説明

電動発電機

【課題】発電用電磁石の間に空芯コイルを設けることによって、無負荷で電力を取り出して、モータ用電磁石に電力を供給する蓄電池に蓄電することにより電力消費を抑制することができる電動発電機を提供する。
【解決手段】 モータ側の第1の円盤21に設けられた第1の永久磁石7と、複数のモータ用電磁石8と、発電側の第2の円盤41に設けられた第2の永久磁石14と、発電用電磁石9と、第1の円盤21を回転させるためにモータ用電磁石に直流電力を供給する蓄電池13と備え、前記発電用電磁石9の間にはそれぞれ配置される空芯コイル15が設けられ、該空芯コイル15から取り出した電力の一部を前記蓄電池13へと蓄電する電動発電機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用電磁石に直流電力を供給して永久磁石が配置された円盤を回転させることにより発電する交流電圧出力巻線を備えた電動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータ(電動機)と発電機を同軸で直結し、モータを回転させることによって発電を行う電動発電機が知られている。
【0003】
また、本発明者らは、同一の回転体を用いて、連続的な起電力を得ることができる発電機能を発揮できる交流電圧出力巻線を備えた一方向通電形ブラシレスDCモータを発明した(特許文献1参照)。この一方向通電形ブラシレスDCモータでは、直流電力が供給されることにより、複数の永久磁石が配置された円盤を回転させるモータ用電磁石と、該モータ用電磁石により回転する円盤上に形成される前記複数の永久磁石の移動に応じて誘導起電力を発生する発電用電磁石とを同一のフレームに固定することによって、モータ(電動機)と発電機を一体形として備えている。これにより、直流電力が供給されるモータ用電磁石により複数の永久磁石が配置された円盤が回転させられ、交流電圧出力巻線に連続的に起電力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4569833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、永久磁石とモータ用電磁石との間に反発力及び吸引力を発生させて円盤を回転させるために前記モータ用電磁石に通電を行うことで所定の電力が消費されるため、この電力消費を抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、発電用電磁石の間に空芯コイルを設けることによって、無負荷で電力を取り出して、モータ用電磁石に電力を供給する蓄電池に蓄電することにより電力消費を抑制することができる電動発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の電動発電機は、第1のフレームと、該第1のフレームに回転軸を介して回転自在に取り付けられた第1の円盤と、第2のフレームと、該第2のフレームに前記回転軸を介して回転自在に取り付けられた第2の円盤と、前記第1の円盤上の周方向に沿って等間隔に配置され表面及び裏面に磁極が形成された複数の第1の永久磁石と、前記第2の円盤上の周方向に沿って等間隔に配置され表面及び裏面に磁極が形成された幅広平板状の複数の第2の永久磁石と、前記複数の第1の永久磁石に対応して前記第1のフレームに固定された第1の磁性体芯と、該第1の磁性体芯のそれぞれに巻きつけられる第1の巻線とを有する複数のモータ用電磁石と、前記第1の円盤を回転させるために、前記第1の巻線に直流電力を供給する蓄電池と、前記複数の第2の永久磁石に対応して前記第2のフレームに固定された第2の磁性体芯と、該第2の磁性体芯に巻きつけられ電力消費装置に接続される第2の巻線とを有し、前記モータ用電磁石により前記複数の第1の永久磁石に磁力を作用させて前記第1の円盤を回転させることにより前記回転軸を介して回転する前記第2の円盤上に形成される前記複数の第2の永久磁石の移動に応じて前記第2の巻線の周囲の磁界が変化することによって誘導起電力を発生する複数の発電用電磁石と、該複数の発電用電磁石の間にそれぞれ配置される空芯コイルと、を備え、前記第1の永久磁石は、前記第1の円盤の中心と当該第1の永久磁石の中心とを通る直線と、当該第1の永久磁石の磁極面の中心における法線とがなす角度が0°より大きく60°以下となるように配置されることによって、前記第1の巻線に直流一定電流を連続給電した場合に、当該第1の巻線への非給電時に前記第1の磁性体芯と前記第1の永久磁石との吸引力により発生するディテントトルクが0となる安定平衡動作状態の前記第1の永久磁石に対して前記第1の磁性体芯を基準として測った前記第1の永久磁石の回転角度と、前記第1の巻線の電流と前記第1の永久磁石とによる電磁トルクとの特性曲線において、前記第1の円盤を逆方向に回転させる回転角度範囲が狭くて値が大きい大値狭角度トルクが発生するとき又は前記第1の円盤を正方向に回転させる回転角度範囲が広くて値が小さい小値広角度トルクが発生するときのいずれかにおいて前記第1の巻線に前記蓄電池から直流電力を供給し、前記第2の円盤の回転に伴う前記第2の永久磁石の移動に応じて前記空芯コイルに生じる誘導起電力の少なくとも一部を前記蓄電池に蓄電することを特徴としている。
【0008】
請求項2記載の電動発電機は、前記第2の永久磁石は、前記第2の円盤の中心と当該第2の永久磁石の中心とを通る直線と、当該第2の永久磁石の磁極面の中心における法線とがなす角度が0°となるように配置されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の電動発電機は、前記第1の円盤及び前記第2の円盤がそれぞれ2つずつ前記回転軸に固定され、一方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石と他方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石とは極性が逆となっており、一方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石と他方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石とは極性が逆となっており、前記第1の磁性体芯は、一方の端部が一方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応し、他方の端部が他方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応するように固定され、前記第2の磁性体芯は、一方の端部が一方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石に対応し、他方の端部が他方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石に対応するように固定されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の電動発電機は、前記第1のフレーム、前記第2のフレーム、前記第1の円盤、及び前記第2の円盤は、それぞれ非金属の材料によって形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の電動発電機によれば、複数の発電用電磁石の間にそれぞれ配置される空芯コイルが設けられており、この空芯コイルに生じる誘導起電力をモータ用電磁石に電力を供給する蓄電池に蓄電するので、モータ用電磁石に通電する際に蓄電池が消費する電力を抑制することができる。また、空芯コイルを用いているので、通常の鉄心がある場合と異なり、抵抗がなく無負荷で電力を取り出すことができるので、効率的である。
【0012】
また、電磁トルクの値が大きい大値狭角度トルクが発生するタイミングで第1の巻線に電力を供給すれば、小さな電力で大きなトルクを得ることができる。そして、発生する回転角度の幅が大きい小値広角度トルクが発生するタイミングで第1の巻線に電力を供給すれば、給電時間を長くすることができるので、第1の磁性体芯と第1の巻線からなる電磁石の自己インダクタンスに起因する第1の巻線に流れる電流の増加及び減少に要する時間が大きくても第1の巻線に流す電流を大きくすることができる。
【0013】
請求項2記載の電動発電機によれば、幅広平板状に形成された第2の永久磁石は、第2の円盤の中心と当該第2の永久磁石の中心とを通る直線と、当該第2の永久磁石の磁極面の中心における法線とがなす角度が0°となるように配置されているので、発電用電磁石及び空芯コイルによる発電時間を長くすることができる。
【0014】
請求項3記載の電動発電機によれば、第1の円盤を2つ備え、一方の前記第1の円盤に配置された第1の永久磁石と他方の前記第1の円盤に配置された第1の永久磁石とは極性が逆となっており、第1の磁性体芯は、一方の端部が一方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応し、他方の端部が他方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応するように固定されている。したがって、第1の磁性体芯の2つの端部に発生する電磁力をともに前記第1の円盤の回転に利用することができるので、電力から動力へのエネルギーの変換効率を向上することができる。
【0015】
請求項4記載の電動発電機によれば、前記第1のフレーム、前記第2のフレーム、前記第1の円盤、及び前記第2の円盤は、それぞれ非金属の材料によって形成されているので、鉄損を軽減して直流電力から交流電力への変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る電動発電機の構成の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明に係る電動発電機の図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明に係る電動発電機の図1のB−B線断面図である。
【図4】モータ用電磁石に電力を供給しない場合のθ−T特性を示す説明図である。
【図5】モータ用電磁石に直流一定電流を供給した場合のθ−T特性を示す説明図である。
【図6】小値広角度トルクを利用する場合のモータ用電磁石への非給電時の安定平衡動作状態における第1の永久磁石、モータ用電磁石、位置検出円盤の着色領域及び透明領域、及び位置検出センサの位置関係を直線状に示した説明図である。
【図7】着色領域に設けた透明窓領域Rについて説明する説明図である。
【図8】大値狭角度トルクを利用する場合のモータ用電磁石への非給電時の安定平衡動作状態における第1の永久磁石、モータ用電磁石、位置検出円盤の着色領域及び透明領域、及び位置検出センサの位置関係を直線状に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電動発電機1について、図面を参照しつつ説明する。図1〜図3に示すように、本発明に係る電動発電機1は、第1の回転体2と、該第1の回転体2を支持する第1のフレーム3と、第2の回転体4と、該第2の回転体4を支持する第2のフレーム5とを備えている。
【0018】
第1の回転体2は、回転軸となるシャフト6に2枚の第1の円盤21,22と、1枚の円盤23と、1枚の位置検出円盤24とがスペーサ60を介してそれぞれ所定間隔あけた状態で回転自在に固定されている。それぞれの第1の円盤21,22の一方の面には、第1の円盤21,22の周縁に等間隔で4個の第1の永久磁石7,7aが設けられている。一方、第1のフレーム3には、2個で1組となる4組の第1の永久磁石7のそれぞれに対応して4個のモータ用電磁石8が、第1の支持部材3aによって固定されている。このモータ用電磁石8は、一方の磁極が一方の第1の円盤21の永久磁石7(2個で1組の永久磁石7の一方)に対応し、モータ用電磁石8の他方の磁極が他方の第1の円盤22の永久磁石7a(2個で1組の永久磁石7の他方)に対応している。
【0019】
第1の永久磁石7は、表面及び裏面に磁極が形成された平板状のものであり、具体的にはネオジウム系の希土類磁石である。このように、表面と裏面にN極及びS極が形成された第1の永久磁石7を用いることにより、各磁極面が広くなり、モータとしての回転体2の回転トルクを向上させることができる。
【0020】
図1に示すように、各第1の永久磁石7,7aは、それぞれ第1の円盤21,22に数mm程度埋め込まれている。尚、第1の永久磁石7,7aの固定方法は特に限定されるものではなく、金具等を用いて第1の円盤21,22に固定するようにしても良い。
【0021】
また、図2に示すように、各第1の永久磁石7,7aは、それぞれ第1の円盤21,22(第1の回転体2)の中心Oから第1の永久磁石7,7aの中心Pを通る直線L1と、第1の永久磁石7,7aの磁極方向、すなわち第1の永久磁石7,7aの表面又は裏面における法線方向の直線L2とが交わる角度αが、第1の円盤21,22の中心Oから見て、0°<α≦60°となるように固定されている。尚、第1の永久磁石7,7aは、第1の円盤21,22の外側方向の磁極面の極性が、モータ用電磁石8の第1の円盤21,22に対向する方の磁極の極性と同じになっている。
【0022】
また、一方の第1の円盤21と他方の第1の円盤22のそれぞれに4個ずつ設けられている第1の永久磁石7と第1の永久磁石7aの外側方向(又は内側方向)の磁極面の極性は逆になっている。つまり、一方の第1の円盤21に設けられている第1の永久磁石7はN極の磁極面が円盤21の外側を向いており、他方の第1の円盤22に設けられている第1の永久磁石7aはS極の磁極面が円盤22の外側を向いている。これは、モータ用電磁石8の2つの磁極の極性が異なっているからである。1つのモータ用電磁石8の一方の磁極が一方の第1の円盤21の第1の永久磁石7の外側の磁極面と対向し、当該モータ用電磁石8の他方の磁極が他方の第1の円盤22の第1の永久磁石7aの外側の磁極面と対向する。したがって、1つのモータ用電磁石8の一方の磁極に対向する一方の第1の円盤21の第1の永久磁石7の磁極面の極性と、当該モータ用電磁石8の他方の磁極に対向する他方の第1の円盤22の第1の永久磁石7aの磁極面の極性とは異なるのである。2つの第1の円盤21,22は、それぞれが備える第1の永久磁石7,7aの周方向の位置が同じになるようにスペーサ60をによって重ね合わせて固定されている。したがって、電動発電機1のモータ(電動機)側では、2個で1組の第1の永久磁石7,7aを4組、合計で8個の第1の永久磁石7,7aを備えている。一方、電動発電機1のモータ(電動機)側のモータ用電磁石8の数は、4個である。
【0023】
上述したように、一方の第1の円盤21と、他方の第1の円盤22と、1個の円盤23とは、電動発電機1の回転軸方向に円盤21、円盤22、円盤23の順でスペーサ60によって固定されている。そして、中央の円盤22には、位置検出円盤24が同軸となるように固定されている。位置検出円盤24は、第1の永久磁石7、7aの回転位置(回転角度)を検出するためのものである。位置検出円盤24は、第1の円盤21,22及び円盤23より径が若干大きくなっており、透明の合成樹脂などによって形成されている。位置検出円盤24の円盤22の周縁から突出した径大部分の所定の領域は、第1の永久磁石7,7aの回転位置を特定するために黒色に着色されたマーカーを備えている。そして、第1のフレーム3には位置検出センサ10が支持部材10aによって取り付けられており、この位置検出センサ10で位置検出円盤24の当該着色領域(マーカー)を検出することによって、第1の永久磁石7、7aの回転位置(回転角度)が特定される。このようにして第1の永久磁石7、7aの回転位置(回転角度)を特定することによって、モータ用電磁石8への通電のタイミングが決定される。尚、第1のフレーム3、支持部材3a、スペーサ60、及び、支持部材10aは非金属の材料で形成されており、例えば、合成樹脂によって形成されている。
【0024】
第1の円盤21,22、円盤23、及び、位置検出円盤24の中心にはシャフト6が貫通されており、このシャフト6に第1の円盤21,22、円盤23、及び、位置検出円盤24が固定されて、第1の回転体2として一体に回転する。また、図1に示すように、第1の回転体2の周縁部分には、第1の円盤21、第1の円盤22、円盤23の周縁部分間の全体に渡るようにフィルム11が貼り付けられている。このフィルム11により第1の回転体2の内部の空気が封止される。したがって、第1の回転体2が回転した場合に内部の空気が第1の回転体2とともに回転するので、第1の永久磁石7,7aなどが回転による空気抵抗を受けることがない。そのため、第1の回転体2の空気抵抗を減少させて電動発電機1の電動機側の回転効率を向上させることができる。尚、フィルム11は、第1の永久磁石7,7aとモータ用電磁石8との電磁力の作用及び反作用に影響しない素材であって、薄手であることが好ましく、例えば、合成樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0025】
モータ用電磁石8は、図1及び図2に示すように、およそU字状の磁性体芯80に巻線81が巻かれた集中巻のものである。モータ用電磁石8では、巻線81に電流が流れることによって磁性体芯80の両端部にそれぞれ異なる極性の磁極が形成される。このモータ用電磁石8の各巻線81は適宜、直列、並列または直並列に接続されてまとめられ、その2端子には制御回路12からの命令に従って蓄電池13から直流電力が供給される。
【0026】
図1及び図2に示すように、モータ用電磁石8は、その各磁極が2つの第1の円盤21,22に2段に設けられた2個で1組の第1の永久磁石7,7aに対応するようにして、所定のギャップ長で配置されている。そして、上述したように、モータ用電磁石8の磁極の極性と、該モータ用電磁石8の各磁極に対向する第1の永久磁石7の磁極面の極性とは同じになっており、一方の第1の円盤21と他方の第1の円盤22との間では、一方の第1の円盤21に設けられた第1の永久磁石7の磁極面の極性と他方の第1の円盤22に設けられた第1の永久磁石7aの極性とが逆になっている。このように電動発電機1のモータ(電動機)側では、第1の回転体2において、一方の第1の円盤21に固定する第1の永久磁石7と他方の第1の円盤22に固定する第1の永久磁石7aとを設けて2段の構成とし、モータ用電磁石8をU字状として2個の磁極のそれぞれを該2段の第1の永久磁石7と永久磁石7aのそれぞれに対応させている。このようにして第1の永久磁石7と永久磁石7aの両方の磁束をともに第1の回転体2を回転させるために利用することにより、電動発電機1の電力から動力へのエネルギーの変換効率を向上することができる。
【0027】
また、モータ用電磁石8は、第1の円盤21,22(第1の回転体2)の中心Oからモータ用電磁石8の中心を結ぶ直線(不図示)と、モータ用電磁石8の磁束中心軸(不図示)とが交わる角度βが第1の円盤21の中心O方向からみた場合に、0°<β≦20°となるように第1のフレーム3に固定されている。角度βをこのようにすることにより、β=0とする場合と比較して、後述のθ−トルク特性が変化するという効果が得られる。なお、図1及び図2では、β=0の状態を示している。
【0028】
第1のフレーム3は、シャフト6を軸心に第1の回転体2を回転可能に支持するとともに、モータ用電磁石8及び位置検出センサ10を固定するものであり、図1に示すように、所定の間隔で対向して互いに連結された2枚の板状のものである。この2枚の板状の第1のフレーム3は、第1の回転体2の最大の径、つまり、位置検出円盤24の径よりも大きくなっている。また、図示しないが、第1のフレーム3のシャフト6の軸を支持する箇所にはベアリングが設けられている。
【0029】
上述の位置検出センサ10は、第1の円盤21とともに回転する位置検出円盤24の位置(回転角度)を検出できるものであれば任意のものを使用でき、例えば、フォトインタラプタを使用できる。位置検出センサ10は、蓄電池(直流電源)13からの電力をモータ用電磁石8の巻線81に供給するための制御回路12と接続されており、モータ用電磁石8の巻線81に給電するタイミングを制御回路11に与える。本実施の形態の位置検出センサ10は、位置検出円盤24の透明領域(着色領域(マーカー)でない部分)を検出している間だけ、透明領域を検出していることを示す検出信号を制御回路12に送信する。制御回路12は、位置検出センサ10からの検出信号の受信に応じたタイミングで、モータ用電磁石8の巻線81に蓄電池12から直流電力を供給する。具体的には、制御回路12は、例えば、位置検出センサ10としてのフォトインタラプタが光信号を受信している間はスイッチ(不図示)をオンにしてモータ用電磁石8の巻線81へ給電を行い、光信号を受信していない間はスイッチをオフにして給電を停止する。
【0030】
上述した着色領域(マーカー)は、第1の円盤22の周縁から突出した位置検出円盤24のリング状の径大部分に設けられている。この着色領域の位置を調整し、着色領域が位置検出センサ10によって検出されるとき、モータ用電磁石8の巻線81に給電した場合には、第1の回転体2(第1の円盤21)の逆回転方向(図2における時計回りの方向)のトルクが発生するようにでき、位置検出センサ10が着色領域(マーカー)を検出してモータ用電磁石8の巻線81への給電を停止することによって第1の回転体2の逆回転方向へのトルクの発生を防止できる。制御回路12については詳細には説明しないが、モータ用電磁石8の巻線81のエネルギーを抵抗で消費するものではなく、電源に回生するタイプが好ましく、例えば、SRM(スイッチトリラクタンスモータ)で一般的に用いられている自己消弧形素子を2個だけ用いた回路とすることができる。
【0031】
次に、電動発電機1の発電機側の構成について説明する。発電機側に設けられる第2の回転体4は、図1及び図3に示すように、第1の回転体2の回転軸と同軸であるシャフト6に2枚の第2の円盤41,42と、1枚の円盤43とがスペーサ60を介してそれぞれ所定間隔あけた状態で回転自在に固定されている。それぞれの第2の円盤41,42の一方の面には、第1の円盤21,22と同様にその周縁に等間隔で4個の第2の永久磁石14,14aが設けられている。一方、第2のフレーム5には、2個で1組となる4組の第2の永久磁石14のそれぞれに対応して4個の発電用電磁石9が、第2の支持部材5aによって固定されている。この発電用電磁石9は、一方の磁極が一方の第2の円盤41の永久磁石14(2個で1組の永久磁石13の一方)に対応し、発電用電磁石9の他方の磁極が他方の第2の円盤42の永久磁石14a(2個で1組の永久磁石14の他方)に対応している。
【0032】
第2の永久磁石14は、表面及び裏面に磁極が形成された平板状のものであり、第1の永久磁石7よりも幅広に形成されたものを用いている。この第2の永久磁石14も第1の永久磁石7と同様にネオジウム系の希土類磁石等から形成されている。このように、表面と裏面にN極及びS極が形成された第2の永久磁石14を用いることにより、各磁極面が広くなり、発電機としての発電時間を長くすることができる。また、図1に示すように、各第の永久磁石14,14aも、それぞれ第2の円盤41,42に数mm程度埋め込まれている。尚、この第2の永久磁石14,14aの固定方法も特に限定されるものではなく、金具等を用いて第2の円盤41,42に固定するようにしても良い。
【0033】
また、図3に示すように、各第2の永久磁石14,14aは、それぞれ第2の円盤41,42(第2の回転体4)の中心Oから第2の永久磁石14,14aの中心Qを通る直線L3と、第2の永久磁石14,14aの磁極方向、すなわち第2の永久磁石14,14aの表面又は裏面における法線方向の直線L4とのなす角度が、第2の円盤41,42の中心Oから見て、0°となるように、すなわち直線L3と直線L4が重なるように固定されている。これにより、更に発電時間を長くすることができる。尚、第2の永久磁石14,14aは、第2の円盤41,42の外側方向の磁極面の極性が、発電用電磁石9の第2の円盤41,42に対向する方の磁極の極性と同じになっている。
【0034】
また、一方の第2の円盤41と他方の第2の円盤42のそれぞれに4個ずつ設けられている第2の永久磁石14と第2の永久磁石14aの外側方向(又は内側方向)の磁極面の極性は逆になっている。つまり、一方の第2の円盤41に設けられている第2の永久磁石14はN極の磁極面が円盤41の外側を向いており、他方の第2の円盤42に設けられている第2の永久磁石14aはS極の磁極面が円盤42の外側を向いている。これは、発電用電磁石9の2つの磁極の極性が異なっているからである。1つの発電用電磁石9の一方の磁極が一方の第2の円盤41の第2の永久磁石14の外側の磁極面と対向し、当該発電用電磁石9の他方の磁極が他方の第2の円盤42の第2の永久磁石14aの外側の磁極面と対向する。したがって、1つの発電用電磁石9の一方の磁極に対向する一方の第2の円盤41の第1の永久磁石14の磁極面の極性と、当該発電用電磁石9の他方の磁極に対向する他方の第2の円盤42の第2の永久磁石14aの磁極面の極性とは異なるのである。2つの第2の円盤41、42は、それぞれが備える第2の永久磁石14,14aの周方向の位置が同じになるようにスペーサ60によって重ね合わせて固定されている。したがって、電動発電機1の発電機側では、2個で1組の第2の永久磁石14,14aを4組、合計で8個の第2の永久磁石14,14aを備えている。一方、電動発電機1の発電機側の発電用電磁石9の数は、4個である。
【0035】
第2の円盤41,42、及び円盤43の中心には、シャフト6が貫通されており、このシャフト6に第2の円盤41,42、及び円盤43が固定されて、第2の回転体4として一体に回転する。尚、第2の回転体4は、第1の回転体2とも同軸のシャフト6に固定されているので、第1の回転体2が回転することによって第2の回転体4も回転するようになっている。また、図1に示すように、第2の回転体4の周縁部分には、第2の円盤41、第2の円盤42、円盤43の周縁部分間の全体に渡るようにフィルム11が貼り付けられており、このフィルム11により第2の回転体4の内部の空気が封止される。したがって、第2の回転体4が回転した場合に内部の空気が第2の回転体4とともに回転するので、第2の永久磁石14,14aなどが回転による空気抵抗を受けることがない。そのため、第2の回転体4の空気抵抗を減少させて電動発電機1の発電機側の回転効率を向上させることができる。
【0036】
発電用電磁石9も、モータ用電磁石8と同様にU字形状の磁性体芯90に巻線91が巻かれた集中巻のものである。この発電用電磁石9は、U字形状の磁性体芯90の両端が2個の第2の円盤41,42に2段に設けられた第2の永久磁石14,14aに対応するようにして、所定のギャップ長で配置されている。発電用電磁石9においては、磁性体芯90を含む巻線91の周囲の磁界が、第2の回転体4の回転によって移動する第2の永久磁石14、14aに応じて変化することによって電磁誘導により巻線91の両端に誘導起電力が発生する。したがって、巻線91が交流電圧出力巻線である。また、この発電用電磁石9の各巻線91は適宜、直列、並列または直並列に接続されて単相巻線または多相巻線として構成され、それらは、交流用電灯、交流モータなどの様々な交流電力消費装置に接続される。尚、交流電圧を整流して直流電圧として直流電力消費装置に接続することもできる。
【0037】
また、図1及び図3に示すように、電動発電機1の発電側では、4個の発電用電磁石9の各巻線91の間には、2個の第2の円盤41,42に2段に設けられた第2の永久磁石14,14aに対応するようにして、所定のギャップ長で2つずつ空芯コイル15が設けられている。図1では、説明のために詳しく図示していないが、この空芯コイル15も発電用電磁石9と同様に第2の支持部材5aに固定されている。
【0038】
この空芯コイル15においては、当該空芯コイル15の周囲の磁界が、第2の回転体4の回転によって移動する第2の永久磁石14、14aに応じて変化することによる電磁誘導によって誘導起電力が発生する。この発生した誘導起電力の一部は、例えば整流器(不図示)を介して交流電力を直流電力に整流して蓄電池13へと充電される。これにより、モータ用電磁石8に直流電力を供給する蓄電池13が消費する電力を抑制することができる。また、空芯コイル15を用いているので、通常の鉄心がある場合と異なり、抵抗がなく無負荷で電力を取り出すことができるので、効率的である。尚、蓄電池13の充電に利用される電力以外の電力については、例えば、交流用電灯、交流モータなどの様々な交流電力消費装置に利用するようにしても良い。
【0039】
以下、本発明の電動発電機1の起動について説明する。上述したように(図2参照)、第1の永久磁石7,7aは、第1の円盤21,22(第1の回転体2)の中心Oから第1の永久磁石7,7aの中心Pを通る直線L1と、第1の永久磁石7,7aの磁極方向、つまり第1の永久磁石7,7aの表面又は裏面における法線方向の直線L2とが交わる角度αが、第1の円盤21,22の中心Oから見て、0°<α≦60°となっている。第1の永久磁石7,7aの傾きをこのようにした場合、モータ用電磁石8の中心から第1の回転体2(第1の円盤21,22)の正回転方向(図3における反時計回りの方向)に測った第1の永久磁石7,7aの中心までの機械角をθとし、モータ用電磁石8の巻線81に給電しない場合に磁性体芯80と第1の永久磁石7,7aとの間の吸引力により生じる正回転方向のトルクであるディテントトルク(コギングトルク)をTとすると、θ−T特性は図4に示すようになる。図4からわかるように、θ=0°が、つまり、モータ用電磁石8の中心の正面に第1の永久磁石7の中心が位置する状態で、ディテントトルクが0となり第1の円盤21が停止する安定平衡点である。
【0040】
一方、モータ用電磁石8の巻線81に、例えば、直流電源(蓄電池)13を用いて1.90Aの直流電流を供給した場合にモータ用電磁石8と第1の永久磁石7との間に生じる第1の円盤21の正回転方向の電磁トルクをTとすると、θ−T特性は図5に示すようになる。なお、モータ用電磁石8に供給する電流を変更した場合、安定平衡点及び不安定平衡点は変化する。なお、安定平衡点と不安定平衡点とは、モータ用電磁石8に対する第1の永久磁石7,7aの位置が安定平衡状態にあるひとつの位置(点)と不安定平衡状態にあるひとつの位置(点)とをそれぞれ意味する。安定平衡状態と不安定平衡状態とはいずれもモータ用電磁石8と第1の永久磁石7との吸引力と反発力とが均衡した状態である。安定平衡状態では、第1の円盤21がいずれの方向に回転してもモータ用電磁石8と第1の永久磁石7との磁力により回転方向と逆向きの力が加わり、再び安定平衡状態に戻る。一方、不安定平衡状態では、第1の円盤21がいずれかの方向に回転すれば、モータ用電磁石8と第1の永久磁石7との磁力によりその回転方向への力が加わり、再び不安定平衡状態に戻ることはない。
【0041】
図5からわかるように、θ=−20°,θ=70°が安定平衡点であり、θ=−80°,θ=10°が不安定平衡点である。そして、電磁トルクTが負となる角度幅は30°であり、Tが正となる角度幅は60°である。Tの平均はゼロとなるので、図5からもわかるように、Tが負となる部分では角度幅が狭くTの絶対値が大きい。そこで、Tが負となる部分のTを“大値狭角度トルク”と呼ぶ。一方、Tが正となる部分では角度幅が広くTの絶対値は小さい。そこで、Tが正となる部分の電磁トルクTを“小値広角度トルク”と呼ぶ。
【0042】
ここで、小値広角度トルクを利用する場合を考える。図6は、モータ用電磁石8への非給電時の安定平衡状態(つまり、ディテントトルクがゼロで第1の円盤21,22が停止している状態)における第1の永久磁石7、モータ用電磁石8、位置検出円盤24の着色領域及び透明領域、及び、位置検出センサ10の位置関係を直線状に示した説明図である。図6において、角度βは、モータ用電磁石8の正面を0°とした、第1のフレーム3などの固定子上に印された角度であり、第1の回転体2(第1の円盤21,22)である回転子の正方向回転を正の向きとしている。また、正回転領域と逆回転領域は、モータ用電磁石8に対して固定された、つまり、角度βに関して固定された領域である。正回転領域は、第1の永久磁石7,7aが第1の円盤21,22の回転に応じて移動して当該領域に位置したときに、第1の円盤21,22に正回転方向の電磁トルクTが生じる領域である。つまり、図6の正回転領域は、図5において“小値広角度トルク”が発生するθの角度範囲に対応している。そして、逆回転領域は、第1の永久磁石7,7aが第1の円盤21,22の回転に応じて移動して当該領域に位置したときに、第1の円盤21,22に逆回転方向の電磁トルクTが生じる領域である。つまり、図6の逆回転領域は、図5において“大値狭角度トルク”が発生するθの角度範囲に対応している。図6において、図面の左方向が第1の円盤21の正回転の方向であり、第1の永久磁石7が左に移動すると位置検出円盤24の着色領域及び透明領域も左に移動する。また、正回転領域の角度幅と透明領域の角度幅は同じ60°であり、逆回転領域の角度幅と着色領域の角度幅は同じ30°である。そして、正回転領域及び逆回転領域、と、透明領域及び着色領域は連続しており、正回転領域及び透明領域は30°間隔で存在し、逆回転領域及び着色領域は60°間隔で存在する。尚、第1の永久磁石7,7aが逆回転領域内に位置する場合に位置検出センサ10は着色領域内にあり、第1の永久磁石7,7aが正回転領域内に位置する場合に位置検出センサ10は透明領域内にあるように、位置検出円盤24と位置検出センサ10を設定する。図6の例では、位置検出センサ10は、β=50°の場所に位置している。
【0043】
図6からわかるように、モータ用電磁石8に給電をしない安定平衡状態では、第1の永久磁石7は逆回転領域に位置するので、位置検出円盤24の位置検出センサ10がセンシングする場所は着色領域である。したがって、位置検出センサ10からは検出信号が制御回路12に送信されるので、制御回路12は、蓄電池13からの電力をモータ用電磁石8に供給しない。それゆえ、モータ用電磁石8に給電されない安定平衡状態から第1の円盤21を回転させて電動機発電機1のモータ側を起動させるためには、ある種の工夫が必要となる。電動機発電機1のモータ側を起動させるための工夫としては、大きく分けて、非給電時の安定平衡点を正回転領域に移動させる第1の方法と、起動時に第1の永久磁石7を一旦強制的に正回転領域に移動させる第2の方法とがある。
【0044】
非給電時の安定平衡点を正回転領域に移動させる第1の方法とは、モータ用電磁石8の巻線81に電力が供給されず第1の円盤21,22がディテントトルク0の安定平衡状態で停止しているときのモータ用電磁石8と第1の永久磁石7との位置関係が、モータ用電磁石8の巻線81への電力の供給が開始されたときに第1の円盤21,22の正方向のトルクが第1の円盤21,22の所定の回転角度だけ連続して発生する関係となるように、隣のモータ用電磁石8(8a)の位置を現在の位置、すなわち、モータ用電磁石8から90°離れた位置から移動させることによって、ディテントトルク(θ−T特性)を変化させて、安定平衡状態において、第1の永久磁石7,7aが正回転領域に位置するようにする。第1の永久磁石7,7aが正回転領域に位置すれば、位置検出センサ10のセンシング位置は透明領域となるので給電が開始され第1の円盤21,22、つまり、電動発電機1のモータ側を起動して正回転させることができる。
【0045】
例えば、ディテントトルク(θ−T特性)を変化させることによって、安定平衡状態において、モータ用電磁石8の近傍の第1の永久磁石7がβ=11°に位置するようにすると、図6からわかるように、第1の永久磁石7,7aは正回転領域に含まれ、位置検出センサ10のセンシング位置は透明領域に含まれる。第1の円盤21の正回転方向には70°−11°=59°に渡り正回転領域が存在し続け、同様に、59°に渡り透明領域が存在し続ける。したがって、第1の円盤21,22が59°だけ回転する間だけモータ用電磁石8に給電されて第1の円盤21,22は正回転する。第1の円盤21,22の回転角度が60°に達してβ=71°となると第1の永久磁石7,7aは逆回転領域に含まれる。しかし、位置検出センサ10のセンシング位置も着色領域に含まれるのでモータ用電磁石8への給電が停止される。すると、モータ用電磁石8による電磁トルクTはゼロとなり、ディテントトルクTが現れる。逆回転領域におけるディテントトルクTは概ね正の値であり、また、第1の円盤21,22には慣性モーメントが存在するため、第1の円盤21,22は正回転を続ける。角度幅が30°の逆回転領域を過ぎると再び第1の永久磁石7,7aは角度幅60°の正回転領域に入るので第1の円盤21,22は正回転を続ける。モータ用電磁石8に給電しないディテントトルクTの安定平衡状態で、モータ用電磁石8の近傍の第1の永久磁石7,7aをβ=11°に位置させるためには、両隣のモータ用電磁石8(8a)をそれぞれ第1の円盤21,22の正回転方向に22°だけ移動させればよい。つまり、モータ用電磁石8(8a)をβ=90°の位置からβ=112°の位置に移動させればよい。ただし、β=112°が適当であるのは、モータ用電磁石8が2つでモータ用電磁石8(8a)が2つの場合である。
【0046】
一方、起動時に第1の永久磁石7を一旦強制的に正回転領域に移動させる第2の方法としては、位置検出センサ10による着色領域の検出にかかわらずモータ用電磁石8に一時的に給電する方法(2−1)と、着色領域に幅の狭い透明領域を設ける方法(2−2)がある。
【0047】
位置検出センサ10による着色領域の検出にかかわらずモータ用電磁石8に一時的に給電する方法(2−1)においては、蓄電池13の直流電力をモータ用電磁石8に供給する前述の制御回路12に、例えば、押しボタンB(不図示)を押した場合に所定の期間だけ直流電力をモータ用電磁石8に供給する制御回路(不図示)を追加することによって実現する。より具体的には、電動発電機1の起動時に、押しボタンBを押すことによってモータ用電磁石8に給電して、図6に示す安定平衡状態で停止している第1の円盤21,22(第1の永久磁石7,7a)を一時的に逆方向に回転させることにより、逆回転領域に位置する第1の永久磁石7,7aが正回転領域に移動し、そのまま逆回転方向の逆回転領域に達することなく、当該正回転領域内で第1の円盤21,22を正回転に転じさせる。つまり、押しボタンBを押した場合には、第1の円盤21,22が逆回転して第1の永久磁石7,7aが正回転領域に達し、当該第1の永久磁石7,7aがその正回転領域内にあるうちに第1の円盤21,22が正回転に転じるに必要な期間(回転角度分)だけモータ用電磁石8に給電される。
【0048】
着色領域に幅の狭い透明領域を設ける方法(2−2)では、モータ用電磁石8の巻線81に電力が供給されず第1の円盤21がディテントトルクTの安定平衡状態で停止している状態における位置検出センサ10のセンシング位置の位置検出円盤24に所定の幅の透明領域を設ける。つまり、図7に示すように、30°の角度幅の着色領域内に所定の角度幅の透明窓領域Rを設ける。透明窓領域Rは、位置検出センサ10の中央のセンシング位置から第1の円盤22(位置検出円盤24)の正回転方向に幅を持っている。このように、位置検出センサ10のセンシング位置に透明窓領域Rが位置するので、制御回路12を動作させると、直ちに一定の期間(回転角度分)だけモータ用電磁石8の巻線81に給電される。このようにしてモータ用電磁石8に給電することにより、第1の円盤21,22(第1の永久磁石7,7a)を逆方向に回転させ、逆回転領域に位置する第1の永久磁石7,7aが正回転領域に移動し、そのまま逆回転方向の逆回転領域に達することなく、当該正回転領域内で第1の円盤21を正回転に転じさせる。したがって、透明窓領域Rの角度幅は、第1の円盤21,22が逆回転して第1の永久磁石7,7aが正回転領域に達し、当該第1の永久磁石7,7aがその正回転領域内にあるうちに第1の円盤21,22が正回転に転じるに必要な期間だけモータ用電磁石8に給電される角度幅である。なお、通常の回転時に、位置検出センサ10の過渡特性の悪さにより、透明窓領域Rは検出されず、制御動作は生じない。
【0049】
次に、大値狭角度トルクを利用する場合を考える。この場合、小値広角度トルクを利用する場合の位置検出円盤24と位置検出センサ10の設定を示す図6において、位置検出円盤24の着色領域を透明領域に、透明領域を着色領域に変更すればよい。この変更を行った様子を示すのが図8である。図8はモータ用電磁石8への非給電時の安定平衡状態(つまり、ディテントトルクがゼロで第1の円盤21,22が停止している状態)を示している。図8からわかるように、第1の永久磁石7,7aは逆回転領域に存在し、位置検出センサ10は透明領域内にあるため、位置検出センサ10から検出信号が制御回路12に送信され、制御回路12は、蓄電池13からの電力をモータ用電磁石8に給電する。それゆえ、電動発電機1は逆回転方向に回転する。このように、大値狭角度トルクを利用する場合には、電動発電機1を起動させるための工夫は特に必要ない。ただし、モータ用電磁石8(8a)の配置を定位置からずらすような場合、非給電時の安定平衡状態において第1の永久磁石7,7aが逆回転領域の外に移動しないように注意すれば良い。
【0050】
このような本発明の電動発電機1によれば、モータ側の第1の回転体2(第1の円盤21,22)をモータとして機能させて回転させることにより、同軸のシャフト6に固定されている発電機側の第2の回転体4(第2の円盤41,42)が回転する。これにより、第2の円盤41,42にそれぞれ設けられた第2の永久磁石14,14aの移動することにより、発電機側に設けられる発電用電磁石9及び空芯コイル15の周囲の磁界が変化することによる電磁誘導によって誘導起電力が発生する。また、本発明の電動発電機1では、発電用電磁石9で発電された電力は、交流電力消費装置に利用され、空芯コイル15で発電した電力の一部は、蓄電池13へと蓄電される。
【0051】
尚、本実施形態では、電動発電機1のモータ側及び発電側にそれぞれ4個ずつモータ用電磁石8と発電用電磁石9を設けたが、この数はこれに限定されるものではなく、適宜変更しても良い。ただし、隣り合うモータ用電磁石8同士又は隣り合う発電用電磁石9同士が電磁的な結合をしないような間隔になる数であることが好ましい。また、上述の実施形態では、モータ側及び発電側では、それぞれ第1の円盤21,22及び第2の円盤41,41の2つ(2段)備える構成としたが、第1の円盤21及び第2の円盤41は、1つ(1段)であっても良い。しかし、電動発電機1のモータとしてのエネルギー効率を高めるためには、2つずつ備えることが好ましい。
【0052】
さらに、上述の実施の形態では、図5において電磁トルクTが正の値をとるタイミング、つまり、小値広角度トルクが発生するタイミングでモータ用電磁石8の巻線81に給電を行うこととしたが、これに限らず、電磁トルクTが負の値をとるタイミング、つまり、大値狭角度トルクが発生するタイミングでモータ用電磁石8の巻線81に給電を行うようにしてもよい。
【0053】
尚、本発明の実施の形態は上述の形態に限るものではなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る電動発電機は、直流電力を交流電力に効率良く変換して家庭電気製品等に交流電力を供給するための電動発電機等として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 発電機
2 第1の回転体
21、22 第1の円盤
3 第1のフレーム
4 第2の回転体
41、42 第2の円盤
5 第2のフレーム
6 シャフト(回転軸)
7、7a 第1の永久磁石
8 モータ用電磁石
80 磁性体芯(第1の磁性体芯)
81 巻線(第1の巻線)
9 発電用電磁石
90 磁性体芯(第2の磁性体芯)
91 巻線(第2の巻線)
13 蓄電池(直流電源)
14、14a 第2の永久磁石
15 空芯コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレームと、
該第1のフレームに回転軸を介して回転自在に取り付けられた第1の円盤と、
第2のフレームと、
該第2のフレームに前記回転軸を介して回転自在に取り付けられた第2の円盤と、
前記第1の円盤上の周方向に沿って等間隔に配置され表面及び裏面に磁極が形成された複数の第1の永久磁石と、
前記第2の円盤上の周方向に沿って等間隔に配置され表面及び裏面に磁極が形成された幅広平板状の複数の第2の永久磁石と、
前記複数の第1の永久磁石に対応して前記第1のフレームに固定された第1の磁性体芯と、該第1の磁性体芯のそれぞれに巻きつけられる第1の巻線とを有する複数のモータ用電磁石と、
前記第1の円盤を回転させるために、前記第1の巻線に直流電力を供給する蓄電池と、
前記複数の第2の永久磁石に対応して前記第2のフレームに固定された第2の磁性体芯と、該第2の磁性体芯に巻きつけられ電力消費装置に接続される第2の巻線とを有し、前記モータ用電磁石により前記複数の第1の永久磁石に磁力を作用させて前記第1の円盤を回転させることにより前記回転軸を介して回転する前記第2の円盤上に形成される前記複数の第2の永久磁石の移動に応じて前記第2の巻線の周囲の磁界が変化することによって誘導起電力を発生する複数の発電用電磁石と、
該複数の発電用電磁石の間にそれぞれ配置される空芯コイルと、を備え、
前記第1の永久磁石は、前記第1の円盤の中心と当該第1の永久磁石の中心とを通る直線と、当該第1の永久磁石の磁極面の中心における法線とがなす角度が0°より大きく60°以下となるように配置されることによって、
前記第1の巻線に直流一定電流を連続給電した場合に、当該第1の巻線への非給電時に前記第1の磁性体芯と前記第1の永久磁石との吸引力により発生するディテントトルクが0となる安定平衡動作状態の前記第1の永久磁石に対して前記第1の磁性体芯を基準として測った前記第1の永久磁石の回転角度と、前記第1の巻線の電流と前記第1の永久磁石とによる電磁トルクとの特性曲線において、前記第1の円盤を逆方向に回転させる回転角度範囲が狭くて値が大きい大値狭角度トルクが発生するとき又は前記第1の円盤を正方向に回転させる回転角度範囲が広くて値が小さい小値広角度トルクが発生するときのいずれかにおいて前記第1の巻線に前記蓄電池から直流電力を供給し、
前記第2の円盤の回転に伴う前記第2の永久磁石の移動に応じて前記空芯コイルに生じる誘導起電力の少なくとも一部を前記蓄電池に蓄電することを特徴とする電動発電機。
【請求項2】
前記第2の永久磁石は、前記第2の円盤の中心と当該第2の永久磁石の中心とを通る直線と、当該第2の永久磁石の磁極面の中心における法線とがなす角度が0°となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動発電機。
【請求項3】
前記第1の円盤及び前記第2の円盤がそれぞれ2つずつ前記回転軸に固定され、
一方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石と他方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石とは極性が逆となっており、
一方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石と他方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石とは極性が逆となっており、
前記第1の磁性体芯は、一方の端部が一方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応し、他方の端部が他方の前記第1の円盤に配置された前記第1の永久磁石に対応するように固定され、
前記第2の磁性体芯は、一方の端部が一方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石に対応し、他方の端部が他方の前記第2の円盤に配置された前記第2の永久磁石に対応するように固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動発電機。
【請求項4】
前記第1のフレーム、前記第2のフレーム、前記第1の円盤、及び前記第2の円盤は、それぞれ非金属の材料によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電動発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−55789(P2013−55789A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191997(P2011−191997)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(505001052)
【出願人】(511215089)