電動式パワーステアリング装置
【目的】 電動式パワーステアリングにおいて、回転角検出器または回転角速度検出器等の高価なセンサを省略してコストの低減を図る。
【構成】 電圧検出回路20により、操舵補助トルクを発生するモータ6の端子電圧を検出する。CPU22Aは、電圧検出回路20により検出された電圧検出値Vmと、操舵トルクおよび車速に基づいて作成したアシスト指令に基づく電流目標値Idとにより、ω=Vm−(R1×Id)なる式を用いてモータ速度ωを算出する(但し、R1は定数)。そして、この算出したモータ速度ωによって、粘性制御、慣性制御および操舵状態の検出等を行う。
【構成】 電圧検出回路20により、操舵補助トルクを発生するモータ6の端子電圧を検出する。CPU22Aは、電圧検出回路20により検出された電圧検出値Vmと、操舵トルクおよび車速に基づいて作成したアシスト指令に基づく電流目標値Idとにより、ω=Vm−(R1×Id)なる式を用いてモータ速度ωを算出する(但し、R1は定数)。そして、この算出したモータ速度ωによって、粘性制御、慣性制御および操舵状態の検出等を行う。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両に用いて好適な電動式パワーステアリング装置に係わり、詳しくはモータの回転出力によって操舵力を補助する電動式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両のパワーステアリング装置として油圧式に代えてモータを用いた電動式のものが使用されており、モータはアクチュエータとして小型、軽量等の利点から今後とも増加傾向にある。
【0003】従来のパワーステアリング装置では、トクルセンサによって操舵系の操舵トルクを検出するとともに、車速センサによって車速を検出し、これらの検出結果に基づいて操舵系に連結されたモータの駆動力を制御し、パワーアシストを行っている。そして、一般的には車速感応型であり、低車速では軽く、高車速では重くなるようにトルクセンサ入力に応じてアシスト力を制御している。そして、一般的には速度感応型であり、低車速では軽く、高車速では重くなるようにトルクセンサ入力に応じてアシスト力を制御している。
【0004】ところで、アシスト用モータのトルクをギヤで減速してラック軸等に伝達する構成とした場合、アシスト用モータの慣性モーメントがあたかも大きくなるように作用し、また、ギヤのフリクションが影響して高車速時の収斂性が悪化したり、低車速時のハンドル戻りが悪化したりするので、本出願人は舵角加速度に応じた慣性制御信号を加えることで、これらの問題を解決できる装置を開発した。以下、本出願人によって開発された従来のパワーステアリング装置について説明する。
【0005】図15は本出願人によって開発された従来のパワーステアリング装置を適用したステアリング機械系の一例を示す構成図であり、この図において、操舵ハンドル1の回転力はハンドル軸を介してピニオンギアを含むステアリングギア2に伝達されるとともに、上記ピニオンギアによりラック軸3に伝達され、さらにナックルアーム等を経て車輪4が転向される。
【0006】また、コントロール装置5により制御駆動される操舵アシスト(補助)モータ(DCモータ)6の回転力がピニオンギアを含むステアリングギア7とラック軸3との噛み合いによりラック軸3に伝達され、ハンドル1による操舵を補助することになる。ハンドル1とモータ6の回転軸はギア2、7およびラック軸3により機械的に連結されている。
【0007】操舵トルクセンサ11により操舵トルクが検出され、車速センサ12により車速が検出される。そして、これらの検出トルク、車速等に基づきコントロール装置5によってモータ6が制御される。コントロール装置5およびモータ6には車両に搭載されたバッテリ8から、その動作電力が供給される。
【0008】コントロール装置5は、図16に示すようにA/D変換回路15〜17と、カウンタ18と、電流検出回路19、電圧検出回路20と、モータ6を駆動する駆動回路21と、モータ6の全体的な制御を統括するCPU22(例えばマイクロプロセッサ)と、メモリ23と、コンピュータと上記入/出力機器とのインターフェース回路等(図示略)を主に構成されている。
【0009】操舵トルクセンサ11によって検出された操舵トルクは、A/D変換回路15によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。また、車速センサ12によって検出された車速は、カウンタ18によってカウントされ、車速を表すカウント値がCPU22に取り込まれる。CPU22は入力された操舵トルクおよび車速に基づいてアシスト指令を作成し、それに基づく制御信号を駆動回路21に出力し、駆動回路21によりモータ6が駆動される。この結果、駆動回路21から出力されるアシストトルク値(又はモータ電流)は図17に示すように、検出トルクVTと検出車速VSによって定められた値となる。
【0010】ここで、図17においては、操舵トルクVTに応じて、一定範囲の操舵トルクVTに対してはこれに略比例するモータ電流が流れ(アシストトルクが発生し)、上記範囲を超えると、ある一定のモータ電流が流れる(アシストトルクが発生する)ように、また車速VSに応じて、車速VSが速いときにはモータ電流(アシストトルク)を少なくし、車速VSが遅いときにはモータ電流(アシストトルク)を多くするように、モータ6を制御するためのアシスト指令が発生することを表している。
【0011】図16に戻り、モータ電流は電流検出回路19によって検出され、A/D変換回路16によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。他方、モータ6の端子電圧(モータ電圧)は電圧検出回路20によって検出され、A/D変換回路17によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。メモリ23はCPU22の処理に必要なプログラムやデータを記憶している。
【0012】次に、図18はコントロール装置5に内蔵されたコンピュータの各種機能をブロック的に、他の入出力機器、各種回路を示すブロック図とともに、描いたものである。この図において、アシスト指令部30にはトルクセンサ11の検出トルクVtと、車速センサ12の検出車速Vsとが与えられる。アシスト指令部30内のアシストトルク指示関数部31は検出トルクVtに応じてモータ6によって発生すべきアシストトルクを示す指令値を出力する。
【0013】乗算定数関数部32は検出車速Vsに応じて定数を発生し、この定数が乗算演算部33において上記アシストトルク指令値に乗じられる。この結果、乗算演算部33から出力されるアシストトルク値は上述したように図17に示すように検出トルクVtと検出車速Vsによって定められた値となる。
【0014】一方、検出トルクVtは位相補償部34にも与えられる。この位相補償部34においては検出トルクVtの微分値が計算され、微分乗算定数関数部35で発生した車速Vsに応じた定数をその微分値に乗算した信号を出力する。この出力が乗算した演算部33の出力に加算されることにより、アシスト指令部30の出力となって電流制御部37に供給される。
【0015】電流制御部37は、例えば4個のスイッチング素子を含むHブリッジ駆動法にしたがうPWM(Pulse Width Modulation)パルスを用いたチョッパ動作によってモータ6を駆動制御するもので、電機子電流検出部38にて検出された電流検出値Imと電流目標値Idとが一致するようにPWMデューティを決定する。電流フィードバックP(比例)制御の場合を示すと、電圧操作量演算部39において与えられた電流目標値Idと電流検出値Imとの偏差を演算し、この偏差の絶対値が絶対値変換部40で得られ、この絶対値に基づいてデューティ生成部41でPWMパルスのデューティ比が決定される。
【0016】一方、上記偏差の極性(正または負)が正負判定部42で判定され、生成されたデューティ比と判別された極性に基づいてモータ駆動部43はHブリッジ型に配線された4個のスイッチング素子をオンオフ制御してモータ6を駆動する。なお、この場合、電流フィードバックP制御について示したが、他にもPI(比例・積分)制御、PID(比例・積分・微分)制御などによるフィードバック制御法の採用も勿論可能である。また、電流制御部37に対する外乱を推定し、その外乱をフィードフォーワードすることによる電流制御法も用いても良い。
【0017】一方、モータ速度算出部44では、モータ電圧検出部45で検出された電圧検出値Vmと電流検出値Imとにより、次の数式■によってモータ速度ωが算出される。この算出されたモータ速度ωによって粘性制御、慣性制御などが行われる。ここで、数式■においてR0は定数である。
【0018】ω=Vm−(R0×Im)……■
【0019】粘性指令部46においては、算出されたモータ速度ωに基づき粘性補償値指示関数部47と乗算演算部48により粘性指令値が決定される。また、慣性補償部49においては、微分回路50によるモータ速度ωの微分値に応じて慣性補償値指示関数部51の出力が決定され、さらに乗算演算部52により決定された慣性乗算定数を乗算して慣性指令値が決定される。これら粘性指令部46および慣性補償部49の各々の出力はアシスト指令部30の出力に加算され、電流目標値Idとして電流制御部37に供給される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本出願人によって開発された上述した従来の電動式パワーステアリング装置にあっては、ギヤのフリクションの影響が少なく、低速から高速にかけて安定したハンドル操作が実現できたが、その反面、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度検出器(例えばエンコーダ、タコジェネレータ等)などのセンサを設ける必要があり、装置の価格が高くなるという問題点があった。
【0021】そこで本発明は、高価なセンサ等を省略することでコストの低減を図ることができる電動式パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および前記車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータの端子電圧を検出するモータ電圧検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令値に基づく電流目標値と前記モータ電圧検出手段により検出された端子電圧とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0023】また、請求項2記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電圧操作量と前記電流検出手段により検出されたモータ電流とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0024】また、請求項3記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電流目標値および電圧操作量によりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0025】
【作用】請求項1記載の発明では、検出されたモータの端子電圧と、モータに流す電流の目標値である電流目標値とからモータの速度またはモータの回転方向が算出される。例えば、端子電圧(電圧検出値)Vm、電流目標値Idとすると、モータ速度ωは、ω=Vm−(R1×Id)により算出できる。但し、R1は定数。
【0026】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0027】また、請求項2記載の発明では、検出されたモータの電流検出値と、モータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向が算出される。例えば、電圧操作量Vd、電流検出値Imとすると、モータ速度ωは、ω=Vd−(R2×Im)により算出できる。但し、R2は定数。
【0028】したがって、請求項1記載の発明と同様にモータまたはステアリングホイールの回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0029】また、請求項3記載の発明では、モータに流す電流の目標値である電流目標値と、モータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータの回転方向が算出される。例えば、電圧操作量Vd、電流目標値Idとすると、モータ速度ωは、ω=Vd−(R3×Id)により算出できる。但し、R3は定数。
【0030】したがって、請求項1,2記載の各発明と同様に、モータまたはステアリングホイールの回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0031】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1R>1は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第1実施例のコントロール装置5Aの構成を示すブロック図であり、図3は同コントロール装置5Aに内蔵されたCPU22Aの各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第1実施例の説明において、上述した図12および図14と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図1における電圧検出回路20は図3におけるモータ電圧検出部45に対応する。
【0032】この第1実施例のコントロール装置5Aは、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路16および電流検出回路19を省略し、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを取り込み、この電流目標値Idと、検出したモータの端子電圧VmとからCPU22Aにてモータの速度ωを算出するようにしている点にある。
【0033】すなわち、図3において、アシスト指令部30の出力(アシスト指令値)に粘性指令部46Aおよび慣性補償部49Aの出力が加算された電流目標値Idが電流制御部37に供給される一方、モータ速度算出部44Aに供給される。モータ速度算出部44Aは、電流目標値Idとモータ電圧検出部45で検出された電圧検出値Vmとにより、次の数式■によってモータ速度ωを算出する。そして、算出されたモータ速度ωによって粘性制御、慣性制御などが行われる。数式■においてR1は定数である。
【0034】ω=Vm−(R1×Id)……■
【0035】この場合、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを使用した理由は、電流目標値Idが電流検出値Imに略比例するからである。この電流目標値Idでも十分にモータ6の速度を得ることができる。
【0036】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流目標値Idと電圧検出値Vmとによりモータ速度ωを得ることができる。そして、電流検出値Imを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電流目標値Idの取り込みは回路内部(CPU22A内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。すなわち、ノイズに対する信頼性が向上する。
【0037】なお、この第1実施例においては、車速センサ12の出力Vsを粘性指令部46Aおよび慣性補償部49Aに供給してステアリング操作の精度の向上を図っている。すなわち、粘性指令部46Aにおいては、算出されたモータ速度ωに基づき図4に示すように粘性補償値指示関数部47の出力が決定され、また、車速Vsに応じて図5に示すように乗算演算部48Aで決定された乗算定数が乗算され粘性指令値が決定される。
【0038】また、慣性補償部49Aにおいては、微分回路50によるモータ速度ωの微分値に応じて図6に示すように慣性補償値指示関数部51の出力が決定される。また、車速Vsによって図7に示すように乗算演算部52Aにより決定された慣性乗算定数を乗算して慣性補償部49Aの出力が決定される。
【0039】次に、図2は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置5Bの構成を示すブロック図であり、図8は同コントロール装置5Bに内蔵されたCPU22Bの各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第2実施例の説明においても上述した図16および図18と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図2における電流検出回路19は図8における電機子電流検出部38に対応する。
【0040】この第2実施例のコントロール装置5Bは、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路17および電圧検出回路20を省略し、モータ6の電圧検出値Vmに代ってモータ6に印加する電圧操作量Vdを取り込み、この電圧操作量Vdと電流検出値ImとによりCPU22Bにてモータの速度ωを算出するようにしている点にある。すなわち、図8において、電圧操作量演算部39より出力される電圧操作量Vdが絶対値変換部40および正負判別部42に供給される一方、モータ速度算出部44Bに供給される。
【0041】モータ速度算出部44Bは、電圧操作量演算部39で演算された電圧操作量Vdと、電機子電流検出38で検出された電流検出値Imとにより、次の数式■によってモータ速度ωを算出する。そして、算出されたモータ速度ωによって粘性制御、慣性制御などが行われる。数式■においてR2は定数である。
【0042】ω=Vd−(R2×Im)……■
【0043】この場合、電圧検出値Vmに代って電圧操作量Vdを使用した理由は、電圧操作量Vdが電圧検出値Vmに略比例するからである。この電圧操作量Vdでも十分にモータ6の速度ωを得ることができる。
【0044】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流検出値Imと電圧操作量Vdとによりモータ速度ωを得ることができる。そして、電圧検出値Vmを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電圧操作量Vdの取り込みは回路内部(CPU22A内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。
【0045】ここで、電圧操作量Vdとは、PWM方式によるモータ6への印加電圧であり、電源電圧とPWMデューティとを乗算したものである。例えば、電源電圧が14VでPWMデューティが5%であれば、電圧操作量は7Vとなる。なお、参考として図9〜図11にPWM方式の動作の一例を示す。図9に示すようにHブリッジ回路は、モータ6に対してHブリッジ型に接続された4個のスイッチング素子SW1〜SW4と、4個のダイオードD1〜D4とを有し、モータ6の電流をスイッチング制御するものである。そして、Hブリッジ回路はコンデンサCが並列に介挿されたバッテリBATに接続されている。
【0046】Hブリッジ回路は、例えばスイッチング素子SW1,SW4がオン、スイッチング素子SW2,SW3がオフの状態で、PWMオン時の電流は図9に示すように、バッテリBAT→スイッチング素子SW1→モータ6→電流検出抵抗Rd→スイッチング素子SW4→GNDの経路で流れる。また、例えばスイッチング素子SW1,SW3がオン、スイッチング素子SW2,SW4がオフの状態で、PWMオフ時の電流は図10に示すように、モータ6→電流検出抵抗Rd→ダイオードD3→スイッチング素子SW1→モータ6の経路で流れる。
【0047】また、図11に示すように、PWMオフ時における誘起電圧発生時などによりモータ電流の方向が変化したときにも電流が流れる。図12,13にタイムチャートを示す。この場合、図12においてスイッチング素子SW3,SW4の間にデッドタイムがある。
【0048】次に、図14は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第3実施例のコントロール装置に内蔵されたCPU(図示略)の各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第3実施例の説明においても上述した図14と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】この第3実施例の図示せぬコントロール装置は、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路16,17および電圧検出回路19,20を省略し、モータ6の電圧検出値Vmに代ってモータ6に印加する電圧操作量Vdを取り込むとともに、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを取り込み、これら電圧操作量Vdと電流目標値IdとによりCPUにてモータの速度を算出するようにしている点にある。
【0050】すなわち、図14において、電圧操作量演算部39より出力される電圧操作量Vdがモータ速度算出部44Cに供給され、またアシスト指令部30の出力に粘性指令部46および慣性補償部49の出力が加算された電流目標値Idがモータ速度算出部44Cに供給される。モータ速度算出部44Cは電圧操作量Vdと電流目標値Idとにより、次の数式■によってモータ速度ωを算出する。そして、算出されたモータ速度ωによって粘性制御、慣性制御などが行われる。数式■においてR3は定数である。
【0051】ω=Vd−(R3×Id)……■
【0052】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流目標値Idと電圧操作量Vdとに基づいてモータ速度ωを得ることができる。そして、電圧検出値Vmを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電圧操作量Vdおよび電流目標値Idの取り込みは回路内部(CPU内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。
【0053】また、上記各実施例においては、算出したモータ6の回転速度および回転加速度に基づいた粘性補償および慣性補償を行う場合の例を説明したが、算出したモータ速度ωを積分することにより回転角を算出し、この結果に基づいて舵角による戻りの制御などを行うこともできる。また、速度算出値または、その符号のみによって、操舵状態検出(戻り状態か否か)などを行うこともできる。例えば、符号による操舵状態の検出法の例は、操舵トルクVtと、前記速度算出値の符号とが一致しないときは、戻り状態とするなどである。そして、戻り状態の時には粘性指令値などを変化させ、最良のフィーリングになるように、制御する。
【0054】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流目標値とモータの端子電圧とからモータの速度またはモータの回転方向を得ることができるので、コストをを低く抑えることができる。また、モータの電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【0055】請求項2記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流検出値とモータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向を得ることができるので、請求項1記載の発明と同様に、コストを低く抑えることができる。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【0056】請求項3記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流目標値とモータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向を得ることができるので、請求項1,2記載の各発明と同様に、コストを低く抑えることができる。また、モータの電圧検出値および電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第1実施例のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図4】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図5】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図6】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図7】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図8】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図9】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図10】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図11】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図12】Hブリッジ回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図13】Hブリッジ回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図14】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第3実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図15】従来の電動式パワーステアリング装置の一実施例のハード構成を示すブロック図である。
【図16】同電動式パワーステアリング装置のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図17】同電動式パワーステアリング装置のアシストトルクの特性を示す図である。
【図18】同電動式パワーステアリング装置のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
6 モータ
11 操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
12 車速センサ(車速検出手段)
16,17 A/D変換回路
19 電流検出回路(電流検出手段)
20 電圧検出回路(モータ電圧検出手段)
21 駆動回路
22A,22B CPU(制御手段)
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両に用いて好適な電動式パワーステアリング装置に係わり、詳しくはモータの回転出力によって操舵力を補助する電動式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、車両のパワーステアリング装置として油圧式に代えてモータを用いた電動式のものが使用されており、モータはアクチュエータとして小型、軽量等の利点から今後とも増加傾向にある。
【0003】従来のパワーステアリング装置では、トクルセンサによって操舵系の操舵トルクを検出するとともに、車速センサによって車速を検出し、これらの検出結果に基づいて操舵系に連結されたモータの駆動力を制御し、パワーアシストを行っている。そして、一般的には車速感応型であり、低車速では軽く、高車速では重くなるようにトルクセンサ入力に応じてアシスト力を制御している。そして、一般的には速度感応型であり、低車速では軽く、高車速では重くなるようにトルクセンサ入力に応じてアシスト力を制御している。
【0004】ところで、アシスト用モータのトルクをギヤで減速してラック軸等に伝達する構成とした場合、アシスト用モータの慣性モーメントがあたかも大きくなるように作用し、また、ギヤのフリクションが影響して高車速時の収斂性が悪化したり、低車速時のハンドル戻りが悪化したりするので、本出願人は舵角加速度に応じた慣性制御信号を加えることで、これらの問題を解決できる装置を開発した。以下、本出願人によって開発された従来のパワーステアリング装置について説明する。
【0005】図15は本出願人によって開発された従来のパワーステアリング装置を適用したステアリング機械系の一例を示す構成図であり、この図において、操舵ハンドル1の回転力はハンドル軸を介してピニオンギアを含むステアリングギア2に伝達されるとともに、上記ピニオンギアによりラック軸3に伝達され、さらにナックルアーム等を経て車輪4が転向される。
【0006】また、コントロール装置5により制御駆動される操舵アシスト(補助)モータ(DCモータ)6の回転力がピニオンギアを含むステアリングギア7とラック軸3との噛み合いによりラック軸3に伝達され、ハンドル1による操舵を補助することになる。ハンドル1とモータ6の回転軸はギア2、7およびラック軸3により機械的に連結されている。
【0007】操舵トルクセンサ11により操舵トルクが検出され、車速センサ12により車速が検出される。そして、これらの検出トルク、車速等に基づきコントロール装置5によってモータ6が制御される。コントロール装置5およびモータ6には車両に搭載されたバッテリ8から、その動作電力が供給される。
【0008】コントロール装置5は、図16に示すようにA/D変換回路15〜17と、カウンタ18と、電流検出回路19、電圧検出回路20と、モータ6を駆動する駆動回路21と、モータ6の全体的な制御を統括するCPU22(例えばマイクロプロセッサ)と、メモリ23と、コンピュータと上記入/出力機器とのインターフェース回路等(図示略)を主に構成されている。
【0009】操舵トルクセンサ11によって検出された操舵トルクは、A/D変換回路15によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。また、車速センサ12によって検出された車速は、カウンタ18によってカウントされ、車速を表すカウント値がCPU22に取り込まれる。CPU22は入力された操舵トルクおよび車速に基づいてアシスト指令を作成し、それに基づく制御信号を駆動回路21に出力し、駆動回路21によりモータ6が駆動される。この結果、駆動回路21から出力されるアシストトルク値(又はモータ電流)は図17に示すように、検出トルクVTと検出車速VSによって定められた値となる。
【0010】ここで、図17においては、操舵トルクVTに応じて、一定範囲の操舵トルクVTに対してはこれに略比例するモータ電流が流れ(アシストトルクが発生し)、上記範囲を超えると、ある一定のモータ電流が流れる(アシストトルクが発生する)ように、また車速VSに応じて、車速VSが速いときにはモータ電流(アシストトルク)を少なくし、車速VSが遅いときにはモータ電流(アシストトルク)を多くするように、モータ6を制御するためのアシスト指令が発生することを表している。
【0011】図16に戻り、モータ電流は電流検出回路19によって検出され、A/D変換回路16によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。他方、モータ6の端子電圧(モータ電圧)は電圧検出回路20によって検出され、A/D変換回路17によってデジタル信号に変換された後にCPU22に取り込まれる。メモリ23はCPU22の処理に必要なプログラムやデータを記憶している。
【0012】次に、図18はコントロール装置5に内蔵されたコンピュータの各種機能をブロック的に、他の入出力機器、各種回路を示すブロック図とともに、描いたものである。この図において、アシスト指令部30にはトルクセンサ11の検出トルクVtと、車速センサ12の検出車速Vsとが与えられる。アシスト指令部30内のアシストトルク指示関数部31は検出トルクVtに応じてモータ6によって発生すべきアシストトルクを示す指令値を出力する。
【0013】乗算定数関数部32は検出車速Vsに応じて定数を発生し、この定数が乗算演算部33において上記アシストトルク指令値に乗じられる。この結果、乗算演算部33から出力されるアシストトルク値は上述したように図17に示すように検出トルクVtと検出車速Vsによって定められた値となる。
【0014】一方、検出トルクVtは位相補償部34にも与えられる。この位相補償部34においては検出トルクVtの微分値が計算され、微分乗算定数関数部35で発生した車速Vsに応じた定数をその微分値に乗算した信号を出力する。この出力が乗算した演算部33の出力に加算されることにより、アシスト指令部30の出力となって電流制御部37に供給される。
【0015】電流制御部37は、例えば4個のスイッチング素子を含むHブリッジ駆動法にしたがうPWM(Pulse Width Modulation)パルスを用いたチョッパ動作によってモータ6を駆動制御するもので、電機子電流検出部38にて検出された電流検出値Imと電流目標値Idとが一致するようにPWMデューティを決定する。電流フィードバックP(比例)制御の場合を示すと、電圧操作量演算部39において与えられた電流目標値Idと電流検出値Imとの偏差を演算し、この偏差の絶対値が絶対値変換部40で得られ、この絶対値に基づいてデューティ生成部41でPWMパルスのデューティ比が決定される。
【0016】一方、上記偏差の極性(正または負)が正負判定部42で判定され、生成されたデューティ比と判別された極性に基づいてモータ駆動部43はHブリッジ型に配線された4個のスイッチング素子をオンオフ制御してモータ6を駆動する。なお、この場合、電流フィードバックP制御について示したが、他にもPI(比例・積分)制御、PID(比例・積分・微分)制御などによるフィードバック制御法の採用も勿論可能である。また、電流制御部37に対する外乱を推定し、その外乱をフィードフォーワードすることによる電流制御法も用いても良い。
【0017】一方、モータ速度算出部44では、モータ電圧検出部45で検出された電圧検出値Vmと電流検出値Imとにより、次の数式
【0018】ω=Vm−(R0×Im)……
【0019】粘性指令部46においては、算出されたモータ速度ωに基づき粘性補償値指示関数部47と乗算演算部48により粘性指令値が決定される。また、慣性補償部49においては、微分回路50によるモータ速度ωの微分値に応じて慣性補償値指示関数部51の出力が決定され、さらに乗算演算部52により決定された慣性乗算定数を乗算して慣性指令値が決定される。これら粘性指令部46および慣性補償部49の各々の出力はアシスト指令部30の出力に加算され、電流目標値Idとして電流制御部37に供給される。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本出願人によって開発された上述した従来の電動式パワーステアリング装置にあっては、ギヤのフリクションの影響が少なく、低速から高速にかけて安定したハンドル操作が実現できたが、その反面、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度検出器(例えばエンコーダ、タコジェネレータ等)などのセンサを設ける必要があり、装置の価格が高くなるという問題点があった。
【0021】そこで本発明は、高価なセンサ等を省略することでコストの低減を図ることができる電動式パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および前記車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータの端子電圧を検出するモータ電圧検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令値に基づく電流目標値と前記モータ電圧検出手段により検出された端子電圧とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0023】また、請求項2記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電圧操作量と前記電流検出手段により検出されたモータ電流とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0024】また、請求項3記載の発明による電動式パワーステアリング装置は、操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段とを備えた電動式パワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電流目標値および電圧操作量によりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする。
【0025】
【作用】請求項1記載の発明では、検出されたモータの端子電圧と、モータに流す電流の目標値である電流目標値とからモータの速度またはモータの回転方向が算出される。例えば、端子電圧(電圧検出値)Vm、電流目標値Idとすると、モータ速度ωは、ω=Vm−(R1×Id)により算出できる。但し、R1は定数。
【0026】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0027】また、請求項2記載の発明では、検出されたモータの電流検出値と、モータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向が算出される。例えば、電圧操作量Vd、電流検出値Imとすると、モータ速度ωは、ω=Vd−(R2×Im)により算出できる。但し、R2は定数。
【0028】したがって、請求項1記載の発明と同様にモータまたはステアリングホイールの回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0029】また、請求項3記載の発明では、モータに流す電流の目標値である電流目標値と、モータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータの回転方向が算出される。例えば、電圧操作量Vd、電流目標値Idとすると、モータ速度ωは、ω=Vd−(R3×Id)により算出できる。但し、R3は定数。
【0030】したがって、請求項1,2記載の各発明と同様に、モータまたはステアリングホイールの回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がない。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化およびノイズの影響の低減を図ることができる。
【0031】
【実施例】以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1R>1は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第1実施例のコントロール装置5Aの構成を示すブロック図であり、図3は同コントロール装置5Aに内蔵されたCPU22Aの各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第1実施例の説明において、上述した図12および図14と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図1における電圧検出回路20は図3におけるモータ電圧検出部45に対応する。
【0032】この第1実施例のコントロール装置5Aは、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路16および電流検出回路19を省略し、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを取り込み、この電流目標値Idと、検出したモータの端子電圧VmとからCPU22Aにてモータの速度ωを算出するようにしている点にある。
【0033】すなわち、図3において、アシスト指令部30の出力(アシスト指令値)に粘性指令部46Aおよび慣性補償部49Aの出力が加算された電流目標値Idが電流制御部37に供給される一方、モータ速度算出部44Aに供給される。モータ速度算出部44Aは、電流目標値Idとモータ電圧検出部45で検出された電圧検出値Vmとにより、次の数式
【0034】ω=Vm−(R1×Id)……
【0035】この場合、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを使用した理由は、電流目標値Idが電流検出値Imに略比例するからである。この電流目標値Idでも十分にモータ6の速度を得ることができる。
【0036】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流目標値Idと電圧検出値Vmとによりモータ速度ωを得ることができる。そして、電流検出値Imを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電流目標値Idの取り込みは回路内部(CPU22A内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。すなわち、ノイズに対する信頼性が向上する。
【0037】なお、この第1実施例においては、車速センサ12の出力Vsを粘性指令部46Aおよび慣性補償部49Aに供給してステアリング操作の精度の向上を図っている。すなわち、粘性指令部46Aにおいては、算出されたモータ速度ωに基づき図4に示すように粘性補償値指示関数部47の出力が決定され、また、車速Vsに応じて図5に示すように乗算演算部48Aで決定された乗算定数が乗算され粘性指令値が決定される。
【0038】また、慣性補償部49Aにおいては、微分回路50によるモータ速度ωの微分値に応じて図6に示すように慣性補償値指示関数部51の出力が決定される。また、車速Vsによって図7に示すように乗算演算部52Aにより決定された慣性乗算定数を乗算して慣性補償部49Aの出力が決定される。
【0039】次に、図2は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置5Bの構成を示すブロック図であり、図8は同コントロール装置5Bに内蔵されたCPU22Bの各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第2実施例の説明においても上述した図16および図18と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、図2における電流検出回路19は図8における電機子電流検出部38に対応する。
【0040】この第2実施例のコントロール装置5Bは、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路17および電圧検出回路20を省略し、モータ6の電圧検出値Vmに代ってモータ6に印加する電圧操作量Vdを取り込み、この電圧操作量Vdと電流検出値ImとによりCPU22Bにてモータの速度ωを算出するようにしている点にある。すなわち、図8において、電圧操作量演算部39より出力される電圧操作量Vdが絶対値変換部40および正負判別部42に供給される一方、モータ速度算出部44Bに供給される。
【0041】モータ速度算出部44Bは、電圧操作量演算部39で演算された電圧操作量Vdと、電機子電流検出38で検出された電流検出値Imとにより、次の数式
【0042】ω=Vd−(R2×Im)……
【0043】この場合、電圧検出値Vmに代って電圧操作量Vdを使用した理由は、電圧操作量Vdが電圧検出値Vmに略比例するからである。この電圧操作量Vdでも十分にモータ6の速度ωを得ることができる。
【0044】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流検出値Imと電圧操作量Vdとによりモータ速度ωを得ることができる。そして、電圧検出値Vmを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電圧操作量Vdの取り込みは回路内部(CPU22A内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。
【0045】ここで、電圧操作量Vdとは、PWM方式によるモータ6への印加電圧であり、電源電圧とPWMデューティとを乗算したものである。例えば、電源電圧が14VでPWMデューティが5%であれば、電圧操作量は7Vとなる。なお、参考として図9〜図11にPWM方式の動作の一例を示す。図9に示すようにHブリッジ回路は、モータ6に対してHブリッジ型に接続された4個のスイッチング素子SW1〜SW4と、4個のダイオードD1〜D4とを有し、モータ6の電流をスイッチング制御するものである。そして、Hブリッジ回路はコンデンサCが並列に介挿されたバッテリBATに接続されている。
【0046】Hブリッジ回路は、例えばスイッチング素子SW1,SW4がオン、スイッチング素子SW2,SW3がオフの状態で、PWMオン時の電流は図9に示すように、バッテリBAT→スイッチング素子SW1→モータ6→電流検出抵抗Rd→スイッチング素子SW4→GNDの経路で流れる。また、例えばスイッチング素子SW1,SW3がオン、スイッチング素子SW2,SW4がオフの状態で、PWMオフ時の電流は図10に示すように、モータ6→電流検出抵抗Rd→ダイオードD3→スイッチング素子SW1→モータ6の経路で流れる。
【0047】また、図11に示すように、PWMオフ時における誘起電圧発生時などによりモータ電流の方向が変化したときにも電流が流れる。図12,13にタイムチャートを示す。この場合、図12においてスイッチング素子SW3,SW4の間にデッドタイムがある。
【0048】次に、図14は本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第3実施例のコントロール装置に内蔵されたCPU(図示略)の各種機能をブロック的に、他の入力機器、各種回路を示すブロック図とともに描いたものである。なお、この第3実施例の説明においても上述した図14と共通する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0049】この第3実施例の図示せぬコントロール装置は、図16に示す従来のコントロール装置5におけるA/D変換回路16,17および電圧検出回路19,20を省略し、モータ6の電圧検出値Vmに代ってモータ6に印加する電圧操作量Vdを取り込むとともに、モータ6の電流検出値Imに代って電流目標値Idを取り込み、これら電圧操作量Vdと電流目標値IdとによりCPUにてモータの速度を算出するようにしている点にある。
【0050】すなわち、図14において、電圧操作量演算部39より出力される電圧操作量Vdがモータ速度算出部44Cに供給され、またアシスト指令部30の出力に粘性指令部46および慣性補償部49の出力が加算された電流目標値Idがモータ速度算出部44Cに供給される。モータ速度算出部44Cは電圧操作量Vdと電流目標値Idとにより、次の数式
【0051】ω=Vd−(R3×Id)……
【0052】したがって、モータまたはステアリングホイールの回転角を検出するための回転角検出器または回転角速度を検出するための回転角速度検出器等のセンサを設けることなく、電流目標値Idと電圧操作量Vdとに基づいてモータ速度ωを得ることができる。そして、電圧検出値Vmを取り込むための回路部品数を必要としないので、センサを不要とすることと合わせてコストの低減を図ることができる。また、電圧操作量Vdおよび電流目標値Idの取り込みは回路内部(CPU内)で行われることから、ノイズの影響を殆ど受けない。
【0053】また、上記各実施例においては、算出したモータ6の回転速度および回転加速度に基づいた粘性補償および慣性補償を行う場合の例を説明したが、算出したモータ速度ωを積分することにより回転角を算出し、この結果に基づいて舵角による戻りの制御などを行うこともできる。また、速度算出値または、その符号のみによって、操舵状態検出(戻り状態か否か)などを行うこともできる。例えば、符号による操舵状態の検出法の例は、操舵トルクVtと、前記速度算出値の符号とが一致しないときは、戻り状態とするなどである。そして、戻り状態の時には粘性指令値などを変化させ、最良のフィーリングになるように、制御する。
【0054】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流目標値とモータの端子電圧とからモータの速度またはモータの回転方向を得ることができるので、コストをを低く抑えることができる。また、モータの電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【0055】請求項2記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流検出値とモータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向を得ることができるので、請求項1記載の発明と同様に、コストを低く抑えることができる。また、モータの電圧検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【0056】請求項3記載の発明によれば、回転角検出器または回転角速度検出器等のセンサを設ける必要がなく、電流目標値とモータに印加する電圧操作量とからモータの速度またはモータ回転方向を得ることができるので、請求項1,2記載の各発明と同様に、コストを低く抑えることができる。また、モータの電圧検出値および電流検出値を取り込む必要がないことから、これに要する回路部品数および調整項目の省略化を図ることができ、これにより価格の低減を図ることができる。また、ノイズの影響も受けなくなるので信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第1実施例のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図4】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図5】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図6】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図7】同第1実施例の動作を説明するための図である。
【図8】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第2実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図9】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図10】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図11】Hブリッジ回路の動作を説明するための図である。
【図12】Hブリッジ回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図13】Hブリッジ回路の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図14】本発明に係る電動式パワーステアリング装置の第3実施例のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【図15】従来の電動式パワーステアリング装置の一実施例のハード構成を示すブロック図である。
【図16】同電動式パワーステアリング装置のコントロール装置の構成を示すブロック図である。
【図17】同電動式パワーステアリング装置のアシストトルクの特性を示す図である。
【図18】同電動式パワーステアリング装置のコントロール装置に内蔵されたCPUの各種機能を示すブロック図である。
【符号の説明】
6 モータ
11 操舵トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
12 車速センサ(車速検出手段)
16,17 A/D変換回路
19 電流検出回路(電流検出手段)
20 電圧検出回路(モータ電圧検出手段)
21 駆動回路
22A,22B CPU(制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および前記車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータの端子電圧を検出するモータ電圧検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令値に基づく電流目標値と前記モータ電圧検出手段により検出された端子電圧とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項2】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電圧操作量と前記電流検出手段により検出されたモータ電流とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項3】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電流目標値および電圧操作量によりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項1】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検出する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および前記車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータの端子電圧を検出するモータ電圧検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令値に基づく電流目標値と前記モータ電圧検出手段により検出された端子電圧とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項2】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記モータに流れる電流を検出する電流検出手段を設け、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電圧操作量と前記電流検出手段により検出されたモータ電流とによりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【請求項3】 操舵系に連結され、操舵補助トルクを発生するモータと、操舵系の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、車速を検速する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段および車速検出手段の出力に基づいてアシスト指令を作成し、このアシスト指令により前記モータの駆動を制御する制御手段と、を備えた電動式パワーステアリング装置において、前記制御手段は、前記アシスト指令に基づく電流目標値および電圧操作量によりモータ速度またはモータの回転方向を算出することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図8】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図12】
【図8】
【図11】
【図13】
【図15】
【図16】
【図14】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開平6−8838
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−177619
【出願日】平成4年(1992)6月11日
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【公開日】平成6年(1994)1月18日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)6月11日
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
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