説明

電動式軸流送風機

【課題】 電動機を変更して定格出力を上げることが容易にできない。
【解決手段】 ケーシング1の中心軸c上に羽根車3を駆動する軸6dを配設することができるように、中央部から外側に向けて開放した電動機ケース2をケーシング1と一体成形し、この電動機ケース2内のケーシング中心軸c上に前記羽根車3を駆動する軸6dを配設するとともにこの軸6dを駆動する電動機Maを設けた外付電動機架台6を設けることにより、同一口径のケーシング1で静圧・風量を容易に変更できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願に係る発明は、腐食性ガスや高温ガスを圧送する電動式軸流送風機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、高温ガスを取り扱う軸流送風機において、羽根車を駆動する電動機を高温ガス内に設ける場合には、電動機の焼き付きを防止するためにそのガス温度に応じて電動機の絶縁階級をF種,H種等の高価なものにし、電動機をケーシングの外部に設ける場合には、ケーシングを大きな曲率で曲げて羽根車の軸をケーシングから外部に出して外部の電動機によって羽根車を駆動する方法が知られている。また、腐食性ガスを取り扱う軸流送風機の場合、電動機の錆の発生等を防止するために、上記ケーシングの外部に設けた電動機によって羽根車を駆動する方法が用いられる。
【0003】しかしながら、電動機の絶縁階級を上げる方法では装置費用が増大するとともに、絶縁階級を上げても電動機は常に高温ガスに晒されているため信頼性が劣り、しかも保守点検が困難になる。また、電動機をケーシングの外部に設ける場合には構造が複雑になるとともに効率の低下を招いてしまう。
【0004】そこで、電動機をケーシング内に設けて冷却できるようにした軸流送風機として、特開昭63−297799号公報記載の発明が提案されている。この発明は図4の半断面図に示すように、電動機51を収納するケース52の内側とケーシング53の外側とを連通する排気用のダクト54と吸気用のダクト55とを設けて電動機51を冷却しようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術では、電動機51を設けるケース52の内側とケーシング53の外側とを連通させる排気用のダクト54や吸気用のダクト55を設ける必要があるため、ケーシング53の構造が複雑になって多くの製作時間や費用を要してしまう。しかも、これら排気用のダクト54や吸気用のダクト55は電動機周囲の複数箇所に設けなければ効果的な冷却ができないので、非常に複雑な構造になり実用的ではない。
【0006】一方、このような軸流送風機の場合、使用条件の変更等によって同一口径のケーシングで静圧・風量を変更したい場合がある。しかし、このような軸流送風機の場合には、通常、電動機の定格出力によって仕様が決定されるため、同一電動機では定格出力を上げて送風機の静圧・風量を上げることはできない。そのため、静圧・風量を上げるためにケーシング全体を交換する場合もあり、この場合には多くの時間と費用を要してしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決するために、この出願に係る発明は、ケーシングの中心軸上に羽根車を駆動する軸を配設することができるように、中央部から外側に向けて開放した電動機ケースをケーシングと一体成形し、この電動機ケース内のケーシング中心軸上に羽根車を駆動する軸を配設するとともにこの軸を駆動する電動機を設けた外付電動機架台を設けている。このように、電動機ケースをケーシングと一体成形することにより羽根車を駆動する電動機を設けるためのケーシングの構造が簡単になり、ケーシングの中央部から外側に向けて開放した電動機ケースに電動機を設けた外付電動機架台を設ければ、同一口径のケーシングで静圧・風量を上げることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】この出願に係る発明は、円筒状のケーシング中心軸上で羽根車を駆動する電動式軸流送風機において、前記ケーシングに、このケーシングの中心軸上に羽根車を駆動する軸を配設することができるように中央部から外側に向けて開放した電動機ケースを一体成形し、この電動機ケース内のケーシング中心軸上に前記羽根車を駆動する軸を配設するとともにこの軸を駆動する電動機を設けた外付電動機架台を設けている。このように、中央部から外側に向けて開放した電動機ケースをケーシングと一体成形することにより、羽根車を駆動する軸や電動機を設けるケーシングの構造が簡単になり、この電動機ケースに電動機を設けた外付電動機架台を設ければ、同一口径のケーシングで静圧・風量を上げることができる。
【0009】また、前記電動機架台をケーシングから取外し可能に設ければ、電動機架台をケーシングから取外して電動機を変更することにより、同一のケーシングを用いて静圧・風量を上げることが容易にできる。
【0010】さらに、前記ケーシングの両端にフランジを一体成形すれば、ケーシング全体を一体成形できるので更に構造が簡単になる。
【0011】
【実施例】以下、この出願に係る発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの出願に係る発明の電動式軸流送風機における電動機ケースの使用例を示す図面であり、(a) は側断面図、(b) は正面図、(c) はA−A断面図である。
【0012】図示するように、ケーシング1の略中央部には、このケーシング1の外側から中心軸c上に電動機Mを配設することができるように中央部から外側に向けて開放した電動機ケース2が一体成形されている。この電動機ケース2の形状としては、冷却風wの排出側oである羽根車3を設ける側がケーシング中心軸cとほぼ直交する面で形成され、冷却風wの吸込側iである反羽根車側が中央部から外側に向けて緩やかに広がるような傾斜面で形成されており、ケーシング1の軸方向は電動機Mの長さよりも長く、幅方向は電動機Mの幅よりも広く、深さ方向は電動機Mの半径より大きく電動機Mに当接しないような円弧を描くように形成されている。
【0013】このような電動機ケース2をケーシング1と一体成形すればケーシング1の構造が簡単になり、ケーシング1の生産性を上げることができる。しかも、この例では、両端のフランジ1aも一体成形されているため、更に生産性を上げることができる。この一体成形するケーシング1の材質としては、耐熱性や強度、あるいは生産性等の観点から繊維強化プラスチック(FRP)等の複合素材が好ましい。
【0014】このケーシング1には、電動機ケース2を下向きに開放させた状態で、電動機ケース2内のケーシング中心軸c上に電動機Mを配設することができる電動機架台4が設けられている。この電動機架台4は、電動機Mを取付ける電動機取付板4aとケーシング1に取付ける架台取付板4bとの間が連結板4cによって連結されたものであり、架台取付板4aによって電動機ケース2の開口2aに連なるケーシング1の外面に設けられたフランジ1bに取付けられている。この電動機架台4は、フランジ1bに取付けられた状態で、電動機Mの軸心がケーシング中心軸c上に位置するような高さに形成されている。このように形成された電動機架台4によれば、ケーシング1と一体成形された電動機ケース2の開口2aから電動機Mをケーシング中心軸c上に取付けることが容易にできる。つまり、この電動機架台4に予め電動機Mを取付けておき、一体成形したケーシング1の電動機ケース2にこの電動機架台4を設ければ、ケーシング中心軸c上に電動機Mを配設することが容易に完了する。そして、この電動機ケース2から突出させた軸Maに羽根車3を取付ければ電動式軸流送風機Vの組立てが完了する。なお、Mbは軸Maのシール部材である。
【0015】また、この例では、上記電動機架台4に冷却風wの電動機軸方向への流れを防ぐ隔壁5が設けられており、この隔壁5によって電動機ケース2内での電動機軸方向への冷却風wの流れを防止するように構成されている。この例では隔壁5が、電動機取付板4aからケーシング1のほぼ外面位置まで設けられている。したがって、電動機Mの後部である吸込側iから電動機Mの前部である排出側oに流れた冷却風wが再び吸込側iへ流れることがないようになっている。なお、ケーシング1の外面まで出た冷却風wは周囲の空気と混ざるため、吸込側iの空気温度を上昇させることはない。
【0016】また、この例では、電動機架台4の軽量化を図った電動機取付板4aと架台取付板4bとの間に隔壁5が設けられているが、電動機架台4の形状によって吸込側iと排出側oとを仕切るようにしてもよく、隔壁5の構成は上記例に限定されるものではない。
【0017】以上のように構成された電動式軸流送風機Vによれば、以下のように作用して電動機Mを冷却することができる。
【0018】すなわち、電動機架台4によってケーシング中心軸c上に設けられた電動機Mで羽根車3を駆動すると、電動機M内に設けられた外扇Mcによって空気の流れができ、この空気の流れが冷却風wとして電動機Mを冷却する。この冷却風wは、ほぼ常温の状態で電動機Mの後部に設けられた外扇Mcより吸込側iから吸われ、電動機Mの外面を通って前部の排出側oから出る大きな流れとなるため、電動機Mを設けるために大きく開放させた電動機ケース2の開口2aから吸われる冷却風wは、充分な空間を採った流路によって電動機ケース2内の電動機Mを効果的に冷却することができる。しかも、電動機ケース2内の冷却風流路によるロスも少ない。
【0019】図2は上記電動式軸流送風機Vにおける電動機ケース内温度の測定結果を示す線図であり、この測定結果によれば、時間が約30分経過した頃から、大気温度よりも吸込側iで約3℃、排出側oで約3℃の上昇が見られ、約120分経過した時で、大気温度よりも吸込側iで約4℃、排出側oで約5℃の上昇が見られる。したがって、電動機周辺の温度を大きく上昇させることなく電動機Mを充分に冷却できるような冷却効果があることが判る。なお、充分な冷却風量によりこのような冷却をすれば、軸受グリースの熱劣化、潤滑不良、軸受の焼き付き等も確実に防止できる。
【0020】図3はこの出願に係る発明の電動式軸流送風機の一実施例を示す図面であり、(a)は側断面図、(b) はB−B断面図である。図3では上記した電動式軸流送風機Vに高出力電動機を設ける場合を示す図面である。なお、上記図1に示す構成と同一の構成には同一符号を付して説明する。この図は、上記ケーシング1を変更することなく電動機架台を変更することにより、電動機出力を変更して電動式軸流送風機としての静圧・風量を上げている。
【0021】すなわち、ケーシング1に取外し可能に設けられた電動機架台4(図1)を取外し、この電動機架台4(図1)に替えて外付電動機架台6を取付けることにより、同一のケーシング1、つまり同一口径のケーシング1を用いて電動式軸流送風機Vaとしての静圧・風量を上げている。10はケーシング1の支持台である。
【0022】この外付電動機架台6は、架台取付板6aからケーシング中心軸cまで延設したフレーム6bと、このフレーム6bのケーシング中心軸c上に設けられた軸受6cと、この軸受6cによって支持された軸6dと、この軸6dの反羽根車側に設けられたプーリ7と、上記架台取付板6aとの間の距離が調整ボルト6eによって調節可能な電動機取付板6fとで構成されている。
【0023】この外付電動機架台6によれば、架台取付板6aをケーシング1のフランジ1bに取付けて軸6dの先端を電動機ケース2から突出させて羽根車3を設け、電動機取付板6fに設けられた電動機Maのプーリ8と軸6dに設けられたプーリ7とにベルト9を掛けて、架台取付板6aと電動機取付板6fとの間を調整ボルト6eによって最適距離に調整すれば、ケーシング1を変更せずに高出力の電動機Mを容易に設けることができる。
【0024】つまり、電動機Maに関する構成のみを交換すれば、ケーシング1を取替えることなく高出力の電動機Maによって羽根車3を増速させて、電動式軸流送風機Vaの静圧・風量を上げることができる。この場合には電動機Maがケーシング1の外部に設けられるため外扇による充分な冷却ができる。なお、電動機Maによる羽根車3の駆動は、ベルト掛け以外に歯車を用いることも可能である。
【0025】なお、この電動機Maおよび上述した電動機Mの出力は、使用条件等に応じて適宜決定すればよい。
【0026】また、上述した図1,図3に示すようにケーシング1内に電動機ケース2を張り出すように形成しても、この種、軸流送風機は静圧の低い所で使用するため、風量を落とすことなく運転することができる。
【0027】
【発明の効果】この出願に係る発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載するような効果を奏する。
【0028】ケーシングと一体成形した電動機ケースに外付電動機架台を設けることにより同一のケーシングを用いて電動機の出力のみを上げることが容易にできるので、同一口径のケーシングで静圧・風量を上げることが可能になるとともに、軸流送風機の製造や組立に要する時間と費用を削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願に係る発明の電動式軸流送風機における電動機ケースの使用例を示す図面であり、(a) は側断面図、(b) は正面図、(c) はA−A断面図である。
【図2】図1の電動式軸流送風機における電動機ケース内温度を示す線図である。
【図3】この出願に係る発明の電動式軸流送風機の一実施例を示す図面であり、(a)は側断面図、(b) はB−B断面図である。
【図4】従来の軸流送風機を示す半断面図である。
【符号の説明】
1…ケーシング
1a…フランジ
2…電動機ケース
2a…開口
3…羽根車
4…電動機架台
5…隔壁
6…外付電動機架台
7…プーリ
8…ベルト
9…プーリ
i…吸込側
o…排出側
w…冷却風
c…ケーシング中心軸
M,Ma…電動機
Mc…外扇
V,Va…電動式軸流送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒状のケーシング中心軸上で羽根車を駆動する電動式軸流送風機において、前記ケーシングに、該ケーシングの中心軸上に羽根車を駆動する軸を配設することができるように中央部から外側に向けて開放した電動機ケースを一体成形し、該電動機ケース内のケーシング中心軸上に前記羽根車を駆動する軸を配設するとともに該軸を駆動する電動機を設けた外付電動機架台を設けたことを特徴とする電動式軸流送風機。
【請求項2】 前記電動機架台をケーシングから取外し可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の電動式軸流送風機。
【請求項3】 前記ケーシングの両端にフランジを一体成形したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動式軸流送風機。

【図4】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開2002−213395(P2002−213395A)
【公開日】平成14年7月31日(2002.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−8215(P2002−8215)
【分割の表示】特願平8−286421の分割
【出願日】平成8年10月29日(1996.10.29)
【出願人】(000107941)セイコー化工機株式会社 (5)