌め込み係合したときに、一方が他方に対して押圧する押圧手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項3】
前記押圧手段は、前記端板部の一部から突出し、前記第1係合溝及び前記第2係合溝の内壁を押圧しながら当接する突起部であることを特徴とする請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、前記第1係合溝及び前記第2係合溝の内壁の一部から突出し、前記端板部の端面を押圧しながら当接する突起部であることを特徴とする請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
【請求項5】
前記第2係合溝は、前記ユニット係合部の車両後方を向く側面に形成されており、前記カバーは車両後方から移動させて前記ユニット係合部に前記カバー板部を係合するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−51414(P2012−51414A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193772(P2010−193772)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】