説明

電動乗用機

【課題】回生余地を残してバッテリを充電することができ、過充電及び過放電を防止することができる提供する。
【解決手段】バッテリ31を駆動源とする芝刈作業機において、SOCを推定するバッテリ制御装置34を設け、回生余地を残すためにSOCを減少させる。また、走行部用モータ15・16に非通電時に機能する電磁ブレーキ39・40を設け、バッテリ31の電圧Vが上限電圧を越えたことを検知したときに走行部用モータ15・16とバッテリ31との電気経路を非通電にするリレー回路71・72を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動乗用機の技術に関し、特に、バッテリを電源としモータ駆動とする電動乗用機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行部若しくは作業部のどちらか一方若しくは両方が電動である作業機が公知となっている。例えば、バッテリを電源とし、それぞれ独立に走行駆動される主駆動輪となる左右車輪と、左右車輪とは独立に走行駆動される操向輪となるキャスタ輪と、作業部としての芝刈機とを備え、旋回操作子の旋回指示入力に応じ、左右車輪の各走行駆動とキャスタ輪の走行駆動とを制御して旋回可能に構成した作業機は公知となっている。(特許文献1参照)。
また、バッテリの電池性能を低下させることなく、燃費をさらに向上できるハイブリッドカーの充放電制御方法が公知となっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−168869号公報
【特許文献2】特開2001−314040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献2における制御の場合、下り坂などを利用した回生エネルギーによるバッテリの充電が考慮されていなかった。そのため、充電が行われたバッテリに回生余地が残っておらず、過充電となる可能性があった。また、過充電などの原因により、バッテリの電圧が異常に上昇した場合のフェールセーフを行う必要があった。また、過放電によるバッテリの劣化を防ぐ必要があった。
【0005】
そこで、本発明は以上の如き状況に鑑み、回生余地を残してバッテリを充電することができ、過充電及び過放電を防止することができる提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、バッテリを電源とする電動乗用機において、SOCを推定するユニットを設け、回生余地を残すためにSOCを減少させるものである。
【0008】
請求項2においては、走行系の電動機器駆動部に非通電時に機能する電磁ブレーキを設け、バッテリ電圧が許容上限値を越えたことを検知したときに前記電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電にする手段を設けたものである。
【0009】
請求項3においては、前記電動乗用機は陸上走行物で、SOCが第一許容下限値よりも低下したことを検知したときは走行系以外の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電にする手段を設け、SOCが第一許容下限値より小さい第二許容下限値よりも低下したことを検知したときは走行系の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路も非通電にする手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、回生によるバッテリ電圧の以上上昇を防止できる。
【0012】
請求項2においては、バッテリ電圧の異常上昇時に電動機器を確実に停止できる。
【0013】
請求項3においては、バッテリの過放電による劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電動作業機の平面図。
【図2】走行部用モータ及び走行駆動輪を示す斜視図。
【図3】制御装置の接続を示すブロック図。
【図4】充電制御を示すフローチャート図。
【図5】充電制御前のバッテリ及び各セルを示す回路図並びに各セルの電圧を示すグラフ図。
【図6】(A)充電制御前のセルの電圧を示すグラフ図(B)充電制御後のセルの電圧を示すグラフ図。
【図7】充電制御後のバッテリ及び各セルを示す回路図並びに各セルの電圧を示すグラフ図。
【図8】充放電制御を示すフローチャート図。
【図9】充放電制御を示すフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電動作業機を芝刈作業機1とした実施形態を、図1、図2及び図3を用いて全体構成から説明する。なお、以下において、矢印F方向を前方向とし、矢印R方向を右方向とし、矢印L方向を左方向と規定して説明する。
【0016】
芝刈作業機1は、図1に示すように、機体フレーム2の後部左右両側に走行部としての左右の走行駆動輪11・12が配置され、機体フレーム2の前部左右両側に補助輪となるキャスタ輪13・14が配置される。前記走行駆動輪11・12とキャスタ輪13・14の間の機体フレーム2の下方に作業部として芝刈機3が配置される。機体フレーム2の上部が運転操作部4とされ、前後略中央にオペレータが着座する操縦席としての座席シート5が配置され、該座席シート5の左右両側に旋回操作及び変速操作を可能とする駆動操作具となる旋回レバー21・22や、パーキングスイッチ25(図3参照)や、キースイッチ35や、作業部スイッチ36や、図示しない作業レバーや操作スイッチ等が配置される。また、機体フレーム2の後部には、バッテリ31が設けられている。
また、座席シート5には着座センサ33が設けられている。着座センサ33は、例えば操縦者の体重を感知する歪み感知センサで構成されており、図3に示すように、制御装置50に接続されている。但し、着座センサ33は座席シート5上に操縦者が存在することを検知できればよく歪み感知センサに限定するものではない。
【0017】
また、機体フレーム2の任意位置に制御装置50が配置される。本実施形態においては、図1に示すように、制御装置50は座席シート5の下方の空間に設けられている。
【0018】
前記走行駆動輪11・12は電動機器であり、図1及び図2に示すように、それぞれ左右の走行部用モータ15・16の出力軸とギヤケース41内部の図示せぬ動力伝達機構を介して連結され、それぞれ独立して駆動可能としている。走行系の電動機器駆動部としての走行部用モータ15・16は、正逆転可能な電動モータであり、図3に示すように、制御装置50と接続され、正逆転駆動、及び、回転数を制御可能に構成されている。つまり、変速制御可能に構成している。なお、走行部用モータ15・16はホイルと一体的に構成したホイルインモータとすることも、走行部用モータ15・16の出力軸と走行駆動輪11・12の車軸との間に減速機構を配設して、走行部用モータ15・16を機体フレーム2に設ける構成とすることも可能である。
【0019】
また、走行部用モータ15・16は、通常は駆動力として用いていられているが、下り坂などでは発電機として作動させ、運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することで制動をかける回生ブレーキとして使用することも可能である。この場合、走行部用モータ15・16によって発電された回生電力はバッテリ31に回収される。言い換えれば、回生エネルギーによってバッテリ31の充電が行われる。
【0020】
図2及び図3に示すように、前記走行部用モータ15・16の出力軸近傍、または、走行駆動輪11・12、または、減速機構には、走行駆動輪11・12の回転速度(回転数)を検知する回転速度検出手段となる回転速度センサ17・18が設けられている。該回転速度センサ17・18は制御装置50と接続されている。
【0021】
前記キャスタ輪13・14は、車輪を回転自在に支持する車軸がブラケット19・20に水平方向に支持され、該ブラケット19・20の上部から上方に支持軸が立設され、該支持軸が機体フレーム2に対して左右回転自在に支持される構成としている。よって、キャスタ輪13・14は左右方向に回転自在となっている。なお、補助輪となるキャスタ輪13・14は1輪とすることも可能であり、また、3輪以上に構成することも可能である。また、補助輪となるキャスタ輪13・14は前輪としているが、後輪とすることも可能である。つまり、走行駆動輪11・12を前輪、キャスタ輪13・14を後輪とすることもできる(図1参照)。
【0022】
前記芝刈機3は、電動機器であり、図1に示す昇降リンク機構30を介して機体フレーム2に対して昇降可能に連結されている。芝刈機3は、モアデッキ内に刈刃26・27を回転可能に配置し、該刈刃26・27を作業系の電動機器駆動部としての作業部用モータ28・29により回転駆動可能に構成している。作業部用モータ28・29は制御装置50と接続されている。なお、芝刈機3は機体フレーム2の下方に配置しているが、機体フレーム2の前方に配置することも、機体フレーム2の後方に配置することも、機体フレーム2の側方に配置することも可能であり限定するものではない。また、刈刃はブレード式やバリカン式やリール式等限定するものではない。
【0023】
運転操作部4に設けた旋回レバー21・22は、それぞれ中立位置から前後方向に回動することにより左右対応する走行駆動輪11・12の回転方向及び回転速度を設定して、進行方向及び走行速度を変更するための手段である。具体的には、旋回レバー21・22を中立位置から前方への回動する回動角度が大きいほど、走行駆動輪11・12の前進回転速度が速くなり、芝刈作業機1の前進走行速度が速くなる。また、旋回レバー21・22を中立位置から後方へ回動する回動角度が大きくなるほど、走行駆動輪11・12の後進回転速度が速くなり、芝刈作業機1の後進走行速度が速くなる。
また、運転操作部には、パーキングスイッチ25が設けられている(図3参照)。本実施形態においては、旋回レバー21・22を中立位置とすることにより、パーキングスイッチ25がON状態となるように構成されている。なお、パーキングスイッチ25を独立して設けることも可能である。
【0024】
前記旋回レバー21・22の回動基部にはそれぞれ旋回レバー21・22の回動角度を検知するセンサとしてのレバーセンサ23・24が設けられている。レバーセンサ23・24は、図3に示すように、制御装置50と接続されている。こうして、旋回レバー21・22の回動がレバーセンサ23・24により検知されて、その検知信号が制御装置50に入力され、該制御装置50により左右の走行部用モータ15・16が前記旋回レバー21・22の回動角度に応じて駆動され、芝刈作業機1を走行させることができる。
【0025】
また、運転操作部4に設けられた作業部スイッチ36をON状態とすることにより、芝刈機3の刈刃26・27を作業部用モータ28・29により回転駆動させる。作業部スイッチ36は、図3に示すように、制御装置50に接続されている。
【0026】
バッテリ31は機体フレーム2後部に設けられている。バッテリ31は、脱着可能なパックとして構成されており、図3に示すように、接続端子31aが設けられている。車体側にも接続端子31bが設けられており、車体側の接続端子31bは、図3に示すように、制御装置50に接続されている。また、バッテリ31の内部には、バッテリ制御装置34や充電用リレー回路37が設けられている。バッテリ制御装置34は、充電時に過充電とならないように制御したり、温度が異常に高くならないように制御したり、後述する充電コネクタ31dに設ける検知部31eにより充電器101と接続されたかを判断するとともに、充電用リレー回路37を切り替えて後述の制御装置50に充電中であること送信したりする。
【0027】
バッテリ31は、図3に示すように、N個のセル31C・31C・・・31Cを有している。図5に示すように、N個のセル31C・31C・・・31Cは直列につながれており、各セル31C・31C・・・31Cの電圧V・V・・・Vの総和がバッテリ31の電圧Vとなる。
また、バッテリ31は、図3に示すように、高圧の直流電圧を低圧の直流電圧に変換するDC−DCコンバータ38を有している。
【0028】
また、バッテリ31には充電コネクタ31dが設けられている。充電コネクタ31dは外部の充電器101と接続可能であり、充電コネクタ31dを外部の充電器101と接続することにより、バッテリ31の充電を行う。充電コネクタ31dに充電器101が接続されたどうかは、充電コネクタ31dに設けた検知部31eにより検知され、検知部31eは制御装置50と接続されている。
【0029】
制御装置50は、図3に示すように、走行部用モータ15・16、回転速度センサ17・18、レバーセンサ23・24、作業部用モータ28・29、着座センサ33、作業部スイッチ36、と接続されている。また、制御装置50は、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67と接続されている。
【0030】
制御装置50は、CPUや記憶手段からなり、CPUは中央演算処理装置であり、記憶手段は制御プログラムやマップ等を記憶したROMや入力したデータ等を記憶するRAMである。
【0031】
走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67はインバータ回路で構成されており、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29の出力を制御する装置である。また、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に印加される電圧(または電流)を検知し、制御装置50に送信している。走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67は、それぞれ、座席シート5の下方の空間に設けられている。
走行部用モータドライバ65・66と作業部用モータドライバ67はバッテリ31と電気経路32bを介して接続されており、電気経路32bから供給される直流電力を交流電力に変換して走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29に供給する。
電気経路32bの中途部にはバッテリ31と走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67との間の電気経路32bを通電又は非通電状態に切り替える手段としてのリレー回路71・72・73が設けられている。リレー回路71・72・73は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号によりリレー回路71・72・73の通電又は非通電状態が切り替えられる構成としている。
【0032】
芝刈作業機1には補助電源(バックアップ電源)50aが搭載されている。補助電源50aは制御装置50と接続し、バッテリ31が外された状態や充電時等でも制御装置50やセンサ等に電力を供給して、芝刈作業機1や操縦者の安全性を担保している。
即ち、補助電源50aは電気経路を介して走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67と接続しており、走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67とバッテリ31とが非接続の場合であっても、補助電源50aから走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67へ制御用の電力が供給されている。走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67は、常時、走行部用モータ15・16及び作業部用モータ28・29にバッテリ31から電力が供給されているかを検出し、制御装置50に送信するようにしている。
【0033】
また、制御装置50は、バッテリ31と電気経路32aを介して接続されている。電気経路32aの中途部にはキースイッチ35が設けられており、キースイッチ35を操作することにより電源リレー回路42の接点42aのON・OFFが切り替えられる。つまり、キースイッチ35の操作により電気経路32aの接続・非接続を切り替えることができる。
【0034】
キースイッチ35がON状態となった場合、電源リレー回路42がON状態に切り替わり、電力が供給されたことを制御装置50に送信し、制御装置50より接続制御信号がリレー回路71・72・73に送信されて切り替え、電力供給経路32bが接続されて、バッテリ31から走行部用モータドライバ65・66及び作業部用モータドライバ67へ電力が供給可能とされる。
【0035】
また、制御装置50とバッテリ31との間には接続確認用電気経路32cが設けられており、バッテリ31側の接続端子31aと車体側の接続端子31bとの間に脱着を検知する脱着検知センサ74が設けられ、接続確認用電気経路32cを介して制御装置50と接続している。
【0036】
制御装置50は、前記各センサからの信号により、左右の走行部用モータ15・16の出力を制御する。つまり、左右の旋回レバー21・22の操作量に応じて進行方向の指令値を算出して、それぞれの指令値に応じて走行部用モータドライバ65・66に指令値を送信し、走行部用モータドライバ65・66から走行部用モータ15・16に駆動信号(モータ駆動電力)を出力する。
また、制御装置50は、作業部用モータ28・29の出力を制御する。つまり、制御装置50は、作業部用モータ28・29のトルクが一定となるように指令値を算出して、それぞれの指令値に応じて作業部用モータドライバ67に指令値を送信し、作業部用モータドライバ67から作業部用モータ28・29に駆動信号(モータ駆動電力)を出力する。
【0037】
次に、走行部用モータ15・16を電気的に停止させるための前記リレー回路71・72と、物理的に停止させるための電磁ブレーキ39・40について説明する。
【0038】
図3に示すように、バッテリ31と走行部用モータドライバ65・66との間には、電力の供給と遮断を切り替える手段としてのリレー回路71・72が設けられている。リレー回路71・72は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号によりリレー回路71・72が切り替えられる構成としている。なお、リレー回路71とリレー回路72とは同様の構成であるので、走行部用モータ15に対応するリレー回路71について説明する。
リレー回路71は、正常の走行時や作業時に、バッテリ31と走行部用モータドライバ65とを接続する。電圧が異常に高くなった場合やバッテリ31が離脱した場合などの異常時には、制御装置50よりリレー回路71に遮断信号が送信されて、リレー回路71によりバッテリ31と走行部用モータドライバ65との接続が遮断され、走行部用モータ15に電力が供給されなくなる。これにより、走行部用モータ15が停止する。
【0039】
また、図2、図3に示すように、走行部用モータ15・16と走行駆動輪11・12との間には電磁ブレーキ39・40が設けられている。電磁ブレーキ39・40は制御装置50と接続されて、制御装置50からの制御信号により制動と非制動が切り替えられる。電磁ブレーキ39と40は同様の構成であるので走行部用モータ15に対応する電磁ブレーキ39について説明する。
図2に示すように、走行部用モータ15と走行駆動輪11との間には図示せぬ動力伝達機構を格納するギヤケース41が設けられている。電磁ブレーキ39は、ギヤケース41の内部であって走行部用モータ15の駆動軸に設けられている。電磁ブレーキ39は通電している状態では開放されており、電力が遮断された状態では摩擦板を圧接させることで走行駆動輪11を制動する。但し、作業部用モータ28・29にも前記同様に電磁ブレーキを取り付け、制御することも可能である。
【0040】
バッテリ制御装置34には電池監視回路43が接続され、電池監視回路43は各セル31C・31C・・・・と接続されている。電池監視回路43は、各セルの電圧や放電電流を演算し、バッテリ制御装置34に送信している。
【0041】
次に、バッテリ31の回生余地を残すためにSOC(State of charge)を充電制御について図4を用いて、説明する。
図5に示すように、バッテリ31のSOCが100%、すなわち満充電状態である場合には、回生エネルギーが走行部用モータ15・16からバッテリ31に送られた場合でも、バッテリ31に回生余地が無く、回生が行われないだけでなくバッテリ31が過充電状態となり故障するおそれがあった。そこで、バッテリ31の回生余地を残すためにSOC(State of charge)を減少させる充電制御を行うものである。
【0042】
まず、バッテリ制御装置34において、バッテリ31のSOCが100%以上であるか否かについて判断する(ステップS10)。ここでSOCとは、バッテリ31の充電状態を表す指標であり、百分率で表され、100%が満充電状態、0%が完全放電状態を表す。バッテリ31のSOCが100%以上であれば、バッテリ31は満充電状態であり、バッテリ31のSOCが100%より小さければ、バッテリ31は満充電状態ではなく、充電の余地がある。バッテリ31のSOCはバッテリ制御装置34によって算出される。
ステップS10において、バッテリのSOCが100%以上であれば、バッテリの電圧Eが上限電圧Vu1以上であるか否かについて判断する(ステップS20)。上限電圧Vu1は、満充電となった時の電圧であり、最大充電した場合に許容できる電圧である。また、ステップS10において、バッテリのSOCが100%よりも小さければ後述する充放電制御を行う。
【0043】
ステップS20において、バッテリの電圧Eが上限電圧Vu1以上であれば、何らかの異常が生じているものと判断して(ステップS30)、リレー回路71・72を開いて(非接続として)バッテリ31から走行部用モータドライバ65・66への電力の供給を停止し、電磁ブレーキ39・40も作動させる。(ステップS40)。そして、運転を停止する(ステップS50)。
また、ステップS20において、バッテリ31の電圧Vが上限電圧Vu1よりも小さければ(未満であれば)、放電中であるか否かについて判断する(ステップS60)。ここで、放電中とは、例えば、作業部用モータ28・29を駆動させている状態などである。ステップS60において放電中であれば、運転を継続する(ステップS50)。ステップS60において放電中でなければ、回生充電可能な余地を作るための処理を行う。
ステップS70以降ステップS110までの処理(バランス処理)はバッテリ31の各セル31C・31C・・・31Cごとに行う。
ここでは、セル31Cに関するバランス処理について説明する。
ステップS70において、セル31Cのセル電圧Vを検知し、セル電圧Vがバランス開始電圧Vより高いか判断する。バランス開始電圧Vは、高いセル電圧のセルを回生できるようにするための電圧に下げる時の目標電圧である。なお、セル電圧は電池監視回路43により検知される。
セル電圧Vがバランス開始電圧V以下の低い電圧(V≦V)であれば、バランスさせる(電圧を下げる)必要がないため、運転が継続される(ステップS50)。図6(A)に示すように、セル電圧Vがバランス開始電圧Vより高い(V>V)場合には、ステップS80に移行する。
ステップS80において、セル電圧Vと他の全てのセルの中で最も電圧が低いセルの電圧である最小セル電圧Vminとの差Dと、バランス開始電圧差Dを比較する。
図6(A)に示すように、ステップS80において、差Dがバランス開始電圧差Dよりも大きい場合には、セルバランス動作(放電)を開始する(ステップS90)。
また、ステップS80において、差Dがバランス開始電圧差D以下である(D≦D)場合には運転を続行する(ステップS50)。つまり、セル電圧Vと最も低いセル電圧Vminとの差がほとんど無い場合には運転を続行する。
次に、ステップS100において、セル電圧Vがバランス停止電圧V以下であるかを判断する。
図6(b)に示すように、ステップS100において、セル電圧Vがバランス停止電圧V以下であると、セルバランス動作(放電)を停止し(ステップS105)、運転を続行する(ステップS50)。なお、バランス停止電圧Vはバランス開始電圧Vより低い値に設定されている。
セル電圧Vcがバランス停止電圧Vより高い場合には、セル電圧Vcと最も電圧が低いセルの電圧である最小セル電圧Vminとの差Dが、所定のバランス停止電圧差D以下であるか否かについて判断する(ステップS110)。
図6(b)に示すように、差Dが、所定のバランス停止電圧差D以下である(D≦D)場合には運転を続行する(ステップS50)。
また、差Dがバランス停止電圧差Dより大きい場合にはステップS90に移行し、放電を続行する。なお、バランス停止電圧差Dはバランス開始電圧差Dより低い値である。
前記処理が各セルについて行われることで、図7に示すように、バッテリ31を構成する全てのセル31C・31C・・・31Cについて満充電状態から一定量だけ充電量を減少させた状態にすることができる。
【0044】
次に、SOCを用いた過放電によるバッテリ31の劣化を防止するための充放電制御について図8及び図9を用いて説明する。
バッテリ31が放電することにより充電量を減少させたことにより、過放電状態が起こるおそれがある。過放電状態においては、バッテリ31が劣化し、充電容量が減少することがある。そこで、過放電状態によるバッテリ31の劣化を防止するためにSOCを用いて充放電制御を行う。
【0045】
まず、バッテリ31の電圧を測定する(ステップS210)。次に、放電電流を積算する(ステップS220)。次に、バッテリ31の電圧及び電流の積算値に基づいてバッテリ制御装置34がSOCを算出する(ステップS230)。
【0046】
次に、充電中であるか否かについて判断する(ステップS240)。ステップS240において充電中であった場合には、SOCが第一上限値R以上であるか否かについて判断する(ステップS250)。ステップS250において、SOCが第一上限値R以上あった場合には、前記充電制御に移行する。ステップS250において、SOCが第一上限値Rよりも小さかった場合には、後述するステップS290(図9参照)に移行する。
【0047】
ステップS240において充電中で無かった場合には、放電中であるか否かについて判断する(ステップS260)。ステップS260において放電中であった場合には、図9に示すように、SOCが第一上限値R以上であるか否かについて判断する(ステップS270)。ステップS270において、SOCが第一上限値R以上あった場合には、バッテリ残量が十分あると判断して、図9に示すように、その後、通常の運転を継続若しくは停止し(ステップS280)、制御を終了する。ステップS270において、SOCが第一上限値Rよりも小さい場合には、SOCが第一上限値Rよりも小さく第一許容下限値R以上であるか否かについて判断する(ステップS290)。
【0048】
ステップS290において、SOCが第一上限値Rよりも小さく第一許容下限値R以上である場合には、バッテリ残量が低下し充電が必要な状態となっているとし、オペレータに電圧低下の予告を通知する(ステップS300)。例えば、運転操作部4に表示灯を設けて表示灯を点滅させることにより通知する。通知する方法は、これに限定するものでなく、例えば、液晶表示部を設けて、液晶表示部にメッセージを表示することも可能であるし、音響手段を設けて、音によって通知することも可能である。
そして、走行部用モータ15・16の出力を制限する(ステップS310)。具体的には、走行部用モータ15・16の上限回転数を設けて上限回転数以上の回転数にならないように制御する。その後、通常の運転を継続若しくは停止し(ステップS280)、制御を終了する。
【0049】
ステップS290において、SOCが第一上限値R以上である若しくは第一許容下限値Rよりも小さいと判断された場合には、SOCが第一許容下限値Rよりも小さく第二許容下限値R以上であるか否かについて判断する(ステップS320)。
ステップS320において、SOCが第一許容下限値Rよりも小さく第二許容下限値R以上であった場合には、バッテリ残量が更に低下し充電が必要な状態であり、作業と走行の両方を作動させることが難しくなっている状態となっているとし、オペレータに電圧低下の警告を通知する(ステップS330)。例えば、運転操作部4に表示灯を設けて表示灯の点滅間隔を早めることにより通知する。通知する方法は、これに限定するものでなく、例えば、液晶表示部を設けて、液晶表示部にメッセージを表示することも可能であるし、音響手段を設けて、音によって通知することも可能である。
そして、作業部用モータ28・29を停止する(ステップS340)。その後、通常の運転を継続若しくは停止し(ステップS280)、制御を終了する。
【0050】
ステップS320において、SOCが第一許容下限値R以上である若しくは第二許容下限値Rよりも小さいと判断された場合には、バッテリ残量が更に低下し充電が必要な状態であり、作業部を停止した状態で、走行させることが難しくなっている状態となっているとし、オペレータに電圧低下の異常を通知する(ステップS350)。例えば、運転操作部4に表示灯を設けて表示灯を点灯させ続けることにより通知する。通知する方法は、これに限定するものでなく、例えば、液晶表示部を設けて、液晶表示部にメッセージを表示することも可能であるし、音響手段を設けて、音によって通知することも可能である。
そして、走行部用モータ15・16を停止する(ステップS360)。その後、通常の運転を継続若しくは停止し(ステップS280)、制御を終了する。
【0051】
前記第一上限値R、第一許容下限値R、及び第二許容下限値Rは、
>R>R
となるような値であり、例えばRは30%、Rは20%、Rは10%である。
【0052】
以上のように、バッテリ31を駆動源とする芝刈作業機1において、SOCを推定するバッテリ制御装置34を設け、回生余地を残すためにSOCを減少させるものである。
このように構成することにより、回生によるバッテリ電圧の以上上昇を防止できる。
【0053】
また、走行部用モータ15・16に非通電時に機能する電磁ブレーキ39・40を設け、バッテリ31の電圧Vが上限電圧Vu1を越えたことを検知したときに走行部用モータ15・16とバッテリ31との電気経路を非通電にするリレー回路71・72を設けたものである。
このように構成することにより、バッテリ31の電圧Vの異常上昇時に走行部用モータ15・16を確実に停止できる。
【0054】
また、芝刈作業機1は陸上走行物で、SOCが第一許容下限値Rよりも低下したことを検知したときは作業部用モータ28・29とバッテリ31との電気経路を非通電にするリレー回路73を設け、SOCが第一許容下限値Rより小さい第二許容下限値Rよりも低下したことを検知したときは走行部用モータ15・16とバッテリ31との電気経路も非通電にするリレー回路71・72を設けたものである。
このように構成することにより、バッテリ31の過放電による劣化を防止できる。
【符号の説明】
【0055】
1 芝刈作業機(電動作業機)
2 機体フレーム
3 芝刈機(作業部)
4 運転操作部
5 座席シート(操縦席)
11・12 走行駆動輪
13・14 キャスタ輪
15・16 走行部用モータ(走行系の電動機器駆動部)
21・22 旋回レバー(駆動操作具)
23・24 レバーセンサ
25 パーキングスイッチ
28・29 作業部用モータ
31 バッテリ
31c 充電コネクタ
32b 電気経路
33 着座センサ
35 キースイッチ
39・40 電磁ブレーキ
50 制御装置
65・66 走行部用モータドライバ
67 作業部用モータドライバ
71・72・73 リレー回路
74 脱着検知センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを駆動源とする電動乗用機において、
SOCを推定するユニットを設け、回生余地を残すためにSOCを減少させることを特徴とする電動乗用機。
【請求項2】
走行系の電動機器駆動部に非通電時に機能する電磁ブレーキを設け、バッテリ電圧が許容上限値を越えたことを検知したときに前記電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電にする手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動乗用機。
【請求項3】
前記電動乗用機は陸上走行物で、SOCが第一許容下限値よりも低下したことを検知したときは走行系以外の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路を非通電にする手段を設け、SOCが第一許容下限値より小さい第二許容下限値よりも低下したことを検知したときは走行系の電動機器駆動部とバッテリとの電気経路も非通電にする手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電動乗用機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−27202(P2013−27202A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161115(P2011−161115)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】