説明

電動工具

【課題】風穴からの異物や水等の侵入を極力抑える電動工具の提供。
【解決手段】排気口22は、異物がハウジング2内に侵入しないように、カバー70で覆われている。カバー70のねじ穴にねじが螺合することにより、カバー70はハウジング2に固定されている。ねじを緩めることにより、カバー70をハウジング2から容易に取り外すことができる。主要壁71の一部であってねじ穴よりも前方の部分には、主要壁71を貫通する第1貫通孔70bが形成されている。また、第2貫通孔70cは、カバー70の一部であって最も前端部寄りの部分と、カバー70の一部であってハンドルの延出方向における端部と、カバー70の一部であってハンドルの反延出方向における端部と、に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動工具に関し、特にモータを動力源とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からモータを動力源とする電動工具には、モータ等を冷却するためのファンが設けられており、このモータやファンを内蔵するハウジングには、ハウジング内部に外気を取り入れる吸気口、又はハウジング内気を外部に排出する排気口をなす風穴が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−266260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この風穴は、吸排気の効率から排気口若しくは吸気口のいずれか一方がファン近傍に形成されることがある。しかしながらファン近傍に風穴を形成することにより、風穴からの異物侵入によるファンのロック及び破損やモータのショート等が発生するおそれがあった。また、風穴から雨水等がハウジング内部へ流入することは、モータ等を破損に繋がる。そこで、本発明は、風穴からの異物や水等の侵入を極力抑える電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、先端工具を駆動するモータと、該モータを内蔵するハウジングと、を備え、該ハウジングには該ハウジングの外部と内部とを連通する風穴が形成され、該ハウジングの外部には、該風穴を覆うカバーが設けられ、該カバーの一部であって、該ハウジング外部と内部とを結ぶ方向において該風穴に対向する部分からずれた部分には、該ハウジング外部と内部とを結ぶ方向において該カバーを貫通する第1貫通孔が形成され、該カバーの一部には、該ハウジングの外表面に沿った方向に該カバーを貫通する第2貫通孔が形成されている電動工具を提供する。
【0006】
カバーの一部であって、ハウジング外部と内部とを結ぶ方向において風穴に対向する部分からずれた部分には、ハウジング外部と内部とを結ぶ方向においてカバーを貫通する第1貫通孔が形成され、カバーの一部には、ハウジングの外表面に沿った方向にカバーを貫通する第2貫通孔が形成されているため、カバーの外部から第1貫通孔を通して水や異物が浸入したときに、ハウジングに衝突し、ハウジングの風穴からハウジング内部へ浸入することを防止することができる。その後、水や異物はハウジングの外面に沿って重力により落下し、第2貫通孔からカバー外部へと排出される。また、第1貫通孔と第2貫通孔とが形成されているため、空気が流れる流路面積を十分に確保することができ、空気の流れを阻害することを防止できる。
【0007】
ここで、該カバーは、該ハウジングに対向するハウジング対向面を有し、該ハウジング対向面の一部であって該風穴に対向する部分には、該風穴に向かって突出する凸部が設けられ、該凸部の外面は、該凸部の突出端と該ハウジング対向面とを滑らかに結ぶ曲面からなることが好ましい。
【0008】
凸部の外面は、凸部の突出端とハウジング対向面とを滑らかに結ぶ曲面からなるため、風穴がハウジング内部への空気の流入口である場合には、凸部の外面が風穴へ流入する空気をガイドすることができ、風穴がハウジング外部への空気の排出口である場合には、凸部の外面が風穴から流出する空気をガイドすることができる。このため、空気をカバーとハウジングとの間でスムーズに流すことができ、空気がカバーとハウジングとの間で滞ることを防止することができる。
【0009】
また、該ハウジングの外表面の一部であって該風穴の周囲の部分には、該ハウジングの外表面から突出し該風穴を取り囲むように配置された防護壁が設けられていることが好ましい。
【0010】
ハウジングの外表面の一部であって風穴の周囲の部分には、ハウジングの外表面から突出し風穴を取り囲むように配置された防護壁が設けられているため、ハウジングの外面に沿って移動する水や異物が風穴に浸入することを、防護壁が阻止することができる。
【0011】
また、該防護壁は該カバーと一体成形されて構成されていることが好ましい。防護壁はカバーと一体成形されて構成されているため、防護壁に係る部品点数の増加を防ぐことができる。
【0012】
また、該防護壁は該ハウジングと一体成形されて構成されていることが好ましい。防護壁はハウジングと一体成形されて構成されているため、強度の高い防護壁とすることができる。また、カバーに防護壁を一体成形する場合と比較して、成形を容易とすることができる。
【0013】
また、該モータで駆動されるファンを備え、該風穴は、該ハウジングの一部であって該ファンの周縁部に対向する部分に形成されていることが好ましい。
【0014】
風穴は、ハウジングの一部であってファンの周縁部に対向する部分に形成されているため、カバーによって風穴から異物が侵入し、当該異物がファンの回転を阻害することを防止できる。このため、JIS C 0920に定められるIP規格を満たす電動工具とすることができる。
【0015】
また、該ハウジングは、該先端工具を支持する先端部と、該先端部に対する後端部と、該先端部と該後端部とを結ぶ方向と交差する方向へ延出するハンドル部とを有し、該第2貫通孔は、該カバーの一部であって最も該前端部寄りの部分と、該カバーの一部であって該ハンドル部の延出方向における端部と、該カバーの一部であって該ハンドル部の反延出方向における端部と、に形成されていることが好ましい。
【0016】
第2貫通孔は、カバーの一部であって最も前端部寄りの部分と、カバーの一部であってハンドル部の延出方向における端部と、カバーの一部であってハンドル部の反延出方向における端部と、に形成されているため、先端工具によりねじ締等の作業を行っているときに、第1貫通孔から第2貫通孔へと向かう方向を重量の方向に略一致させることができ、第1貫通孔からカバーとハウジングとの間に流入した雨水や異物を第2貫通孔から容易に排出することができる。
【0017】
また、該カバーは該ハウジングに対して着脱可能であることが好ましい。カバーはハウジングに対して着脱可能であるため、異物がハウジングとカバーとの間に留まった場合であってもカバーをハウジングから取り外すことにより、容易に異物を取り除くことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動工具によれば、風穴からの異物や水等の侵入を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動工具を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態による電動工具を示す要部側面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る電動工具のカバーを示す斜視図。
【図4】図2のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図2のV−V線に沿った断面図。
【図6】本発明の実施の形態に係る電動工具の第1の変形例を示す要部断面図。
【図7】本発明の実施の形態による電動工具の第3の変形例を示す要部側面図。
【図8】本発明の実施の形態による電動工具の第3の変形例を示す要部断面図。
【図9】本発明の実施の形態に係る電動工具の第2の変形例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態による電動工具を図1乃至図5に基づき説明する。図1に示される電動工具たるインパクトドライバ1は、ビットやソケット等の先端工具により、ボルトやナット、ねじを締結する工具であり、主として、ハウジング2と、モータ3と、ギヤ機構4と、インパクト機構5と、から構成され、充電式の電池6を電源として駆動する。
【0021】
ハウジング2は、6ナイロンから構成されている樹脂ハウジングであり、モータ3等が収容される胴体部2Aと、胴体部2Aから延出されるハンドル2Bとを有している。胴体部2A及びハンドル2B内部には収容空間が画成されている。ハウジング2は、後述の上下方向及び前後方向に延びる平面で二分割され略対称な分割ハウジングで構成されている。収容空間において胴体部2A内に該当する箇所には、上述のモータ3とギヤ機構4とインパクト機構5とが同軸上に一端側から他端側に向かって並んで配置されている。このモータ3とギヤ機構4とインパクト機構5とが並んでいる軸方向においてモータ3側を後側インパクト機構5側を前側として前後方向と定義する。また前後方向と直交する方向であって胴体部2Aからハンドル2Bが延出される方向を下方向とし、その逆の方向を上方向として上下方向を定義する。
【0022】
胴体部2Aは、モータ3の外形に沿うように略円筒状に構成されており、胴体部2Aにおいて、モータ3の前後位置かつ胴体部2Aの左右側面位置には、図2に示すように、それぞれ風穴である吸気口21、排気口22(図4)が形成されている。吸気口21は、胴体部2Aにおいてモータ3の後方位置に形成されており、異物がハウジング2内に侵入しないように吸気側格子部21Aで覆われている。吸気側格子部21Aは、胴体部2A表面において長手方向が上下方向及び前後方向と略45°で交差する複数の長尺材が互いに平行かつ等間隔に配置されてハウジング2と一体に構成されている。
【0023】
排気口22は、胴体部2Aにおいて後述のファン32B近傍であって、ファン32Bの半径方向においてファン32B最外周部分と対向する位置に形成されており、異物がハウジング2内に侵入しないように、カバー70で覆われている。
【0024】
なお、図2においてカバー70は1つのみ図示されているが、胴体部2Aの図2に示す側とは反対の側にも図示せぬカバーが設けられている。図示せぬカバーとカバー70とは鏡面対称形状をなしており、カバー70のみ説明し、図示せぬカバーについては説明を省略する。
【0025】
カバー70は、図3に示すように、主要壁71と、上側壁72と、下側壁73と、前側壁74と、後側壁75とを有しており、主要壁71は、上下方向における長さが後端部において最も広く、前方へ向かって徐所に狭くなっている。主要壁71の一部であって前後方向における略中央部の上下端部には、ねじ穴70aが形成されている。ねじ穴70aにねじ70A(図2)が螺合することにより、カバー70はハウジング2に固定されている。ねじ70Aを緩めることにより、カバー70をハウジング2から容易に取り外すことができる。
【0026】
主要壁71の一部であって当該ねじ穴70aよりも前方の部分には、主要壁71を貫通する第1貫通孔70bが形成されている。第1貫通孔70bは、上下方向に対して略30°の角度をなして延出する複数の長穴からなり、上下方向に3列に並んで形成され、中央の列の6つの長穴が最も長手方向の長さが長く形成されている。下の列の長穴は6つ形成されており、上の列の長穴は5つ形成されている。また、第1貫通孔70bは、主要壁71の後端部にも、主要壁71の後端縁に沿って3つ形成されている。主要壁71の一部であって、主要壁71の前部に形成された複数の第1貫通孔70bと主要壁71の後部に形成された複数の第1貫通孔70bとの間の部分70Bは、排気口22に対向している。
【0027】
後側壁75は、主要壁71からハウジング2へ向かって延出してハウジング2に当接しており、主要壁71の後端縁に沿って当該後端縁の上端から下端に至るまで設けられている。前側壁74は、主要壁71からハウジング2へ向かって延出してハウジング2に当接しており、主要壁71の前端縁に沿って当該前端縁の上下方向における中央部分に設けられている。上側壁72は、主要壁71からハウジング2へ向かって延出してハウジング2に当接しており、主要壁71の上端縁に沿って、ねじ穴70aよりも前側に形成された複数の第1貫通孔70bに対向する部分に設けられている。下側壁73は、主要壁71からハウジング2へ向かって延出してハウジング2に当接しており、主要壁71の下端縁に沿って、ねじ穴70aよりも前側に形成された複数の第1貫通孔70bに対向する部分に設けられている。
【0028】
主要壁71の前端縁と下端縁とが接続されている部分には、下側壁73、前側壁74は設けられていない。同様に、主要壁71の前端縁と上端縁とが接続されている部分には、上側壁72、前側壁74は設けられていない。また、主要壁71の上端縁においてねじ穴70aから後側壁75が設けられている部分までの間の部分には上側壁72は設けられていない。同様に主要壁71の下端縁においてねじ穴70aから後側壁75が設けられている部分までの間の部分には下側壁73は設けられていない。この構成により、これらの部分は、カバー70とハウジング2の外表面とにより囲まれる空間の内部と外部とを連通する第2貫通孔70cが画成されている。
【0029】
より詳細には、主要壁71の前端縁において下端縁と接続されている部分、主要壁71の下端縁において前端縁と接続されている部分には、1つの第2貫通孔70cが形成されており、主要壁71の前端縁において上端縁と接続されている部分、主要壁71の上端縁において前端縁と接続されている部分には、1つの第2貫通孔70cが形成されている。また、主要壁71の上端縁において上側壁72と後側壁75との間の部分には、1つの第2貫通孔70cが形成されており、主要壁71の下端縁において下側壁73と後側壁75との間の部分には、1つの第2貫通孔70cが形成されている。即ち、第2貫通孔70cは、主要壁71と前側壁74と下側壁73とハウジング2の外面とにより画成され、また、主要壁71と前側壁74と上側壁72とハウジング2の外面とにより画成され、また、主要壁71と後側壁75と下側壁73とハウジング2の外面とにより画成され、また、主要壁71と後側壁75と上側壁72とハウジング2の外面とにより画成されている。第1貫通孔70b、第2貫通孔70cの形成されている位置、大きさは、JIS C 0920に定められるIP(International Protection)規格のIP4Xに基づき、それぞれφ1.0のピンPを、第1貫通孔70b、第2貫通孔70cと排気口22とを通してハウジング2内部へ挿入不能となる程度である。
【0030】
図1に示すように、ハウジング2において、ハンドル2Bの下端位置には、電池6が装着されて電気的に接続される端子部24が配置されている。端子部24の上部にはモータ3の回転を制御する制御回路部100が配置されている。ハンドル2Bの根元部分には、作業者が操作するトリガ26Aが設けられると共に、トリガ26A及び制御回路部100に接続されモータ3への導通を制御するスイッチ部26Bが設けられている。またハンドル2Bの根元であってトリガ26Aの上方には、モータ3の回転方向を切り替える図示せぬ正逆切換レバーが設けられている。ハウジング2において前端であってインパクト機構5の下方には、制御回路部100に接続され前側に向けて照射するLEDライト27が設けられている。またハウジング2内には、モータ3周囲であって吸気口21から排気口22に跨る冷却通路2cが形成されている。
【0031】
モータ3は、DCブラシレスモータであり、ステータ31と、ロータ32と、モータ駆動回路装置33とを主に備えている。ステータ31は、筒状に構成されてモータ3の外殻をなし、外周面がハウジング2に保持されている。
【0032】
ロータ32は、ステータ31内に回転可能に配置され、その回転軸位置に前後方向に延びるロータシャフト32Aが同軸一体回転するように設けられている。ロータシャフト32Aの前端には、遠心ファンであるファン32Bとピニオンギヤ32Cとが同軸一体回転するように装着されると共にベアリング32Dが装着されており、ロータシャフト32Aは後述の枠体4Aに支承されている。またロータシャフト32Aの後端にはベアリング32Eが装着され、ロータシャフト32Aは胴体部2Aに支承されている。これらベアリング32D、32Eによりロータシャフト32Aは回転可能に支持されている。ロータシャフト32Aと一体にファン32Bが回転することにより、吸気口21から胴体部2A内収容空間の冷却通路2cを通り、排気口22へと抜ける気流が形成される。
【0033】
回路基板であるモータ駆動回路装置33は、ステータ31の後方に配置されてステータ31に固定されており、複数のスイッチング素子を備えている。
【0034】
胴体部2A内においてモータ3の前側にはギヤ機構4が配置されている。ギヤ機構4は、ピニオンギヤ32Cを太陽ギヤとする遊星歯車機構であり、枠体4Aを外殻としてハウジング2に装着されており、スピンドル41と、リングギヤ42と、複数の遊星ギヤ43とから構成されている。スピンドル41は、遊星ギヤ43を複数支承する遊星キャリアであり、その前端で後述のアンビル52を同軸回転可能に支承し、その後端で枠体4Aにベアリング4Bを介して回転可能に支承されている。スピンドル41において後端近傍位置には、遊星ギヤ43を支承すると共に、後述の第一スプリング54Aを受ける鍔部41Aが設けられている。またスピンドル41には、後述のハンマ53が前後方向へと移動可能に環装されると共に、軸方向に対して斜めに延びる一対の溝41a、41aが形成されており、この溝41a内にそれぞれボール41B、41Bが挿入され、このボール41B、41Bによりハンマ53と接続されている。
【0035】
リングギヤ42は、スピンドル41外周に配置されて枠体4Aに回転不能に固定されている。複数の遊星ギヤ43はそれぞれスピンドル41に対して回転可能にスピンドル41に支承され、リングギヤ42に噛合すると共にピニオンギヤ32Cに噛合している。上記構成により、ピニオンギヤ32Cの回転が減速されてスピンドル41に伝達される。
【0036】
インパクト機構5は主に、ハンマケース51と、アンビル52と、ハンマ53と、第一スプリング54Aとから主に構成されている。ハンマケース51は、前端が窄まった円筒状を成しており後端部分でハウジング2の胴体部2Aにモータ3と同軸的に接続され、前端部分にアンビル52を回転可能に支承する軸受51Aを有している。
【0037】
アンビル52は、前後方向に延びる円柱状に構成され、軸受51Aによってハンマケース51に回転可能に支承されると共に、後端に形成された穿孔52a内にスピンドル41の先端部分が隙間嵌めされてスピンドル41に回転可能に支承されている。アンビル52の前端部分には、図示せぬソケットが装着される先端工具装着部52Aが設けられている。先端工具装着部52Aは、アンビル52の前端に形成された装着孔52b内に突出可能な複数のボール52Cと、バネにより後方に付勢されると共に、後方に付勢された状態でボール52Cと当接してボール52Cを装着孔52b内に突出させる操作部52Dとから主に構成されている。またアンビル52の後端には、半径方向かつ相反する方向にそれぞれ延びる一対の被係合部である羽根部52E、52Eが一体に設けられている。
【0038】
ハンマ53は、スピンドル41に環装される貫通孔53aが形成された筒状に構成されている。ハンマ53の前端には、一対の係合部であり羽根部52E、52Eとそれぞれ係合可能な爪部53A、53Aが設けられている。爪部53A、53Aは、ハンマ53の前端から前側に突出し、それぞれ軸周りに180°離れた位置に配置されており、軸周りに対称な形状に形成されている。この爪部53A、53Aの周方向と交差する側面は爪部53Aが先細りするように斜めに構成されている。よってアンビル52に対してハンマ53に負荷がかかった場合には、この側面に沿ってアンビル52がハンマ53に対して相対的に前側へと移動することにより、羽根部52E、52Eが爪部53A、53Aを乗り越え、アンビル52に対してハンマ53が回転することができる。実際の作業時には、アンビル52がハウジング2に対して前側へと移動することが不能であるため、アンビル52に対してハンマ53が後退することにより、同様に羽根部52E、52Eが爪部53A、53Aを乗り越えてアンビル52に対してハンマ53が回転することができる。
【0039】
ハンマ53において貫通孔53a内表面には、一対のボール41B、41Bがそれぞれ係合する前後方向に延びる溝53b、53bが形成されている。この溝53b、53bと、溝41a、41aとにそれぞれボール41B、41Bが係合することにより、スピンドル41に対してハンマ53が同軸一体回転可能になる。またハンマ53の後端側には、第一スプリング54Aを受ける受部53cが貫通孔53aを画成する壁回りに一連に形成されている。
【0040】
第一スプリング54Aはワッシャを介してスピンドル41の鍔部41Aに担持されている。スピンドル41の鍔部41Aより前端部分は、第一スプリング54Aと平行に前方へ伸びている。第一スプリング54Aは、受部53cに挿入されてハンマ53をスピンドル41に対して軸方向かつ前側方向へ付勢している。よって第一スプリング54Aの付勢方向は軸方向かつ前側方向に一致する。第一スプリング54Aがハンマ53を前側へと付勢することにより、ハンマ53の爪部53A、53Aがアンビル52の羽根部52E、52Eと係合することができる。
【0041】
また上述の負荷時においてハンマ53がアンビル52に対して後退した際にも、羽根部52E、52Eが爪部53A、53Aを乗り越えたと同時に第一スプリング54Aにより、ハンマ53が前側であるアンビル52側へと移動し、爪部53A、53Aと羽根部52E、52Eとが当接する。このようにハンマ53がアンビル52に対して回転し、爪部53A、53Aが羽根部52E、52Eと当接することにより、アンビル52に回転方向の打撃力が加えられる。
【0042】
カバー70が設けられているため、カバー70の外部からカバー70とハウジング2の外面とで囲まれる空間内に第1貫通孔70bを通して水や異物が浸入したときに、図4、図5の矢印Aに示すようにこれらはハウジング2に衝突し、ハウジング2の排気口22からハウジング2内部へ浸入することを防止することができる。カバー70とハウジング2の外面とで囲まれる空間内に侵入した水や異物は、その後ハウジング2の外面に沿って重力により落下し、第2貫通孔70cからカバー70外部へと排出される。
【0043】
また、第1貫通孔70bと第2貫通孔70cとが形成されているため、図4の矢印Bに示すように流れる空気の流路面積を十分に確保することができ、排気口22から排出される空気の流れを阻害することを防止できる。
【0044】
また、棒状をしたピン等が第1貫通孔70b、第2貫通孔70cから挿入された場合であっても、第1貫通孔70b、第2貫通孔70cと排気口22との位置関係や、これらの大きさはJIS C 0920に定められるIP規格のIP4Xに基づくため、φ1.0以上のピンであれば、ハウジング2内に挿入されることを阻止することができ、ピン等によりファンの回転を阻害することを防止することができる。
【0045】
また、第2貫通孔70cはカバー70の前端部と下端部と上端部とに形成されているため、先端工具によりねじ締等の作業を行っているときに、第1貫通孔70bから第2貫通孔70cへと向かう方向を重量の方向に略一致させることができ、第1貫通孔70bからカバー70とハウジング2とにより囲まれた空間に流入した雨水や異物を、重力を利用して第2貫通孔70cから容易に排出することができる。
【0046】
また、カバー70はハウジング2に対して着脱可能であるため、異物がハウジング2とカバー70との間に留まった場合であっても、カバー70をハウジング2から取り外すことにより、容易に当該異物を取り除くことができる。
【0047】
本発明による電動工具は上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えば、本実施の形態では、排気口22を覆うようにカバー70が設けられたが、これに限定されず、吸気口を覆うようにカバーが設けられてもよい。
【0048】
また、カバーは本実施の形態の形状、構成に限定されない。例えば、図6に示すように、カバー170の表面であってハウジング2に対向するハウジング対向面170Eに、凸部176を設けてもよい。凸部176は、ハウジング対向面170Eの一部であって排気口22に対向する位置に設けられている。凸部176は、前後方向に延びる仮想直接と上下方向に延びる仮想直線とを含む面で切った断面が、略山形状をなしており、突出端とハウジング対向面170Eとを結ぶ凸部176の外面が、図6に示す断面視で、突出端とハウジング対向面170Eとを滑らかに結び扇の勾配を有する曲線となるような曲面176Aにより構成されている。
【0049】
このため、カバーが流入口を覆う構成の場合には、凸部176の外面が流入口へ流入する空気をガイドすることができ、カバー170が排気口22を覆う構成の場合には、図6の矢印Bで示すように、凸部176の外面が排気口22から流出する空気をガイドすることができる。このため、空気がカバー170とハウジング2とにより囲まれる空間内で滞ることを防止することができる。
【0050】
また、カバーにより覆われる排気口22、流入口の周りに防護壁2Cが設けられた構成としてもよい。具体的には、例えば、図7に示すように、排気口22は、前後方向に指向する長穴が、上下方向一列に7つ配置されて形成された構成をなしているが、防護壁2Cはこの7つの排気口22全体を取り囲むように、ハウジング2と一体で成形されハウジング2の外表面から突出して設けられる。突出量はカバー270のハウジング対向面170Eには至らない程度であるため、排気口22からの空気の流れを阻害することはほとんどないが、図9の矢印Aで示すように、カバー270とハウジング2とにより囲まれる空間内に入った異物や雨水等がハウジング2の外表面をつたって排気口22からハウジング2内部へ入ることを防止することができる。また、ハウジング2と一体で防護壁2Cが成形されて構成されているため、強度の高い防護壁2Cとすることができる。
【0051】
また、防護壁はハウジングと一体で成形される構成に限定されない。例えば、図9に示すように、防護壁270Fはカバーと一体で成形されてもよい。このようにすることで、防護壁270Fに係る部品点数の増加を防ぐことができる。また、カバーの成形を容易とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の電動工具は、上述したインパクトドライバに限定されず、モータ及びファンを備え、ハウジングに吸気口や排気口が形成されている電動工具一般に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:インパクトドライバ 2:ハウジング 2C:防護壁 3:モータ 21:吸気口 22:排気口 32B:ファン 70、170、270:カバー 70b:第1貫通孔 70c:第2貫通孔 170E:ハウジング対向面 176:凸部 270F:防護壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具を駆動するモータと、
該モータを内蔵するハウジングと、を備え、
該ハウジングには該ハウジングの外部と内部とを連通する風穴が形成され、該ハウジングの外部には、該風穴を覆うカバーが設けられ、
該カバーの一部であって、該ハウジング外部と内部とを結ぶ方向において該風穴に対向する部分からずれた部分には、該ハウジング外部と内部とを結ぶ方向において該カバーを貫通する第1貫通孔が形成され、
該カバーの一部には、該ハウジングの外表面に沿った方向に該カバーを貫通する第2貫通孔が形成されていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
該カバーは、該ハウジングに対向するハウジング対向面を有し、
該ハウジング対向面の一部であって該風穴に対向する部分には、該風穴に向かって突出する凸部が設けられ、
該凸部の外面は、該凸部の突出端と該ハウジング対向面とを滑らかに結ぶ曲面からなることを特徴とする請求項1記載の電動工具。
【請求項3】
該ハウジングの外表面の一部であって該風穴の周囲の部分には、該ハウジングの外表面から突出し該風穴を取り囲むように配置された防護壁が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動工具。
【請求項4】
該防護壁は該カバーと一体成形されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の電動工具。
【請求項5】
該防護壁は該ハウジングと一体成形されて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一記載の電動工具。
【請求項6】
該モータで駆動されるファンを備え、
該風穴は、該ハウジングの一部であって該ファンの周縁部に対向する部分に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一記載の電動工具。
【請求項7】
該ハウジングは、該先端工具を支持する先端部と、該先端部に対する後端部と、該先端部と該後端部とを結ぶ方向と交差する方向へ延出するハンドル部とを有し、
該第2貫通孔は、該カバーの一部であって最も該前端部寄りの部分と、該カバーの一部であって該ハンドル部の延出方向における端部と、該カバーの一部であって該ハンドル部の反延出方向における端部と、に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の電動工具。
【請求項8】
該カバーは該ハウジングに対して着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−75351(P2013−75351A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217644(P2011−217644)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)