説明

電動歯ブラシ

【課題】電動歯ブラシにおいて適切なブラシ角を容易に実現するための技術を提供する。
【解決手段】電動歯ブラシは、把持部14を有する電動歯ブラシ本体1と、ブラシ20を有するブラシ部材2と、ブラシ20を運動させるモータ10と、ブラシ20の向きを変更するためにブラシ部材2を本体1に対して相対的に回転させるアクチュエータ40と、本体1の姿勢を検出するための加速度センサ15と、検出された姿勢に基づいて、ブラシ角が予め定められた最適値になるようにアクチュエータ40を制御するCPU120と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
高速に運動するブラシを歯に当てることによって歯磨き(食物残渣や歯垢の除去)を行うタイプの電動歯ブラシが知られている。このような電動歯ブラシにおいては、ブラシをどのような角度で歯に当てるかにより、得られる刷掃効果に違いがでる。たとえばブラシを歯軸に対して90度に当てれば、歯面に対して最も高い歯垢除去力を発揮できる。またブラシを歯軸に対して45度に当てると、ブラシの毛先が歯間や歯周ポケット(歯と歯茎の間)に入り込みやすくなり、歯間や歯周ポケットから効果的に食物残渣や歯垢を掻き出すことができるようになる。
【0003】
このように、ブラッシング部位あるいは所望する刷掃効果などに応じて、最適なブラシ角(歯軸に対するブラシの角度)が存在する。しかしながら、ほとんどのユーザは望ましいブラシ角があることすら意識していない。たとえブラシ角を意識したとしても、歯磨き中はブラシが実際に歯に当たっている様子を確認できないために、ブラシ角を最適値に合わせることは困難であった。
【0004】
なお、特許文献1には、歯ブラシ本体の軸周りの向きを4段階または8段階に検出し、その検出結果からブラッシング部位を推定するというアイデアが開示されている。具体的には、本体内部に複数の扇状の区画が周方向に設けられており、導電性の球がどの区画に入っているかを電気抵抗の変化から検知することで、歯ブラシ本体の向きを推定している。ただしこのような機構は小型化が難しく、実施可能性に乏しい。
【特許文献1】特開2005−152217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電動歯ブラシにおいて適切なブラシ角を容易に実現するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の電動歯ブラシは、把持部を有する電動歯ブラシ本体と、ブラシを有するブラシ部材と、前記ブラシを運動させる駆動手段と、前記ブラシの向きを変更するために前記ブラシ部材を前記電動歯ブラシ本体に対して相対的に回転させる回転手段と、前記電動歯ブラシ本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角が予め定められた最適値になるように前記回転手段を制御する制御手段と、を備える。
【0008】
この構成によれば、電動歯ブラシの姿勢に応じて自動的にブラシ部材が回転しブラシ角が最適値になるよう制御されるため、ブラッシング中に適切なブラシ角を容易に実現することができ、良好な刷掃効果を得ることができる。
【0009】
ここで、前記制御手段は、検出された姿勢に基づいて、歯列表面を区分することで定義される複数の部位の中からブラッシングされているブラッシング部位を推定する部位推定手段と、検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角を推
定するブラシ角推定手段と、を備え、前記ブラッシング部位ごとに予め設定されているブラシ角の最適値と前記推定されたブラシ角とを比較して、ブラシ角が前記最適値になるように前記回転手段を制御することが好ましい。
【0010】
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面、歯周ポケットなど)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なり、部位ごとに効果的なブラシ角に違いがある。また、同じ種類の歯であっても歯列の右と左ではブラシの当て方が反対になる。そこで、本発明のようにブラッシング部位を推定し、その推定結果に応じてブラシ角を適宜制御することで、より良好な刷掃効果を実現できるようになる。
【0011】
前記制御手段は、検出された姿勢に応じて、前記ブラシの運動方向又は運動周波数を変更するように前記駆動手段を制御することが好ましい。たとえば駆動手段が回転モータの場合には、回転モータの回転方向を切り替えたり、回転数を変更したりすることで、ブラシの運動方向や運動周波数を変更可能である。
【0012】
このようにブラシ角だけでなく、ブラシ自体の運動も制御することで、より良好な刷掃効果を実現することができる。
【0013】
前記姿勢検出手段は、加速度センサの出力に基づいて姿勢を検出するものであることが好ましい。
【0014】
これにより、高精度に姿勢を判定でき、従来よりも高精度かつ高分解能なブラッシング部位及びブラシ角の推定が可能となる。また加速度センサは小型ゆえ、電動歯ブラシ本体への組み込みも容易である。1軸の加速度センサを用いることもできるし、好ましくは、多軸(2軸、3軸、それ以上)の加速度センサを用いることもできる。
【0015】
前記ブラシ角が前記最適値であることを報知する報知手段をさらに備えることが好ましい。これによりユーザビリティを向上することができる。なお、報知の方法としては、光、音、音声、振動などを利用できる。
【0016】
前記最適値が変更可能であることが好ましい。これにより、たとえば高い歯垢除去力を得たい場合にブラシ角を90度に設定し、歯周ポケットなど歯と歯茎の間を効果的に磨きたい場合にはブラシ角を45度に設定する、というように柔軟な使い方ができる。
【0017】
前記制御手段は、電動歯ブラシの使用後または使用開始時に、前記ブラシ部材が予め設定された初期位置になるように前記回転手段を制御することが好ましい。これにより、ブラシの向きが初期位置からずれた状態で歯磨きを終えた場合でも、次回の歯磨き開始までにブラシの向きが自動的に初期位置に復帰する。よって、歯磨きの開始時に、より素早く最適なブラシ角に至らしめることが可能となる。
【0018】
なお、上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電動歯ブラシにおいて適切なブラシ角を容易に実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0021】
<第1実施形態>
(電動歯ブラシの構成)
図1、図2、図3を参照して、電動歯ブラシの構成を説明する。図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図であり、図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図であり、図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。
【0022】
電動歯ブラシは、外筐体1aと内筐体1bとから構成される電動歯ブラシ本体1(以下、単に「本体1」ともいう。)と、本体1の内筐体1bに取り付けられるブラシ部材2と、を備えている。
【0023】
本体1の外筐体1aは、概ね円筒形状を呈する樹脂ケースからなる。外筐体1aには、歯を磨く際に使用者が手で握るためのエラストマ製の把持部14や、電源のオン/オフやモード切替などを行うためのスイッチSなどが設けられている。
【0024】
また本体1の外筐体1aの内部には、駆動源であるモータ10、駆動回路12、2.4V電源である充電池13、充電用のコイル(不図示)などが設けられている。充電池13を充電する際には、充電器100に本体1を載置するだけで、電磁誘導により非接触で充電可能である。駆動回路12は、各種演算・制御を実行するCPU(入出力処理部)120、プログラムや各種設定値を記憶するメモリ121、タイマ122などを有している。
【0025】
(加速度センサ)
本体1の内部には、加速度センサ15が設けられている。加速度センサ15としては多軸の加速度センサを用いてもよいし、1軸の加速度センサを用いてもよい。3軸加速度センサの場合は、図3に示すように、x軸がブラシ面に対して平行になり、y軸が本体1の長手方向に一致し、z軸がブラシ面に対して垂直になるように設置するとよい。「ブラシ面」とは、ブラシの毛(繊維)と略直交し、かつ、毛の先端部分に位置する仮想的な平面をいう。1軸加速度センサの場合は、図3のz軸方向もしくはx軸方向の加速度を検出するように設置するとよい。なお本実施形態では、x,y,zの3軸加速度センサを用いる。加速度センサ15の出力はCPU120に入力され、ブラシの三次元姿勢を検出するために利用される。
【0026】
加速度センサ15としては、ピエゾ抵抗タイプ、静電容量タイプ、もしくは熱検知タイプのMEMSセンサを好ましく利用できる。MEMSセンサは非常に小型であるため、本体1の内部への組み込みが容易だからである。ただし、加速度センサ15の形式はこれに限らず、動電式、歪みゲージ式、圧電式などのセンサを利用しても構わない。また特に図示しないが、各軸のセンサの感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフトなどを補正するための補正回路を設けるとよい。また、動加速度成分やノイズを除去するためのバンドパスフィルタ(ローパスフィルタ)を設けてもよい。また、加速度センサの出力波形を平滑化することによりノイズを低減してもよい。
【0027】
(ブラシの駆動機構)
本体1の内筐体1bは、外筐体1aに対して相対動自在に取り付けられた部品であり、外筐体1aの先端側(ブラシ側)の開口部から突き出るように設けられたステム3を備えている。上記のブラシ部材2は、このステム3を覆うように装着される。ブラシ部材2の先端には、ブラシ20が植毛されている。ブラシ部材2は消耗部品ゆえ、新品に交換できるよう、ステム3(内筐体1b)に対して着脱自在な構成となっている。
【0028】
ステム3は、樹脂材からなる、先端(ブラシ側の端部)が閉じた筒状の部材であり、筒の内部の先端に軸受32を有している。モータ10の回転軸11に連結された偏心軸30の先端が、ステム3の軸受32に挿入される。この偏心軸30は、軸受32の近傍に重り
31を有しており、偏心軸30の重心はその回転中心からずれている。CPU120が動作モードに応じた駆動信号(たとえばパルス幅変調信号)をモータ10に供給し、モータ10の回転軸11を回転させると、回転軸11の回転に伴って偏心軸30も回転するが、偏心軸30は重心がずれているために回転中心の回りに旋回するような運動を行う。よって、偏心軸30の先端が軸受32の内壁に対して微小な衝突を繰り返し、ブラシ20を高速に振動(運動)させることとなる。つまり、モータ10が、ブラシを振動(運動)させる駆動手段の役割を担い、偏心軸30が、モータ10の出力(回転)をブラシ20の振動に変換する運動伝達機構(運動変換機構)の役割を担う。
【0029】
(ブラシ部材の回転機構)
本実施形態の電動歯ブラシは、ブラシ20のy軸周りの向きを変更するために、ブラシ部材2を本体1の外筐体1aに対して相対的に回転移動させるアクチュエータ(回転手段)40を備えている。図4A及び図4Bにアクチュエータ40の構成を示す。図4Aは図4BのX−X断面図である。
【0030】
アクチュエータ40は、固定子41と回転子42を有する回転型のモータにより構成される。固定子41は本体1の外筐体1aに固定されており、回転子42はモータ10のモータハウジング43に固定されている。CPU120からアクチュエータ40に制御信号が供給されると、その制御信号に応じた角度だけ回転子42が回転する。なお、この実施形態では、回転子42の回転角は−180度〜+180度の範囲内を想定している。回転子42の回転に伴って、モータハウジング43及びモータ10が回転し、さらに、モータ10の回転軸11に固定されている内筐体1bも回転する。その結果、ブラシ部材2が本体1に対して所望の角度だけ回転し、ブラシ20の向きを変更することができる。ここで、「ブラシの向き」とは、ブラシ面の法線方向、つまり、ブラシの毛先の方向をいい、「ブラシの向きを変更する」とは、ブラシの向きのy軸周りの回転角を変更することをいう。
【0031】
このアクチュエータ40としては、ステッピングモータなど公知の回転型モータを好ましく利用できる。なお、回転出力を得ることができればよいので、弧状の固定子を有する円筒型リニアモータなども利用可能である。
【0032】
以上述べたように、本実施形態の電動歯ブラシは、ブラシ20を運動(振動)させるためのモータ10と、ブラシ20の向き(ブラシ角)を制御するためのアクチュエータ40の、2種類のアクチュエータを備えている。互いを区別するために、モータ10をブラシ駆動用アクチュエータ、アクチュエータ40をブラシ角制御用アクチュエータと称することもできる。
【0033】
(電動歯ブラシの動作)
歯の種類(上顎/下顎、臼歯/切歯など)や部分(舌側/頬側、歯面/噛み合わせ面、歯周ポケットなど)によって、食物残渣や歯垢の付き方が異なり、部位ごとに効果的なブラシ角に違いがある。また、同じ種類の歯であっても歯列の右と左ではブラシの当て方が反対になる。
【0034】
そこで、本実施形態の電動歯ブラシは、加速度センサ15で検出されたブラシの姿勢に基づいてブラッシング部位を推定し、ブラッシング部位に応じてブラシ角が最適値になるようアクチュエータ40を制御する。
【0035】
本実施形態では、図5に示すように、上下の歯列を、「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「上顎左頬側」、「上顎左舌側」、「上顎左噛み合わせ面」、「上顎右頬側」、「上顎右舌側」、「上顎右噛み合わせ面」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」、「下顎左頬側」
、「下顎左舌側」、「下顎左噛み合わせ面」、「下顎右頬側」、「下顎右舌側」、「下顎右噛み合わせ面」、の16箇所の部位に区分する。ただし、歯列の区分はこれに限らず、もっと大まかな区分でもよいし、より細かい区分でもよい。
【0036】
図6〜図9のフローチャートを参照して、ブラシ角の自動制御のフローを具体的に説明する。図6はメインルーチンのフローチャートであり、図7〜図9はメインルーチンの各処理の詳細を示すフローチャートである。なお、以下に説明する処理は、特にことわりのない限り、制御手段であるCPU120がプログラムに従って実行する処理である。
【0037】
電動歯ブラシの電源がONになると、CPU120は、モータ10を制御してブラシ20の駆動を開始する(S10)。以下に述べるS20〜S60の処理は一定時間ごとに繰り返し実行される。電動歯ブラシの電源がOFFになるか、タイマによって計時されていた継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達すると、S20〜S60のループが終了し(継続?;NO)、CPU120はブラシ20の駆動を停止する(S70)。
【0038】
(S20:姿勢の検出)
S20において、CPU120は、加速度センサ15の出力に基づき電動歯ブラシ本体の姿勢を検出する。図7は姿勢検出処理(S20)のフローチャートである。
【0039】
CPU120は、加速度センサ15からx、y、zそれぞれの出力Ax、Ay、Azを取得する(S100)。Axはx方向の加速度成分、Ayはy方向の加速度成分、Azはz方向の加速度成分を表す。歯ブラシが静止状態にあるとき(加速度センサ15に動加速度が作用していないとき)は、Ax、Ay、Azの合成ベクトルAが重力加速度に相当する。ここでは、A=(Ax、Ay、Az)を姿勢ベクトルとよぶ。
【0040】
ここで、姿勢ベクトルA=(Ax、Ay、Az)の大きさが1.2g(gは重力加速度)より大きい場合は(S101;YES)、エラーを返す(S102)。加速度センサ出力に動加速度成分が多く含まれていると、重力加速度の方向(つまりブラシの三次元姿勢)を正確に特定するのが難しくなるからである。なお、S102のようにエラーを返すのではなく、合成ベクトルの大きさが1.2g以下となる加速度センサ出力Ax、Ay、Azが得られるまでS100とS101の処理を繰り返すようにしてもよい。なお、エラー判定の閾値は1.2gに限らず、他の値でもよい。
【0041】
(S30:ブラッシング部位の推定)
図8、図9はブラッシング部位推定処理(S30)のフローチャートである。また図10、図11は、ブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【0042】
まずCPU120は、z方向の加速度センサの出力Azに基づき、上顎か下顎かを判定する(S700)。上顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず上向きになり、下顎の歯列をブラッシングするときはブラシ面が少なからず下向きになることに着目した判定である。Az>0の場合は下顎(S801)、Az≦0の場合は上顎(S701)と判定される。
【0043】
(1)上顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S702)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体1が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体1が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値aの場合は上顎前歯と判定される(S703)。
【0044】
上顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S704)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎前頬側」と判定され(S705)、Ax≦0の場合は「上顎前舌側」と判定される(S706)。
【0045】
一方、S702で上顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて噛み合わせ面か否かを判定する(S707)。噛み合わせ面をブラッシングするときはブラシ面がほぼ水平になり、Axの出力が非常に小さくなることに着目した判定である。閾値b>Ax>閾値cの場合は「上顎左噛み合わせ面または上顎右噛み合わせ面」と判定される(S708)。なお、第1実施形態では、上顎左噛み合わせ面と上顎右噛み合わせ面とをとくに区別していない。噛み合わせ面の場合、左右でブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。
【0046】
Ax≧閾値bまたはAx≦閾値cの場合、CPU120は、Axが0より大きいか否かで、頬側か舌側かを判定する(S709)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「上顎右頬側または上顎左舌側」と判定され(S710)、Ax≦0の場合は「上顎左頬側または上顎右舌側」と判定される(S711)。なお、第1実施形態では、上顎右頬側と上顎左舌側とをとくに区別していない。両部位のあいだでブラシ角等を変える必要性が小さいからである。上顎左頬側と上顎右舌側についても同様である。
【0047】
(2)下顎の場合
CPU120は、y方向の加速度センサの出力Ayに基づいて前歯か否かを判定する(S802)。前歯をブラッシングするときは歯ブラシ本体1が比較的水平になるが、臼歯をブラッシングするときは唇との干渉があるため歯ブラシ本体1が斜めにならざるをえないことに着目した判定である。Ay≦閾値dの場合は下顎前歯と判定される(S803)。
【0048】
下顎前歯と判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて頬側か舌側かを判定する(S804)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax<0の場合は「下顎前頬側」と判定され(S805)、Ax≧0の場合は「下顎前舌側」と判定される(S806)。
【0049】
一方、S802で下顎前歯でないと判定した場合、CPU120は、x方向の加速度センサの出力Axに基づいて噛み合わせ面か否かを判定する(S807)。噛み合わせ面をブラッシングするときはブラシ面がほぼ水平になり、Axの出力が非常に小さくなることに着目した判定である。閾値e>Ax>閾値fの場合は「下顎左噛み合わせ面または下顎右噛み合わせ面」と判定される(S808)。なお、第1実施形態では、下顎左噛み合わせ面と下顎右噛み合わせ面とをとくに区別していない。噛み合わせ面の場合、左右でブラッシング動作を変える必要性が小さいからである。
【0050】
Ax≧閾値eまたはAx≦閾値fの場合、CPU120は、Axが0より大きいか否かで、頬側か舌側かを判定する(S809)。頬側と舌側とではブラシの向きが反転することに着目した判定である。Ax>0の場合は「下顎右頬側または下顎左舌側」と判定され(S810)、Ax≦0の場合は「下顎左頬側または下顎右舌側」と判定される(S811)。なお、第1実施形態では、下顎右頬側と下顎左舌側とをとくに区別していない。両部位のあいだでブラシ角等を変える必要性が小さいからである。下顎左頬側または下顎右舌側についても同様である。
【0051】
以上の処理によって、現在のブラッシング部位が、「上顎前頬側」(S705)、「上顎前舌側」(S706)、「上顎噛み合わせ面」(S708)、「上顎右頬側または上顎左舌側」(S710)、「上顎左頬側または上顎右舌側」(S711)、「下顎前頬側」(S805)、「下顎前舌側」(S806)、「下顎噛み合わせ面」(S808)、「下顎右頬側または下顎左舌側」(S810)、「下顎左頬側または下顎右舌側」(S811)のいずれかに特定される。
【0052】
なお、上記判定アルゴリズムはあくまでも一例を示したものにすぎず、加速度センサの出力Ax、Ay、Azからブラッシング部位を特定できるのであればどのような判定アルゴリズムでも構わない。たとえばAx、Ay、Azの値をそのまま判定の変数として用いるのでなく、Ax、Ay、Azを適宜組み合わせることで得られる2次変数を判定に用いてもよい。2次変数は、たとえば、Ay/Az、Ax・Ax+Ay・Ay、Az−Axなど、任意に設定できる。あるいは、各軸の加速度情報Ax、Ay、Azを、図12に示すように角度情報(姿勢角)α、β、γに変換した後で、ブラッシング部位を判定してもよい。図12の例では、重力加速度方向に対するx軸の角度をロール角α、重力加速度方向に対するy軸の角度をピッチ角β、重力加速度方向に対するz軸の角度をヨー角γのように定義している。判定に用いる閾値は臨床実験等の結果から決定することができる。
【0053】
(S40〜S60:ブラシ角の制御)
S40において、CPU120は、S200で検出された姿勢(加速度センサの出力)に基づいて現在のブラシ角の値を推定する。ブラシ角とは、歯軸(歯の頭と根に沿った軸)に対するブラシの当たり角のことである。ただし、S40の推定処理では、アクチュエータ40による内筐体1bの回転角が0度であり且つ歯軸が重力方向に一致すると仮定した場合のブラシ角を算出する。なお、ここでは0度から90度の範囲でブラシ角を表すものとする。
【0054】
ブラシ角は、たとえば、z方向の加速度成分Azから推定可能である。図13に示すように、ブラシ角が約90度の場合はAzはほとんど0を示し、ブラシ角が小さくなるほどAzの値が大きくなる、というようにブラシ角に応じてAzの値が有意に変化するからである。なお、ブラシ角に応じてx方向の加速度成分Axも変化するため、Azの代わりにAxからブラシ角を推定したり、AxとAzの両方(AxとAzの合成ベクトルの方向)からブラシ角を推定することも好ましい。ブラシ角は連続量で算出してもよいし、0度〜10度、10度〜20度、・・・のように離散値で算出してもよい。
【0055】
図14の上段はブラシ角=0度の状態、中段がブラシ角=45度の状態、下段がブラシ角=90度の状態を示している。噛み合わせ面を磨く場合には、ブラシ角は約0度であることが好ましい。また歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すには、ブラシの毛先が歯周ポケットや歯間に入り込むようにブラシを動かすとよく、ブラシ角は約45度であることが好ましい。一方、ブラシ角を90度にすると、歯面に対して最も高い歯垢除去力を発揮できる。
【0056】
このように、ブラッシング部位あるいは所望する刷掃効果などに依存して、最適なブラシ角を定めることができる。ここでは、「上顎噛み合わせ面」と「下顎噛み合わせ面」のブラシ角の最適値を0度、「上顎右頬側」、「上顎左舌側」、「上顎左頬側」、「上顎右舌側」、「下顎右頬側」、「下顎左舌側」、「下顎左頬側」、「下顎右舌側」におけるブラシ角の最適値を45度、「上顎前頬側」、「上顎前舌側」、「下顎前頬側」、「下顎前舌側」におけるブラシ角の最適値を90度、のように設定した。これらの設定値は、メモリ121に記憶されている。なお、ここで示したブラシ角の最適値は一例にすぎず、どのように最適値を設定してもよいし、また使用者が所望の値に最適値を変更できることも好ましい。さらには、「歯垢除去モード」と「歯周ポケットモード」のように予め複数の設
定値が用意されており、使用者が歯垢除去モードを選択すると噛み合わせ面以外のブラッシング部位では「45度」の最適値が自動的に設定され、歯周ポケットモードを選択すると噛み合わせ面以外のブラッシング部位で「90度」の最適値が自動的に設定されるようにしてもよい。
【0057】
S50では、CPU120は、S40で得られた現在のブラシ角の値と、S30で得られたブラッシング部位におけるブラシ角の最適値とを比較し、ブラシ角が適切か否かを判定する。「45度」のように最適値がある1つの値で定義されている場合は、現在値と最適値との差を評価すればよい。もし「40度〜50度」のように最適値が値域で定義されている場合は、現在値がその値域内にあるか否かを評価すればよい。
【0058】
ここで、ブラシ角が適切でないと判定された場合(S50;NO)、CPU120は、ブラシ角の調整を行う(S60)。具体的には、CPU120は、最適値と現在値の差分を求め、その差分(角度)に相当する制御信号をアクチュエータ40に送出し、ブラシ部材2を回転させる。これにより、ブラシ角が最適値になるようにブラシ20の向きが制御される。
【0059】
以上述べた本実施形態の構成によれば、電動歯ブラシの姿勢に応じて自動的にブラシ部材2が回転しブラシ角が最適値になるよう制御されるため、ブラッシング中に適切なブラシ角を容易に実現することができ、良好な刷掃効果を得ることができる。
【0060】
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態の電動歯ブラシの構成を示している。第1実施形態と異なる点は、外筐体1aと内筐体1bの間に、軸受44が設けられている点である。この構成によれば、内筐体1bの位置安定性が向上する。また内筐体1bの位置が安定することから、アクチュエータ40の軸方向の長さを短くすることができ、電動歯ブラシ本体1の小型化にも寄与する。
【0061】
<第3実施形態>
図16は、本発明の第3実施形態の電動歯ブラシの構成を示している。第1及び第2実施形態では、リード線を介してモータ10への電力供給が行われていたのに対し、第3実施形態では、電気的接続部45を介して駆動回路12からモータ10への電力供給が行われている点が異なる。
【0062】
第1、第2実施形態のようにモータ10と駆動回路12の間がリード線で接続されている構成では、リード線のねじれや断線を防ぐために、アクチュエータ40の回転範囲を制限する必要がある。一方、本実施形態の電気的接続部45は、アクチュエータ40の回転角によらず、駆動回路側の電力供給ラインとモータ10の電極との電気的接続を確保するための回路構成である。たとえばアクチュエータ40を360度以上回転させる必要がある場合などに、この構成を好適に利用することができる。
【0063】
図17は、電気的接続部45の一例として、整流ブラシによる回路構成を模式的に示している。このような回路構成により、整流ブラシの接触位置によらず(内筐体1bと外筐体1aの位置関係によらず)、一定方向の電流Iがモータ10に流れるように、駆動回路12側からモータ10へと電力を供給することができる。
【0064】
図18は、電気的接続部45の一例として、コイルによる回路構成を模式的に示している。このような回路構成により、電磁誘導によって駆動回路12側からモータ10へと電極を供給することが可能である。
【0065】
<第4実施形態>
第4実施形態では、ブラシ角が最適値であることを報知する機能を設ける。具体的には、図6のS50でブラシ角が適切であると判定された場合に、CPU120が、外筐体1aに設けられた発光部(LEDなど)を発光させる。使用者は、発光部の点灯状態をみることで、ブラシ角が最適値であることを容易に把握できる。
【0066】
ここで、S40で得られたブラシ角の現在値とS30で得られたブラッシング部位の最適値の差分に応じて、報知の仕方(発光色、点滅パターンなど)を変えることも好ましい。これにより、アクチュエータ40によるブラシ角の調整が不要な場合(本体1の姿勢が正しい状態)と、アクチュエータ40によりブラシ角の調整が行われた場合(本体1の姿勢は正しくない状態)との区別がつくため、正しい姿勢を使用者に学習させることができる。
【0067】
なお、報知の方法は、光以外にも、音、振動、音声などを用いることができる。音の場合は、差分に応じて音の大きさやパターンを変えることができる。振動の場合は、差分に応じて振動の強さや長さを変えることができる。音声の場合は、たとえば、「あと30度くらい傾けて下さい」「もう少し傾けてください」「最適なブラシ角です」のような内容を報知することができる。
【0068】
<第5実施形態>
第5実施形態では、検出された姿勢に応じて、ブラシ角だけでなく、ブラシの運動方向(具体的にはモータ10の回転方向)、ブラシの運動周波数(具体的にはモータ10の回転数)を変更する。その他の構成については上述した実施形態のものと同様であるため、以下、本実施形態に特有の構成を中心に説明を行う。
【0069】
(振動特性)
この電動歯ブラシでは、上述のように、偏心軸の旋回運動を利用してブラシの振動を発生させており、ブラシ20はモータ10の回転軸に垂直な面内を楕円状の軌道を描いて振動する。本発明者らは、振動数(モータ回転数)を変化させながらブラシの振動を観察し分析することによって、この電動歯ブラシが次のような振動特性を有することを見出した。
【0070】
(1)ブラシ部分が少なくとも2つの共振点(共振振動数)を有している。
(2)各共振点における共振の方向が異なる。具体的には、図19に示すように、振動数が低い側の共振点(第1共振:約12500spm)ではブラシ面に平行なx軸方向の振幅が増大する。振動数が低い側の共振点(第2共振:約38000spm)ではブラシ面に垂直なz軸方向の振幅が増大する。共振外(たとえば約26500spm)では、ブラシはx軸(z軸)に対して斜め(約45度)の軌道を描く。なお、「spm」は一分間あたりのスイング回数を表す単位である。
【0071】
方向の異なる複数の共振が出現する理由は、電動歯ブラシの構造やその駆動原理に依るところが大きいと考えられる。本発明者らは、偏心軸やブラシの構成を変更しながら実験を繰り返すことで、第1共振点が主に運動伝達機構に依存する特性であり、第2共振点が主にブラシに依存する特性であるとの知見を得ている。言い換えれば、運動伝達機構の構造や形状(簡単には偏心軸の重りの位置、大きさ、重量など)を変更することで第1共振点の振動数や振幅を調整でき、また、ブラシの構造や形状を変更することで第2共振点の振動数や振幅を調整できることが分かった。
【0072】
図20の上段がブラシ角=45度の状態を示し、図20の下段がブラシ角=90度の状態を示している。また図20の左側はモータが正転の状態、右側はモータが反転の状態を
示している。そして、それぞれの矢印はブラシの動き(振幅が最も大きい方向)を表している。概略、第1共振ではブラシが横(x軸方向)に動き、第2共振ではブラシが縦(z軸方向)に動き、共振外ではブラシが斜めに動く。
【0073】
歯周ポケットや歯間から食物残渣や歯垢を効果的に掻き出すには、ブラシの毛先が歯周ポケットや歯間に入り込むようにブラシを動かすとよい。すなわち、ブラシの動く方向が歯軸に対して斜め(たとえば45度)になることが好ましい。したがって、図20の例では、ブラシ角が45度の場合は、第2共振の動きが最適であることがわかる。一方、ブラシ角が90度の場合、下顎右舌側ではモータ正転の共振外の動きが最適であり、下顎右頬側ではモータ逆転の共振外の動きが最適であることがわかる。なお、同様の考え方に従って、ブラッシング部位とブラシ角の組み合わせのそれぞれに対する最適な動作モード(モータ回転方向とブラシ振動数)を決定することができる。
【0074】
図21は本実施形態の動作モード切替処理のフローチャートである。この処理は、たとえば図6のS60の後などに実行される。
【0075】
CPU120は、S30で得られたブラッシング部位とS40で得られたブラシ角(又はブラシ角の最適値)を、前回の処理の時のブラッシング部位およびブラシ角と比較することで、ブラッシング部位もしくはブラシ角が変化したか否かをチェックする(S1800)。なお前回の処理の時のブラッシング部位とブラシ角はメモリに記憶されている。
【0076】
ブラッシング部位もしくはブラシ角が変化した場合(S1800;YES)、CPU120は、現在のブラッシング部位が「下顎左頬側、下顎右舌側、上顎左舌側、上顎右頬側」の第1グループと、「下顎右頬側、下顎左舌側、上顎右舌側、上顎左頬側」の第2グループのいずれに該当するかを判定する(S1801)。そして第1グループの場合は、CPU120は、モータの回転方向を正転にする(S1802)。第2グループの場合、CPU120は、モータの回転方向を反転にする(S1803)。さらにCPU12は、ブラシ角が45度の場合にブラシの振動数を第2共振(高速)に制御し(S1804、S1805)、ブラシ角が90度の場合にブラシの振動数を共振外(中速)に制御する(S1806)。
【0077】
以上述べた本実施形態の制御によれば、ブラッシング部位とブラシ角の情報に基づき、歯間や歯周ポケットのブラッシングに最適なブラシ毛先の動きを実現でき、より一層の歯垢除去力の向上を図ることができる。
【0078】
なお、この実施形態では、ブラシの運動方向と運動周波数の両方を制御したが、いずれか一方のみを制御する構成も好ましい。たとえば、歯肉が過敏な部位については、運動周波数を低くしてブラッシング強度を弱めにし、逆に高い刷掃効果が望まれる部位については、運動周波数を高くしてブラッシング強度を強めにすることができる。これにより刷掃効果と施療感の向上を図ることができる。また、歯ブラシの振動機構はyz平面に関して対称であるため、モータの回転方向を逆転すると、ブラシはyz平面に関して対称な軌道を描く。よって、ブラシの毛先が歯周ポケットから歯垢を掻き出す方向に動くように、ブラッシング部位に応じてモータの回転方向を切り替えるとよい。
【0079】
<第6実施形態>
第6実施形態は、1軸の加速度センサによりブラッシング部位およびブラシ角の推定を行う構成を採用する。
【0080】
図22上段は、頬側または舌側の歯面をブラッシングしている状態を示している。このとき、ブラシ角(ヨー角γ)は約90度になり、重力加速度のx軸方向成分は約1gもし
くは−1gとなり(正負は歯列の左右に対応する)、重力加速度のz軸方向成分はほぼ0となる。一方、図22下段は、噛み合わせ面をブラッシングしている状態を示している。このとき、ブラシ角(ヨー角γ)はほぼ0度になり、重力加速度のx軸方向成分はほぼ0となり、重力加速度のz軸方向成分は約1gもしくは−1gとなる(正負は歯列の上下に対応する)。
【0081】
このような特性を利用すれば、x軸の加速度センサまたはz軸の加速度センサのみでも、「頬側または舌側の歯面」か「噛み合わせ面」かの判別や、さらには左右上下の判別も可能である。そして、前述の実施形態と同じく、x軸またはz軸の加速度センサ出力からブラシ角を算出可能である。ブラッシング部位とブラシ角が推定された後の処理は、前述の実施形態と同様である。
【0082】
<第7実施形態>
第7実施形態の電動歯ブラシは、電動歯ブラシの使用後にブラシ部材を初期位置に復帰させる自動復帰機能を有している。その他の構成は上述した実施形態のものと同様である。
【0083】
図23のフローチャートに示すように、スイッチ操作により電動歯ブラシの電源がOFFされるか、タイマによって計時されていた継続動作時間が所定時間(たとえば2分間)に達すると、S20〜S60のループが終了し(継続?;NO)、ブラシの駆動が停止する(S70)。その後、S230において、CPU120がアクチュエータ40を制御し、ブラシ部材2の角度(ブラシの向き)を初期位置(ホームポジション)に戻す。本実施形態では、ブラシ面が電動歯ブラシ本体のスイッチSと同じ側を向いている状態(図2参照)を初期位置と定めている。
【0084】
このような自動復帰機能によれば、ブラシの向きが初期位置からずれた状態で歯磨きを終えた場合でも、次回の歯磨き開始までにブラシの向きが自動的に初期位置に復帰する。よって、次回の歯磨き開始時に、より素早く最適なブラシ角に至らしめることが可能となる。
【0085】
なお、電動歯ブラシが充電器100に置かれたことを検知して、ブラシ部材を初期位置に戻すような制御も好ましい。また、電源OFFやタイマによる自動停止の後、すぐに歯磨きが再開される可能性があることを考慮し、電源OFF等を検知してから所定時間(例えば1分)経過後に、ブラシ部材を初期位置に復帰させるようにすることも好ましい。
【0086】
また、この実施形態では、電動歯ブラシの使用終了後に自動復帰処理を実行したが、電動歯ブラシの使用開始時(たとえば、電源がONされた時、電動歯ブラシが充電器100から取り外された時など)に自動復帰処理を実行しても、同様の作用効果が得られる。
【0087】
<その他>
上述した実施形態の構成は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。たとえば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせることも好ましい。また、上記実施形態では、偏心分銅による振動方式の電動歯ブラシを例示したが、本発明は他の運動方式の電動歯ブラシにも適用可能である。例えば、回転往復運動や直線往復運動やブラシ毛回転運動やそれらを切り替えて組み合わせた電動歯ブラシにおいても適用可能である。また、充電式でなく、乾電池式や電源コードを接続して使用するタイプの電動歯ブラシにも本発明を適用可能である。
【0088】
また、ブラシの姿勢検出の精度とブラッシング部位やブラシ角の推定精度をさらに高め
るために、加速度センサとジャイロスコープの出力から、基準位置に対するブラシの移動量や相対姿勢を算出することも好ましい。基準位置については、電源ONの時点の姿勢を基準位置に設定してもよいし、あるいは、使用者に基準位置(磨き始めの位置)を入力させるような仕組み(たとえば、歯ブラシ本体を水平に構えブラシを上顎前頬側に当てた状態でスイッチを押させる)を設けてもよい。移動量(移動距離)は、加速度センサ出力から得られるx軸方向、y軸方向、z軸方向それぞれの動加速度成分を二階積分することにより算出することができる。ただし、移動量を算出する際は、歯ブラシの座標系xyzを、重力加速度方向をZ軸とする座標系XYZ(上記基準位置が原点であるとよい)に変換する。たとえば、1クロックごとにX、Y、Zそれぞれの移動距離を算出し累積していくことにより、基準位置(初期位置)に対する相対位置を割り出すことができる。そして、基準位置に対する相対位置がわかれば、上述した実施形態よりもさらに正確かつ詳細にブラッシング部位を同定することが可能である。さらに、磁気センサなどから得られる方位情報を利用してブラシの位置を算出することも好ましい。なお、加速度センサ出力から動加速度成分を抽出するには、ハイパスフィルタなどのバンドパスフィルタを用いることができる。このとき、ブラシの振動によるノイズを除去するために、ブラシの駆動周波数に相当する100Hz〜300Hz程度の周波数成分をカットすることも好ましい。またジャイロスコープと組み合わせてより正確な移動量や移動方向を算出することも好ましい。さらに、前歯に関しては、左右どちらの手で歯ブラシ本体を持つかによってブラシの姿勢が180度変わるため、使用者に利き手(歯ブラシを持つほうの手)を登録させ、登録された利き手に応じてブラッシング部位の判定アルゴリズムを変更したり、動作モード(モータ回転方向、ブラシの動き)を変更したりしてもよい。
【0089】
また、ブラシ部材2の先端部分設けた小型カメラで口腔内を撮影し、その画像情報をブラシの姿勢検出に活用してもよい。さらに、ブラシ部材2の先端部分に温度センサや光センサを設け、それらの検出結果をブラシの姿勢検出に活用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は第1実施形態の電動歯ブラシのブロック図である。
【図2】図2は第1実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図3】図3は電動歯ブラシの外観を示す斜視図である。
【図4】図4A及び図4Bはブラシ角制御用アクチュエータの構成を示す図である。
【図5】図5はブラッシング部位の区分を示す図である。
【図6】図6は電動歯ブラシの動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図7は姿勢検出処理のフローチャートである。
【図8】図8はブラッシング部位推定処理(上顎)のフローチャートである。
【図9】図9はブラッシング部位推定処理(下顎)のフローチャートである。
【図10】図10は上顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図11】図11は下顎のブラッシング部位ごとの加速度センサ出力Ax、Ay、Azの一例を示す図である。
【図12】図12は電動歯ブラシの姿勢角の定義を示す図である。
【図13】図13はブラシ角の変化にともなうセンサ出力の波形変化を示す図である。
【図14】図14はブラシ角を説明する図である。
【図15】図15は第2実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図16】図16は第3実施形態の電動歯ブラシの内部構成を示す断面図である。
【図17】図17は整流ブラシによる電気的接続部の構成を示す図である。
【図18】図18はコイルによる電気的接続部の構成を示す図である。
【図19】図19はブラシの軌道を説明する図である。
【図20】図20はブラシ角とブラシの動きの関係を示す図である。
【図21】図21は第5実施形態の動作モード切替処理のフローチャートである。
【図22】図22は第6実施形態の姿勢検出を説明する図である。
【図23】図23は第7実施形態の自動復帰処理を説明する図である。
【符号の説明】
【0091】
1 電動歯ブラシ本体
1a 外筐体
1b 内筐体
2 ブラシ部材
3 ステム
10 モータ
11 回転軸
12 駆動回路
13 充電池
14 把持部
15 加速度センサ
20 ブラシ
30 偏心軸
31 重り
32 軸受
40 アクチュエータ
41 固定子
42 回転子
43 モータハウジング
44 軸受
100 充電器
120 CPU
121 メモリ
122 タイマ
S スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部を有する電動歯ブラシ本体と、
ブラシを有するブラシ部材と、
前記ブラシを運動させる駆動手段と、
前記ブラシの向きを変更するために前記ブラシ部材を前記電動歯ブラシ本体に対して相対的に回転させる回転手段と、
前記電動歯ブラシ本体の姿勢を検出する姿勢検出手段と、
検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角が予め定められた最適値になるように前記回転手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電動歯ブラシ。
【請求項2】
前記制御手段は、
検出された姿勢に基づいて、歯列表面を区分することで定義される複数の部位の中からブラッシングされているブラッシング部位を推定する部位推定手段と、
検出された姿勢に基づいて、歯軸に対する前記ブラシの角度であるブラシ角を推定するブラシ角推定手段と、
を備え、
前記ブラッシング部位ごとに予め設定されているブラシ角の最適値と前記推定されたブラシ角とを比較して、ブラシ角が前記最適値になるように前記回転手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の電動歯ブラシ。
【請求項3】
前記制御手段は、検出された姿勢に応じて、前記ブラシの運動方向又は運動周波数を変更するように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の電動歯ブラシ。
【請求項4】
前記姿勢検出手段は、加速度センサの出力に基づいて姿勢を検出するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
【請求項5】
前記ブラシ角が前記最適値であることを報知する報知手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
【請求項6】
前記最適値が変更可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動歯ブラシ。
【請求項7】
前記制御手段は、電動歯ブラシの使用後または使用開始時に、前記ブラシ部材が予め設定された初期位置になるように前記回転手段を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電動歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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