説明

電動工具

【課題】高い安全性と操作性を備える電動工具を提供する。
【解決手段】この電動工具10は、駆動源を起動するトリガーレバー41と、トリガーレバー41の動作を規制/解除自在なセーフティロック機構51とを備えている。セーフティロック機構51は、セーフティボタン52と、セーフティボタン52の動作に応じて駆動されるロックプレート54を有している。セーフティボタン52が把持部40の表面から突出した通常状態のときには、トリガーレバー41とロックプレート54とが当接状態になり、操作者がセーフティボタン52を指で押し込んだときには、トリガーレバー41とロックプレート54との当接状態が解除される。さらに、セーフティボタン52は、トリガーレバー41の支点近傍に設けられ、ロックプレート54におけるトリガーレバー41との当接箇所54bは、トリガーレバー41の力点近傍に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に係り、特に、駆動源を起動するトリガーレバーの誤操作を防止するために当該トリガーレバーの動作を規制/解除自在なセーフティロック機構を設けた電動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、駆動源を起動するトリガーレバーの誤操作を防止するために当該トリガーレバーの動作を規制/解除自在なセーフティロック機構を設けた電動工具が知られている。例えば、下記特許文献1には、芝や雑草等の草葉を刈るのに用いられる刈払機が開示されているが、この刈払機では、ハンドルの一端に設けられた把持部に対してトリガーレバー(電源スイッチ)とセーフティボタン(安全スイッチ)とが設けられており、これらトリガーレバー(電源スイッチ)とセーフティボタン(安全スイッチ)とを同時に手で握ることで、駆動源であるモータが回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4071242号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上掲した特許文献1に代表される従来の電動工具には、改良すべき点が多々存在していた。例えば、特許文献1に記載されたセーフティボタン(安全スイッチ)は、把持部であるグリップを操作者が握ると必ず押してしまう位置に設置されているので、グリップを握った状態でモータの回転を安全に停止させたいという要請には対応できないものである。したがって、特許文献1に記載のセーフティロック機構は、不十分な構成であるということができる。
【0005】
また、特許文献1に記載された刈払機の場合、グリップの形状に対して比較的大きなスイッチが複数個設置されていることから、操作性の面で難がある。
【0006】
さらに、特許文献1に記載された刈払機の場合、セーフティボタン(安全スイッチ)に基づくセーフティロック機構は電気的な回路によって構成されているが、安全性を向上する意味では、物理的なセーフティロック機構を採用することが好ましい。ただし、従来技術では、安全性が高く、しかも操作性の高いセーフティロック機構は存在していなかった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する問題点に鑑みて成されたものであって、その目的は、高い安全性と操作性のセーフティロック機構を備える電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る電動工具(10)は、駆動源を起動するトリガーレバー(41)と、前記トリガーレバー(41)の誤操作を防止するために当該トリガーレバー(41)の動作を規制/解除自在なセーフティロック機構(51)とが、把持部(40)に設けられた電動工具(10)であって、前記セーフティロック機構(51)は、前記把持部(40)の表面から常には突出した状態にあるとともに操作者の指で押し込み自在なセーフティボタン(52)と、前記セーフティボタン(52)の動作に応じて駆動されるロックプレート(54)と、を有して構成され、前記セーフティボタン(52)が前記把持部(40)の表面から突出した通常状態にあるときには、前記トリガーレバー(41)と前記ロックプレート(54)とが当接状態になることで当該トリガーレバー(41)の動作が規制され、操作者が前記セーフティボタン(52)を指で押し込んだときには、前記トリガーレバー(41)と前記ロックプレート(54)との当接状態が解除されることで当該トリガーレバー(41)の動作規制が解除され、さらに、前記セーフティボタン(52)が前記トリガーレバー(41)の支点である支軸(41a)の近傍に設けられるとともに、前記ロックプレート(54)における前記トリガーレバー(41)との当接箇所(54b)が前記トリガーレバー(41)の力点である指掛け部(41b)の近傍に設けられることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る電動工具(10)において、前記セーフティボタン(52)及び前記ロックプレート(54)は、いずれか一方が前記セーフティボタン(52)の押し込み方向(X)に対して傾斜角度をつけた傾斜面(53a,53b)を有するとともに、いずれか他方が前記傾斜面(53a,53b)に係合する係合摺動部(55a,55b)を備え、前記傾斜面(53a,53b)と前記係合摺動部(55a,55b)の作用によって、前記ロックプレート(54)が前記セーフティボタン(52)の押し込み方向に対して略直交する方向(Y)で駆動されるように構成されていることとすることができる。
【0011】
また、本発明に係る電動工具(10)において、前記傾斜面(53a,53b)は、前記セーフティボタン(52)又は前記ロックプレート(54)が有するフック形状(52b)における内側の対向する2面に対してそれぞれ形成された一対の対向面であり、前記係合摺動部(55a,55b)は、前記フック形状(52b)の内側に係合する前記ロックプレート(54)又は前記セーフティボタン(52)に形成された係合部(54a)に対して形成され、一対の対向面として形成される前記傾斜面(53a,53b)と、前記係合部(54a)に形成される前記係合摺動部(55a,55b)とが、摺動自在な状態で係合配置されることとすることができる。
【0012】
さらに、本発明に係る電動工具(10)において、前記ロックプレート(54)は、前記把持部(40)に設置された弾性部材(56)からの弾性力を常時受けており、当該弾性部材(56)からの弾性力が前記ロックプレート(54)を介して前記セーフティボタン(52)に及ぼされることにより、前記セーフティボタン(52)は通常状態において前記把持部(40)の表面から突出していることとすることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る電動工具(10)では、前記ロックプレート(54)によって前記トリガーレバー(41)の動作が規制されているときの前記ロックプレート(54)と前記トリガーレバー(41)との当接箇所の当接面が、前記ロックプレート(54)の駆動方向に対して平行な面として構成されていることとすることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る電動工具(10)では、前記ロックプレート(54)によって前記トリガーレバー(41)の動作が規制されているときの前記ロックプレート(54)と前記トリガーレバー(41)との当接箇所の当接面が、前記ロックプレート(54)の駆動方向に対して傾斜角度(θ)をつけた面として構成されていることとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い安全性と操作性のセーフティロック機構を備える電動工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る刈払い機の全体構成を説明するための外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る把持部の外観斜視図であり、把持部を左斜め後方から見た場合の左側面を描いたものである。
【図3】本実施形態に係る把持部の後側の側面を示す外観図である。
【図4】本実施形態に係る把持部の内部構成を説明するための図であり、左右半割構造にて構成される把持部の右側の半割部材を取り外して把持部の内部を右側から見た場合の図である。
【図5】本実施形態に係るセーフティロック機構の構成部材であるセーフティボタンを示した外観斜視図である。
【図6】本実施形態に係るセーフティロック機構の構成部材であるロックプレートを示した外観斜視図である。
【図7】本実施形態に係るトリガーレバーとセーフティロック機構との配置関係を説明するための概略図である。
【図8A】本実施形態に係るセーフティロック機構の動作を説明するための図であり、特に、トリガーレバーをロックした状態を示すとともに、セーフティロック機構の把持部内部での様子を示した図である。
【図8B】本実施形態に係るセーフティロック機構の動作を説明するための図であり、特に、トリガーレバーをロックした状態を示すとともに、セーフティロック機構のみを抜き出して描いた図である。
【図9A】本実施形態に係るセーフティロック機構の動作を説明するための図であり、特に、トリガーレバーのロックを解除した状態を示すとともに、セーフティロック機構の把持部内部での様子を示した図である。
【図9B】本実施形態に係るセーフティロック機構の動作を説明するための図であり、特に、トリガーレバーのロックを解除した状態を示すとともに、セーフティロック機構のみを抜き出して描いた図である。
【図10】本実施形態に係るセーフティロック機構が取り得る多様な変形形態の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、以下の実施形態では、本発明に係る電動工具が刈払い機として構成される場合を例示して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係る刈払い機の全体構成を説明するための外観斜視図である。なお、以下の説明では、説明の便宜のために刈払い機10の使用状態に応じた方向を定義することとする。すなわち、図1にて図示するように、刈刃部13が設置される側を「前」、駆動部11側を「後」、把持部40が設置される側を「右」、左グリップ21側を「左」と呼ぶこととする。
【0019】
本実施形態に係る刈払い機10は、長手方向に延びる軸体形状にて形成される操作棹12と、操作棹12の一端側である前側に設置される刈刃部13と、操作棹12の他端側である後側に設置されるとともに、内部に駆動源としてのモータを備える駆動部11と、操作棹12の長手方向の中間部に設置されるハンドル14とを備えている。
【0020】
操作棹12は、中空棒状のパイプ部材により構成されており、その内部には、不図示の従動軸が回転自在な状態で内蔵されている。操作棹12の前側先端には刈刃部13が取り付けられており、刈刃部13のホルダ13aには、外周面に複数の鋸刃状の刃部が形成された円板状をした金属製の刈刃(不図示)を回転自在な状態で取り付けることが可能となっている。ホルダ13aは、従動軸の回転運動に応じて回転するので、このホルダ13aの回転によって不図示の刈刃が回転し、草葉等の刈払いを実施できるようになっている。また、刈刃の後方直近部には、刈刃の一部を覆うように防護カバー13bが設けられており、刈払い時に発生する飛散物の後方への飛散を防ぐことで、操作者の安全が確保されている。不図示の刈刃については、円板状をした金属製のものや、セラミックス製のもの、回転中心から放射状に延びる複数本の紐からなるものなど、あらゆる形式の刈刃を採用することが可能となっている。
【0021】
操作棹12の長手方向の中間部には、把持部40と左グリップ21を備えるハンドル14が取り付けられている。また、操作棹12におけるハンドル14設置位置の後方には、図示しない肩掛けベルトを取り付けることのできるホック15が設置されている。操作者は、ハンドル14が備える把持部40と左グリップ21とを両手で把持するとともに、ホック15に取り付けられた肩掛けベルトを肩に掛け回すことにより、刈払い機10の操作を安定して行うことが可能となっている。なお、ハンドル14の設置位置は、操作棹12の任意の位置に設定することができるが、モータなどの重量物が収納された駆動部11と、比較的重量が軽い刈刃部13とのバランスを考慮して、操作棹12の中間部のうちでも後方寄りにハンドル14を設置することが望ましい。
【0022】
以上、本実施形態に係る刈払い機10全体の概略構成について説明を行った。次に、本実施形態に係る刈払い機10の有意な特徴である把持部40の構成について説明を行う。ここで、図2は、本実施形態に係る把持部の外観斜視図であり、把持部40を左斜め後方から見た場合の左側面を描いたものである。また、図3は、本実施形態に係る把持部の後側の側面を示す外観図である。さらに、図4は、本実施形態に係る把持部の内部構成を説明するための図であり、左右半割構造にて構成される把持部40の右側の半割部材40bを取り外して把持部40の内部を右側から見た場合の図である。
【0023】
本実施形態に係る把持部40は、概略縦長環状の外郭形状を有して構成されており、左右に分割可能な半割部材40a,40bを重ねた構成となっている。2つの半割部材40a,40bには、いずれか一方(本実施形態では、左側の半割部材40a)にネジ溝40aが形成され、いずれか他方(本実施形態では、右側の半割部材40b)にネジ孔40bが形成されており、ネジ孔40bに対して不図示のネジを通してこのネジをネジ溝40aに螺入することにより、半割部材40a,40bが一体化して把持部40となるように構成されている。このようにして構成される把持部40は、符号Gで矢視する後方中央部分が操作者からの把持を受けるグリップ部として構成されており、また、把持部40には、駆動源であるモータを起動するためのトリガーレバー41がグリップ部Gの前方に対して傾動動作可能な状態で設置されている。
【0024】
図4で詳細に示されるように、本実施形態のトリガーレバー41は、傾動動作の傾動中心(支点)となる支軸41aと、操作者の指からの力を受ける力点となる指掛け部41bとを有して構成されている。また、支軸41aと指掛け部41bとの間の位置には、トリガーレバー41に対して弾性力を及ぼすトリガー用コイルばね42が設置されている。このトリガー用コイルばね42は、把持部40からトリガーレバー41を常時突出させる方向、すなわち、図4において紙面右側の方向にトリガーレバー41を押し出すように弾性力を及ぼしている。
【0025】
また、トリガーレバー41には、支軸41aに対して指掛け部41b形成位置とは逆側の位置にスイッチ押圧片41cが形成されている。このスイッチ押圧片41cは、トリガーレバー41が支軸41aを傾動中心とした傾動動作を行うと、その傾動動作に伴って移動することで、把持部40の内部に設置されたマイクロスイッチ43をオンするように構成されている。このマイクロスイッチ43と、駆動部11の内部に設置される不図示のモータとは、配線コードによって電気的に接続されているので、トリガーレバー41を操作することで、駆動源である不図示のモータを起動できるようになっている。
【0026】
したがって、操作者が、グリップ部Gに対して右手の掌を配置するとともに、右手の中指、薬指及び小指等をトリガーレバー41の指掛け部41bに掛け、前記の指でトリガーレバー41をグリップ部Gの側に握り締めると、トリガーレバー41はトリガー用コイルばね42の弾性力に抗しながら支軸41aを傾動中心として傾動し、把持部40の内部側に移動することとなる。そして、この傾動動作に伴ってスイッチ押圧片41cが移動し、マイクロスイッチ43をオンすることになるので、駆動源である不図示のモータが起動して刈払い機10を動作させることができるようになっている。
【0027】
なお、トリガーレバー41の最下方の位置には、把持部40から突出する方向での移動ストローク端を規定する突起部41dが形成されている。この突起部41dは、把持部40の内壁の一部に対して当接するように構成されているので、把持部40から突出する方向でトリガー用コイルばね42からの弾性力を常時受けることとなるトリガーレバー41の通常状態において、突起部41dがトリガーレバー41の位置決めを行う機能を発揮している。
【0028】
さて、本実施形態に係る把持部40には、さらに、トリガーレバー41の誤操作を防止するために当該トリガーレバー41の動作を規制/解除自在なセーフティロック機構51が設置されている。このセーフティロック機構51の具体的な構成について、図5〜図9Bを参照図面に加えて説明を行うこととする。なお、図5は、本実施形態に係るセーフティロック機構の構成部材であるセーフティボタンを示した外観斜視図であり、図6は、本実施形態に係るセーフティロック機構の構成部材であるロックプレートを示した外観斜視図である。また、図7は、本実施形態に係るトリガーレバーとセーフティロック機構との配置関係を説明するための概略図である。さらに、図8A〜図9Bは、本実施形態に係るセーフティロック機構の動作を説明するための図である。なお、図8A及び図8Bは、トリガーレバー41をロックした状態を示しており、図9A及び図9Bは、トリガーレバー41のロックを解除した状態を示している。さらに、図8A及び図9Aは、本実施形態に係るセーフティロック機構51の把持部40内部での様子を示した図であり、図8B及び図9Bは、本実施形態に係るセーフティロック機構51のみを抜き出して描いた図である。
【0029】
本実施形態に係るセーフティロック機構51は、セーフティボタン52、ロックプレート54及びロック用コイルばね56を有して構成されている。
【0030】
セーフティボタン52は、図2等に示されるように、把持部40の表面から通常状態において突出した状態で設置されている。また、このセーフティボタン52は、操作者の指で押し込み自在な構成を有している。セーフティボタン52の形状は、図5に示されるように、操作者からの操作を受けるボタン部52aと、ボタン部52aに連接して形成されるフック形状からなるフック部52bとを有して構成されている。フック部52bには、フック形状における内側の対向する2面に対してそれぞれ形成された一対の対向面としての2つのボタン側斜面53a,53bが形成されている。これら2つのボタン側斜面53a,53bは、図8B及び図9Bに示すように、セーフティボタン52の押し込み方向(符号Xの方向)に対して45度の傾斜角度をつけた傾斜面として形成されている。
【0031】
一方、ロックプレート54は、トリガーレバー41に沿って延びる棒状の部材であり、その上方には、セーフティボタン52のフック部52bに対して係合する係合部54aが形成されている。この係合部54aは、門型で開口部を有した形状を有しており、係合部54aが有する開口部が、フック部52bのフック形状に対して摺動自在な状態で嵌り合うことができるように構成されている。また、係合部54aが有する門型の開口部の内部及び上方には、一対の非対向面として形成されたプレート側斜面55a,55bがそれぞれ形成されている。一対の非対向面として形成されたプレート側斜面55a,55bは、それぞれがセーフティボタン52の有するボタン側斜面53a,53bに対向配置された斜面として構成されており、前述したセーフティボタン52に傾斜面として形成されたボタン側斜面53a,53bに対して係合する係合摺動部としての機能を備えている。
【0032】
したがって、セーフティボタン52のフック部52bに形成されたボタン側斜面53aとロックプレート54の係合部54aに形成されたプレート側斜面55aとが対向配置されており、また、セーフティボタン52のフック部52bに形成されたボタン側斜面53bとロックプレート54の係合部54aに形成されたプレート側斜面55bとが対向配置されている。そして、これら4つの斜面53a,53b,55a,55bは全てがセーフティボタン52の押し込み方向(図8B及び図9Bにおける符号Xの方向)に対して45度の傾斜角度を有して構成されているので、セーフティボタン52が押し込み方向(符号Xの方向)に移動すると、ロックプレート54は、押し込み方向(符号Xの方向)に対して直交する方向で相対的な移動を行うように構成されている。
【0033】
また、ロックプレート54は、係合部54aの形成箇所とは逆側の端部に当接部54bを有している。この当接部54bは、トリガーレバー41と当接状態になることで当該トリガーレバー41の動作を規制するとともに、トリガーレバー41との当接状態が解除されることで当該トリガーレバー41の動作規制を解除する部位である。
【0034】
さらに、ロックプレート54は、ロック用コイルばね56が設置されるとともに、このロック用コイルばね56からの弾性力を受けることとなる位置にばね係止用凸部54cを有している。ばね係止用凸部54cに対してロック用コイルばね56が設置されることにより、ロック用コイルばね56から及ぼされることとなる弾性力をロックプレート54が確実に受けることができるようになっている。
【0035】
以上説明したセーフティボタン52、ロックプレート54及びロック用コイルばね56は、図2、図4及び図7等で示されるように、把持部40の内部に対してそれぞれが組み合わされて設置されることで、セーフティロック機構51を構成している。具体的には、セーフティボタン52は、図2で示されるように、操作者が把持部40を右手で把持したときに、ちょうど親指が位置することとなる場所にボタン部52aを突出するように配置されている。そして、このセーフティボタン52には、セーフティボタン52のフック部52bに対してロックプレート54の係合部54aが係合している。セーフティボタン52に係合するロックプレート54は、トリガーレバー41に沿った位置に配置されており、また、ロックプレート54のばね係止用凸部54cと把持部40内部のリブとの間にロック用コイルばね56が設置されている。したがって、ロックプレート54は、ロック用コイルばね56の作用によってセーフティボタン52に対して常時押圧力を及ぼすようになっている。この押圧力の方向は、図4及び図7においては紙面上方向に向いた力なのであるが、ロックプレート54とセーフティボタン52はこの押圧力の方向に対して45度の方向で形成された斜面53a,53b,55a,55bを介して係合状態にあるので、斜面53a,53b,55a,55bの作用によってロックプレート54からの紙面上向きの押圧力が直交方向に変換され、セーフティボタン52は把持部40の表面から突出する方向に押圧力を受ける状態となっている。
【0036】
上述したセーフティロック機構51の通常状態においては、ロックプレート54に形成された当接部54bはトリガーレバー41と当接状態にあるので、トリガーレバー41の動きは規制され、操作ができないロック状態となっている(図8A参照)。なお、ロックプレート54によってトリガーレバー41の動作が規制されているときのロックプレート54の当接部54bとトリガーレバー41との当接箇所の当接面は、ロックプレート54の駆動方向に対して平行な面として構成されている。したがって、ロックプレート54の当接部54bは、トリガーレバー41から及ぼされる押圧力を確実に受けることができるようになっている。
【0037】
このようなトリガーレバー41のロック状態を解除したい場合には、操作者は、セーフティボタン52を指で押し込めばよい。すなわち、操作者がセーフティボタン52を指で押し込むことでセーフティボタン52のフック部52bが移動すると、ボタン側斜面53a,53bとプレート側斜面55a,55bの作用によって、ロックプレート54がセーフティボタン52の押し込み方向に対して直交する方向(図4及び図7における紙面下方向)で駆動される。ロックプレート54が図4及び図7における紙面下方向に移動すると、トリガーレバー41とロックプレート54との当接状態が解除されるので、トリガーレバー41の動作規制が解除され、トリガーレバー41の操作が可能な状態、すなわち、刈払い機10の起動が可能な状態とすることができる(図9A参照)。
【0038】
なお、本実施形態に係るセーフティロック機構51については、セーフティボタン52がトリガーレバー41の支点である支軸41aの近傍に設けられるとともに、ロックプレート54におけるトリガーレバー41との当接箇所(すなわち、当接部54b)がトリガーレバー41の力点である指掛け部41bの近傍に設けられているという特徴を有している。このような構成を採用したのは、セーフティロックのための押圧力を力点に近い場所に加える構成でなければ、確実なロック状態を実現することができないからである。例えば、操作者にとってセーフティボタン52が操作し易い位置であるトリガーレバー41の支点に近い位置に当接部54bを配置すると、セーフティロックのための押圧力は、てこの原理によってトリガーレバー41を操作する力に負けてしまうので、ロック状態を確実に維持することができなくなってしまう。しかしながら、本実施形態のように、当接部54bをトリガーレバー41の力点に近い位置に配置すれば、トリガーレバー41を操作しようとする押圧力を確実に受けることができ、また、セーフティロックのための押圧力がトリガーレバー41を操作しようとする押圧力に負けることもないので、トリガーレバー41のロック状態を確実に維持することが可能となるのである。
【0039】
なお、本実施形態に係るセーフティロック機構51には、操作性や安全性を高めるための様々な構成が付加されている。例えば、把持部40の内部には、図4における紙面上下方向で駆動されるロックプレート54の駆動動作を案内するために、複数の案内壁45が形成されている。この案内壁45は、把持部40の強度を高めるためのリブとしても機能する部材である。
【0040】
また、ロックプレート54の当接部54b近傍に形成された案内壁45aについては、トリガーレバー41の動作規制をしていてトリガーレバー41とロックプレート54が当接状態にあるときに、ロックプレート54の当接部54bを支え得る位置に形成されているので、例えば、ロック状態にもかかわらずトリガーレバー41が押されたときであっても、ロックプレート54の当接部54bに加わる押圧力を、ロックプレート54を介して上位案内壁45aが確実に受けることができる。したがって、案内壁45aは、確実なロック状態の維持とセーフティロック機構51の安定した動作の実現を助ける機能を発揮するものである。
【0041】
さらに、本実施形態に係る把持部40は、半割部材40a,40bを締結手段によって組み合わせて構成された部材であるが、上述した案内壁45aは、締結手段設置位置と近接するように設けられている。すなわち、本実施形態では、2つの半割部材40a,40bのいずれか一方にネジ溝40aが形成され、いずれか他方にネジ孔40bが形成されており、ネジ孔40bに対して不図示のネジを通してこのネジをネジ溝40aに螺入することにより、半割部材40a,40bが一体化して把持部40となるように構成されているが、このようにネジ溝40aやネジ孔40b及びネジ等で構成される締結手段の設置位置は、把持部40の他の箇所に比べて高い強度を有する部位となっている。このような高い強度を有する部位に近接するように、上述した案内壁45aを設置することで、ロックプレート54の当接部54bに加わる押圧力をさらに確実に受けることができるので、好ましい。
【0042】
なお、把持部40の内部に複数形成される案内壁45については、案内壁45の高さ寸法が、ロックプレート54の幅寸法よりも大きく形成されていることが好ましい。案内壁45の高さ寸法をロックプレート54の幅寸法よりも大きくすることにより、把持部40内部に対するセーフティロック機構51の組立性が向上するので、生産性が向上し、製造コストの削減効果を得ることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のロックプレート54については、複数の案内壁45と対向する方向に肉盗み形状54dが形成されている。この肉盗み形状54dを形成することで、ロックプレート54の断面形状が略H形(もしくは略n形)となり、強度の向上を図ることができる。また、肉盗み形状54dを形成することで、ロックプレート54の成形性が向上し、成形時における不良率の低減による製造コストの削減効果が得られる。さらに、肉盗み形状54dの採用によって、ロックプレート54を形成する材料を削減することができるので、材料費の低減や軽量化を図ることが可能となる。またさらに、本実施形態の肉盗み形状54dは複数の案内壁45と対向する方向に形成されていることから、ロックプレート54と案内壁45との接触状態は、面接触ではなく、より接触面積の少ない点接触となる。したがって、肉盗み形状54dが採用された本実施形態に係るロックプレート54は、高い摺動性を備えており、安定した駆動動作を実現することが可能となっている。
【0044】
以上、本実施形態の刈払い機10が備えるセーフティロック機構51の構成について説明した。次に、図8A〜図9Bを用いて、セーフティロック機構51を含めた本実施形態に係る把持部40の操作方法及び動作についての説明を行う。
【0045】
本実施形態に係る把持部40は、通常状態において、図8A及び図8Bに示すようにロックプレート54によってトリガーレバー41の動作が規制された状態となっている。かかる通常状態から、操作者がセーフティボタン52を指で押し込むと、セーフティボタン52のフック部52bが符号Xの方向に移動する。フック部52bが符号Xの方向に移動すると、ボタン側斜面53a,53bも符号Xの方向に移動するので、フック部52bに係合された係合部54aは、対向配置されたボタン側斜面53a,53bとプレート側斜面55a,55bの作用によって、紙面下方向に移動することとなる。すなわち、図8Bに示す状態から、図9Bに示す状態へと移行することとなる。これにより、ロックプレート54は、セーフティボタン52の押し込み方向に対して直交する方向(図8A及び図9Aにおける紙面下方向)に駆動されることとなるので、図8Aで示されていたようなトリガーレバー41とロックプレート54との当接状態が解除され、図9Aで示されているようにトリガーレバー41とロックプレート54との当接箇所がずれることにより、ロックプレート54の当接部54bがトリガーレバー41の溝穴に嵌り込み、トリガーレバー41の動作規制が解除されることとなる。なお、ロックが解除された図9Aに示す状態にあるときには、操作者がセーフティボタン52を押し込んだ指をセーフティボタン52から離したとしても、ロックプレート54の当接部54bはトリガーレバー41の溝穴に嵌り込んでいるので、そのままトリガーレバー41の押し込みを続けることができる。
【0046】
その後、操作者が刈払い機10を停止させるべくトリガーレバー41の押し込みを解除したときには、トリガーレバー41の溝穴に嵌り込んでいたロックプレート54の当接部54bはトリガーレバー41の溝穴から抜け出ることになるので、ロック用コイルばね56の弾性力を受けたロックプレート54は、図8A及び図9Aにおける紙面上方向へと駆動されることとなる。すると、先程とは逆に、ロックプレート54の係合部54aが図8B及び図9Bにおける符号Yの方向(図8B及び図9Bにおける紙面上方向)に向けてセーフティボタン52のフック部52を押圧することになる。符号Yの方向(図8B及び図9Bにおける紙面上方向)に向けて押圧力を受けたセーフティボタン52は、プレート側斜面55a,55bとボタン側斜面53a,53bとの作用によって、図8B及び図9Bにおける紙面左方向に移動することとなる。すなわち、図9Bに示す状態から、図8Bに示す状態へと移行することとなる。これにより、セーフティボタン52は通常状態に復帰することとなり、ロックプレート54によるトリガーレバー41のロック状態が実現することとなる。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、ロックプレート54によってトリガーレバー41の動作が規制されているときのロックプレート54の当接部54bとトリガーレバー41との当接箇所の当接面は、ロックプレート54の駆動方向に対して平行な面として構成されていた。しかしながら、ロックプレート54によってトリガーレバー41の動作が規制されているときのロックプレート54の当接部54bとトリガーレバー41との当接箇所の当接面については、ロックプレート54の駆動方向に対して傾斜角度をつけた面として構成することも可能である。具体的には、図10で示すように、トリガーレバー41からの押圧力がロックプレート54を紙面上方向に押圧するように当接面を傾斜させるとともに、その傾斜角度θを数度〜10度程度とすることで、ロック時におけるロックプレート54の移動方向(図10における紙面下方向)と、トリガーレバー41からの押圧力の作用方向(図10における紙面上方向)とが逆向きになるので、トリガーレバー41を押し込みながらのセーフティロック機構51のロック解除動作が困難となる。すなわち、当接面に傾斜角度θを付与することで、ロック状態から直ちに起動状態に移行することを防止することができるので、安全性の高い電動工具(刈払い機10)を実現することが可能となる。
【0049】
また、摺動自在な状態で対向配置される4つの斜面53a,53b,55a,55bについては、摺動性の向上のために、潤滑剤を付与したり、表面処理を行うことで固体潤滑を施したり、あるいは各斜面に対して半溝を形成し、一対の対向半溝によって形成される転走路内にボールやローラー等の転動体を介装することで形成される直線軸受構造を形成したりすることができる。
【0050】
さらに、上述した実施形態では、セーフティボタン52の側に対して傾斜面としてのボタン側斜面53a,53bを形成し、ロックプレート54の側に対して係合摺動部としてのプレート側斜面55a,55bを形成した場合を例示して説明した。しかしながら、本発明では、セーフティボタンの側に対して係合摺動部を形成し、ロックプレートの側に対して傾斜面を形成する構成を採用することもできる。
【0051】
また、プレート側斜面55a,55bとして形成された係合摺動部については、必ずしも斜面として形成されている必要はなく、本実施形態のボタン側斜面53a,53bのような傾斜面に対して係合かつ摺動可能な形状を有していればよい。つまり、係合摺動部の形状については、本実施形態で例示した一対の非対向面として形成されたプレート側斜面55a,55bのように傾斜面と面接触する形状の他に、例えば軸体形状として形成されることで傾斜面と点接触するものとすることもできる。
【0052】
またさらに、上述した実施形態では、本発明の特徴を刈払い機10に適用した場合を例示して説明したが、本発明の特徴事項は、刈払い機10だけではなく、本発明の把持部を設置可能なあらゆる形式の電動工具に対しても適用することが可能である。
【0053】
さらにまた、上述した実施形態では、4つの斜面53a,53b,55a,55bの傾斜角度を45度とした場合を例示して説明したが、本発明に係る斜面(ボタン側斜面及びプレート側斜面)の傾斜角度については、種々変更することができる。例えば、セーフティボタン52の押し込み方向(図8B及び図9Bにおける符号Xの方向)に対して45度よりもさらに角度をつけた傾斜角度(例えば、60度)の斜面を採用することで、セーフティボタン52の押し込み量に対するロックプレート54の移動量を増加することが可能となる。かかる構成により、セーフティボタン52の押し込み量が上述した本実施形態の場合と比べて少なくても、ロック状態を実現することが可能となる。
【0054】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
10 刈払い機、11 駆動部、12 操作棹、13 刈刃部、13a ホルダ、13b 防護カバー、14 ハンドル、15 ホック、21 左グリップ、40 把持部、40a,40b 半割部材、40a ネジ溝、40b ネジ孔、41 トリガーレバー、41a 支軸、41b 指掛け部、41c スイッチ押圧片、41d 突起部、42 トリガー用コイルばね、43 マイクロスイッチ、45 案内壁、45a (ロックプレートの当接部近傍に形成された)案内壁、51 セーフティロック機構、52 セーフティボタン、52a ボタン部、52b フック部、53a,53b ボタン側斜面、54 ロックプレート、54a 係合部、54b 当接部、54c ばね係止用凸部、54d 肉盗み形状、55a,55b プレート側斜面、56 ロック用コイルばね、G グリップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を起動するトリガーレバーと、前記トリガーレバーの誤操作を防止するために当該トリガーレバーの動作を規制/解除自在なセーフティロック機構とが、把持部に設けられた電動工具において、
前記セーフティロック機構は、
前記把持部の表面から常には突出した状態にあるとともに操作者の指で押し込み自在なセーフティボタンと、
前記セーフティボタンの動作に応じて駆動されるロックプレートと、
を有して構成され、
前記セーフティボタンが前記把持部の表面から突出した通常状態にあるときには、前記トリガーレバーと前記ロックプレートとが当接状態になることで当該トリガーレバーの動作が規制され、操作者が前記セーフティボタンを指で押し込んだときには、前記トリガーレバーと前記ロックプレートとの当接状態が解除されることで当該トリガーレバーの動作規制が解除され、さらに、
前記セーフティボタンが前記トリガーレバーの支点である支軸の近傍に設けられるとともに、前記ロックプレートにおける前記トリガーレバーとの当接箇所が前記トリガーレバーの力点である指掛け部の近傍に設けられることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具において、
前記セーフティボタン及び前記ロックプレートは、いずれか一方が前記セーフティボタンの押し込み方向に対して傾斜角度をつけた傾斜面を有するとともに、いずれか他方が前記傾斜面に係合する係合摺動部を備え、
前記傾斜面と前記係合摺動部の作用によって、前記ロックプレートが前記セーフティボタンの押し込み方向に対して略直交する方向で駆動されるように構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具において、
前記傾斜面は、前記セーフティボタン又は前記ロックプレートが有するフック形状における内側の対向する2面に対してそれぞれ形成された一対の対向面であり、
前記係合摺動部は、前記フック形状の内側に係合する前記ロックプレート又は前記セーフティボタンに形成された係合部に対して形成され、
一対の対向面として形成される前記傾斜面と、前記係合部に形成される前記係合摺動部とが、摺動自在な状態で係合配置されることを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動工具において、
前記ロックプレートは、前記把持部に設置された弾性部材からの弾性力を常時受けており、当該弾性部材からの弾性力が前記ロックプレートを介して前記セーフティボタンに及ぼされることにより、前記セーフティボタンは通常状態において前記把持部の表面から突出していることを特徴とする電動工具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動工具において、
前記ロックプレートによって前記トリガーレバーの動作が規制されているときの前記ロックプレートと前記トリガーレバーとの当接箇所の当接面が、前記ロックプレートの駆動方向に対して平行な面として構成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動工具において、
前記ロックプレートによって前記トリガーレバーの動作が規制されているときの前記ロックプレートと前記トリガーレバーとの当接箇所の当接面が、前記ロックプレートの駆動方向に対して傾斜角度をつけた面として構成されていることを特徴とする電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−179695(P2012−179695A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45532(P2011−45532)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)