説明

電動パーキングブレーキ手動解除機構

【課題】輪留めを取り出すことなく工具挿入経路へ工具を挿入することを阻止する。
【解決手段】電動パーキングブレーキ手動解除機構10において、輪留め取り付け機構17は、電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路Xの工具の挿入を阻止するよう輪留め16を取り付ける。輪留め取り付け機構17は、第1プレート18および第2プレート20を有する。第1プレート18および第2プレート20は、工具挿入経路Xの上方に輪留め16が配置されるよう、工具挿入経路Xの上方にて輪留め16を係止する。輪留め16には、電動パーキングブレーキの制動力の解除作業を担当する作業者に輪留めの使用を喚起する内容の文章が記載された注意喚起ラベル22が貼られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パーキングブレーキ手動解除機構に関し、特に、工具を用いて手動で電動パーキングブレーキの制動力を解除するための電動パーキングブレーキ手動解除機構に関する。
【背景技術】
【0002】
電動パーキングブレーキを装備した車両は、例えばバッテリに蓄えられた電力が消失するバッテリあがり、パーキングブレーキを作動、停止させるパーキングブレーキスイッチの故障、パーキングブレーキを駆動するパーキングブレーキアクチュエータの故障などが発生する場合がある。パーキングブレーキによって車輪に制動力が与えられている状態でこれらが発生すると、もはや電動パーキングブレーキの通常の操作では制動力を解除することが困難となる。このため、一般的に電動パーキングブレーキは、工具を用いて手動で制動力が解除できるよう設けられている。このとき、運転者不在で電動パーキングブレーキの解除が可能となるため、車輪には輪留めをする必要がある。このため、例えばサイドブレーキをかけると警報を運転者に発し、車両内に格納された車止めを取り出すと警報が止まる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、車輪止めに工具収納部を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−312455号公報
【特許文献2】実開平05−086706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献に記載された技術では、輪留めを取り出さなくても、電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路へ工具を挿入することが可能である。このため、輪留めを取り出すことなく工具挿入経路へ工具を挿入することを阻止する新たな技術が求められている。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、輪留めを取り出すことなく工具挿入経路へ工具を挿入することを阻止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電動パーキングブレーキ手動解除機構は、電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路への工具の挿入を阻止するよう輪留めを取り付ける輪留め取り付け機構を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば輪留めを取り出すことなく工具挿入経路へ工具を挿入することを阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(a)は、第1の実施形態に係る電動パーキングブレーキ手動解除機構を示す斜視図であり、(b)は、(a)の視点Pから電動パーキングブレーキ手動解除機構を見た図である。
【図2】第2の実施形態に係る電動パーキングブレーキ手動解除機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、「実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係る電動パーキングブレーキ手動解除機構10を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の視点Pから電動パーキングブレーキ手動解除機構10を見た図である。
【0011】
電動パーキングブレーキ手動解除機構10は、封止部材12、ネジ14、輪留め16、第1プレート18、および第2プレート20を有する。封止部材12は板状に形成され、工具挿入経路Xへの工具の挿入が不能となるよう、工具挿入経路Xの開口部を封止する位置でネジ14によって車体に固定される。
【0012】
一般的に電動パーキングブレーキは、工具を用いて手動で制動力が解除できるよう設けられている。このとき、運転者不在で電動パーキングブレーキの解除が可能となるため、車輪には輪留めをする必要がある。しかしながら、輪留めを取り出さなくても、電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路へ工具を挿入することが可能であると、輪留めを車輪下に配置することなく電動パーキングブレーキによる制動力の解除がなされる虞がある。
【0013】
このため、電動パーキングブレーキ手動解除機構10は、輪留め取り付け機構17を有する。輪留め取り付け機構17は、電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路Xへの工具の挿入を阻止するよう輪留めを車両に取り付ける。輪留め取り付け機構17は、第1プレート18および第2プレート20を有する。第1プレート18および第2プレート20は、工具挿入経路Xへの工具の挿入を阻止する位置に輪留め16を配置し固定する。
【0014】
輪留め16は、板状部材をコ字状に曲げて形成される。輪留め16は、各々が平板状の車輪受け部16a、第1鉛直部16b、および第2鉛直部16cを有する。第1鉛直部16bおよび第2鉛直部16cは板状部材の折り返し部となり、第1鉛直部16bと第2鉛直部16cとの間に車輪受け部16aが設けられる。第1鉛直部16bおよび第2鉛直部16cの端部を路面に置いたときに車輪受け部16aが傾斜面となるよう、第1鉛直部16bは第2鉛直部16cよりも長く形成されている。
【0015】
第1プレート18は、第1鉛直部16bを支持し、第2プレート20は第2鉛直部16cを支持することにより、輪留め16を工具挿入経路Xの上方に固定する。具体的には、第1プレート18は、鉛直部18a、折り返し部18b、および係止部18cを有する。鉛直部18aは、第1鉛直部16bと略同一長さを有する。折り返し部18bは車体に溶接などにより固定され、鉛直部18aを鉛直に延在するよう支持する。鉛直部18aの上端には、輪留め16の上方への移動を係止する係止部18cが設けられている。
【0016】
また、第2プレート20は、鉛直部20a、折り返し部20b、および係止部20cを有する。鉛直部20aは、第2鉛直部16cと略同一長さを有する。折り返し部20bは車体に溶接などにより固定され、鉛直部20aを鉛直に延在するよう支持する。鉛直部20aの上端には、輪留め16の上方への移動を係止する係止部20cが設けられている。
【0017】
第1プレート18および第2プレート20は、鉛直部18aと鉛直部20aとの間の距離が、輪留め16の第1鉛直部16bの外面と第2鉛直部16cの外面との距離と略同一となり、且つ、鉛直部18aと鉛直部20aとの間に工具挿入経路X、すなわち封止部材12が配置されるよう車両に取り付けられる。
【0018】
輪留め16には、注意喚起ラベル22が貼られている。注意喚起ラベル22には、例えば「電動パーキングブレーキの解除作業時には、輪留めを使用すること。」など、電動パーキングブレーキの制動力の解除作業を担当する作業者に、輪留めの使用を喚起する内容の文章が記載される。これにより、作業者に輪留め16の使用をより強く促すことができる。
【0019】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る電動パーキングブレーキ手動解除機構40を示す斜視図である。以下、第1の実施形態と同様の個所については同一の符号を付して説明を省略する。
【0020】
電動パーキングブレーキ手動解除機構40は、輪留め16に代えて輪留め46が用いられた以外は、第1の実施形態に係る電動パーキングブレーキ手動解除機構10と同様に構成される。輪留め46は、車輪受け部46a、第1鉛直部46b、第2鉛直部46c、および工具取り付け部46dを有する。車輪受け部46a、第1鉛直部46b、および第2鉛直部46cは、第1の実施形態に係る輪留め16の車輪受け部16a、第1鉛直部16b、および第2鉛直部16cと同様である。
【0021】
工具取り付け部46dは、車輪受け部46aの側方に突出するよう形成される。工具取り付け部46dには、チェーンユニット52の端部を取り付けるための取り付け孔が設けられており、この取り付け孔にチェーンユニット52の一端部が取り付けられる。チェーンユニット52の他端部には、電動パーキングブレーキの制動力の解除に使用される工具であるドライバが固定される。
【0022】
チェーンユニット52は、中途部に連結部52aを有する。連結部52aは、雄ネジ部および雌ネジ部を有し、これらを相対的に回転させることで分離させることが可能となっている。こうして輪留め46に工具50を取り付けておくことで、輪留め46を取り外した後に工具50を用いて電動パーキングブレーキの制動力解除を円滑に実行できる。
【0023】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を本実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0024】
10 電動パーキングブレーキ手動解除機構、 12 封止部材、 14 ネジ、 16 輪留め、 16a 車輪受け部、 16b 第1鉛直部、 16c 第2鉛直部、 17 輪留め取り付け機構、 18 第1プレート、 18a 鉛直部、 18b 折り返し部、 18c 係止部、 20 第2プレート、 20a 鉛直部、 20b 折り返し部、 20c 係止部、 22 注意喚起ラベル、 46 輪留め、 50 工具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パーキングブレーキの制動力を解除するために工具が挿入される工具挿入経路への前記工具の挿入を阻止するよう輪留めを取り付ける輪留め取り付け機構を有することを特徴とする電動パーキングブレーキ手動解除機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−192839(P2012−192839A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58346(P2011−58346)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)